2022年12月27日火曜日

弥勒シリーズ⑪ 乱鴉の空

弥勒シリーズ⑪ 乱鴉の空 あさのあつこ 

 木暮信次郎の屋敷に捕り方が入った。信次郎は居なかった。信次郎は行方不明になった。
 尾上町の親分・信次郎についている伊佐治が、大番屋に連れて行かれた。伊佐治のことを知った遠野屋清之介は、伝手を頼って、元北町奉行・中村備前守盛幸の用人・板垣に口利きを頼んだ。
次の日の朝早く、伊佐治は帰ってきた。
 清之介と伊佐治は信次郎を探す。伊佐治の知ってる限りの信次郎が何日かで関わった事柄を調べる。

 遠野屋・清之介は、信次郎が居るところに気がついた。自分の屋敷にいた。
 喧嘩があり、刺された男が逃げた。刺した男は捕まり刺された男は、路地の奥の祠の後ろで死んでいた。信次郎が見つけた袋には、金種一種ずつ入っていた。よくできた偽金だった。死んだ男が運ばれたのは中村備前守の屋敷だった。信次郎は御菰たちを使っていた。
信次郎は中村を揺さぶった。中村家から毎日同じ時刻にさるところにに行く武士の懐を狙った信次郎が、足を洗わせた巾着切りに頼んだ。巾着切りを捕らえた。中身を調べるまでにもみ消された。
 信次郎が偽金のことを調べていることを知った公儀が動いた。取り締まろうとする方が信次郎に近づいて来た。揺さぶるために信次郎に捕り方が迫った。信次郎は消えた。偽金を作っている斗滑衆を逃がした。
 中村家が雇っていた平倉は、斗滑衆を殺した。関係した女を殺した。追いつめられ中村家を追放され、信次郎に向かった。清之介が木刀で骨を砕いた。

 中村家の用人・板垣が切腹した。中村家の後ろにいる公儀の偉いさんも信次郎に近づいて来た公儀の偉いさんも、分からないまま事件は終わった。









ニヒルな同心・木暮信次郎と、深い闇を抱える商人・遠野屋清之介。消えた信次郎の謎、火傷の痕をもつ死体、泡銭を夢見る者たち…。因縁の2人の行きつく先は? 『小説宝石』掲載を加筆修正して単行本化。

2022年12月23日金曜日

わが家は祇園の拝み屋さんEX

わが家は祇園の拝み屋さんEX 完その後 望月麻衣
 〜愛しき回顧録〜

 小春たちが進む道を見つけた五年後。
 学徳学園高等部に、OGMニ代目結成しようとする少女・一ノ瀬寿々がいた。千歳がいた。寿々は小春や澪人たち元OGMに話を聞こうとする。

 愛衣は、関西のグルメやファッションを発信する雑誌と全国の不思議情報を発信するする雑誌を出す小さな出版社に勤めていた。本当に心霊現象がおきているかを確認して『組織』に報告する下請け企業のような仕事もしていた。
 寿々は愛衣と問題の木を見に行く。愛衣と手をつなぐと不快さや悪臭が飛んでいく。愛衣は何も見えないが、悪しきものを寄せ付けない力が強いことが分かった。寿々は霊を祓おうとして失敗する。現れた朔也が霊を祓い、寿々に神様や自然のエネルギーを使うことを教える。
 愛衣と朔也は告白し合って付き合っていた。小春と澪人のことを聞いた寿々に、朔也は土曜日に祇園のさくら庵に行くことを進めた。

 寿々、透、剛士の先生・阿倍公生宅で、賀茂和人と阿倍由里子に会う。和人は医師、由里子は獣医師の国家試験の受験生だった。

 土曜日、小春と澪人は、婚姻届けを出していた。さくら庵で祝いの会が開かれた。
 18才の誕生日、澪人にプロポーズされた小春は、大学を卒業したら結婚したいと言った。
 二人が結婚を約束した時、黒龍が現れ、澪人に子供が出来れば、驪龍と名付けて欲しいと頼む。澪人は小春に伝えると言い、理龍と考えた。
小春は大学の四年間を、東京の両親と生まれたばかりの弟・夏樹と暮した。卒業後、学徳学園の養護教諭になりスクールカウンセラーを兼任していた。

 宗次朗と杏奈は吉乃と一緒に住み、安寿と風駕という二人の子供がいる。宗次朗は店舗を四店に増やし、風駕を背負って店を回っている。杏奈は主演ドラマを持つ女優になっていた。

 五月、二人の結婚式と披露宴が上賀茂の家で行われた。陰陽師の人々、二人の家族、寿々たちも参加した。
 寿々は、千歳が、姉のように小春を慕っていたのではないことを知った。千歳は自分の初恋が遠に終わっていたことに気付いた。

 最後に若宮・黒龍様が現れた。

 


  

2022年12月20日火曜日

ぬくもり 時代小説傑作選

ぬくもり 時代小説傑作選 細谷正充編

 迷い鳩 宮部みゆき 霊験お初捕物控
姉妹屋の初は柏屋の内儀の袖に血を見た。家の中の一部屋は血だらけだった。鳩が飛ばされ受け取るはずの女中は殺されていた。

 色男、来たる 田牧大和 鯖猫長屋ふしぎ草紙
サバが暮す鯖猫長屋に、絵描きの拾楽は、元役者の涼太を連れてくる。

 犬に仏 小松エルメ
円福寺で飼われる次郎。五才の時、次郎を発見した諒斎は動物の言葉を理解した。諒斎は悟りを得たと思われていた。七年経つが、諒斎は寺で修業中だが、仏門のことは熱心でない。

 カチカチ山 櫻部由美子 
頭巾持ちの家系に生まれた乙吉が、鳥や獣の声を聞き、奥ノ村の文蔵を助け、江戸から逃げてきた盗賊親分を捕まえた。

 紅蓮白峰 西條奈加
秋成は、雨月が結ぶ香具波志庵に居候していた。遊戯という兎の妖が来る。雨月と遊戯が怨霊と遭遇し、紙問屋の秘密を解き明かす。
 

2022年12月18日日曜日

父の声 

父の声 小杉健治 

 地元を離れ、東京で暮らす娘・のぞみが、婚約者の本間を連れて帰省した。父親の順治は、二人を明るく迎えたが、娘の変化に不審を抱く。心配になった順治は、娘を追って上京する。のぞみは、覚醒剤に手を染めていた。のぞみは本間を愛していると父親の言葉に聞く耳を持たない。

 麻薬取締捜査一課の調べと交差し、順治は麻薬取調官が本間やのぞみに近づいていることを知る。順治はのぞみのため出来ることは一つしかないと思う。のぞみの友人と会い、のぞみのこれからをお願いする。
 
 本間が「高岡ダルク」を見せたいと順治を誘った。それ以後、本間の姿がなくなった。順治の車が見つかり、携帯が東京で見つかる。警察は奥村順治を探す。高岡と氷見の境の山中で埋められた本間の遺体が見つかった。順治が殺したものと考えられた。

 本間に覚醒剤の運び屋殺人の容疑が掛かった。のぞみが捕まり、消防署に電話をした事実が発覚。本間の逃亡を助けていた。九月のぞみは裁判を受ける。
 のぞみは三週間、精神療養センターに入院した。その後、回復支援センターに入所。のぞみは明るく元気になった。四月、のぞみに会いに来ていた順治が夢に現れ、本間を殺してはいない。証拠は本間が埋められていたところにあると言った。聞いた警察は、本間の遺体遺棄現場を掘る。本間の遺体発見場所の下、奥村順治の遺体が見つかった。順治が握ったネックレスから犯人が判明。逮捕で、覚醒剤の隠し場所も判明した。
 のぞみは鋳物工房のギャラリーで働き始めた。

2022年12月16日金曜日

おもみいたします 

おもみいたします あさのあつこ 

 梅17才は、目が見えない。もみ治療をしている。一年先まで予約がある。水茶屋の女将・筆が梅の治療の窓口になり、孫娘・昌8才が、段取りをし、お客に日時を知らせる。

 早く治療の必要があると思われた瀬戸物屋今津屋の内儀・清のところに行く。何度も行きほぐしている間に、殺人事件に巻き込まれる。剃刀の仙と呼ばれる岡っ引きの協力をすることになる。

 今津屋の娘・松13才が首を絞められ殺されかける。梅の人口呼吸で松は助かる。
 十三年前、清の生んだ娘は死産だった。女中の加代は同じ日に今津屋の外で生まれた産婆に金を渡し、子供を取り換えた。それが松だった。今津屋・与三郎も承知だった。十三年経って、産婆が女・吟に話した。吟が知ったことを知った加代は、吟と話す前に吟を殺した。
 身体の弱い、弟・上松5才より、松に養子を取って見世を譲る話が出始めた。加代は松を殺し弟・清の息子に家を継がせようとした。
 今津屋の先代夫婦は、物取りに合い殺されていた。二人が、清に辛くあたるため加代が、殺していた。

 仙五朗と梅は二人で解き明かした。

 梅は、五才の時、流産した母を詰る父に反抗し叱られる。泣きながら魔が住むと言われる森は逃げ込み、少年が鳥を射るのを止める。止められた拍子に放たれた矢が梅の目を傷つけ目が見えなくなった。少年は人には見えないはずの者だった。その後、少年は梅の相手をする。老人もいた。
 十二才になったとき、梅は、父親が若いとき、出世をすれば初めて子供を捧げると神仏に願掛けをしたことを知った。父親は自分のせいで梅が見えなくなったと思っていた。
 梅は家を出た。少年は十丸と呼ばれる犬になり、老人は鼠の姿で過ごす。老人は、梅の手を見てもみ治療を教える。医療も教える。

 

2022年12月13日火曜日

大岡裁き再吟味② 山桜花

 大岡裁き再吟味② 山桜花 辻堂魁

 奉行所を外れてからも大岡越前は裁きが気にかかる。十七年前、雑司ヶ谷村本能寺の若い下男・直介12が折檻され殺され、山桜の下に埋められた。父親が下手人御免の願いを出し、皆お咎め無しと決した。その事件に疑惑が浮かぶ。大岡越前は、鷹匠の息子・古風十一に探索を命じる。

 十一は寺の関係者、御先手鉄砲組与力を引退した父親、父親が通った直介の母親・雪を探し聞き廻る。元読売屋のネタ探しをしていた金五郎の手を借り、折檻した17才と18才の所化二人が手代として務める銭屋を突き止め話を聞きに行く。
  次の日、二人の手代はいなくなった。
 十七年前、本能寺の墓参りにしばしば訪れる武家の内儀がいた。同じ頃本能寺の参詣に訪れる侍がいたことがわかった。
 大岡と敵対する商家・本両替商の海保半兵衛に頼まれ同じ事件を調べている半と出会い話を聞く。
 銭屋は十七年前に開業した。主・角兵衛は中間をしていた。
 雪は息子の墓に参った。息子の父親・一色半四郎に会った。
 一色半四郎は大岡に手紙を書き、下男に大岡が登城する前に届けるように言われた。読んだ大岡は手紙を城中に持って行った。
 一色半四郎は切腹した。大岡に当てた手紙があることが判明。手紙の内容は将軍にも知らされた。

 直吉は家禄五千五百石の鉄砲百人組の頭野添家の奥方と評定所留役・水下籐五の密会を見たために殺された。野添家の息子が、鉄砲を持ち出し、誤って百姓を殺した事件のもみ消しを水木に頼んでからの関係だった。半四郎は上役から金を貰い下手人御免を出した。水木家の中間が店を出し犯人とされた二人を引き取った。
 
 角兵衛は十一の命を狙った。直吉を殺したのは角兵衛だった。手代二人も殺された。角兵衛は十一の元から逃げたが、河原で遺体で見つかった。
 水下籐五は病のため急逝した。家督は倅が継いだ。
 鉄砲百人組之頭野添泰秀が役を解かれ、家禄三千石に減封、無役になり屋敷替えになった。
 十一は雪に話した。雪は菩薩を部屋に置き祀っていた。

 

2022年12月11日日曜日

新・酔いどれ小籐次〈二十五〉 御留山

新・酔いどれ小籐次〈二十五〉 御留山  佐伯泰英 

 小籐次親子は森藩の陣屋に着いた。小籐次は放ておかれた。驚いたことに、国家老が、藩主と同じ段通に座り脇息に悠然と上体を預け酒杯を手にしていた。国家老の側室がお艶の方と呼ばれ側にいた。

 久留島通嘉は城を建てたく、御留山になっている角牟礼山の木を切り、石垣をつくっていた。藩主・通嘉の願いを知る国家老・嶋内主石は、小阪屋金左衛門と共に抜け荷で儲けた金の一部を使い藩主の希望を叶えていた。

 通嘉は、将軍や老中に顔馴染の小籐次に取り成しを頼むが、小籐次は、嶋内を切腹に追い込む。嶋内は月代を切り、山奥の寺に預けられた。嶋内が溜めた金は藩の財政に入れられた。小坂屋は嶋内の罪状を記した書類を出し、藩の財政建て直しを助けることを約束する。小籐次は角埋山を御留山に戻すことのみが、森藩が生き残る道だという。

 通嘉は報告を聞き、角埋山に城を築くことを諦めた。家臣を集めて告知した。宿願を奪った代償に、公儀幕閣諸侯に得心させよと手紙が届けられた。

 四ヶ月の旅は終わり、江戸へ帰る。薫子が家族になった。新兵衛の葬儀が行われた。

2022年12月5日月曜日

突きの鬼一⑧ 鉄扇

突きの鬼一⑧ 鉄扇 鈴木英治 

 興梠弥祐が殺され、父・興梠照元斎は葬儀をする。
 月野一郎太は、別人に二度命を狙われる。命を狙った者を突き止める。新田与五右衛門に若年寄や北町奉行の行動を知らせていたのは誰か。密告者は、徒目付・臼田耕助だった。一郎太を狙った一人だった。
 臼田は一郎太に追い詰められ崖から飛び降り死亡した。
 弥祐を殺したと思われた椎葉虎南から呼び出され、照元斎と共に行く。一郎太は徳兵衛が作った磁石の鉄扇を持っていく。虎南の武器は、鉄製の毒を塗った吹矢だった。
 追い詰められた一郎太を助けたのは弥祐だった。虎南を倒す。照元斎は虎南を知っており、尋常の事では勝てないと、弥祐を死んだことにし、油断を誘った。
 まだ一人、一郎太を狙って者がいる。


2022年12月3日土曜日

吼えろ道真 太宰府の詩

吼えろ道真 太宰府の詩 澤田瞳子

 太宰権師 前右大臣・菅原道真は官職を奪われ太宰府に左遷されていた。慟哭と呪詛ばかり口にしていた道真が、管三道と名乗り博多津の唐物商・橘花斎で目利きを始めた。都から連れてきた娘・紅姫と南館に住んでいた。

 大宰大弐・小野葛絃、大宰少弐・小野葛根28才、葛絃の甥。父が亡くなり8才のおりから葛絃に育てられる。

 昨年京進唐物の中に紛い物が混じっていた。不審を持った藤原俊蔭は書面と実物を突き合わせ内偵した。半数近くが明らかに違っていたため、自ら太宰府に下向し、犯科人を捕らえるつもりで博多津に来る。一緒に、葛絃の息子・好古と阿紀が来た。

 俊蔭は詳しい取り調べもなく公文所大典・秦折城を捕まえ京へ連れて行く。

 葛絃は太宰府の調度品を検めさす。道真は倉廩を任された。二十年前から収めるようになった善珠が張本人だと判り、葛絃は折城の赦免を願う上申書を書き続ける。折城は帰ってこられるようになった。

 阿紀は道真の書に関心を持ち、道真の所へ通い書を習う。京に帰ってからも毎日書いて送っている。葛絃と道真は阿紀の烏帽子名を道風にするかと言う話しをする。

 



 

2022年12月1日木曜日

蜜蜂と遠雷

蜜蜂と遠雷 恩田陸 

 芳ヶ江国際ピアノコンクールが始まった。三年毎の開催で六回目を数える。近年評価がめざましい。ここで優勝した者がその後著名なコンクールで優勝するというパターンが続いた。新しい才能が現れるコンクールとして注目を集めた。
 
 結果 
一位 マサル・カルロス・レヴィ・アナトール
二位 栄伝亜夜
三位 風間塵
四位 チョ・ハンサン 
五位 キム・スジョン
六位 フレデリック・ドゥミ
聴衆賞 マサル・カルロス・レヴィ・アナトール
奨励賞 ジェニファ・チャン  高島明石
菱沼賞(日本人作曲家演奏賞) 高島明石

 マサル・カルロス・レヴィ・アナトール19才 ジュリアード音楽院学生。担当教授はユージ・フォン・ホフマンの弟子のナサニエル・シルヴァーバーグ。母は日系三世のペルー人。フランス留学後、フランス人の物理学者と結婚。五才から7才の三年を日本で過ごす。初めて出会った日にピアノ教室に連れていき、ピアノを音楽の楽しさを教えてくれた少女。マサルは彼女・あーちゃんに会いたかった。あーちゃんは栄伝亜夜だった。まさるは彼女のピアノを聴いてすぐに判った。
 亜夜はマサルを生まれながらの音楽家と感じる。マサルは弾きながら震えが登っていくのを感じ、他人事のように高みから見下ろしていた。

 栄伝亜夜20才 かって天才少女と言われ、早くから演奏活動をしていた。教師でもありマネージャーでもあった母親の死を堺にピアノコンサートを止めていた。高校三年で、母の知りあいの音楽大学の学長をしている浜崎に音楽大学入学を進められピアノを始めた。亜夜は、コンクール出場が決まっても、舞台に戻りたいのの?前線に復帰するの?彼らと向き合う覚悟はできてるの?世間からの目、言葉を聞き、出るのを止めようかと思うような状態だった。風間塵の演奏を聴き、昔のピアノと過ごした時間が蘇る。彼は楽しそうにピアノを弾いた。彼のように弾きたい。かっての私のように。「お帰りなさい」と言われて送り出された。亜夜のピアノはプロフェッショナルの音楽だった。まーくんに会い、昔が蘇る。

 風間塵16才 ホフマンの推薦状がある。書類選考で落ちオーディションを受けてコンクール出場。父は養蜂家。一緒に手伝っている。蜜蜂王子と呼ばれる。亜夜は音楽の神様に愛されていると感じる。審査員の受けは半々に別れる。ホフマンにそのままでいい。好きに弾いておいでと言われた。音楽を閉じこめているのはホールじゃない。人の意識だ。音楽を外に連れ出してやれと言われた。意味は分からない。ホフマンに一緒に音を外に連れ出してくれる人を探しなさいと言われた。亜夜がそうかもしれないと思った。高島の演奏で、緑の畑を見、川面の細波、吹き渡る風、漆黒の宇宙まで見えた。

 高島明石28才 応募規定ぎりぎりの年齢。妻子あり。高校の同級生がコンクールのドキュメントを撮影している。サラリーマン家庭に生まれ、妻は幼馴染で高校の物理の教師、自信は楽器店の店員。音楽家としてのキャリアの最期になると思っている。以降は音楽の好きなアマチュアとなるだろうと思っている。祖母が買ってくれた小さめのグランドピアノが祖母の家の土蔵にあった。二次審査で明石は祖母の桑畑を感じ、「春と修羅」では宮沢賢治を感じ、カデンツを弾き終えた。曲を弾きながら自分が弾いているのをもう一人の自分が見下ろしている感覚。桑畑からイギリスの海岸、ヨーロッパを旅している感覚で終わる。しかし、12人には残らなかった。

 およそ100人の出場者が、第一次審査5日で24人になる。演奏時間20分。第二次審査3日で12人になる。演奏時間40分。第三次審査


2022年11月27日日曜日

しゃばけシリーズ こいごころ

しゃばけシリーズ こいごころ 畠中恵

 おくりもの 料理屋の三野屋が、はしかの子供が遊びに行き伊和屋の子供、主人の妹・沙江にもはしかを移してしまった。伊和屋にお詫びの品を贈りたいが何をすればいいか判らない。相談された長崎屋の若旦那・一太郎は、伊和屋を調べに行く。内向きのことを知ってしまった一太郎は、沙江の縁談をまとめ、主人の縁談をまとめるのがいいことに気付く。

 こいごころ 熱を出し寝込んでいる一太郎の夢の中へ、狐仙と呼ばれる妖狐・老々丸が現れ、立派な妖狐になると思われていた笹丸の妖の力が尽きかけている笹丸を、おぎん様に頼んで茶枳尼天様の庭に入れてもらえないかと言ってきた。広徳寺の寛朝の所へ連れて行く。金印を飲み込んだ狸を盗んだ者を見つけ出し狸を探す。祝いの席で笹丸を消えた。妖の力が失せた時、命が無くなる。老々丸は命の無くなる笹丸のために、以前に声を掛けられ親切にしてもらった一太郎に恋心を持った笹丸のために、最期に一太郎に合わせるために江戸に来たのだった。

 せいぞろい 長崎屋の主人が、一太郎のために誕生祝いをした。店の奉公人の夕餉に祝い物をつけお酒が一本付いた。離れの妖もする。食べ物を調達に行く妖がそれぞれの所で集まる妖を増やしてくる。河童、猫又、王子の狐、天狗。人数が多くなり過ぎて広徳寺ですることになった。賊が押し入り奪った金を奪われ、探し回っていると日限の親分が知らせに来た。日限の親分も参加する。三百両しか入ってなかった千両箱に、賊たちは大事な物を入れたのだろう。盗まれた千両箱を取り返しにきた賊を、佐助と二吉でが捕まえ、千両箱を盗んだのは賊の船頭だろうと教え日限の親分を奉行所へ追いやった。

 遠方より来たる 一太郎の掛かり付けの医者・源信が、引退する。誰が長崎屋出入りの医者になるか住民は見ていた。源信の弟子は、甥の黄源と信青がいたが、黄源は源信が品川に連れて行くことになり、信青は大阪の医師に預けられることになった。新しい医者は火幻と名乗る鳥辺野から来た妖の化前坊だった。僧装だった火幻に医者の着物と源信が住んでいた家を渡した。

 妖百物語 火幻が長崎屋出入りの医者に決まった。廻りの商家の主から顔合わせに、百物語の会に誘われた。火幻と一太郎と金次と屏風のぞきも誘われた。九十九で終わらせる話しを百までして妖を呼ぶという。四人は困った。出てきた妖が、親しげに四人に話しかけてきても困るし、自分たちの手に負えない妖が出てきても困る。途中で一太郎の具合が悪くなり四人で帰るという計画で会場へ行く。会場へ行くと商家の主たちを目の敵にする商家の次男三男が、山伏を集めていた。不穏の気配に一太郎が途中退場しようとすると、帰りの扉は反対側から閂が掛かっていた。扉の向こう側では若者たちの悲鳴が聞こえる。山伏は逃げ、怪異が若者たちを引きずっている。一太郎は寛朝のお札を持たせて小鬼たちを投げる。怪異にぶつかった小鬼は怪異にお札を張る。怪異は消えた。その後、百物語は禁止になった。一太郎は熱を出して寝込んだ。若者たちは怖がって出てこなくなった。

 

2022年11月25日金曜日

八丁堀強妻物語〈二〉 銀の玉簪 

八丁堀強妻物語〈二〉 銀の玉簪 岡本さとる 

 見廻り中の芦川柳之助の目の前で、若い娘・いとが大川へ身を投げた。近ごろ起こっている娘の”神隠し”が、いとの身投げと繋がっているか否か。隠密廻りとして探索を始める。
 恋しい夫のために戦う喜びを味わった千秋は、柳之助の探索が気になる。

 柳之助は定町廻り同心・外山壮三郎と協力する。
 いとと追いかけていた男が仁助と判明する。
 金貸し彦右衛門が殺された。仁助が女を騙し彦右衛門の寮へ連れ込んでいたことが判明。彦右衛門の寮から櫛、簪、匂い袋が見つかる。いとの櫛があった。
 書家の北村東悦の駕籠が襲われ、殺された。東悦の家に賊が入り、金蔵を荒らされた。東悦は彦右衛門とつながっていた。
 仁助の遺体が埋められ見つかった。
 東悦は大身旗本、大名、富商などと付き合いがあり調べていると横槍を入れられる。
 柳之助は、万屋竜三郎と名乗り、消えた跳ねっ返り娘が出入りしていた汁粉屋に行く。女将のふみは、気持ちの良い女で娘たちは駆け込み寺のように訪ねてきていた。千秋の命で花は柳之助を見張っていた。
汁粉屋を出ると小間物屋で玉簪を物色した。花から聞いた千秋は嫉妬し、何故見張らしたのか後悔した。柳之助が帰ってきた。月見灯籠が描かれた銀の玉簪を差し出した。
 仁助や東悦と繋がり、私娼を仕切る、漢籍を売る本橋道四郎の身柄を確保した。取り調べを始めた途端、高家・三雲丹波守から横槍が入り、本橋解き放した。
 汁粉屋で柳之助は、本橋に上手く乗せられないようにと言う。千秋と花はふみをつけた。何か判ったかと聞く三人の編み笠を被った武士と会った。
 本橋が三雲の屋敷に行く途中、覆面の武士に襲われた。本橋は矢が刺さって死んだ。「悪党め!天罰を受けよ」と言った。一人捕まえた武士は「守相手を違えるな。木っ端役人めと言って自決した。柳之助は通りすがりの飛脚を装い立去った。
汁粉屋は店じまいしていた。
 儒者、軍学者・松尾槌次郎は政道塾を開いていた。天誅世直しの活動をしている。ふみの妹が、彦右衛門に攫われ妹は潮来の女郎屋で死んでいた。女を生き地獄に落とす者を許してはならぬ。妹の仇討ちと称して仁助と彦右衛門を殺した。繋がっていた東悦を殺し、本橋を殺した。そして三雲を殺すことを前に、蔵を荒らしため込んだ金を奪うという。ふみは聞いてしまった。槌太郎と一秋が、金を持ち去りさえすれば我らの勝ち。同志たちは先生を逃がすために命をかけるでしょうと言った。ふみは一秋に斬られた。虫の息のふみは、柳之助にただの盗人に成り下がった。今宵・・・と伝える。
 松尾たちは三雲邸を襲った。柳之助、千秋、花は通りすがりの助っ人と名乗り松尾たちにかかる。松尾は荷車に略奪品を載せて屋敷の外へ。千秋の兄・喜一郎が奉公人と共に駆けつけた。柳之助たちは松尾一党を追う。官兵衛は二挺艪で来てくれた。千秋と花が半弓で槌太郎に射掛けた。柳之助は刀の峰で槌太郎の眉間を打ち、ふみ仇は討ったと語りかける。
 奥高家・三雲丹波守は隠居し永蟄居となった。


2022年11月23日水曜日

鎌倉署・小笠原亜澄の事件簿

 鎌倉署・小笠原亜澄の事件簿 鳴神響一

 鎌倉山の邸宅の書斎で文豪の蘆名盛雄95才が死体で発見された。神奈川県警捜査一課の吉川元哉巡査長がコンビを組まされたのは、幼馴染で鎌倉署刑事課の小笠原亜澄巡査部長。二才年下なのに小生意気で口煩い亜澄だが、抜群の推理力でこれまで共に難事件を解決してきた相棒だ。

 蘆名盛雄は自殺と思われた。ただ、遺作原稿「稲村ヶ崎の落日」が無くなっていた。

 夫婦池公園の池でフリーライターの上原尚一の他殺体が発見された。吉川は亜澄と組まされ手帳のUBAGAYAを手がかりに「姥ヶ谷」に行く。姥ヶ谷は稲村ケ崎にあった。蘆名盛雄の「稲村ケ崎の落日」についてのインタビュー記事が見つかった。湘南中学の同級生で残っているのは蒲生隆郷だけ、蒲生に読んで欲しいというものだった。インタビュアーは上原だった。
出版社の鳥居は、被害届を出します。原稿は探して下さい。二人は事件が関係すると考え、「稲村ケ崎の落日」を追いかけさせてもらうように頼む。

 蒲生隆郷に会う。二人の孫。開発企画室・蒲生秀之33才、営業戦略部係長・細野敦司34才。
 アラン・カルパンティエ司祭
 蘆名家の使用人、秘書兼財産管理・富田実、運転手兼雑用・金上利夫、料理や掃除・三村和枝・松本麻里奈。

 調べた結果、蒲生隆郷の長男として育った秀郷は、蘆名盛雄の子供だった。母親・貴子だけが知り、貴子が亡くなる前に秀郷だけに話していた。昨年、秀郷は亡くなる前に、本当の父親・蘆名盛雄に告白して亡くなった。蘆名は海軍の特攻に出る前に愛する人と結ばれた。貴子はお腹に蘆名の子供がいることを承知で蒲生と結婚した。蘆名は死んだと思っていた。
蘆名は去年までその事実を知らなかった。そして「稲村ケ崎の落日」を書いた。

 誰が原稿を盗んだか。上原を殺したのは誰か。二人は蘆名盛雄の追悼ミサであぶり出しことにした。AIで合成した盛雄の声で「私の本が何故でないのだ」と言わしめた。
 あぶりでたのは、松本麻里奈だった。
 麻里奈は死のうとする直前の盛雄に頼まれた。原稿を鳥居に渡すこと。一ヶ月前に書いた公正証書遺言を預かった。盛雄は病気のための頭の痛みに耐えられない、もうすぐ意識混乱が起こる。自分の頭がはっきりしている間に片づけておかなければと言った。
 麻里奈は秀之と付き合っていた。原稿を読む秀之が不利に、蒲生家から追い出されると思い表にだすことを拒んだ。上原は麻里奈が原稿を預かっていること、富田や三村がお金を着服していることを知っていた。会おうと言われた日の前に上原が亡くなりほっとしたことを告白した。
 上原は富田と三村と会い、二人を脅した。上原は殺された。二人は認めた。
 蒲生家の人々がすべてを知ったが、関係は変わらなかった。隆郷は、秀之が文化勲章者の孫だ。名誉になっても恥にはなるまいと言った。

 鳥居も隆郷も原稿が見つかりおおいに喜んだ。


神奈川県警の捜査本部長は黒田刑事部長で、捜査主任は福島捜査一課長。二階堂管理官もいた。


 


 

2022年11月21日月曜日

恋いちもんめ

 恋いちもんめ 宇江佐真理

 水茶屋「明石家」の娘・初17に裁縫の師匠・久が、青物屋の「八百清」の栄蔵との縁談をもってきた。二人は気があった。初は頼りない兄が心配で嫁に行くことに気乗りがしない。

 栄蔵にはふじが一緒に来る。ふじは栄蔵を好きなようだ。ふじは一人娘で婿をとらないといけないので栄蔵と一緒になれないようだ。川開きの後、栄蔵との話が決まる。

 八百清から火が出て、母親が亡くなる。栄蔵がいなくなった。 

 十月、ふじの結婚が決まった。栄蔵の従兄弟・友次郎だった。八百清の土地は更地になって伯父の管理になった。仮祝言の日、友次郎はそれまで付き合っていた女に殺された。

 栄蔵が見つかった。品川で女郎屋の妓夫をしていた。栄蔵と合ったがうまく話が出来ない。俺のことは忘れてくれだった。

 初の母親が好きな人と一緒におなりと言う言葉を残して死んだ。初の父親・源蔵の友人・佐平次は、栄蔵の借金を返し栄蔵を自由にした。

 正月、誘われてふじの家に行くと栄蔵がいた。栄蔵は働いていた。花見の季節、初は栄蔵がふじと一緒になるのが周りの人々に好都合なのだと思うようになった。栄蔵に伝えると、自分のことは自分で考える。人の都合になど振り回されない。見くびるなと言われた。

 四月三日、初の兄の祝言の日、栄蔵は来た。栄蔵は初の夢を叶えると言って帰った。藤城屋を出た。ふじが栄蔵を探しに来た。
 一ヶ月後、両国の床見世に栄蔵が八百清の見世を開いた。


 

2022年11月19日土曜日

マイ・ディア・ポリスマン

 マイ・ディア・ポリスマン 小路幸也

  宇田巡(めぐる)巡査25は小学校の三年間を過ごした町の交番に配属された。捜査一課からてんの配属だった。同級生・大村行成が副住職を務める東楽観寺前交番。お寺の境内に交番勤務の独身警察官の住居があった。

 昭和最後の平場師と呼ばれた女掏摸・菅野みつの孫娘・楢島あおいがいた。みつに負けない掏摸の上手い、漫画家志望の女子高生。あおいの友人・鈴本杏菜と一緒に、自分の子供に虐待か育児放棄の疑いがある市川美春の存在をうたのお巡りさんに知らせるため、美春の財布を掏摸、四人でいる時に交番前のベンチに置くという荒技を使う。
 美春の夫は二人の同級生だった。あいうえお順の市川、宇田、大村だったため三人が思っているよりもお互いをよく知っていた。
 美春の夫・市川公太にはいろんな問題があった。が、巡と行成は、巡の住居へ呼び、手製寿司でもてなす。奥さんのこと、自分の店に客を呼ぶため自営業の家にちょとした悪さをしていることをしっていると教える。
公太は夜の仕事を辞め、運送会社に勤めながら高卒の資格を取り大学へ行き、弁護士になることにした。

 あおいは祖母・みつを知っているという天野さくらの存在を知る。話を聞く。巡も菅野みつと自分の祖父を知っているという天野さくらの存在を知り話を聞く。

 巡は非番にあおいとデートする関係になった。あおいに市川兄弟の記憶力の不思議な力のことを話、あおいのしたことを知っているとはなす。平場師の技を使って人助けしようと思うのならその人の人生まで考えないといけない。ちゃんと相談して欲しいと言った。
 行成は杏菜と境内の掃除デートしている。
 

 

2022年11月17日木曜日

猫弁⑤  猫弁と魔女裁判

猫弁⑤  猫弁と魔女裁判 大山淳子

 百瀬太郎の住むアパートの大家は、持っていた不動産を売って故郷の熊本に息子と帰った。太郎は売れ残ったアパートの大家の代行をしている。

  百瀬は、日本最大大手法律事務所・ウエルカムオフィスの秦野から以来された裁判の調べに没頭し、アパートにも事務所にもいない常態だった。
 不正アクセス禁止法で逮捕した、魔女と呼ばれるアメリカのスパイ・シュガー・ベネットの裁判。外事警察、公安の滝之上が十年かけて追いつめ逮捕・拘留したが証拠不十分で不起訴、経団連が告訴するが不起訴、検察審議会に訴え起訴相当となり指定弁護士を秦野に頼んだ。秦野は百瀬に頼んだ。
 百瀬は引き受け、指定弁護士の権限で、強制捜査を始め、逮捕・拘留した。
 日本ではスパイの裁判はお茶を濁す。即時釈放国外退去が恒例だった。
 百瀬は強引だった。拘留は行き過ぎではないかと疑問視された。
 太郎は、シュガー・ベネットは自分の母親だと思っている。

 百瀬がいない事務所を赤井玉男が手伝っていた。
 死んだ愛猫の生まれ変わりと称して新しい猫を押し付ける、詐欺の訴えを調べていた赤井。
 生まれ変わりでないことを承知で、新しい猫を飼っていた本人、買った訳ではなく、本当に猫が好きか調べられ次の猫を紹介されただけだった。猫を動物愛護センターから引き取り猫を亡くした愛猫家の元に猫を届けていた青木その子。赤井が青木に会った時、青木は母を亡くし、猫を飼えて安い住むところを探していた。赤井は百瀬の住むアパートを紹介する。
 柳まこと獣医は、動物愛護センターに収容された犬猫の殺処分が禁止になったことを伝えた。まことは、黄色の蛇を高知に運んでくれたトラックの運転手と結婚した。

 四月七日の結婚式に向け、大福亜子は式場と一人で打ち合わせをしていた。
 亜子の父親へ挨拶に行くと言っていた太郎だったが、裁判の調べのため行けなくなった。野呂が替わりに父親・徹二に挨拶する。父親は野呂を気に入った。野呂は百瀬の心は一級品と言い、お嬢さんのお相手として不足はないと言いきった。父親は式には出ると言った。
 久しぶりに会った太郎は、亜子を養護施設に連れて行った。子ども園の園長・遠山にシュガー・ベネットは母だと言う。遠山は面会を許可されシュガー・ベネットに会った。太郎の生い立ちを話す。頭が良い彼に、弁護士になればお母さんを助けてあげられるかもしれないと生きるモチベーションを与えたことを話した。
 亜子の後輩・赤坂と結婚してフィリッピンに行った旧姓・寿春美は、赤坂隼人に
一ヶ月三十万の家事手当てを頂くことになったと連絡してきた。三年の任期が終わり離婚することになっても慰謝料や財産分与は無いという契約をした。

 裁判が始まった。起訴状は五年にわたる三十五回の不正アクセス行為により、懲役三年の求刑。
 一回目公判、三十四回の不正アクセスは遠隔操作による被害者の可能性があるということで一蹴される。三十五回目の島根の医者の論文の改ざんについては、百瀬は次回の証人尋問を要求し認められた。
 二回公判、百瀬が論文の改ざんをされたという医者・上野三郎は、掲載されると思っていた論文が返され、自分の記憶にある論文と違っていた。自分がアルツハイマーの初期症状だと認識していた上野は、こんなに病気が悪化していたのかと思い、診療所を閉じ施設に入っていた。
 百瀬はパソコンの復旧作業をし、改ざんされる前のデーターを救出した資料A。投稿されたもの資料Bとは明らかに違っていた。
 上野の友人・佐川の元にシュガー・ベネットが、上野の論文を返して欲しいと訪れたことを証言した。佐川の元に在った論文は資料 Aと同じだった。被告人・シュガー・ベネットも佐川を訪問したことを認めた。
 百瀬は、三十五件目の不正アクセスは立証された。医療の進歩を妨げ、インターネットの不信感という点で社会に与えた影響は大きい、懲役三年を求刑した。
 
 十日後の判決当日、亜子と父親は、沢村と二見に傍聴チケットを譲ってもらう。
 判決は、懲役三年となった。裁判官は、圧力がかかったが、無罪にもできず、執行猶予もつけなかった。
 判決の言い渡しが終わった後、百瀬が、被告人に三十五年前、七才の息子を手放しましたね。理由を述べてくださいと言う。諜報活動のためです。行為は間違っているとは思いませんか。その時、それが息子にとって最良の道だと判断した。後悔したことはありませんか。私は正しかった。息子にとって最良の道だった。あなたを見て今、そう確信している。とやり取りがあった。二人は見つめ合ったシュガー・ベネットは退場した。二人の会話を止めさせようとした裁判長に亜子は二人に時間をとお願いした。
 沢村は彼女はAMIの命令に背いた。逮捕されるしか組織を抜ける道が無かったのだろう。小さな証拠を一つ残し、たどり着く人間を待っていたのだろうと言った。
 シュガー・ベネットの弁護士・前に弟だと言って百瀬の前に現れた男が、太郎に渡してと写真を渡した。太郎と母の写真だった。手にした太郎はどんどん昔の記憶が蘇る。

 亜子の父親は式場をキャンセルさせる。それを聞いた太郎は、分かりましたと言い、彼女のおかえりなさいを思い出にしなければならないと思った。
 亜子は、結婚式にはお母さんに出席してもらわなければ、式は三年後に延期すると父が言うと続けられた。
 明日から一緒に住むと亜子は言う。
 
 

 

 

 


2022年11月15日火曜日

猫弁④ 猫弁と少女探偵 

猫弁④ 猫弁と少女探偵  大山淳子

 滝之上京子10才は、川岸で烏に突かれている三毛猫を拾った。猫が心配で猫を飼っているマンションの隣の部屋の野口美里に相談した。猫にエリザベスと名付け、飼うための道具も揃えてくれた。散歩に行き猫がいなくなった。京子は探した。印刷屋でチラシを作り新聞と一緒に入れてもらった。見付からない。猫の身代金五百万円を要求する電話があった。美里は猫弁・百瀬に依頼した。

 百瀬太郎の弟・百瀬次郎と名乗る赤毛の男が現れる。太郎のアパートで一晩過ごす。帰った後、盗聴器が仕掛けてある。太郎は偽物だと言う。太郎の母親は日本国籍ではない、母から赤毛は生まれないことを揚げる。

 猫弁になりたくて事務所を訪れる石森完太10才と一緒に京子の猫探しをする。完太の家にエリザベスはいた。完太の家にいるアネキだった。
 印刷屋は百瀬の中学の美術の先生・上安里で、チラシを作ったのは上安里の教え子で、身代金の電話を掛けてきたのも彼だと分かった。

 百瀬の事務所に京子の父親が訪れる。京子の机の中の百瀬の名刺を見たようだ。百瀬は京子と、美里と猫の話をし、京子の日常を話す。滝之上は、公務員だが、十年掛かった仕事が終わる。5時帰宅の部署に替えてもらうと言って帰る。
 透明人間・沢村が、百瀬に会いにくる。帰る滝之上を見て、彼は公安だと言った。沢村は二見との近況報告にきた。沢村は百瀬との出会いに意義を感じていた。
 沢村は、先生が誰かを幸せにするんではなく、先生といる人が幸せになると言った。

 百瀬は大福の家で見合いをすると聞き、大福の家に行く。亜子の手を引き、家から連れ出しバスに乗る。見合いは亜子の同級生・赤坂と亜子の会社の同僚・寿春子のものだった。
 春子は会社を首になり仕事を探していた。赤坂は、外交官として外国赴任に妻を伴いたかった。二人は少なくとも三年間は結婚し、春子は専業主婦で外交官夫人を全うすることにした。

 石森完太は、千葉のおばさんのところに行った。月に二回、上安里のところで京子と絵の勉強をしている。
 京子は、夕飯を美里の家で食べる。

 

2022年11月13日日曜日

猫弁③ 猫弁と指輪物語 

猫弁③ 猫弁と指輪物語 大山淳子 

 朝八時 百瀬は大福亜子といつもの喫茶店で朝食デートをした。春美が考えたミッションだった。朝ご飯を一緒に食べる仲になること。朝会って朝食を食べた。
 亜子は週末一泊旅行に誘われる。百瀬は秋田にエンゲージシューズを買いに行こうと言う。亜子は店長の家に、百瀬は職人の家に泊まる予定。亜子は長くかかる新幹線を選んだ。
 当日、行けなくなったと百瀬が来る。亜子は秋田まで行けば迎えがいるからと一人で秋田に行かされる。
 大河内三千代に会った。彼女は何もかも分かっていた。そして自分の気持ちをはっきり伝えるか、あなたが百瀬に慣れることが必要だとアドバイスされた。
 早足で歩けて、走っても痛くなくて、雨の日も大丈夫で、何年もどこへでも履いていける目立たない靴を注文した。そして三千代は希望の靴ではないが、この靴を履いて貰いたいと赤い靴を渡した。もっと自信を持ちなさい。人を幸せにする才能を持っているのだからと言われた。繊細かつ強靭な赤い靴。
 亜子が帰る時間、百瀬は迎えに行った。亜子はお似合いの男性と二人だった。男はミスター美波、美容コンシェルジュ、テレビに出ている人だった。
 百瀬は赤い靴を履いた亜子と会った。亜子は沢山話した。事務員の七重が亜子に真珠が一個ついている指輪を贈った。
 
 まこと先生は、飼い主の小松が引っ越しで飼えなくなるビルマニシキヘビを引き取ってきた。
 まこと病院にトラックで轢きそうになった灰色猫を運転手が連れてきた。栄養が足りなくてぐったりし、前足首を脱臼していた。入院させる。
ビルマニシキヘビの行き先が決まった。クビになったトラック運転手・土田帆巣が、運ぶことになった。
 秋田に行く予定の日、依頼がきた。小松がビルマニシキヘビを転売された。取り戻して欲しいというものだった。
 まこと病院で二人の会話の録音を聞いた。小松に勝ち目はない。

 七重は、時々百瀬法律事務所の黄色いドアに落書きする、貼り紙をする少年を捕まえた。
 
舞台女優・白川ルウルウの密室で飼っている猫が妊娠した。所属するオフィスの社員見習い・味見克子が代理人でやって来て、相手は誰か、真相を解明し、損害賠償を請求したいと依頼する。百瀬は味見を大学に戻し、講義を受け卒論を書くよう勧める。
 白川本人に会う。メインクーン種名前はべべ。世界チャンピオンを狙おうかという猫。
 野呂が百瀬に代わりペットシッター・今井静香に会い話しを聞く。べべの顔つきが変わったこと。過去に何回も脱走していること。白川ルウルウは恋愛詐欺で被害者が大勢いることを聞く。前回脱走した時、ミスター美波に任せたこと。
 野呂は百瀬に自分の過去を語った。白川ルウルウは司法試験の勉強中に一緒に住んでいた女性だった。親に金の無心をして指輪を買って彼女の指に嵌めた。婚姻届けにサインをする時彼女は消えた。会っても名前を言っても彼女は覚えていなかった。
 味見克子は、就職活動を辞め、卒業までしっかり勉強することにしたと報告に来た。
 真相を報告する。べべは妊娠していない。まことが連れてきた灰色の猫がべべだった。逃げたべべを見付けられなくてミスター美波はべべの母親・マリンを連れてきて入れておいたのだった。マリンは用意された段ボールの中で三匹の赤ちゃんを産んだ。まことが土田を呼び産後の必需品を運んできた。生後二ヶ月ここに置いて欲しいという。白川るうるう・土田とめ子は帆巣の母親だった。野呂は帆巣の年を聞き、父親ではないことが判った。
 べべは帆巣が引き取った。帆巣は俳優の金城武に似ている。イケメンドライバーの相棒は大型美ネコ。
 土田とめ子は司法試験に十回も落ち弁護士を目指して勉強していた男から指輪を貰い、奮起し、ブロードウェイに行った。その指輪を出し、またもやアメリカに行く夢を追いかけて。

2022年11月11日金曜日

猫弁② 猫弁と透明人間

猫弁② 猫弁と透明人間  大山淳子

 百瀬太郎の弁護士事務所に杉山というタイハクオウム・杉山の様子を見てきて欲しい。というメールがきた。透明人間からだ。
 杉山は、天気予報士・山田とテレビ出演していたが、映画「どついたるねん」の言葉を覚え大阪弁で喋るため山田は、世話を頼んだ会沢に押し付けていた。会沢は杉山をもてあましているため引き取ってきた。杉山は、キャットタワーの最上段を自分の居場所としている。透明人間から百万円入る。最終的には透明人間に杉山を引き取って貰おうと考えている。
 透明人間・沢村透明は、十才の時、同級生が屋上から飛び降りたのが、自分の言った「臭い」の所為だと思い、言葉を発しなくなり、引き籠りになった。本読みに明け暮れ二十才の時、一生分の勇気を出して司法試験を受けた。合格したが研修所には行けなかった。トップ成績で受かったのに研修所に来ない沢村の存在を知った落ちこぼれどうにか弁護士になった二見は、沢村に会った。沢村は二見のゴーストになり家から独立した。訴状書き、裁判のシナリオも何パターンか作る。青山に事務所を持つ二見は、テレビで売れっ子で法律王子と呼ばれた。
 沢村は、夜の公園で遊ぶ母子を知った。夫は入院中で病院と争っていた。二見が持ってきたのが、母子の医療訴訟だった。手術後の意識が戻らない。病院側だった。降りたいが降りられない。沢村は母子を助けるためデーターの改竄をした。ハッキングだった。

 百瀬は大学教授をしている同級生・寺本から、赤井がウエルカムから誘われているが百瀬の事務所に行きたいと言っているどうしたものかと相談を受ける。百瀬と話をし、寺本は百瀬になりたかったら、クビになるまでウエルカムにいろと、言うことにする。
 後日、寺本がウエルカムは赤井から二見に替えたと聞いた。二見に医療訴訟を回してうまくいったらという話しのようだ。百瀬は医療訴訟を調べる。原告側の弁護士に会う。西田幾太郎から資料がきていた。改竄されていた。ゴーストをかって出た。西田幾太郎は透明人間だと思った。

 百瀬は沢村にたどり着いた。杉山を持って行く。透明人間であり西田幾太郎でしょう。改竄は直したと言う百瀬を、毒で殺そうとした。飛び込んで来た二見が、裁判で負け、原告側のシナリオも沢村が書いただろうと言い、言いたいことを言って怒って出て行く。
 百瀬は、よくある点滴時に空気が入り、田部井が、心房中隔欠損症であったため小さい脳梗塞が出来ていることを見付けた。状況証拠で刑事裁判は無理だが民事裁判では病院側の過失が認められた。賠償額は適当で病院側は控訴しない。沢村はコーヒーを飲もうとした百瀬のカップを払いのけた。百瀬は割れたカップをきれいにかたずけた。
 杉山は沢村に渡された。
 後日、百瀬は透明人間から、大阪弁で研修所に通うことにした。資格が取れれば青山で働らこうと思てる。というメールを受け取る。
 
 百瀬太郎と大福亜子は、婚約したと言いながら喫茶店での初デートをする。
 二度目は百瀬が濡れているため外でお弁当を食べることになった。百瀬の過去を聞く。
 高校に行かず、大学の生活費を稼ぐためにパチンコ店の住み込みを三年間。同級生の高校生の家庭教師をしながら高校の勉強をし、大検を受けた。その高校生が女子と聞いて亜子は機嫌が悪くなる。東大に受かって今のアパートに入った。
 世田谷猫屋敷事件の被告・黒岩サチ江が亡くなった。行くたびに増えていた手作りの猫は三十七匹あった。だんだん上手になっている。一匹貰い後は棺に入れる。後日、作ったのは亜子だと知る。
 獣医師・まことから亜子の写真を受け取った。百瀬はポケットに入れる。
 百瀬は事件絡みの男に暴行され、病院で看護婦になった、パチンコ店の娘・沙織と再会した。父親は亡くなり、母親は出て行った。沙織は百瀬の真似をした。住み込みで看護学校に通わせてくれる病院で勉強し、看護婦になった。結婚し、子供もいる。
 亜子の同僚・寿春美の助言で、百瀬を両親に合わす。百瀬の戸籍に父親はいない。母親とは7才で別れた。母親が子供をすてたのか、うちの娘との交際は認めん!と言われてしまう。

 田部井家は陽子の実家に移った。田部井耕平はひまわりを見た。

 
 

2022年11月9日水曜日

情け深川恋女房

 情け深川恋女房 小杉健治 

 深川佐賀町の稲荷小路に「足柄屋」という小間物屋を構える与四郎と小里の夫婦がいた。十三年前に江戸にやって来た与四郎は、地蔵様からの恵みと縁、修行時代に互いに一目惚れした女房の小里を大切にし、支えられた商いが誠実なことで周囲から評判だった。
 小僧の太助が、大店の娘と深川祭りに行き難癖をつけられ大怪我を負った。大怪我をした太助を助けてくれた「鶴岡屋」の又右衛門は親切で、動けない太助の面倒を見てくれた。
 大店・丸醤の主は足柄屋を恨み悪評を撒いた。商売に影響がでた。
 又右衛門と岡っ引きを引退した千恵蔵親分が、周りの人の誤解を解いたり、丸醤の主に会って話しをしてくれた。客は戻って来た。与四郎も小里も千恵蔵親分が親切な理由が分からなかった。
 小里は知らなかったが、小里は千恵蔵親分の娘だった。小里には、母親に昔世話になったと話した。
 与四郎は、親切な又右衛門に額に傷のある目つきの鋭い男がまとわり付いていることに気付いた。男は又右衛門から預かった箱を長屋の男に渡す。千恵蔵に話し一緒に話しを聞きに行く。
受け取ったのは松藏。昔、店で五百両を盗まれそれがために店が潰れ、医者に行く金が無いため妻は亡くなったという経歴の持ち主だった。男は盗んだ泥棒が返したいと代わりに持ってきたと五百両のお金を置いて行った。
 与四郎は傷のある男・秀次郎と話す。秀次郎は又右衛門は、昔、二人の人を殺していると言う。与四郎は今の又右衛門の日常を語り、人助けを語る。秀次郎は、本当に重吾・又右衛門が本当に改心をしていることを知り、事故で亡くなった隠居の死を重吾がやったと言いふらし、自分が殺した弥吉殺しを重吾がやったと弥吉の親に言ったと千恵蔵に話した。
 松藏から五百両を盗んだのは秀次郎だった。重吾がやったと言っていた弥吉殺しも自分だと言い捕まった。
 又右衛門は弥吉を殺したのは自分だというが、秀次郎を庇うなと言われてしまう。
 十三年前、与四郎の有り金を盗んだ弥吉を重吾が殺し、雨宿りしていた地蔵堂に駆け込んできた小僧が地蔵を拝むのを見て可愛そうになり、二朱を置き、持って行けと囁いた。小僧・与四郎は地蔵が言ったとあり難く頂き、今も地蔵様を大事に拝んでいる。そんな関係だった。

2022年11月7日月曜日

北の御番所反骨目録〈五〉 かどわかし

北の御番所反骨目録〈五〉 かどわかし 芝村凉也

 奉行所内でやさぐれと言われてきた裄沢に対し、周囲の者がご機嫌取りをしにきている。裄沢は降りかかった火の粉を払いのけたのだが、そのために内与力二人が役を解かれ、裄沢に強圧的な態度を取っていた与力も致仕した。商人からの引きあいもあるようになった。
 そんな中、呉服屋鷲巣屋が、二重底の菓子折りを持ってきた。裄沢は返しに行く。鷲巣屋の主人・金右衛門が声を掛けてきた。自分と知己を得たところで無駄金になるだけと去って行く。
 金右衛門は裄沢を味方にしたいと思った。裄沢に御番所の在り方を変えようという誘いまでした。裄沢は己の意のままに動かそうとする奸策ということになると言って帰る。金右衛門は右腕という手代・梅吉に周りを引っかき回し右往左往させ最後に脅してあたふたさせたいと命令した。
 梅吉が考えたのが、裄沢が富岡八幡でたまたま会った隣の娘・茜の勾引かしをやらせることだった。裄沢と話しをし別れた茜を勾引かした。お付きの女中が裄沢に助けを求めた。来てもらおうかというヤクザ者に従って行く。女中は帰した。梅吉は、ヤクザ者に勾引かしを頼みいなくなった。
 裄沢は付いて行きながら、自分が同心であること、娘も役人の娘、あの娘は死ぬことになる。追求は厳しいものになることを説く。娘の所へ連れて行けと厳しくいう。手心を加えてやる娘のところへ連れて行け。茜が大丈夫なことを見、勾引かし犯四人に江戸を出るように言った。彼らの謀ではなく己の素性を隠して唆した者がいた。茜を駕籠に乗せ家に帰る。茜の父親に事が表沙汰に成らないように務めたことを話す。
 裄沢は、犯人の心当たりとして鷲巣屋を挙げた。鷲巣屋から梅吉は消えていた。西田たちは鷲巣屋を探索し揺さぶりを掛けた。金右衛門は首を吊り、番頭三人は殺され他の奉公人は消えていた。裄沢は、鷲巣屋は海賊の出店だと思っていた。

 奉行所の小者のまとめ役・善三が、大松が行き方知れずだと言いに来る。大松は裄沢をけ落とすため邪魔をしていた同心に裄沢の動きを知らせるように言われていた小者だった。同心・佐久間が大松を殺したのではないかと疑われた。裄沢は調べを命じられた。三吉に頼んで調べて貰う。
 何日か前、溜池で溺死人が見つかった。佐久間が、腐乱死体であったため誰かも分からないまま、誤って落ちたと決めつけ葬った。溺死人が大松ではないかと思われ、裄沢は墓から出して調べた。善三が、背中の三つの黒子とはっきりしない着物の柄から大松だと言った。犯人は佐久間だと思われた。
 裄沢は、善三が大松だとはっきり言ったことに疑問を持つ。善三が殺したからこれが大松だとはっきり言えるのではないか。
 犯人は善三だった。犯人が佐久間だと思われるように大松を殺した。が、中々死体が浮かばなかったことで善三のおでんだてが狂ったのだった。
 佐久間は小者を無下に扱った。大松は小者として邪魔だった。裄沢が暴いたことで善三は捕まり、理由は私憤だと言い張った。裄沢には、ちゃんと話して逝った。
 奉行は、佐久間への罰の手配りが遅かったことを反省した。

 小者のまとめ役の補佐に三吉を求められたが、三吉はもう小者には戻れないと決めていた。
 

  

2022年11月5日土曜日

新・酔いどれ小籐次〈二十四〉 八丁越

新・酔いどれ小籐次〈二十四〉 八丁越 佐伯泰英 

 頭成の湊に着いた。森藩の国家老・嶋内と商人・小坂屋の不穏な結びつきを知った。
 また、二年前、参勤交代時に殿が伴った采女の事件を思い出した。采女は小坂屋の娘だった。采女を殺したのは小籐次と思われていることが分かり、小籐次は小坂屋に会い、本当の出来事を話した。長崎屋の宿泊した采女は御納戸役・国兼鶴之丞と姿をくらました。国兼を殺し、剣術家・橘寿太郎に乗り換え神奈川宿にいた。池端と小籐次が神奈川宿に着いた時、采女は橘に殺された。池端が橘と勝負し、池端が勝ったと言う事件があった。

 武道場を持つ商人・塩屋は格式は高いが落ちぶれていた。一年半前に跡取り・喜太郎は、ジ神社の石垣から落ちで亡くなっていた。妹・海は駿太郎に、兄は朝霞八郎兵衛に殺された。仇を討ってと頼まれる。駿太郎は朝霞に呼び出され朝霞を討つ。

 森藩の参勤交代の行列が、森陣屋に着くという八丁超えで、国家老・嶋内が雇った刺客が十二人、待ち受けていることが判った。小籐次は別行動をする。行列は弓で襲われ明りを消し、一晩動かなかった。
 矢や鉄砲を用意し、行列を狙う者に、筆頭物頭最上捨丈は藩主の行列に鉄砲を放つのは家臣のすることかと諌める。国家老の命でという家臣に、藩主・久留島通嘉の家来にすぎぬことを思い出せと家に帰って控えておれと命じる。
 小籐次は刺客の頭を倒す。
 駿太郎は、町の刀鍛冶を訪ねる。
 小籐次は殿の御前にと呼ばれるが放って置かれる。

 江戸では新兵衛さんが亡くなった。通夜は行なわれたが、葬儀は小籐次が帰ってきてからと決まった。

  

2022年11月3日木曜日

恭一郎と七人の叔母 

恭一郎と七人の叔母 小路幸也
 
 恭一郎が、長い年月を共に過ごし更屋家を継いでいくことになる亜季に、叔母たちの話しをしているはなし。 
 亜季は、加世子の友人・寺の娘・妙子と、更屋家の火事騒ぎで、幼稚園児を多数助け大感謝された早田銀一の娘。銀一と女優の妙子が離婚後、銀一に育てられた。妙子と会話の後、アメリカの大学へ進み演劇を専攻した。亜季は時々日本に帰り、恭一郎と話す。

 更屋家は豪農だった。明治になる前に、植木屋、造園業に転身。
 長女・さき子は19才で加山一造と結婚。一造は政治家の息子であり、学士だった。結婚後半年で列車事故で死亡。身重のさき子は、離縁してもらい更屋家に帰る。
 次女・志乃子、恭一郎との年の差19才 橋本司・歯医者。中学一年生の正月、中学の担任・明石先生との不倫を仄めかされる。一回きりで終わったようだ。
 三女・万紗子、四女・美津子、年の差17才 祖父が残した骨董品を元に店を始めた。店を訪れた飲食店経営の双子の吉田満雄と厚雄と結婚した。
 五女・与糸子、年の差15才。あまりかまって貰えない自分のことは自分ですると判断したのは三才の頃だという。大学入学と同時に家を出た。数学教師になった。中学生の頃、だらしない双子の姉に腹を立て、二人を縄で木に縛りつけたことがあった。24才で、体育教師と結婚。二人とも働くので子が出来て落ち着くまでこの家に住みたいと言った。
 六女・加世子、年の差12才。平凡なおっとりした性格。寺の娘・菅田妙子と友だち。妙子の父は住職、母は映画女優・中田理津子。妙子は目立った存在だった。加世子と一緒にいて加世子の真似をしていれば目立たなかった。加世子は、妙子が自分を押し隠すために一緒にいるということに気がついた。加世子は理解し、妙子を抑えるようにした。芸能スカウトから妙子を護るために周りの学生に妙子を護ることを頼んだ。自分たちが守ったと思っているが、加世子のことは意識にない。高校卒業後、電気部品工場に就職。大手電機メーカーの御曹司の研修時に、案内をして貝原健一と結婚することになる。
 七女・喜美子、年の差10才。愛嬌のいい子。スキンシップの大好きな子。高校卒業後、三年間更屋家の植木、造園業の営業をする。新規顧客開拓はどんどん増えた。喜美子は金と広い度量を持つ男を探していた。造園の仕事も増えたし、職人や建築士も探してくる。そして田島邦和を見付けた。喜美子はパトロンになって欲しかったが、田島は十年掛けて、三人の愛人と妻と別れた。喜美子はバーを持ちマダムとして君臨した。
 八女・末恵子、年の差7才 絵の才能があった。中学で勉強せず絵だけを描くようになったため、美術部の助川先生に勉強が出来なければ美大に行けないことを解いてもらった。先生のモデルになった。ヌードモデルだったため先生と更屋家の秘密にされ、先生は一対一で会わない約束をさせられた。美大二年の秋、突如、末恵子は変わった。長い髪は括っただけ、白いブラウスに紺のプリーツスカート真っ直ぐ家に帰るという生活が、派手な化粧でモデルのような出で立ち酒場にも顔を出す。父親・原史は助川に会いに行く。助川は、高校生の時に男としても画家としても見限られたと言った。原史には何故末恵子が変わったか判らなかった。恭一郎は志乃子の事件の後、大人の世界を垣間見、色気を発し始めた。末恵子は恭一郎のヌードを描いた。末恵子は爆発させ変身した。美大卒業後、パリに行き海外で生活した。自分が死んだら恭一郎にすべて残すと言っている。


2022年11月1日火曜日

空也十番勝負七 風に訊け

 空也十番勝負七 風に訊け 佐伯泰英

 空也は、福江島から船に乗り込み長州藩の城下町に降り立った。町の道場を訪れると、図らずも藩主派と家老派による毛利家のお家騒動に巻き込まれる。
 家老派との因縁があることに気付き、藩主派に力をかすことにした。
 長州藩は長崎会所の交易船を襲い積み荷を奪っていた。三度目の襲撃で空也が乗り込み萩藩の家臣・菊池成宗の提案でイスパニアの剣術家と勝負した。菊池も死んだ。二度長崎会所の交易船を襲い、積まれていた品々を強奪、京にて販売、莫大な利益をあげていた。長崎会所は三度目に長崎奉行所も乗り込み取り締まった。毛利藩は被害の償いを請求されている。海賊行為を公儀も承知。

 空也は若い、下士が集まった「長門組」と一緒に家老一派が隠れ家にしている寺に住む浪人たちを蹴散らした。
 国家老は切腹した。
 小姓・峰村正巳が総大将の長門組に三百石が与えられ藩主直属の直目付となった。
 浜中屋の財産は藩が没収した。家老の屋敷から何万両も見付けた。長崎会所に支払う金が出来た。

 空也の便りを速水は上様に直接見せる。
 

2022年10月30日日曜日

名残の花

名残の花 澤田瞳子 

 読んでいて判った。一度読んだことがある。

 名残の花 鳥居胖庵77才 耀蔵 二十八年ぶりに江戸に帰り寛永寺に花見に行く。
金春座の地謡方・中村平蔵の門弟・滝井豊太郎と出会う。太鼓方の川井彦兵衛の息子・五十雄を探す途中、女スリに遭う。胖庵も印籠をすられる。
 平蔵と豊太郎がスリ・よしを捕まえた。金春屋敷の長屋に妖怪の印籠を埋めたというので鳥居に来てもらう。
 鳥居のために住むところを失い、五才で母親を亡くしたよしは、鳥居を恨み、母親さえ生きていればこんな風にならなかったというよしに、人を恨み、世を拗ねていては周りが手を差し伸べても真っ当な道に戻れるはずがないと鳥居は言った。

 鳥は古巣に 観世座が青山家から能舞台を移設し、桟敷代を鳥勧進能を行なった。豊太郎は見に行き、犬の死体を放り込んだと捕まった。たまたま来ていた鳥居が、豊太郎を連れ帰る。小鼓の兄弟の話しを聞き、犬の死体はなかったことを暴く。
 鳥居は小鼓の家から逃れたい弟の狂言だと言ったが、小鼓の兄は、小鼓を失敗した兄への叱責を紛らすための狂言だったと弟を庇う。
 兄はあんな下手な箙を最後に舞台を下りることは嫌だ。能にしがみつくと決めた。濡れ衣を着せた者の師に会い、梅若六郎にすべてを話すと言う。

 しゃが父に似ず 浅草の小屋掛けの前で、元下役・山本庄右衛門と会った。庄右衛門は言わなかったが、鳥居は、庄右衛門の息子が、今日初日の「御巫卯月地獄巡」の作家の河竹山杉だと思った。平蔵に話しを聞く。元は歌占だと。
 鳥居は豊太郎と一緒に山杉に会い、政府が、狂言綺語を書くなというなら、実の話、自分の話を書けばいい。しかし、父親は息子のことを案じている。山本を苦しめるようなことを描くなと念押しした。

 清経の妻 豊太郎の兄が、叔母の引っ越しを手伝い、千鳥の香炉を貰ったと持ってきた。いくらぐらいで売れるか聞いてくれという。豊太郎は、鳥居の所へ行く。その前に叔母に会った。兄が貰った同じような箱を井戸に落とし入れた。
 千鳥の香炉と思った物は、鴛鴦の香炉だった。叔母が井戸に投げ入れたのは対の香炉だった。先に亡くなった夫を憎んで井戸へ放り込んだのか。それともどちらも安物に替えていたことを意識しないためなのか。

 うつろ病 大蔵省に勤める鳥居の孫が、省庁で十才以下の者を働かせられなくなったと連れ帰った。多崎弥十郎。鳥居が平蔵の所に連れてゆく。多崎の父親は帰った後だった。借金の申し込みを出来なかったようだ。娘を売るかもしれないと言う言葉に鳥居は山水画を渡す。数日後、山水画の三〇円は間に合わず売られた娘は、七十円だとふっかけられ、田崎家は自害したと三〇円を返しに来る。
 鳥居は孫の上司、鳥居に会いたいと行ってきた昔の配下の家に行き、娘の身請けを願う。三〇円と足らずを出して欲しいと。目付であったころどんな働きをしたかを昔の上役として伝える。娘は中村に行くようにしてくれと。
 帰り道、鳥居は豊太郎に「鵺」を謡わす。

 当世実盛 豊太郎は、志ある者を支援するという商家の主に会いに行った。前に支援してもらっていた医者の見習いに出会った。商家の主は、古い物は捨て新しい物西洋の物に乗り換えさせる。亮輔の話しを聞いた豊太郎は、辞めさせられた浅田宗伯に一緒に申し開きをしようとする。鳥居に出会い、鳥居の執り成しで亮輔は戻ることが出来た。
 豊太郎は鳥居に、自分は何ができるのだろうと問う。そのままで良い己の道を見つめ精進すればいい。新しき世を器用に渡れぬ者の定めだと言う。
 梅若六郎が六郎の名を譲り隠居した。実と名乗り平蔵の所で、面倒な出稽古などせず、自分の舞いたい能のために当主の座を下りたと言う。二人の酒盛りに鳥居も付き合う。
 


2022年10月28日金曜日

東京バンドワゴン零 隠れの子

東京バンドワゴン零 隠れの子 小路幸也 

 いろんな特殊な能力を持った者たちが協力して生活していた。纏めているのは植木屋。広い場所といろんな職業が必要とされ、みんな長屋で暮らしている。普通に暮らしているようだが、彼らを〈隠れ〉と表現する。
 そんな場所に暮らせなかった者が、特殊能力を利用されたり、利用したり、悪とされる道を行く。盗みを働いた賊を殺し、金を取り戻す闇の存在。闇に殺害を依頼する講が存在した。
 「ざりば講」存在を知り追っていた同心がころされる。心臓な病としか思えない死体。
 同心の息子・堀田州次郎。〈ひなたの隠れ〉と言われる同心が、闇の隠れを追い込む。彼女は、息子を託して自死した。
 
 

2022年10月26日水曜日

鬼役伝〈三〉 入婿

鬼役伝〈三〉 入婿 坂岡真

江戸城門番 から御膳奉行支配同心になった伊吹求馬は、毎日毒味の修行に明け暮れる。かっての上役の窮地が伝えられた。

 鳩の巣を取る時に気が付いた、門普請の絡繰り、屋根の支えの木が細い。気付かれたことを知った作事奉行は門番が鳩の巣を取った後に鳩の死骸を置いた。
 作事奉行は伊丹屋と組み、悪い材料、細い材料を使い安くあげていた。門は修復され証拠が無くなった。作事奉行も殺される。
 伊丹屋の後に、甲府藩次席家老宇治原がいた。五年前、伊丹家当主勝守が宇治原に殺されていたことが分かる。勝守を気に入っていた紀文にも頼まれ、宇治原と比良一族の一人を捕まえ悪事を書き晒す。

龍の涙
 大店の子供を誘拐し、居場所を見付けるために大金を出させる。
南雲が様子を見ていた千振を採集する凛、求馬も会えるよにしていた。凛は捨て子だった。
凛が誘拐された。その場に大切にしていた水晶の玉を落としていた。
回向院で開帳している僧が占う。凛の面倒をみている隠居は五百両を渡したが足りないと言われ、求馬に相談してくる。
 志乃の助けで、凛は助けられる。求馬が古井戸に閉じ込められる。自力で抜け出した求馬は、夜鷹に助けられ、毒味試験に間に合った。
 夜鷹に礼を言いに行くが、殺されていた。
 開帳されている秘仏は盗まれた物だった。
 凛は志乃の姉の娘だと分かったが、志乃は伏せた。凛は水晶を見ると未来が見える。
 
 

南雲

風見新十郎

比良一族

比良の男

甘露小路増長

公人朝夕人

志乃と杯を交わし明日から出仕

2022年10月24日月曜日

猫弁 

 猫弁 大山淳子
 天才百瀬とやっかいな依頼人たち

 百瀬太郎39才 父親は知らず、七才までアメリカで育つ。七才の時、母が太郎を日本の施設に預け行方不明。 東大卒、弁護士 築四十年の木造モルタルアパートの六畳一間に住む。百瀬法律事務所には十一匹の猫が住む。十年大手弁護士事務所ウエルカム所属 世田谷猫屋敷事件を解決し独立して五年。ペット関連の以来が多い。結婚相談所に入会して婚活中、三〇回のお見合いを断られている。
 野呂法男60才 秘書
 七重 事務員 三人の息子がいたが、交通事故で三男を亡くす。

 霊柩車が盗まれた取り返して欲しいという以来がくる。シンデレラシューズ会長の葬儀。喪主・社長・大河内進より依頼される。初期の身代金、千五百四十万。五日後、霊柩車と棺が社の駐車場に置いてあった。電話で一億円で遺体をお返しすると連絡があった。元々遺体はなかった。会長と社長の意見が合わず、会長が出て行った状態だった。
 霊柩車を盗んだ二人は、遺体が無いのを盗まれたと思っていた所に、会長と出くわしていた。会長は知らぬ振りで二人にいろいろアドバイスする。お金を持って来る場所を、会社の社長室から見えるホテルの一室にする。
 代理でホテルの部屋に行った百瀬はカーテンを開き、社長から偽遺体・会長を見えるようにする。飛んできた社長と会長の蟠りを百瀬は和らげる。

 会長は、拘りの手作りシューズ職人・桜井と、霊柩車泥棒の二人を職人見習いにして秋田で起業する。
 霊柩車を盗まれ会社をクビになった運転手を、社長の車の運転士にした。

 結婚相談所の百瀬担当の大福亜子は、猫屋敷事件の関係者だった。訴えられているお婆さんに同情してどうにかならないかとまこと先生に相談にきた中学生だった。百瀬は知らなかった。
 百瀬は相談所を退会した。亜子は三〇回、百瀬が断られるような人ばかりを選んで紹介していたと告白した。私と結婚してくださいと申し入れした。

 

 
       

2022年10月22日土曜日

まやかしうらない処

まやかしうらない処 山本巧次 
 信じる者は救われる
 
本郷菊坂の瑠璃堂。主人千鶴の占いは当たると評判。観察力と推理力、口八丁で丸め込む。
札差・佐倉屋喜兵衛、千両箱が偽物千両にすり替えられていた。番頭が殺され、喜兵衛も,
殺される。
 正右衛門が、空家を貸したが、店賃は入っているが一月経っても誰も入っていないと相談にきていた。
 千鶴と権次郎と梅治は、佐倉屋の取り換えられた千両箱が、正右衛門が貸した店に運び込まれたと考え調べに行く。
 千鶴たちは命を狙われる。逃げた刺客が殺された。盗賊だった。
 喜兵衛殺しの疑いが掛かったのは、梅治の幼馴染だった。梅治の内緒の恋人だ。捕まったのは後添えの女将と二番番頭・克之助だった。一番番頭・昌之助を殺した時、見ていた者が、黙っててやる言うことをきけと言って姿を消した。後の日、喜兵衛を殺せと言ってきた。階段から突き落とせと言ったと言う。
 十両の偽金が見つかったと言ってきた近江屋に行くと主は違った人物だった。瑠璃堂に近江屋を名乗って来た男を探す。突き止め話しを聞く。役人がやって来た瞬間に逃げられる。やっていたことと偽金の成功さ、数右衛門と名乗った男の後にもっと大きな人物がいると考えた。
 梅治の幼なじみ・磯貝は武士を辞め、貸本屋になった。正右衛門のけちが付いた空家を安く貸してもらえ、息子たちを連れて移り住んだ。

2022年10月20日木曜日

烈廻り与力・青柳剣一郎58 59

風烈廻り与力・青柳剣一郎58 59 約束の月 上下 小杉健治

 陸奥国白根藩水沼家は世継ぎ騒動で揺れていた。嫡男が病死、藩主も病に倒れ、将軍家との養子縁組が浮上する。藩主の落とし胤の存在が発覚する。

 青柳剣一郎は小間物屋の手代・清太郎をならず者から救う。店主の娘・絹に近づくなと脅される。二人は好きあっていた。絹にはいくつもの縁談話があった。清太郎は再び何者かに襲われる。

 水沼家の世継ぎと知らされた清太郎は絹に桔梗が咲く頃迎えにくると告げ、陸奥国に発った。刺客の刃が迫る。さらに偽のご落胤だと評定所に訴えられる。
 老中・飯岡飛騨守が、将軍の八男・家正を水沼家に押し付けようとしていた。江戸家老は飛騨守の話しを受けようとしていた。

 浪人が斬り殺され大川に浮く。五人の遺体があった。剣一郎は、隠密同心・作田新兵衛に捜査を頼む。浪人になり調べた新兵衛は怪我を負いながら真相を摑んだ。飛騨守の下屋敷で、家正の命令で黒川と真剣での果たしあいが行われていた。家正の書名入りの証拠もあり、剣一郎は飛騨守に、真っ当な評定をするよう談判する。

 清太郎はご落胤と認められ白根藩に行くが、藩主になることを断り、後見となった藩主の従兄弟を新しい藩主とする。清太郎は江戸へ帰り、絹に会う。絹は待っていてくれた。

2022年10月16日日曜日

仕立屋探偵 桐ヶ谷京介②

仕立屋探偵 桐ヶ谷京介② クローゼットファイル  川瀬七緒

 ゆりかごの行方 南雲隆史警部は十二年前、駕籠に入った赤ん坊を見付けた。その子は中学生になって母親を探して欲しいと頼まれた。桐ケ谷は、赤ちゃんが着ていた、大人者のTシャツをベビー服にしているTシャツの縫製から、高級ミシン、針の太さ、糸の種類など判ったことから住所と職業を割り出す。南雲は母親を見付け出した。少年が母親への復讐心を持っていることを知っている南雲は、今は教えられない。必ず教えるよと伝える。桐ケ谷は少年が虐待されていると言う。二年経っても治らない突き指。寝る前に深呼吸を五回する。

 緑色の誘惑 桐ケ谷と水森小春は「未解決事件専従捜査対策室」の捜査協力をしている。
 十五年前の一軒家で一人暮らしの女性65才の首を絞められたことによる窒息死事件。活発で社交的な人だった。みんなが見て女性だと言った、猛スピードで走る自転車の雨合羽の人物の写真を見て、桐ケ谷は男性だと言った。被害者は癒しのため全身を緑に固める方向に突き進んだ。桐ヶ谷は友禅作家の着物を鴬色に染め直していたこと、少量の灰が落ちていたことと合わせて悉皆屋が事件に関わっていると睨む。
 染洗い張り店の主人が捕まった。思わせぶりな態度で着物を修復させ貢がせた。結婚を申し込むと冗談じゃないと嘲笑され首を絞めた。
 
ルーティンの痕跡 水森小春はベランダに干している下着を盗まれた。おまけに使い古した男物もパンツが干してあった。地元の警察に言ったが、一度見に来たが、捜査されている気配がない。南雲に言う。桐ヶ谷と小春は、面倒そうな盗犯係から情報を聞く。
 男性下着六十枚。被害者宅に残された物を前に桐ヶ谷は判る事柄をあげて行く。中に米軍で配られる物がある。途中からパンツの皺が変わる。生活スタイル、仕事が変わった。謝罪代行という仕事か?
 五年下着ドロをしていた男が捕まった。米軍基地のバイトをしていた。謝罪代行会社に登録、謝罪神と呼ばれるほどだった。
  
 攻撃のSOS 桐ヶ谷は新宿で高校生の日常的な暴力の被害者を見付けた。このまま知らん顔ができない。彼女がどこの誰かを知るためにつけた。彼女に付き纏う男がいると警察に連絡され捕まる。南雲に連絡し、どうにか放して貰う。小春に頼み彼女の家を突き止めようとすると、友だちとこっそり会った後、駅のホームから男性を突き落とそうとした。小春は彼女を止め、桐ヶ谷を呼ぶ。彼女たちは交換殺人を計画していた。桐ヶ谷は、彼女の痛みが判る。着ている物、身体付きで被害が判ると説明する。桐ヶ谷は病院で診断書を取り、警察へ行き、親にされたことを告発することを進める。そんなことをしても無駄だと言う彼女に、覚悟があればそうはならない。本気で親と決別する覚悟。
 桐ヶ谷は、彼女の父・大学教授の所へ、診断書と音声ファイルを聞かせ、娘さんと警察へ行くことを断りに行った。彼女の友だち二人にも協力する。

 キラー・ファブリック 十六年前に起きたアレルギーのアナフィラキシーショックによる窒息死。事件か事故かもはっきりしていない。死亡当時三十七歳。彼女は蕎麦アレルギーで徹底的に蕎麦を排除していた。そんな妻が蕎麦を口にするようなことは考えられないと言う夫。1950年代のトウモロコシが一粒落ちていた。
 桐ヶ谷は、遺留品の巾着袋を見て、薬の入った袋を引っ張りあい、誰かが被害者から取り届かない方向に投げたようだと見る。第三者がいた。
 被害者はテディベアの手作り作品を作っていた。夫に合い、ハンドメイドフェスの仲間に合う。四人目の人がスカーフを取った。フィードサックのブラウスの衿が現れた。彼女だ。テディベアをフィードサックで作ってほしいと注文を受けて持って行った。蕎麦を保管していたフィードサックだった。苦しがる彼女から薬をもぎ取りコーヒーカップを洗い証拠隠滅を図った。

 美しさの定義 十年前、アパートで一人暮らしの女性22才が、死亡後一週間後に発見された。死因はハサミによる出血性ショック。服飾専門学校の二年生。犯人は被害者を殺してからシャワーを浴び夜遅くなってから出て行ったと思われる。
 被害者の実家に行き、使っていた道具、作りかけの服を見、ミシンの埃を採取。彼女には印つけの切り込み、合い印のつけ方、はさみの切りかたにも癖があった。
 ミシンの埃を採取し、彼女が最後に縫っていたのは大島紬だったことが判った。しかし、その作品は残っていなかった。十年前、ミス・ユニバースの日本代表のドレスが大島紬だった。全く接点がないと思われたが、犯人だった。夫は現職の国会議員、本人も舞台衣装の監修やデザインをしていた。
 ドレス制作に自分の名前を出すように迫った。そして刺された。

 警察が桐ヶ谷と水森を表彰すると決まりそうだ。


2022年10月14日金曜日

すべての神様の十月

 すべての神様の十月 小路幸也

2022年10月12日水曜日

きたきた捕物帖〈二〉 子宝船

 きたきた捕物帖〈二〉 子宝船 宮部みゆき

 子宝船 文庫を作る作業場ができた。図柄は欅屋敷・小普請組支配組頭・椿山勝本様の別邸のご子息に描いて貰っている。ご子息と言うが、出会ったのは、北一と同じくらいの女だった。名前は栄花。

 おでこの中身 おでこ・三太郎が出てくる。二十五年くらい経っているらしい。すぐ長さを測っていた少年・ぼんくらの同心の息子は長崎に行き、学者になってる。
 茂七親分の名前が出る。
 おべんとう桃井の家族三人が毒殺される。北一は、通夜の時、銀杏の木に隠れて見ていた女を見た。うなじの下に銀杏の葉の入れ墨があった。

 人魚の毒 検視の与力・栗山周五郎に教わり、犯人が捕まった事件を、追う。銀杏の入れ墨の女は九崎村で二十一年前「染めちょう」の一家五人と機長を毒殺していた。九崎村へ連れて行く途中船から北一を道ずれに海へ飛び込んだ。北一は喜多次に助けられた。



2022年10月10日月曜日

隠密鑑定秘録〈一〉 退き口

隠密鑑定秘録〈一〉 退き口 上田秀人 

 家斉は御用の間の書棚で「土芥冦讎記」を見付ける。諸大名二百数十名の辛辣な評価が記された人事考課表だった。綱吉公はこれをもとに腹心を抜擢したと推測した家斉は、盤石な政治体制をきずくため綱吉に倣うことにした。調査役に白羽の矢を立てられた小人目付・射貫大伍。

 最初の喚問、御用の間に行くこと。山里曲輪口の地下道を通って御用の間に行く。

2022年10月8日土曜日

東京バンドワゴン ⑰ 

東京バンドワゴン ⑰ ハロー・グッドバイ 小路幸也



 春 ここ掘れワンワン迷子かな 裏の田町家は取壊され、増谷家と会沢家の家が建つ工事が始まった。道路が狭く、余分な予算も無しで、概ね自分たちで解体し家も建てる予定。藤島ハウスの藤島の部屋を増谷家が借り、裕太と真央夫婦と母・三保子が住んでいる。藤島は美登里の部屋に泊まる。
 かんなと鈴花は小学二年生。芽莉依は東大生。花陽は医学部三年生。
 研人と我南人はイギリスから帰国。マードックが事件に巻き込まれ解決後、レコーディング、ネイキッドにした。キースとイギリス各地でチャリティライブをし、帰国した。
 夏樹が会社の後輩を連れてくる。久田かおり。彼女は空間認識力・3Dを感覚的に把握できる。堀田家の地下道に気がついた。夜、かおりが行方不明になった。田町家の解体現場の床下の入り口から落ち、堀田家に続くトンネルを彷徨っていることを犬のサチが気付いた。堀田家の店から蔵、蔵から田町家まで地下道があったことがわかった。地下道は塞ぐことにした。
 かおるには近所で働く双子の弟・種村かいとが居り、小学一年生の時、秋実に会っていたことが判った。

 夏 一夜一夜にもの語る 七月 夏の間、カフェを十一時まで開けることにした。その後のことは様子を見て。和ちゃんにはちょうどいいバイトになった。
 四十年前にLPを出したローズ&ボーズのボーズ・蠣崎正太が、昔我南人に借りていたマーチンD-35を返しに来た。売ってしまったギターが、自分の務めているリサイクルショップに持ち込まれた。我南人が付けた傷も自分が付けた傷もあるという。買って返しに持って来た。我南人はローズ&ボーズの「夜明け」を歌ってもらった。ギターは受け取らなかった。
研人が、曲を貰った。借りたハードケースを返しに来た時、ライブの話をしていた。
 夜の営業が始まってから、椅子に文庫本が置き忘れになっていることがあった。文庫本は東京バンドワゴンの値札が付いた物、間に千円札が挟んである。五冊になった。祐円と康円から本の話しを聞いた。通勤途中の古本屋のワゴンから本を万引きしてしまった男が、返すチャンスが出来たと詫びのつもりで本を置いているという話しだった。男の娘が結婚する。その後で顔を出せということになった。

 秋 どこかで誰かが君の名を 十月カフェの営業は、このまま通年十一時までになりそう。
 鈴花とかんなは、箸置きをいろいろ考えるようになった。
 花陽は時間が合えば、時々麟太郎とデート。
 カフェの和を見て、慌てて帰った美しい顔の男子学生。古本屋にもカフェにも時々きている児童文学がすきな教育学部の学生さん。ファイルを忘れていた。和は、その童話・「猫のちゃんと犬のクン」が、祖母が話してくれたくれた童話だと気付く。
 忘れも物を取りに来た学生に、みんなは話しを聞く。なんとなんと彼・坂上元春は、和の高校の二年後輩だった。童話の話を聞いていると彼の祖母の話になり、なんとなんと、彼は北稔ときりちゃんの孫だった。次の日、きりちゃんは堀田家にやってくる。そして童話の話をし、テープを聞き始めると、なんとなんと童話を語っているのは秋実だった。キリの娘・舞の誕生日に、秋実が創作童話を朗読してプレゼントしたものだった。キリと和の祖母・茂美とは仲良しだった。茂美が書き取って持って帰っていたことが判明した。
 テープはデジタル化し保管することにした。

 冬 ハロー・グッドバイ 十二月、昭爾屋の餅つきにみんな集まった。研人と芽莉依、花陽と麟太郎、鈴花とかんなもお父さんと一緒に杵を振り下ろす。
 二十九日 マードックの母親・メアリーさんが亡くなった。サチはオックスフォードのカウリーに行く。ロンドン警視庁〈美術骨董盗難特別班〉の事務官・ジュン・ヤマノウエに会う。彼女はサチが見え、話しも出来る。春にマードックが事件に巻き込まれた時にサチと話していた。ジュンは藍子と仲良しになっていた。一緒に中に入る。
 みんなが帰った後、マードックの父親・ウェスは、これからのことを話す。ウェスは知りあいがやっている保養施設のガーデナーとして働く。動けなくなったら施設も病院もある。最後まで面倒みてくれるという話しになっている。お前たちは日本に帰りなさい。最後まで家族といられてメアリーは感謝していたと話した。
 一月一日 かずみが来た。夕方、藍子から春に日本に帰ると連絡が入った。
二日、百合枝と一緒にかずみは帰った。夜、百合枝が堀田家に来る。百合枝は四月にかずみの入っている施設に自分も入ると言う。かずみと一番仲良しでしょう。生き方とか考え方が似ている。かずみは目が見えなくなってきている。朝も道が分からなくなって迎えに行った。勘一の妹のようなかずみと一緒に人生を生きていこうと思う。盆暮れ正月にこの家に帰ってくるのを楽しみにできる。泊まらせて下さい。
 百合枝の決めたことに、勘一も我南人も何も言えない。
 マードックと藍子が帰ってきたら、研人たちは部屋を明け渡す。管理人室をスタジオに変える話しが出た。

  

  

2022年10月6日木曜日

拵屋銀次郎半畳記 汝戟とばせ(一)

拵屋銀次郎半畳記 汝戟とばせ(一) 門田泰明 

 品川に、馬からずり落ちそうになり銀次郎は着いた。猛毒の矢を受け生死の境をさ迷った。
黒鍬の女帝と称された女頭領・加河黒兵の看護を受け目覚めた。

 銀次郎は幼君に会いに城に行き、襲われる。怪我を負う。


2022年10月4日火曜日

巡査長・倉田沙月 殺愛

 巡査長・倉田沙月 殺愛 六道慧

 五年前 DVを行なっている家に行き、夫を縛り、妻に殺せと命じる。夫を殺せば助けるといいながら子供も妻も殺す。そんな事件が三件起きた。殺愛事件の犯人に倉田沙月巡査長は拉致され、殺愛を強要される。インターネットで配信され、警視庁凶悪犯対策課に殺愛事件から手を引くようにと交換条件を出す。倉田の上司・黒崎吾郎警視正は条件通り、合同捜査本部は解散、黒崎は課長を辞任し、所轄の証拠品保管庫へ異動した。倉田は少年課地域相談係に異動した。

 仲間同士、一対一の喧嘩の結果、二人が死んだと見える中学生の遺体が見つかった。少年課倉田が呼ばれる。二人のことは知っていた。殺愛事件と同じ印が付けられ、殺愛事件に似せているが沙月は違和感を持った。
 二人の仲間の少年が喋るなという警告、喋ったろうという報復のような怪我をさせられた。
 捜査一課の仕事だと言われながら沙月は捜査する。
 少年たちが出入りしていた都営住宅の住人・加藤トヨ子が亡くなった。
 沙月は、犯人は殺愛事件の犯人を挑発しているのではないかと思った。
 殺愛犯に心酔し、天誅と称してDVを行なう者に暴行を働くグループが現れた。その中の一人、竹内智士が取り調べを受ける。沙月の元夫の塾の生徒だった。智士は、夫の上から目線を罵る。竹内は倉田沙月に会った者は、伝言するようにパーマネントに命じられた。「不幸の手紙ならぬ、不幸の殺人である。誰かを襲撃しなければ家族の誰かが犠牲になる。」

 沙月は捜査の結果、加藤トヨ子が、少年の一人を殺した。加藤の夫は孫に殺されていた。少年に金の無心をされ蘇った。向かいの部屋の日野が、遺体を運び部屋の処置をした。もう一人の少年が強請った。日野が殺し、殺愛事件のようにした。日野は五年前に事件の犠牲者の父親だった。挑発したのだ。日野は沙月の周りにいれば犯人が出てくると思ったと。少年たちの後に誰かいると思った。

 少年に聴き取りをしていた。沙月が入った途端、彼はプラスチックナイフで暴れ回り、沙月を賞金首といって追いかける。上司の石丸が立ちふさがり刺されて死ぬ。二百万貰える約束だったようだ。

 黒崎警視が捜査の指揮に付いた。沙月は五年前、だれが自分を拉致したか判った。その頃の夫・服部だった。拉致した者の香り、夫の今の妻・沙月の友人の香りだった。アリバイは時計を進めたことで誤魔化せた。五十万貰っていた。
 沙月の娘が拉致された。沙月は黒崎に、犯人の潜伏先に心当たりはないかと聞いた。黒崎は、閉められた祖父の病院へ向かった。沙月が娘を助けた時、犯人はいなかった。
 沙月は古い警察官の服を着た女性を探すよう言う。女性警察官は黒崎を刺し捕まる。

 黒崎は女癖が悪かった。昔手をつけた女性警官を捨てた。黒田は沙月を愛したが手をつけなかった。女は黒田の子を二人産み、黒田を憎み、沙月を妬んだ。竹内智士の母、五年前、始めたのが母、その後、娘が手伝った。少年たちの裏でやらせていたのは娘だった。
 黒田は警察を辞めた。

 

 

2022年10月2日日曜日

隠密船頭〈九〉 神隠し

 隠密船頭〈九〉 神隠し 稲葉稔

 日本橋海苔問屋・磯松屋で、手代の徳助が殺された。伝次郎が雑用係の吉蔵が捕まえた。
 磯松屋の主夫婦が千草に来て、伝次郎に、十三才の息子・清吉を探してほしいと頼みにきた。殺人があった店でまた事件となると店に影響がでる。できるだけ内密に探して欲しいということだった。
 磯松屋の主人は海苔問屋の老舗大店・浜磯谷で奉公し三十三才で暖簾分けで小さな店を出した。浜磯屋が火事に遭い、身代が減少、主が急死し、後を継いだ長男は遊び癖が抜けず店は危機に陥り、次男が継ぎ立て直しを図っている。磯松屋は繁昌している。
 内儀・くらの妹・ようの詐欺師のような夫・栄助を調べていると、栄助が殺された。伝次郎は栄助殺しを調べなくてはならなくなった。脚気を治す薬の開発をしていたという。栄助の付き合いのあった者を調べるともう一人医者が殺されていた。
 医者と栄助と万作の三人で脚気に効く薬を作っていた。医者と栄作は、万作を除け二人で別の所で作り始めた。万作は別の医者を探して作り始めた。辞めたと思っていた二人が、別の所で続けているのを知った万作は二人を殺していた。
 清吉の行方は摑めない。浜磯屋のやっかみが浮上する。浜礒屋の与兵衛を調べると、ようと密会したいた。清吉はように懐いていた。ようの呼び出しならば出て行く。ようを追求する。
 ようは清吉を呼び出していた。与兵衛に話しを聞く。与兵衛は清吉をしばらく預かり返すつもりだった。沢野新右衛門と関村染三郎に五日ほど面倒みて欲しいと頼んだ。二人が清吉を別のところに連れて行き、与兵衛を脅していた。旗本の家臣だったが、浪人になった二人だった。二十両で頼んだが、五十両請求されていた。
 取引場所で、二人を捕まえた。清吉を取り返し、五十両も取り返した伝次郎は、故郷に帰るという二人を逃がしてやる。与兵衛と清吉を連れ磯松屋へ行く。与兵衛は全てを話し謝る。
 何故、二人を逃がしたという磯松屋に、二人を突き出すと、与兵衛もようも罪に問われる。与兵衛は悔い改めようとしている。咎めを受ける覚悟も観念もしている。磯松屋の本家だろう。恩義もあるだろう。許してやったらどうだろう。磯松屋も清吉が帰ってきただけでありがたい。許すことにした。
 伝次郎はお礼の百両は受け取らない。

2022年9月30日金曜日

浮世小路の姉妹

 浮世小路の姉妹 佐伯泰英

 町火消い組の鳶見習の昇吉17才は、老舗料理茶屋加賀屋うきよしょうじの火事の最中、うきよしょうじの姉妹、従業員を助け出すが、主人と女将を助けられなかった。
 半年が経ち、茶屋の新築の材木も用意されているのに新しい茶屋が建たない。付け火の犯人も捕まらない。
 昇吉は、今川橋から日本橋までどんな店があるか調べて行く途中、うきよしょうじの姉妹・佳世19才と澄14才と知りあいになる。
 佳世と若頭・吉五郎には縁談があった。若頭の求めで、昇吉はい組を離れて放火犯を追うことになる。幼友達と古船を直し屋根をつけた船で中洲に作った葦の中の小屋を塒に調べる。
 二人姉妹は今も何者かに狙われていた。昇吉は、夜はうきよしょうじの姉妹と従業員が暮らす屋根船と料理茶屋の跡地を「あかべい」という犬と見張る。
 怪しいのは、金遣いの荒い小間物屋の若旦那を佳世の婿にすれば、料理屋の再建に力を貸すと言ってきた船が沈み大損した札差の内儀。
 一ノ木の若旦那薗太郎を名乗り、職人と一緒に座敷に上がった四人。調べると薗太郎は似ても似つかぬ人だった。
 昇吉は、主人夫婦を殺すつもりの火付けだと考えた。
 加賀屋の別邸に行き、加賀屋の秘密を知る。澄は父親から後継ぎだと言われ秘密を教えられていた。二百年の間、加賀屋は加賀藩の影御用を務めていた。知りえた幕府の情報を加賀屋に知らせる。
 黒装束で料理屋の跡地に立っている男を見た。料理屋の跡地の見渡せる名主の味噌ぐらに誰かが入った形跡がある。置かれた煙草入れを持ち帰り、見張る。男を誘い出したと思った昇吉だが、二人は襲撃された。服部十之助は、藩主・斉広の御近習だった。服部は、藩の親公儀派は加賀屋の陰御用をよく思わない。襲撃も火付けも親公儀派が雇った者による者だと言う。
 襲撃したものは捕まり、火付けを認めたため町奉行所に引き渡され遠島になる。加賀藩でも親公儀派の重臣が切腹した。
 澄は、代々の主人が書き残した書状を全て加賀藩に渡し、陰御用を父の代で終わりにしたいと伝えた。斉広は願いを聞き入れた。
 見張りも今日でお終いという日、跡地に影が立った。屋根船に火を付けようとする。昇吉は阻止する。加賀の親公儀派に雇われた髭の磯松という盗賊だった。捕まった。
 澄は、跡地の地下蔵の話しを昇吉にする。
 昇吉は将来、婿になることを考えて、加賀屋の奉公人になった。

 
 
 

2022年9月28日水曜日

風の市兵衛〈弐 〉 ㉛ 春風譜 

風の市兵衛〈弐 〉 ㉛ 春風譜  辻堂魁

 小春の兄の又蔵が、妹と渋井の息子・良一郎との縁談を知り家出をした。
市兵衛は、我孫子宿の親戚の南吉の所にいるはずの又蔵に会い、三十両を渡すことを父親・扇職人・佐十郎に頼まれた。
 青山村の南吉の家は空きやになっていた。市兵衛は南吉を探す。南吉は父親が亡くなり、稲が病気になり、虫にやられたり、借金した。寒い夏が二年続き借金が増え田畑を手放した。牛次郎の賭場に入り浸りになった。南吉を牛次郎の子分が探し回っていた。
 南吉の子供を身ごもっているらしいおことに会う。
 南吉の幼い頃の唯一の友だち・竹弥・法名・朱恵を尋ねる。朱恵は南吉から五十両を預かっていた。おことと母親を残して昔青山村から姿を消したおことの父親・勘助が旅姿で南吉を呼び出し、おことのために村に帰って田畑を買い戻せと渡された金だった。
 根戸村の尾張屋源五郎親分が殺されていた。殺したのは、牛次郎に五十両で頼まれた勘助だった。勘助は牛次郎に五十両を取り返すために殺していた。その時五十両は無かった。勘助がおことの父親だと知って、牛次郎は南吉を探していた。
 南吉と又蔵の隠れ場所を見付けた牛次郎は、市兵衛も一緒に殺すつもりで、南吉の所へ案内する。
 市兵衛は牛次郎の子分たちも捕まえる。牛次郎の義父殺しや、妻殺し、源五郎殺し、勘助殺し、陣屋の元締め・小曽木との癒着まで洗いざらい調が進んだ。
 南吉は五十両を尾張屋にお供えした。又蔵は市兵衛の持ってきた三十両を南吉に渡した。南吉は名主の借金を返し田畑を返して貰った。おことを迎えに行く。
 江戸へ帰る許可が出た。又蔵は市兵衛と一緒に江戸へ帰る。渋井が佐十郎の店に立ち寄った。市兵衛から飛脚の便りがあったことを聞く。市兵衛が心配ないとあったのなら大丈夫だと安心する。

2022年9月26日月曜日

私立探偵・小仏太郎 京都・化野殺人経路

私立探偵・小仏太郎 京都・化野殺人経路 梓林太郎

 六月 友人の結婚式のため名古屋に向かった社長令嬢・岩倉真琴が行方不明になった。小仏は警視庁捜査一課の安間から調査を依頼される。身代金三千万を持ち京都へ向かうよう要請される。京都で犯人は、もう一人誘拐していた。彼女を劣りにされ、金は奪取されたうえ犯人を取り逃がす。二千万の追加要求があり、二千万を渡し、真琴は保護された。
 小仏は犯人を追い、 真琴がいた家を見付ける。犯人の名は二宮旬・みどり夫婦、二宮の母・二宮貞子。
 二宮旬の妹の娘・君恵の婚約者が、小仏の京都の化野で貞子に会ったと言う情報で京都へ行き、知りあいの男性と貞子に会いに行き、二人が殺された。

 一年後九月、小仏はみどりの故郷を訪ねる。みどりらしい女を見付けるがひと足違いで逃げられる。岐阜でも逃げられる。貞子がいた。他人の母子と一緒に暮らしていた。
 十月 二宮旬が殺される。

 一月 横浜で同じような誘拐事件が起こる。京都で三千万と交換する。彼女は帰ったが金を取られ、犯人も捕まえられなかった。

 三月、北海道で横浜の事件を手伝った男轢き殺されそうになった。みどりは消えた。

 五月、函館開港記念館の管理人が、みどり姉妹ではないかと情報が入る。小仏は別館と宿舎の間の土を採取し、警察に渡した。毛髪のDNAが一致し、みどりは逮捕された。

2022年9月24日土曜日

脳科学捜査官真田夏希⑭

脳科学捜査官真田夏希⑭ イーガル・マゼンタ 鳴神響一

 エージェント・スミスと名乗る犯人にシステムに間違った情報を組み込ませ、倉庫におびき出され織田とお真田は、手錠を掛けられ捕らえられる。
 倉庫から脱出した二人は、スミスと思われる長野に住む男を捕らえるが、スミスではなかった。
 本部に戻り、情報を集め、会議の結果、スミスと名乗り夏希とSNSで会話している者と、システム捜査している者とは違う人物だということ、警察官である可能性が高い。システム捜査している者は幼い。
 バイクで逃走した者を探し出す。バイクを積み込んだ車・トランスポータを見付けた。江ノ電の七里ヶ浜近くに住む、野村隆行親子と断定した。
 アリシアが、織田が倉庫で拾ったチェストストラップの匂いで家を突き止める。野村は夏希たちの仲間・妻木麻美の義兄だった。
 野村は、身体が不自由になり車椅子の生活になった息子・直人のために、直人の能力を巨大クラッカー集団に買って貰うために事件を起こしていた。
 織田は小学生の直人に、直人が行なった行為のために迷惑を被った人がいたことを自覚しなければならないと話す。妻木が直人と一緒にいることになった。

2022年9月22日木曜日

北の御番所反骨目録〈四〉 狐祝言

 北の御番所反骨目録〈四〉 狐祝言 芝村凉也

 宴のあと 古藤は内与力から外された。小田切家の屋敷の留守居補佐になった。深元は内与力筆頭になった。

 狐祝言 上役に暴言を吐いて三日間の謹慎処分を受けた裄沢広二郎は来合轟次郎と美也の婚礼の準備が遅々として進んでいないことを案じていた。
 大奥から戻って以来、美也が備前屋に仮寓したまま親元に帰らないこともあり実家の坂木家に幾度となく出席者を問い合わせても梨の礫だった。
 婚姻許可届けも出さず放置されたが、南町奉行・根岸肥前守鎮衛がまだ出ていないようだがと声を掛けられたことで婚姻届けを提出した。その後のことも全て備前屋が整え、坂木家に手紙で知らされる。坂木家からは何も言って来ない。
 出席者の問い合わせに返事が無いことで、広二郎と備前屋は坂木家に出向く。父親・勘乃丞は、美也が側室にならず帰って来たことにまだ腹を立てていた。勝手に段取りした祝言の席には絶対に出無いという。広二郎は坂木夫妻と跡取り嫡男夫妻の席はぎりぎりまで空けておくと言って帰る。 
 坂木家の嫡男・六郎太が祝言の席に水掛けをする計画があることを知らせてくる。六郎太は父親が筋の通らないことをすると思っていた。
 広二郎は坂木の親戚の伯父に計画を知らせる。坂木家には出席者を知らせる。北町奉行が出席することを知り、増席を望んで来るが断る。親戚を出すため母親、嫡男の嫁は出られないと言われた母親は娘の祝言に出られないなら実家に帰るという。四人で出席した。小田切土佐守は出席した。勘乃丞は隠居した。

まいない新三郎 新しく内与力になった倉島は、考え違いをした。裄沢が深元に擦り寄っていると考えた。仕事に関係のないことを毎日言いつける。裄沢は、古くから古藤と吟味方与力・瀬尾がしていた借財引継や専売品直取引の仲介に気がついた。大名や老中に関わることだった。市中取締緒色調掛・横手が脅迫され手を組んでいた。裄沢は深元に知らせた。
 瀬尾は密かに追放して一件を終息させると奉行が判断した。
 深元に事件を知らせたと腹を立てた倉島は、裄沢に罷免すると叫んだ。裄沢はお奉行様よりの意向承りましたと帰宅する。
 深沢は倉島を呼び出し、古藤が小田切家を出たことを告げた。内与力を辞めた時も明白な証拠があった。確かめたか?思い込みで判断せず推移を見、話しを聞けば簡単に判ったこと。裄沢は切れ味をひと味どころかふた味もみ味も違う。あいつに掛かると斬るべき物は一番無駄のない斬れ方をした上で斬るべきでないところはいっさい瑕をつけぬようしてのける。名刀を探し出すより見付けることは難しい。確かめてみれば良い。殿の承諾も受けず己の感情のまま勝手に罷免を通告した。裄沢がお奉行様の意向と言わなければ、裄沢が誤魔化してくれなければどうなっていたか。裄沢をどうでもいい無駄働きのために顎でこき使っていたことを他の者はどう見ていたか考えたか?
 裄沢の元に、奉行の護衛・宗方が迎えに来た。料亭で小田切は明日は普段通り出仕せよと言った。裄沢は自分の前に、倉島は横手に放逐を申し渡した。脅してやらせた二人は得たお金を取り上げられず追放で済まされた。同じではおかしいと言った。
 裄沢が平然と出仕し、横手の放逐が撤回され倅が出仕することも疑問視されなかった。

 秋日和 小田切家家令・唐家が、内与力を兼任することになった。
 


2022年9月20日火曜日

素晴らしき国

素晴らしき国 小路幸也 

序 大学で社会学を教えている私は、二十年前、わが家に伝わる戦国時代の肖像画とそっくりの肖像画に会った。学生が話しを聞いた女性を描いた物だった。ほくろの位置まで同じだった。私は女性に連絡をとった。彼女から、写真と二十年後に会いましょうと連絡が来た。
一年に一度、年賀状が来た。二十年後、いつでもおいで下さいと書き添えてあった。
 肖像画を持って会いに行った。彼女は二十年前の写真と変わっていなかった。不老不死。
こうと落款の入った肖像画、彼女はこう・光が描いたという。光は明知光秀だと。
 
彼女は、150年ほど、「素晴らしき国」を作ることを手助けする人たちを育成する村・いよを作っていたと言う。ふじみ様と呼ばれていた。いよには何かに秀でた者たちがいた。子供たちがいた。ちょう、こう、よし、こた、ねいもいた。大人はいろんな所に国見にいっている。
 織田に子供が出来た。五宇徳が十数年後の夢をみた。その男の横にこうを見た。 
 こうの父親・雲林院弥一郎、体術に秀でる。その弟・耿之介。橋場、土、農の品種改良もする。五宇徳、この世で起こるであろうことが、その行く末が夢に表れる。
 雲林院の こう、よし、ちょう。 橋場の さん、すい、ねる。 中村の こた、ねい。
佐介の すすな、やえ。相良の りょう。
 中村と弥一郎と五宇徳と、こうを尾張に入れる絵図を引く。
 隠れ里・いよを開き、ふじみ様は尼さま。いの道 美濃は戦わず尾張になるために雲林院弥一郎とこうは美濃の長井新九郎の家臣になる。ろの道 よしは、橋場か吾一と尾張に行く。はの道 りょう、まだ幼いので二本の道が決まってから。
 

2022年9月18日日曜日

京都寺町三条のホームズ18

 京都寺町三条のホームズ18 望月麻衣
  〜お嬢様のミッション〜

 プロローグ 正月五日、葵と香織は、北野天満宮へ行く。香織は春彦とのことで葵に言えない何かがあった。

 小松探偵事務所に、ジウ・イーリンが来て、香港の富豪の娘のボディガード兼ガイドの要請をする。報酬に引かれ小松は無論了承する。
 事務所で暮らす円生は、まだ絵を描く様子はない。
 イーリンと円生にも何かあったか。
 田所敦子は、二十カラットのブルーダイヤを盗まれた。
 清貴と葵は若冲縁の宝蔵寺に行く。葵が円生に誕生日プレゼントに若冲の絵柄の御朱印帳を買いそうなので、清貴は円生に買う。後に若冲展への誘いのメモを入れて渡す。

 ガイド当日、清貴は、チョウ・ズシュエン本人に断られるよう、飛んできたハイヒールを除けない。ハイヒールを投げて返す。連れて行くのはインパクトのある京都では、縁切り寺・安井金毘羅宮。感動できる京都では、幽霊子育飴のお店。特別な体験ができる京都では、法観寺の八坂の塔の二層目まで登った。小松は円生に葵を迎えに行って貰う。京都らしいランチでは湯豆腐だった。話しは清貴らしく嫌み交じり。
 午後は葵が合流して、SNS映えする、八坂庚申堂。嵐山のキモノフォレスト、竹林に行く。
小松は、葵が毒気を抜く人だと気がつく。毒気の強い人は葵を好きになる。チョウは、日本名・梓沙。梓沙、葵と呼びあっていた。
 梓沙は三年前に母を亡くしていた。去年の暮れ、父親の恋人が発覚した。
 二日目ガイドは午前中は中止、午後は葵が来て、下賀茂神社、水みくじ、縁結びの社、美人祈願の社を廻る。
 梓沙の希望で大丸へ行き、宝石アクセサリーを買う。大丸外で事件が起こる。ガードマンの位置が予定と違うことに気がついた清貴は、ガードマンと闘うが、梓沙はガードマンに車に乗せられ連れ去られる。警察に連絡せず、ホテルで父親の来るのを待つ。梓沙のスマホからメッセージが届く。あなたが手に入れた宝と引き換え。不可解な一文があった。
 ホテルに警察並の装備が並べられる。プロジェクターで清貴と小松が付けていたカメラをの映像を映す。ガードマンは、周が雇った元傭兵だった。清貴は一人を捕まえた映像が流れ、周は驚く。小松は街角の防犯カメラを追跡し、伏見区まで追った。周は清貴等を引き取らせようとしたが、清貴は、自分たちの方が早く梓沙を見付けると豪語し出発する。
 伏見とは逆に鷹峯のホテルに行く。小松に豪華ホテルの防犯カメラを見て貰い、梓沙が入ったホテルを突き止める。尾行が付いており周が現れる。
 清貴は、お嬢様の自作自演の誘拐劇、壮大な親子喧嘩にピリオドだと言う。腕の立つ物を置きたくなかった梓沙は、クビになりたいためハイヒールに反応しなかった清貴を採用した。車が見えなくなった辺りにヘリポートがある。ヘリを使って鷹峯に移動。不可解な一文は、何も伝えていなかった君島に「あたしは 大丈夫」というメッセージ。
 梓沙は、父親の恋人のことよりも、ブルーダイヤの手に入れ方が気に入らなかった。盗んだこと。梓沙は母親の青い目と似たブルーダイヤを手に入れるために君島を敦子さんの所へ交渉に何度も行かせていた。それを知った恋人は、父親にねだった。そして盗難騒ぎが起こった。パパはママを裏切っただけじゃなく、パパを信じている全ての人を裏切った。父親からダイヤを奪い、敦子に返し、また交渉しようと思っていた。
 まだダイヤを手に入れていない周は、大阪で開かれるシークレット・オークションのことを話した。盗難品ばかりが集まるオークションのことを小松は知らせ、一斉検挙となった。
 アクセサリーのプレゼントを葵は断った。梓沙はアパレルブランド『華』を立ち上げている。葵が言った「私の人生を変えてくれた町」。気に入った梓沙は後に「私の人生を変えてくれるファッション」というキャッチコピーに使う。
 梓沙は敦子に会ってから帰った。

 円生はメモを見付けた。京都国立博物館。指定された日は休刊日だった。内覧会。葵も円生も特権にわだかまりがある。
 葵と円生は、若冲の絵を見ながら話す。葵は若冲は神様の視点で全てに感動している。特別な物ではなく周りの全てが、特別な物。
 清貴は若冲の作品を「神の視点」だと思うと話す。
 葵はお金に対する価値観を改めた。お金が欲しいではなく、自由が欲しいと思えば良いという清貴。
 葵が庶民感覚を・・・と言っていたことを、価値観の違い、別れの理由と考えていた清貴だったが、葵は、価値観の違いは当たり前、分かり合う努力とか譲り合う理由になるが、別れる理由にはならないと言う。

 春彦が清貴に相談にくる。香織の告白の返事をしていなかったからか、告白なかったことにして、これからは友だちとして仲間としてこれまで通り仲良くして。と言われたと言う。
清貴は、勝手な想像をせず、彼女の気持ちを聞いてみたら。好きな子と友だちになりたいですか?蛇の生殺しのようなポジションと言われて、春彦は自分の気持ちを整理して向き合うことにする。
 
 事務所で宴会が開かれた。「お疲れ様会兼新年会」葵、利休、ユキ、秋人。円生には内緒、円生の誕生会だった。
 秋人が、相笠くりすの、清貴と秋人をモデルにした昭和初期の京都を舞台にした作品が舞台化されることになったと発表した。
 周さんから小松事務所に沢山の報酬が払われた。小松事務所が祇園にいられる。
 みんなで乾杯!

 番外編 拝み屋さんと鑑定士「彼の胸の内」 わが家は祇園の拝み屋さん⑬より
 蔵に、澪人と小春が訪れる。小春は初めて蔵に来た時のことを思い出す。
 ほんの一瞬で小春は清貴の心を読んでしまった。自分のほとんどを当てた。
 初めて葵に合った時の清貴の心も読み取ってしまった。葵に対する清貴の思い、澪人に、恋しい人を前にした時の頭は覗いたらあかんよと言われた。
 衝撃的なひと時。

 清貴は、小春が目をそらしたことは、人見知り、警戒心が強いと判断した。人の心が分かるために目を合わさないようにしているとは考えなかった。
 
 

2022年9月16日金曜日

オリックスはなぜ優勝できたのか

 オリックスはなぜ優勝できたのか 喜瀬雅則
 苦闘と変革の25年

 私は、2021年 寒く震えながらグリーンスタジアム神戸、(今はなんと言うか)ホットモット神戸で、ヤクルトとの日本シリーズを見た。ヤクルトの胴上げを見た。

2022年9月14日水曜日

吉原裏同心㊲ 独り立ち

 吉原裏同心㊲ 独り立ち 佐伯泰英

 五月 墓参りを済ませた神守幹次郎が一年の謹慎が解け、麻と吉原に帰った。
 京で知り合いになった掛川藩藩主・老中・太田備中守資愛に挨拶に行く。
 幹次郎が八代目頭取四郎兵衛を継いだ。八代目と神守の二役をすることになった。三浦屋四郎左衛門も代が変わった。
 八代目は、京都との繋がりと、西河岸と羅生門河岸の変革を考えている。
 澄乃は、小見世から切見世に自分から変わった小梅の事情を調べ、内藤新宿の悪から小梅を助ける。

 六年前に事件で知りあった定信の側室・香の呼び出しを受け、定信に会いに行く。

 大見世の寿楽楼が居抜きで買われ、名を豊遊楼に変えた。奉公人もほとんど入れ替わった。買ったのは三島の船問屋と旅籠の主・三左衛門になっていた。八代目を襲った、松坂町の鬼の五郎蔵と繋がっていた。三左衛門は佃沖に軍船を泊めていた。二、三隻の千五、六百石船を持つ海賊商だった。
 身代りの佐吉と八丁堀の桑平同心に連絡を取り調べ始める。
 吉原面番所の村崎季光が、自分と五郎蔵との関わり、三左衛門との付きあいを認めた書きつけで、五郎蔵を強請った。三百両を要求した。澄乃たちが捕まえた。
 三島丸三隻は大砲を積んだ海賊船だった。定信に願い、海賊船が内海に入った合図のろしが上がる。三島屋一味の隠れ湊を見付けた。交易船から強奪した品々を江戸の大商人に売渡し、ゆっくり寝込んだところをを、湾口を御船手同心たちが塞いだ。
 幹次郎は船に乗り込み三島や三左衛門を斬った。勝負は決した。三島屋の船は御船手組の別動隊になり、隠された二十六万両は海防策に使われる。海賊の残党は活かして手下としてつかわれることになった。五百両は、寿楽楼の奉公人に配られた。
 定信は老中を追われた。

2022年9月12日月曜日

上絵師 律の似面絵帖⑧

上絵師 律の似面絵帖⑧ 告ぐ雷鳥 知野みさき

 にわか御用聞き 律は涼太から彼岸花の透かし彫りの鈴を貰った。律が描いた彼岸花の着物を見て達矢という錺師が意欲を掻き立てられ作られた鈴だった。
 綾乃が御用聞きに成りたいと言う。
 大泥棒の晃矢がまだ見つかっていない。晃矢は錺師・達矢の双子の兄だとわかった。
 律が片桐和十郎と話している時に、弟子になりたいという仁太が来た。和十郎は断っていたが、後に和十郎の所に行くと仁太が、和十郎の世話をしていた。
 律が、前に助けられた男を見付けた。やくざ一家の右腕・賢次郎というらしい。悪さを仕掛けたのは、赤間屋の者だと教えられた。綾乃は赤間屋の息子の悪行を調べていた。旅籠・赤間屋の次男・茂郎とその連れ二人が悪さをして多くの人が泣き寝入りしているという。尾上の板前が殴られている昇太を助け殴られた後亡くなった。綾乃は被害を受けた人を探していた。
 晃矢は子供を勾引かしていたことがわかった。
 綾乃が探し出した秀に話しを聞く。 三年前、赤間屋で働いていた許嫁・清吉が薮入りに帰らないまま姿を消した。前から清吉は茂郎から嫌がらせを受けていた。同心が調べを始めた。三人は大川で溺れて死んだ。話しを聞いた隠居が船をだし孫を溺れさせたようだ。隠居が孫の長男を仕込み、茂郎に甘かった父親を引退させることにした。秀の許嫁は品川で亡くなっていた。隠居が昇太を連れて尾上の板前の仏前に行く。
 広瀬保次郎の頼みで、阿芙蓉売りで捕まった留八の弟の似顔絵を描く。保次郎は弟の顔は知らないが留八の若い頃にそっくりというので、留八の顔を書いた。形見を渡すと言う。律は仁太にそっくりだった。留八は和十郎の密告で捕まった。和十郎の息子・善一郎は、仁太兄弟と一緒にいた。仁太は和十郎の芸のことを善一郎から聞いた。敵討ちのつもりで仁太は和十郎に弟子入りしたが、復讐を躊躇するようになった。親から受け継いだ御護りと、律が書いた留八の似面絵を見た。仁太は阿芙蓉には無関係だ。和十郎は仁太に好きにしろと言った。仁太は辞めないようだ。

 鬼子母神参り 涼太の友人・勇一郎が、身を固めようと思った囲っていた女・のとがいなくなった。律は似面絵を描き、涼太は勇一郎と知りあいを廻る。
 律は、関口水道町の志摩屋の隠居の要望で店まで意匠相談に行くことになった。広瀬の妻・史織と鬼子母神へ行くことになった。志摩屋で「らいの鳥」を描くことになったところで隠居に用ができまた今度ということになった。朔日に行くことにした。帰り道、律はのとを見付ける。声を掛け、女と行動を共にする。のとは身ごもっていた。自分のような者が子供を授かっていいのかという憂いの気持ちから家を出ていた。三人で家に帰ると、のとの姐さん・銀と男がいた。男は金を要求する。史織は広瀬に習った護身術で捕まえ番屋に渡す。勇一郎はのとに妻問いする。
 達矢が十両を払ったり、芸者を呼んだりしたと聞いた律は、晃矢が達矢を騙ったりしているのではないかと思った。達矢は晃矢に騙られないように顔に傷を付けた。

 告ぐ雷鳥 達矢は、晃矢を探している。律は白山権現に行く途中、達矢に会った。達矢が雷鳥の懐中仏に描かれた雷鳥を見せてくれた。律は紙に写す。達矢は紙に雷鳥を書いてくれた。着物の下書きを明日届けるという日、遣いの者が来て持って帰った。史織の実家で父親が、梅園禽譜を見せてくれた。そのころ、達矢が律に会いに来た。今井と晃矢の話をしていた。律に鈴を見せて欲しいと頼む。
 志摩屋か全て任せるという言葉と前金をもらった。
 達矢の品物を全部買う客がいるらしい。
 六日ほど経った。志摩屋が捕まった。志摩屋は盗人宿、隠居は頭だった。晃矢は殺されていた。
 達矢が雷鳥の着物が欲しいと言ってきた。達矢は旅に出ると言う。隠居の着物に贈り主は晃矢だった。二両を置いた。律は丁稚に涼太に伝えるようにと、達矢と白山権現に行くと言い置いて行く。達矢は懐中仏を律に預けた
 千恵を勾引かし、無体を働いた男が頼った万屋も、律が勾引かされた駕籠や栄屋も志摩屋に関係していた。一緒に捕まった。志摩屋は着物の注文を口実に律をおびき出し、律を殺すつもりだった。晃矢が殺すなら雷鳥の着物が出来てからにしてくれと言った。
 晃矢が捕まった。志摩屋にいたのは達矢だった。まだ殺されていなかったが、晃矢を油断させるために晃矢が殺されたと言った。律は達矢と名乗った男が、晃矢と分かっていた。火盗に志摩屋のことを密告したのは晃矢だった。
 晃矢は捕まり二日間、洗いざらい白状した。そして自死した。
 晃矢が勾引かしたとされる少年は、腹違いの弟がいるため、兄である少年は父や継母から虐待を受けていた。晃矢の知る盗人宿を教える代わりに少年のまっとうな里親か奉公先を世話してやってくれと頼んだ。晃矢は憎めない盗人だった。
 少年は達矢が引き取った。律は少年に懐中仏を渡した。
 達矢と晃矢は違った。着物は藍井の由郎が買うことになった。

 約束 十五年前の千恵の許嫁が、妻を亡くし、千恵に後妻にと申しこんだ。雪永も類も千恵が決めることだからと口を出さない。千恵は律の所に来る。律と千恵は、義父の清次郎から茶道を習う。千恵が事件の後、十年くらした家・椿屋敷で茶を入れ、律と話した。村松に断りを入れた。


2022年9月10日土曜日

手作りかつお節図会

手作りかつお節図会 大海淳 



2022年9月9日金曜日

野菜の酢漬けと展開レシピ

野菜の酢漬けと展開レシピ 野口真紀

ミニトマト 20個、 ニンジン 2本、 紫キャベツ 4分の1、 ズッキーニ 2本、 長いも 400g、 ミョウガ 9個、 蒸し大豆 140g 、柴タマネギ 2個、 ショウガ 100g

カリフラワー2分の1 塩を入れた熱湯で固めにゆでる。
白ねぎ 太いもの2本 3cmに切り熱湯で1分ゆで、水気を切る。
ミックスキノコ エノキ小一袋 シメジ 1パック マイタケ 小1パック熱湯でゆで水気を切る 
切り干し大根 水で洗い熱湯にくぐらせ水気を切る。水を絞る必要はない。
煮干し そのまま食べられるタイプ20g 白すりごま 大5を入れる。



米酢 2分の1カップ
砂糖 大さじ3
塩  小さじ2分の1

キュウリ 5〜6本 しま目に皮をむく。
卵 鶏卵 5個・ウズラ卵の水煮 12個

米酢 1カップ
砂糖 大さじ6
塩  小さじ1


酢みそ 白みそ 大さじ4
    信州みそ 大さじ2
    米酢 大さじ2
    砂糖 おおさじ2
  保存期間 冷蔵で2週間

2022年9月8日木曜日

空也十番勝負(六) 異変ありや

空也十番勝負(六) 異変ありや 佐伯泰英 

 寛政十年(1798)師走 磐音の娘・睦月と中川忠英の次男・英次郎が祝言を挙げた。中川忠英は勘定奉行、元長崎奉行だった。睦月は兄・空也が戻るまで両親の傍らにいることを願った。

 空也は酒匂太郎兵衛との勝負で酒匂を倒したが、空也は重傷を負った。長崎会所の町年寄りの姪・高木麻衣と長崎奉行所の密偵・鵜飼寅吉に出島に運ばれ異人の外科医の手当てを受けた。上海から外科医・カートライト博士を呼び寄せ手当てを願った。手当てすることも無しと言われるが空也の意識は無かった。
 知らせが江戸に着いた。藥丸新蔵が道場を閉じて江戸から立去った。
 年が変わった。高麗人・李遜督が長崎会所を訪れた。麻衣は内密に空也の体を会所に移した。遜督は二人きりで剣を振るった。三日目の朝、空也の目が開き、修理亮盛光の柄を掴み抜いた。遜督は消えた。酒匂との勝負から二ヶ月が過ぎていた。
 空也は生きていると江戸に知らされた。
 空也の体力は見る見る回復する。マスカット銃の仕組みを理解した。分解し組み立てる。
 空也は松平辰平と初めて木刀を構えた。構えて一刻、不動の立ち合いで終わった。
 
 空也は麻衣と寅吉と一緒に、長崎奉行と長崎会所の要請で上海に行く。カートライト博士に礼を言う。あんな傷を受けた者が三ヶ月でほぼ戻ったとは信じられないと言われた。
 設立されようとしている、イギリス東インド会社の大株主の一人の娘・アンナが誘拐された。相手は「蕃族王黒石」参謀は薩摩の仮屋豪右衛門、示現流。アンナを助け出して欲しいと頼まれる。
 空也は目撃者を探し、敵の隠れ家を探す。アンナを助け出し、薩摩人と言っていた高麗人・長南大を倒す。黒石と名乗っていたのは上海を闇から支配していたポルトガルのフェルナンデス・ソーザ公爵だった。東インド会社所有の砲艦の警固兵の面々が取り押さえる。

 福江島に着いた空也は、馴染の肥後丸で次ぎの地に向かうことにした。アンナの命を助けた礼に貰った感謝の品々と船室で書いた文は、御用船で尚武館に送られた。

2022年9月6日火曜日

脳科学捜査官真田夏希⑬ ナスティ・パープル

 脳科学捜査官真田夏希⑬ ナスティ・パープル 鳴神響一

 神奈川県警の心理分析官・真田夏希は、驚愕の異動を伝えられた。警察庁に新設されたサイバー特別捜査隊の隊員だった。特捜隊の庁舎で待ち受けていたのは織田信和だった。
 一昨日から銀行システムや交通系決済システムを攻撃した敵と戦うため夏希の力が必要だと言う。

 東京航空交通管制部のシステムを狙うというメッセージが来る。メッセージの発信元が長野県だとわかった。横井に逮捕状の請求を任せ、織田と夏希は長野へ向かう。
 新幹線が止まる。パトカーを要請した警察から来たのは、織田と真田の逮捕状を持った警察官だった。すぐ、副所長がとんできて、間違いだったことが判明する。借りたパトカーで長野に向かうが、行く先々で通行止め、待ちかまえていたのは、メッセージの送り主・エージェント・スミスだった。夏希のスマホをクラッキングされていた。
 織田がサイバー特捜隊長になった時から、織田を研究したと言う。最高実力者だからと彼は言うが、織田は納得できないようだ。倉庫に手足に手錠をかけられ椅子に座らせられた。時限爆弾を仕掛けたと言う。赤い文字は9:59を示した。
 織田はあなたがどんなに大切な人であるか痛いほど分かりましたと言う。夏希も私にとっても織田さんは大事な存在です。と言う。
 5・4・3・2・1・・・。次巻「イリーガル・マゼンタ」につづく

2022年9月4日日曜日

ドルチェ

 ドルチェ 誉田哲也 
 元捜査一課刑事・魚住久江42才独身。一課復帰を拒み所轄で十年。今は練馬署強行班係。
 捜査一課殺人犯捜査第三係、警部補金本健一は、捜査一課に復帰を誘う。

 袋の金魚 一才二ヶ月の子供・守が溺死、母親・由子が行方不明、通報は父親。久江が父親・斉藤明に会いに行く。守の重症の小児喘息のため外出もままならなかった。久江の調べでは、由子は献身的に守るの世話をしていた。
 斉藤由子が出頭する。何も喋らない。
 久江が、語りかけていると、由子が喋りだした。由子は十ヶ月前に殺され、自分は身代り、浜田仁美。守と生活し始め由子が殺されていることを知った時には守が離せなくなっていた。守と風呂に入り、仁美は疲れで眠ってしまった。気が付くと守は顔を付けて浮いていた。布団に寝かせたが、息をしなかった。怖くなって逃げた。
 本当の由子は六月に白骨で発見され、大腿部の金属プレートから斉藤由子の名前が出、金本は由子が生存しているか調べに来ていた。守の事故死は翌々日に起こった。

 ドルチェ 川西恵22才 大学四年、十時半頃、暴漢に襲われ左脇腹を刺された。全治三週間。科学捜査研究所の柚木に彼女が持っていたハンカチの調べを頼む。
 柚木は昔の仲間だった。柚木の妻・奈津子を知っている。柚木の指に指輪がないことに気が付く。金本に尋ねる。三年前に別れたと教えられる。柚木は近々再婚する。
 ハンカチに付いた整髪料から犯人は恵の家庭教師をしている教え子と分かった。恵が出頭させた。
 金本が柚木の話しをした。柚木が仕事に没頭し、なっちゃんは寂しさに耐えきれず、アルコールに頼り内蔵がボロボロで入院した。アルコール依存症が深刻だった。一年後、なっちゃんがお荷物になるからと離婚を言い出し、離婚した。ようやく、最近乗り越え支えてくれた同僚と結婚を考えるようになった。

 バスストップ 二十一才の大学生・飯森淳子が、何者かに抱きつかれた。大声を出し抵抗しそれ以上の被害はなかった。交番から峰岸巡査長が臨場。現場保存、鑑識に足痕を取らせた。峰岸は捜査課への転属希望。捜査に加えて欲しいと頼む。農協前でじーと見ている人がいたと言った。
 警視庁刑事部捜査第一課、性犯捜査第二係、佐久間晋介警部補が来る。所轄に乗り込み、調書を出せと言う。久江は佐久間の態度に我慢ならない。俺が仕切ってやると言う。
 農協を見張る。バスが来る前から男が現れ、バスを見送る。青年は佐久間に捕まり署に連れて行かれる。久江は彼・増本秀弥は無関係と判断した。彼は何も言わない。翌日、佐久間が、仕切る。久江は峰岸と自分の判断で動く。昨日と同じバスに乗り、増本が見ていたと思われる男性に声を掛けた。彼らは恋を禁じられバス亭で顔を見ることだけで良しとしていた。秀弥は彼に迷惑が掛かることを気にして何も言わなかった。
 峰岸がとって貰った足痕が決め手になって特捜本部が被疑者を確保した。久江は佐久間に湯飲みのお茶を頭からかけた。佐久間が凄んだ瞬間、里谷が現れ佐久間の馬乗りになる。久江は里谷を止め、上から圧倒的な力で押さえつけられる恐怖、屈辱、少しはお分かりになりました?と言った。

 誰かのために 峰岸が刑組課強行犯係に正式配属になった。印刷工場で障害事件発生。被害者の一人は蹲り頭に怪我、一人は手。加害者は堀晃司。堀は返してくれと喚いていた。堀は結束器で殴った。
 堀家に行き部屋にいた晃司を署に連れて行く。半年、印刷会社で働き、三日前に辞めていた。堀が返せと言ったのは図鑑だった。原口がザリガニと捕まえてきたのは毒を持ったサソリだった。堀は飼っていたサソリを捕まる前に窓から撒いていた。
 堀は仕事を辞める時、ここでも自分は必要とされなかったと言ったと聞いた久江は、晃司に、始めから必要とされる人はいない。みんな一所懸命努力して必要とされる人間になっていくんだと思うと言う。俺も頑張ったという晃司に誰のために?お金のため、自分のため?誰か人のために頑張ってごらん。サソリは十七匹。みんな見つかった。

 ブルードパラサイト 医者に運びこまれた男・吉沢徹が女房に刺されたと言う。生まれて半年の赤ちゃんがいる。会社で徹夜して帰ると、いきなり殴りかかり、包丁を持ち出して刺されたと言う。妻・明穂の所に行く。
 明穂を署に連行する。明穂は完黙。一ヶ月前、夫・徹がモデル出身の女優・阿川佑子との付きあいを週刊誌に報じられた。吉沢は昔は付き合ったが、今は何もないということで明穂も納得したという。阿川が大麻所持で捕まった。その時、久江は明穂の気持ちが分かった。
 阿川の本名は美保だった。子供の名前も美保だった。美穂ではなく美保だった。昔の恋人の名を付けたことがわかった時、夫が帰って来た。
 久江が徹のマンションを訪れた時、同時に女が尋ねてきていた。久江は徹の頬を張った。あなたの罪を裁くことは、今の法律では無理。自分の無力が情けない。女に奥さんすぐ帰るわよと言った。

 愛したのが百年目 住宅地の路上で乗用車と通行人の接触事故が発生。車で送って来た友人が、バックと前進を間違え、前の人を撥ね、門柱にぶつかり後に倒れて頭を打ったようだ。
 送ってきた友人・柿内は酒気帯び運転だった。神野は助かった。妻・逸美もいれて三人は大学の時から親友だった。娘・和美は大学四年、就職先も決まっていた。柿内の心配をする。
 久江は柿内の動きが気になる。柿内は酒を飲んでいなかった。事故を起こしてから酒を飲みウイスキーを入れていたペットボトルを捨てに行っていた。柿内は女優と不倫した。週刊誌が写真を掲載しようとした。止めるために、女優の広告クライアントを経由して掲載見合わせをさせようとした。週刊誌の発売元の出版社に和美の就職が決まっていた。娘の就職の取り消しを匂わせた。神野のスキャンダルもみ消しは家族のためではなく、事務所の利益のためであり、和美の就職が駄目になっても退く気がないと言ったことで、柿内に殺意が芽生えた。事故にすれば逸美に犯行動機がさとられないと思った。
 久江は調書を書く。殺人未遂だが、中止未遂になる。柿内は直後に救命措置を行い家人を呼び、救急車も呼んでいる。
 逸美と和美が柿内に差し入れを持ってきた。柿内の待っている。ちゃんとわかっている。どんな結果になっても受け入れられると伝えてくれと言われる。和美は内定を辞退した。来春、警察官採用試験を受けることにした。


2022年9月2日金曜日

東京バンドワゴン ⑯ グッバイ・イエロー・ブリック・ロード

東京バンドワゴン ⑯ グッバイ・イエロー・ブリック・ロード 小路幸也


 美術品輸送専門ドライバーをしているクレイグ・イーデンは、別の物を探している最中、「青の貴婦人」と呼ばれる絵を見付けた。十何年か前にスチュアート美術館で盗まれた物だった。最悪の保管場所で最悪の保存状態で置かれたようで修復が必要だった。優秀な修復士、交渉人を頼めば、保険で八十ポンドは貰えると考えた。兄のようなハリーは腕のいい修復士だったが、車椅子生活になり仕事が出来ない。そのためにもお金が欲しかった。

 イーデンは、ニュー・スコットヤードの〈美術骨董盗難特別班〉の警部補ロイド・フォスターに仕切りを頼んだ。ロイドの娘・モニカは病気で車椅子生活だった。交渉人をケネス弁護士に頼んだ。ハリーの代わりにケネスは友人のマードックに修復を任そうと思った。マードックを犯罪に巻き込まないために誘拐をする。

 そんな計画が持ち上がっているところに、東京から我南人と研人率いる東京バンドワゴンがオックスフォードのマードック宅にやってきた。キースが、研人たちの高校卒業祝いと結婚のお祝いにとキースのスタジオを貸してくれた。アルバム作りにやってきた。

 マードックが誘拐され、ケネスは親身に相談相手になり、マードックを帰す予定だったが、東京からきた客人が大騒ぎになった。
 一瞬でイギリスに行けるサチがいた。普通なら何も出来ないサチだが、盗難特別班の事務官・ジュン・ヤマノウエはサチが見えた。話しも出来た。サチから話を聞いたジュンは、監視カメラコールドセンターの映像から、マードックの監禁場所を見付ける。
 ジュンが倉庫に着いた時、捕まってしまう。前に着いていた研人たちも、藍子も捕まっていた。ケネスもロイドも捕まっている。筋書きが狂った。
 覆面の三人に、マードックとマードックを補佐しているハリーに強制されていた。

 ヘリの音が近づき、赤い線で三人が狙われる。我南人が現れる。マードックの友人・J・Bが現れる。三人の覆面男から銃を奪い、テロ対策部隊が三人を連れて行く。
 三人は、監視カメラコールドセンターのナイトA・D・Fの三人だった。今までも立場を利用して犯罪を犯していた。J・Bは内偵を進めていた。そこへキースから連絡入った。
 修復が終わり、ロイド警部補が預かり、クレイグが運んで美術館に返す。何もなかったことにする。
 研人はハリーとモニカのためにチャリティライブをやろうと提案する。藍子と三人が買い物に出た後、ビーンは提案する。
 ロイドに本来なら懲戒免職だ。未遂であり情状酌量する代わりに、不正警官、事務官に眼を光らせて欲しい。ジュンは元々ロイドは以前の上司の不正を見過ごせなかったためにこんな閑職にいるのだと言う。
 ビーンは、モニカの病気・難病の脊髄炎を国の治療研究対象とする。そうすれば暮らしに充分な費用が出る。

2022年8月28日日曜日

東京バンドワゴン⑭ アンド・アイ・ラブ・ハー

 東京バンドワゴン⑭ アンド・アイ・ラブ・ハー 小路幸也



秋 ペンもカメラも相身互い  十月 藤島ハウスの管理人室に、相沢夏樹・玲井奈夫妻が住むことになった。正式に管理人に決まった。引っ越しが終わる。
 すずみの友人・美登里が東京に帰ってきてNPOの事務所を立ち上げた。美登里の同僚の長谷部さんは、「美琴へ」を書いた作家・宇田川拓也の元奥さん・美琴さんだそうだ。
 茅野が絡まれている水上を助けてカフェへ連れてくる。カメラを渡せと言われた。二人を尾行して来た男がいた。我南人が感づき、男を神社におびき出し捕まえた。探偵をしている宇田川だった。宇田川は、見つかれば命を狙われるような危ない高級料亭を写している水上を見た。水上のことを知っていた。危ない写真を取りあげるつもりでガラの悪い高校生に頼んだのだった。水上のフィルムは木島が話しを付けてくると持って行った。
 宇田川は、本を書けとお尻を叩かれ帰った。

冬 孫にも一緒の花道か 喪中の藤島は年末年始を堀田家で過ごす。今まで正月を過ごしていた実家は、藤三記念館に建て替え中。二十七日の昭爾屋の餅つき、家と蔵の大掃除、そして初詣。
 藤島ハイツを探っている不審者がいる。芸能界で池沢さんを探している人がいる。東京バンドワゴンに、古い映画のあれこれを持ち込んだ人がいた。仕事始めの日、田山監督が訪れた。監督は池沢さんに、引退前に、映画に出ないかと出演依頼だった。どこか旅の空の下にいる梅蔵と別れたマドンナが、梅蔵の子を生んで、育てあげていたと言う話し。子供役を青にオファーする。
 監督は池沢の妊娠に気がついた。相手が我南人だということも話したうえで、誰にも知られないように映画を撮ってくださった。監督のお陰で、マドンナ役を務めあげ、青さんを産めたと池沢は話した。
 監督は親子だと名乗る必要はない。映画の中の親子として俳優として銀幕に立ち、引退すればいい。田山監督の映画に出て正式に女優から引退することを公表しようと思う。俳優として息子役で出てくれないかという池沢に対し、青は出ますと答えた。そして孫に娘たち二人を使って欲しいと売り込む。全てが決まった。
 夜、我南人は、僕と研人が主題歌を歌えないかお願いしておけば良かったと言った。
 ボンが亡くなった。麟太郎と花陽が見取った。

 池沢さんと青が、母子役で映画に出ることになった。でいいのかな。

春 桜咲かすかその道の 二月、ボンのお別れ会、音楽葬が行われた。
三月 増谷裕太と真央の結婚式が堀田家で行なわれた。
 四月 鈴花とかんなが小学校入学。二人の部屋へ祖父母に買って貰った机を入れ、二段ベットを取り付ける。上下、毎日交代。
 研人と芽莉依は高校三年生
 蔵のことで以前揉めた山端文庫の醍醐教授が二年前からアメリカの古書フォーラムで五条辻の蔵印書を探している。
 研人が、バンド仲間の将来を自分が決めてしまって大丈夫か背負ってしまうことを悩んでいることを知ったサチは、かんなを通じてボイスレコーダーを使い紺に知らせる。紺は我南人に相談した。
 勘一と醍醐教授が、お互いに謝罪した。醍醐は、世界に一冊の本・〈最愛の娘、咲智子へ〉と書かれた「欧羅巴見聞鉦」を持ってきた。醍醐はお互いが死んだ時、後進のために正式な資料として研究のために貸してほしいと願った。約束だけでもさせていただきたい。
 勘一は護るのは自分まででいい。資料にしていい。文章にして残すと言った。
 我南人のバンドのメンバー・ジローさんと鳥さんが、決めたのは自分だ。他の誰かに決められたものじゃない。渡辺君だって渡辺君の生き方だ。希望も後悔も自分のものなのだ。と言った。

夏 アンド・アイ・ラブ・ハー  すずみが子宮筋腫で顔色が悪い。芽莉依は、東京大学を受けるが、余裕綽々で受験勉強中。研人はライブがいくつもある。のぞみちゃんが書いた詩に曲を付けたいと思っている。
 美登里が来た。すずみは病院へ行っていて留守。美登里は藤島の会社に事業パートナーになってもらうことになったと話す。
 みんなが揃っていた。すずみと青が子宮筋腫の手術を受けることにしたと報告する。かずみが子宮全摘術だね。元気になるけど妊娠はできないということだと勘一に説明する。
 すずみは、美登里も同じように手術して妊娠できない体だになっていると言った。そういう話しになって気まずい思いをしないよう先に言っておくと美登里にも話していると言った。手術は一ヶ月か二ヶ月先。
 かずみが介護も医療施設も付いた老人ホームを契約したとはなした。身元引受人は藤島だった。
 かずみの行く老人ホームを見に行く。入居施設が十棟もある巨大マンション群のようだ。設備も見晴らしもいい環境だった。一週間でかずみは引っ越しした。かずみは、自分が死んだ時、この箱を棺桶に入れて欲しいと、亜美とすずみに頼んだ。中身は勘一と一緒に写った写真と一人で無医村を渡り歩いていた日々に書いた勘一への手紙だった。出すことの無い手紙。生きている間に燃やせない手紙。
 帰って来た藤島が、かずみの後の部屋へ美登里が入ると言った。
 自分は家庭を持つビジョンが全く見えない。でも子供は好きです。世界中の子供に希望を与えたい。美登里と話して同じ方向を見つめ、同じ絵を描いていることが分かった。死ぬまでビジネスパートナーであり、人生のパートナーとして歩いて行きたいと思った。結婚ではないけれどということで。
 

2022年8月25日木曜日

東京 バンドワゴン⑬

東京 バンドワゴン⑬ ヘイ・ジュード 小路幸也


 冬 人と出会わばあかよろし 二月 藤島の父親・藤三が亡くなり、花陽以外の者総出で葬儀に参列。花陽の葬儀出席は藤島が断る。
 堀田家に研人の後輩・水上君が来る。写真が趣味の水上は、堀田の家の写真が撮りたいらしい。今までの写真を入れたポートフォリオ持参でくる。勘一、我南人、紺、青が見、感心し、マードックと藍子を呼ぶ。マードックは水上の許可を得、写真を引き伸ばしてカフェに飾る。水上の好きな写真家は、石河美津夫だと言う。
 家の前の道が陥没し、工事が始まる。警備員は研人のバンドのナベの父親だった。去年の夏にリストラされ、就職探し中のアルバイトだった。
 藤島が後妻の弥生さんと一緒に藤三記念館を任せようと思っている三島政幸という書家が、蔵の作品を見に来た。ナベの父親・渡辺善尋と顔を合わせた。幼い頃の書道仲間であり、大学の同級生だった。
 我南人が藤島と渡辺さんと蔵にいる三島さんも集めて話す。藤島は藤島の本家の後取りの立場と、自分の会社の社長の立場で悩んでいた。弥生さんと三島さんに任せるつもりが、親戚が何かと煩かった。迷っていた藤島に、我南人は、藤三の作品を守っていくことだけを考えるのではなく、自分の会社に取り込んで若い者を育てる方向に持っていけばいいとアドバイスする。渡辺さんは「大日エデュケーション」で習字のeラーニングデジタルシステムの部長だった。FJの技術なら毛筆でもデジタル習字も可能なのではないかと言う。渡辺は履歴書を持参して会社に伺うと言う。
 水上の作品の少女の写真のモデルは、二年生の時、「三匹のやぎのがらがらどん」を売りに来た名塚のぞみちゃんだった。今は五年生、春野のぞみになっていた。個性的な美人。

 春 新しき風大いにおこる かんなと鈴花が藤島の部屋に泊まった。
 花陽は高校卒業、第一希望の私大医学部合格。パソコンで合格発表を見る。
 夜の合格祝いの食事会の席で、花陽は、藍子とすずみと花陽の三人で、父親の墓に行きたいと話す。蟠りが少ない研人が、堀田家を代表して一緒に行くことになった。鈴花とかんなも行く?藤島家の墓にも行くことになった。
 藍子が、マードックとイギリスに行くことにしたと伝える。
 藤島ハウスに研人と花陽が住み、青とすずみと鈴花が二階に移り、勘一が離れに住むことになった。研人の部屋に、来年、鈴花とかんなの机を置き、小学生の二人の部屋にする。
 二週間後の日曜に、大引っ越しとなった。藤島、渡辺、甘利、裕太、玲井奈、夏樹、麟太郎が手伝いに来た。のぞみちゃんも子供たちの相手。
 芸能関係ぽい人がカフェに来たので、のぞみちゃんの写真を外す。
 のぞみちゃんの家のことが心配になった勘一は、研人もよく知っている先生に尋ねる。のぞみにも話しを聞き、のぞみの書いている物語を読む。芸能界に入れようとする継父に、のぞみの希望は小説家であり勉強のため堀田家に預けませんかと言って来た。紺がサチと話しをしている。のぞみの両親も真剣だった。のぞみも逃げてばかりいないで両親と向き合った。

 夏 若さ故の二人の夏に 藍子とマードックがいなくなって四ヶ月。
 花陽の大学の友だち・君野和がお粥モーニングを食べに来る。
 青の映画の配給会社の知りあい・笈川が、雑誌の買い取りの相談をする。編集者でカメラマンの石河美津夫が亡くなり、残した物が全て笈川智佐子の物になったと言う。両親が早くに離婚し、親戚のいない石河の物が娘・笈川の物になった。青が鎌倉に行き、写真や雑誌を見積もり、家具も知りあいの骨董品屋に連絡し、馴染の業者に梱包も含めて手配した。次の日、八十二個届いた。
 研人が、再婚した芽莉依の両親と三人で芽莉依の誕生パーティをすると微妙な空気が流れそうなので堀田家で両親を招いてやりたいと言う。玲井奈がケーキを作って手巻きパーティをすることにした。芽莉依の両親は離婚し、また再婚していた。父親が実の父なのだが、ぎくしゃくしているらしい。
 日曜日、花陽がカフェに入るならと和ちゃんが手伝いに来た。和ちゃんの実家は静岡で喫茶店をしている。慣れている。
 青とすずみは蔵の雑誌に値付けをしていて、若い頃の池沢のヌード写真を見付ける。どうするか迷っていると勘一が来、我南人が来る。我南人が、預かると言い雑誌に挟んで持って行く。
 池沢が真幸を連れて来る。芽莉依と両親も来る。夏樹と玲井奈と小夜も来る。そこへ、笈川さんと西元さおりさんが来る。西元は、池沢と同世代の女優・五嶋香奈江さんの娘で、本人も女優をしている。二人は池沢がいることに驚く。五嶋は池沢とよく似た女優だったが、早くに引退していた。食事をする。
 西元は石河が亡くなったことを知り、自分のヌード写真がどうなったか知りたくて笈川に連絡したのだった。青の所に全部渡ったことを知り慌てて来た。我南人は預かっていた写真をさおりに断り池沢に見せる。良い写真ですね。
 池沢はグラビアを見ながら、石河さんには情熱を感じた。情熱を持った人と仕事ができて幸せでした。
 突然、研人と芽莉依が、正座をして結婚するからと言い出す。言い直す。二人で北海道に行って下さい。芽莉依はこの家で預かります。芽莉依の父は単身赴任をするつもりだった。折角再婚したのに芽莉依がいるからと言う。
 研人は十八になったら結婚届を出す。飛び回って音楽を続ける。芽莉依は大学に行って国際的な仕事をする。全然一緒に過ごせないかもしれない。でも一生二人で生きると決めている。二人の気持ちをわかって貰うために話した。
 だから二人で北海道に行ってほしい。
 紺が、父親に相談するものだというが、研人は反対されるとは思っていない。
 勘一は、結婚のことは後回しにして、高校卒業までは芽莉依を預かりますと言った。
 サチと話せる紺と見える研人の三人で仏壇の前で話す。大ばあちゃんがずっと見えてずっと喋れるかんなはすごいな。

 秋 ヘイ・ジュード 十月 夏休みから芽莉依は花陽の部屋で一緒に暮らしている。
 かんなと鈴花は、箸置き作業を芽莉依ちゃんに任せている。置き場所は指示する。
 藤島の仕事をしている木島が久しぶりに来る。渡辺さんは仕事をしている。
 見慣れない男性が、古本屋を見、家を見、カフェを見て帰った。木島が不審に思いつけると野島久夫だと分かった。
 裕太と真央が、三月にこの家で結婚式を挙げたいとお願いに来た。野島久夫は真央の父親だった。
 近くで研人のライブがあった。麟太郎が来ていた。研人と麟太郎が話す。研人は花陽が、麟太郎が藤島のことを気にしてるようだと思っていることを知っていた。だから、二人は付き合っていると公言出来ないでいるようだ。藤島のことを知りたいならと紺を呼ぶ。
 麟太郎は花陽の大学費用の借用書を見た。ただの仲良しのおじさんでは済ませられなくなった。藤島の姉の事を話す。心中、高木、藍子への憧れ、そして花陽の幸せを願う気持ち。藤島が言う、重症のシスコン。このことを知っているのは、紺と青だけ、そして麟太郎。他言無用。
 ボン・麟太郎の父親がスタジオで倒れたと連絡が入った。紺が青に連絡して花陽を連れてくるように言う。
 病院で痛み止めを打ったボンに麟太郎が、花陽と付き合っていることを話す。ボンはカホンを使ってドラム代わりに三人でアンプを通さず演奏する。ヘイ・ジュード。年長者から若者への励ましの歌。恋人へのその気持ちを躊躇うなという歌詞。ボンは麟太郎に「ひょっとしたら俺の最後のライブかも」。
 藤島ハウスの管理人の高木さんが、身内では唯一親身になって心配してくれた独り身の叔母に、一緒に住んで最後の時まで面倒みて欲しいといわれたので叔母のところに行くことになった。勘一は、玲井奈一家に頼めば良い、明るくてよく気が付いてうってつけ。引っ越しも楽。裕太の結婚も決まって手狭だと言っていた。ちょうど良いと言う。
 
 
 
 
 

 


2022年8月22日月曜日

明日、野球やめます

明日、野球やめます 鳥谷敬

 

2022年8月20日土曜日

京都船岡山アストロロジー2

京都船岡山アストロロジー2 望月麻衣
 〜星と創作のアンサンブル〜

女子高生作家デビューの夢を目指して、神宮寺桜子は改稿に取り組み、完成した『柵』をWEB
で公開する。桜子の小説は編集者の目に留まり、大手出版社・春川出版から順調にデビューしたが、発売された本の売れ行きは思わしくない。続編の刊行も断られた。
 高屋から「星読み」の君は落ち込んでいる人にどんなアドバイスをするか?と聞かれた桜子は、売れなかった理由を知ろうとした。
 耕書出版の見学に行く。
 女子高生とアピールを断った。顔出しも断る。改題も断った。
 書店を見学する。
 文学賞を取った作品はプロモーションしてある。
 タイトルで中身を想像させる。タイトルは読者へのプレゼン。
 こだわることへの見極め。
 桜子はサイトで新作を書き、文学賞に応募してセカンドデビューを目指すことにした。
 売れる作品ではなく、自分なら絶対買う作品。
 
 高屋は耕書出版大阪支店に来て一年。中高生向け占い雑誌「ルナノート」担当。
 WEB小説投稿サイトから公式作家を四人選出し、アンソロジーを刊行することになった。高屋に任された。初めての書籍作り。恋愛作家が春、ホラー作家が夏、ミステリー作家が秋、ファンタジー作家が冬と決まった。
 タイトルと表紙を考えている。 

 桜子の新作タイトル「誰が僕を殺したか」
 桜子は、高屋に「耕書出版の営業の人を好きになった。彼女がいるか調べて欲しい」と頼んだ。

 柊が占星術師ヒミコだったことが知られ、柊に怒声を投げる人が現れる。柊の母と義父が小学生の柊を利用し、法外な金額をふっかけたり、詐欺紛いの手法を取ったことで被害者の会が出来、両親は逮捕された。柊は頭を下げる。
 高屋の母も信者で、一家離散した。
 柊とビールを飲みながら、母親から来る謝罪の手紙のことを話す。そして謝罪文はいらないから、近況報告を送ってと書くことにした。
 頭を下げないで隠れることもある柊は、その人が今でもヒミコに救われたと言う人に対してだった。
 
 桜子の誕生日、祖父母と柊がサプライズを計画、準備のために桜子を連れ出す役を高屋に当てられた。京都国際マンガミュージアムに誘う。イラスト展をやっている。
 表紙を任せる人が決まった。遠野宮守。カメラマンだった。タイトルも浮かんだ。「月夜の四ペンス」持ち物はコイン。
 家でのサプライズのはずが、場所は船岡山公園の桜まつりになった。店の出店は「さくら苺飴」マスターの考案。
 野外ステージで、常連さんのいろんな店のマスターのピアノ、トランペット、ギター、ベース、ドラムの「レディ・マドンナ」二曲目、桜子、柊、高屋もステージへ。「バースディ」桜子に花束、高屋にも船岡に来て一周年と花束を貰う。

 高屋は柿崎の彼女が、最近でき、三波だと調べた。桜子は、朽木だと言う。柊が朽木のお相手は三波だといった。そして柿崎のお相手は、相笠クリスだった。どちらも柊のアドバイスで仲良くなっていた。
 くりすが桜子に初めての編集者が恋の対象になりやすいと言った。桜子の初編集者は高屋だ。ないないないと打ち消す。

 月夜の四ペンスの表紙が出来上がる。会社での評判は上々。そして判ったことが、ファンタジー作家は朽木だった。彼プロ作家にはならないと言う。三波も知らなかったようだ。