2021年3月26日金曜日

江戸染まぬ

 江戸染まぬ 青山文平

つぎつぎ小袖 長女の疱瘡よけの呪いの小袖を縫ってもらうために親戚を廻る段になって、今まで一番世話になり助けてくれた家に行きづらい。頼って来た時に断っているから。夫のために借財をして漢籍二十巻を買った後だったから。

町になかったもの 八年前、紙問屋を作った晋平。全国を知り尽くした飛脚問屋の出店ができ町にないものは無くなった。町年寄の成瀬と一緒に訴えのため江戸に行き、江戸を見た。晋平は漢文を返り点無しで読める。晋平は紙問屋を弟に任せ、書肆を開いた。自学自習で己を変えた者たちが現れ、この町をもっと変えていく。この町にないものは無くなった。

剣士 垣谷耕造、父の代には次男坊、兄の代には弟、兄の長子・哲郎の代のは叔父として俗にいう厄介叔父。哲郎は目上の叔父として遇してくれる。自死はできない。益子慶之助と釣り場で会った。昔、藩校の龍虎と言われた二人だ。二人は果たし合いをし、相打ちになることに話が決まった。

いたづら書き お小姓頭取は藩主から目安箱に入れるよう書状を預かる。頭取は読み、焼いてしまった。幼馴染の他藩の藩主の悪行が書かれていた。どうみても藩主より見劣りがする幼馴染が奏者番の役に着いた。何度も渡される書状を度ごとに焼いた。諫言に踏みきろうとした時、幼馴染は勝手掛若年寄に進む。藩主は祝いの品を選ぶように頼んで来た。書状は無い。以後もない。「苦労であった」とお言葉をもらう。藩主は周りに心配りが出来る英明な主君のままだ。焼き捨てていたことをご存知だったのか。判らないままだ。

江戸染まぬ 武家の抱え屋敷の下男は、二十歳の隠居藩主の手のついた女中・芳を田舎に送ることになった。用人は十両持っていることを強調する。芳を殺すことを願っているのか。芳が貰ったのは五両だった。可哀想になり、下男はこの話を中番屋に売ると芳に話す。下男は芳に刺された。お殿様を笑い者にはさせない!芳の言葉だった。芳の迷惑にならないところまで行こう。

日和山 表祐筆の父が隠居し、何の考えない父は、貸本屋の書写をし、怪しい異説の流布に加担し、人心を惑わせた罪で闕所になり追放となった。養子先が決まっていた次男・も中追放となる。刀を捨て、往還で中間仕事をする。刀を持ち、用心棒をする。博徒同士の襲撃の助っ人のために日和山に行き、真っ黒な巨船を見た。

 遊びなれした二十一才の次男坊が、女中を誘う。振られた。女中の腹が膨らんで兄を疑った。父でもなく、祖父だった。次男坊は昌平黌の学問吟味を受けることにした。出遅れているため甲科を目指さず乙科及第を目指す。甲科及第した。十一年経ち、海岸防御御用掛をしている。祖父は足が動かなくなった祖母を手水に連れて行き自分の作った台を使い、祖母を抱えている。女中が祖父を選んだ訳が分かったか。

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