2019年2月28日木曜日

九頭竜覚山 浮世綴〈三〉

九頭竜覚山 浮世綴〈三〉 寺町哀感 荒崎一海
 花街の用心棒をしている九頭竜覚山。三人の刺客に襲われる。同じ夜、殺しが二件あった。辻斬りと料理屋の若旦那が強盗に殺された。その後も夜鷹や駕籠担きが殺される。
 覚山が狙われたのは、権蔵一家と三五郎一家の縄張りに為助一家が入り込もうとしているためだった。花街を護る覚山が邪魔だった。二回、三回と刺客に襲われるが、殺す事が嫌いな覚山だが斬る。
 強盗だと思われた若旦那殺しだったが、犯人は辻斬りと同一人物だった。千二百石の旗本に養子に入り、妻に虐げられた男だった。最後には覚山に果たし合いを挑み、覚山に殺される。
 料理屋の若旦那が殺されたために、若旦那の妹と、代々仲が悪かった料理屋の息子が、川に飛び込み相対死した。若旦那が二人の仲を取り持ち料理屋を仲良くさせて二人を一緒にさせようとしていた。若旦那が殺され、どちらも跡取りとなり、それぞれの結婚話が持ち上がり、二人の望が叶わないと思い死んでしまった。


2019年2月27日水曜日

栄次郎江戸暦21 赤い布の盗賊

栄次郎江戸暦21 赤い布の盗賊 小杉健治
 矢内栄次郎は、鼻緒屋「山形屋」の細道から出てきた小間物屋の足首に赤い布が巻いてあるのを見た。三年前に赤間一味が押し込みをする時に赤い布を巻いていることが話題になった。その後押し込みは無かったが栄次郎は気になった。崎田孫兵衛を通して山形屋から相談を受ける。一人息子・善之助が酌婦をしていたゆきと一緒になりたいと言い出した。別れろと言う父親、別れないなら勘当だという。ゆきには素性の良くない兄・政吉がいる。善之助は家を出て行った。ゆきの素性を調べて欲しいと言う。
 栄次郎の兄・栄之進の再婚話が進んでいる。書院番大城清十郎の娘・美津。話は決まりそうだ。
 山形屋は、再婚だ。男の子・正太がいる。民は善之助が勘当されれば、民が後妻に入る前から付き合いのあった沢五郎が赤間一味に成りすまし、主・善右衛門を殺すと言う計画を立てていた。善右衛門の気が変わり、善之助とゆきが山形屋で話し合い一泊する事になった。民は中から手引きする。政吉は沢五郎の計画を知り、仲間に入り、土壇場で阻止しようとする。栄次郎も押込みに見せかけることが判り、善右衛門に断り見張りする。
 押し入った沢五郎等は栄次郎と政吉に阻止される。政吉は善右衛門を助けるため盾になり刺される。政吉は自分が死ぬ事で、ゆきの障害を取り除くつもりだった。政吉は助かった。
政吉兄妹は、蝋燭問屋「近江屋」の倅と娘だった。十年前、赤間一味に押し入られ潰れた。政吉は復讐のため赤間を探した。家を再興させたかったが難しかった事などを話した。ゆきとの結婚は認められた。
 赤間繁藏は思いやりのある金貸しになっていた。政吉とゆきを護っていた。

2019年2月26日火曜日

藍千堂菓子噺② 晴れの日には

藍千堂菓子噺② 晴れの日には 田牧大和
 羊羹比べー人日 茂市の元の店の常連客・足袋職人九助が、死んだ長男・寛太の法要の菓子を頼みに来る。九助は茂市の羊羹が好きだ。晴太郎は寛太が好きだった甘い羊羹を作る。寛太の好きだった羊羹を法要の引きに使う。
 母と似た人 端午の節句に松沢家の台所で生まれた長男・小十郎の節句の御菓子を作る。去年の初節句だけ思っていた雪だが、実家の父親の願いで数が増え晴太郎の手を借りる事にした。晴太郎は佐菜という何となく母を思わす人と出会う。佐菜には五才の娘がいた。
 青の星川 七月七日 藍千堂では黄色の金平糖を作る。百瀬屋の娘・糸が同心の岡丈五郎が上役・奉行所を牛耳る年番方与力・鎧坂竜之介に睨まれていると伝えに来る。鎧坂は刃向かわれる事邪魔される事が嫌いな、配下も上役も奉行でも思い通りに物事を運ぶ道具として見ている。子供も自分の都合の良いように育てた。そんな鎧塚に、手懐けられず、脅しも効かない、思い通りにならない配下の岡だった。大店の息子が口喧嘩の弾みの刃傷沙汰だった。千葉屋の放蕩息子の代わりに病気の母を持つ手代が名乗り出た。岡は調べを止めず、息子・証拠固めをしたために出仕禁止になっている。晴太郎は紫陽花を連想させる金平糖の折り詰めを作り、岡が鎧坂の手で奉行に届けてもらった。奉行が岡から話を聞き、岡は仕事に戻り放蕩息子を捕まえた。佐菜が鎧坂の元嫁で、娘・さちの父親は鎧坂だった。
 思い出話ー重陽 晴太郎の廻りの人たちは佐菜との付き合いを反対した。佐菜と娘は鎧坂に見つからないよう隠れてくらしていた。晴太郎も一時は会わないようにしていたが、無理だった。今、あの二人を見捨てたら俺の菓子の味はきっと濁ってしまう。
 伊勢屋の総左衛門が、昔話をする。総左衛門と二人の母親・しのと二人の父親・清右衛門のはなしだった。清右衛門も言った。今ここでおしのさんを見捨てたらきっと自分の菓子の味が濁る。総左衛門は清太郎の恋を止めない。
 ひいなの祝いー上巳 同心の岡が、鎧坂の動きがおかしいと伝えに来る。鎧坂が娘が出来たのでと、雛の祝いの菓子を頼みに来た。さちの事が知れた。晴太郎はさちは自分の子だと言う。佐菜は迷惑になるからと鎧坂のところに行こうとする。しのを育てた医者・久利庵が佐菜親子を預かっていた。晴太郎もいる時に鎧坂が訪れる。久利庵はさちが五才だと言い張る。
 鎧坂の旧悪が暴露される。鎧坂の行状の証拠を山ほど付けて訴えられ鎧坂が捕らえられた。訴えたのは二人の息子だった。母を守るために父の言いなりになっていた。だが母は亡くなった。母の仇をとると思って証拠の在処を確かめていた。義母・佐菜を守るために、子が出来た佐菜のために、医者に佐菜には子が出来ないと言わさせた。そして離縁になっていた。妹の存在を父親が気付いたことを知った兄弟は、訴えた。鎧坂は自刃、表向きは病死になった。
 晴太郎は佐菜に私の嫁に・・・と申し込む
 

2019年2月24日日曜日

基本のパン 

基本のパン 石澤清美    成美堂出版
 はじめてでも失敗なし!
 おいしさのコツが一目でわかる  

「ちょっとのイースト」で作るベーグルとピザの本 幸栄
 少ないイーストで 一回の発酵だけで作れる、
 しみじみおいしい 暮らしの中のパンのレシピ

2019年2月23日土曜日

刃鉄の人③ あらくれ

刃鉄の人③ あらくれ 辻堂魁
 刀鍛冶・一戸前国包の鍛冶場に芝神明で興行している役者・巨漢の熊太夫が国包の銘の小さ刀を持って訪ねてくる。小さ刀と同じ設えの大刀を創ることとこの刀を買った者を教えて欲しいという注文だった。国包は武蔵国包と銘を彫り、国包と入れたことは無かった。
 刀商・備後屋で訪ねる。二十五年前、師匠の数打物と一緒に売り払う中の国包の稽古刀を、備前屋が出来栄えの良さに無銘は惜しいと思い国包と銘を入れ売っていた。二十五年前は十六才だった小寺基之が買ったものだった。派手な設えは小寺の希望だった。今は書院番頭家禄四千三百石の旗本だった。小さ刀はあらくれだった頃懇ろになった桜大夫が、身重になったにも関わらず別れなければならないため渡したものだった。大刀は拵えを替え今も小寺が挿していた。十年前、桜太夫の最期の時、熊太夫に熊太夫の父の形見と告げたのだった。
 熊大夫は小寺に会いに行く。熊太夫一座の小屋で対面し、小寺は二人の出会いを、熊太夫は来し方を話す。基之は父であることをほとんど認めるが、用人・橋川周右衛門は基之が認める事を許さない。たぶらかした。の一言で暴れ出した熊大夫を止められない。国包は熊大夫を斬りたくはないが止める事は出来ない。最後には基之の袈裟懸と国包の突きで熊大夫は動けなくなった。父に会いたかっただけなのにと言い残して死ぬ。
 小寺の計らいで熊太夫の骨は俗名・小寺熊大夫と名乗り歌舞伎役者市川団十郎と同じ寺に葬られた。国包の小さ刀と武蔵国包の大刀は小寺家に献上された。
 熊大夫一座の者は江戸を離れた。

2019年2月20日水曜日

脳科学捜査官 真田夏希

脳科学捜査官 真田夏希 鳴神響一
 神奈川県警初の心理職特別捜査官に選ばれた真田夏希31才は、友人の夫の紹介で男性に会う。婚活に失敗続きの夏希は小田信和と名乗る男性に好印象を抱く。甘い雰囲気の中、みなとみらい地区、窓の真下で爆発事件が発生する。翌日、捜査本部に招集され、爆発事件の捜査にあたる。戸惑いを覚える夏希は、初心者の犬、アリシアと一緒に行動する。アリシアは爆弾探知の訓練をした黒い大きなドーベルマンだった。アリシアと組んでいるのは小川祐介巡査部長。
 爆発現場でアリシアは埋もれた爆発物を見付ける。夏希は国際テロを考えている本部に対して馴染まないと感じた。次の爆破予告が有り、夏希はテロリストの犯行でない可能性が大きいと発言する。二度目の爆発場所を特定しようとするが判らないまま爆発が起った。
 アリシアは証拠品を見付ける。犯人が電波式の遠隔操作装置を使用した事が判った。
SNS等への投稿が増えた。犯人からのものもある。犯人への賞賛もある。夏希は犯人の狙い通りになりそうだと思う。犯人に、はっきり対決姿勢を投稿するべきだという。三回目の爆破予告が届く。犯人への呼びかけは止められていた。
 黒田刑事部長と共に織田が入ってくる。警察庁警備局から参加し織田理事長だった。織田の一声で犯人宛てのメッセージを送る。挑発文を送る。自分の名前と顔もさらけ出し犯人と会話する。小さな爆破が起る。ゲームのヒントから爆破予定現場を特定しみんなで乗り込むが、夏希は途中で場所を替える。数人で避難させるが市民は避難しない。時間がない私服警官加藤は拳銃を空に向けて引きがねを引いた。みんながゴーグルを外し離れろ!で逃げた。爆発が起ったが怪我人はいなかった。英雄警察犬と避難しないアホゲーマーを追い出す発砲刑事と動画が出た。犯人への非難が始まる。
 次の犯行声明が出る。夏希は今までの爆破場所から氷川丸を爆破対象とした。氷川丸の中で、向いのルピナスが狙いだと分った。犯人の誘導で氷川丸の中から、レストラン船ルピナスの爆破を見せつけようとしている事が判った。夏希は出発しようとしているルピナスに飛び乗る。アリシアも飛び乗る。前部デッキに犯人がいた。犯人がスイッチをいれようとする。アリシアが飛びつきバックを口で咥えて掘り投げる。海の中で爆発がおき船は離れて行く。船員が駆けつけ夏希とアリシアを殺そうとした犯人は自分の首を斬り海に飛び込む。岸壁でみんなに迎えられる。夏希は織田に送って貰う。織田は夏希を警視庁に誘う。夏希は断った。犯人死亡が夏希には悔やまれた。

2019年2月18日月曜日

跳ぶ男

跳ぶ男 青山文平
 藤戸藩の二十俵二人扶持の道具役・屋島五郎の長男として生まれた剛だったが、六才で母を亡くし、十才で後妻に男の子が生まれ、父の跡継ぎでは無くなった。
藤戸藩の道具役は能をするものだった。剛は跡継ぎでは無くなり、父に教えられなくなったが、同じ道具役・岩船光昭の長男・保に教わった。保は英才の誉高い剛より三才年上の少年だった。誰にもみられない、野墓の河原にある石舞台が稽古場だった。
 お城勤めをしていた保は十七才で切腹した。剛は一人で稽古した。
 十五才の時、十六才で亡くなった藩主の身代わりになることになった。十六才では急養子が認められなかったから。もともと貧乏な藤戸藩は、能で大名との付き合いを深め、お手伝い普請などから逃れてきていた。能が出来る者が良かったのだった。目付・鵜飼又四郎は身体の弱い藩主の身代わりに保を考えていた。保が亡くなり剛が身代わりの身代わりになった。
 剛は江戸で能での外交をする。江戸城奥能の総本山・志賀藩の支藩の三輪藩の望月出雲守の目に留まることを目標にする。豊後岡藩修理太夫の誘いを受ける。修理太夫の実家・彦根井伊家から養子にでている兄弟の藩を巡る。酒井家とも繋がり、十二月二十三日に出雲守に招かれる。奥御手廻り御能の皆様は「関わりにおいて密、交わりにおいて疎」なのだそうだ。客席は誰もいない、夜に潜む虫のように見ている。
 剛は家老・八右衛門と又四郎に決意を言う。二月の拝謁の日、御簾の向こうに御当代様がいらっしゃらない日、廊下で転び、粗相の責めを負って自裁する。先代の息女の六才の男子を養子にする。急養子を認めてもらう。十七才になるまでお手伝い普請を免除してもらうという条件を出す。浮いた資金で人を育てて欲しい。自裁が当代に届くか、剛の自裁が当代様の負い目になるか、ということでは、剛が能で繋いできた関わりにおいて密が役に立つと思う。二人は今や藩主は剛だと言うが、二人の姿が消え、見知らぬ者たちの勝手にされ犬死にするのはまっぴらだ。剛は、二月十五日の月次御礼の日、御簾の向こうの空の席に別れの挨拶をし、退く廊下で美しく転んだ。

2019年2月17日日曜日

開花鐡道探偵②

開花鐡道探偵② 第102列車の謎 山本巧次
 明治十八年 六年前の滋賀のトンネル事件を解決した草壁賢吾は、再び井上勝鐡道局長に呼び出された。貨車が開業間もない大宮駅で何者かに脱線させられた。積み荷から千両箱が発見された事件の調査を依頼される。
 警察は脱線させられたことより、千両箱を小栗上野介の隠し金とみてそちらに重点を置く。
 草壁は小野寺乙松技手と高崎に向かう。高崎に親戚が多い小野寺の新婚の妻・綾子がやってくる。綾子のお陰で聞き込みがやりやすい。
 解散した自由党党員秩父事件に関わり離散した者たちと、日本鉄道を敵視する不平士族、たちだろうという声がある。
 特別列車を仕立てて生糸を横浜まで運ぶことになった。小栗の隠し金を預かっていると思われている新波市左衛門の倉庫に押し入られる。罠をしかけたようように警察に捕まる。養蚕農家のためと言いながら生糸の入った倉庫に火を付けた。自由党員を名乗る者たちだった。別仕立ての貨車が運ばれる。
 草壁は襲われる場所を特定し、臨時の車両を走らせてもらい警察に追いかけてもらう。奪った物を船で運ぼうとする輩の妨害し、捕まる。士族の不平分子と言われる者だった。千両箱の中身は使えない質を落として作られた価値のない小判だった。小栗の隠し金といわれるのは、価値のない小判を置いておくと駄目だと言う事で高崎まで運んだと思われた。
 分岐器を動かし脱線させたのは、高崎の貨物掛かり・萩原だった。千両箱が見付かり隠し金を狙ってくる者を罠に嵌めて一気にかたずけようと市左衛門が考えたことだった。

2019年2月15日金曜日

おれは一万石⑦ 定信の触 

おれは一万石⑦ 定信の触 千野隆司
 天明七年 1787年 十一月 
 井上正紀は将軍家斉に拝謁する。高岡藩主・正国は大坂定番勤務だった。
 江戸の米の値上がりを防ぐため定信は一万石につき百俵を江戸に出すようにという触れを出した。去年一揆が起りかけた高岡藩と府中藩は二倍になった。
 府中藩が手に入れた百俵を高岡河岸に預かる事になった。米を狙い、府中藩に失敗をさせようとする者がいた。高岡河岸の納屋を壊されるが、百姓と陣屋の者、こっそり江戸を抜け出した正紀等が阻止する。沼津藩と守山藩の関係までは証拠だてできず、米問屋相馬屋の犯行ということになった。
 高岡藩はあと二十八俵となった。府中藩の米を護った事で府中藩に納入しようとしていた浜口屋が引き受けてくれた。高岡河岸に新しい納屋を建てる事にもなった。
 府中藩二万石の正室は正紀の妻・京の叔母・品だった。府中藩には養子問題と一揆問題があった。

2019年2月14日木曜日

藍千堂菓子噺 

藍千堂菓子噺 甘いもんでもおひとつ 田牧大和
 菓子屋「百瀬屋」息子・晴太郎と幸次郎は百瀬屋を出て、元百瀬屋の職人だった茂市と菓子屋「藍千堂」を営んでいる。独立していた茂市が二人を迎入れ店を譲ってくれていた。百瀬屋は父の弟が継いでいた。子供ををかばって大八車に引かれ亡くなった父、後を追うように亡くなった母、一年が経って砂糖の事で意見の合わない晴太郎を叔父は追い出した。娘・糸と幸次郎の結婚を考えていた叔父だったが、幸次郎は兄について出て行った。大店百瀬屋の小店藍千堂への嫌がらせになっていた。
 四文の柏餅 晴太郎が幸次郎の反対を押し切って四文の柏餅を売る事にした。百瀬屋は柏葉を藍千堂に売らないようにと金を握らせた。晴太郎は八王子の市で直接柏葉を売る人を見付ける。上柏町を買った客に、百瀬屋が、上柏餅といいながら四文柏餅を入れているとふれてまわったようだが、店にやってきた客に食べてもらい言い掛かりを取り除き、四文柏餅と上柏餅の食べ競べをし、売り上げを上げる。
 氷柱姫 藍千堂の後見の薬種大店伊勢屋の主・総左衛門が茶会の話を持ってくる。百瀬屋が断った、旗本同士の縁組みが整う茶会だった。地味で物静か出世欲の無い無役の寄合松沢家の嫡男・荘三郎24才と何かと派手で目立つ事の好きな疋田家の豪傑と言われる末娘・雪18才の婚儀が整った。おまけに父親・疋田五右衛門は、松沢家当主・利兵衛の新番頭就任の斡旋をした。松沢家の茶会の仕切りで就任が決まる。そんな茶会だった。
 兄弟は松沢家に行き話を聞く。否と言えない性分の松沢親子が貰い手の無いお転婆姫を押し付けられたと聞いていたが違うようだった。清太郎が出会った雪姫は「氷柱姫」と仇なされるような姫ではなく、自分が壮三郎と一緒になる事で壮三郎の平穏を乱してしまう事を気にかけているような姫だった。茶会の客の中にも松沢家を気の毒に思う人と、嫉みを持った人がいることも判った。
 茶会の菓子は愛宕山の雪景色を思った人と。桜を思った人がいたようだ。華美に走らず侘に偏らず、庭と茶を楽しんでもらう。温かみと滋味に溢れる良い会であった。若年寄親子と疋田を呼び季節の折々を楽しむ茶会が開かれることになった。菓子は藍千堂で。
 松沢家は推挙を断った。雪姫は松沢家の意向を一番に考えて欲しいと言った。疋田は頭を下げて回り就任を白紙に戻した。疋田は末娘が互いに心に添い合える伴侶を得たのは何よりだと言った。
 弥生のかの女 幸次郎は外回りの仕事をしている。百瀬屋の若旦那だったころ吉原で馴染んだ遊女・幸がいた。幸が身請けされ妾になっていた。晴太郎は二人で逃げるよう背中を押す。幸は今まで通り思い出だけと逃げなかった。幸次郎も籠の鳥の時よりも、身請けしてくれた恩人から逃げ回るよりも、今の方が幸は幸せだろうと思う。身請けした男の手下に殴り蹴られし、帰ってきた。
 父の名と祝い菓子 糸に茶問屋の四男との縁談が持ち上がる。上等の茶が手に入るを文句にして藍千堂の客を百瀬屋は引き抜く。同心の岡丈五郎に糸の相手を調べてもらう。引き抜きだけに対処すればいいのか、糸の縁談から潰さなければいけないのかを考えるために。百瀬屋と茶問屋の四男、互いに条件を出していた。店に口出しはしない、持ち出す金額も決まった物だけ。養子に入っても自分のする事に女遊びと博打に口出ししない。
 伊勢屋と岡が百瀬屋を責め始めた。伊勢屋は百瀬屋が藍千堂にしたように小豆と白いんげんが手に入らないようにした。百瀬屋の主人が伊勢屋を止めさせろと藍千堂んい乗り込んでくる。糸の縁談をやめるという条件を出した。縁談は無くなった。何故、伊勢屋さんが手を出したか、尋ねた兄弟に、似非菓子職人と放蕩息子が「清右衛門」と呼ばれることが気に入らないと答えた。
 松沢家の内儀・雪が悪阻で何も食べられない。晴太郎は「青柚子の葛切り」の柚子を増やして持って行った。伊勢屋が父・清右衛門が母の悪阻の時に創った物だと言った。
 迷子騒動 ろくでなしを糸の婿にしようとするので糸は家を出た。母親の妹のところにいる。糸は相手は誰でもいいのでしょう。子供が出来たら百瀬屋にあげると言い置いていた。父親は幸次郎だけはだめだと言った。
 百代桜 晴太郎は一冊だけ持っている父の覚書を見ていて桜の菓子を思いつき、百代桜を売り出した。泥棒が入り、父親の覚書が盗まれる。糸の二人目の婿候補が糸の婿になるために菓子帳を盗みに入ったのだった。
 晴太郎は何故、父が亡くなり叔父が変わったか疑問だった。叔父の話。菓子屋を始める前古着屋だった。兄が京で修業して古着屋を辞めて菓子屋になった。兄さんにに教えられ家族四人で「百瀬屋」を始めた。百瀬屋は江戸一番と言われるほどになった。兄が亡くな兄嫁も亡くなる。百瀬屋と二人の息子を守のは自分だと思っていた所へ、兄の姉という人が訪ねてきた。兄だと思っていた人は、京の名の知れた菓子司の息子だった。店が潰れて首を括った主夫婦の生まれたばかりの息子は江戸の古着屋に里子に行った。曾祖父の命の恩人だったらしい。叔父は血の繋がらない兄弟だったこと、贋物の兄弟だったことがわかり、兄の血を許せなかったと言った。晴太郎は叔父さんはかしが大好きだから続けて入るのでしょうと言い、清右衛門の名前と菓子の覚書を返して欲しいと頼む。叔父は百瀬屋の屋号に似会うよう考えた名前だから藍千堂の主には名乗らせないと言ってきた。覚書は返してきた。
 
 

2019年2月12日火曜日

ドリアン 果物の王

ドリアン 果物の王 塚谷裕一

2019年2月10日日曜日

遠山金四郎が消える

遠山金四郎が消える 小杉健治
 文字菊という常磐津の師匠のところで政次が殺された。文字菊を好きだった松次郎が疑われる。北町奉行遠山金四郎は、女が男に常磐津を教える事は禁止されているにも関わらす、文字菊が続けていることに疑問を持った。
松次郎は牢送りになる。松次郎はその時会っていた女がいた。夫が病で薬がいるために客を引く武士の妻女だった。松次郎はその女のことは言えなかった。
 貞吉が自訴してきた。金が必要で押し入った。たまたまいたので殺してしまった言う。貞吉は禁制の絹物を売買したため潰された大城屋の手代だった。
 金四郎の隠密・駒之介は文字菊の旦那は後藤三右衛門だろうと調べてきた。証拠は無い。
 南町奉行だった矢部定謙が桑名に送られる事になった。大平に会えない金四郎は夜分こっそり熊谷宿まで行った。矢部は株仲間の解散を主張する後藤三右衛門に反対した。三右衛門は根に持ち、大城屋の養女になってから矢部家に入った側室の実家とおもって潰したのだった。金四郎は一日半で屋敷に帰った。
 貞吉は後藤三右衛門を殺すつもりだった。間違って殺したのだ。島送りになった。
 

2019年2月9日土曜日

隠密船頭

隠密船頭 稲葉稔
 剣客船頭の後継シリーズ
 船頭で生計をたてていた沢村伝次郎は、南町奉行・筒井和泉守政憲の要請に応える。正規の同心になれないので隠密となり、家も与えられる。
 小間物問屋吉村屋で八人が殺され、三百両が盗まれ、二人が行へ不明になった。かよがいれた生姜湯を飲んだものは眠っていて助かった。かよと用心棒の鴨井十右衛門がいなくなっていた。伝次郎は二人を探す事から始める。
 長屋の紹介者、保証人探っていくと、関係者は越後新発田藩出身者ばかりだった。新発田藩の下屋敷、中屋敷、上屋敷それぞれを見張っている者がいる事も分った。伝次郎は新発田藩溝口家の家臣・秋吉圭一郎に誰かが見張り、誰かの命を狙っているようだと警告に行く。新発田藩の家老・佐治平兵衛が一派に江戸家老・酒井主馬の刺殺命令を出していた。秋吉には酒井主馬の不正の証拠を掴むよう言われていた。頼まれた刺殺者は酒井だけでなく、影響を受けた若殿の刺殺も考えるようになっていた。それを知った佐治は若殿の刺殺を止めるよう秋吉に言ってきたが秋吉には手だてがなかった。伝次郎に打ち明ける。
 鴨井十右衛門は刺客の一人だった。刺客たちはは二人を殺して死ぬつもりだった。かよは十右衛門と逃げたかった。酒井と若殿が出かけた。かよが道端で倒れ行列を止め、刺客が襲う。伝次郎は止めに入る。酒井は殺され若殿は引き返す。刺客は死ぬが鴨井とかよは逃げた。伝次郎は鴨井を探す。隠れ家で殺されたかよを見付け、鴨井は伝次郎に殺された。鴨井を活かして捕らえると新発田藩の話になる。伝次郎は吉村屋の殺しで鴨井を殺した。鴨井は金を持っていた。吉村屋は返ってきお金を殺された奉公人の家族に配った。
 

2019年2月8日金曜日

わが家は祇園の拝み屋さん9

わが家は祇園の拝み屋さん9 望月麻衣
 〜星の導きと今後の都〜
 賀茂澪人が審神者頭に就任した儀式が行われた。
 水原愛衣はかって神社だった家に引っ越す。
 宗次朗は東京へ行く。
七色かき氷と、西と東の都にて 澪人が東京の助っ人に行くことになった。小春も春休みの間東京の親下に帰る。
 和人を含め四人は、櫻井家の二階に集まる。四人で「目に見えない社」に挨拶回りをする。
 夏カレーと迷子の翁 愛衣の引っ越しの日、東京から澪人が祝詞を上げる。早乙女先生が食事の差し入れをする。
 四人が櫻井家に泊まり、和人と朔也は六波羅蜜寺辺りに現れる翁に会いに行く。翁は漢字の問題を出す。電話で澪人が答えきる。小野篁を探していた。朔也が六道珍皇寺に案内する。
 空を泳ぐ蛇と東京星図 小春は占星術の勉強をする。小春は空を泳ぐ蛇を見る。嫌の雰囲気が地を包む。澪人に連絡する。本部で占星術師を紹介してもらう。遅くなった小春を澪人が送り、小春の両親と会う。小春の特異な体質、澪人の特異な体質の話にも及ぶ。両親は澪人に小春を頼む。食事をして帰る。
 小春は東京タワーに念を送っているように思い連絡する。澪人たちは捕まえたようだ。除名された陰陽師が徒党を組んでいた。未だ目的は分っていないと、宗次朗の師匠の店・風林堂の集まって聞いた。杏奈が国際芸術映画祭のためにパリへ行く。東京大神宮で宗次朗は「俺はとっくにお前を恋人だと思っていた」という。若宮・黒龍が現れた。大きな災厄を事前に押さえて欲しいと言って消える。徒党を組んでいた逃げたリーダーは西の審神者頭だった谷口さんだと判った。
 
掌編 甘酸っぱい恋と苺大福 
 小春が祇園にすんで間もなくのこと
 澪人が苺大福が好きと知った小春は、宗次朗に作り方を教わり作る。宗次朗のきれいな苺大福と小春の作った苺大福を一緒に出す。澪人は小春の作ったがいいと不細工な苺大福を食べた。

2019年2月7日木曜日

町奉行内与力奮闘記〈七〉 

町奉行内与力奮闘記〈七〉 外患の兆 上田秀人
 裏社会の親分・蔭蔵が死んで裏の秩序が無い、秩序を犯して仁科屋に泥棒が入った。北町奉行曲淵甲斐守はこの盗難事件を巡って南町奉行・牧野大隅守から喧嘩を売られた。
 内与力・城見亨は仁科屋の手口を見届け、裏社会に詳しい、播磨屋の用心棒・池端と志村に相談する。二人の協力を得、市兵衛を捕まえる。
 南町の岡っ引きが血鞘と呼ばれた殺し屋が城見に付いている事を知る。播磨屋の用心棒が血鞘であることも知れる。志村も見張られていることを知る。
 甲斐守は放逐した与力・佐田郁太郎に奉行所は一つでいいという書状を目安箱に入れるよう命じる。
 放逐された竹林一栄が浪人・丹波五郎左を雇った。

2019年2月6日水曜日

京都西陣なごみ植物店〈3〉

京都西陣なごみ植物店〈3〉 仲町六絵
  〜「明智光秀が潜んだ竹薮」の謎
明智光秀の竹薮 神苗健は植物探偵の和久井実菜21才の祖父・重吾と会い秘書・右田から相談を受ける。明智薮の竹が赤くなると噂になっていた。実菜はタカラダニだろうという。竹薮の中の光秀が切腹した場所と伝えられるわた出には竹が生えないという。わた出から七宝網が出たことから光秀が埋まっているかも・・このままにしておくのがいい。
判じ絵の桜、根引きの松 大学時代のサークルの先輩・日向臣一郎・古書店の跡取りからの相談。東京の古書店で修業をしたいという息子にこれを解いてみろと出された問題だった。黒い翼の生えた赤鬼→桜の花が付いた小枝。つぼみ→開きかけ→満開→漢数字の九→どこかを指さす丁髷の男性。神苗は「まさきくあれ」現代語で「幸運であれ」と訳した。探偵料は根引の松。日向は東京の古書店にいくことになった。
やまははの森 クリスマスイブの雪伸の茶会で出会った、井巣森という京都北東の集落出身のお年寄・みのり陶芸店主・みのりさんの相談を受ける。みのりの幼少期に「やまはは様に見捨てられわが家は町に出る」と聞かされた。みのりは町に住みたいと祈っていたために森に見放されたのでしょうかという問いだった。神苗と実菜は井巣森に行く。実菜はモンゼンイスアブラムシはイスノキに乳房みたいな虫こぶを作る。虫こぶで布を染めて機を織っていた。シイコムネアブラムシに変わって染色が出来なくなった。やまはははイスノキのことでした。
初雪や 二の字二の字の 下駄の跡 に君へと続く雪は哀しもと続ける恋敵雪伸。
茶の花如来 神苗のゼミの恩師・有働教授。八瀬の実家から出た薬師如来、誰が何のためにに作ったものか知りたいという。雪伸と神苗は最澄が薬師如来の恵みと、薬としての茶の恵みが人々に行き渡るように願い、作らせたものということになった。八瀬には比叡山から避難してきた文書が残っているかも。有働教授に論文を書く事を勧められる。
閉じられた花園 小学六年生黒森實が相談に来る。愛宕山に白装束の集団が現れる。というブログの書き込みがあった。実菜と神苗は考え、養蜂用の防護服だろうということになった。源氏はちみつ社社長を訪れ話しを聞いた。竜胆のはちみつを採れるようになるために 野ばらの壁で竜胆を囲んでいるということだった。
 実菜は日本の植物を育む仕事をしたいと言った。

2019年2月5日火曜日

人情江戸歳時記④ 恋の櫛

人情江戸歳時記④ 恋の櫛 藤原緋沙子
臘梅 しな30は二年前に婚家を飛び出し呉服問屋の女中をしながら袋物を縫っていた。夫は指物師で姑と先妻の子がいた。姑の意地悪と懐かない子供のため家を出た。心をときめかす貸本屋に貯めた十五両を渡してしまった。離縁状を貰いに行った婚家で亡くなった姑の思いと、しなの買った臘梅への夫の思い、子供の言葉を聞き、しなは婚家に帰ることを決める。
木いちご 鼈甲細工師秀次は「江戸細工鼈甲会」にかんざしを出品し一等になり金一封十両を貰った。秀次にはさきと仙太郎のふたりの幼友達がいた。さきは女郎になっている。身請けして一緒になるつもりだ。仙太郎は呉服屋の跡取り息子だったが父親が店を潰していた。仙太郎が秀次の有り金十六両を持ち逃げした。仙太郎を探す。仕事がおろそかになる。全てを話した秀次に師匠は鑑札をくれた。仙太郎は十六両をさきを通して返しにきた。秀次が仙太郎を見付けた時、仙太郎は、賭場で勝ち逃げした仙太郎を追ってきたやくざ者に殺された。秀次は昔遊んだ場所の木いちごを供えた。
薮椿 新次郎は塗師屋伝兵衛の二番弟子だった。思いを寄せる小料理屋の仲居・ぬいに小間物屋の次男坊との繋ぎを頼まれた。荒れた新次郎は松葉屋のたぬきという女郎にいかりをぶつけた。たぬきが話しかける。一日限りの関係だった。ぬいは次男坊と一緒になっり支店だした。二年後、新次郎は年季が明け二年間会わなかったたぬきと一緒になりたいと思った。親方が中に入って新次郎はたぬき・すぎと所帯を持った。親方の身体の調子が思わしくなく、親方は店を兄弟子と新次郎に譲るという。新次郎はぬいに金の無心をされ、無理してお金を作る。すぎも協力する。これが最後だと待っていたぬいとの約束の場所に岡っ引きがくる。ぬいは人を騙したことで捕まっていた。すぎは自分で調べぬいにも会っていた。ぬいは新次郎にだけは謝りたいと親分に頼んでいたのだった。
恋の櫛 一万石の大杉藩では藩邸で暮らす者総出で内職をしていた。傘組、櫛組、奥女中の袋組。櫛組の勘七が透かし彫りの特注の仕事を受けた。大店・嵯峨野屋の娘・つるの簪だった。出来上がったかんざしを殿様も褒め喜んだ。つるは婚礼が決まっていたが、嵯峨野屋の金目当ての許嫁を嫌がり、駒之介の行状を責め櫛師の勘七の名前を出し断ってしまう。駒之介は恨みから勘七を襲う。三日三晩生死を彷徨う勘七をつるは見守り続けた。
勘七の許嫁の亡くなったことを報せる手紙が届く。

2019年2月4日月曜日

喜連川の風 明星の巻〈二〉

喜連川の風 明星の巻〈二〉 稲葉稔
 喜連川藩で御前試合が開催された。勝者は名家の剣術指南役に推挙されるため子弟は目の色を変えていた。練達者が闇討ちにあい、「御前試合に計策あり」との拾文があった。天野一角は探索した。中老の内田正右衛門が助教の一人と門弟一人を唆し、闇討ちを仕掛、判定にも手を加えた。勝ったのは内田家の次男だった。御前試合は遣り直された。闇討ちにあった者が勝った。
 天野清助は鼻緒を切って雨の中困っていた娘・佐和を助け、家まで送った。内田中老の娘だった。佐和の誘いで時々会い、樺山に登り、荒川の水辺で遊んだ。約束してもすっぽかされた事もあった。佐和が死んだという手紙を貰った。佐和が自分が死んだらと頼んでいた手紙が届いた。佐和は病気だった。正右衛門は佐和が亡くなり、発作で亡くなった。

2019年2月3日日曜日

質屋籐十郎隠御用〈七〉 

質屋籐十郎隠御用〈七〉 大工と掏摸 小杉健治
大工の半吉は出入のお店から印半纏を貰うほど腕のたつ職人。半纏をくれた三河屋の煤払いをした夜、見知らぬ男から五十両を預かる。翌日、三河屋から五十両を盗んだ疑いを掛けられ、五十両が見付かる。謝れば許すと言われるが盗んでいない半吉は謝れない。もう一軒のでいりの店にも断られる。
 質屋の万屋に五十両を借りたい武士・真木陽一郎が現れる。藩の金を掏摸に擦られていた。籐十郎は、不審に思い調べ出す。真木の結婚を邪魔したい友人が掏摸・丹次を雇って擦らせていた。丹次は気付かれたため逃げる途中で半吉に預けた。丹次は半吉から話を聞き三河屋に、半吉が犯人でないと書いた紙を置き、十両盗む。
 籐十郎は掏摸の丹次まで辿るが丹次は何も話さない。丹次は恩人の別れたままの娘にお金を渡すつもりだった。娘が万屋に預けている母親の形見を取りにきたことで籐十郎が娘を知る。籐十郎が三河屋の事を知り、絡んだ謎が解ける。
 三河屋の五十両は、半吉を嫉んだ親方の息子・半吉の兄弟弟子・大治郎の犯行と分かった。大治郎は五十両を返す。半吉は大治郎を出入り禁止にするならこのまま自分が盗んだことにして欲しいと言う。三河屋が五十両は別の所から出てきたことにして、自分が隠居した。
 旗本・御家人の救済を目的に作られた「大和屋」だったが、「大和屋」不要の意見が広まった。反対運動をしてくれる譜代大名の次男と大和屋番頭の娘・つやとの縁組みが計画されたが、籐十郎は兄の援助もあって、つやを隠した。縁組みはなかったこととなり、大和屋は役目を止める事になった。
 籐十郎とつやは一緒になって万屋を続けていくことになった。
 

御宿かわせみミステリ傑作選

御宿かわせみミステリ傑作選 平岩弓枝
      大矢博子・選
 倉の中  若女房・柳と奉公人・喜三郎が駆け落ちしたと言われていた伊勢屋。に泊まっ喜三郎の許嫁・とみがかわせみに泊まったことで、伊勢屋の主人・半兵衛が二人を殺して隠居の部屋の下に埋めていることが明るみに出た。
 風鈴が切れた 女按摩・みつの亭主・漁師の弥吉が間男の良信を殺したと見なされていた事件を 東吾がみつにやった風鈴の糸が切れていたことで弥吉の濡れ衣がはらされた。
 藤屋の火事 藤屋の火事で亡くなった女は京都から来た近江屋彦兵衛の娘の父違いの妹・六と証言したのが近江屋彦兵衛の娘・幸だったが、本当は死んだのが幸だった。
 矢大臣殺し 仇討の祭りの芝居稽古で大騒ぎをお越し、その間にみんなが慕っていた浪人夫婦を死に追い立てた悪者を殺した。
 残月 島帰りのきたがかわせみに泊まる。きたの隠している娘・うのは嫁ぎ先が決まっていた。妾がうのを襲うように頼んだ男がきたに殺された。二十年前の犯人は五才のうのだったことが判った。きたはまた八丈島へ流刑になった。
 三日月紋の印籠 旗本の妾と息子・徳太郎がかわせみに泊まった。榊原家の印籠が無くなり徳太郎が持っていないか調べられた。徳太郎と東吾が榊原家に行き、言語障害の嫡男・右之助と話しながら徳太郎は右之助のおもちゃ箱から砂糖詰めの印籠を見付ける。
 築地居留地の事件 バーンズ先生の友人スミスさんの夫人の小間使い・スーザンが殺される。花世と源太郎と麻太郎はスミス夫人とクーパーの不倫とスーザン殺害を暴いた。

2019年2月2日土曜日

百万石の留守居役〈十二〉 分断

百万石の留守居役〈十二〉 分断 上田秀人
 数馬の岳父・本多長政は加賀藩筆頭宿老。長政が幕府に召喚され数馬を連れ江戸へ向かう。
 江戸の加賀屋敷では本多家に遺恨を持つ大久保加賀守に乗せられた鋒山内記長次に乗せられた横山玄位が乗り込み、加賀藩の弱みを探していた。武田党に押し入られ長屋に着いた血痕を見付けられた。木片を持って行かれた事を見ていた佐奈は、本多家の用人に報せる。佐奈に好意を寄せ、佐奈を護ると誓った武田党の生き残り四郎と、佐奈は横山内記の屋敷の表門を開け、回りにわかるように大騒ぎをする。
 江戸に着いた本多長政を行列を仕立て、加賀が不利になる証言をするために評定所に行こうとしている横山を止める。
 数馬は長政の江戸到着を今日中に右筆に届かすために、老中・堀田備中守家の留守居役・葉月冬馬の力を借りることにする。

2019年2月1日金曜日

新・秋山久蔵御用控〈三〉 裏切り

新・秋山久蔵御用控〈三〉 裏切り 藤井邦夫
 紅葉散る 徒目付・吉崎市之助が殺された。知り得た情報をねたに強請を働いていると噂の徒目付だった。吉崎の同僚が表右筆・黒崎家を調べていた。吉崎の妻の弟・真山京一郎と黒崎家の息子・新之助は連れ立っていた。吉崎に悪行を暴れた新之助は吉崎を殺したかった。吉崎の妻は夫の強請を知っていた。露見する前に夫を殺し、弟を吉崎家の養子にしようと企んだ。新之助と京一郎が吉崎を殺した。黒崎忠太夫と新之助は切腹、黒崎家は潰された。京一郎は死罪、吉崎の隠居は切腹し、家は潰された。
 裏切り 久蔵と中間・太一はさよという仲居を探している良吉と出会う。興味を持って太一は良吉を見張る。さよは盗賊の引き込みだった。盗みに出発した後、さよは川に身を投げたが久蔵と太一が助けた。盗賊は盗みに入った所で捕まった。盗賊・夜霧の政五郎一味は死罪になった。さよも含まれる。
 臆病風 久蔵の息子・大介と昌平坂学問所の友人・原田小五郎は食い逃げの浪人を取り押さえるほどの正義感の持ち主だ。
 刀剣商が殺された。たどって行くと目利きの一色光悦が殺された。旗本本田一学に疑いが掛かる。
 小五郎は父親が上役の言うが侭に悪事を行っていると大介に相談する。二人は父親を見張った。本田を見張っている和馬たちが見付け、久蔵が大介から聞いた。久蔵は原田に会い、原田が本田の悪事を調べていることが判る。原田は本田の家来に命を狙われ、捕まる。家来が二人を殺していた。原田の調べ書きが出され本田は切腹になった。原田は御咎めなしとなったが、悪事の証拠を掴むため本田の悪事を見逃したことに対する自戒のため自ら小普請入りした。
 面汚し 商家の若旦那・宇之吉と遊び人が舞と呼ばれる若い女を追い掛け回していることを知った和馬は、若旦那の親・小間物問屋「弁天屋」の宇兵衛に会いに行った。袖の下十両を出した宇兵衛を張り飛ばし、洗い始めた。宇之吉はいろいろと揉め事を起こし悪行をもみ消していた。宇之吉は遊び人を使い舞を勾引かそうとする。金を貰ってもみ消していた同心・寺田清之助は和馬が調べ出したことを知り、宇兵衛を殺そうとする。和馬と久蔵に捕まる。弁天屋は闕所、宇兵衛は追放、寺田は御役御免となり切腹を命じられた。