2017年8月30日水曜日

沼里藩留守居役忠勤控 信義の雪

沼里藩留守居役忠勤控 信義の雪 鈴木英治
 深貝文太郎27才 沼里七万五千石水野家、江戸留守居役。七年前沼里で起こった八軒の武家屋敷に入った盗賊を探しだし捕まえた。藩主・靖興から刀・摂津守道重を拝領する。部屋住みだった文太郎が小姓に抜擢され、四年前、定府の深貝家に婿入りし留守居役になった。義父が二年前に亡くなる。義母・八重。妻・志津。
 相役・高足惣左衛門41才が愛人殺しで、目付けに捕まる。真犯人を捕まえるという文太郎に高足は「さんずのかみ が絡んでいるかもしれない」と言い残す。さんずのかみは三殿守君龍という刀工のことだった。高足は横行している辻斬りの正体に気がいたことを辻斬りが知り、睡眠薬で寝ている間に愛人を殺され犯人にされた。文太郎も気がつき誘き出して捕まえた。犯人は北町奉行所倉河敦賀守の内与力・浦田右馬介だった。「きさまを必ず苦しめてやる」と言い捕まった。斬首になった。倉河は辞職した。文太郎は、高足を見張っていて密告した者がいるはずだと思うが、そのままになった。
 半月後、志津が死んだ。秋に生まれず予定の子どもも一緒に。
 

2017年8月29日火曜日

夜叉萬同心⑤ もどり道

夜叉萬同心⑤ もどり道 辻堂魁
 九月 隅田川原で塩仲買問屋の隅之江の隠居のお付き女中・豊が死んでいるのが見付かった。 
 北町奉行小田切土佐守の内与力・久米信孝から、蕎麦屋あやめを調べるように言われる。あやめの亭主・常五郎はあやめの権八で、あやめは泥棒宿だという。また権八は浅草界隈の縄張りを手に入れ盛り場の貸元になろうとしている。谷次郎谷三郎の縄張りを狙い谷次郎を始末した・・・と垂れ込みがあった。
 七藏と樫太郎は口入れ屋になり、あやめに近ずく。あやめに出入する指物師職人・伊野吉に目を付ける。甲に伊野吉を探って貰う。谷三郎が殺された。二日後、常五郎、夏、京次、秀の死体があやめで見付かった。
 十月 文の幼馴染み・豊を慕っていた妹分の隅之江の女中・清が萬七藏に会いに来る。豊は隠居・純を強請っていた男・正五に殺されたのだと言う。純は正五にお金を渡していた。七藏が会って話をした時正五は豊が時々男と会っていたことを言う。犯人はその男・隅之江の親戚筋にあたる手代の恵吉だった。隅之江の取引先の店に婿に入る縁談が整っていた。豊に子どもが出来たと聞き、殺していた。
 正五は博打で儲けた所を見ていた地回りの富太郎と浪人に殺され、金銭を奪われた。純は正五の女房・藤を引き取り寮で一緒に暮らした。隅之江の家付き娘だった純は、藤と正五と付き合いがあった。正五は売れない絵師だった。二十歳の頃、正五と駆け落ちしようとした純を、正五の女房だった藤が生きる世界が違うのだと諭した。それ以後付き合いはなかった。純が七藏に語った。
 十一月 あやめの権八の手下・瓜助が捕まった。瓜助は七藏に話したいことがあると呼び出した。瓜助はあやめで四人が殺された時、一人だけ逃げていた。
 伊野吉が権八に頼まれて谷次郎と谷三郎を殺した殺し屋だということ。足を洗うという伊野吉を辞めさせたくなくて秀が、女郎・三津を殺してしまったこと。伊野吉が四人を殺したことを話した。
 指物師伊野吉は三津の遺骨を持って三津の郷里・葛西の金町村に行っていた。村外れで一閃を交えながら伊野吉の来し方を話す。指物師の親方と裏家業の浪人に付いて二十歳の頃には指物師も裏家業も一端になっていた。夜叉萬に殺された。

2017年8月28日月曜日

百万石の留守居役〈九〉 因果

百万石の留守居役〈九〉 因果 上田秀人
 参勤交代でお国入りした。藩主・綱紀は加賀領内の瑞龍寺で襲撃される。綱紀は瀬能を江戸における本多の爺(本多政長)に育てることにした。前田の闇を見せる。その一つ利長の墓を守る火灯り人。彼らが綱紀を守った。襲ったのは富山の城代近藤主計の命令
 小沢兵衛が堀田家から放逐された。前田家は取り押さえに失敗した。小沢は酒井侍従忠挙の下屋敷に逃げ込んだ。武田法玄一派が屋敷を襲った。小沢は殺され遺体は前田家の門前に運ばれた。
 綱紀に本多の婿になる覚悟はしていないが、琴殿を迎える覚悟はした、と言った。瀬能数馬と本多琴の仮祝言おこなわれた。琴は妹・美津の縁談は任せて欲しいと言う。大切なのは美津様が幸せになること。
 数馬は石動庫之介と本多の軒猿をまとめている刑部を連れて福井へ出立した。
 江戸では武田法玄が加賀の上屋敷を襲う用意をしていた。佐奈を殺すために。
 

2017年8月27日日曜日

香彩七色 香りの秘密に耳を澄まして

香彩七色 香りの秘密に耳を澄まして 浅葉なつ
 秋山結月 この世界には目には見えないけど大事なものがいっぱいある。と祖母に教えられて育った。仙風館大学人文学部一回生。
 鼻が効き、食べ物に含まれるものはよく分かる。コーヒーの匂いに釣られ薬学部第一薬草園の小屋を見付ける。小屋を隠れ家とする、神門千尋と薬学部芳香医療研究室教授・澤木孝之助と出会う。神門千尋は香道宗家、神門家の跡継ぎ、小屋で城の模型を作っている。
 初恋 予備校以来の知り合い清水啓太に交通事故で亡くなった友達の手紙を見せられる。何も書いてない手紙にうっすら匂いが漂うだけの手紙。千尋に相談し、亡くなった友達の知り合いに会いに行く。啓太は安土城の模型で千尋を釣り一緒に行く。匂いの意味は告白だった。啓太と一緒に墓参りに行く。ローズマリーを持って行く。君を忘れない。
 勝れる宝 隠れ小屋で隆平と会う。千尋の従兄弟の仙風館高校
 二人に連れられて行った東水寺で結月は初めて香道に接した。住職・海棠は三種類の香木を出し、今度結婚する檀家の娘さんに送ろうと思うがどれがいいだろう選んで欲しいというものだった。
 結婚する娘は檀家も娘ではなく住職の娘だった。東水寺から送られた藤の木のある団子屋「ふじや」でアルバイトをしている結月と馴染みのたかなしゆかり(小鳥遊紫)だった。香木を送るよりも確執があって出ている娘に会いに行ってやれ。と言った。
 君を思う 結月の近所の高校生がシガレットケースを持っているのを見付かり停学になった。煙草を吸わない愛美がシガレットケースを持っているのはおかしいと思った結月は隆平と千尋の力を借りて調べる。ふっと匂ったオシロイバナの匂いを手掛かりにして。
 愛美が隣町から越して来る前の幼馴染み・鈴原杏奈の両親が離婚し、彼女の生活が一変していた。生活費や学費のためにガールズバーでアルバイトをしていた。愛美はオシロイバナの咲く公園で杏奈が通るのを待っていた。シガレットケースを返そうと思って。シガレットケースは愛美の母親が捨ててしまった。杏奈は愛美と話すことを拒否する。結月はシガレットケースを探しに行く。四人で
 香、満ちる 「ずっと友達だよ」とメッセージが書かれたプリクラが貼られたシガレットケースを見付けた。二人は泣き笑いして仲直りした。杏奈の家のことは市に相談する。

2017年8月26日土曜日

小伝馬町牢日誌③ 秋声のうつろい

小伝馬町牢日誌③ 秋声のうつろい 速水俊
 文政十年 1827年 大賀弥四郎 40才
 朴訥の罪 中間・助蔵が主人・旗本宮本太一郎を殺し牢に入った。弟・兵藤正次郎が兄が助蔵に殺されたことに納得がいかないと弥四郎に言う。
 太一郎は、家斉上覧の御前試合において、見事優勝を果たした。相手向井の顔面に怪我を負わせたことを悔やみ、木刀を持てなくなっていた。妻に暴力を振るった。助蔵の奥様を助ける気持ちと太一郎の足がすくむことが相まって助蔵が主人を殺すことになったなったようだ。助蔵は打ち首になった。妻は自害した。
 幽霊力士 元喜多方藩お抱えの相撲取りだった寅五郎が、客を殴り廃業に追い込まれ、商家に押し入り盗みを働くようになり捕まり処刑された。寅五郎の手形を残す盗人が現れた。
寅五郎がやじを飛ばされ殴った男・彦三郎の財産と命を狙うという手紙が届く。寅五郎に用心棒と浄土坊という修験者が付いた。彦五郎は誰も出入しなかったお堂で殺された。犯人は浄土坊だった。彦三郎は一旦殺された真似をし、生き返って寅五郎と戦う手はずになっていたが、死んだ真似をしている時に浄土坊に殺された。浄土坊は寅五郎の手下だった。
 毒婦 四人の男を次々と殺した女・陽が牢に入ってくる。浮田金五郎は陽に取り込まれてしまう。陽は市中引き回しの上小塚原の露と消えた。浮田は十日の出仕停止になった。
陽は嘘を重ね自分の中で真実になってしまっていたのかもしれない。
 狙われた牢名主 牢名主長兵衛が命を狙われた。命を狙った男・亥之吉を調べると、水茶屋の香が浮かんだ。香の実家・酒問屋尾張屋は長兵衛に押し入られ千両盗まれ店が潰れたと言う。長兵衛を殺したいという香の言葉を聞き、亥之吉は長兵衛を殺そうとした。長兵衛は尾張屋は知らないと言う。博徒・甚五郎は香から長兵衛の隠し財産のことを聞き、長兵衛の命を狙う噂を広げ長兵衛を強請り財産を奪うつもりだった。甚五郎と牢から出た長兵衛は壺振り勝負になったがいかさまだったことが分かり、甚五郎は短筒を出す。弥四郎の「立花陽明流居合道奥伝正座逆手斬り」でやられた甚五郎は観念した。
 亥之吉は騙されていたことを知り、香を刺し、自分も死んだ。
 

2017年8月25日金曜日

出入師夢之丞覚書③ 梅の香

出入師夢之丞覚書③ 梅の香 今井絵美子
 雪蛍 けいを窃盗一味のお頭・銀狐のお蝶の手から救い出し、お蝶は捕まった。けいは居酒屋ほおずきのりゅうの元に預けられ二ヶ月が経った。
 荒川作之進は横網町に道場を開いて半年。繁盛している。田中の娘・千代6才は一献の女将・力弥が育てている。二人が好き合っているのだから一緒になればいいという夢之丞に力弥は誰にも言うなと、自分が病気でもうすぐ死ぬのだと言う。もうすぐ姿を消し、誰も知らないところで死ぬので荒川ととよが一緒になって千代を育ててほしいと言う。次の日、力弥は姿を消した。着るもの店、お金、千代と荒川、全てをとよに託す。と言う書き置きを置いて。荒川に責められるが、力弥のいなくなった理由は言えない。元気な姿を覚えて置いて欲しい、やつれた姿を荒川に見られたくないという力弥の気持ち。荒川は探すと言う。
 冴ゆる夜 古澤求馬は三月前に妻帯した。
 はは・真沙女が東堂の所に行った。東堂は死んでいた。殺されたのだろう真沙女は言う。
 梅の香 真沙女が夢之丞に付いてほおずきに行く。
 力弥が亡くなったという通知が届く。寒雀尼の庵を訪れ話を聞く。墓に参る。荒川には話さないでおこうと思った。
 春の愁 真沙女は静乃の祝言の帰り、国許の使用人・久米と出会う。久米には関六郷という窃盗一味を束ねている親分の見張りが付いていることを知り、岡っ引き・熊伍の女房が遣っている八文屋へ久米を連れて行く。そのまま久米を店で働かせて貰う。夢之丞に六郷と話を付けて久米を引きとれるようにして欲しいと頼む。
 庭から骨が見付かった家を真沙女が借りると言う。
 

2017年8月24日木曜日

出入師夢之丞覚書② 星の契

出入師夢之丞覚書② 星の契 今井絵美子
 力弥 茶飯屋「一献」の女将 元辰巳芸者。妹が男に勾引かされたと出入師鉄平に助け出しを頼む。
  荒川作之進 力弥に生活の面倒を見てもらいながら、裏切ったような形で力弥の妹分・とよと五才位の女の子と長屋で暮らしている。
 神道無念流坂下道場で師範代をしていた三年前、御徒組田中修造が練習中に心の蔵の発作で亡くなった。鬱々とした日を送り力弥の元に転がり込んだ。田中の妻女が組屋敷を出、妻女は亡くなった。力弥に相談出来ず、残された娘を引き取りとよに子守をしてもらっている。夢之丞に力弥と話しをすることを奨められる。
 真沙女 両替屋吉富の娘・静乃に鼓と茶を教える。
 鶴平・熊伍 二年前勾引かされた女が殺されて見付かった。また勾引かしがあった。夢之丞に助けを頼む。殺されて見付かった女は首の皮一枚が斬り残されていた。村雨からそんな腕の人物のことを聞く。すご腕の卜部勘助は鳴海屋の大旦那になっていた。掏摸の手先になっている十才のけいが、蔵の中から助けてという声を聞いた。女の人を助けてあげてと鉄平に言う、鳴海屋の寮の土蔵だった。鳴海屋の息子が勾引かし父親勘助が手助けしていた。
夢之丞は勘助に傷を負わせ娘を助ける。勘助は自死した。
 ぶん 大家の娘 夜になっても帰らないぶんを心配して大家・徳兵衛が夢之丞に相談する。ぶんは勝太郎にお酒を飲まされ小料理屋に置き去りにされ、二人の男に好きにされるという話を聞いた隣の部屋の女の人に助けられ、女の人の家で一晩過ごし帰ってきた。助けてくれた女の人を探すがいない。一晩過ごした家はぶんの母親が生活していた家だった。ぶんは死んだ母親が助けてくれたのだと信じた。

2017年8月23日水曜日

出入師夢之丞覚書 母子燕

出入師夢之丞覚書 母子燕 今井絵美子
 半井夢之丞 28才 鴨下道場の師範代をしながら出入師をしている。元服前、父親が政変に巻き込まれ濡れ衣を着せられ藩を追われた。一年後父親が亡くなり、母親と二人暮らし。
両替商吉富の養子に望まれるが断る。東堂に刺客として個人的に雇うと言われ断った。
 半井真沙女 夢之丞の母。父親の上司・東堂内蔵助からの引きを待っている。
 鴨下弥五郎 48才 一刀流村雨道場の師範代から独立、鴨下道場を開いた。
 古澤求馬  御徒組み三十五俵一人扶持。母・美乃里。異腹の姉・絵師の萌がいる。
 萌 夫・歌川豊春(里中松之丞)の前の妻が亡くなり、娘・幸がいることを知り引き取るが、夢之丞の奨めで義母・美乃里に預けることにした。十五年ぶりに古澤家に行く。
 ぶん 18才 夢之丞を慕う、夢之今日が住む長屋の大家の一人娘
 紀藤直哉 元薩摩藩士 呉服商丸登屋の内儀・きよ乃との仲を噂され藩を離れた。十四年ぶりに会った紀藤は昔の手紙と交換に五十両を要求する。夢之丞を出入師として会い、紀藤は五十両を借りることになった。きよ乃に五十両を返した。
二つに分かれた薩摩藩に雇われた。調所に藩を追い出されたので斉彬側に付いた。由羅側に村雨道場の池田謹也がついた。夢之丞を誘うが断られた。
 千代丸 辰巳芸者、置屋の女将 芸者・美世路を霊媒師から助けて欲しいと頼む。夢之丞は阿片窟から美世路を助け出し、阿片のことを鶴平親分に知らせる。
 伊之吉・鉄平 夢之丞の出入師の仲間
 熊伍・鶴平 十手持の親分
 りゅう 居酒屋ほおずきの女将 山城屋の主人の妾と思われているが本当はは娘。吉原に売られ水揚げ前に探し出した幸右衛門に身請けされた。幸右衛門が亡くなった。
 垂水百輔 国許の竹馬の友。昨年東堂の口車に乗り、策謀が漏れ強賊の首謀者として所払いになっていた。東堂の下で皆を集めた江種の駕籠に向かって駆け出し斬捨てられた。

2017年8月22日火曜日

京都・高野路殺人事件 人情刑事・道原伝吉

京都・高野路殺人事件 人情刑事・道原伝吉 梓林太郎
 安曇野のホテルで東京のイラストレーター・早見有希世の他殺死体が見付かり、道原伝吉が調べる。
 有希世は安曇野の優良企業アイケ理研の社長・笛木岳彦の支援を受けていた。笛木社長は京都に行ったはずが行方不明になる。笛木の愛人・長尾松美が笛木の高野山に買った家で殺される。高野山の家を見に行った笛木の息子・克則が高野山で殺された。
 京都駅で笛木岳彦が二人の男に拉致される映像が見付かった。拉致した男の一人が東京で殺された。
 事件は、笛木の秘書・矢代の計画したものだった。一年前、役員に選任されるかと期待していたが推薦されなかった。役員を決めるには、社長が推薦し、大株主・柴田瀧太郎の許可を貰う。矢代は笛木が推薦しなかったと思った。来年、笛木の息子・克則が推薦されると言う噂を聞いた矢代は、笛木を窮地に追い込むストーリーを考えた。柴田の指示で揉め事を処理している梅崎を仲間にした。
 梅崎は高野山にいる長尾松美を殺した。京都で笛木を拉致し、和歌山のマンションの一室に閉じこめた。梅崎の知人・滝川が見張りに付いた。梅崎は克則を殺した。矢代は梅崎が危険な人物とみて殺した。梅崎が殺されたことを知った滝川は笛木を松本市まで送って降ろした。矢代は逮捕され、滝川も見付けられた。笛木は辞任したいと思ったが柴田は会社の信用を立て直せと言った。

2017年8月21日月曜日

犯罪心理捜査官セバスチャン③ 白骨上・下

犯罪心理捜査官セバスチャン③ 白骨上・下 M・ヨート&H・ローセンフェルト
 トレッキング中に女性が発見した6人の遺体。白骨していたが頭蓋骨に弾痕があったため、トルケル率いる殺人捜査特別班に捜査要請が出された。トルケルは迷ったあげく、迷惑男セバスチャンにも声をかけた。
 ヴァニャがアメリカFBIの研修に行く可能性があったため、新人・イェニフェル・ホルムグレンが入った。
 身元が判らなかった。二人はトレッキングしていたオランダ人、残り四人は海外旅行に行ったとされていた、シャールス・セーデルクヴィストの弟・アダム・セーデルクヴィストの妻と子ども二人だった。
 シベカ・ハーンはアフガニスタンからの移民、十三年前に突然行方不明になった夫のことを調べてくれるように頼んでいた。初めてやっと「徹底検証」という番組の記者が尋ねてきた。保守的な周りの人々に意見され断ってしまうが、息子・メヘランが調べ出す。ヨセフという男に連絡を取ったために命を狙われることになる。
 十三年前、シャールスは軍情報局にいた。ヨセフは潜在しているテロリストをシャールスに耳打ちしていた。もう見付からないようになった頃ヨセフは関係のない二人、シベカの夫と従兄弟の名前を耳打ちした。アメリカ人は二人を尋問し殺してしまった。二人の失踪事件の捜査打ち切りをシャールスは弟・アダムに頼んだ。アダムは打ち切りにしたが、自身が調べ始めたためにアメリカ人・パトリシアがアダムの家族を殺し、見られてしまったオランダ人二人も殺して埋めていた。
 アダムがその後半年は生きていたようにされていたり、DNA鑑定にシャールスが他人のDNAを提出していたことで不審を抱いたトルケルたちはシャールスを追っていた。メヘランのことを知りメヘランの携帯から居所を探り追って行く。
 ヨセフはシャールスに殺され、シャールスは追いつめられ殺人捜査特別班のビリーに射殺された。メヘランは助けられたが真相は告げられないままだった。トルケルたちもシャールスが死んだため真相は判らないまま。
 シャールスの上官だったアレクサンデル・セーデリングも殺される。
 トルケルは何でもマスコミに筒抜けになるイェムランド県警に四人の身元を含む捜査打ち切りの結果を知らせた。これからどうなるか。神のみぞ知るということ。
  
 ヴァニアの父親の旧悪の書類がセバスチャンからセバスチャンにつきまとっている女・エリノールの手で、当局へ渡ってしまった。父親・ヴァルデマルが捕まる。牢で病気が判り、腎臓移植を希望するヴァニャは適性検査をうける。親子で無いことが判ってしまう。
 殺人捜査特別班の鑑識官・ウルスラがセバスチャンの家に泊まっている時、玄関のインターフォンを鳴らしエリノールがやってくる。エリノールは覗き窓にピストルを構えている。

2017年8月17日木曜日

知らぬが半兵衛手控帖⑳ 夢芝居

知らぬが半兵衛手控帖⑳ 夢芝居  藤井邦夫
 昔馴染 金貸しのときが命を狙われた。狙ったのはときの昔馴染み・呉服屋「越後屋」の後添えつただった。つたの叔父・越後屋の下男・作造が、つたの旧悪が越後屋の主人に伝わらないようときを殺そうとした。つたも作造の考えをうすうす知っていた。姿を消した。
 女誑し 大久保忠左衛門からの以来で娘の恋わずらいの相手を調べる。黒沢左馬之介。何人もの女を騙してお金を貢がせていた。馴染みの女将の亭主に毒を盛られて死んだ。依頼を受けた娘の父親は、徒目付け組頭だった時に、旗本の悪行を暴き取りつぶしにした。黒沢の父親はその旗本の用人だった。恨みを晴らすつもりで娘に近づいたのか。
 幽霊花 幽霊の噂が流れ、幽霊を調べに行った男が殺された。十年前、盗賊の住み家だった茶店で茶店の夫婦が殺された。天狗の政五郎夫婦で、怪我をしていた娘は助かった。松風の義兵衛が頭の隠し金を盗もうとした。十年経ち娘が両親の敵を討とうとしていた。半兵衛は松風の義兵衛と配下を捕まえた。佐吉は娘の幽霊に殺されたことになった。
 夢芝居 直参旗本白崎紀一郎は転がった人参を拾おうとした百姓を殺した。祖父を殺されたと娘・ちよは紀一郎を殺そうとした。斬られそうになったちよを庇い、鶴次郎は斬られた。鶴次郎は良い夢を見させてもらいました。半兵衛の旦那、あっしはちょいと夢の続きを・・・と言って死んだ。
 紀一郎は十三才で女中に手を出し、止めに入った家来と女中を斬っていた。紀一郎は上様御側御用土屋家の娘との縁談が整っていた。
 半兵衛は紀一郎に果たし合いを申し込んだ。秋山久蔵の立会で紀一郎を倒した。

2017年8月16日水曜日

蔦屋重三郎事件帖〈一〉 江戸の出版王

蔦屋重三郎事件帖〈一〉 江戸の出版王 鈴木英治
 朋誠堂喜三二 出羽久保田藩佐竹家江戸刀番・平沢平格・月成
 恋川春町 駿河小島藩一万石江戸留守居役・倉橋寿平
 佐竹家上屋敷で鴨志田昭之進が殺され、一枚の絵を残した。平格は絵解きのために蔦屋重三郎に見せる。重三郎は「明日、米問屋・田光屋に押し込みが入ること、賊は六人組みその内二人は忍 とりいともごろう と使番・いそだふじたろうだ」と読み取った。連絡をとり六人は捕まった。鳥井倫五郎と磯田藤之助だった。平格は江戸留守居助役になった。
 平賀源内の命が狙われた。源内の小者・福助が殺された。源内が作った薬で孫が亡くなった油問屋久寿田屋の主・季右衛門が殺し屋を雇っていた。
 源内は笠松克太郎を殺し、捕まった。小伝馬町の牢獄で獄死した。
 源内は田沼意次の領地・遠州相良で笠松克太郎と供に住んでいる。源内は自分が作った薬で子どもが亡くなったことを憂い全てをなげうって相良で暮らす覚悟をした。
 重三郎が考えたことだった。
 
 
 

2017年8月15日火曜日

浅草料理捕物帖〈四〉 てんぷら擬宝珠 

浅草料理捕物帖〈四〉 てんぷら擬宝珠 小杉健治
 菊屋橋のたもとの屋台天ぷら屋「展開屋」がある。店主の弥吉は十四才の時、客の男に天ぷらを食べさせてもらい、母親の薬代を恵んでもらった。弥吉は十年前の恩人を探すため、屋台を先代から引き継いだ。ついに喜久次と名乗る恩人が現れた。が、現代の喜久次に疑問を持ち始める。
 天ぷらに興味のある幸助は弥助から話を聞く。弥助の先代・亀二は幸助の実家・なみ川の事件に関係が有りそう。幸助は聞きたかった。亀二が地獄送りになった悪行と屋台店の元手の話をする直前、亀二は亡くなった。亀二は文蔵と昔馴染みだった。屋台は奉行所の許可を与えられていた。
 喜久次が話す人、店に関係する人が殺されて行く。喜久次の本名は銀次。今は殺し屋になっていた。銀次は弥吉に話す。和太郎の内儀と逃げた喜久次は内儀を岡場所に売っていた。和太郎の頼みは目の前で喜久次を殺すこと。和太郎の頼み料は、飯田屋と美香堂の紹介。
飯田屋の内儀は病気で激痛に悩み、殺してくれと何度も訴えていた。飯田屋の婿は美都屋の内儀と夫婦のようなものだから離婚させようとすると手切れ金を要求した。隣で幸助は聞いていた。
 銀次は捕まり、殺したことは認めたが、頼まれたことは言わないまま、獄門になった。
和太郎は昔の内儀を身請けした。お金は銀次から出ていた。
 幸助は文蔵の信頼を得られた。なみ川の事件の真相糾明に前進したか。

2017年8月14日月曜日

奈良町ひとり陰陽師

奈良町ひとり陰陽師 仲町六絵
 奈良の中でも歴史的な趣を残した「奈良町」。奈良町の一角にある「くすば菓子店」の息子・楠葉志乃夫20才は奈良ではひとりとなった由緒正しい陰陽師だった。
 小学三年生の時、シノブと同い年の当麻ゆかりは紐を解いたために逃げた狛犬を追って、普通の人間には入れぬ場所へ入ってしまった。普通の人には見えないものが見えるしのぶは祖父と同じ陰陽師になりたくはなかったが、この時会ったご先祖様・天竺ムスル・楠葉西忍に会い、修業すればゆかりと自分がひどいめに遭わないことを聞き、陰陽師になる決心をした。ゆかりは格闘家・当麻蹶速(とうまのけはや)の子孫かな。と言われあやかしを見る力と殴る力を得た。墨香という齢四百年の猫又がお目付け役として黒猫が送りこまれた。
 祖父がなくなる高校三年生まで陰陽師になる基礎の修業をした。奈良県の南部の奥の寺社に登山を兼ねて参拝する。秘伝書「南都要集」の重要部分の暗記。鎮宅霊符神社のお札がよく効くよう呪法をかける。お札を持って行く。
 御水取りの火祭りを待つ、青衣の女の人、ご機嫌斜めな猿沢池の辺の采女神社の女神様、走る大黒様まで現れる、奈良町で不思議を解決する。

2017年8月13日日曜日

孫連れ侍裏家業 仇討旅

孫連れ侍裏家業 仇討旅 鳥羽亮
 痛み茂兵衛は長屋に暮らしながら、孫・松之助10才と、倅夫婦を殺した敵を追っている。
倅・恭之助は出羽国亀沢藩七万石の勘定奉行だった。普請方・岸崎虎之助と徒士・小柴重次郎に恭之助夫婦は殺された。
 茂兵衛は川村錬三郎、弥助等と、口入れ屋・「福多屋」の富蔵から裏仕事を貰い生活している。
 呉服屋「田島屋」の娘・きよが勾引かしに会う。身代金を出すと、娘を返さず、また金を要求する。茂兵衛たちはきよが捕まっている場所を突き止め助け出し、裏にいて姿を現さないで恐れられている駒五郎を殺し、用心棒を倒す。
 江戸にいる年寄・鳴海精左衛門の使いが、敵の二人が京橋から日本橋に向かって歩いているのを見たという情報を持ってきた。

2017年8月12日土曜日

京都の凸凹を歩く

京都の凸凹を歩く 梅林秀行(京都高低差崖会崖長)
 高低差に隠された古都の秘密
 祇園 御土居 巨椋池 聚楽第 大仏 伏見指月 淀城

2017年8月11日金曜日

御刀番・左京之介⑦ 九字兼定

御刀番・左京之介⑦ 九字兼定 藤井邦夫
 水戸藩所有の九字兼定が消え、水戸藩刀番・神尾兵部が行方不明になった。水戸藩江戸家老・岡田采女正に頼まれ探しに行く。神尾は出羽の祈祷師の祭壇の下に造られた牢の中にいた。傷が化膿し、動けない。漁師宅に運び込み養生する。京之介は神尾の代わりに九字兼定を探す。
 刀を持って逃げているのは月光尼率いる出羽の忍び、追っているのは水戸藩闇同心と、沼津藩影目付だった。背後には一橋家の隠居・治済や水野忠成と土方縫之介がいる。京之介は三つ巴で闘うように仕掛ける。闇同心・関野十蔵が闇同心だった影目付け・伊原陣内を倒す。
 治済に呼び出された岡田采女は神尾の代わりに京之介を連れて行く。治済は家斉を呪詛した刀であると十一文字が刻まれた九字兼定を出す。京之介は偽物だと言い、現れた月光尼等との闘いになる。月光尼に付く出羽忍びの頭・隻竜を倒す。
 佐吉と楓は月光尼が留守の間に仏壇の裏から本物の九字兼定を持ち出す。
 京之介は岡田采女に刀剣商「真命堂」の道悦が作らせた九字兼定の写しを渡す。十一文字刻まれた偽九字兼定は溶かされた。
 月光尼は京之介を襲った。倒された。
 本物も九字兼定は京之介の手元に残った。

2017年8月10日木曜日

ぶぶ漬屋稲茶にございます

ぶぶ漬屋稲茶にございます 今井絵美子
 夫が、賄を受けた上司の罪を被り西国の藩を追われ、江戸へ来て十四年、夫が亡くなってから十三年、上司からの引きと息子・夢之丞の士官だけを頼みに生きてきた真沙女だったが、上司の死を知ったことと、元奉公人・久米に再開したことで心機一転、お総菜とお茶漬けの店を始める。
 半井夢之丞29才、鴨下道場の師範代をしながら、鉄平と伊之助と三人で出入師をしている。
 真沙女は庭の梅の木の下から髑髏が出た、庭付き蔵付きの一軒やを格安で借り、下働きの亀爺と久米、料理屋で中居をしていた澄香、秀の五人で「稲茶」を始める。
 稲茶に、夢之丞の道場仲間だった御家人・御徒組四十俵一人扶持・古澤求馬の腹違いの姉・里中萌の亭主と前妻の間に生まれた娘・幸が加わるようだ。
 
 夢之丞と真沙女がぶぶ漬屋を始めるまでの話があるようだ。

2017年8月8日火曜日

神様の御用人5

神様の御用人5 浅葉なつ
 天孫の鏡 鹿児島の邇邇芸命(ににぎのみこと)の所に行く。伊斯許理度売命(いしこりどめのみこと)が作ってくれた神面がしゃべってくれなくなったと言う。面の声を取り戻して欲しいという頼みだった。
 宮崎にいる穂乃香の所に邇邇芸命の妻・木花之佐久夜毘売(このはなのさくやびめ)が現れ、御用人に邇邇芸命の御用を無視してと言ったと連絡が入った。
 邇邇芸命は、結婚した佐久夜毘売と一緒にきた姉を返し、生まれた子どもを自分の子では無いのではないかと言った。佐久夜毘売は一人にして反省を促すために富士山に行った。しかし、邇邇芸命からの謝りの言葉も無く、神面と話しをし、神面の言う通り行動するようになった。神面を復活させればいつまでたっても己を顧みないだろうと佐久夜毘売は言う。
 良彦は伊斯許理度売命が作鏡連の祖(かがみつくりのむらじ)だと知る。神面は意思を持つ神面ではなく、望む答えと逆を言うだけの鏡だった。過去は変えられない。未来は変えられる。邇邇芸命は佐久夜毘売に謝る。佐久夜毘売は話たかったのだった。邇邇芸命は私が会いに行く。と言う。
 英雄、鳥を好む 滋賀の倭建命に会いに行く。頭部は人の形だが身体は白鳥とアヒルの中間のような状態だった。力が弱まり完全変態が出来ない。完璧な鳥にして欲しい。と言う。
 倭建は十二代景行天皇の次男だった。素行の悪かった兄を殺し、少年の頃に父から西征を命じられる。熊襲建を討ち、出雲建を討つ。帰還した倭建に東征を命じる。平定し戻る途中伊吹山で傷を負い、伊勢の国で息を引き取る。白い鳥になって降り立ったと言われる河内国に陵が造られた。
 良彦は倭建に言う。父親に愛してもらいたかったのだね。だから鳥になって父親が見える所に行った。父親と似た顔だけは変態しなかった。倭建の社を造ってくれた后や子どもたちの方を向いて父親に愛して欲しかった分、子どもを愛して繋がっていけばどうですか。
 倭建が青年に変わった。
 大地主神の恋わずらい 大地主神(おおとこぬしかみ)からの依頼は地鎮祭を藤浪孝太郎にして欲しいということだった。孝太郎は良彦の幼友達だ。今後全ての地鎮祭を担当するように言ってくれという。孝太郎は良彦が御用人だとは知らない。大地主は一日デートでいいと言う。孝太郎には大地主が見えない。孝太郎と良彦と穂乃香の三人で水族館へ行く。大地主と黄金もいる。
 一日の仕事が終わった大工の棟梁が、全員を揃えて「今週も事故無く仕事が出来たこと感謝します。ありがとうございました。」と言ったのを見た。良彦は、大地主神がいることを忘れないから。と言う。大地主神は「なるほど、お前が御用人に選ばれたわけだな」
 えべっさんの草鞋 蛭児大神(ひるこのおおかみ)はえべっさんのこと。小ぶりな白馬・えべっさんの眷族・松葉がえべっさんを探して欲しいと行ってきた。歩けないはずのえべっさんが、草鞋を履いて西宮から神戸、京都、大坂と動き回っている。通天閣近くの「えびす」でえべっさんを捕まえた。草鞋をはいたとたんどこか分からないが、どこかに行かなければその場所を探していると言う。えべっさんはどこかに行ってしまった。
 キスケがえべっさんを助けた後、背負って行った浜の一本松だった。もう浜は無い。一本松も場所を変え五代目の一本松。草鞋はキスケが編み、「エビス神の病気平癒」を祈願して奉納したものだった。キスケが死んでしまいエビスは草鞋をしまい込んでいた。エビスは思い出した。草鞋をはいた意味があるとすれば発展し続ける街を見るためかもしれない。

2017年8月7日月曜日

神様の御用人4

神様の御用人4 浅葉なつ
 夢の簪 神様の御用人見習い・萩原良彦は古事記を読み始めた。
 今回の依頼は紀伊国造の祖・天道根命(あまのみちねのみこと)。昔の記憶が曖昧になっている天道根は、神大和伊波礼毘古命(かむやまといわれびこのみこと)から紀国を治めるように命じられる前から持っていた白い簪、この簪が何なのか。夢に現れる女性は誰なのか。を調べて欲しいと言う。
 和歌山へ行った良彦は、野球で知り合った大野達也に出会う。達也は名草戸畔(なぐさとべ)の子孫で神社の息子だった。父親は名草戸畔を調べる郷土史家で変わり者扱いされているため、父子の確執があった。明治時代に無くなった資料を探し、誤って伝えられる名草戸畔を調べていた。達也は御用人に任命されたが断っていた。
 真実の行方 達也には、姉がいた。母親代わりの姉だった。神官になるはずだった。四年前事故に遭い寝たきりだった。達也は姉を元気な姿にしてくれるなら御用人を引き受けると言った。眷族神は出来ぬと言った。以降、達也は眷族神を無視した。拒絶し尾は消えた。
 達也の姉・奈々実は天道根が北島と名乗って野球を見ている時に出会っていた。
 名草戸畔が持っていた簪は白い簪と同じ形だが、丹色だったことが分かった。
 女王の遺言 達也の父親が倒れた。良彦は、親父さんは名草戸畔がいたことを証明したいんだ。証明出来れば自分たちの存在も証明出来ると思っているんだと達也に言う。名草戸畔がいたから自分たちがいる。家族の繋がりの証明なんだ。二千年以上昔から受け継がれる血脈。
 良彦と達也は、倒れる前に父親が片づけていた授与所を片づける。江戸後期に建てられた建物の屋根裏から厳重に油紙と布で包まれた「名草文書」と書かれた和綴じ文書と木箱を見付けた。
 名草戸畔が降伏し、名草の冠を差し出した。神武は受け取らず、紀伊国を治めるように命じた。名草戸畔は戦いで負った傷が元で死ぬ前に弟・アヤタヒコに後を託す。天道根は思い出した。名草戸畔の弟だった。天道根は昔を思い出し力が戻った。はぐれた人の子を見付けたら家族の元へ戻るように言っておくという言葉を残して飛んで行く。
 見付けた物を親父に見せるという達也。御用人の仕事って案外わるくないな。とつぶやく達也。奈々実が自分の名前をしゃべったと連絡が入る。
 良彦は御用人の見習いがとれて、本採用になった。
 

2017年8月6日日曜日

中條流不動剣〈六〉

中條流不動剣〈六〉 老将、再び 牧秀彦
 塩谷隼人は将軍・家斉の一言で隠居から江戸家老に再任された。柴崎条太郎は尼崎藩の用人になり、日比野左内は剣術指南をしている。
 老中・土井大炊頭利厚は尼崎藩藩主・松平忠宝とは実の叔父と甥の関係だが、松平家の部屋住みで養子に行くまで冷遇された利厚は尼崎藩に恨みを抱き、出世を遂げた今では隼人の命を狙っていた。
 土井大炊は定飛脚問屋・大坂屋と組む。大坂屋は三橋会所を設立し、橋を作り、維持管理をする。橋を造るため口入れ屋を押さえる。八十隻の菱垣廻船を廻船問屋に貸している。
 真正直な商いをする相模屋徳三の材木を幕府が召し上げ、打撃を受ける。
 隼人が江戸で集めた農具、農業本など尼崎に船便で送るが全てを海に流された。次便の荷に付いて隼人は大阪に行く。隼人の命を狙う者があることを知った左内は、五千石の旗本・松平信一郎のところで、小兎馬を借りて大坂へ向かう。神崎の渡しで襲われている隼人を助けるが左内も傷を負う。左内は殺し屋や殺しを、大阪に住む花月庵蒼生・松平蒼次郎に頼む。蒼次郎と澄江、辰次と丈之介が始末した。
 口入れ屋の相模屋助三は徳三の腹違いの弟。大坂の米相場で儲け、徳三に渡す。隼人の左内も江戸に帰る。
 

2017年8月5日土曜日

新・知らぬが半兵衛手控帖①

新・知らぬが半兵衛手控帖① 曼珠沙華 藤井邦夫
 4年前、半兵衛の手先だった鶴次郎が行商の百姓娘を助けようとして旗本の倅に斬り殺された。半兵衛は果たし合いを申し込んで討ち果たした。半兵衛は臨時回り同心の職を返上し例繰り方同心になっていた。
 曼珠沙華 北町奉行所例繰り方同心・白縫半兵衛は吟味方与力・大久保忠左衛門から定町廻り同心・本田又四郎が毒を盛られたかもしれないので調べるように言われた。
 本田が調べていた事件を調べる。献残屋蓬莱堂の主殺しだった。弟の徳助が浪人に殺しの依頼をしていたことが判った。本田を殺してはいなかった。
 本田の妻・百合江は年番方与力・石原主膳の遠縁で親を亡くし引き取られていた。五年前、百合江は関係を迫られ、奥方が知り、本田に嫁いだ。本田をお役御免にすると関係を迫られ、本田の知る所となった。主膳は本田に毒入りの酒を用意し、百合江は知らずに本田に飲ませ本田は亡くなった。石原は切腹した。本田は病死のまま、主膳は乱心のためということになった。
 半兵衛は臨時回りに戻った。半次も手先に戻った。放っておくとどうなるか分からない音二郎は下っ引になった。
 弥次郎兵衛 昌平橋で身投げしそうだった女・すみを見た。すみを調べていくうちに、付き合っている男・銀次に、勤め先・堺屋の見取り図を作り、金蔵の鍵の型を取った物を渡していた。銀次は盗賊木更津の酉蔵一味に売っていた。半兵衛に知らされたすみは銀次を刺す。銀次は命を取り留める。すみは姿を消した。酉蔵一味の盗人宿に踏み込み捕まえる。
 出逢った女 浅草で博打ちの貸元・萬吉を殺したとして風間鉄之助が村上真十郎を捕まえた。殺したという証拠もなければ、殺していない証拠も無い。殺していない証拠を探すことにした。
 村上は四ツ谷で女・志乃と会っていたことが分かった。志乃の父親・横沢嘉門と、村上は元小田原藩士だった。殿様の愚かな行状を厳しく諌言した横沢は暇を出され、親子は出奔した。殿様は娘の許嫁・村上に上意討ちを命じた。村上は討つ気が無く五年間会いもしなかったが偶然会ってしまったのだった。誰と会っていたか言わなかった。
 半兵衛は風間に萬吉の用心棒を捕らえるように言う。風間は用心棒と妾を捕まえた。
 二十日後、横沢は病死した。志乃は駆けつけた浪人と弔いを済ませ姿を消していた。
 おっ母ちゃん 音二郎は八丁堀に近い稲荷長屋に引っ越した。同じ長屋のよしと新吉親子を尾行て見張っている者がいた。高利貸の甚兵衛の手下だった。よしに一緒になろうと言った故買屋の彦七が甚兵衛に騙りを仕掛け金の観音様を二百両で売っていた。よしの前に現れた彦七は甚兵衛の手下に殺された。甚兵衛を彦七殺しを命じた罪で捕まえた。

2017年8月4日金曜日

天神小五郎人情剣

天神小五郎人情剣 辻堂魁
 徳市は荷足り船の中で筵を被って、南町奉行所に見習いで出仕している与力や同心の倅たちが若衆を滅多打ちにして殺してしまったのを見た。若柳組6人で深川の方に行った。徳一は雪駄を片方拾った。
 おさん 天神小路にある天神屋は33才になる小五郎が五年前から一人で始めた煮売り屋だった。徳市が時々手伝いに来る。裏の長屋に亭主・竹二から暴力を受けているさんがいた。表通りで暴力を受けるさんを助けたことがあった。竹二は天神屋で金貸しの六右衛門にさんを売る話をした。さんは売られそうになり暴力を振るわれ、竹二を殺してしまった。さんは小五郎に助けを求める。小五郎は奉行所に行くことを奨めるがさんは出来なかった。徳市と小五郎と三人で竹二の死体を海に捨てる。六右衛門はさんを責め竹二殺しを聞きだし、老舗の両替屋と付き合いのある小五郎を強請る。小五郎はさんを助けるため六右衛門の黒塀で囲われた家に行き皆殺しにした。小五郎は傷を負った。七日店を閉め、動けるようになったころさんは故郷に帰った。
 苦節 半月後四月下旬 痩せた柴犬の老犬が天神屋に時々来る。不潔ではないが着古した着物を着た60才前後の老侍が柴犬と一緒に来た。自分が寝込み餌をやれなかったために腹を空かせていた。犬の餌の礼を言った。柴犬がきた。食べないで帰る。小五郎が付いて行くと老侍が熱を出して倒れていた。侍は山木角右衛門という。仇討ちの旅に出て三十五年だという。風邪が治り角右衛門は信州に行くと犬を預けに来た。角右衛門は見付けた仇と鉄砲洲で戦い、相討ちになった。小五郎は柴犬を引き取った。
 徳市 深川の空き地で浅く埋めた死体が見付かった。白骨になりつつある、身に付けた羽二重の着物、片方の雪駄が見付かった。老舗蝋燭問屋木屋九兵衛の息子・三太郎16才と分かった。九兵衛は奉行・大岡越前に犯人を早く見付けて欲しいと願いに来た。錦傳之助が呼ばれる。傳之助は三太郎と若柳組との関係が頭をよぎる。証拠は無いが若柳組が犯人出ある可能性が高くなった。錦は六人の親に倅は切腹、役目を解かれることもあるかも知れないと言う。六人は急な病で出仕はとりやめになった。
 謹慎を言い渡された六人は裏家業の玄人に徳市を勾引かし連れてきてから始末して欲しいと頼んだ。徳市が勾引かされたと小五郎に連絡が入った。小五郎は徳市を助けに行く。裏家業の四人を倒した。
 老犬 錦が天神屋を訪れ、与力見習いの米川伊右衛門が死んだ事を伝えた。五人の同心見習いが一生病気療養ということになった。四人の博打打ちは博打打ち同士の喧嘩らしい、喧嘩相手は江戸から姿を消した。三太郎殺しの下手人は江戸から姿を消したことになった。
六右衛門の調べは打ち切りになった。

 小五郎のこと 錦が調べたこと
 小五郎の父親は赤穂浅野家の賄い方の頭・三輪脩。料理人だった。小五郎13才。剣術の腕を見込まれ姫路榊原家の家臣に若党として仕えた。十三年経ち不忠者の赤穂浪人の倅が剣術で身をたてるのは無理だとわかりお暇を貰った。父親に江戸へ行くことを奨められ、元赤穂藩士・両替屋淀屋の大番頭・白井高右衛門を頼り、店を持った。

2017年8月3日木曜日

ゴミソの鐵次調伏覚書①

ゴミソの鐵次調伏覚書① 萩供養 平谷美樹
 文化四年 1821年 二月末
両国広小路で辻占の店を開いている。
《逆髪、刹鬼、亡魂の障り、憑物払い、失せ物探し萬相談申し受け候 ゴミソの鐵次》
ゴミソとは津軽の言葉で占い師を指す。
 雛ざんげ 呉服商福松屋の手代清吉が雛人形のお雛さまが無くなった。見付けて欲しいと言ってくる。鐵次は古井戸の裏に転がっている、首がひどいことになっているから直してからひな壇に戻せという。次の日、福松屋の主・仁左右衛門が、清吉が斬られたので調べて欲しいと言いに来る。犯人は男雛だった。男雛は姉娘・ちよが好きだった。女雛が邪魔になった。ちよが清吉を好きなために清吉が狙われたと鐵次は言う。男雛の魂を抜いた。
 鈴虫牢 大工の弁蔵の枕元に鈴虫の虫籠が現れる。弁蔵が造った石の穴蔵のある店を回る。弁蔵が十年前に造った大坂屋。九年前に長男が行方不明になっていた。福松屋の仁左右衛門に御用聞き・孫六を紹介してもらい穴蔵を調べるように言う。孫六は同心・小林と行動した。穴蔵は座敷牢になっていた。松太郎は九年生きていた。四日前に死んでいた。もう少し前に見付けていたら・・・鐵次は悔やんだ。松太郎が現れ、着物の端切れを受け取り長羽織に縫い付け、弔いはしっかりすると約束する。
 萩供養 文政五年 1822年 九月
吉原の常磐楼の七瀧からお呼びがかかる。何百枚もの端切れを縫い付けた長羽織と金銅の独鈷杵を持って出かける。七日前から萩の花が落ちているという。気になって仕事にならない。男が現れた。七瀧の一喝で男は逃げた。半月前から子猫が来ていた。子猫は野良犬と戦い死んでいた。鐵次は猫を中庭に埋め萩を墓標にした。萩は子猫からの貢ぎ物だった。七瀧は襦袢の端切れで袋を作り子猫の毛を入れ、鐵次の羽織に縫い付けた。
 お化け長屋の怪 鐵次が住むお化け長屋に幽霊がでた。結界をはる。二吉の次は伝次だ。銭模様の蠎蛇が出た。伊勢屋善右衛門と書かれた紙人形が護符といっしょに反故紙の中には行っていた。鐵次は人形に溜まっている者に力を付けて伊勢屋に飛ばした。伊勢屋は深夜に奇声を発し飛び出した。隠居し許してくれと泣き出した。
 傀儡使い 同心が鐵次の家に来る。妖術を使って押し込みをする盗賊が現れた。鐵次は修験者・惣助を見付けた。次の狙いの店を見付けた。同心武藤が惣助を捕まえようとするが、紙の人形たちが相手になる。武藤は紙に殺される。惣助は捕まった。
 惣助は「日光東照宮。上野寛永寺。神田明神。汝はその内に住んでいる。大きな意味があろう。」「何故、丑寅の鬼が結界の中に棲んでいる。」と言う言葉を残して消えた。
 妖かし沼 人を寄せ付けないようにしている沼があった。鐵次が調べると自害した娘の遺体が見付かった。娘や虫たちは親に姿を見せたくなかった。鐵次が弔った。端切れを長羽織に縫い付ける。半年沼に近ずかないように言いきれいになったら骨を拾いに来る。
 夜桜振り袖 イタコの百夜が来た。娘の祝言のために買った振り袖。家鳴り、振動不審が続く。生き霊を取り払った。桃夜は振り袖を貰った。桜の季節に振り袖を着て飛鳥山に行くつもり。行きたいと願った娘のために。
 百物語の夜 浪速屋で百物語の会を催した。浪速屋は船を出した時に土左衛門を見付けたが、引き上げないで遠くへ流した。その後現れる幽霊を調伏しようとするがすぐ居場所を変える。会を開き孫太郎をを引っ張り出し幽霊をおびき寄せる。成仏させる。鐵次の手元に端切れが残る。


2017年8月2日水曜日

物書同心居眠り紋蔵⑮

物書同心居眠り紋蔵⑮ 敵討ちか主殺しか 佐藤雅美
 廻船問屋伊勢徳の隠居・徳兵衛 旗本屋敷の貸し土地に隠居所を建てるが火事に遭う。旗本屋敷に火事場泥棒が入るのを見る。旗本の盗まれた刀を見付ける。
 八丁堀の戸塚玄庵の所に通い弟子・井上以伯がいる。以伯は作州津山の松平家の家臣だった。養生所でひどい待遇にあった小関正蔵を家に引き取り養生させた。小関正蔵は五万石重村丹後守の尚武館で剣術指南役をしていたが、家臣・早瀬小弥太に身体をぶつけられ足を折り、立つことが出来なくて養生所にいたが、垂れ流しになっていた。正蔵の足が治り以伯の所を出た後、養生所の同心二人、中間五人、下女五人が殺された。その後早瀬小弥太も殺される。正蔵の行方は判らない。
 以伯は三十年前の祖父の敵を追っていた。三十年前、京都で医者をしていた。殺され、金と「瀉法薬考」と題した薬の処方の原稿も盗まれた。薬の処方から玄庵が怪しいと思っていた。信州飯田の清吉とわかり仇を討とうとしたが、弟子になったことで主殺しになると言われる。以伯は玄庵を討てなかった。役人に渡した。
 火盗改め・小野左太夫は手柄を欲しがった。捕まえた者を紋蔵に退けられていた。
 藤木紋蔵が親になっている文吉は、御家人・剣持忠三郎と名乗っていた。五万七千石越後村山内藤家家臣・六百五十石の家付き娘・玉との養子縁組みを断り、芝居小屋の木戸番をし、観音政の所にいた。