2024年5月3日金曜日

闇医者おゑん秘録帖② 碧空の音

闇医者おゑん秘録帖② 碧空の音 あさのあつこ

 臨月近い竹という女が、産みたいと駆け込んで来た。浮腫があり、頭痛や吐き気、眩暈があるという。十両をゑんに預ける。二日後、陣痛が始まる。赤ん坊・男の子は産まれたが、竹は死んだ。竹一と名付けられ近所の磯の乳で元気に育っている。里子に出す親を見付けなければならない。

 ここから里子に出した二人の子が亡くなっていた。花は病気で亡くなった。与一は何故なくなったのか分らない。与一は二年前に貰われて行った。八か月前は元気だった。四月前に子が産まれた。内儀が与吉を折檻すると噂がでる。真相は判らない。ゑんが知った時には葬儀は終わっていた。
 ゑんは仕組みを作ろうと思う。引き取り手をできる限り江戸府内にし、少なくとも二、三年は三月に一度程の割合で様子を見る。赤ん坊の世話を請け負う者、赤ん坊の引き受け手を新しい親として相応しいが詳しく調べる者。そんな仕組みを作りたいと思う。赤ん坊の部屋を整え、母親の部屋を増やす。与一の死を無駄にはできないと思う。

 吉原の首代・甲三郎が、惣名主・川口屋にお出で願いたいと伝えに来た。
 座敷持ちの女郎・桐葉が大店の主に内儀として身請けされることになっている。桐葉が懐妊した。備後屋主人・将吾郎の子で将吾郎は喜んだ。桐葉・喜多は、身請けされることは喜んだが、子を産むことを良しとしなかった。ゑんは子を流すにしても、喜多の今の体力では母体が持たないと考え、母体を元気にしている間に産むことを説得しようと思っていた。
 喜多と共に甲三郎も手伝いに寄越して貰う。備後屋の番頭が着た。甲三郎に尾行を頼むが、いなくなっていた。番頭でもなかった。番頭と名乗った者は殺された。
 ゑんは喜多の過去を調べる。将吾郎が養子に入る前が何も分らない。甲三郎の同僚・梅蔵に喜多を連れてきた女衒・丑松のことを聞いたり、備後屋の番頭に、将吾郎の亡くなった内儀のことや先代や先代の兄弟のことを聞く。
 喜多は、竹一の襁褓を縫ったり、竹一の世話をしているうちに、産みたくなる。ゑんは、呪縛に掛かり産んではいけないと思い込んでいるように思える喜多に、産んで良いんだよという。
 
 将吾郎とゑんが呼び出され現れたのは番頭と梅蔵だった。番頭は店のお金を使い込んでいた。もともと他所から先代に引き抜かれお嬢さんの婿になった将吾郎に嫉妬し妬み憎しみが募っていた所に吉原から身請けし内儀にしようとする、その上、使い込みを指摘され命を奪おうとした。吉原の首代と親しくなってお金で梅蔵を仲間にしていた。ゑんは二人が動くように罠を掛けた。二人の悪巧みを暴く。

 ゑんの祖父は異国人の医者だった。難破し辿り着いた村で病気を治し村人と助け合って暮していた。流行病は異国から来たものだと人々が、祖父を母を殺した。その中からゑんと末音は逃げ出し現在に至る。
 将吾郎は、四国の山の中で、十才の時、母子二人で暮す親子を生け贄にした村人側にいた。父親は、丑松に息子を託した。将吾郎は江戸に連れてこられた。一年余り前に、丑松は、死を前にして将吾郎に桐葉の見守りを願って来た。桐葉を見て、身請けしようと思ったと話す。丑松は喜多の姉と恋仲になっていた。村で立て続けに起こる災いが喜多の家族の所為だと言われ、家族が生け贄に選ばれた。家に火を付け殺される。喜多の姉が丑松に妹を託した。丑松は喜多を連れ江戸に出た。自分が喜多を育てるつもりだったが、喜多を見ると村人の残忍さを思い出す。どうしようもなく川口屋に渡した。今まで見守って来たが、自分ができなくなりそうで将吾郎に託した。将吾郎なら喜多の気持ちが分るだろうと。
 そんな過去を持つ二人だった。

 喜多は、竹一の具合が悪いと知らせるために、走った。喜多は出血した。出血が止まらなければ喜多も赤ちゃんも命が無くなる。下腹の痛みに耐えながら喜多は、この子を産みたい竹ちゃんと一緒に育てたいと言うようになった。

 喜多は身請けされたが、ゑんのところで働いている。子供が出来たら、竹一と子供を備後屋の子として届けるつもりのようだ。将吾郎は、待っているつもりのようだ。
 建物の建替えが始まった。備後屋と川口屋が費用を出してくれる。

2024年4月30日火曜日

新・酔いどれ小籐次〈二十六〉 恋か隠居か 

 新・酔いどれ小籐次〈二十六〉 恋か隠居か 佐伯泰英

 江戸・三十間堀の小さな町道場が、怪しい証文を盾にした兄弟から狙われている。道場主と孫娘の愛を救うため、十八才の駿太郎は、入門する。

  浪人たちに無体を仕掛けられていた旗本片桐家の姫様たちを助けた。翌朝、望外川荘近くに抱き屋敷がある片桐家の殿様と姫・麗衣子14才が、礼に来た。

 天保二年大晦日、雪が降る中、久慈屋の店先に三千両も頂戴しようかという押し込み強盗が現れる。駿太郎が相手をして事無きを得た。

 雪の正月、練習場がないため、駿太郎は、越後長岡藩牧野家抱き屋敷の道場で稽古させて貰う。 

 加古道場を乗っ取ろうとする夢想谷三兄弟が現れる。加古愛と駿太郎が相手をし、三兄弟破れる。

 天保三年秋、奉行所、火盗改が鼠小僧次郎吉の捕縛に力を注いでいた。本物の次郎吉は何年も前から盗人家業を停止して望外川荘で子次郎という本名で男衆をしていた。六人の自称鼠小僧が捕まった。五月に捕まった盗人を調べると武家屋敷で女中に悪さをし、商家で盗みをしていた。近ごろ鼠小僧と称した者だった。真の悪党、鼠小僧次郎吉は市中引き回し、本名知れずとしてさらし首になる。他の自称次郎吉は、江戸所払いと四人は遠島になった。
 不満に思うことがあるかも知れぬが、幕閣がこれを了承した。評定所が談義し、鼠小僧次郎吉の始末が決まった。次郎吉は下劣な悪党だ。子次郎、世間にいい顔を見せたいか。向後、子次郎がどう生きるかが大事なことだと小籐次は説いた。
 

2024年4月28日日曜日

うぽっぽ同心十手綴り⑥ 病み蛍 

うぽっぽ同心十手綴り⑥ 病み蛍 坂岡真 

 瓜二つ 妊婦が大八車に轢かれたという凶事を耳にし駆けつけた長尾勘兵衛。そこで自分と顔も姿も瓜二つの同心・占部と知り合う。瓜を買い占め御値をつり上げている悪党どもと憤慨す占部。息巻く占部を応援したくなる。
 大八車の持ち主・鳴子屋が大量の瓜を捨てている現場を見付けた。鳴子屋に協力する与力・須藤式部。同心・佐々木次郎。占部は鳴子屋から金を出させ全てを殺しに掛かった。勘兵衛と向かい合った時、自死した。占部は、娘の縁談をまとめるため金を出した。相手に心変わりされ、相手を殺した。縁談を得るため金が欲しかった。が・・・。

 病み蛍 芸子・小菊が殺される。殺したことに耐えられない小梅が自死した。小梅は七年前、岡っ引き源七に傷を負わせ逃げた伊佐三だった。小菊の贔屓近江屋の隠し金の在りかを聞き出した伊佐三は、小梅に小菊を殺すよう命令された。
 源七は岡っ引きをひいたが、伊佐三を追いかけていた。近江屋の妾宅に忍んだ伊佐三を捕まえようとして源七は殺された。やってきた勘兵衛は伊佐三を捕まえる。
 源七の娘に、閻魔長屋の木戸番の助の仕事が決まった。

 むくげの花 勘兵衛は、元秋田藩の砂留役の牛島と知り合った。牛島は秋田藩の次席家老の娘を嫁にしていたが、横領の科で秋田藩から追われていた。牛島は嫁は、養女で、息子・寅之介は家老の子、横領は家老のしていたことで、嫁は、牛島に申し訳ないと自死していた。秋田藩は、牛島と一緒にいた娘を勾引かした。勘兵衛は、二人を返して貰う談判をする。根岸のお墨付きがあれば返すという。勘兵衛は、お墨付きを貰い二人を返して貰った。牛島は、果し状を送る。気が付いた勘兵衛と鯉四郎は助太刀に行く。藩士三十人も連れて弓矢まで用意されていた。牛島は本懐を遂げた。根岸は牛島に砂防役を頼んだ。

 不動詣で 鯉四郎の祖母・志穂は、物忘れが酷くなっている。綾乃は、志穂の様子を見に度々出かけた。三日に一度、夜明け前に散歩に行く。通り道に男女の心中を装った殺しがあった。男は菊細工で優勝した男だった。
 志穂が襲われ助けた綾乃が斬られた。
 菊細工事件を調べていくとかんじょう勘定奉行・佐原式部正の名が出、蜜月の交わりの木曽屋が浮かぶ。鯉四郎の父親を罠に嵌めた人物たちだった。
 志穂の後を付け、木曽屋と川路の抜け荷を見付ける。
 鯉四郎は一人で乗り込む。勘兵衛は、川路の元道場へ、捕り方を要請し急ぐ。棺桶で運ばれた鯉四郎を助け、川路を捕まえた。
 翌朝、日本橋の晒し場に、奸賊なり、の捨札が立ち、棺桶に御禁制の人参と勘定奉行佐原と木曽屋が入れられていた。
 志穂は勘兵衛に礼を言い、息子の雑記帳を燃やした。勘兵衛は、綾乃を鯉四郎の嫁にすると約束した。
 


2024年4月24日水曜日

芋洗河岸〈2〉用心棒稼業

芋洗河岸〈2〉用心棒稼業 佐伯泰英 

 小此木善次郎は、初詣で賑わう神田明神で、宮司たちが千両を強請られるところに行き合う。乱暴な御成街道の忠造親分と浪人をやっつけた。神田明神の守護人に認められた。

 善次郎は、青柳道場の具足開で、陰流苗木と夢想流抜刀技を披露した。野中一之亟は、善次郎の父親を知っていた。

 善次郎は、一口長屋の女房五人と子供三人が、船宿で朝食を取り芝居見物後、食事を食して帰る猪牙船で往復する楽しみを用意した。芝居は団十郎の助六。善次郎は木戸札を取るために中村勘三郎頭取が、五百両を脅し取られることを阻止した。勘三郎は、斬った男を奉行所の同心が斬ったことにして納めるために百両だした。善次郎は五十両を貰った。越後屋の帳面に付けられた。
 この事件で、北町定町廻り同心・矢部内蔵助と、親仁橋の御用聞き三郎次を知った。
 矢野は、盗賊の残した文の中に一口長屋が出てくることに不信を覚え調べていた。調べを止めるよう脅されたり、最後には、奉行命令で止められたことを一口長屋に住む善次郎に伝えた。陰の御仁という言葉で表すこともあった。
 矢部が斬られて川に浮いた。

 越後屋の、定火消・松平五千七百石からの呼び出しに付き添う。新たな借財の要求と思われるが、返す気のない松平家にもう貸す気はない。聞いていた善次郎は、高飛車に出、馬に乗ろうとした采女が、ひっくり返って気絶している間に定火消の羽織を脱がし、持ち帰った。知れれば切腹の松平家に取りに来させた。返されたことの受け取り状を取り、もう貸さなくても大丈夫になった。

 善次郎は矢野の事件の根本の四条屋へ連れていってもらった。押し込み時に殺された呼び込み松五郎の殺された場所で、善次郎は、地下への入口を見付ける。地下一杯の水が少しずつ減り、一夜を明かした時、現れたのは金色の仏像とその前に並べられた慶長大判二千枚だった。善次郎は越後屋に知らせ、北町の内与力に知らせる。
 金は公儀勘定方と北町に割り当てられ、仏像は神田明神に寄付された。

2024年4月22日月曜日

情け深川恋女房④ お伊勢参り

情け深川恋女房④ お伊勢参り 小杉健治 

 以前深川に住んでいた九才の長太が姿を消した。元岡っ引きの千恵蔵が探索に乗り出す。長太の父親が二十五年前に勾引かされた。その時の犯人・鳥九郎を追う。どう考えても鳥九郎でないが、千恵蔵は、鳥九郎が犯人だと追いつめる。鳥九郎にはあまり表に出せない別の顔があった。板橋で長太は一人でいるところを見付かった
 七年前、長太の父・絹助は伊勢参りに出て江戸へ戻って来なかった。旗本・渋川家の畳替えをしていた絹助は、旗本の次男が、渋川を強請っているのを知り、注意しもみ合いになり男は石に頭を打ち死んだ。鳥九郎が死体の始末をした。次男の悪友が、絹助にも話を聞きに来たので江戸を離れた。学者仲間に頼んだ。御師になっている。
 長太は、こっそり見にきていた絹助に尾いて行った。父親かと思った人に尾いて行ったと言えなかった。

 小里は母親と同じ病気になった。千恵蔵は、小里が自分の子だということを隠している。母親が病気になった時、治すと言った医者に通わせなかったことを悔やんでいた。小里の薬代を出し、川路という医者に通うように言う。小里と与四郎は、千恵蔵がそこまで言う理由が分らない。川路という医者には通うようにする。
 足柄屋で働いている太助が剣を習うようになり、太助は上達する。先生に見込まれる。
 与四郎は、小里の養生のためにも、長太の母・筋と長太を足柄屋で雇う。

 絹助がこっそり帰って来た。畳職人として働く。
 鳥九郎は首を括って死んだ。
 怪しい男が一人、茂平次
 

2024年4月20日土曜日

マイ・ディア・ポリスマン③ 夏服を着た恋人たち 

マイ・ディア・ポリスマン③ 夏服を着た恋人たち 小路幸也

 JR奈々川駅向かい側の高層マンションの最上階に暴力団の出入りがあると通報があった。巡は、管理人に尋ね、カメラも見るが判らなかった。住んでいるのは若いイラストレーター北村紗英だった。
 紗英が住んでいる部屋にもう一人男性がいる。紗英の恋人杉山が紗英名義で部屋を買い、紗英が住んでいる。杉山が連れて来たのが男性だった。男性・脇田広巳。あおいの父・楢島明彦の大学時代の親友、震災で、妻と娘を亡くし、行方不明になっている。杉山も同じサークルで、知り合いだった。記憶をなくしているような脇田を杉山はこのマンションに連れてきた。二年前、杉山が交通事故で亡くなり、ふたりはそのまま住み続けていた。杉山が暴力団の一員だったため、オレオレ詐欺で手に入れた金をマンションの一室にプールし、溜まったら幹部が取りにきていた。
 紗英と脇田の協力を得られた巡は、彼らにどう対処するか考える。市長と暴力団の癒着、警察との関係を考え、巡は柳に連絡を取る。
 彼らがお金を取りに来た時、外からドローンでカメラ撮影する。その前に、不動産屋を間にいれて紗英から巡とあおい共同で部屋を買い取った。巡の住居でありあおいの仕事場になった。
 暴力団員は逮捕される。
 啓吾と勝也が知り合ったランちゃんは、縫製会社で働いている。話を聞くと、搾取され、住んでいるのも一部屋に六人という状態だという。巡に相談する。市役所勤務の楢嶋にも相談する。弁護士に相談することに決まったが、ランたちを働かせているのは同じ暴力団のようだ。マンションで逮捕されればこちらの様子も変わるだろう。

2024年4月17日水曜日

マイ・ディア・ポリスマン② 春は始まりのうた 

マイ・ディア・ポリスマン② 春は始まりのうた 小路幸也

 あおいと杏奈が高校を卒業した。宇田巡と大村行成は、これで堂々とデートできると喜んでいる。あおいは、お巡りさんが主人公のマンガ「コーバン!」で新人賞を受賞し、お祖母ちゃんと女の子が一緒に旅をする「お祖母ちゃんと神様」と言う短編マンガを書き上げた。漫画家になる。杏奈は東京の体育大学に進む。
 卒業式の後、巡を見張る男を見かけた。あおいは身元調べのためにポケットに手を入れ、警察手帳だと知る。杏奈は行成に相談し、あおいは、天野さくらに相談する。あおいは巡とデート中、廻りの写真を撮り、見張っている男の顔を撮る。天野さくらは、昔の知り合いの刑事だった浜本真一郎に、宇田源一郎の孫・巡に付いて知らないかと問う。浜本は野崎に尋ねる。
 宇田巡は警察学校時代に見取りで三人を検挙した。人を見れば背後に見えるらしい。警視正が刑事に引っ張った。巡は父親が本部の人間で今は警視正になっている癒着の噂がある男を見た。見なかったことに出来なかった巡は自分から交番勤務を申し出た。と噂されている。もし調べたら本部の上が吹っ飛ぶぐらいらしい。

 この頃、背の高い化け物が出ると訴えがある。あちこちで目撃され巡は調べることになった。飯島団地に住む浜本の部屋に居候している鈴木勝也と池田啓吾は、コンピューターとドローンを使う天才的な技術者だった。音がしないドローンを開発し、ドローンを使って飯島団地の人に配送サービスを考え実験していた。人を運ぶことも考え結果として人を驚かせてしまったと言う話だった。

 行成は直接巡に、交番勤務になった理由を聞く。巡を見張っている警察官がいることを話あおいの撮ったデジカメを見せる。巡と同期の柳だった。多分監察だろう。柳と話す。 
 久保警視正の暴力団との繋がり、武器や覚せい剤の密輸・売買を見逃す代わりに違法賭博の上がりを自分の口座にプールさせる。奇麗な金にし、繋がっている議員の手元に行くシステムを完全に構築している警視正の裏金は何億にもなっている。
 祖父が、あらゆる手段を使って、二十人位の組になって情報を集めた。録音、録画、金の流れの書類全部揃っている。それを巡が託された。USBはお寺の本尊のお尻の下、プリントアウトしたものは先祖の墓の中にあるという。持って行っていい。もうすぐあおいの新連載に、若いお巡りさんが過去に巻き込まれた汚職事件のことを書いている。廻りの人になにかあったらぶちまける。
 柳は、何もなかったと報告するつもりだ。
さくらさんが、柳に何もないことを議員さんに約束させてくれた。