2016年8月30日火曜日

こはだの鮓

こはだの鮓 北原亜以子
 楽したい 上州の山陰の村の男・夏三。13才の時、江戸に出て裏通りの金物屋の入り婿になった小作人の三男が帰って来たのを見て、江戸に憧れる。23才の時、江戸に出る。塩売りをして、女に言い寄られる飛脚を見、飛脚になる。言い寄られはずが、女に手を出す飛脚はおまえかと怒鳴られ、殴られる。今は蕎麦屋の出前をしている。そして大阪に行きたいと思っている。金持ちの入り婿になる夢を見て。
 こはだの鮓 作兵衛は鮓売りの与七から売れ残ったこはだの鮓を貰った。うれしくてしょうがない。一個食べ、二個食べ、作業をしながら食べる。
 姉妹 祇王、祇女、仏御前三人がおまろに語りかける。入道のお気に入りの祇王、妹の祇女、祇王の座を奪った仏御前、誰かに座を奪われ、三人が尼になる。胸の内をおまろに話す。
 十一月の花火 椅子職人の芳次郎、妻・ふみ、息子・洋一 漫画家になりたいと言ったが椅子職人になっている。妻・ゆう子 晶子を産んだばかりだ。洋一に召集令状が来、戦地に行く。洋一は自分の命と引き換えに子供を助けてくれと祈っていた。帰れないと思うから絵を描いた手紙を送ってきた。変亥之と言われた職人のふみの父親は自分の作った硯箱が値打ちがないようにあしらわれているのを見た。大通りを渡ろうとしてトラックに跳ねられた。焼夷弾を落とされて燃えてきている。成田に疎開するという。芳次郎は反りの合わぬ時代へ足を踏み入れるような気がした。
 たき火(本所界隈1)澄の父親・弥吉は職人気質の瓦職人だった。たちんぼの義一を手伝いに使っていた。澄は義一が好きだった。中学中退だが、たちんぼだから好きだと知られたくなかった。義一の結婚が決まった。相手は反対されたが、たまたま知り合った時、たちんぼだっただけと言ったそうだ。頭を殴られたような衝撃を受けた。
 泥鰌 (本所界隈2)中学に行きたかったが、勇は家族のために奉公に出た。薮入りで帰ってみると小さな子がいた。可哀想で見ちゃ居れなかった。一年預かることになっているがもらってしまいたいという。
 ママは知らなかったのよ 団地に住む家族。息子・幹男は付属を受けると言う。構っていないと言いながら、子供の全てを知っている。気になっている母親。幹男は女学生にお金を落とした。どこどこまで歩いて行くと言い、バス代を貰っていた。女学生の内で有名になっていた。
 新撰組、流山へ 近藤勇は何故、流山で捕まったのか。

2016年8月29日月曜日

立場茶屋おりき24

立場茶屋おりき24 幸せのかたち 今井絵美子
 葉桜の頃 多摩も花売り三郎が来る。二人目の子・おりんを背負っておえんが山に入って花を取ってくる。
三婆の宴が復活する。世代が変わり、お庸と弥生と七海の息子・金一郎の嫁の久野になった。
お吉と潤三が京へ旅立った。お吉の双子の絵師になった三吉が京で筆屋の娘・琴音と祝言を挙げるので祝いに行った。
 十一 八文屋に浅蜊を売りに来た少年・十一15が倒れた。おさわは素庵のところに連れていく。
真田屋のこずえと同じ病だと知り、先が永くないことを知る。おさわは、陸郎の看病が出来なかった変わりに十一の看病をしようとする。小康状態になったので八文屋に連れ帰る。
 幸せのかたち 茶屋の女中頭・およね亡き後、おくめが女中頭的な存在になっていた。おなみはお春を注意した。おくめはおなみにそれは自分の役目だと言った。おなみはおくめが見ていないから自分が注意したのだという。おりきは二人に、二人で力を合わせて茶屋を守り立ててほしいといった。
 おなみに縁談があった。昔好きだった男だった。おかみさんが亡くなりおかみさんを忘れられないが、小さな子供のためにおなみなら来るだろうという男の考えだった。おなみはもう昔のおなみではない。立場茶屋おりきのおなみだ。行かないと言いきった。
 潤三が独り帰ってきた。おきちは京から帰りたがらなかった。
 幾千代は幾富士の所に行く。伊織が幾富士に頼りきり、幾富士も世話をするために生まれてきたような顔をしていたという。
 河鹿宿 妙国寺の住持から一人娘・里実17を預かって欲しいと頼まれる。調べてみると、先代おりきの孫娘だった。先代おりきが追い出された庄屋のおりきが産んだ息子・國哉が手を付け、手切れ金を渡し縁をきらされた娘・里江が産まれたばかりの里実を抱いて尼寺に保護されるが、里江は半年で亡くなる。亡くなる前に父親は生麦村の中庄屋白金屋の旦那だと言い残した。生まれたことを國哉は知らない。里実は恵心尼に育てられた。恵心尼は73才で、鎌倉の英勝寺に引き取られることになっていた。達吉は里実を迎えに行く。達吉は先代おりきに恋い焦がれていた、生涯の思い人。老いた達吉にこの娘を支える使命ができた。

2016年8月28日日曜日

大江戸飛脚便

大江戸飛脚便 倉阪鬼一郎 
 安政四年 
 江戸屋という飛脚問屋 芝浜松町の江戸府内を走る町飛脚だ。同じ江戸屋という定飛脚問屋もある。定飛脚の江戸屋が韋駄天の町飛脚と手を組んだ。千蔵率いる千屋が江戸屋の看板を貰った。千蔵の飛脚屋には裏の顔があった。
 江戸屋の隣は元飛脚と元娘飛脚をしていた夫婦が営む、あし屋という飯屋がある。走る者達の為の食事どころだ。
 信吉が由比宿と興津宿の間で殺され、三十両が盗まれた。敵を討とうと思い、犯人を探す。地獄耳の仁吉は町で話しを拾って来る。紅蝙蝠屋の二人の飛脚が信吉を殺していた。
蝙蝠屋の二人を駿河に誘き出し殺した。
紅蝙蝠屋は二人を殺したのは江戸屋だとして江戸屋に火付けに来た。そこに網をはり、町奉行所は捕まえた。紅蝙蝠屋は同じ飛脚問屋だが殺し屋でもあった。裏の帳簿が出た。
裏に雁坂峠の山海上人がいた。

2016年8月27日土曜日

蘭方医・宇津木新吾4

蘭方医・宇津木新吾4 別離 小杉健治
 文政十二年 1829年 一月末 長崎から戻り松村幻宗の施療院で治療をはじめて一年。血を吐いて倒れた商家の主が運び込まれた。主は紙問屋・美濃屋の翫右衛門だった。労咳で先が短いと御目見医師の永井秀法に言われていた。高野長英は胃潰瘍だという。新吾も同じだった。
 翫右衛門は殺し屋に人殺しとわかるように殺して欲しいと頼んでいた。殺し屋に依頼を止めるよう頼もうとするが、殺し屋の頼み口が殺される。殺し屋は翫右衛門を狙いに来る。阻止した新吾に殺し屋・源次は依頼人が翫右衛門だということを尋ねにくる。源次は病気になった遊女・おこまを身請けするために殺し屋になった。身請けしてからは永井秀法に高い薬代を払うために殺し屋をしていた。新吾はおこまを幻宗のところに連れていく。おこまは肺炎だった。おこまには旅に出ると言って源次は自首した。翫右衛門は秀法の往診を断わり、後添えと子供を家から出した。子供は秀法の子であり、現在も秀法と関係が続いていることを知っていたから。秀法は誤診ではなくわざと労咳だと言ったのだった。
 高野長英は密偵だと思われる間宮林蔵に見付かりそうなので江戸を離れた。秀法の誤診のことも内幕が解っていたようだし、医術のことももっと教わりたかったと新吾は思った。
 上島漠泉から貴重な本が届く。シーボルト事件に巻き込まれ、表御番医師の役目を取り上げられた。屋敷や財産の没収は無かった。漠泉は町医に鳴ると言う。香保を妻にという新吾に香保は、夫になる人間はそれなりの富と名声が備わってないと嫌なのです。と言われてしまう。義父・順庵は新しい縁談を持ってくる。表御番医師・吉野良範の娘・園だった。そして香保の桂川甫賢の弟との縁談が復活したという。香保は父親の復権のために桂川家と姻戚関係になる。元の屋敷は桂川家が買い取り桂川家が預かっているだけだと言われる。香保への思いが増すばかりだ。園に会う。良範の家は漠泉の家より小振りであるが、別荘があるらしい。良範は幻宗のお金に興味があるようだ。間宮林蔵に漠泉の家を訪ねてみよと言われ、元の屋敷へ行くと、酒問屋が改築をしていた。芝の家を訪ねるとこちらには誰も来なかったと言われた。漠泉と香保はどこへ行ったのか。

2016年8月26日金曜日

八丁堀剣客同心19

八丁堀剣客同心19 みみずく小僧 鳥羽亮
 押し込みが続いた。内蔵の錠前を破られ、四人で有り金ごっそり盗んで行く。見た丁稚がみみずくのような顔だったという。
 五、六年前、錠前を破って金を盗むみみずく小僧がいた。大店を狙い、千両在っても百両か二百両しか盗まない独り働きの盗っ人だった。三年前、奉公人に発見され怪我を負わせてから、盗みに入っていない。足を洗ったと思われていた。
長月隼人 南町奉行所隠密廻り同心 妻・たえ、息子・菊太郎数え5
天野玄次郎 南町奉行所定町廻り同心
矢口利三郎 北町奉行所定町廻り同心
松坂屋は二人が殺された。一味に手だれがいる。隼人は南町奉行・筒井紀伊守政憲から探索に加わるよう言われる。斬り口から飛燕斬りを使う、増川浅右衛門が浮かぶ。増川を調べ、仲間を割り出す。増川を調べている時、増川等に襲われる。石を投げて助けてくれたのはみみずく小僧だった。次々に四人の塒を突き止める。みみずく小僧が隼人に近付き、百助はもぐりの政と呼ばれる独り働きの盗っ人だという。もぐり込んで身を隠す。店が開いている時にもぐり込み、夜になって仲間を引き入れる。と話し、離れて行った。
 順々に捕まえて行く。増川は隼人が闘い、飛燕斬りを破り倒した。どうしてみみずく小僧を真似たか、同じ盗賊なのに、みみずく小僧が世間でもてはやされ、上手く足を洗って堅気の顔をして暮らしているのが気に入らなかった。

2016年8月25日木曜日

喜連川の風

喜連川の風 江戸出府 稲葉稔
 天保七年 1836年 秋
喜連川家十代藩主・喜連川左馬頭熙氏25才は名君の誉れ高い。
喜連川藩は五千石、領内の村は十六村。喜連川家は清和源氏の流れを汲む足利将軍家を祖としているから、家格は十万石、参勤交代の義務が無い。城普請、街道の整備、川普請等の賦役も免除されている。
 全国的な飢饉のため熙氏は、備蓄米を貧しい者たちに配り、金蔵は空っぽになった。下級武士の不満が爆発しそうだ。天野一角は下級武士の話を聞き回ろうとした時、江戸へ密書を届ける命を受ける。
 天野一角 上士ではないが八石取りの下士のなかでは中居格 四年前26才の妻を亡くす。息子・清助6才と 七石の同心・松本唯之助26才と徳助の三人で江戸へ行く。
 江戸定府は留守居役・森本作右衛門、添役・山川丹兵衛、右筆・柿沼大四郎 石橋英太郎の四人だった。密書の内容は肥後熊本藩細川家から一万両借りることだった。みんなで顔繋ぎに細川家に行く。
 石橋の案内で上野に行き、殺人事件に巻き込まれる。石橋が犯人の疑いを掛けられる。一角と唯之助と徳助は町中を歩き回り犯人を探す。一角は森本より細川藩の内情を探る命を受ける。唯之助と徳助は町方役人に協力し犯人を挙げる。一角は細川藩の留守居役の側衆・橋谷勘兵衛に近付き、藩の内情を聞こうとする。
 細川藩と宇土藩のもめ事が起こる。宇土藩の藩士が細川藩の藩士・古賀を斬った。二人は捕まったが仲間三人は逃げた。細川藩の藩士四人が宇土藩の三人を見付けて斬ろうとしていた。一角と唯之助は橋谷に知らせ、逃げている三人と狙っている二人を取り押さえる。宇土藩邸を見張っていた二人も取り押さえられる。細川藩と宇土藩で話がついていたことを四人のために大事になるところだった。
 留守居役・森本はこのことを公にしないために一万両を借用したいと話を持って行くつもりだったが、一角は恐喝まがいの借金は辞め、喜連川藩を担保にただ借金を申し込むのが良いという。一角は牢に入れられる。
 一万両借りたいことを初めて細川家に伝える。
 御所様(喜連川藩の殿様)は手紙で留守居役でまとまらなければ熙氏自らお願いに上がると言うことを伝えてきた。森本は細川藩に伝える。一万両を借りる事が出来た。
一角と唯之助と徳助は森本の手紙を預かり喜連川に帰る。

2016年8月24日水曜日

からくさ図書館来客簿(第二集)

からくさ図書館来客簿(第二集) 冥官・篁と陽春の道なしたち 仲町六絵
 リボンと人力車 「人力車 いだてん屋」の車夫・宇井隼人は 観光案内のため図書館を訪れた。明治の女学生の格好の幽霊が現れ、車夫を辞めよと言う。相談に図書館を訪れる。隼人が作った偽書は「今様都名所図絵」幽霊は対馬藩京都藩邸に務め、御一新後は京都勧業場に務めた人の娘・毬だった。父を恨む者が人力車に乗っている毬を襲い、毬を守ろうとした車夫・杉野24才と共に殺された。杉野は古傷が痛むのを我慢して走っていたので、現世に留まり身体を壊している車夫を見付けると辞めるよう声をかけるようになっていた。夜の哲学の道を隼人は毬を乗せ走る。毬は天道へ行く。隼人の記憶には篁の親戚の子が病気療養に行く前に人力車に乗りたかったというように置き換えられた。隼人は手術を受け、リハビリに励むことにした。
 小猿の宝物 安倍晴明が子供の姿をした式神に荷物を持たせて図書館にやってくる。安倍晴明の生まれは921年、篁は802年。冥官としての経験年数は篁のほうが百数十年多い。にもかかわらず晴明は閻魔庁第三位、篁は十八位と地位は逆転している。上官は閻魔庁にいるのが普通なのだ。古書を持ってくる。閉架式にすることにする。時子に次ぎの術を考えるように言う。
 臭覚を失った香木店の娘・曜子に織田信長のお小姓・本多藍丸が付いているのを見付ける。秀吉よりも顔がかわいらしいので小猿と綽名を付けられた。図書館で開香の会をする名目で曜子を図書館に呼ぶ。曜子の偽書は「名香六十一種名寄せ文字鎖」藍丸は信長公の女と蘭奢待を守れと言う命で本能寺から逃げた。蘭奢待を瓶に入れ井戸に投げ入れそれがために天道に行けないでいた。式神が見付けてきた。図書館で蘭奢待を聞く。準備中に曜子の口から臭覚を失った理由を聞く。曜子は蘭奢待を聞くことが出来た。記憶はなくなった。
蘭奢待は香が好きで地蔵盆には近所の子供に香を聞かしているお寺の住職にあげた。藍丸は天道に行く。
 篁は師であったが時子に癒されていたことを認識する。
 瑞垣 時子を天道へ導いき、篁を冥官に推薦した茜・閻魔庁第十四位が西陣に縄張りをし、現世赴任になった。六花と言うかんざし屋を開いた。茜は篁を「過保護な母親みたいな男」と評する。時子は黒方を聞き、小さい時を思い出す。賀茂の大神からの伝言。
 花生けに芸術的なセンスを持つ花梨は時々幽霊を見る。花梨に道なしが付いていることを知った茜は図書館に行くように仕向ける。舞妓・梅ふゆの幽霊が花梨に竹の花入れを壊して欲しいという。花梨の作った偽書は「崑崙草こんろんそう」だった。梅ふゆは記憶を無くしていた。時子は梅ふゆに触れと途端、掌に「瑞垣」の文字が現れた。花入れは瑞垣という名で、梅ふゆの不注意で傷つけたものだった。瑞垣に花を入れ、梅ふゆは必ず花を生けた姿でかざるのならこの世に残ってもいいと天道に行った。花梨は記憶を消す時、幽霊を見る力も消して欲しいという。花梨の花を活ける天賦の才と繋がっていた。花梨は花をきれいだと思う心だけ残された。
 鳥めずる若君 五月三日、下鴨神社で流鏑馬神事が行なわれる。
 鳥類研究所の蜂須賀は、ユリカモメの群れと旅をしているという鳥部と子供の会話を聞く。平安時代からの鳥の動きを話す。蜂須賀が図書館へ行く。偽書は「京都鳥類図譜」時子の掌に「じょんぐうるど」の文字が現れる。蜂須賀は道なしの鳥部からユリカモメ等鳥類の生態を聞く。鳥部は鳥達の姿を書き残したいと言う。鳥部に閻魔庁の冥官の監視つきで図鑑を編む場所と道具を与えられた。鳥部と話していた子供は一言主様。斎院時代に見た一言主の真似をして、時子は術を得た。
 記憶を消された蜂須賀だが、鳥部が書いた一冊目「伴鳥記 一」を図書館で読む。
 安倍晴明の母は狐ではなく賀茂氏だった。
 

2016年8月23日火曜日

風烈廻り与力・青柳剣一郎21

風烈廻り与力・青柳剣一郎21 秋雷 小杉健治
 剣一郎は、19才で亡くなった兄が年を取ったような雲水姿で現れた幻覚のようなものを見、墓参りに行った帰り、一緒にいると心が安らぐ女・くみに会った。自分のことを青痣与力と知っているのか知らないのか判らないが、雨太郎と呼び、何も聞かない。
 盆の窪を畳針のような物で差され殺された遺体が見付かるが、身元が判らない。名乗っていた名前も住まいも出鱈目だった。人ごみの中で殺された男も身元が判らない。また、盆の窪を刺された遺体が見付かる。火盗改めの密偵・虎吉により霞の陣五郎の手下だと判る。虎吉が陣五郎の手下・出雲の佐吉に殺される。植村京之進、只野平四郎等は殺された場所、通り道などから陣五郎の隠れ家を探す。
 くみの家に度々訪れる。くみは弟・正助を探している。五年前、小田原で錺職人をしていた正助は江戸の小間物屋に誘われ江戸に出た。一年半後に五両、半年後に五両送ってきた。その後、音信不通になっている。くみは妾をしている旦那に三ヶ月の猶予をもらって江戸に来たと話す。
 正助は陣五郎一味になっていた。錠前を開ける腕があった。初めての仕事は手間取り起きてきた手代を一人殺した。二度目の仕事は簡単に錠前を開けたが犬が啼き、皆殺しにした。馴染めない正助は逃げたため、処刑された。止めを刺すはずの幹太が、止めを刺さず、括った縄にも切れ目を入れていた。川に棄てられたが助かった。自分の人生を狂わせた陣五郎一味に復讐していた。次の押し込み先と日付を書いて火盗改に密告した。
 青柳たちも調べだし、捕り方を配置する。火盗改は忍び込んだ一味を殺して行く。青柳は逃げた佐吉を追う。川辺の船で陣五郎は殺されていた。佐吉は青柳たちに捕まる。追ってきた火盗改に、捕らえて吟味します。殺してしまっては事件の真相を明らかに出来ないという。正助は文七に連れられ、姉・くみに会いに行く。くみは旦那を殺していた。匿ってくれた料理屋のおかみさんに三ヶ月の猶予をもらっていた。小田原に帰り裁きを受ける。
正助は翌日奉行所に出頭した。佐吉も隠れ家、金の隠し場所を自白した。







 剣之助と志乃の祝言を挙げようと思うが、脇田清十郎が妻女を離縁した。るいと志乃は仲がいい。本当の姉妹のようだ。るいにも縁談があるがるいは断わる。

2016年8月22日月曜日

からくさ図書館来客簿

からくさ図書館来客簿 冥官・小野篁と優しい道なしたち 仲町六絵
小野篁は京都でからくさ図書館の館長をしながら、天道に行かず現世に残っている道なしを天道に送る冥官の仕事をしている。五十二才で死亡したが、現代二十七、八の姿をしている。配流先隠岐のことを書いた「隠岐自然抄」
滋野時子は内親王・二代目斎院だ。(伊勢神宮に仕える未婚の皇女を斎王と言い、賀茂の斎王を斎院という。)二才で任じられ四才で終わった。十八歳で死亡し、千二百年天道で暮らし、三ヶ月前から篁の助手をして図書館で働く。篁は時子の祖父・滋野貞主の臣下で、時子の師であった。
 桜守 樹木医になったばかりの恵理子は十年、小滝村の「二つ龍」の名を持つ桜を護ってきた。もう限界と思うが村人から残して欲しいと言われている。図書館で篁に言われ取り上げた本は恵理子の取り巻く全てが記された本、偽書が出来上がる。「日本の巨木 第一巻 桜」桜の木を四百年守ってきた鎧武者 森島盛兵衛を納得させ天道へ送る。盛兵衛はもう二つ龍を休ませてやって欲しいという。二つ龍の枝を接ぎ木することにした。三月まで守って欲しい。篁は盛兵衛を天道に送るのを三月まで待つことにした。
恵理子の記憶を消す。
 うまし国 道なしの焦げた匂いのする小森を追って行くと、公園で鳩を捕まえようとした。上官の安倍晴明の名を出し話を聞く。小森は何者かに身体を乗っ取られ高い食材を買い集めたり野生動物を捕食しようとしてしまうという。小森の魂が作った偽書は「伊勢 四季の味覚」小森の全てが現れる。道なしは十二年前に上七軒のレストランで八十九才で亡くなった食道楽の老人だった。顔は牡鹿になっていた。繊維業界西の重鎮 望月響太郎だった。篁は施餓鬼会をし、小森は十二年匂いだけで何も食べていない望月に牡蛎料理を作る。図書館は篁の作った縄張りなので中では食べられる。望月は小森の苦手な野菜と果物の料理の上手い店をスマートフォンに入力する。望月は天道に送られ、小森はレシピ以外の記憶を消された。
 葵祭 小さな神社の巫女のアルバイトの研修に行き、十二単の姫様に声を掛けられた沙耶は図書館に来た。沙耶の祖母が五十年前に葵祭の斎王代を務めた。篁は束帯姿で沙耶の相手をする。沙耶の本は「葵祭」。沙耶の祖母・が代わりに務めた斎王をするはずだった人。七日前に亡くなったが、斎王に未練があり斎王代姿でさまよっていて、縁切り寺の毒気のために動けなくなっていた。聡子という。篁が敷き石の毒気は消した。時子の斎院時代を再現し、時子の話をする。時子の冠を貰い、行列を再現する。聡子は葵桂の冠を頂き天道へ行く。沙耶は記憶を消され、葵の葉をお守りに貰う。
 時子は初めて術が使えるようになった。双葉葵の葉をいろんなものに変えることができる。
 迎え鐘 白石良純・建築学を修めたいけれど家が寺のために僧にならなければならない。京大のインド哲学科に通う。良純が父親に幽霊が現れる茶碗を託される。調べるために図書館に来る。茶碗は流れ潅頂に使う柄杓だとわかる。妊ったまま亡くなった女性の供養するものだった。良純が現した偽書は「鷹ヶ峰の匠」だった。おくみの父が行なっていた千日の流れ潅頂は父親が亡くなったため、あと十三日を残して途絶えていた。百何十年も器に縛りつけられていた。良純が残りの十三日をすることになった。良純が六道沈皇寺の鐘を搗き、おくみは天道へ行った。良純のおくみの流れ潅頂の記憶は残された。
 良純は四年後、建築学科に入り大学院二年が終わってから僧堂に行ってもいいかと父親に話す。寺の駐車場と離れの土地に納骨堂と茶室を作ろうと提案する。
 
時子は貞主が建立していた慈恩寺に葬られた。埋葬から四日後、篁が慈恩寺で経をあげていると時子が現れる。時子に手向けた歌を詠む。 泣く涙 雨と降らなむ 渡り川 水まさりなば 帰りくるがに 道なしになりそうな時子が篁に願う。斎院だった時子を寺に葬ったからじじ様は罰を受けるかもしれない。じじ様を守って。二百年前に飛鳥にいた茜が時子を迎えに来る。ここで篁の記憶を消すはずの茜が、冥官の素質がありそうだからと言い記憶を残した。閻魔庁に冥府の官吏として推薦された。篁は現世に生きながら冥官となった。

2016年8月21日日曜日

出世侍〈三〉

出世侍〈三〉 昨日の敵は今日も敵 千野隆司
 川端藤吉は家禄八百石の旗本永穗忠左衛門の屋敷を出、若殿・忠太郎と姉・松姫、若党、中間に見送られ、千手弓頭・家禄二千二百石の旗本小出長門守直孝の家臣になった。三俵一人扶持から五俵二人扶持になり、二刀を差し、弓を持っている。
 殿様・小出直孝42才 奥方・房39才、嫡男・直義17才、次男直正15才。
 用人・杉野 補佐役・堀越、中小姓・都築大三郎、藤吉は中小姓だ。藤吉を含めて七名。若党は五名。中間は八名。顔を合わす全てが冷淡だった。三頭の馬のうち、マツヒコの世話を命じられる。直義がマツヒコに乗る日、馬に猫いらずを盛られた。
 丸岡藩の殿様の返書をもらって帰る途中、揉めているお婆さんを助け、返書を掏摸取られる。婆さんから破落戸、浪人、深編み笠の侍と書状が渡る寸前、藤吉は返書を取り返した。あの侍は都築だと思った。
 小笠原の千寿姫から 達者であれば重畳 と菓子と手紙が届く。
 流鏑馬の試合に出る人選のための試射の前に弓を隠される。忠太郎と伝吉が探してくれる。六番だった。
 都築が世話をしている馬のヤヨイに異常がでた。世話を押し付けている弥吉の所為にする。馬の事を知らない弥吉に代わり、藤吉が医者が来るまでの一晩ヤヨイの足を冷やす。
中間の言で門番が食事を運んでくれた。医者がきて適切な処置を褒めて帰る。
 増上寺への将軍参詣の日、藤吉は境内の警固を命じられるが、使いに出た先で三人の侍の付け火を見付ける。三人に傷を負わせ、火を消すが境内には入れなかった。堀越から警固に加わらなかったことを攻められ、役を解かれ、蟄居になった。町奉行所与力・平田一之進が奉行からの書状を届けに来た。杓子定規な働きではならぬ、状況に応じた働きが良ということで、明日から奉公に励めということになった。与力の手伝いで三人を見付けた。旗本に次男、三男だった。
 藤吉は直正の共をして遠出の命が出た。隣村の妹に会いに行くと妹は村を離れて行方不明だった。都築が落馬し、怪我をした。流鏑馬合戦出場のため藤吉は呼び戻される。雨が降り利根川を渡れない。急いでいる次吉と協力する。堀越に妨害されるがどうにか間に合う。流鏑馬当日四本を居抜き、五人で十九本で一位になった。家斉公からお褒めの言葉を貰った。藤吉は十俵二人扶持になった。

2016年8月18日木曜日

帳尻屋仕置【三】

帳尻屋仕置【三】 鈍刀 坂岡真
 忠兵衛が仲間にしようと見込んだ荒岩は殺された。
 自分の子をお役に就けるために、下役を罠に嵌める上役・柚木新兵衛の帳尻を合わせた。

2016年8月17日水曜日

日雇い浪人生活録(一) 

日雇い浪人生活録(一) 金の価値 上田秀人
 御側御用取次・田沼主殿頭意次は、大御所・吉宗から遺言として幕制の中心を米から金に変えるよう言われ、御庭番・明楽飛騨を付けられる。
 浪人・諫山左馬介は日雇いで、夜逃げした商家の後片づけをしていて、帳面を見付けた。その帳面のおかげで、雇い主・両替屋・分銅屋仁左衛門と左馬介は意次の協力をしなければならなくなった。

2016年8月16日火曜日

赤毛侍幻九郎

赤毛侍幻九郎 沖田正午
北町奉行・宗岡安芸守景勝の私邸に宗岡景九郎が長崎から訪ねてくる。景勝が長崎奉行であった時、阿蘭陀商館の娘との間に出来た子供だが、景勝は正式には認めない。
赤尾幻九郎と名乗り、奉行所の悪党退治の手助けをすることになった。
 何も摑めていない盗賊一味「桃猫」を捕まえるために、酒田柿右衛門の大皿を皿回しに使い、おびき出す。御頭は大倉屋の下男・作造だった。柿右衛門の大皿はもともと作造が持ち込んだものだった。

2016年8月15日月曜日

金メダル男

金メダル男 内村光良
 東京オリンピックの年に生まれ、いつでも何でも一等賞をめざした秋田泉一の話し

2016年8月14日日曜日

口入屋用心棒34

口入屋用心棒34 痴れ者の果 鈴木英治

2016年8月13日土曜日

ちくま日本文学全集17 泉鏡花

ちくま日本文学全集17 泉鏡花
 天守物語

2016年8月12日金曜日

石の猿

石の猿 ジェフリー・ディーヴァー 訳・池田真紀子
 密入国斡旋業者・蛇頭・ゴーストを拿捕するために、連邦捜査機関と警察の合同捜査班は船の居場所を突き止め追っていた。ゴーストは船を爆破させ船を沈めた。密航者を船倉に閉じ込めすべてを殺すつもりだったが、十二名が助かった。
 チャン一家とウー一家、ソニー・リーとジョン・ソンと若夫婦が救命ボートで岸まで来た。別の救命ボートに乗ったゴーストが皆を殺すために追いかける。岸近くでソニー・リーとジョン・ソンと若夫婦はボートから投げだされる。
 チャン一家とウー一家はチャイナタウンまで行き、住まいを見付ける。ソニー・リーは保護され、中国の警官だと名乗り、リンカーン・ライムの仲間に入る。若夫婦はゴーストに殺された。漢方医ジョン・ソンはゴーストに殺され、車のトランクに入れられ放置され、ゴーストはジョン・ソンを名乗り、サックスに助けられ保護され、漢方医としてアメリア・サックスに近づく。ゴーストは必要にふたつの家族を殺すために追いかける。ソニー・リーは自分の着眼点からゴーストに近づき、ジョン・ソンに成りすましていることに気付くが、殺されてしまう。
 ソニー・リーの殺害現場の証拠からゴーストの成りすましが判り、逮捕される。
 サム・チャンとウー・チーチャンは亡命が認められる。一人助かっていた赤ちゃん・ポーイーはウー家の養子になった。沈んだ船体の中から船長が助け出された。
 ゴーストは中国政府から反体制活動家を船に乗せ洋上で船を爆破させすべての者を殺すことを頼まれていた。逮捕後、中国へ帰そうとする国務省のウェブリー相手に、アメリカで裁判を受けさせるか、大量殺人犯を政治、および経済的な理由から釈放したという事実を公表することになるか、どちらいいか突きつけられ、中国へ帰すことはなくなった。

2016年8月11日木曜日

万願堂黄表紙事件帖〈二〉

万願堂黄表紙事件帖〈二〉 品川女郎謎噺 稲葉稔
 青空虚無斎こと久平次は、四ヶ月掛かって書いた作品を突き返された。
 品川女郎に聞いた噺を元に、作品を書いた。
 
嵐に巻き込まれ、陸の孤島となった梅沢の立場茶屋での話。
三軒の茶屋の一軒・蔓屋で客の旅人と店の主夫婦が殺されていた。二件目の茶屋・杉之屋の主・利兵衛が政七に突かれた拍子に倒れ、頭を打って亡くなった。蔓屋が壊れ、水に浸かりそうなので、遺体を杉之屋に移す。途中、利兵衛の首が斬られる。
釜口屋にみんなが集まる。釜口屋の主・民蔵と娘・ひろ、浪人・鬼頭要之助、沼津藩藩士・奥平公三郎と下役・坪井辰蔵、小田原の旅籠の奉公人・藤、反物の行商人・竹市、旅の座頭・伊佐次、旅の女・道、流れ博徒・吉左と子分・政七。誰が、三人を殺したのか。この中にいるのか。利兵衛の首を斬ったのは誰か。
 殺されていた旅人は、吉左の兄弟分だった。犯人は政七だった。

2016年8月10日水曜日

御広敷用人大奥記録(十)

御広敷用人大奥記録(十) 情愛の奸 上田秀人
 水城総四郎は京からの帰り、吉宗の命で名古屋に寄る。前藩主・吉通の変死という秘事に触れ、尾張徳川の家老・成瀬隼人正に命を狙われるようになる。
 藤川義右衛門に命を狙われている総四郎は、御広敷伊賀者・山崎伊織の伝手で伊賀の郷忍・松葉と鬼次郎を警固として雇い。江戸に帰り着く。
 富士川義右衛門は伊賀の郷忍を使い、江戸の闇を仕切る者になろうとする。
 天英院は正月から席次が下がることを伝えられ、吉宗の息子・長福丸の毒殺を考え、毒を入手する。

2016年8月9日火曜日

浮世絵宗次日月抄8

浮世絵宗次日月抄8 汝薫るが如し 門田泰明
 大番頭旗本七千石西条山城守貞頼の娘・美雪は征夷大将軍正二位右大臣徳川家綱の命を受け、刀、朱印状、目録等を大和大神神社に持って来た。
大神神社は十五年前、家綱の命で幕府からの寄付で大神神社の拝殿を造営し、家綱23、柳生飛騨守宗冬51、西条山城守は完成を見に極秘で大和を訪れていた。
 美雪の亡き母・雪代の実家は大和の曾雅家だった。大和の蘇我本宗家の子孫と思われている曾雅家だった。
 曾雅家を般若の面を付けた曲者が襲う。古代王朝より掠め取った六千万両相当の財宝を、我らの手に戻すか、滅びるかと言う。たまたま離れに滞在した宗次が護る。宗次は百了禅師を訪ねて大和に来ていた。百了禅師は宗次の養父・梁伊対馬守隆房の兄だった。が、当主・和右衛門が拉致されていた。御祖母様・多鶴は娘・小梅と孫・美雪を連れ、汝 薫るが如しの石碑の前で、和右衛門は小梅が四才の時に亡くなっていることを告げる。和右衛門の病が重くなった頃、「うりふたつ殿」を連れてきて亡くなってから病が治ったように見せかけていた。
 古代蘇我本宗家は大王の許しを得た上で、『臣姓近衛』軍の長官・飛鳥氏に曾雅の称号を授与された。という古文書が見付かった。『六千万両面観世音菩薩』(むちよろずりょうめんかんぜおんぼさつ)立像を曾雅に下された。とあった。
般若の曲者も聞いていた、和右衛門を返した。
 何者か分からないまま般若の黒面の頭は宗次に倒された。白面の般若たちは舌を噛んでみんな自死した。
延宝二年、今から六年前、飛鳥氏を長官とする臣姓近衛という組織が古代蘇我本宗家の指揮下に存在し、大和柳生は最右翼戦闘集団だと位置付けられ、長官飛鳥氏(曾雅)に永世にわたり忠誠を誓うべしと勅命ば申し渡された古文書が見付かった。宗春は病で亡くなったことにして曾雅氏の元に来ていた。宗春は美雪を嫁に欲しいと多鶴に言う。美雪が宗次を好いている事を知っている多鶴は宗春が亡くなったことになっていることで断わるが、それでも頼む宗春に美雪に好いている者がいることを言ってしまう。
 多鶴は大急ぎで宗次に美雪を託し祭念寺で落ち合うように手筈をして江戸に帰らせることにした。祭念寺で宗次と宗春は対決する。宗次は宗春を知らない。宗春は宗次憎しだったが、首に峰打ちを受倒れた。宗次は美雪と会い江戸へ旅立つ

残り雪 華こぶし 寛文四年 1664年 大和大神神社
家綱と西条貞頼と柳生宗冬のお忍び旅

2016年8月8日月曜日

風烈廻り与力・青柳剣一郎27

風烈廻り与力・青柳剣一郎27 花さがし 小杉健治
 妻恋坂で酒樽を積んだ大八車が荷崩れを起こし、酒樽が転げ落ちる。男が酒樽に身を呈し、方向を変え清水屋の娘と女中を助けた。男は自分のことが思い出せず、清水屋の離れに世話になる。青柳剣一郎は直前に藤棚を眺めていたのを見ていたため「ふじ吉」と仮名をつける。ふじ吉を見知った者が現れない。ふじ吉は自分は悪い事をしていたのではないかと怖れる。遊び人風体の者が、伊太郎と呼び、清水屋の娘の危害を加えることを示唆し、連れていく。伊太郎は一ヶ月前に江戸に来たところだった。
 鉄砲方同心の家に賊が押し入り、同心・糸川松十郎を斬り、鉄砲三挺を奪った。剣一郎は糸川を斬ることが目的だったように思えた。鉄砲で第二の火盗改方の当分加役に返り咲きを狙う、横瀬籐之進を狙うと思われた。
 一年程鳴りを潜めていた岩鉄一味が立て続けに押し込みを働いた。火を付どさくさに紛れて千両箱を奪う。
 御先手組頭・戸上主膳が第三の火盗改を狙っているらしい。
 ふじ吉が料亭「とよかわ」で横瀬籐之進を鉄砲で狙うと剣一郎に繋ぎをとる。剣一郎は横瀬に胸に鉄板を仕込み囮になるように頼む。とよかわで戸上主膳と合うらしい。戸上主膳は火盗改になるのに邪魔な横瀬を殺そうと考えた。
 剣一郎は横瀬を襲った後岩鉄一味を捕まえようとしたが、横瀬が自分で駕籠に乗るところを目撃され、戸上の配下・河本平吉が岩鉄一味を襲う。剣一郎はふじ吉を助け出す。
 すべて河本平吉がやったこととされ、戸上は監督不行き届きということで、隠居になった。岩鉄一味が考えたことだった。岩鉄一味が暴れ、横瀬を殺し、戸上が火盗改に付き、岩鉄一味を壊滅させる。おかしらの岩鉄は偽者を使い、岩鉄は隠居しようと思っていた。
 ふじ吉こと伊太郎は 近江の国友村出身で鉄砲鍛冶屋の集落に生まれ、鉄砲撃ちの名人だった。代官所からの呼び出しで何度も凶悪犯を狙撃していた。人を撃つことに心が痛み村を出た。小田原でせきとはつ母娘に会い一緒に暮らしていたが、岩鉄の子分に脅迫され江戸に連れてこられていた。清水屋が母娘を江戸に呼んだ。
 

2016年8月7日日曜日

風烈廻り与力・青柳剣一郎25

風烈廻り与力・青柳剣一郎25 黒猿(くろましら) 小杉健治
 古着屋「益田屋」の五十両を盗んだとして下男・伝助が捕まった。青柳剣一郎と出会った伝助は何か言いたそうだった。その日の取り調べ前に益田屋の主・幸兵衛が五十両を盗まれたのは間違いだったと言い、伝助は解き放ちになった。剣之介は伝助が解き放ちになって良かったと言うが、剣一郎はでは幸兵衛が何かの罪を償わないといけないと言う。伝助が盗んだとみんなに思われたままだと言う。伝助は益田屋に帰らなかった。
 その夜、益田屋の一帯が火事になり益田屋も焼けた。付け火だった。伝助が犯人だと思われたが、伝助の行方は分からなかった。
 隣の旗本の用人が亡くなっていた。目つきの悪い三人組がいた。三人組の一人は殺された。旗本・西田家は三年前に下役の横領が発覚し、監督責任を問われ役を解かれ小普請入りした。三人組が火を付けどさくさに西田家に忍び込んだと考えた。
 第二の仮の盗賊改めが出来た。剣一郎が伝助を探している時、伝助が犯人だと考え、伝助が牢で一緒だった玉吉を捕らえ、拷問する。伝助が火付けをすると言っていたとの弁を引き出す。玉吉は釈放されるが精神を病んでいた。剣一郎が三人組や西田家を調べていることを知ると、西田家で殺された用人の墓を暴き、傷口を調べる。自死ではなかった。第二の火盗改・横瀬籐之進は西田の下役・田丸寿太郎の母親も調べていた。母親は息子を信じていた。
 焼け跡の西田家から運び出されたと思われたのは、黒猿の助五郎の遺体だった。半年前に助五郎一味は押し込みをした。手配は早かったが逃げられた。二日後の密告で隠れ家に踏み込んだが助五郎はいなかった。二千両も無かった。
 助五郎一味は盗んだ金を持って西田主水の屋敷に隠れた。一味は夜が明けて隠れ家に帰った。二千両と助五郎が残り、西田主水は助五郎を殺し、二千両を奪った。助五郎の元一味・扇蔵が知り合いの三人を使って、二千両を奪う事と助五郎の遺体を運び出すだろうと狙いを付けて西田の屋敷に火を付けた。三人のうち一人が斬られ助け出している時、伝助と会い伝助が助けて家に帰り、伝助は看病をしていた。死んだあと、二人を捕まえた。西田主水は捕まる前に、三年前の勘定奉行や商家を含む悪事の計画を遺書に残し、切腹した。田丸寿太郎は上司の不正計画を知った。不正があったように書類を改ざんし自分を密告し、計画の実行を阻止したのだった。
 幸兵衛は息子が五十両を取ったことを知り、自分の間違いだったと奉行所に申し出たのだった。伝助は帰らない。剣一郎は伝助は知っている。信用出来ない店には帰らないだろうと言う。幸兵衛は店の者に本当のことを話し、息子と共に伝助に誤る。伝助はまた、下男として働く。

2016年8月6日土曜日

霧こそ闇の

霧こそ闇の 仲町六絵
 典医の女房 天文二年 1533年 戦国時代の大和。筒井の里に住む狭霧には、病をもたらす物の怪を退治する不思議な力が備わっていた。大名に仕える典医である夫・義伯と支え合いながら病人を助けていた。
 主君・筒井順興の末子・力丸の死を境に二人の息子・鷲王は物の怪に取り憑かれる。行者により物の怪は取り払われ、鷲王は元気になる。狭霧は自分が春日大明神の使いの狐だということを知る。一緒に来いという行者を殺す。
 牢籠の蟲 義伯28才、鷲王2才 筒井家に酒損の患者が現れる。狭霧には蟲が見える。酒瓶を据え、時間稼ぎをし、筒井順興に会う。蟲は酒損で亡くなった順興のちち・順尊の顔をしていた。順興の祖父の代で大和を追われ、順尊は不遇のうちに亡くなった。その時代に筒井を裏切り大和復帰を妨害し、筒井の被官を暗殺した小島家の縁者への復讐だった。酒損になったのは小島家縁者だった。順興は小島家の者を処刑する。順興は義伯と狭霧に筒井には加持祈祷と呪詛の力がある事を話す。順興は狭霧にはもっと強い力があることを気付いていた。狭霧に力を貸すよう言う。
 雨悦の刺客 法隆寺で雨悦が行なわれる、順興は出席する。僧兵や別当が石を飲まされ傀儡のようになって襲ってくる。別当を殺す訳にもいかず、腹を叩き石を吐き出させる。石を飲ませたのは越智家の当主の伯父・高取城主越智弘光だった。外国の神の呪詛を使った。順興の正室は越智家の娘だった。病に悩まされていたが、狭霧が小鳥を殺し、呪符を見付けた。
 狭霧は殺した行者の亡魂のため義伯に狐の姿を見られてしまう。狭霧は義伯の下を去る。
 初瀬が原の決闘 筒井家と越智家が戦うことになる。狭霧は義伯と鷲王が幸せに暮らせるよう順興の下で戦いに参加する。筒井家が有利に戦っていたが、越智家の後ろから攻めるるための伏兵が石を飲まされ筒井側に襲ってきた。順興死す。狭霧は川の中を草に隠れながら弘光陣に近づき火を狙い、異国の神の絵姿を燃やす。狐姿の狭霧も燃えながら陣を焼き尽くす。順興の息子・藤松は11才、義伯は、順興の死を隠した。狭霧は春日山の御蓋山で穴を掘り焼けた毛皮をうずめた。深い眠に落ちた。
 道聞き 狭霧は未だ治りきっていない身体を起こした。人になっていた。現れたのは義伯に似た鷲王だった。病気の父の世話をお願いしたいという鷲王について行く。二十五年経っていた。順興の死を二年隠し、若様が継いでしばらくで典医をやめていた。
 義伯は狐でも人でもかまわなかったのに、と言う。命の螢がとんでいる義伯の体内の光を飲み込み、狭霧は春日山でやけどを治すために穴を掘って眠った。
 力丸を転生し生まれたのは織田信長だった。織田信長は興福寺と春日大社のある南都を焼きはしなかった。

2016年8月5日金曜日

仇討ち東海道〈三〉

仇討ち東海道〈三〉 降り出し三島宿 小杉健治
 矢萩夏之介と小弥太は、三島にお万という美しい瞽女がいる事を知り、絶対に新谷軍兵衛がいると思う。調べるが軍兵衛の姿は見付からない。
 調べる途中で公儀御用の役人がおかしいと思う。身元の分からない二人の遺体が見付かり、夏之介は三島の代官所手代・正村信次郎に殺されているのが本当の公儀役人だと教える。偽役人は捕まるが共の者・半蔵は逃げた。
 天城屋に泊まっていた伊藤のお大尽・利兵衛が殺された。伊藤には利兵衛に該当するお大尽は存在しなかった。
 盗賊山猫兄妹の兄・雁助が捕まった。凶暴な弟・雁次郎が逃げている。代官所は雁次郎が兄の処刑時に現れると網を張っていた。夏之介は天城屋に泊まっている三島大社にお参り一行・庄兵衛達が雁次郎の仲間だろうと役人に言う。が見張りも付けられていないようだ。
 半蔵が夏之介の前に現れる。自分が道中役人を殺した、相方は半蔵の言う通りにしただけだと代官所の役人に言って欲しいと言いに来た。一旦逃げたがまたやって来た。雁次郎の隠れ家を見付けたという。夏之介たちは動きたくても代官所の捕り方が見張っていて動けない。雁次郎が現れ雁助が連れ去られた。一日たち夏之介が雁次郎の隠れ家へ行くと雁次郎は殺されていた。庄兵衛は雁次郎が二百両は隠しているはずだという。小弥太が隠し金をとり出す、三百両あった。夏之介は庄兵衛に二百両渡し、早く逃げ、足を洗えと言う。半蔵に百両渡し、殺した道中役人の家族に罪滅ぼしに渡してこいという。
 夏之介は代官所が雁次郎を殺すために雁助を囮にしたと考えた。新谷軍兵衛が雁助に成りすましていたのだろう。報酬は瞽女のお万との逢瀬。お万の所へ来たところを仇討ちしようと待っていた。が、代官所の横槍が入り、軍兵衛も夏之介たちも牢に入れられる。軍兵衛は未明に出立し、夏之介等は足止めされる。
 足止めされた夏之介は正村の思い通りになりましたね。と話しかける。利兵衛は瞽女お万の仇討ちだった。六才の時盗賊・利兵衛に因って父母を殺され目が見えなくなったお万だった。お万が呼び出し正村が斬っていた。お万は知った事を代官所に知らせる密偵になっていた。
 夏之介は遅れて三島を旅立った。

2016年8月4日木曜日

新包丁人侍事件帖3

新包丁人侍事件帖3 飛んで火に入る料理番 小早川涼
 火の粉 文政七年 1824年 如月 一日 二日 五日 八日 十一日と火事が起こった。八日の火事では町火消し同士が大乱闘を繰り広げた。無頼町人も加わり六千人。多数の死者が出た。鮎川惣介は町火消し〈う組〉の組頭勘太郎に頼まれ、錺職の五十松が死んだことを調べることになった。
 二日と五日の付け火は八蔵だった。八蔵は八日も自分がやったことにしておくという。八日は髪結いの修業をしているヨシ10才が火事になれば実家に帰れると考え付け火をしたとも考えられた。八蔵もヨシが付け火したと吹き込まれ自分がやった事にしたような状況で自訴した八蔵は牢死してしまった。
 似非者 惣介は家斉に個人的に食べ物を作った時、贋金でなやんでいることを知った。五十松が贋金作りの一味で仕事が終わり殺されたと思った。雪之丞が使ったのが贋金だったため惣介は贋金作りの探索に組み込まれる。寺社奉行・水野泉守の家臣・鮎川惣助の娘鈴菜の恋人・大鷹源吾も贋金作りの探索をし、惣介に近づく。君命だと言い、くれない屋の番頭と錺職人二人を殺す。八日の火事は贋金作りの証拠を消すために仕事場を焼いたための火事であり、大騒ぎになるように火消しの喧嘩も煽られたものだった。
 何故、町奉行所ではなく寺社奉行が動き、雪之丞までもがどなたかの命令で動いたか。贋金の二朱銀の方が銀の含有率が多かったから。
 小一郎 春の隣 小一郎15才の友達・又三郎16才が旗本の息子に喧嘩をふっかけられた。小一郎もやられてしまう。又三郎の父親・御徒衆七十俵五人扶持・柊克太郎が又三郎が怪我も治りきっていないのに家に帰らないと小一郎を訪ねてくる。小一郎は帰らない野では無く、帰られない状態にあるのだと又三郎を探す。火事場の穴蔵にはまっていた。又三郎は小一郎が来ることを信じて待っていた。又三郎一人ではなかった。喧嘩相手の旗本の息子・三辺鉄之助が足を挫いていた。鉄之助を助けようとして又三郎ははまった。三辺家に知らせ、父親と家来が梯を使って助け出した。鉄之助は父親にぶたれる。隼人は又三郎と小一郎を見て良い友垣だ。二人で支え合っていれば滅多なことにはなるまいという。
 

2016年8月3日水曜日

百万石の留守居役〈七〉

百万石の留守居役〈七〉 貸借 上田秀人
 会津の留守居役は瀬能数馬が作った貸しを嫌がり、高飛車に出たため借りが増えた。隠居した元留守居役・栄井田が出て来て、加賀藩にもたらした情報は先代将軍家綱の御廟拡張のお手伝い普請だった。元加賀藩留守居役・現老中堀田備中守の留守居役・小沢兵衛が加賀以外の外様の留守居役と会い、作事奉行との間を取り持つと言って廻っているということだった。
 数馬は小沢が外様の留守居役と会っている内容を調べるために、会う口実に、妾が決まったと佐奈を連れて小沢の妾宅へ行った。数馬の妾は自分が送り込みたいと思っていたので佐奈に傷をつけようとするが、みんなやられてしまう。頼まれ事を失敗した武田法玄は佐奈に第二段を送り込むが、石動庫之介と共に倒した。武田二十四将という。三人倒し、後二十一将か。
 数馬は次ぎの参勤交代で国許に戻ることになった。慌てて、近隣組の留守居役を集めて顔見せをし、参勤に付いて参る知らせの会を開いた。

2016年8月2日火曜日

ゆめ姫事件帖 2

ゆめ姫事件帖 2 神かくし 和田はつ子
 将軍家の娘・ゆめ姫は、側用人池本方忠の屋敷に居候して、市井の暮らしを楽しんでいる。
 ゆめ姫が悪を裁く 井桁に下がり藤の家紋が入った懐剣を持った幽霊が夫に殺されたという。信二郎いや、秋月修太郎の従妹・梅乃だった。ゆめ姫が夢で見た場所を割り出し掘り起こしていると井口秀一郎が現れ、刀を振り回し穴に落ちて刀が貫き死んだ。同心・山崎正重が井口の悪事を突き止めたことになっている。
 ゆめ姫は、物乞いが焼き殺された夢をみた。瀬戸物問屋美濃屋の主・吉兵衛が火事で亡くなった。犯人として池本家出入りの光と勝次親子が捕まる。ゆめ姫が夜ごと見る夢の内容が勝次等が犯人と思えることばかり。勝次は美濃屋の跡取りだった。父親の弟に店を乗っ取られていた。光も結婚を迫られるが断わり追い出されていた。吉兵衛は生きていた。借金が増え、物乞いを代わりに仕立て逃げていた。
 ゆめ姫は妖の謎を解く 将軍の正室・三津姫のかもじが濡れる。謎を解く。三津姫を好きだったおふりが十五年前、三津姫のカモジを作るために髪を切り尼になっていた。ゆめ姫が夢の中でおふりに聞く、何故濡れるのか。見せてくれた映像では三津姫が寺参りに行き雨に降られたために風邪を引き、亡くなるようだった。寺参りは次の日にした。行く予定の日は午後、ものすごい雨になった。ゆめ姫は三津姫に全てを話した。
 ゆめ姫が悲恋を演じる 土砂崩れの後から印籠を持った骨がみつかった。二十年前に行方が分からなくなった時沢家の妻・理与と思われた。生活に困っていた理与は身体を売ることになるが、呉服問屋の三石屋の安右衛門が理与を買い、何もせず、守っていた。夫に身を売ってるとなじられ殺されていた。
 ゆめ姫は戦国武者に遭遇する ゆめ姫が長束正家の家臣・馬廻り役篠田三郎右衛門のゆめを見たために除霊することになった。除霊の途中、大権現様〈家康〉が現れ、ゆめ姫に徳川を守るために、怨霊を供養させるよいな。と言う。
 柴田三郎右衛門は、二百年以上受け継がれた壺を囲み、長束家の家紋をかたどったおかしを作っている子孫を見る。

浮世絵宗次日月抄 9

浮世絵宗次日月抄 9 皇帝の剣 上 .下 門田泰明
 宗次は後水尾院から誰にも知られず会いに来い。の連絡を貰って京に来た。「東山」という旅館に泊まる。
 五条大橋に弁慶という人斬りが出、何人もの人が亡くなっていた。西条山城守貞頼の娘・美雪の兄・西条九郎信綱が大抜擢で大阪城在番から京都所司代次席になっていた。信綱は宗次が尾張大納言の血筋であることを知っていた。
 刀剣商「浪花屋」、「菫茶房」、六波羅の次郎長、知り合った人の縁り辺を従三位中納言御仙院忠直に殺されていた。浪花屋は峯の夫・貴代造が殺され新刀の大小が奪われていた。菫茶房は宮古の父・従四位下近衛中将八坂小路冬彦が殺され家宝の脇差し『夢扇』を奪われていた。次郎長は息子を殺されていた。
 宗次は後水尾院から この京に、二度と戦乱が生じないように是非努めて貰いたいと言われた。後水尾院は宗次が尾張徳川の血を引いていることも、養父が大剣聖・梁伊対馬守隆房であり、剣の奥義を受けた者であることを知っていた。
 忠直と義弟・従八位上衛門少志御仙院宣房と嵯峨飛天流・斜野小路能師が幕府大老・酒井鵜雅楽頭忠清の宮将軍の話に乗り、野心満々だった。江戸との繋ぎに絵師・峡野栄進法印63才が来ていた。夜ごと現れる弁慶なる人斬りは宣房だった。
 梁伊対馬守の宿敵だった斜野小路の息子・能師と勝負する。能師が倒れた時、御仙院忠直は自死した。
 悠と宗次の初恋旅
 旅館「東山」の娘・悠13才は宗次のお嫁さんになるという。江戸に帰る宗次と一緒に東海道の旅に出る。浪花屋と菫茶房と次郎長と別れの挨拶にもつき合う。峯も宮古も茶道を通し悠の母・節と知り合いだった。悠もよく訪れた店だった。
 浪花屋の奥様・円は江戸対馬屋の柿坂作造の妹だった。浪花屋の御池仁右衛門作の新刀を仁右衛門宗次(にえもんむねつぐ)と名付け頂戴する。
 悠は子供になったり娘になったりしながら大津の宿に泊まる。夜、宿を夜盗に襲われ、悠の側を離れずに夜盗を退けた。悠は後をついて来ていた母を見付け、もう少し母の側にいることにした。
 東山はどうやら、織田有楽斎の血を引く家柄のようだ。

2016年8月1日月曜日

ふたごの京都妖怪ごはん日記

ふたごの京都妖怪ごはん日記 あやかしとおばんざい 仲町六絵
 山野直史とまどかは、四月から京都の学校に通うため二人で古い一軒屋を借りている。二人は双子で直史は大学の国文科、まどかは調理師専門学校の製菓コースに通う。
 直史は小学一年生の時、白山で兎と話しをしたことがあった。ククリ姫に直史に決めた。十八歳まで待つとしようかと言われた。
 その兎のククリ姫が現れ、昔、泉鏡花が書いてたあやかしの話を書いて欲しいと言われた。ブログに文は直史が書き、絵をまどかが書くことになった。お礼に美味しい物を食べられることになった。兎のククリ姫も一緒に住む事になった。ククリ姫の近くにカラス天狗のクロハがいる。
 祇園のおにぎり屋さんに山姥がいた。
 「ふたごの京都妖怪日記」が、京都の不思議にアップされた。「うさぎとの契約のついて」最初はククリ姫の話を書いた。クロハが、鰆の棒寿司と真鯛の棒寿司を持って訪れた。
 大学にハナオクリがやってくる。鉄紺色の着流しで京訛りで落ち着いた男性だった。庭が潰され咲くはずだった花が咲けない。未練を残した花の魂の花を咲かせ、未練を晴らすのが花送の仕事だそうだ。いもねぎの美味しい店に行く。花送りの生業は旅館。あやかしが泊まりに来る予定。
 二人は泉鏡花が花送りをどう書いたかを当てて、治部煮をご馳走になる。(天守物語)直史の同級生・大塚信介も来る。
 「怪しい舞妓と御宛の守り神のこと」という題で花送のことを書く。
 次は小豆洗いなのだけれど、小豆洗いは白雪姫を書いて欲しいという。白雪姫というのは樋口一葉のことらしい。鏡花は(夜叉が池)で樋口一葉を強い白雪姫として書いているらしい。直史は「お夏と小豆洗い」という題で書いた。
 小豆洗いが丹波の大納言小豆を持って来てくれた。小豆ご飯とサツマイモとのいとこ煮になる。