2017年9月30日土曜日

往復書簡

往復書簡 湊かなえ
 十年後の宿題 高校を卒業して十年目、放送部の仲間だった浩一と静香の結婚式で放送部員が集まった。千秋は行方不明のため連絡が取れなかったが、海外にいて行けない高倉悦子の招待状で出席した。浩一とつき合っていたのは千秋だった。五年前、親の仕事の関係で引っ越し、浩一には留守電に別れの言葉を残しただけで別れた。みんなの中で千秋は顔に怪我をし精神的に弱っているとか行へ不明になってるとか自殺説まである。千秋は悦子の名前で手紙を書き、みんながどんなふうに思っているか調べる。
 二十年後の宿題 三十八年の小学教師を定年退職をした竹沢真智子は毎年連絡をくれる高校教師になっている大場淳史に、気になる六人に会い今どんなふうに暮らしているか調べて欲しいと頼む。六人は真智子の夫が川にはまった子を助けに行き亡くなった時に一緒にいたこどもたちだった。最後の一人は淳史が付き合っていた彼女だった。淳史は気がつかないまま会う。何も言わないで立ち去った彼女との別れだと思った。先生から彼女に渡してと頼まれた手紙は、彼女が結婚を意識する大場のことを先生に相談した手紙だった。夏休み二人で先生の見舞いに行く予定になった。
 十五年後の補修 結婚する予定の純一と万里子だった。純一が海外協力隊のボランティアで海外に行く。二人の文通が始まる。十五年前の事件の話になる。康孝が一樹と万里子を呼び出し倉庫に閉じこめ火を付けた。純一が駆け付け万里子を助け出したが一樹は亡くなった。康孝は校舎の屋上から飛び降り自殺をした。ということになっていた。万里子は思い出した。康孝に万里子と一樹は閉じこめられた。一樹が万里子に飛びかかり、万里子は角材で一樹を殴り殺してしまった。純一は万里子を助け出し、タバコの火がついたと思われるように火を付けた。康孝を呼び出し火事はお前の所為だと責めた。康孝は飛び降りた。
 一年後の連絡網 別のボランティア隊員の手紙の中に純一と思われる隊員の所に、日本から彼女がやってきたというような内容の話があった。

2017年9月29日金曜日

警視庁特別取締官

警視庁特別取締官 六道慧
 星野美咲32 警部補だった一年半前、警視庁捜査一課「謎解きマイスター」と言われた。殺人事件で美咲以外の全員が被疑者として男を検挙した。裁判が始まり冤罪だと分かった時、美咲の単独捜査によるものと証言され半年の停職処分を受け、一年の交番勤務をし、現在、警視庁分室特別取締班 巡査になった。
 ちなみに、当時の班長は小柴清志警部、美咲の上司で相棒、そして恋人だった。現在、親友と信じていた官房長官の愛娘・伊智子警部補は小柴夫人になっている。
 鷹木晴人29才、生物学者、獣医、警視。美咲の上司。母親は科学捜査研究所の課長・マダム科捜研こと山科若葉。父親は動物学者、猟師の鷹木乙彦。
  
 向いの家の佐竹絹江62の通報で駆け付けた鷹木と美咲は、ゴミ屋敷に猫三十匹と病気で動けない主人・寺西幸輔と頭にこぶを作り亡くなっている妻・真梨子を見付ける。駆け付けた息子・英輔は大麻を所持していた。玄関には白い花の鉢植え。
 真梨子はB型肝炎、勤め先は化粧品会社の研究室の窒長。湿疹問題で騒がれたスカピを傘下にしている会社。
 英輔、小雪夫妻に子どもはは五人、小雪は妊娠している。英輔は働いていない。転居を繰り返す。子ども全員を確認していない。子どもが六人いたと言う目撃談がある。小雪の実家は農家、ハオルシアの栽培をしている。
 真梨子と喧嘩をし、突き飛ばしこぶを作らせたのは佐竹絹江だった。絹江は寺西家の通帳からお金を引き出していた。真梨子に紹介されたハオルシアを売る際に詐欺行為を働いていた。真梨子が知ったため口論になり、突き飛ばしていたのだった。頭蓋内の硬膜下に出血がおこり亡くなった。
 三男・聖也は双子だった。拓也の出生届は出ていなかった。聖也を静かにさせるためタオルで口をふさぎ死なせてしまった。真梨子は拓也を小雪の実家に連れて行った。息子夫婦には絶対内緒ということで、あらかじめ手続きをしていた老人ホームや障害者施設がある「白花苑」に連れて行った。聖也は夫婦がどこかに埋めてしまった。美咲は小雪の実家の裏山で寺西家の玄関の鉢植えの花を見付けた。そこに聖也は埋められていた。真梨子が聖也に捧げた花ごと埋められたのだろう。
 真梨子は持病のためいつどうなるかわからないと言い、弁護士に預けた通帳に振り込まれるようにしていた。退職金、生命保険、B型肝炎の給付金、信託扱いになる。

2017年9月28日木曜日

風の王国〈1〉 落日の渤海

風の王国〈1〉 落日の渤海 平谷美樹
 延喜十八年 918年東日流国遠長湊(つがるのくにとおおさみなと)後の十三湊
 宇鉄明秀(うてつのあきほつ)17才 十七年前、遠長湊の浜に渤海人の老人に抱かれて打ち上げられていた赤ん坊。水長の宇鉄亞都偉に育てられた。「めいしゅう」幼馴染みの勇魚が渤海へ行くことになり、自分が何者か知りたいために持衰(じさい・航海の安全を祈願するために船に乗せる)として、老人が持っていた刀を携え渤海行きの船に乗る。時衰の世話係易託である橘が荒れる海に飛び込み明秀の守り神になった。
 安東勇魚(あんどういさな)23才、明秀の遊び仲間。遠長保の保司・安東葛野の嫡男 東日流国の王・安東高星の指示で安東兼任が遣渤海大使、勇魚は副使になる。
 麗津(らいちん)で、契丹の間諜の探索をする。間諜の長は欒把(らんぱ)と名乗る契丹の皇太子・耶律突欲(やりつとくよく)だった。父・耶律阿保機、母・月理朶(げつりだ)、弟・尭骨(ぎょうこつ)
 十七年前、現刺史・文奕が麗津欲しさに大文和に謀反の疑いありとし、処刑した。
文奕は麗津大氏の後を継げるよう根回し彼らを滅ばした。文和の妻・娥詠と子・明秀が逃げた。明秀の出自が分かった。短剣は、麗津大氏の執事・鐘公偉のものだった。
 文奕の息子・徳信が謀反人として文奕を討った。
 勇魚は遣東日流使節団と東日流へ帰ることになった。援軍の要請のために。大明秀と判明した明秀も一緒に帰ることになった。
 

2017年9月27日水曜日

着物始末暦(二) 藍の糸

着物始末暦(二) 藍の糸 中島要
 綾太郎の幼馴染み向いの菓子屋・淡路堂の跡取り息子と思っていた平吉が薬種問屋・杉田屋に婿入りすることになった。平吉の妹・三和は職人顔負けの舌を持っている。珍しいお菓子でも一度食べれば材料が分かる。二年前から新作菓子の考案もしている。妹に婿をとる。
 綾太郎は興味を持った糸に会うためにだるま屋に通う。五日目、糸は綾太郎に身分が違う、若旦那には許嫁がいる、もう来ないで、という。綾太郎は糸に「余一はおまえのことをなんとも思ってないよ。みっともないよ」という。みっともなくてもいい。勝手に思うことぐらいいいでしょう。と言われてしまう。今度は余一が綾太郎に文句をいう。綾太郎は相惚れならさっさとくっつけ、はた迷惑だ。余一は自分は疫病神だと思っている。糸に近づかなくなった。
 六助の所に安蔵が盗品を持ち込む。仕立て直して売りさばくよう頼む。六助は余一を裏家業に引き込みたくなかった。安蔵が脅しを掛けてきた時、頭が割れるように痛み畳を転げ回る。安蔵が帰った途端痛みが治まる。六助はこの世の者でない者が見えたり、声が聞こえたりすることがある。安蔵が忘れて行った帯がそうだった。余一といると楽になる。余一に相談する。帯の持ち主を探す。亡くなった母親が子どものために残した帯だった。安蔵が捕り方に追いかけられ六助を匕首で刺す。寸前余一が庇い刺される。帯が助けてくれた。安蔵は大川に流され死ぬ。帯の中から子どもの手形が出てきた。
 玉は佐野屋の隠居所に骨董品を見に遊びに行く。みつは玉が綾太郎に貰った振り袖のお返しは何が良いか考えていた。余一に相談しに行く。千吉と会う。余一は浴衣はどうかと言う。糸に相談する。糸は私だったら浴衣にするという。みつの継母が家のために十両借りにくる。十両を持って家に行く途中千吉に会う。継母は千吉に十両貢ぐつもりだった。余一が継母に話を付けた。余一のところで座布団を見た。佐野屋の隠居の亡くなった内儀の着物で創った座布団だった。隠居のために泥道に膝をついて染みになった着物。隠居のところで座布団をみた玉は綾太郎に贈るものを座布団にした。
  座布団は君を思いし我が心 裏も表もないとこそ知れ  と言う文章とともに
 糸は寺社地に入って薪をとる達平に寺社地に入らないことを約束させおにぎりを食べさせていた。達平は天神様の雑木林で行き倒れの女を見付け、生きている赤ん坊を糸に預けた。余一に相談すると余一は達平から聞き出し、雑木林に行く。猫ばばしていたお金を岡っ引きに渡し、手形を受け取る。赤ん坊の着ている着物から父親が分かり連れて行く。父親・孝吉は亡くなっていた。祖父・孝三郎は道中手形と命名書を見せても信用しない。二人は帰ってきた。後日、祖母が来た。孝吉の着物の生地が赤ん坊の百徳の生地と同じだった。祖母は礼金を置いて帰った。余一は達平に渡してと糸に渡した。

2017年9月26日火曜日

居眠り同心影御用23 炎剣が奔る

居眠り同心影御用23 炎剣が奔る 早見俊
 蔵間源之助は松平定信から、妾詐欺の横行を知らされ口入れ屋に出向き、注意する。口入れ屋「千手屋」の主・彦次郎が旗本・上柳右兵衛督の隠居所の奉公人の行方不明の相談をされた。源之助は調べ始める。
 上柳家は隣の妙法寺と古井戸で繋がり、寺で開かれる賭場から逃れる道になっていた。朝霧の久兵衛一味の隠れ家であり金の隠し場所でもあった。行方不明の奉公人の死体も見付かった。
 久兵衛の捕縛と内定のため、火盗改め同心・矢野正三郎が久兵衛一味に入り込んでいるという。上柳家で火盗改めに久兵衛一味は殺された。上柳家の用人・前畑がかってにしたこと隠居には関係がないことで終わらせようとした。
 妙法寺の穴蔵にお金が隠されていた。矢野は火盗改めと久兵衛を出し抜き独り占めにするつもりだ。穴蔵の出入口は鉄扉で閉められ、寺に火を付けた。矢野は源之助等を殺そうとしたが矢野はどんでん返しの壁の裏に消え寺は燃え落ちた。
 上柳右兵衛督は評定所に召喚されることになった。
 火盗改め・大井川正蔵は部下が潜入捜査にかこつけて久兵衛の金を懐に入れようとしたことで辞任した。
 源太郎の妻・美津の妊娠を祝った。

2017年9月25日月曜日

新・問答無用⑤ 沽券状

新・問答無用⑤ 沽券状 稲葉稔
 土地、家の権利書「沽券状」を偽造し、持ち主が知らぬ間に売りさばく詐欺が何件を起こる。町年寄に命じられ柏木宗十郎は探索を始める。吉蔵に手伝ってもらう。
 大家の瀬兵衛、印判屋の八十吉、浪人の井芹兵庫、升五郎、まさ、忠兵衛、被害者りつを旅に連れ出した結之助こと佐吉、井芹は斬られ瀬兵衛一味は捕まった。
 養子状態にある永吉を学問所に入れようと思ったが宗十郎ときぬの調べがあると困るので手習い所を探すことにした。

2017年9月24日日曜日

着物始末暦 しのぶ梅

着物始末暦 しのぶ梅 中島要
 呉服太物問屋「大隅屋」の若旦那・綾太郎は極上の上田縞の団子のたれ染みをきれいに落としてもらい着物始末の余一と知り合った。五枚の高価な打ち掛けを余一に預ける。五枚を継ぎはぎにして花魁と禿のお揃いの打ち掛けになった。
 糸17は一膳飯屋「だるま屋」の看板娘。十才で母親を亡くした糸は裁縫が不得手。三年前、食事に来る余一を好きになった糸は頼み込んで余一に裁縫を習う。父・清八はどこの誰とも分からない余一と糸が付き合うことを許さない。
 余一は上方からきた悉皆職人に育てられ、仕事を教え込まれた。余一の父母が誰だか誰も知らない。
 染弥 芸しか出来ない。相ぼれになった男は八百屋の若旦那。自分は何も出来ないから愛想を尽かされると思い金持ちの妾になる決心をした。最後の逢瀬に松の柄のすそ模様の着物を着た。
 二十年前に火事で店も両親も失った理恵は、昔大隅屋で誂えた振り袖が欲しいという。大隅屋は同じ物を創るが理恵が納得しない。余一は糸に着物を着せ、理恵に見せる。理恵は納得した。余一は着物に年を取らせ理恵に渡す。
 古着屋の六助の所に、振り袖を着た夜鷹が来る。夜鷹が着ていた振り袖を持って浪人が来る。六助は夜鷹が一月以上姿を見せないので殺されたと思った。島田髷のあの夜鷹を見た。有り金と振り袖を取られ、身を投げようと思った時に助けてくれた大工と一緒になっていた。
 みつ 糸の幼馴染み。小さいが店売りの青物屋・八百久の娘。父親の後添えと上手くいかず、妾に出されそうなので、家を出、昔の知り合いの桐屋の玉17付きの女中として住み込むことになった。玉は綾太郎の許嫁だった。玉は振り袖を着ず、祖母のお古を着る。みつは糸から紹介された余一に相談する。着物に対する情を語られる。

2017年9月23日土曜日

劇場

劇場 又吉直樹
 芝居の脚本家を志す永田
 青森県出身、服飾関係の大学生、女優志望。沙希
 永田が沙希の部屋に転がり込む。沙希は体調を崩し実家に帰り、東京を引き払う。
 永ちゃんと知り合わなかったらもっと早く帰っていた。永ちゃんと知り合って楽しかったと言う言葉を残して。

2017年9月22日金曜日

大菩薩峠〈都新聞版〉 第九巻

大菩薩峠〈都新聞版〉 第九巻  中山大介
 完となっていたが終わりじゃないようだ。
 机龍之助の目が少し見えるようになった。

2017年9月19日火曜日

御広敷用人大奥記録(十二)

御広敷用人大奥記録(十二) 覚悟の紅  上田秀人
 天英院が竹姫を男に襲わせたことで吉宗が切れた。長福丸に毒を盛られたこともあり閉じこめに近い状態にする。手紙も自由に出せない。姉小路は月光院付きの松島に頼んだ。
 天英院からの手紙を受け取った山城帯刀は藤川義右衛門に持っていく。藤川は百両で上様殺しを引き受けた。
 竹姫を吉宗の継室にする勅使が出る直前、天英院の手紙が届いた近衛家は動き、竹姫と吉宗が大叔母と姪孫の関係にあることで婚姻は朝廷から禁じられた。竹姫に月の物があった。今宵のことは他言無用と、吉宗は最初で最後、竹姫の元に行った。竹姫は紅を塗った。竹姫は忘れられた姫に戻る。二度と日の当たる所にでない。吉宗は水城の子どもの名前を竹姫に付けさせてくれと言い、時々会いに行って欲しいという。
 水城聡四郎は御広敷用人の職を解かれた。
 紅は女の子を出産した。竹姫に「紬」と名付けられた。

2017年9月18日月曜日

御刀番・左京之介④ 虎徹入道

御刀番・左京之介④ 虎徹入道 藤井邦夫
 汐崎藩前藩主宗憲の未亡人・千代丸の母親・香寿院・香の方は堀田家菩提寺真徳山天慶寺の天光と関係を持ち、天光が欲しがる虎徹入道を手に入れようとしている。
 虎徹入道に三百両出すことに反対していた左京之介は命を狙われた。闇討ちが失敗だったと判った時、千代丸から暇を出された。香寿院と侍女・松風が水戸藩大番頭・藤森九郎兵衛と繋がっていることが判った。
 千代丸が病気になった。医師・道斎は退けられ、天空が祈祷するという。家老・梶原は反対したため蟄居になる。汐崎藩江戸上屋敷の奥御殿は天光に押さえられた。千代丸も天空に押さえられた。京之介と佐助は千代丸を屋敷から連れ出し、向島へ連れて行った。家中の者には伏せられた。千代丸は快復した。道斎が尾行され、千代丸の居場所が知られた。京之介は千代丸を抱え、斬り抜ける。聖林寺に落ちつく。聖林寺の住職・浄雲は刀工左文字の流れを汲み一族の打った刀に斬られて死んだ者の供養をしている。一族の大叔父のような存在だ。
 水戸徳川家から留守居役・土屋外記と御刀番・神尾兵部が千代丸の見舞いに訪れた。香寿院が水戸家の娘のため、幼い千代丸の後見役をしている。明後日千代丸に会いに来るということで帰った。藤森が隠居したことを告げられる。
 明後日に水戸家留守居役が千代丸に会いに来ることを知った京之介は千代丸が屋敷に帰る算段をする。天空は千代丸の替え玉を用意する。
 京之介は千代丸に家中の者を信用することを説く。京之介は帰参を許された。千代丸は中屋敷に入る。京之介は水戸からの見舞いの時刻を未(二時)にお願いする。
 上屋敷表御殿の御座之間に落ちつく。天空と竜全は香寿院を人質にして逃げ出した。土屋外記は日向正宗の鎧通しを持ってきた。千代丸は香寿院を水戸で預かってもらえないかと尋ねた。後日断りがきた。
 夜、駿河の総本山に逃げようとする天空と竜全を襲い、殺す。虎徹を取り、御刀蔵に入った。

2017年9月17日日曜日

壺中の回廊

壺中の回廊 松井今朝子
 桜木治郎 大学講師 江戸の狂言作者、桜木治助の孫
木挽座で出し物の途中、五代目袖崎蘭五郎が毒殺された。蘭五郎の死は三日間伏せられた。亡くなったのは三月十四日、二十六日が帝都復興祭だったため葬儀は四月一日に行われた。殺害、毒殺等は伏せられた。
 治郎は笹岡警部に頼まれ役者の聞き取り調査をする。
 四十九日が終われば話すと言っていた先代蘭五郎の弟子・蘭香が四十九日に殺される。
 無産党大衆新聞の記者・安倍が殺される。
 犯人は、鵬財閥二代目・鵬輝一郎男爵の夫人・元女優・伊藤弥寿栄だった。治郎は鵬男爵に会いに行く。
 弥寿栄は安倍に昔の関係に関することで強請られ、蘭五郎が裏切ったと考え蘭五郎を殺した。昇汞剤を蘭五郎が食べるどら焼きに入れて置いた。
 男爵は、四十九日に男爵に会い事情を知らせようとした蘭香を始末するように出入する若い衆に頼んだ。脅迫するためにしつこく付きまとった安倍も同じ。
 全てを話し終え、男爵は何もせず、全てを闇に葬って欲しいと言う。英国へ留学しないか。全ての費用は出す。無事にここを出られるかどうかの大切な取引だという。
 治郎は伝法に毒づいて断る。男爵はブローニングを出し、先生が見届けてくださるものと信じています。と言い自殺した。男爵夫人も自殺していた。鵬家は養子が継ぐ。男爵の遺書に実子・輝久6才の目が見えない少年の後見人に桜木治郎を指定していた。最後の言葉の意味だった。治郎は少年を養子にする決心をする。

2017年9月16日土曜日

人情同心神鳴り源蔵① 黄金観音

人情同心神鳴り源蔵① 黄金観音 小杉健治
 南町奉行所定町廻り同心尾上源蔵 神鳴り源蔵 妻・静。
 三倉屋の五十両が盗まれた。源蔵は女中への聞き込みで小間物売りの竜吉に目を付ける。竜吉は角兵衛獅子をしていた。十七才の時逃げ出し、天満の七藏と知り合い盗みの手ほどきを受けた。二十二才の時、七藏が足を洗い小間物屋の店を出した。十日後に火事で焼けた。七藏は泥棒に入り尾上源蔵に見付かり捕まった。七藏は獄門になった。竜吉は盗人に戻った。
 竜吉が浅草寺の絶対秘仏の黄金の観音像を盗もうと算段している時、流れ星の銀藏と出会う。銀藏も観音像を狙っていた。三日後に再会することを約束して別れる。銀藏は信州宇津木藩、村上佐渡守幸忠に頼まれたことを教えた。夜、銀藏の夜働きを見、成功したと思った。銀藏には会えなかった。銀藏は殺されていた。竜吉は盗みを頼んだ宇津木家に忍んだ。
 源蔵は一扇堂の娘・加代が宇津木藩村上家に奉公に上がったまま帰らない。という相談をされていた。村上家を調べる。
 竜吉の長屋の隣の浪人・八十嶋大介は元宇津木藩の者だった。許嫁・千世を藩主にとられ脱藩していた。今、殿様は家臣の妻女を離縁させ側室にし、千世は尼寺に入っている。許嫁の兄・金城弥一郎は殿の護衛をしている。八十嶋は村上幸忠の命を狙っていた。
 竜吉は銀藏から聞いていたくらという女の所に行った。後、くらと間夫が殺された。
 源蔵は加代が天雲寺に埋められていることを掴んだ。天雲寺は浅草寺の観音像が移されているということで人気があがっている寺だった。噂をばらまいているのが村上家だった。加代は佐渡守に見初められたがはねつけたために殺された。
 源蔵は竜吉から銀藏のことを聞き出す。
 銀藏が盗んだ観音像は銀藏が頼った一膳飯屋の主の親分・麝香の仁吉が持っていた。銀藏を殺し取った。村上家に二千両で交換という取引を持ち出している。源蔵は取引が終わった後、仁吉一味を捕まえ、二千両を持って村上家に行く。二千両と引き換えに観音像を返してもらう。源蔵は家老ひとりで責任をかぶることがないようにと言い残して帰る。
 佐渡守は隠居した。八十嶋は千世に会いに行った。竜吉が盗みに入るために評判の悪い店を探していると源蔵に出会い、観音像を浅草寺に返すことを頼まれた。

2017年9月15日金曜日

ビブリア古書堂の事件手帖〈7〉

ビブリア古書堂の事件手帖〈7〉 栞子さんと果てない舞台 完 三上延
 ビブリア古書堂が久我山家から買い戻そうとしている初版本の「晩年」を持っている舞砂道具店の吉原喜市は八百万で売ると言う。母親・篠川智恵子と連絡を付けてくれたら四百万にするという条件で買った。栞子さんは何もしなかったが智恵子と連絡がついたらしく四百万で手に入った。
 吉原喜市は栞子さんの祖父・聖司がビブリア古書堂を開くため久我山書房の番頭を辞めた後、番頭になり、久我山書房の店主・尚大が亡くなるまで続けていた人だった。智恵子の父親が尚大であることを栞子さんに話す。
 智恵子の母、栞子と文香の祖母・水城英子の存在を知った頃、祖母の再婚相手・水城禄郎がビブリア古書堂を訪れる。英子は昔古本屋に騙され、智恵子を身ごもったため古本屋を嫌い、古本屋で働き始めた智恵子と縁を切った。英子は尚大に貰った古い本を大事にしていた。吉原はその本の借用書を持って英子のところに本の返還を求めに行った。英子は本を渡した。水城はその本の買い戻しを頼みにきた。栞子と大輔は水城家で英子と会う。時々店に来る人だった。栞子と英子は本の話で盛り上がる。その本はシェークスピアの1968年刊行のノートン・ファクシミリを複製した本だった。
 五十年前のことで返還しなくても良い状況だったが、吉原に英子の義理の息子・水城隆司が同性愛者であることを匂わし脅迫じみた言動をしたため本を手放していた。栞子が伝言を伝え、上手くいっていなかった隆司と英子が話を始めたようだ。
 英子の本が古書組合主催の交換会に出されているようだと連絡が入った。
 古書会館の交換会でひとり書房の井上に協力してもらい吉原を出し抜き八万五千三十円で落札した。
 久我山尚大はファースト・フォリオを持っていた。三冊のファクシミリを作った。黒の他に赤、青、白がある何れかが本物かもしれない。三冊ともページが糊ずけされていた。戸塚の古書会館の振り市に出品される。
 当日、栞子は五千五十万で赤い本を落札した。栞子が用意したのは四千五百万、五百万を吉原の戦略で白い本につぎ込んでしまい、四千万しかなかった。大輔は自宅を売り、母親と分けた金額一千万と自分の貯金五十万を用意していた。
 吉野は検査の結果三冊とも二十世紀の紙だったと発表した。栞子は吉原と智恵子と別室で赤い本の表紙を切り開く。本の中に本が入っていた。
 大輔が栞子を母に会わせる日、大輔は栞子に結婚の申し込みをした。その前に智恵子から二人に何年か自分の仕事を手伝ってみないかという申し入れがあったことと、籍を入れるなら反対しないと告げられたことを栞子が言った。慌てて大輔はプロポーズしたのだった。
 ファースト・フォリオは智恵子に一億五千万で売ることにした。文香の学費が出来た。母の下で勉強するのも仕事にはプラスになると考えている。
 栞子は銀行の貸金庫から本を持ってきて、大輔に本の話を始めた。

番外編や、スピニオンが出るらしい。

2017年9月13日水曜日

タンゴステップ上下

タンゴステップ上下 ヘニング・マンケル
 ヘルベルト・モリーン76が一人で隠れるように住んでいた北スウェーデンのヘリェダーレンの森の中の家で殺され森の入り口に放置された。残虐な殺され方だった。
 ステファン・リンドマン37才はボロースの警官。舌ガンの宣告を受けた。治療が始まるまで三週間ある。〈残虐の殺人事件〉と新聞で見た被害者はモリーン。研修生の時と、彼が引退する前二年間組んで働いていた。リンドマンはヘリュダーレンに行く。リンドマンは部外者と言われながら犯人と思われる者のテント跡とかモリーンが隠していた日記とかを見付け、地元の警官・ジョセッペに知らせる。犯人は判らない。
 犯人は五十年前にナチスの武装親衛隊員・アウグスト・マットソン・ヘンセン(モリーンが改名する以前の名前)に父親を殺された息子・アーロン・シルベシュタインだった。ダンスを教えていた父親の下にダンスを習いに来ていたモリーンが殺していた。アローンは探し
ていた。教えてくれた人がいてブエノスアイレスから来た。マーロンはモリーンを殺し、計画通りマルメまで南下し、コペンハーゲンへ渡り、フランクフルト経由でサンパウロへ飛ぶつもりだった。新聞に、モリーンの隣家のアブラハム・アンダソンも殺され、犯人は二件とも同一犯と書かれている事を知り、アーロンはアンダソンを殺したのは誰か、調べに行く。
 アーロンは警察が変だと思うように細工をするが、最終的にはリンドマンを捕まえ、目隠しし話をする。リンドマンも命を狙われていた。アーロンがモリーンの娘に会わせて欲しいと言う。ヴェロニカ・モリーンの命を心配したが、ヴェロニカがリンドマンとアーロンを殺そうとした。
 アンダンソンを殺したのはヴェロニカだった。ヴェロニカは現在もナチスだった。モリーンがナチスだと知ったアンダンソンは脅迫していた。モリーンが死んだ後、モリーンの唯一の友達を脅迫してきた。ヴェロニカが殺していた。アーロンを狙っていたのも同じ組織の者だった。組織の人物の家に忍び込み、リンドマンは亡くなった自分の父親もナチスだったことを知る。
 アーロンは逃げた。偽名を使っていたアーロンは行方が判らない。名前も判らない。ヴェロニカは教戒に逃げ、警官が足を狙ったピストルの弾が後ろの洗礼用の水盤を支える石柱に当たり、跳ね返った弾に左目を打ち抜かれて亡くなった。
 リンドマンは恋人エレナの下に返りガン治療をする。半年後、ガンを克服したリンドマンはモリーンの日記に出てきたMと思われる人物に会いにスコットランドに行った。昔を知っている、マーガレット・シモンズは、モリーンが殺したダンス教師の名も息子の名前も覚えていた。アローンの名前が警察に知れた。
 
 もう一度、霜の降りる前にを読もう。今度はリンドマンを中心に

2017年9月8日金曜日

新・戻り舟同心② 雪のこし屋橋

新・戻り舟同心② 雪のこし屋橋 長谷川卓
 文化三年 1806年
 長尋掛り 迷宮入りとなった事件を専らとする掛り同心 二ツ森伝次郎69才、染葉忠左衛門69才、河野通之助64才、女装好きの花島太郎兵衛
 近 盗賊・鬼火の十左一味におspわれた畳表問屋「布目屋」の一人生き残りで永尋掛りの詰所の留守番と賄いを任されている。
 一ノ瀬真夏 永尋掛り同心、父親・元八丁堀同心一ノ瀬八十郎も同じだが下高井戸に道場を持っている。真夏は南町奉行所年番方与力・百井亀右衛門(泥亀)の養女になり内与力・小牧壮一郎に嫁ぐことが決まっている。真夏は盗賊・夜宮の長兵衛の娘だった。本人も知らない。知っているのは八十郎、伝次郎、伝次郎の息子・新治郎、伝次郎の孫・正次郎の四人。
 染葉鋭之介 染葉忠左衛門の息子、例繰り方同心
 御用聞き 鍋寅(鍋町の寅吉)73才 寅吉の孫・隼、半六、多助、元掏摸の安吉
 悪い奴 四年前に若狭屋の主人と小僧の末吉、夜鷹の桑が殺された事件を調べる。夜鷹の元締め・銑右衛門に協力を仰ぎ、三人が殺される一年前に御家人の金貸しが殺されたのと同じ犯人だと知れた。御家人・難波騏一郎。金貸しを殺した所を桑に見られた。一年後、難波は桑と出会い、殺したところに若狭屋が居合わせ一緒に殺された。伝次郎たちは難波を殺した。
 雪のこし屋橋 病気の母親が診察を拒否され受診することなく亡くなった梅吉は、受診拒否した医者・諸川寿庵の家に火を付けた。直ぐ火は消されたが、梅吉は遠島と決まった。梅吉は九才のため十五才までお預けになった。近所の者が島で生き抜けるように飯の炊き方から竃屋や、鋳掛け屋、左官、大工、薬草、実のなる木の育て方を教えていた。しかし、梅吉は寿庵を殺した。
 栄七は三十三才の時、研師の弟弟子を突き飛ばした弾みに頭を打ち殺してしまった。八丈島に送られた。四十一才の時、赦免された。それから十九年、紙屑買いをし、溜まったお金は、名前を出さずに殺してしまった弟弟子の家に師匠に届けてもらっていた。栄七名前を変え幹三郎は捨て子を拾った。勾引かしに間違えられたが、捨て子と判り、幹三郎が育てることになりそうになった時、弟弟子の息子に刺された。
 幹三郎の身体がぴくりと震え、沈んだ。・・・これは死亡か?自分がぶつかった出刃を持った子どもがしたことを知ったためか。死亡だな。
 浮世の薬 新治郎の妻・伊都と息子・正次郎が町へ出た。伊都が怪しいという者を尾行する。古狐の藤助一味八名を捕らえ、次の押し込み予定の店に入り込んでいた者も捕まった。
伊都と正次郎には褒めの言葉ではなく新治郎からの叱責があった。伊都と正次郎が町に出る。伊都は弥次郎兵衛になっているとか、少し悪、とか人相見を師ながら歩く。
 鼻水垂兵衛 花島太郎兵衛は女装で男を助けた。自分の家に運ぶ。里回りの仁助だった。斑蜘蛛の与平の小頭。与平親分が小頭の峰吉に頼まれた長次に殺された。峰吉は与平の倅・一蔵に仁助が与平を殺したと吹き込まれた。仁助は昔の知り合いを頼った帰り道を襲われたということだった。太郎兵衛は伝次郎たちを呼ぶ。八十郎と真夏は仁助の守りに護る。太郎兵衛の家は襲われるが八十郎等が守る。仁助が頼った専次郎と峰吉らが襲ってくる日が分かった。奉行所と近所の大名にも声をかけ、明かりと囲みを用意した。一網打尽。専次郎の土蔵の土の下の遺体のことを話た。峰吉が連れてきた用心棒は八十郎の剣友だった。枝村修蔵、一対一で枝村は倒れた。
 《播磨屋》一件 例繰り方で『御仕置き裁許帳』の補修をしていた正次郎は同期に出仕した梶山倫太郎が足の骨を折ったので代わりに、小伝馬町の牢屋敷を見回る役目に就く。
 牢内で左兵衛が死んだ。二日後浩吉が五十敲きで牢を出た。左兵衛が牢に入ってすぐ長屋が荒らされた。商家の主姿の浩吉をみた正次郎は尾行した。
 伝次郎等は左兵衛を調べた。左兵衛にも浩吉にも関係した岡っ引きの滝造がいた。滝造と播磨屋にカマを掛け様子を見る。旅支度の滝造と浩吉を捕まえる。播磨屋の息子は首を吊った。主・為右衛門は伝次郎に連れられて行った。息子が妾を殺し、隠すために滝造に頼んで妾の女中を殺した。左兵衛に見られて強請られたので浩吉に頼んで殺していた。

2017年9月7日木曜日

帳尻屋仕置〈五〉 凶賊

帳尻屋仕置〈五〉 凶賊 坂岡真
 一寸の見切り 馬ノ鞍横丁の口入れ屋「蛙屋」の忠兵衛の息子・重太郎は生まれて四月になる。
 弘前藩津軽家の酒席で剣術指南役・葛巻弥助と徒目付・浪岡兵馬が口論になり、仲裁に入った徒目付・黒石源左衛門が葛巻に斬られた。葛巻は出奔し行方をくらました。源左衛門の息子・源八郎は四年間、葛巻を探し仇を討った。
 四年前、源左衛門は藩商人の抜荷を嗅ぎつけた。友の浪岡に相談した。商人と裏で通じていた浪岡は芝居をし、葛巻に源左衛門を斬らせた。四年後、葛巻は金策のため浪岡を強請った。浪岡は葛巻の居所を源八郎に知らせ、葛巻を消した。忠兵衛に事の次第を教えられた源八郎は帳尻屋の仲間に入り浪岡兵馬を倒す。黒岩源八郎は富田流小太刀を使う。
 凶賊 忠兵衛は北町奉行所内与力・長岡玄蕃に龍神一味の探索を命じられる。忠兵衛は芥集めをしている島帰りの捨吉と会う。捨吉は七年前、盗みをした弟の罪を被り女房・もんを弟・捨五郎に預け自首した。島から帰ると弟は龍神一味の頭になり、もんは情婦になっていた。忠兵衛は一味から逃げたもんを口中医・甚斎のところで匿う。八品商の元締めが捨五郎の父親だった。忠兵衛が探り出した龍神一味が次に襲う商家を長岡に知らせ、逃げる道を拵えた忠兵衛は、捨五郎が逃げてくるのを待ち、捨吉が殺した。
 穴太の頭 石工の親方・岩松と息子・岩次郎が仲違いし、岩次郎は大工になっている。災害で倒壊した富士見櫓の普請をしている。水野家の普請奉行をしている村野主税が不正をしていることに気がついた小俣佐七郎が殺され、佐七郎と親しかった岩松も殺される。作業員の口入れをしていた忠兵衛は岩次郎に聞き、普請の完逐を祝う催しが始まる頃、富士見櫓が崩れる細工をし、どさくさに紛れ、村野主税を殺した。
 八品商の元締め・喜楽屋四郎兵衛に手下になるよう誘われる。

2017年9月6日水曜日

拵屋銀次郎半畳記③ 侠客〈二〉

拵屋銀次郎半畳記③ 侠客〈二〉 門田泰明
 大奥大御年寄絵島が泊まっている「帆亭」が襲われた。狙いは絵島か銀次郎か。
 銀次郎の拵えの助手・仙が連れて行かれた。仙が関係をもっていた床滑七四郎だった。話は手切れだった。銀次郎の無外流の師・笹岡市郎右衛門から床滑家の話を聞く。床滑家には代々の将軍の血が入り、お手打流(斬命流剣法)教授の立場にあった。
 叔父・和泉長門守から、将軍派と老中派があること、手を付けてはならない御金蔵にまで手を付けるほどお金が無いこと、床滑七四郎が将軍の代わりにお手打ち流を使おうとしていることを聞く。
 銀次郎は桜伊家の屋敷でも襲われる。銀次郎の親しい大坂の梅田屋丹吾郎の子分に偽面で化け襲ってくる。
 京野屋の隠居殺害事件から始まった騒動は続いている。

2017年9月5日火曜日

本所見廻り同心控 ぶらり十兵衛

本所見廻り同心控 ぶらり十兵衛 稲葉稔
 深見十兵衛 手先・林町一丁目木戸番・忠吾
 与力・水野栄五郎 朋輩・酒井右京
 煎餅屋 町の厄介者・清次郎が殺された。煎餅屋の茂兵衛が息子・正太郎のお腹の大きな嫁に手を出されるのが怖くて殺していた。一日置いた次の日幸造に川に運んで貰った。茂兵衛は役人が来る前に煎餅屋を幸造に譲り、手伝いのみよと一緒になることも決めた。訪れた深見十兵衛は何もかも判った。喋ろうとする茂兵衛を止め、下手人は江戸を離れたことにした。
 毒饅頭 大工の棟梁の娘・通18才には好きな人がいた。薬種問屋大倉屋も手代・伊三朗だった。伊三朗には身請けしようと思っている女郎・静がいた。静の身請け金が五十両から百両になり諦めかけていた。伊三朗の朋輩・周次には手をきるように言われ、伊三朗が決心した。別れ話をしに行く。静の所にあった饅頭を食べ帰って伊三朗はその夜毒で死ぬ。
 通を好きな指物師の八十吉がいた。通は八十吉に頼んで静に饅頭を届けていた。通は伊三朗が饅頭を食べて死んだことを知った。通は番屋に呼ばれ静を殺そうとしたことを言われる。しかし、八十吉は静に頼まれた饅頭に毒が入っていると思い買い替えて持って行っていた。静が毒を仕込んだことが判った。十兵衛は通に骨身に応えたなら真っ直ぐ生きなと言う。
 永代橋 町芸者・八重は座敷に呼ばれた寿屋松之助が死んだ。酒井右京は八重を捕まえた。八重は火事で両親を失った小吉14才を引き取っていた。小吉は付き人をしていた。小吉はとよが松之助の部屋に入ったのを見た。帰ってこない八重を心配してひまし油を買い、とよの部屋に隠した。十兵衛は小吉に八重を助けたいからと他人に罪を着せるようなことをしてはいけないと諭し、二度としないと言う小吉に誰にも言わないと言う約束をさせる。松之助は心臓発作だった。八重は帰ってきた。
 法恩寺橋 大工の千吉20才は棟梁の倅と喧嘩して怪我をさせたことで棟梁に暇を出された。他の大工に触れを出し、雇って貰えない。病気の母もいた。千吉は男が飛び出してきた家から財布を盗んだ。千吉は飛び出してきた男・浅次郎を見た。興味を持ち付いて行き、浅次郎が男を殺すのを見てしまった。番屋に届けたいが自分が盗みをしたことも知られてしまう。悩んでいた。十兵衛は千吉が近くにいたことを知り問いかける。千吉は全てを話した。浅次郎の家まで行き、千吉が証人になる。浅次郎と女房・貞が捕まる。二人と殺された男も盗人だった。財布が盗まれたことは訴えもなかったから帰れと言われる。十兵衛は棟梁はお前に帰ってきて欲しいようだ。一度頭を下げれば戻れるぜ。と声かけした。真面目が一番だ。千吉は頭を下げた。
 椋鳥 十兵衛は馴染みの香取屋で毎日人待ちしている女に興味を持つ。女は松。出稼ぎ労働者・椋鳥・常吉と懇意になり、お金をためて一緒に田舎で店を持とう一月待ってくれと約束していた。松は騙されたと思いながらも待っていた。十兵衛は常吉を探す。常吉は未だいた。常吉は長五郎と泥棒しようとしていた。二人が狙っている質屋の縁側に上がり込んだ時捕まえた。長五郎は元泥棒だ。十兵衛は二人を許した。まつはずっと待ってるぜ。と言ってやる。三日後十兵衛は旅姿の常吉とまつを見た。
 妾騒動 十兵衛は庄吉の父親を探しにきたという作造という老人に会った。庄吉の母親・たみが亡くなり本所の伊勢屋という店の人ということだけが判っていた。父親は子どもが出来たたみを捨てたようだ。瀬戸物屋の仙次郎だと判った。仙次郎はやくざの一の子分・惣吉の女の妹・きよを孕ませ手切れ金を渡そうとしていた。きよはいずれ一緒になると言われた、信じていたのにという。仙次郎を殺そうとする惣吉を止める。十兵衛は仙次郎に女房とは別れられないが、きよの面倒は生涯みるとを約束させ惣助を納得させた。たみを好きだった料理屋の板前・勘助が子どもを預けて欲しいと言ってきた。女房も承知だと。庄吉は勘助に引き取られることになった。

2017年9月4日月曜日

雇われ師範・豊之助⑥ 鬼婆の魂胆

雇われ師範・豊之助⑥ 鬼婆の魂胆 千野隆司
 千代丸は探していた姉・たえが見付かった。金貸し黒鋼屋錐右衛門の女房になっていた。面倒を見ると言われるが、千代丸は軽業師を選ぶ。気持ちに蟠りがなく軽業が出来新しい技に挑戦し充実する。
 若の娘・美代が浪人の親子を来栖道場に連れてくる。兄を殺した瀬戸銀之助を探して十二年、仇討のために旅をしていた羽黒川次郎兵衛34才、息子・次太郎10才だった。剣術の稽古をしながら仇を探す。
 来栖道場の師範代・永田豊之助は北町奉行・永田備前守正直の三男。養子に行く気がない。二十三才になった昨年、一刀流中西道場の師範代にならないかと声がかかった。条件は傘下の傾きかけた来栖道場の立て直しだった。前道場主が借りた借金の返済のための、借金取りと若の用心棒をしながら、門弟を増やしていた。
 北町奉行所定町廻り同心・北山参次郎が出入する。父親の配下であり、中西道場の兄弟子だった。四人組の盗賊を追っていた。火を付け、火を消している間に盗みを働く。鬼脅しの一味を見た者がいなかった。探索の結果、押込む前に見張っていた屋台の酒屋がいたことが分かった。鬼脅しの頭は羽黒川の仇だった。武士をやめ酒屋の主になっていた。次の狙いの商家を突き止め、狙う日を突き止める。千代丸は見張り、豊之助も一緒に羽黒川親子も商家に入り、火消しの準備をし賊が来るのを待つ。三人は捕まえ、頭は仇討で倒される。
 来栖道場の門弟は四人から二十三人になった。中西忠兵衛から師範代の一人として迎えると言う言葉を貰った。豊之助は迷っていた。来栖道場では老人組の稽古、子ども組の稽古、午後は武家の門弟の稽古それぞれが違った稽古をしていた。武家の門弟が永田先生の指導を受けたいと言ってきた。中西道場へ行かないことを決めた。
 錐右衛門が買い取った道場を九十両で買わないかと言う。裏に住まいもある。若は金を貸すから今まで通り少しずつ返せばいいと言う。若が死ねば美代のものになるとまで言う。若は豊之助を離したくないのだ。豊之助は話に乗った。
 中西忠兵衛に断りを入れた。本所横網町に小さな道場を持つことを話す。
 実家に行き話す。父は道場の師範になることを認めた。道場の土地は永田家が買う、両親からの餞別だった。美代と添いたいということも話す。母は祝言を挙げる前に三ヶ月ほどこの屋敷で過ごし、永田家の嫁としての躾けをするということを提案された。
 中西忠兵衛から「中西派一刀流 永田道場」の看板が送られた。

2017年9月3日日曜日

御刀番・左京之介③ 数珠丸恒次 

御刀番・左京之介③ 数珠丸恒次 藤井邦夫
 汐崎藩御刀番・左京之介は水戸藩の所持した数珠丸恒次の目利きをした。水戸藩から数珠丸恒次が盗まれたために京之介は水戸藩から疑われる。
 京之介は刀の行方と背後を探る。水戸藩の刀を手に入れた方法は騙しだった。汐崎藩は水戸家の陰謀で藩主交代をしなければならなくなり、藩主の母親が水戸家の娘であり、現藩主が幼少であるために水戸家の干渉を多大に受けていた。京之介は水戸家の干渉を少なくするために水戸家の弱みを掴みたかった。
 水戸家は江戸家老・本田修理の命令で御刀番・神尾兵部の下、裏柳生の左馬之介が動いていた。刀を盗んだのは根来忍び・白虎と判る。正体が掴めない。左馬之介は根来忍びの罠に掛かり爆破されたが、火傷を負い小川に転がり込んだ。裏柳生の抜け忍・楓は根来忍の蛍を助ける。捨て駒にされる忍から抜けないかと誘う。組頭・喜十が逃げるために蛍を盾にしたことで、喜十を倒そうとするが、相討ちになる。裏柳生の左馬之介の代わりに五郎丸、根来は不動が現れる。
 京之介は水戸家が久遠寺から数珠丸恒次を騙しとるために似せ刀を造らせせ、殺されそうになった山城屋義兵衛を助け出した。
 前汐崎藩藩主・宗憲は水戸家に毒を盛られ、身体と意識が不自由になったが、意識はもどっていた。水戸家憎しの気持ちを根来・白虎に利用され、白虎は近習・桂木直哉と名乗り宗憲の傍に付いていた。刀を盗んだ根来の背後にいたのは汐崎藩の元藩主だった。京之介は己の遺恨で陰謀を企て藩を危機に陥れた、愚かな所業と言う。
 宗憲は切腹し、京之介は介錯した。京之介は白虎を倒し、数珠丸恒次を手に入れる。義兵衛に折紙と水戸家に強奪されたが久遠寺にもどったという由緒書きを作り久遠寺に戻した。
 火傷に覆われた左馬之介が本田修理が道連れにしたいそうだと命を取りに来る。左馬之介は敗れた。数ヶ月後、噂が広まり本田修理は切腹した。宗憲の願いは叶ったか。

2017年9月2日土曜日

剣客同心親子船 菊と鬼

剣客同心親子船 菊と鬼 鳥羽亮
 南町奉行所の隠密廻り同心・長月隼人50才の長男・菊太郎16才は二年前から見習いに出ている。
 武士を含む五人が押込む事件が続いた。隼人は奉行・跡部能登守良弼から指示され探索に加わる。菊太郎も連れて行く。
 御用聞きの猪吉が殺され、同心の室川が殺される。手口から押し込みの一味の犯行だと思われた。
 一味は御家人の次男か三男・剣道場の兄弟弟子・堀内と酒井、浪人・野沢、町人・利根造、父親が南町に捕まった入船の伝蔵の娘・れんだった。れんが堀内を誘い酒井と道場を造ろうと思った。堀内と野沢は倒され、三人は捕まった。

2017年9月1日金曜日

口入れ屋用心棒㊲ 御上覧の誉

口入れ屋用心棒㊲ 御上覧の誉 鈴木英治
 上覧試合を前に、淀島登兵衛に、老中首座内藤紀伊守が命を狙われているので守って欲しいと頼まれた。倉田佐之助が行く。内藤家の室谷半兵衛は御前試合にでる。四ヶ月前に内藤家に仕官した。室谷が内藤を守っている。
 上覧試合で、湯瀬直之進は決勝で室谷に負けた。優勝した者には二千両と刀が貰える。室谷は将軍から刀を貰う時、刀で将軍を殺そうとした。倉田が将軍を引っ張った。刀が顔をかすめたが生きていた。佐之助は室谷を投げ飛ばした。室谷は殺された。
 室谷の旧主・井上家は浜松から陸奥棚倉へ配置替えされた。家臣は半分以上を解雇し、主君は気鬱になった。老中にも恨みを持ったが将軍へも恨みを向けた。狙いは将軍の死と内藤家のお家断絶だった。