2023年12月30日土曜日

秋山久蔵御用控十七 逃れ者

秋山久蔵御用控十七 逃れ者 藤井邦夫

 痴れ者 尾行る、尾行ていないで揉めている、武士と浪人を見た秋山久蔵は、武士を尾行させる。武士・牧野は小普請、役目が欲しくて旗本の使い走りをさせられていた。永井織部が目を付けた女を妾にしようとしていた。牧野は最後に、養子先の父母を斬り、永井の屋敷に打ち込み永井を討ち果たし、家来に殺された。

 恩返し 口入屋の吉五郎が料理屋で殺された。犯人を見た女中はみていないという。女中が昔、働いていた旗本の息子だった。女中は自分の貯めた十両を息子を逃がすために渡す。旗本は香阿弥に騙されて家を潰された。息子は香阿弥を殺し仇を討つというが、六年、息子は香阿弥を金ずるに暮していた。久蔵は捕まえた。

 逃れ者 十年前に逃げた霞の籐兵衛が戻って来た。仏具屋念仏堂に勤めるようは、笹舟に行く。ようは元霞の籐兵衛の手下の娘だった。籐兵衛から手引きするように言われる。ようは父親から何かあれば、笹舟の弥平治を頼るように言われていた。なかなか言い出せず佇むところを長次に見られ声を掛けられた。ようの告発で籐兵衛たちは捕まった。

 微笑み 大助は、湯島からの帰り、殺しの現場に行き合う。同心と岡っ引きは大助を捕まえようとする。大助は名前を名乗り逃げる。久蔵に話す。自分で犯人を探す。その場所で出会った女を探す。見付けた女は別人を殺そうとした。頼まれて殺す殺し屋だった。女に命じた男も捕まったが、二人ともお金を貰った殺しは認めたがその他のことは何も話さなかった。
 大助は、同心と岡っ引きに見付かった。秋山久蔵の息子だと言い、犯人が捕まったことを話す。


2023年12月28日木曜日

三島屋変調百物語九之続 青瓜不動

三島屋変調百物語九之続 青瓜不動  宮部みゆき

 青瓜不動 ちかのお産が近づいた頃、手習所の青野先生の知り合いの行然坊が三島屋を訪れた。行然坊の紹介で、高月村の洞泉庵のいねが、うりんぼ様という不動明王を背負ってきた。うりんぼ様がこちらの産婦の力添えをするというので連れてきた。富次郎が、黒白の間で話を聞き、富次郎がお祀りすることにした。
 うりんぼ様は、心に痛みを抱えた女たちが集まって暮す洞泉庵の青瓜畑から掘り出された瓜坊の顔を持つ不動明王だった。
 ちかが産気付いた時、富次郎は黒白の間のうりんぼ様の前に座った。
 呼びかけられひっくり返った先は、青瓜畑だった。うりんぼ顔の青瓜を摘んでゆく。山の麓から摘む。麓から大百足が追いかけてくる。富次郎はうりんぼたちを摘みながら逃げる。全てのうりんぼを摘み大百足から逃げる。山の上から海に落ちる。海に飛び込んだ。うりんぼに囲まれうりんぼが泣いている。富次郎は目が覚めた。ちかが女の子を産んだ。ほぼ丸一日掛かった。小梅と名付けられた。

 だんだん人形 百物語を止めないかと言っている伊一郎の紹介で、人形町の味噌屋・丸升屋の三男・文三郎が話しに来た。祖父から言い伝えられた話をする。祖父は四代目、丸升屋の初代・一文から伝わった話だった。
 北国のとある藩の味噌・醤油を商う石和屋に奉公していた。醸造元を訪ねて三倉村で騒動に巻き込まれた。三倉村は良い代官に恵まれ、米は採れないが村中で味噌を作り年貢を払った。土人形を作って売って村は潤った。突然代官が代わり味噌を石和屋に売らずに井達村の問屋に売れという。村長も大人の多くは代官所に連れて行かれた。水牢に入れられたという。一文と一緒に村を回っていた勇次と村長の妻は、一文と飛び猿とおびんを逃がすために役人の前にでて殺された。一文と飛び猿とおぶんは三倉村のことを城下、石和屋に知らせるために逃げる。
 おぶんを土人形を作る村に預け、一文は飛び猿と洞窟に入る。二人は死ぬ思いを何度もしながら城下に付き石和屋に告げる。代官の悪事が暴かれ処分が下されるまで一年掛かった。三倉村のほとんどが殺され、元の村には戻らなかった。おぶんも捕まり代官屋敷の奥に閉じこめられていた。
 おぶんが一文に武者の土人形を贈った。四度死ぬ思いをしたと言った一文に、おぶんはこの武者は四度一文を守よ、と言って。
 一文は文左衛門となり江戸で丸升屋を開いた。二代目の時、火事が起こりきらきらと光る物について行くと安全なところに逃げられた。十年後の火事でも、土人形が宙を舞い演舞をやりながら道案内をしてくれた。三代目の時は、近所の放蕩息子に金を貸してから出せになり合口で脅された時、放蕩息子の手首と眉間に何かが突き刺さり事切れた。人形の短槍だったが、見たのは丸升屋の者だけだった。四代目の時、寮を買い、寮に泊まった時に、盗賊が押し入った。土人形が九人の盗賊を殺し、これで勇さんのところに行けると呟き、粉みじんに砕けた。

 自在の筆 富次郎は骨董店〈古田庵〉で、出会った絵師・栄松師匠が、後日、古田庵に押し入り、古田庵で預かっていた筆を持ち出しばらばらにし、食べて死んだことを聞いた。
 富次郎は店主に聞きに行く。
 自在の筆と言う。あの筆で絵を描くとすごい絵が書け、和算の術式を五才の子が解いてしまうっという。ただ廻りの者の生気を吸い取る。妻の目から血を出し右目がつぶれ、左目が飛び出る。正気を失い十日目に骨と皮になって亡くなった。臨月の娘が産気付き、三日三晩苦しみ亡くなった。跡取り息子、嫁、内弟子、女中と亡くなった。そんな中で栄松は絵を描いた。筆を手放せば良いと分っていても手放せない。幼なじみが得々と説く。手を放した筆を火ばしで挟み、紙箱に納め紐をかけ蝋で封印した。それを古田庵は預かっていた。
 素晴らしい絵が描けたと思っていたが、見てみると勘違いだった。稚拙の線、汚らしい色、異臭を放っていた。栄松は、自在の筆を退治した。
 富次郎は絵師に憧れていた。百物語を聞いて絵にしていた。この話を聞いて絵を描くことを止めようと思った。

 針雨の里 八十助が大番頭になった。伊一郎から羽織、着物、襦袢を貰って、それを着てちかの赤ちゃんを見に行った。
 門次郎は捨子だった。捨子を育てて鳥の羽毛と卵の殻を売って生計を立てている村があった。木を登り木を渡り採るから十七才まで働く。村はお金を貯めており、子供らが村を出ていく時に纏まったお金を渡す。躾けと字が書け、算盤が出来る。お金を貰って独り立ちする。
そんな村に門次郎はいた。十七才になった時、門次郎は村にいたいと言う。村と町を行き来する増造の後を継いだ。
 そんな村に大噴火が起こった。村人は子どもを助け雨と土石流と溶岩み飲み込まれる。村人は風舞さんだった。風舞さんの化身が村の衆という身分を得て富を得られるまでの仕組みができていた。
 富次郎は泣いた。描きたい。


2023年12月24日日曜日

東京バンドワゴン⑱ ペニー・レイン

 東京バンドワゴン⑱ ペニー・レイン 小路幸也

 冬 カフェの向こうで紅茶も出番
 亜美の弟・修平の妻・佳奈と我南人が、近所のロケをする。芸名・折原美世の新しく始まるドラマのモデルになった花屋が近所にある。近所の紹介がある。(隣が元風呂屋・松の湯になっている。)
 二十年前、サザンクロスという喫茶店がなくなった。青の一才年下の浦田麻理・昔は南麻理が、〈日英テレビ〉を辞め、祖母と母と共に元のサザンクロスの場所に、紅茶とスコーンの店を開く計画があることを話す。
 同じ時期、離婚した父親も近くの居酒屋で働いていることが判る。父親は連絡を取らない。

 春 恋の空き騒ぎ
 三月、恒例のひな祭り
 四月 かんなと鈴花は小学三年生、芽莉依ちゃん大学二年、花陽大学四年。
 三月半ばの金曜日 青の実母・池沢百合枝が、三浦のかずみが住む老人ホームに引っ越す。
勘一と我南人と青が行く。
 同じ日の夕方、マードックと藍子がイギリスから帰国する。
 土曜日、二階の増谷家と三階の会沢家の引っ越し。〈藤島ハウス〉から
 日曜日、藤島ハウス内の引っ越し。
 小料理屋〈はる〉が、隣の空家を買い取り、店を広げることにした。夜だけではなくランチもすることにした。隣の古い二階の部屋に、バンドワゴンでバイトしている花陽の友達・君野和が、坂上元春と住むことになった。家賃なし、光熱費だけ。〈はる〉でバイトする。真幸のベビーシッター。好条件だった。
 研人のバンドのサポートメンバーを紹介される。鈴花のピアノの先生・三輪さんの娘・華さん。大学生。近所の佐藤大河とディオを組んで活動中。大河は芽莉依と高校が同じで知り合いだった。
 
 夏 答えは風と本の中にある
 三浦に海水浴。
 研人はイギリスでキースに貰ったワンボックスカーを日本に持ち帰った。
 和ちゃんは〈はる〉の二階に住むようになった。
 寺や神社の賽銭泥棒だと思った若者が、茅野さんと一緒に賽銭泥棒を捕まえた。茅野さんは、若者を尾行していた。彼・岡部隼人は、古文書や古本が大好きで、神社で話を聞いたりし廻っていた。賽銭泥棒を許せないため見回りをしていた。尾行していた茅野さんと一緒に捕まえ警察へ。
 茅野さんは、岡山の妻の実家に移り住むことにした。何かの縁だと、自分の蔵書、二千冊ほどを隼人に譲る気になった。バンドワゴンに持ち込もうと思っていたが、倉敷に実家がある隼人に譲るから古本屋をやればいいと言った。

 秋 ペニー・レイン
 佳奈のお腹に赤ちゃんができたようだ。人気女優なので発表はもう少ししてから。
 浦田麻理のお店が9月にオープンした。〈紅茶とスコーン〉という名前。
 十月、猫のベンジャミン逝く。
 茅野さんは岡山に転居した。
 隼人は、倉敷の山の中の廃寺を譲られ手に入れた。古本屋をしながら文化的事業をするらしい。
 近所で不審火による火事が三軒あった。木島は三軒の火事場で、隣の元風呂屋でアートギャラリーをしている高見を見たと言う。消防士の行沢は高見とは同級生だった。高見に聞く。放火はしていないと言いながら、ビルが火事になり保険金で助かった知り合いの話を聞いたと話す。元風呂屋の建物を残したいから手に入れたが、どうにもならないところに来ている。売れば建物が壊される。バンドワゴンに買ってくれないかと頼む。
 青が買うことにした。青は家族で自分だけが何もできていないことに不甲斐なさを感じていた。元風呂屋で、クリエータービレッジを作る。資金は、池沢さんと一緒に出た映画のギャラ。映画の全ての収入のパーセンテージで貰っていた。池沢さんは全てを青に渡していた。青にやることが見えてきた。
 犬を散歩させていると、小猫が付いてきた。るうと名付けた。
 
 
 

 

2023年12月18日月曜日

源氏物語 中 

 源氏物語 中 吉屋信子

 花散里 楓刀自の源氏物語の講義は続く。
 ジョー葉村の講義出席はないが、鮎子へには、ブローチが贈られたり映画に誘ったりする。藤子が付添映画に行く。容子は、祖母の講義ノートを清書するぐらいで身体の養生をしている。
 源氏25才。源氏の父・桐壷院の女御・麗景殿の妹が、花散里。帝が亡くなられた後、係累のない麗景殿女御姉妹の生活を庇護している。
 ジョー葉村が、また帰って来ると言い、アメリカに帰国する。

 須磨 源氏26才の三月から27才の三月。朧月夜との恋愛事件から身辺に圧迫を感じ須磨へ隠遁する。
 明石 源氏28才
 藤子の夫・彰の消息が分る。もうすぐ帰国できるだろうという便りが届く。
 源氏、明石入道の邸の客となる。秋、十三夜、明石と関係ができる。紫の上に知らせる。
 七月、源氏京に帰る。

澪標 源氏28才秋から29才の末。
 二月、朱雀帝は、元服した春宮12才に御位を譲る。誰も知らないが新帝の実父は源氏。源氏は内大臣になった。摂政は、亡き葵の父を推薦する。太政大臣になる。明石の君が女の子を産む。源氏は乳母を遣わす。
 御息所が亡くなる。娘・元斎宮の今後を源氏に託す。源氏は帝の女御に内裏に入れる。

蓬生 源氏28才〜29才初夏頃まで
 常陸の宮の息女・末摘花は、荒れた邸に住んでいた。源氏は花散里を訪れる途中、末摘花を思い出し荒れた邸に寄る。その後、邸内の手入れをしたり、蓬を刈らせ、生活の面倒をみる。老いた女房達のお仕着せまで気を配る。二年後には二条院の近くの新しい邸に移る。

関谷 源氏29才の秋
 空蝉は桐壷帝崩御の翌年、夫と共に常陸に赴く。京の帰る逢坂の関で空蝉一行と源氏が出会う。源氏は手紙を送るが、空蝉はすげない。そのうち常陸介は病に倒れる。継子に恋され空蝉は出家する。

 筍ご飯を作っている時、藤子の夫・彰が帰って来た。
 大貝夫人の秘書役を藤子から鮎子に代わる。
絵合 源氏30才春
 朱雀帝が思いをかけていることを承知で、源氏は元斎宮の幼帝に入内をきめる。朱雀帝は特別注文のお祝い品を贈る。梅壺の女御。
 梅壺の女御と弘徽殿の女御、絵合せが行なわれる。最後に源氏の須磨の絵日記が出され梅壺の勝ちになった。
 
松風 二条院ができ、西の対に花散里、東の対に明石の上と姫を住まわせるつもりで明石を呼ぶ。明石は源氏の嵯峨御堂の近く、大井川のほとりの別荘に住んだ。明石入道は隠遁生活に入る。

薄雲 源氏31才冬〜33才秋
 明石の姫を紫の上に託す。
 葵の上の父・太政大臣が亡くなり、藤壷が亡くなった。帝は、老僧によって陛下の父親は源氏だと知らされる。

 朝顔 桐壷帝の弟・桃園式部卿の娘、賀茂の斎院となる。七年。父親の訃により役目を退く。源氏32才。
 朝顔は、父の妹・女五の宮と桃園邸に住む。源氏は朝顔の下を訪ねるが、靡かない。

 乙女 源氏の息子・夕霧。12才元服。六位。大学寮で学問をする。書斎を花散里の東の院。夕霧は一緒に育った雲井の雁と恋仲になるが、父親・頭の中将・現内大臣に反対される。
 皇后は前斎宮になった。
 八月、六条院落成。東南源氏と紫の上、北東花散里、西北明石、南西中宮。十月明石が移る。
  
 孫たちの父母が帰国出来る中に入っているという情報がもたらされる。

玉鬘 源氏34才から35才の末
 夕顔の忘れ形見・頭の中将の娘。どこに行ったか分らなくなっていた娘が乳母に守られ京に帰って来た。長谷寺参りをした源氏の使用人と出会い源氏が引き取った。玉鬘。夕霧は姉だと思っている。

 両親が帰って来た。夫妻は疲労のため大貝夫人の人力で、容子が付添い強羅の宿へ行った。
初音 36才正月
 花散里の住まいには夕霧中将、玉鬘がいる。

2023年12月15日金曜日

源氏物語 上

源氏物語 上 吉屋信子

 牛込に高倉良英氏の邸宅があった。太平洋戦中に財務官として満州に赴任。雪子夫人も同伴した。留守を預かるのは母、楓刀自と三人の孫娘だった。
 長女・藤子は嫁いでいたが、良人がジャワに銀行員で赴き、留守の間実家に帰っていた。
 次女・容子は、女学校を終え学徒勤労に加わっていたが、肺尖にかかり勤労奉仕を医師から禁止された。
 三女・鮎子は女学校に在学中。寄宿舎があった。
 二月、容子の養生もあり、鎌倉山の高倉家の別荘に疎開することにした。
 家具のほとんどを運べず、トラック一台で運べる物を運んだ。楓刀自の蔵書は鮎子が土曜日に鎌倉山に行く時にリュックで運んだ。湖月抄、源氏物語五十四帖が六十冊の写本にまとめられていた。
 三月十日、高倉家は灰に化した。父親の蔵書、家具、祖母の秘蔵書・古典の写本類も殉じた。
 八月終戦を迎える。
 翌三月、預金封鎖、新円切り替え。没落した。
 鮎子は横浜の商館で働く。
 生活は苦しく、物を売るしかなかった。
 隣の山荘に未亡人の女実業家が越してきた。製罐業で成功した人だった。大貝夫人が挨拶に来た。夫人は高倉を知っており恩人だと言った。夫人は、藤子に夫人の秘書をお願いした。
高倉家の生活は安定した。

 楓刀自が、大貝夫人と孫三人に、土曜日の夜、源氏物語の話しをすることになった。
  
 秋、光琳の香包み、掛け軸、李朝の壺に小菊、千鳥の袖香炉、〈誰ヶ袖〉香木の中で始まった。桐壷。

 大貝夫人は子どもがなく、ある華族の主人と小間使いの間に出来た子どもを、実子として届けた。康男は慶応へ行き、戦後結婚し、工場も任せ東京の本邸も渡し鎌倉に移り住んだ。

 平安時代の絵巻物を見る。
 帚木 
 帚木続
 空蝉
 藤子は大貝夫人と東京へ行き、帰りが一人になった。自動車を運転するジョー葉山青年と知り合う。お茶に招ばれ、礼を持って藤子と鮎子は出かける。
 夕顔 
 ジョー葉村も源氏物語の聴講生になる。
 若紫 二夜。
 末摘花 大貝夫人風邪で欠席、ジョー葉村、名古屋へ出張
 紅葉賀
 刀自風邪でお休み
 花宴
 大貝夫人、孫が産まれ光と名付ける。
 葵
 賢木
 息子夫婦、孫の夫の消息も不明瞭、一家は晴れ渡った気持ちではないが、刀自が源氏物語を初めてから中心に目標が出来、空気に希望を持たせる物になっていた。

2023年12月12日火曜日

体質は3年で変わる

 体質は3年で変わる 中尾光善

2023年12月10日日曜日

柳橋の桜〈四〉 夢よ、夢 

柳橋の桜〈四〉 夢よ、夢 佐伯泰英 

  波乱万丈の旅を経て、二人は江戸に帰って来た。

 二人の祝言が挙げられる。
 コウレルが描いた、長崎から江戸までの素描画五十五枚、真ん中に「花びらを纏った娘」と「チョキ舟を漕ぐ父と娘」が展示された。十六年前の柳橋の桜と三才の小春。広吉と小春の絵だった。北州斎霊峰絵師が白壁一面に小春の花嫁姿と小龍太の紋付き袴姿を描いた。

 小春は船頭を続けることを決めた。
 小龍太は、自分の棒術が大内家が教えてきた香取流棒術ではなくなっていることを知る。携えていた刀を返した。自分は何をしようか迷う。
 長崎会所から貰った刀を差す。江ノ浦屋五代目彦左衛門が隠居し、海外貿易、長崎会所とおなじものを江戸会所として作ろうとしたが、性急過ぎた。長崎会所の江戸店ということで始められた。小龍太は彦左衛門の右腕として長崎に向かった。

2023年12月8日金曜日

マンションフォンティーヌ

マンションフォンティーヌ 小路幸也 

 羽見 晃  29才 小説家 
  膠原病になった晃は、家で小説を書き、新人賞を受賞し小説家としてデビューできることが決まった。会社を退職した。マンションフォンティーヌに移った。
 
大家が日本で六十年暮す、日本国籍を持つフランス人、リアーヌ・ボネさん・如月理亜音78才。終戦に父が殺され、母と如月岩雄の助けで日本に来た。国籍を持つため岩雄と戸籍上の結婚をした。淋しがるためフランスで住んでいたマンションと同じマンションを建てた。中庭に噴水が有る。全ての部屋が中庭に面している。十部屋あり大家さんと管理人さん以外に八部屋ある二階建てのマンション。

 管理人は、嶌谷拓次45才。元暴力団員、刑務所にも入った。暴力団員を抜けてからの刑務所入は、正義感からの喧嘩だった。
マンションの清掃、点検補修大好きで、自分の仕事にぴったりだと思う。

 貫田慶一郎33才 海外送金所勤務・通訳 父親は日本人、母親はフランス人。フランスで三十年暮らし日本に帰ると父親の家は売られていた。日本に来て三年。英語、ドイツ語、中国語ポルトガル語にスペイン語も話せる。

 坂東深雪58才 大学文学部教授 このマンションに住んで三十年になる。死ぬまで住むと言う。羽見晃の名を知っていた。受賞作品も読んでいた。

 野木翔44才 花丸不動産ロイヤルホーム部長 野木はこのマンションに住んでいない。このマンションに住む人を斡旋する唯一の人。リアーヌさんに管理人に嶌谷の相談を受けた。野木は嶌谷を知っていた。家も近く、小中高と同じ、中学校では野球部の一つ後輩になる。家庭の事情も知っていた。妹も知っている。

 鈴木幸介35才 大日印刷株式会社第一課営業・菜名38才 株式会社集円社出版校閲部夫婦
幸介は無精子症、菜名は病気で取ったので子どもが出来ない夫婦だという。菜名の妹は奈々子。
 
 市谷倫子28才 蓼凪建設庶務一課勤務、坂上麻実奈23才 ファッションブランドショップ店員
 北海道出身、同じ小学校校区。偶然羽田空港で会い、交流が深まり一緒に住むようになった。
 麻実奈は、空手三段、高校生の時、国体で優勝している。二人はレズビアン

 三科百合27才 いとファクトリー縫製・パタンナー・三科杏5才 年長さん
 母親が孤児、母親が産院で百合を産んで亡くなった。何も判らず母親の名前・三科百合と名付けられた。百合は施設で育ち、専門学校に行き、寮住まいだった。アルバイト先で知り合った人と結婚し子どもが出来た。彼はDVだった。気がついた友人が助けてくれた。助言を求めた人が会社の上司・野木だった。野木がこのマンションに連れてきた。このマンションは、こういう時のために一部屋か二部屋空けて有る。離婚が成立した。

 みんなの事情は知っていた。嶌谷が、百合を探しているらしい男を駅で見かけていた。
みんなで芝居をする。百合と嶌谷がカップルを装い彼を諦めさせようというものだった。
 麻実奈が駅で彼を見付けた。用意した二人は駅に行く。彼の前を通り電車に乗り、彼の行動を見る。全てを麻実奈が動画で取る。彼は諦めたようだ。

 みんなの話を聞いて、菜名は元同僚の編集者を思い出した。千葉出身、養子になる前は嶌谷、長いこと会っていない兄がいると言っていたことを。橋本杏子。羽見の編集者だった。
 そろそろと杏子は、羽見のところにやってきた。兄のことを訪ねられ、ここの管理人だと教えられる。兄は杏子のことを思い近づかなかった。杏子も空いている部屋に住むことになった。
 

2023年12月5日火曜日

源氏物語アンソロジー 君を恋ふらむ

 源氏物語アンソロジー 君を恋ふらむ

 やんちゃ姫玉かつらの巻 田辺聖子
 私十五才、源氏の素敵なお邸きらびやかな六条院に来て三ヶ月経った。流し目で見られると背中がゾクゾクする。私を連れてって。筑紫へ早く。

 髪 瀬戸内寂聴
 横川の僧都が御遷化されたと聞いたのは陸奥の海辺の村だった。
 宇治の院で死にかけた女を助けた。後にもあのまま死なせて下さっていたらと言われ、出家を願う人。
 助けた時の濡れそぼった髪の感触、目に焼き付いた清浄の裸身。
 僧都が出家させたことの後悔の手紙を書かれたことで、彼女が出家を貫けまいと感じ、僧都の手紙は仏への裏切りだと思い、横川を出奔した。長い流浪の中で、僧都を生き菩薩と言う認識に至った。
 彼女は薫大将と匂宮の愛を受け板挟みに悩んだ結果だった。還俗せず、出家を遂げきり五年後流行り病で亡くなったと聞く

 桜子日記 永井路子
 和泉式部に憧れ屋敷に上がった。私を桜子と呼んで下さった。道貞との間に娘がいた。道貞が。伊勢に行く時、式部は行かなかった。
 弾正宮為尊親王が来られる。弾正宮は亡くなる。
 弟・帥宮敦道親王が通う。帥宮も亡くなる。
 弾正宮と帥宮に付いていた桜子のお相手・桂丸も亡くなった。
 帥宮との思いでを書きながら、藤原保昌ともお付き合いしている。

 朝顔斎王 森谷明子
 娟子は元斎王。父親が亡くなり斎王から下りる。俊房がたびたび訪れる。俊房が訪れる度、いろんなことが起きる。鳥の巣が壊されたり、犬のしっぽが投げ込まれたり。少納言が娟子に付くようになった。
 一滴も雨が降らない夏、帝から娟子に祈祷せよと言われた。数日後、貴船で祈祷を行なった。夜雨が降った。
 朝、朝顔が根こそぎ引き抜かれた。俊房は毎日訪れる。
 火事が起きた。少納言が娟子を非難させた。娟子は鎮火の祝詞をあげる。「鎮火の祝詞を捧げるとはゆるさない」の声が聞こえた。俊房が駆けつけた。
 屋移りの日、少納言が現れ、今日無事に屋移りが終われば全てを話すと言った。
屋移りの途中、液体を掛けるという女が現れる。少納言が抑え、娟子は、構うな と命を下し新しい屋敷に移る。
 少納言は、現れ全てを語る。いろいろ悪さをしていたのは次の斎王・現斎王・三輪だった。俊房が好きで、斎王・娟子の元に行く俊房が、自分が斎王になったから来てくれると思っていた。俊房が行くのは娟子の所だった。抜け出し娟子に悪さをした。そして調べるために少納言を娟子の下に置いた。少納言は三輪から娟子を護るためにいるようになった。
自分が雨ごいをしても雨が降らなかった。帝は娟子を頼る。三輪は火を付けた。そして汚れた血を掛けようとした。
 少納言は、俊房に娟子に代わって歌を残した。
 君こずは 誰に見せまし わがやどの かきねにさける 朝顔の花 読み人知らず

 照日の鏡ー葵上 澤田瞳子
醜いが理由で照日の前に雇われた。吉野の山中に二年籠ったよりまし憑坐として。
照日の梓の法でも葵上は助からなかった。生霊の怨念がわが法を上回っておりました。
生霊などいないのではないか。何もかも承知の上で生霊がいると思いたい人に寄り添っているのではないか。

 栄華と影と 永井紗耶子

2023年12月3日日曜日

たすけ鍼③天神参り

 たすけ鍼③天神参り 山本一力

 天保六年 1835年 三月 いまりは、深川茶屋の老夫婦の後押しを受け、父・染谷の後を継いで鍼灸を習うことを決めた。辰巳芸者の検番にも許しを貰い父の許可ももらった。六ヶ月間、唐人の宋田兆師のもとで武術を教わることになった。六ヶ月で修了となった。
 いまりは難癖をつけてきた男二人を護身術で伸した。札付きだった。
 いまりを探している男がいた。いまりのことを調べている。
 住吉屋の表向き稼業は駕籠屋だが、賭場が本業だった。そこの二人を手玉に取られたため、
住吉屋の主・虎蔵はいまりへの仕置きを考えていた。代貸は、元締の大木尊宅の検校の代貸役・勾当の元徳に、虎蔵が染谷の娘に手出ししようとしていることを話す。
 尊宅は、虎蔵に、恩ある染谷の娘に近づけば、染谷のはたすけ鍼だが、わしが拵えた始末の針で始末すると脅した。

 いまりは庭先の離れに手を入れ、稽古場を作った。年配女性を集め身体の筋を伸ばしたり関節を回したりする。稽古着を作った。六人が集まった。十二月に始まって三月まで続ければ、手が痛みなく上がるようになるという運動だった。

 いまりの兄・勘四郎は染谷の仕事を継がなかった。父親の友人・昭年先生の娘・さよりが好きだった。一度嫁いで帰ってきている。いまりにさよりの気持ちを確かめて貰おうとした。ちょうど、さよりに医者からの縁談があり整ったところだった。
 勘四郎は書を習いたく卜斎先生に師事した。先生と行った大豆屋で算盤を弾いたことがあった。大豆屋から娘の縁談相手と卜斎を通して話を持ち込まれた。勘四郎は話を断りに行く。店で娘の書いた札を見た。卜斎に断りを言った後貰った半紙の言葉を思い出した。
  小人は縁に気付かず    頭の中で半鐘がなった。
 大豆屋に出直しますと言い、雨の外に出た。大八車がひっくり返り、怪我人が出た。勘四郎はずぶ濡れになりながら船宿へ連絡する。勘四郎は黒羽二重の紋付きと仙台平の袴を脱ぎ、紺の腹掛と股引に着替えた。弦太が漕ぐ船で染谷のところに草太を運ぶ。
 勘四郎は船宿・岩戸屋の主・葦五郎夫婦から、大豆屋のこと娘・しおりのことを聞く。
 勘四郎は洗い張りが仕上がってから大豆屋さんに行くことにした。
 弦太はいまりにお熱のようだ。
 


2023年12月1日金曜日

ねこ背をぐんぐん治す!基本ワザ

 ねこ背をぐんぐん治す!基本ワザ 原幸夫

2023年11月30日木曜日

あずかりやさん③ 彼女の青い鳥 

あずかりやさん③ 彼女の青い鳥 大山淳子

 ねこふんじゃった 母と娘がぬいぐるみのキリンを預けた。お金を出さずにおはじきを出した。帰り際、蚤がいると大騒ぎして帰った。商店街で、あずかりやに蚤がいることが話題になり、客が来なくなった。そのことを相沢さんが教えてくれた。相沢さんは店前に、蚤注意と書いた紙をはがしていた。
 キリンを預けた娘の父が来た。まだキリンはあった。薄汚れていたが奇麗に洗ってあった。主は蚤がいたと言われたので洗ったと言う。元妻は娘を預けたのかと聞いた。ここに預ける人は預けるものが大切だからきてくださると思っていると言う。

 スーパーボール 毎日百金で三個づつ買い物をする年寄。百金が閉店し、あずかりやへ行く。二日に一回、以前買った物を預けに行き、取りにいかない。部屋の中が片づいた。押し入れに中のデパートの未開封の物を預けに行く。四つの押し入れも片づいた。最後に以前、自分が預けたものは何か聞いてみる。記憶障害があった。
 十三年前に、手紙を預けていた。自分に買い物依存症があるため怒って家を出ていったと思っていた姉からの手紙だった。主は残してくれていた。手紙を置いて、主は外へ行った。
 遠藤ヨシノ。主が覚えていた名前。ヨシノは姉からの手紙を読み、買い物依存症が姉の病気だと知った。アルコール依存症にもなって、医療刑務所に送られ、医者と結婚したと連絡してきていた。結婚したきになっているということか。
 姉に会いに行こう。

 青い鳥 あずかりやが休み、店主は留守。相沢さんが、猫に餌をやるため鍵を預かっている。店の前のハナミズキにルリビタキという青い鳥が止まっている。女の子が店に来る。相沢さんと一緒に入って宿題をやり出す。 

 かちかちかっちゃん 里田ぬるま、デビュー三十周年で芥川賞を受賞した。どなたに報告しますかと言う質問に、名前を知らないから「青年A」にと答えた。
 里田は「刑事あめんぼ」シリーズを出している。他の物を書いても編集者に相手にされない。昔書いたどうしても読んでほしい「かちかちかっちゃん」を出す。読んでくれない。里田はあずかりやを訪れた。店主と話している途中、少年が本を預ける。刑事あめんぼだった。試験があるのに手元にあると読んでしまうので、試験が終わるまで預けると言う。
里田は店主とぬるまに付いて話す。ぬるまの話には父親が存在しないと話す店主に、里田は持っている紙束に書いてある話の内容を話す。店主は泣きながら預かれないと言った。里田は持ち帰り、編集者に送った。編集者は会社と闘った末に、ライバル出版社に持ち込んだ。編集者は会社を辞め、里田の妻になった。
 次作の構想は?と聞かれて「刑事あめんぼ和歌山へ行く」と答えた。

彼女の犯行 古い時計を修理に出している間に、「あずかりや」の時計は、金属で出来たスタイリッシュな時計に代わった。その時計が盗難品だった。警察が来て押収する。時計を預けたのは桜原さとみだった。彼女はいろいろ預けるが取りにきたことはない。警察は盗品がないか預けられている物を調べた。ある日突然捜査は終わった。盗難届けが取り下げられた。
 少女が、手紙を預けに来た。半年後に彼女が取りにこなければ投函してほしいということだった。彼女・一ノ瀬はずみは再発した病気の治療が始まる。自分が居なくなっても好きだったことを知らせたいと手紙を書いていた。
 和装美人が来た。桜原さとみと名乗る。偽名だったさとみは、彼女の家で、貰った物を預かりやに預けていた。彼女に時計を贈った男が時計が無いことに気付き盗難とどけを出したのだった。店主は対等でいたいがために手元に置かず預けていたと言った。桜原は時計を老いて行った。彼女と話してみると言って。彼女の名は沙世
 時計が残った。店主は、時計を気に入っている相沢さんに預けた。
 
  

2023年11月27日月曜日

あずかりやさん② 桐島くんの青春

あずかりやさん② 桐島くんの青春 大山淳子

 プロローグ 宇宙飛行士になった男性が、中学一年生の最初に、変わったお店、あずかりやさんに預けたい物はと聞かれた先生に手紙を書いた。あの時答えたランドセルは、嘘でした。先生に、本当のことを伝えてすっきりした。
常にあったあずかりやの存在、いつか店主と話してみたい。 

 あくりゅうのぶん 語り手は机。職人に作られた檜の無垢材の机。倉庫の台になっていた文机をぶん机と言う男が買った。彼は机をぶんと呼んだ。芥川龍之介に憧れ小説を書いている一人暮らしの男だった。友人からあくりゅうと呼ばれた。小説は書いていない。
 三十才、母親が帰るようにと迎えに来る。ぶんを質屋に預けるつもりで、行った先は、一週間前に開店した、あずかりやだった。
 あくりゅうは、7時の開店時間、11時から3時までの昼休み、3時から7時までの開業時間を決める。開店中はのれんを出すことを提案する。店主・17才の盲目の少年と話し、ぶんを二百日預けることにし、二万円と机を置いて、芥川龍之介と名乗って帰った。
 家の権利書、カブトムシ、古時計、粗大ごみいろんな物が預けられた。二百日が過ぎた。あくりゅうは来なかった。ぶんは店に出され店主が客を待つ机になった。ボンとなる古時計も店にあった。
 若い女性が、店主に内緒で寝泊まりした。七日いて七百円を置いて出ていった。
 相沢さんが点字本を持って来た。店主は二十五才になった。
 ぶんはあくりゅうが訪れた夢をみた。彼は教師になっていた。

 青い鉛筆 中学一年生の正美。3才下に身障者の弟・直樹がいる。転校してきたクラスメート・織田さんの青い鉛筆を盗んでしまった。鉛筆をあずかりやに三日分三百円で預けた。じっとしていない直樹が、星の王子さまをじっと聞いているという。
 織田さんに鉛筆のことを話しあずかり屋さんに取りに行く。途中で、祖母に貰ったお守りを織田さんにあげる。一緒に行った織田さんは鉛筆をまた預けた。そして、あの鉛筆は由梨絵から盗んだ物だと言った。正美が風邪で学校を休んでいる間に、織田さんはまた転校していた。由梨絵から無くした鉛筆が落とし物箱に入っていたと聞いた。由梨絵の鉛筆に直樹がかんだ後が付いていた。あずかりやさんに行った。織田さんはチェックの布カバーが付いた外国語の文庫本を預けていた。受け取った。
 二十年後、正美は、亡くなった祖母の家に一人で住んでいる。ファミレスで雇われ店長をしている。父は高校の時、家を出た。母は働くため直樹を施設に預けた。月一回母と直樹がファミレスに来る。時々家族をするのは楽なのだ。
 母が直樹を預けたことがあると言う。そこで星の王子さまを見たのだ。直樹は、母に音読され全てを暗記していた。正美は母と弟と一緒に住むことを考えた。

 夢見心地 あずかりやさんのガラスケースの中のオルゴールの話。
 祖父は時計職人、父は途中でオルゴール職人に転向。ゼムスは三十五才の時、スイスでこのオルゴールを作る。百二十年前。シューマンの子どもの情景の7番、トロイメライ(夢見心地)。もうすぐ出産の奥さんへのプレゼントだった。出産がうまくゆかず、奥さんと子どもは亡くなった。一年後、時計職人に戻った。二十年後、作らなかったオルゴールを再び作る。妻と同じ名前の7才の少女の誕生日祝いに。乙女の祈りを音源に使われたオルゴールはでき上がったが、小火で焼けた。新しい美しい象牙細工のスミレの上品な木箱が作られ音源を入れる時、昔のトロイメライが入れられた。乙女の祈りの音源は、前の箱に入れられた。
 少女は耳が聞こえなくなっていた。ゼムスは共鳴台に手を乗せて聞くことを奨める。音が伝わった。二ヶ月するとクララは聴覚を取り戻した。二十二才のクララは調律師と駆け落ちした。クララはオルゴールを持ち出し古道具屋に売った。オーストリアの店で日本人に買われた。大事にされ奥さんの病院のお見舞いにも行き、看取った。旦那さんはオルゴールの引き取りてを探し、五十年の約束であずかり屋さんに預けられた。時々鳴らされる。

 海を見に行く 桐島透、高校三年生。陸上部で百と走り幅跳びの記録更新を狙い、東大の法学部を点字受験するつもりで頑張っている。音楽科の河合都を幸福のピアニストとこっそり呼び憧れている。
 父が来た。家を売ると言う。透はあの家が好きではなかっただろうという父。7才の交通事故後、ランドセルを使わないまま盲学校の寄宿舎に入った。家に帰っても話をしない母親にどう接していいか判らなかったから家に帰らなくなっただけ。北海道に転勤になった父は、いつ東京に帰るか判らないと言う。マンションを買う予定。透は母が帰られなくなると言う。
 石永小百合という転校生が入った。彼女に図書館への案内を頼まれ出かけると、鎌倉の由比ヶ浜へ海を見に行きたいと言う。彼女は今はうっすら見えるらしい。砂浜で脱いだ靴を見付けられず時間が掛かった。見付けたお礼に彼女は顔を触って見せてくれた。彼女の顔は、透が想像していた河合都の顔だった。
 透に東大受験を奨めた先生、柳原先生が亡くなった。ホームから落ちた杖を付いたおばあさんを助けホームから飛び降りた。先生はいい人だったけど死んでしまったのは大失敗だと思う。
 明日から夏休みという日、音楽室で始めて河合さんと話した。いっぱいあるという石鹸を貰った。大好きな曲だというトロイメライを引いてくれた。透は、トロイメライを聞き、急に大人になった。子どもの頃の情景を思い出した。映像として思い出せる唯一の場所は、生まれ育った家だった。家に帰ろう。東大も卒業もどうでもよくなった。
 
 

2023年11月24日金曜日

江戸人情短編傑作選 御厩河岸の向こう

江戸人情短編傑作選 御厩河岸の向こう 宇江佐真理 菊池仁編

御厩河岸の向こう ゆりの八才違いの弟・勇助は、前世を覚えていた。年を取ると未来が判っていた。ゆりが婚礼を迷っていると幸せになるよと背を押した。自分が十六才で死ぬことも伝えて来た。ゆりは弟の死をゆっくり看取った。

蝦夷錦 古着屋・日乃出屋の主・喜十の店に、着物をハギにした変わった生地を持って来た者を断った。後日、隠密廻り同心からその着物を探すように言われる。端布屋を廻り探し出すが売られていた。買ったのは大津屋の娘だった。人形を抱き本当の赤子のように話しかける娘だった。盗まれた物で買い取りたいと言うが、相手にされない。喜十は娘が、気が振れた振りをしていることを指摘する。娘は手放した。同心に渡す。

仲ノ町・夜桜 岡っ引きをしていた夫が亡くなり、息子が結婚する。とせは家を出て働くことにした。吉原の縫子だった。住み込みだった。

秘伝 黄身返し卵 臨時廻り同心・椙田忠右衛門家の嫁・のぶは、離婚を考えている。忠右衛門は舅、伝説の同心だった。姑はふで、口調ほどきつくはなかった。六年経つが子どもはいない。夫・正一郎の大失恋の最中、ふでが連れてきたのぶと結婚させられた。それを知ったのぶは、この家には合わないと思っている。

藤尾の局 元大奥で暮した藤尾の局・梅は、呉服屋の娘。両替商「備前屋」の後妻に入り、二人いる兄弟とうまくいかないまま。娘・利緒がいる。兄弟は身を持ち崩し勘当された。主が倒れた。梅は、兄弟に意見し、売り言葉に買い言葉で実家に帰る。主が持ち直し兄弟は梅を迎えにくる。かんしゃくを起こしてくれていい。初めて意見した梅に兄弟はそう言った。

赤縄 呉服屋の一人娘・このが恋した相手はお坊さまだった。このは赤い糸で繋がっていると言う。お坊さま・清泉。清泉が国に帰ったら死ぬというこの。このが自裁したら私も後を追うきがすると言う清泉。奉行と住職が話して、清泉の還俗が決まった。

慶長笹書大判  口入屋の姪・ふく。青物屋の主人が大判を持っていることを知らせる。
    昨日みた夢より

2023年11月22日水曜日

風烈廻り与力・青柳剣一郎63 心変わり

 風烈廻り与力・青柳剣一郎63 心変わり 小杉健治

 火付け盗賊改を翻弄するかのように狐の神楽面を被った盗賊の押込みが二年の間続いていた。人は殺めず、盗んだ金は七千両余り。
 老中から青柳剣一郎に密かに探索を命じられた。
 剣一郎は調べ始めると火盗改の動きに不審を抱いた。一味とおぼしき男に目を付けた矢先、刺殺体となって川に浮かんだ。彼が狐面の一人と考えた剣一郎は、盗賊に火盗あらための手の内が漏れていたことを確信する。
 火盗改の頭・天野が、自らの仲間を調べたくなく剣一郎に頼んだと考えた剣一郎は、天野に内密に伝える。自浄すればいいと思ってのことだったが、天野は、用人・奥野の言葉に心変わりし、隠ぺいに進んだ。
 剣一郎は、狐面の仲間を割り出し自首を進める。
 火盗改の与力・佐久間と同心・野中、下っ匹・銀次が、辞めたいと言う狐面の頭・一筆堂主・矢五郎を殺していた。殺した現場を見たと脅し文が来たため、近所にいた巳之助を殺していた。
 脅し文を書いた男を割り出し自首させる。

 野中は、奥野の命で佐久間を妾と共に殺そうとする。剣一郎はその場に行き止める。

 天野家は火盗改めの任を解かれ、家も取り潰しになった。


2023年11月20日月曜日

柳橋の桜〈二〉 あだ討ち

 柳橋の桜〈二〉 あだ討ち 佐伯泰英

 猪牙船の船頭を襲う強盗事件が起こっていた。
 そのためか親方からの桜子の船頭の許しがなかなかおりなかったが、北町奉行・小田切直年が、女船頭の監察を出してくれた。お披露目も行われる。
 船頭の強盗事件が頻発する。船頭が殺される。千社札が残され、詳しいことは同心にも知らされない。千社札の作者を探し当てると、作者は殺され、同じ長屋に住む若夫婦も狙われ、船宿さがみに避難する。
 千社札に書かれた百面相頭領 雷鬼佐衛門は、若夫婦を脅し、まだまだ船頭強盗が続くと脅しを掛ける。お城の中の誰かに向けて書かれているように思われる。誰が何のためにか分らない。
 五人目の犠牲者が出た。桜子の父親・広吉が殺された。桜子は自分の代わりに広吉が殺されたと感じる。あだ討ちを決心する。
 葬儀の場で、桜子と棒術の師匠大河内家の小龍太との祝言が決まる。
 夜、桜子は鬼左衛門からの呼び出し状の場所へ行く。真槍を持った鬼左衛門と短筒を持った鬼左衛門の情婦が現れた。飛び上がった桜子は鬼左衛門の頭部を一撃で倒した。隠れ付いていた小龍太は情婦を倒す。集まっていた一味は奉行所の役人に捕まった。桜子も小龍太もいなかったことになった。

 阿蘭陀の骨董品店の店先に「花びらを纏った娘」「チョキ船を漕ぐ父と娘」という絵がある。


 
 

2023年11月18日土曜日

大江戸監察医② 望みの薬種

大江戸監察医② 望みの薬種  鈴木英治

 沼里藩の御典医だった仁平は、若殿の病を治せず亡くなった後、沼里を出、江戸に来た。
薬種問屋・和泉屋の若旦那を病から救い、和泉屋の預かりで町医を開業していた。

 和泉屋の大旦那が病に倒れた。開業した町屋には、大量の本があり、本の中から大旦那の病に効くだろう薬草を調べる。必要だと思われる薬草を集め、必要な薬草に代わる薬草を調べ、集める。
 仁平は、沼里藩邸に薬があることを知っていた。藩邸に赴くと自分がどうなるか心配だったが、薬を分けて貰いたく藩邸に赴く。牢に入れられるかと思ったが、藩主が現れ、自分が病から救われたことの礼を言い、息子に対しても頑張ったことに礼を言い、必要な薬をくれた。
大旦那は快方に向かう。
 大旦那は、毒を飲まされていた。同じような症状で亡くなった人を調べる。仁平は命を狙われる。刺客を捕まえた。
 江戸に、子どもを育て優秀な人材を商家の重要人物に育て、なくてはならない人物に育て、商家の主を殺し、養子となって商家に入ませる僧がいることがわかった。
 和泉屋もその商家の一つだった。
 仁平の息子・幹太郎が江戸へ来ていた。亡くなった母の無念のため、父を斬るために。親子は一度はぶつかった。二度目には、一緒に住みたい気があるが、沼里に気掛かりな弟・元次郎がいる。

2023年11月15日水曜日

ポリ袋で簡単!もみもみ発酵レシピ

 ポリ袋で簡単!もみもみ発酵レシピ 荻野恭子

2023年11月13日月曜日

いつまで

いつまで 畠中恵 

 若旦那・一太郎は、長崎屋のために、薬升を作った。

 医者の火幻と場久がいなくなった。心配していた一太郎もいなくなった。
一太郎は五年後の江戸にいた。
薬升が盗まれ、長崎屋と同じ薬効の薬を扱う大久呂屋があらわれ、繁盛している。
籐兵衛は腕の立つ商人だが、一太郎を探すことに時を割き、対抗しきれていなかった。
 長崎屋の近所に店を出す用意をしていた。
 一太郎の許嫁・中屋の於りんは、回向院の団子屋で、夢と名乗って働いていた。大久呂屋は於りんに旗本との縁談を持って行っていた。
 於りんは、先の中屋の女将の話をし、旗本の覚悟を聞いていた。旗本は帰っていった。

 火幻と場久と一太郎は、火幻のところにいた以津真天の嫉妬のため、場久の影の世界にきてしまった。火幻や場久が人間の中で楽しく暮していること、火幻を仲間にしてしまった若旦那を許せなかった。

 一太郎は、深川の三人の僧を、現れた大日如来、寺に帰ってもすぐ若旦那の下にやってくる大日如来のおかげで火事から救った。一太郎は、三人の僧を助けるために五年後の江戸に送られたのだと思った。

 場久が残した通り道を探し、広徳寺の井戸から火幻と一郎太は元の所に戻る。以津真天は淋しいのだと気付いた一郎太は以津真天も一緒にと声を掛け、一緒に戻る。
以津真天は、火幻の家の二階で、掃除、食事の用意、薬研で薬草を刻んでいる。

2023年11月10日金曜日

痛風・高血圧症に効くおいしいレシピ二週間メソッド

痛風・高血圧症に効くおいしいレシピ二週間メソッド 谷口敦夫 

2023年11月7日火曜日

心淋し川 

心淋し川 西條奈加

 心淋し川 十九のちほ。ここから救い出してくれると思っていた男は、紋の上絵師。ちほに縫い物仕事を出してくれる呉服屋で知り合った。もうすぐ年季が明けると言っていたが、彼は京に修業に行った。三年は帰らない。呉服屋の手代が、自分と一緒にならないかと言ってきた。

 閨仏 りきは、六兵衛の妾そしている。四人いる妾が一緒にすんでいる。りきは、一番古い。りきは、六兵衛が持っていた張形に仏を彫った。六兵衛が面白がって何本も彫らせた。
 本職の仏師が、りきの持つ仏像に興味を持ち、三日に一度、仏師と一緒に仏像を彫るようになった。
 六兵衛が死んだ。四人は長屋を出ないといけない。りきは差配の茂十に以前に作った張形の仏像を見せ売り物にならないかと聞く。茂十は、閨仏と銘打ち話を付けた。家賃を払いそのまま暮すことになった。
 これまで通り、時々仏師と仏像が彫れればうれしい。あたりまえの仏像を彫ることはしないと決めた。

 はじめましょ 稲次は長屋で「四文屋」を営む。小鉢は四文銭が一枚、煮っ転がしや、鰯は二枚、飯と汁で二枚。稲次は料理屋で修業した板前だった。おとなしいから苛められた。転がり込んできた与吾蔵は、弟弟子、人に突っかかるから苛められる。行くところがなく稲次の所にきた。手伝っている間に稲次は急に痩せ、寝込むようになり亡くなった。客の要請で「四文屋」を継ぐ。
 仕入れに行く途中、はじめましょと歌う子どもを見る。与吾蔵は、子どもが出来たと言った女を捨てたことを思い出す。女・るいが歌っていた歌だった。与吾蔵は毎日、女の子・ゆかと遊ぶ。
 ゆかの母親はるいだった。与吾蔵は昔のことを誤り、もう一度やり直したいと申し入れる。るいは二人の子は産まれて五日で死んだと言う。すぐ捨子があり、るいが育てることになった。るいには商家の隠居夫妻が後ろ盾になってくれた。ゆかは夫妻の養女になりるいが育てた。ゆかが四つの時夫婦の妻が亡くなった。息子から放り出された。と話す。ゆかは与吾蔵の子ではない。
 与吾蔵はトンビが鷹を生むことはあると言って、るいを迎えに行く。

 冬虫夏草 大店の息子と母親が長屋にいる。息子は足が悪く動けない。母親が全てをやる。息子は怒鳴り散らしてばかりいる。長屋の皆は、なんという息子だと非難するが・・・。
 差配の茂十は、息子の将来のためという結構な話を母親が全て断っていることを知っている。息子の全ての世話をしているい今が幸せ。子どものためといいながら、子どもの事なぞ考えていない。

 明けぬ里 ようは以前、根津の遊廓にいた。葛葉という。同じ頃大人気の明里ねえさんがいた。明里は札差に落籍された。葛葉は、隠居に落籍されたが、後の面倒は見られないと自由になった。行くところがない葛葉は、客だった桐八と一緒になった。
 葛葉と明里が出会った。二人共にお腹に子どもがいる。葛葉は下ろすつもりだった。明里は、札差に落籍されたくなかったという。子どもは同い年、元気な子を産もうと別れた。
 ようは体調を崩した。直りかけた時、明里の心中が読売にでた。相手は、札差の手代だった。ようが知っている手代だ。二人は昔から惹かれあっていたのだ。ようは泣いた。大声で泣いた。ようは、子どもが出来たことを桐八に話そうと決めた。

 灰の男 茂十は昔、諸式掛かり同心だった。十二年前、息子は、内勤を嫌い、外回りに憧れた。町奉行所あげての取締になっている地虫の次郎吉を探していた。会田親子と四人連れの時、地虫一味に遭遇する。息子は滑った拍子に若い男を殺した。次郎吉はよくも斉助をと言いながら息子を殺した。地虫一味は捕まったが次郎吉は逃げた。
 茂十は、妻の甥を養子にし、隠居した。妻は自殺した。次郎吉の顔を知っている茂十は探し周り、楡爺と呼ばれる男を見付けた。奉行所に言っても、五年がたち、奉行が変わり、惚けた年寄を捕まえはしなかった。
 茂十と名乗り長屋の差配になり、楡爺を見張っている。
 りきが作った雪だるまに赤い襦袢が掛けられた時、楡爺が、「斉助と叫んだ」斉助は殺された。おれの息子。やっと会えた俺の息子。泣きながら眠り、惚けた年寄に戻った。そしてぽっくり逝った。十八年経った。

  

2023年11月4日土曜日

おやこ相談屋雑記帳① 出世払い

おやこ相談屋雑記帳① 出世払い 野口卓

 猫は招く 
 ハツが、「駒形」に来たきっかけは、夢の中で猫が、駒形という将棋会所があると教えてくれたからだと告白した。
 猫が三匹、信吾に噂の猫の集まりがあることを知らせてくれた。信吾と波乃は、そこに行く。何匹もの猫が集まっているが話しをしていない。信吾は話しかけるが反応はない。
 猫は猫の世界でいきている。

 山に帰る 
 看板が「おやこ」に変わったことで、竹輪の友たちが、お祝いを言いに来た。
 高丸と名乗る青年に相談したいと呼び出しを受けた。故郷・美馬のおいしい料理の話をして相談を受けずに帰ってきてしまった。すぐ二度目に会う。高丸は、自分のやりたいことが定まらないようだった。信吾の相談所開設の話しを聞き、将棋会所を見て帰る。
 十二日後、三度目に会った時、妻になる人を伴い、美馬に帰ることになったと伝えた。明後日と言っていたが、翌日出立したようだ。手紙が残されていた。是非、お二人で美馬にお越し下さいと書かれていた。
 信吾は三四年すれば行けるだろうと計算した。

 サトの話
 信吾が十二才の時、サトに話しかけられた。出会えば時々話しかけられる。
 相談屋と将棋会所を開いて数日した時、久しぶりに出会った。サトは開いたことを知っていた。サトの家が分った。息子が二人で、一人は番頭、次男は手代をしている。主人は、通い番頭だと話した。
 サトの亭主が亡くなった。サトは元気に話かけた。
 サトは目が悪くなったようだ。
 サトが亡くなった。長男は、独立し店を持ち、妻も子もいた。一緒に住もうと言われても妻と合わなくて拒んでいた。亭主が亡くなっても一人で住んだ。七十一才だった。信吾は六十位に思っていた。

 同志たれ 
 天眼が、相談屋のことで話に来た。信吾のところに相談屋について聞きにきた男が、困ってそうな金持ちのことを調べ、相談にのってやると強請まがいのことをしている相談屋になっていると言ってきた。
 相談屋を始めるという男が来た。雲似郎という二十七才の男。
 天眼が、悪徳相談屋にご注意 弱みにつけ込み大金を と瓦版を書いた。相談屋がどんなものかを書くにあたり信吾のことを書いた。相談屋に、ただしゃべるために来る客が増え、宮戸屋へ呼び出されることが続いた。波乃も一緒に行く。波乃はどんな人に会えるか楽しみだと言った。

 出世払い
 二年半前に相談に来て、今はお金がないのでといい、一朱を置いて、出世払いでと言って帰った園造が、来た。頂く気がない信吾を何やかやと言って帰す。
 この頃では、お金が有る者が、出世払いでいいからと使うようになった。元々は、お金のない者が、なんとか融通してほしいというもの。
 
 
 

2023年11月1日水曜日

新・秋山久蔵御用控〈十六〉 帰り道

新・秋山久蔵御用控〈十六〉 帰り道 藤井邦夫

 返討ち 雲海坊と同じ長屋に住む佐吉が、悪い仲間と一緒にいるところを目撃される。一緒にいた長吉が殺された。長吉は強請、集りの常習犯だ。強請られていた住職を調べるが殺していない。長吉の仲間が一人殺される。
 雲海坊と同じ長屋に住む浪人・片平兵庫が、佐吉を悪に引き込む長吉と仲間を斬っていた。
秋山は、長吉が強請相手に返討ちにあったということにした。

 帰り道 小間物屋紅花堂が付け火の被害に遭った。紅花堂には、五年前に 妻子を捨て女郎と駆け落ちした主・二吉が、未だ行方不明だった。秋山久蔵は、付け火を見付け食い止めた謎の男の正体が、二吉ではないかと睨む。
 二吉は付け火犯人を捕まえた。大黒屋が犯人か突き止めるために強請る。斬られる。二吉は秋山に保護され、紅花堂に知らされた。
 紅花堂の主人がいなくなり店を買おうと言ってくる大黒屋がいた。
 紅花堂が建つ前からあった祠の下に金の観音蔵があった。
 鬼薊の喜平次の手下・徳兵衛が捕まった。

 淡路坂 和馬の道場仲間・神谷平四郎が、役目に就けるかもしれないと言った。
 小普請支配・小笠原刑部宅から帰りの骨董の目利き・風雅堂の主が殺された。神谷が小笠原の屋敷に入るのを見た和馬は、神谷の屋敷を訪ねる。
 小笠原の屋敷の神谷が襲われる。小笠原家を訪ねた秋山は、神谷が生きていることを伝える。小笠原の家臣が神谷家に見舞いに訪れ、平四郎を殺そうとするところを捕まえる。家臣ではないという小笠原家に、神谷と和馬は訪れ、神谷は小笠原を殺す。神谷を捕まえた和馬。帰りに、神谷は切腹する。

 忠義者 秋山久蔵の息子・大助は、学問所からの帰り、掏摸と追いかけられている男を捕まえた。掏摸は武士の財布を持っていなかった。帰った大助は財布を見付けた。財布には毒薬が入っていた。
 次の日、大助は、柳橋の薮十に行き、幸吉に話しが通じるようにした。太市が付け、幸吉たちが見張り、掏摸と命じた者を突き止めた。
 旗本牧野家、主が病気、嫡男が幼い、部屋住みの弟が継ぐか、揉めている。
 牧野家家臣・桑田がまた毒薬を買い、家臣・夏目左門が、桑田を襲い毒薬を奪った。
 夏目は主・京大夫に世話になり、京之介に暇を出されたという。
 夏目は京之介に二百両で毒薬を売ろうとした。京之介は夏目に斬りかかり、夏目に斬られた。夏目は秋山たちに捕まった。
 京之介は命を取り留めたが、歩けなくなった。

2023年10月30日月曜日

めおと相談屋奮闘記⑩ 親と子

めおと相談屋奮闘記⑩ 親と子 一旦区切り 野口卓 

 捨子行 波乃の姉・花江の子どもが産まれた。元太郎と名付けられた。
 波乃も懐妊した。
 誠と三吉が、訪れ、流行の捨子行を熱演した。誠が詩吟を吟じ、三吉が芸をする。これを考えた太鼓持ちに演じる許可を貰いたいと言う。
 捨子行を考え出したのはぺー助師匠だった。暗い原正弘の「棄児行」という詩を即興で笑いに持っていった。原さんにも許可を取っている。信吾は猿回しの猿が演じる許可をもらった。

 伝言箱の下に捨子があった。幸吉とい生まれて一週間くらいか。甚兵衛の知り合いの、赤ちゃんを亡くしたばかりの大工のおかみさんに貰い乳をする。おむつを貰う。信吾と波乃は、このまま赤ちゃんを育てて行こうと話す。

 大名の留守居役・蟻坂が、留守居役の集まりで、留守居役たちを満足させる出し物はないかと相談にくる。信吾はぺー助師匠と三吉の共演を思いつき、ぺー助師匠と誠に話す。二人は喜ぶが、決まった座敷があり、許可がいる。もし競演が出来れば、後日、自分の座敷でも競演することという条件が付いた。二組の競演は決まった。

 兄と弟 大店の跡取り息子が相談に来る。何を相談しているのかはっきりしない。弟から相談があった。気の弱い兄が、しっかり者の腹違いの弟に店を乗っ取られると思い込んだ悩みだった。父親も息子の気の弱さを考え、はっきり言えないでいた。
 信吾は、弟の気持ちを知り、兄に、自分が考えたように話す。兄が店を継ぐことになり、弟は一番番頭と決まった。相談料として十五両入った。弟は妻を娶る。二人のお祝いに使おうと思う。

 新しい親子 巌哲和尚に、幸吉のことを相談すると、周りの声に振り回されず幸吉が幸と吉を得られるかを頭に置いておりさえすれば誤ることはないと言われる。毎日、波乃が、ムメ姉さんの所にいくか、ムメ姉さんが波乃の所にくるかして、貰い乳をしている。雨が降り、波乃だけが帰ってきた翌日、幸吉は、波乃の元に来るのを嫌がった。波乃はショックを受ける。
 ムメの夫・鉄五郎が、幸吉を養子にしたいと言ってきた。
 波乃はおむつを持ってムメに会いに行った。
 信吾は、本当の親が来ても、養父母の名前と住まいを言わない決心をした。

2023年10月26日木曜日

雇足軽八州御用

雇足軽八州御用 辻堂魁

文政十三年 1830年

 竹本長吉39才は 、紙屋を生業にする殿山に雇われたと思っていたが、本業が高利貸で、用心棒又は、取り立てに雇われていたことに気付き、辞めた。
 新しく紹介されたのは、八州御用・関東取締出役、勘定所の臨時雇いの足軽だった。手当ては一日銀一匁。

 竹本長吉は、元宇潟藩郡奉行配下の下役だった。三年前、百姓一揆の煽りを受け、郡奉行の父親は切腹、配下の者も職を失った。妻と子は名主の実家に預け独り江戸に出てきた。
 十年、もう十年と藩札を発行する執政に対して、父親は藩札発行を抑え身の丈に合った藩政に戻すべきという考えだった。父親亡き後、長吉に藩の厳しい監視の目を向けられていた。
 
 関東取締出役は、家禄五十俵の御家人・蕪木鉄之助56才だった。二十年続けている。29才の息子は家をまだ継いでいない。

 十二月一日出立。蕪木鉄之助、小者・六兵衛、雇足軽・竹内長吉と多田次治44才。約一年旅が続く。

 大きな出来事もなく過ぎる。
 啼きの道助が率いる一味が押し込み強盗を働き、二十年逃げている。道助中心に四人、その時々に人数を集め押し入る。その四人が塩原の湯治場にいる。臨時出役・西野の一手と一緒に四人を捕らえるという命令が来た。
 西野の到着が遅れている。四人が明日の朝出立すると情報が入り、蕪木は自分たちだけで捕まえることにする。手助けも入れて二十数人になる。
 四人は裏から逃げた。西野が着いて、蕪木の不始末を責める。蕪木は、八日も前に下知されているのに何故こんなに遅れたかと責める。西野は黙って帰った。

 九才で元締をする子どもの博打開催を見咎めた。父親の博打の借金のため身を売った母が病気のため看病に行くためのお金を稼いでいた。竹本は、杉作と一緒に母親の所に行く。
母親は死んでいた。雇い主の話を聞き、墓参りをして帰る。

 もうすぐ一年になろうとする時、啼きの道助を捕らえる機会が訪れる。多田は怪我を負い、竹本が、若い二人を倒す。蕪木は道助に殺され、竹本が二人を討った。

 蕪木が心配していた息子は、代官所手付に採用された。
 藩の執政が変わった。長吉は宇潟に帰る。竹本家再興、郡奉行拝命の内示があった。
 長吉は杉作に会いに行った。杉作は田で働き、古着の仕事を覚えようとしていた。
 
 
 
 

2023年10月22日日曜日

からさんの家 伽羅の章

からさんの家 伽羅の章 小路幸也 

 神野まひろ 20才 実の両親は離婚、父は再婚したが、新婚旅行中に事故死。再婚相手である義母の妹・神野ひろみの養女になる。高校卒業と、ひろみの結婚を機に、結婚相手の義祖母の家に住み、彼女・三原伽羅のマネージャーをしている。
 三原伽羅 74才 〈みはらから〉のペンネームで文筆家、詩人、画家として活動するアーティスト。まひろの義母の結婚相手・三原達明の母。
 永沢祐子 52才 十五年来の三原家の住人。ジャズシンガー。スナックのママ
 ヤマダタロウ 37才 三原家の住人。アーティスト
 野洲柊也 25才 三原家の住人 北海道出身、会社員
 水島レイラ 出版社編集長。新人の頃から三十年近くからさん担当。
 黒田晋 まひろの実母の再婚相手。建設会社社長。
 三原駿一 伽羅の兄の息子。刑事

 まひろがこの家に来て三年になった。
 一年掛けてまひろが書き上げた「匂い立つ 三原伽羅自伝」が売れた。ドラマ化され連続ドラマになった。現在の伽羅は本人が出演、この家で撮影され、まひろも住人もエキストラのような形で出演した。
 まひろが、柊也と付き合い始めて一年半。
 伽羅の乳がんの転移が発覚。副作用で身体や心がどうにもならないような治療はしたくない。普通に暮したいと言う。
 まひろと柊也と伽羅と三人で北海道へ行く。まひろは柊也の母親の盲腸での入院の見舞いがてらの顔合わせのために旭川へ。伽羅さんは、息子夫婦へ身体のことを話しに。 
 柊也の母親との話は自然父親の話しになる。柊也は父親を知らない。不倫だったようだ。男性は、子どもの存在を知らない。息子だと知らせないで合いに行くことには、反対はしなかった。 
 ひろみが、まひろを養女にした時。ひろみはまひろの母親と思ったことはないと言う。可愛い愛する姪っ子。まひろを母を亡くした可愛そうな子と思ったこともないと言う。
 祐子は駿一と一緒に住むことになった。    
 タロウがアトリエに使っている鉄工所の一部を音楽ホールにする。アトリエとギャラリーと音楽ホールと。設計は柊也がする。
 タロウの店ができ上がる日に、お店で、まひろと柊也の披露宴をすることにした。
 柊也は、母親が勤めていた会社を聞き出した。上司の名前も調べた。父親がどんな人か、迷惑にならないように会って来ようと思う。柊也は友人の仕事を借りて、まひろがインタビューの形をとって、七十になっている父親と話した。彼は柊也と似ていた。
  タロウの〈ホール〉のオープンの日、柊也とまひろの結婚式の日。
 〈ホール〉はギャラリーであり、ライブホールであり、カフェとバー。タロウの住み処であり、工房である。
 参列者は、達明とひろみ、柊也の母親・実里、実の祖父母・西野忠親と駒子、黒田晋、祐子と駿一、水島、タロウの兄夫婦と息子、二人の同級生、二人で誓いの言葉は、伽羅の詩を、まひろが自分の言葉にした。新婚旅行はパリ。
 三人の生活が始まった。 
 
 



2023年10月19日木曜日

からさんの家 まひろの章

 からさんの家 まひろの章 小路幸也

 神野まひろ 小学校一年生で、二宮静香ちゃんと仲よくなる前は、空想上の友達・アマド君と二人で遊んでいた。
 まひろの親は、岩崎亨・量子。まひろが生まれて離婚した。三才の時、亨が神野かえでと再婚。五才の時、二人は旅行中に事故死。かえでの妹・ひろみに育てられる。
 母親代わりの叔母が結婚する男性・三原達明の母・三原伽羅72才の家に住むことになった。高校卒業後決まっていた就職先が不祥事で駄目になった。伽羅さんの家の中のこと伽羅さんの付き人、マネージメントが仕事。伽羅さんは文筆家、画家、詩人いろんな面を持った人。

 一緒に住んでいるのは、金属アート作品を造る・ヤマダタロウ35才。
 スナックのママ・永沢祐子50才
 建築学科の学生・野洲柊也23才

 まひろは、からさんの話を聞きながら、からさんの自伝を書くことになった。

 まひろの母親のことで、建設会社社長・黒田晋が来る。まひろの実母・西野量子の現在の夫。量子がすい臓ガンで長くはないと言う話。まひろは、柊也と柊也と一緒に病院に行く。
 量子は、まひろが幸せなことを喜び、自分の決心が間違いなかったと喜ぶ。
 あかちゃんを産んでも愛情が湧かない。自分が育てると不幸になると思い、離婚したと話す。まひろの写真を入れたロケットを肌身離さず携帯していた。
 量子が亡くなった。告別式で、量子の父母・まひろの祖父母に会う。
 お正月に訪ねる約束をする。

 居間とからさんのアトリエの改装をし、まひろの書斎を作る話になった。タロウ君の部屋の防音もしようという話になった。

 

 

2023年10月16日月曜日

隠居おてだま

隠居おてだま 西條奈加 

 嶋屋徳兵衛は糸問屋屋の六代目だったが、還暦を機に隠居した。
 妻・登勢は、嶋屋に残り奥向きを支えている。
 隠居所の午後開かれる手習所「豆堂」の師匠を務める。

 徳兵衛は隠居したが、孫・千代太が持ってくる事に対処するため忙しい。
 千代太の友達の母親、その廻りの人たちの生活が安定するように、組み紐屋「五十六屋」を始めた。
 子供たちに読み書きを教えるため豆堂を始めた。
 子供たちが小遣い稼ぎが出来るよう、子どもたちの王子権現案内を支援している。

 末娘・楽が、錺職人と一緒に住み、子どもが出来た。事を知った長男、次男、登勢、各嫁等は父親・徳兵衛は絶対許さない、楽を勘当するに違いないと思い込み、みんなで思案する。

 錺師・秋治が楽との関係を明かさず、徳兵衛に会いに行き、売り出したい帯留を見せ、売り出しに手を借りることに成功する。徳兵衛は秋治も帯留も気に入り応援する。
 秋治と楽のことを知った。それ以上に家族が、知っていたにも関わらず自分だけ知らずに廻りに乗せられていたことにショックを受ける。自分が頑固なためと分ってはいるが。
 徳兵衛は、自分が独り嶋屋から出ることにした。家族と会わないようになった。

 登勢が嶋屋を出て、一人暮らしを始めた。

2023年10月14日土曜日

空也十番勝負〈十 〉奔れ、空也

空也十番勝負〈十 〉奔れ、空也 佐伯泰英

 京の袋物問屋の隠居・又兵衛と知り合った空也は、大和室生寺向かう一行と同道することになった。隠居は室生寺の修繕費用五百両を持っていた。

 途中、柳生新陰流正木坂道場で稽古に加わる。その有り様に違和感を抱き、室生寺に向かう。柳生家の 

 姥捨の里で待つ重富一家と眉月姫一行は、龍神温泉に行く。

 空也は、室生寺の奥の院で独り修業するため隠居たちと別れる。隠居の共・康吉と柳生藩中小姓末席の入江欣也と江戸での再会を約束する。

 江戸には、柳生の里に着いたという空也からの便りと、又兵衛からと室生寺座主和佐又修光からの手紙が届けられていた。

 空也は室生寺から大台ケ原を目指す。大台ケ原の雪道を走る。檜の老木の洞に寝起きした。干し肉をしゃぶりながら木刀を振る。
 日出ヶ岳の山頂で佐伯彦次郎と会った。雪が晴れた未明の勝負を約束する。
 現か虚か判らぬ岩場のぬるま湯に入り、届けられていた食い物を食べる。三日程続いた雪がやみ、翌未明、日出ヶ岳に向かう。
 彦次郎は十両なくても家斉から拝領した修理亮盛光。空也は己の身を斬らして彦次郎の身を絶った。彦次郎に伴う鷹・千代丸を操る老人・伴作がいた。空也は肩口から血をたらしている。
  
 寛政十二年 1800年 年が明けた。
睦月の懐妊が知らされた。
一ヶ月かかり、杖に破れ笠を被った空也が姥捨の里に着いた。
五日眠った空也は、走っていた。
二十一日に紀ノ川河口湊に到着する船で江戸に帰ることになった。
空也は高野山奥の院に三日籠った。
空也は、剣術の研鑽は、眉月を幸せにすることと通じていると信じていると眉月に言う。

2023年10月12日木曜日

脳科学捜査官真田夏希⑱ アナザーサイドストーリー 

脳科学捜査官真田夏希⑱ アナザーサイドストーリー 鳴神響一 

 上杉がかって愛した五条香里奈の妹・紗里奈が、県警に辞表を出して行方をくらました。紗里奈は、独自の見解を持ち優秀な鑑識課員だった。同僚たちから妬まれ疎まれていた。上杉は北アルプスで彼女を見付け、根岸分室の部下にする。

 上杉と紗里奈、夏希と小川とアリシアが、会う約束をする。待ち合わせ場所で夏希は誘拐される。夏希と一緒にいた小川も拉致される。
 上杉と紗里奈、アリシアは夏希と小川の後を探す。
近くまでたどり着いたアリシアは、夏希のティッシュを辿り家が判る。
かもめ★百合のファンだった。逮捕される

2023年10月10日火曜日

あずかりやさん

 あずかりやさん 大山淳子

 明日町こんぺいとう商店街の西の端、「さとう」と白抜きされた藍染ののれんの家。
からっぽのガラスケース、小上がりの六畳間の片隅の文机の前に店主が座り点字本を読む。
部屋の中央に客用座布団がある。
朝は七時から十一時、昼は店を閉じ、午後は三時から七時まで開店している。
時間は柱時計が鳴る。
あずかりやさん。何でも一日百円で預かる。

あずかりやさん
8時、柿沼奈美、女の子が紙を一枚七百円で預けた。
11時、相沢さんが来ました。点字本を持って来る。目の検査の結果を聞きに病院へ行く。

三代前は、「菓子処・桐嶋」だった。息子はサラリーマン、息子の妻が継いだが、喘息持ちで体が弱く途中でいなくなった。今の店主は、二人の息子。母親がいなくなり、父親が出て行き息子・桐嶋透は十七才の時、あずかりやという商いを始めた。
 目が不自由な少年が一人で住む家に、男が二週間預かって欲しいと言ってお金と物を置いて行った。男はサナダコウタロウと名乗った。
 三日後、国会議員傷害容疑で指名手配中の真田幸太郎が捕まったニュースが流れた。犯行を否認し、犯行に用いた銃が見つかっていないこともラジオから流れた。
 少年は、福祉課の職員を呼び、商売を始める手続きをした。
 「一日百円でなんでもおあずかりします」ガラス戸に貼った。屋号は桐嶋。
さとうと書かれたのれんを出したため、みんなは「あずかり・やさとう」だと思っている。
 十年経ったが、真田幸太郎は現れていない。

 7時 少年が、鞄を預けにくる。少年は赤い服の咳をしている人に頼まれて来ていた。百円を置いて行く。
 明くる日、赤い服の女は現れず鞄は店主の物になった。
 
 相沢さんが来た。パソコンに専念するために、点字タイプライターを一ヶ月預ける。
 自分のことを話す。親のことは覚えていない。お腹がすくと兄が食べ物を運んでくれた。兄は中学をやめて悪い組織で働いた。中学を出て縫製工場に勤めた。働いて食べることができればいいと思った。兄と連絡が取れなくなった。十年前、突然現れた兄は、お前にまとまったお金を渡せると言った。兄は捕まり禁固五年がきまった。一度面会に行った。兄はさとうという店でいいやつと会った。坊主に大事な物を預けた。約束を守ってくれたらしい。出たら会いに行くとうれしそうだった。兄は刑期を待たず獄中で亡くなった。
 相沢さんは、兄の遺品を手に入れるために点字を習い一年かかって一冊を点訳した。兄の遺品はどうでもいい。兄が最後に信じた人に会ってみたいと思うようになった。
 相沢ではなく真田幸子です。うそをついてごめんなさい。
 店主は、真田が預けた物ではなく、赤い服の女が預けた鞄を渡した。鞄は、店主の母親がん持ってきたお金だった。
 相沢さんは、点字タイプライターを預けて帰った。

 少女が紙を受け取りに来た。
 
 ミスター・クリスティ
 自転車屋のプライドを持った自転車屋の親父がいる自転車屋に、父親と中学生の少年が自転車を買いにきた。日本に一台しかないクリスティ、少々お高い自転車を買った。笹本つよし君はうれしい。店主は、メンテナンスするからちょくちょく寄ってと言う。つよしは喜んで乗り、あずかりやに預けた。三百円を渡した。
 つよしはあずき色の自転車を預けてクリスティに乗って学校に行く。帰りにあずけやに寄り、自転車を交換する。あずき色の自転車はぎいぎいと音がしなくなり、サビも無くなりカゴのゆがみも修正されていた。一週間同じだった。
 苦労してつよしを育てている母親が、人から譲って貰ったあずき色の自転車。父親がさっと出した金で買われたクリスティ。母親に悪くて家に乗って帰れないつよし。
 古い自分も乗っていたチャイルドシートを付けたまま高校に来て、妹を迎えに行くのという荒井さんに出会った。つよしは海まで走った。クリスティを預けたまま一ヶ月過ぎた。
区が自転車屋と提携して出来たリサイクルシステムの写真を撮った。自転車屋の親父が飛んできて札五枚で買った。店主が、自転車の持ち主は、自転車を愛していた。でも他にまもらなければならないものがあったのでやむをえず自転車を手放したと話した。

トロイメライ
 社長の執事という人物・木ノ本亮介が、千四百円で手紙を預ける。二週間あずけたり取りにきたり、三ヶ月続いた。
 男が、木ノ本が来たかとあずかりやに来た。木ノ本があずけた物を出せと迫るが、店主は受け付けない。男は寝てしまった。起きた後、あずけた書類を要求する。親父の遺書だと言う。店主は、父親は生きているのだから父親と話しをするように進める。

 三毛猫が赤ちゃん猫を座布団の上に置いて帰った。動かない。店主は一週間奥に引きこもり店を休んだ。

 一ヶ月半過ぎ、本物の木ノ本が現れ、木ノ本と言いあずけに来ていたのは社長だったと言う。親子は和解し、本物の遺書を書いた翌日に亡くなった。遺書には、五十年、オルゴールを預け預かり賃を渡す。新婚旅行で買っただいじなオルゴール、大切にしてくれそうな人に託したかった。ここに持って来ていた遺書は白紙だった。店主に会いたくて来ていたようだ。
しまい込まないで、手元に置き、ねじを巻き、トロイメライを聞きたいときに聞く。それが条件。売り払えば六本木にマンションが買える値のつくアンティーク。売らずにそばに置いてほしい。百八十二万五千円とオルゴールを置いた。
 白い猫が現れた。預かりものだと言う。猫に社長と名付けた。
 オルゴールは、ガラス戸棚の中に置かれた。シューマンのトロイメライ。店主は一日一回ねじを巻き蓋を開ける。小鳥がダンスする。社長は店でくつろぐ。

星と王子さま
柿沼奈美。懐かしい17年前に一度来た。店には留守番という笹本つよしがいた。店主は喪服を着て出かけたらしい。
奈美は、つよしと預ける物を交換した。預かったのは星の王子さまという本で、預けたのは封筒だった。一週間預けた。夜、つよしから電話があり、本が必要になったので返して欲しいとのことだった。交換した。
翌日、あずかりやに行く。店主は誰にも留守番を頼んでいなかった。オルゴールを聞き、話しをして帰る。封筒は預けず、区役所に提出した。夫に子どもが出来た。認知したいと言われた。離婚届だった。

店主の恋
 七年前に閉館した図書館の本を預けにきた女の人がいた。オルゴールを聞き、しまう時に本を並べた。6月3日に結婚する。それまで預かってほしいということだった。二十年前、図書館から盗んだという。いつかは返さなきゃと持ち歩いていた。
 猫・社長を、ポーチドエッグと呼ぶ。似ているからと。店主は名前を聞きそびれた。石鹸の香のする人。
 彼女は、社長を助けるために自分が交通事故に遭った。
 六月になっても彼女は来ない。
 引っ越し先に持っていけないが、母がくれた物で、捨てられないというアルミの両手鍋を預けに来たおばあさんが来た。
 六月の末、相沢さんが点字本を持って来ておしゃべりする。
近所のたばこ屋のおばあさんが、たばこ屋の家賃が払えず、身寄りがないので施設に入った。
先月、事故があり、商店街の出口に信号機が付いた。
石鹸の香の女の人が預けていったのは、星の王子さまだった。相沢さんが音読する。三日に一度やってきて少しずつ読みやっと終わる。

エピローグ
何年かたち、社長の目が見えなくなった。
 

2023年10月7日土曜日

戯作者喜三郎覚え書 無情の琵琶 

戯作者喜三郎覚え書 無情の琵琶 三好昌子

 喜三郎23 呉服屋多嘉良屋 の三男、喜三郎を産み母は亡くなる。父親が喜三郎の首に手をかけているのを見た祖父母は、喜三郎を引き取って育てる。父親は医者の薬を飲み、三日三晩眠り続け覚めた時には自分の行為を忘れていた。12才で祖母が亡くなり多嘉良屋に帰る。
 夢は鴻鵠楼を買い取り自分の書いた芝居をすること。

 妙音寺で、喜三郎は無情に会う。無情は逢いたい人が幸せに暮しているところを見るまでは死ねないという不磨だ。武士が置いていった刀を本来の持ち主に返ったと言う刀は、喜三郎に五百年前の出来事を見せる。平家の落人が、源氏の侍に斬られる。刀は源氏の武士に渡る。

 無情の話しでは、無情を助けた炭焼き小屋の若者は、平家の落ち武者を助けた。落ち武者狩りの時、若者は武者の鎧を付け刀を持って落ち武者になり首を落とされた。無情は、若者が裏切ったと思い相手の刀を奪い村人も源氏の武者も斬り、逃げきった。歩いているうちに平家の落ち武者の首無し遺体を見付ける。手に蜘蛛の痣ヶ有る炭焼きの若者だった。無情は、自分と義兄弟の契りを交わした若者が替え玉になって討たれたことを知る。
 無情は、この世に残り、彷徨える魂に行く道を示しながら若者の生まれ変わりを探す。

 喜三郎の手首に蜘蛛の痣が現れた。
 喜三郎は、鴻鵠楼の小屋主になった。月灯会での出し物は、無情が魂の行方を示した話しを題材にし、喜三郎が書いた、恋路の果てと子返しの辻と、昔、琵琶法師が話し座頭が書いた壇ノ浦義兄弟の契りだった。

 喜三郎は、頭の中で声を聞く。屋島の戦いで弟を失った。矢を受け船から落ちた。
 喜三郎は無情に弟のことを聞く。無情は弟のことを知っているのは斗市だけだ。新しく生を受けた斗市は幸せに暮している。もう思い残すことはないという。蜘蛛手切りと言われる刀が錆びぼろぼろと崩れる。無情は透けるように薄くなり、琵琶を燃やしてくれと言い、満足そうな顔で消えていった。喜三郎の蜘蛛の痣も消えた。

 鴻鵠楼の持ち主・千夜と一緒になり子を成した。宝屋喜三治という戯作者になった。

2023年10月2日月曜日

上絵師 律の似面絵帖⑨ 結ぶ菊 

上絵師 律の似面絵帖⑨ 結ぶ菊 知野みさき 



女郎花 小間物屋・藍井の主・由郎に千代を紹介される。千代は律に着物の内側一面に菊を描いて欲しいと頼む。千代は、吉原の遊女を身請けする。由郎の馴染・野菊に声を掛けると、自分は病で先がない。自分が恩がある加枝を出してほしいと頼む。千代は二人を引き取った。三人で暮している。
 野菊の同僚が足抜きした。律は美経の似顔絵を描いた。涼太は花前屋で美経が捕まるところを見た。美経も二日後花前屋に身請けされた。美経の恋人が命と引き換えに身請け金を作ったようだ。

 巣立ち 近江の旅籠の息子と言う触れ込みで総次が浅草にいる。綾乃と噂になっていた。綾乃にはその気がないが、母と姉が乗り気だ。青陽堂の丁稚・六太は綾乃贔屓で総次を良く思っていない。
 青陽堂の手代・友永の父親が危篤と聞いて、米沢へ行った。母親の実家が紅花農家で父親は元武士だが「友里堂」という紅屋を開いている。
 友永と仲良しの手代・道孝に、旗本からの養子の話しがあった。
 帰って来た友永は店を辞め、米沢へ帰ることになった。道孝は養子の話しを断り、友永の妹と一緒になり共に助け合う仕事をすることになった。
 律は友永の母と妹の鞠巾着を拵えた。

 香物 定町同心広瀬の妻・史織が懐妊した。
 律は千代に着物を納めた。
 広正という岡っ引きが千代の周りをうろつく。広正は青陽堂の勘兵衛を知っていた。勘兵衛は広正を嫌っている。
 火盗改の小倉もいつの間にか結婚し懐妊していた。
 色男が仲居をたぶらかし泥棒に入る事件が起こっていた。色男・凡太郎の似顔絵を描く。
 凡太郎以外の仲間を捕まえた。
 広正は青という人を探していた。青は十七で良玄に嫁ぎ、二年後に義母がくつ脱ぎ石で頭を打って亡くなり、一年後には良玄が卒中で亡くなった。青は診療所を弟子に譲った。青は二人を殺したのではないかと噂され広正が調べていた。青は駿河で亡くなった。勘兵衛は、十七才の青の許嫁だった。
 由郎は律が描いた雷鳥の着物を着て日本橋から浅草まで歩いた。律に注文が来る。
 雪永は、千恵に菊の着物を送りたいと思うが、千恵は受け取れないと言う。雪永は振られたのかと気が気でない。

 結ぶ菊 べったら市で迷子にならないようにと雪永が手を繋いだ千恵は涙が出てびっくりして逃げ帰ってしまった。千恵は律に相談する。嫌じゃないびっくりしただけ。
 総次が前の若竹屋の息子ではないかと思われた。加枝と合わせれば判るだろうと思われた。
 総次と凡太郎が、逃げる資金のために千代の家に押し入った。三人の他に綾乃も律も千恵もいた。が、千代の家にお金は無かった。総次は加枝を見て、みんなを助ける方に廻る。凡太郎を見た涼太が来る。綾乃が人質になり、川へ連れて行かれ落とされる。六太が飛び込む。猪牙船に助けられる。
 総次は若竹屋の元若旦那・浩太郎だった。盗人一味ではなかった。身元詐称で所払いになった。凡太郎は死罪。
 総次は若竹屋の継父から加枝を助けていた。妹を売り死なせた継父を首つりの自死に見せかけ殺しているかもしれない。
 千代は青だった。勘兵衛から送られた菊の簪を持っていた。律は勘兵衛と広正と一緒に青の昔話しを聞いた。広正は、青は駿河で死んだ。そっくりさんには用はないと言った。
 雪永と千恵は許嫁になった。

2023年9月28日木曜日

風烈廻り与力・青柳剣一郎62

風烈廻り与力・青柳剣一郎62 罪滅ぼし 小杉健治

火事場で赤ん坊を助けに飛び込んだ長次

付け火をしたと思われる おまき十三才

付け火をしたと自白した長次、人殺しから付け火までした悪だった。長次を追いかけていた十手持ち又吉

長次は巡礼の母娘を殺してから罪の意識にさいなまれる。死に場所を探していた。溺れる子どもを助け火事の赤ん坊を助ける。自分が死ねば、子どもも死ぬ。だから生きていた。

長次は処刑された。

2023年9月24日日曜日

江戸は浅草〈五〉 春の捕物

江戸は浅草〈五〉 春の捕物 知野みさき 

 横恋慕  
 真一郎の多香への妻問いは宙ぶらりんとなっていた。
 菓子屋の十六七才の娘が的矢の注文にきた。娘も弓道をするらしい。許嫁に贈ると言う。相手は、弓術刈谷道場の橘清二郎18だった。養子の縁談だった。菓子屋の娘ではなく武家で父親は賄頭だった。華江は、橘の顔を見るため刈谷道場と槙原道場の仕合を見にきて真一郎を知った。橘に贈るつもりだった。
 久兵衛が梅の浮気を疑っていた。真一郎と大介が調べる。昔の馴染・哲之介と会っていた。昔、久兵衛には許嫁がいた。縁談を断れなかったため梅を囲う許しを得た。梅にも妻問いする哲之介がいたが、梅は断った。哲之介は上方に行き、祝言を挙げた久兵衛の妻・敦は亡くなった。息子・重太郎九才。久兵衛は梅を後妻に迎えようとしたが、重太郎と梅に反対され出来ないままでいる。梅は敦が亡くなる前に、久兵衛と祝言は挙げぬ。両備屋の敷居を、またぐのは久兵衛の葬儀の時だけと書いた起請文をかいていた。
 哲之介はもう最後だと江戸に来ていた。
 
 白澤と八百比丘尼
 三つ目の白い獣が出た。腹にも三つ目がある。奥山の山王座の見せ物白澤を探すことになった。心吾の亡き妻の笛を借り白澤を捕まえる。おとなしい賢い犬だった。額に一つ、腹に三つ目は入れ墨だった。心吾から話しを聞いた二人は、心吾が犬を逃がしたのだと思った。
 大介の笛作りの師匠・音正を殺して自死した雪が現れた。見つけ出した女はそっくりだった。大介は雪でないことを見破る。妹だった。三姉妹の末の娘、母も三姉妹も雪だという。祖母は不老であろうとした。生い立ちを話す。大介も師匠の死の真相を話す。雪は大介を殺そうとした。大介を庇い師匠は亡くなった。大介の母親を音正は愛した。その息子を引き取った。雪は大介に嫉妬した。
 雪は縁切り寺の上野国満徳寺に行くと言う。真一郎は心吾と白澤を逃がすことを考えた。白澤に腹巻きをし、手拭いで頬っかむりしている。真一郎たちは見送った。
 翁の行方 十年以上前から死にたいと考える金持ちを阿芙蓉で殺している者がいる。翁の面をつかったり、祈とう師になったり。岡っ引きの又平も動いている。真一郎は又平から翁の面を借りる。多香の仲間・小兵衛が現れる。老人として現れた小兵衛の本当の姿は、四十から五十の小柄なきびきびした男だった。多香の面打ちの師匠でもある面打師・青嵐だった。青嵐は、殺し屋が自分たちの仲間・権兵衛ではないかと探していた。青嵐の翁の面が権兵衛を捕まえる劣りになった。又平たちは老人の小兵衛を怪しいと探していた。
 権兵衛は真一郎の前に現れた。多香たちが捕まえた。
 多香が伊賀者と知っているのは、真一郎と久兵衛だけだった。大介と守蔵と鈴に多香が伊賀者だと知らされた。

 春の捕物
 鈴の縁談が舞い込んだ。畳屋の壱助。真一郎と大介が調べると、店、兄妹、本人、悪いところがなかった。鈴は七年前、何者かに手込めにされでから誰とも一緒になる気がないといっている。
 鈴を覗き込んだ男が現れる。鈴はあの時の男だという。匂いからだった。壱助が見ていた。真一郎と大介は昔の関わりから男を探し出しだす。金継師の幸治。彼は死んだことになっていた。幸治だと思われる男を罠に掛ける。鈴を手込めにする前に、鈴を引き取った師匠津江を殺していると思われた。多香が津江の振りで幸治の前に現れる。幸治は鈴のことは認めるが津江は事故で階段から落ちたと言う。大介は、強姦だけでは死罪にならないため殺そうとするが止められた。真一郎も弓を引くが、近之助が一瞬早く殺しに行く。真一郎は匕首を飛ばした。幸治は捕まった。別の男を殺していたことが分り死罪になった。
 鈴は話しを断った。

2023年9月20日水曜日

筋トレの負荷・刺激パーフェクト辞典

筋トレの負荷・刺激パーフェクト辞典 荒川裕志
筋トレ動き方・効かせ方
からだが目覚めるストレッチメニュー

硬い身体が驚くほどやわらかくなるストレッチ 原幸夫


 

2023年9月16日土曜日

京都船岡山アストロジー〈3〉

 京都船岡山アストロジー〈3〉 望月麻衣
 恋のハウスと檸檬色の憂鬱

 神宮寺桜子は、同級生・に告白される。高屋に相談する。
 受験生のため、作家活動をも封印している桜子は、デートして浮かれている時期ではないと、お付き合いすることを断る。

 高屋誠は、桜子の家庭教師をする。
 大学時代に、告白され付き合った城崎薫子と、船岡山珈琲店で出会う。付き合い始めすぐ高屋から別れを言った。二人に苦い思い出として残っていた。高屋が、薫子の友人の「やったね、薫子。賭に勝ったね」と話しているのを聞いたためだった。二人の誤解は溶けた。薫子は講洋社に務めている。

 柊にとって桜子は何?。どんなに愛して可愛がっても自分を恋愛対象、異性として好きになることがない存在。安心して溺愛できると言う。

 船岡山珈琲店で新メニュー・檸檬メニューが始まった。

 どうすれば、本好きの子どもになるか。本を手に取ってもらえるようになるか。読書がかっこいい趣味になるか。
 高屋は星座別に「おすすめの小説ジャンル」の特集を組むことを考えた。

2023年9月10日日曜日

おやごころ

おやごころ 畠中恵 

 たのまれごと 吉五郎に頼まれる。旗本の主が、嫡男の悪行のため家が滅ぶと愚痴る。嫡男の悪行を調べることになる。嫡男に悪行は無かった。金持ちの娘が次男と一緒に成りたがった。貧乏旗本は、嫡男を追い出し次男に後を継がせたかった。嫡男は家を出て書き役の株を買い書き役になった。

 こころのこり 三軒の江戸店の番頭が失せ物が出たと相談に来る。一件目、大阪から江戸へ嫁に来て間がない番頭の嫁が、本店から貰った祝いの簪を隠していた。江戸の生活に慣れない香に商家の嫁を紹介し、習い事でもすることを進める。
 二件目 紙問屋が旗本から預かった本を無くす。始めから本をすり替えていた。旗本は、本を譲れと言われたが譲りたくなかった。本を無くしたことにしようとした。
 三件目、売り掛け帳がなくなった。麻之助は誰かが、本店に送る飛脚の品物の中に売り掛け帳をいれた。番頭は自分から辞め、自前の店を持った。

 よめごりょう 麻之助の妻・和歌と結婚するはずだったと息巻く男・太助が現れた。麻之助が調べると、太助が結婚を申し込んだ琴が、結婚する前に三行半を頂戴と言った。太助が断ると琴は結婚を断った。結婚前に三行半を書いた男がいた。和歌に麻之助が書いた。和歌が安に見せた。安が琴に話した。太助は、麻之助を恨んだ。

 麻之助走る 和歌が解任した。麻之助は、前妻と子を、お産の時に亡くしていた。じっとしていられなくて走り廻っていた。神田祭りを派手にしようと用意している人を見付けてしまった。樽屋に伝えた。

 終わったこと 与力の娘・美衣につきまとっている男がいる。麻之助は男の正体を突き詰めてほしいと言われた。麻之助は、武家屋敷に入る泥棒を美衣がみたのではないかと思った。美衣には麻之助がいつも付いていた。みつからないため美衣を一人にし罠を張った。男は現れた腰紋入の煙草入れを引っかけていた。遠くからでも紋が見えた。

 おやごころ 子どもが産まれた。宗吾と名付けられた。
 縫箔屋の主夫婦は、妹を可愛がり、なんでもいうことを聞いた。姉・秋の許嫁を、妹・春が自分の婿にすると言った。秋は身を引き、妹が結婚し店を継ぐことになった。親戚になる大奥を引き、近所に暮す美代が、秋に大工との縁談を持ってきた。二親が、妹に泣きつかれ、姉を元の縁談に戻し、妹を大工に嫁がせると言う。男二人が縁談から下りた。
 麻之助は、美代に、茶道、華道、琴、武家奉公の心得など教えて暮さないかと提案する。秋を引き取りまず秋に教える。麻之助は美代を前へ踏み出させようとした。美代は明日を語っていた。

2023年9月7日木曜日

江戸の探偵

 江戸の探偵 鈴木英治

 石見国加瀬津の普請方同心、永見功兵衛は、新しく養子に来、城主となった将軍・家斉の息子・斉晴に見いだされ小姓になった。

 馬で海岸に行き、人身売買の現場を見、家老・河田内膳を攻めるが、河田がやっていることだった。
 その夜、斉晴は座敷牢に閉じこめられる。
 功兵衛は斉晴のために江戸へ出る。

2023年9月5日火曜日

大河の剣(七〉 

 大河の剣(七〉 稲葉稔

 大河は自分の道場を持つ。京に行き、死んでゆく。
 上野に行くが生き残った。
 明治5年 1872年 大河37才、道三郎に宗家を継いでもらえぬかと打診されるが断る。道三郎は38才で亡くなる。大河も明治7年亡くなる。


2023年9月3日日曜日

柳橋の桜(一)猪牙の娘

柳橋の桜(一)猪牙の娘 佐伯泰英 

 寛政三年 1791年 初夏
 桜子3才、母がいなくなった。
 7才 竹棹を手に父親の船頭の手伝いをする。友達は琴ちゃん。
 12才の桜子は、大河内の隠居から棒術を習う。旗本二百七十石香取流棒術
 16才 大晦日、新造の屋根船の棹さしをする。
 17才 正月三日 大河内の孫・小龍太と琴女と、研ぎと鑑定の息子・相良文吉を乗せて猪牙の船頭をする。火事の遭遇する。行いの悪い息子が、付け火をし、家宝の家康拝領の短刀を盗んだと思われたが、四人の探索の結果、養子の父親が、家宝を持ち出し屋敷に火を付けていたことを探り出した。父親は本所に別の屋敷を持っていた。
  四人で父親の悪を暴き拝領刀を偽物だったということにして、短刀は城の刀蔵に収まった。


2023年8月29日火曜日

脳科学捜査官真田真紀⑰

脳科学捜査官真田夏希⑰  鳴神響一
 〜エキセントリック・ヴァーミリオン 〜

 警視庁サイバー特別捜査隊の真田夏希は、隊長・織田信和とデート中、織田が殺人容疑で逮捕される。
 江の島署の加藤に相談する。加藤は捜査一課の石田に事件のあらましを聞く。
 織田の高校時代の同級生を殺した容疑だった。現場の防犯カメラの映像があった。バーでの二人の悶着の証言があった。織田のアリバイの証拠になるタクシーが存在しなかった。
 夏希と加藤は聞き込みをするが、捜査本部と同じ答えが得られただけだった。
 翌日、サイバー捜査隊で、副隊長の横井とIT担当の五島雅史警部補に分ったことを話す。織田の無実を信じる二人は、ニセタクシーが作られたこと、ディープフェイク画像が作られ、防犯カメラをクラッキングし、動画を割り込ませたと考えた。
 五島は、織田が家にいたはずの時間に写された東神奈川駅近くの商店街の織田が映っている防犯カメラのサーバーにクラッキングの痕跡が見つけた。
 神奈川県警の三人の警視が、傷害事件、器物破損、窃盗事案でそれぞれ捕まった。三件とも防犯カメラの映像に犯行記録が残っていた。

 真田と横井と五島は神奈川県警の黒田刑事部長に会いに行く。商店街の防犯カメラへのクラッキングの痕跡を話し、三人の映像の解析を進言する。織田の現場映像をサイバー捜査隊から外部に出さない条件でコピーを送ってもらえることになった。
 加藤が、織田の事件の証言者・バーの店長と客が偽物だったことを調べた。現存しているが全く別人だった。
 織田の犯行の防犯カメラ映像のフェイク映像の解析は出来ないが、映像の挿入されたことは証明された。
 バーの店長は水谷を名乗っていたが、日系アメリカ人・カワムラだったことが、加藤の調べでわかった。
 捜査本部は一新した。織田が釈放され挨拶をした。
 加藤は五島に入手したUSBメモリーを渡した。

 織田や三警視を捕まえさせ混乱させた理由は何か。USBメモリーから、警視長官とパリ市警視総監、横浜市長の懇談する予定があることがわかった。狙いは誰か。警備はパリ市長に付く。小早川、真田は能勢長官に付いた。能勢長官は誘拐された。
 アリシアを投入し長官の監禁場所を見つけた。島津冴美班長のSISが突入し、長官は保護、二人は逮捕され、逃げた一人はアリシアが飛びかかり捕まった。
 織田が乗ったタクシーがあった。捕まったのは、店長とアルバイト従業員と客だった。
 カワムラへの接触は「ディスマス」だった。

 織田の同級生・福原は、織田に長官の略取計画を売ろうとしたが、怖くなって出来なかった。そして殺された。
 織田の慰労会が横浜中華街で行われた。三次会は「帆 HAN」だった。
 加藤は、織田にサイバー捜査隊に誘われた。加藤は所轄が好きだと断った。

2023年8月27日日曜日

畑の益虫とその増やし方

 畑の益虫とその増やし方 野菜だより編集部

 農薬に頼らず自然の力で野菜を育てる。

 ウリハムシ

2023年8月25日金曜日

忍びの副業上下

忍びの副業上下 畠中恵 

 戦国の頃、天下に忍びの一族として名を知らしめた甲賀だったが、世が治まり徳川の配下となり武家の身分を得られ、忍びとしての勤めを失っていた。
 甲賀は忍びの技を失ってはいなかった。家伝の技を受け継いでいたが、役に立たず使う場もなかった。
 上忍弥九郎、蔵人、十郎等三人は、猫探しのため江戸城の屋根に上ったことで西ノ丸様・家基と出会い、甲賀が警護の役に付いた。
 西ノ丸様の廻りに見慣れぬ忍が現れても、守りか敵か見分けがつかないため、弥九郎は甲賀が西ノ丸の守りをすることを辞めた。組屋敷で長から謹慎させられた。

 弥九郎は曲玉を見、襲われている籠を助け老中・田沼意次と顔を合わせ、一ツ橋家とも顔を繋いだ。警護に付いたり、根来も紹介したり。
 西ノ丸様も行く鷹狩りの予行で、熊がでたり食中毒があったり、四人が亡くなった事件が起こる。
 甲賀は事件の背景と犯人を突き止める。四人死亡の犯人が分らないうちに西ノ丸が鷹狩りで体調を崩し亡くなった。籠に運ばれる西ノ丸を見た弥九郎は、西ノ丸が病気であることを認めた。
 
 豊千代を次期将軍にしたい一ツ橋家に呼ばれた弥九郎は、家基が病死であることを将軍に伝えて欲しいと言われる。弥九郎は、家基が病死であることも言うが、豊千代の小姓が鷹狩場でフグ毒を試したことも伝えると言った。弥九郎は、小姓・伊藤の首を落とした。一ツ橋家は伊藤が出奔したことにした。弥九郎が伊藤を殺したことは無くなった。

 甲賀の長は弥九郎になった。昼間は百人番所のお役目で真っ当な顔で生きつつ、闇の中で技を生かして生きていこう。主を持たぬ、真の主は我ら自身。

 

2023年8月20日日曜日

えにし屋春秋  光のしるべ

えにし屋春秋  光のしるべ あさのあつこ

 摂津屋夫婦が五年前の火事で行方不明になった息子を探してほしいと頼んでくる。
初が調査を頼んだ御薦のみきが殺された。摂津屋から独立した吉蔵が死んだ。

 五年前、息子を連れ河内屋に泊まっている時に火事に遭い子どもがいなくなった。
摂津屋の妻・常、子どもが出来なくて攻められていた。幼馴染の河内屋の彦衛門と関係がし、平太が生まれた。三才になった。常は罪の意識が強く彦衛門に相談して平太を預けることにした。二人の話を聞いた吉蔵は、自分が連れ出し、彦衛門の乳母に預けると言った。
 計画の日、常は手放す気がなくなっていたが、火事が起こったために外に出てしまった。吉蔵は常から子どもを奪い連れて行く。常は何も言えなくなった。何も言わなければ平太は生きているとおどされた。そして五年が経った。
 彦衛門が、金を出さなくなった。困った吉蔵が摂津屋に迷子札を出した。摂津屋はえにし屋を頼った。
 吉蔵を動かしていたのは摂津屋だった。みきは摂津屋と吉蔵の話しを聞いてしまい殺された。みきを殺した吉蔵を、そろそろ邪魔になった摂津屋が殺した。
 平太は生きていた。乳母の娘が、本当のおっ母さんが迎えに来るかもしれないと伝えていた。
 常は摂津屋をできる限りきれいに畳んだ。奉公人に金子と次の仕事を手渡す。
 
 みきと一緒に御薦をしていた信太は、常が出会った火事の火元の小料理屋の行方知れずの一番下の男の子かも知れない。主夫婦と子ども二人は焼け死んだ。

2023年8月17日木曜日

四日間家族

四日間家族 川瀬七緒 

 四人の男女は、自殺願望があり集まった。死ぬ覚悟の話しの途中、女が来る。すぐ帰ったが、赤ん坊を捨てたことに気がつき赤ちゃんを助ける。
 誘拐事件にされたことで四人は警察に行けなくなった。女の仲間が戻ったことで四人の顔を見られSNSにさらされる。
 四人は赤ちゃんを捨てた女から組織の存在を知り、何が行われているか探る。

 赤ちゃん斡旋から臓器売買、事務所に行き全てを知った時、警察を呼ぶ。
四人もそれぞれ重い物を抱えた人たちだった。若い陸斗の死なないことにしたと言う言葉を聞いて安心する。


2023年8月14日月曜日

竃稲荷の猫 

竃稲荷の猫 佐伯泰英 

 竃河岸の裏店で三味線職人の父・伊那造と二人でくらしの小夏。父の弟弟子・善次郎が来る。伊那造は、親方の玄次店から離れ材料の材木管理をしながら三味線長屋で一人仕事をしていた。棹だけを作る。

 小夏は15才。親方から材料の材木管理を任される。雑然と置くのではなく誰が見ても何があるるか分るように、伊那造の頭の中の物を全て明らかにして管理するようにした。

 善次郎は伊那造の元で、何年も前に歌水師匠から注文されていた花梨材で三味線を作る。でき上がった三味線に歌水師匠は感激した。親方も自分たちが手を付けられなかった花梨材の三味線を仕上げた礼を言う。伊那造の見抜く眼にも、伊那造に頼んだ自分の眼にも功労があったと言う。
 善次郎が親方の下に帰っても厄介なので、善次郎の寝床と作業場を三味線長屋に作ることになった。善次郎は伊那造との二つの風の吹き込まない作業場と三畳の寝室と床の間と神棚を拵えた。
 正月三日、小夏は善次郎の実家に行く。

 中村座の芝居小屋で歌水師匠の初御さらい会が行われた。花梨三味線初披露。
 三年後には、善次郎は昼間は三味線造り、夜は長屋に戻るそんな生活になってるかな。

2023年8月12日土曜日

神様の御用人 継いでゆく者

 神様の御用人 継いでゆく者 浅葉なつ

 継いでゆく者 御用人・萩原敏益のもとに久久紀若室葛根神の名が、宣之言書に現れる。彼はムキムキになりたいと言う。敏益はいろんな食べ物屋に連れて行く。
 その中に「洋食 ふじた」があった。フジタの店主と敏益は幼馴染だった。店主は年をとり店を閉める。フジタのグラタンが好きで通っていた一人のサラリーマン・城嶋が、フジタのレシピを継ぐことになった。ククキと敏益は、城嶋のフジタのグラタンの味の再現の試行錯誤に加勢する。味の再現に力を貸しながら、敏益は久久紀若室葛根神に、自分の役目の大事さを思い出し胸を張って下さいと言う。小さな胸という神に人の子には充分大きいと答える。神と人を繋ぐ。ムキムキでなくていいのです。宣之言書に現れてから一年が経っていた。
 グラタンの再現に協力し、味が完成した数日後、敏益は亡くなった。三年前だった。
 bistro JYOSHIMA  に入った良彦は、久久紀若室葛根神と会う。敏益の孫と知った店主とククキからフジタのグラタンの味の再現話しを聞く。良彦にも懐かしいフジタのグラタンの味だった。

 永遠の相槌 良彦は、一条天皇の時代に、三条小鍛冶宗近と一緒に小狐丸という刀を打った稲荷明神の行方を探して欲しいと言われた。その時の槌を返したいと言う。
 探し回った良彦が知った。宗近が助け飼っていた犬だった。槌麻呂と名付け九年共に暮らし死んだ犬だった。
 そして良彦は向かいの家のチョコが、稲荷の元で働いていることを知った。給金を幸運に換えて斎藤家に届けてから冥界に行こうと思っていることを知った。

 ありふれた日常 穂乃香がアルバイトを始めた。良彦が神職になった時何か贈り物をしたいとアルバイトを始めた。
 御用人の友人・天眼の娘がアルバイトを始めたと、神様の間に広まった。面識のある神様が現れる。良彦は孝太郎を誘って行く。孝太郎に神職になる相談する。
 お金を貯めるためバイトのシフトを増やしてもらう。

 御用人になりたい桐堂院桜士朗。三峰の狼を連れている。
 

2023年8月10日木曜日

神奈川県警捜査協力員担当細川春菜⑤ 

神奈川県警捜査協力員担当細川春菜⑤ 鎮魂のランナバウト 鳴神響一

 神奈川県西南部の震生湖で自動車評論家・天童頼人の遺体が発見された。
 春菜は旧車愛好者から話しを聞く。

 二年前の撮影時の事故の話題が出る。事故だ亡くなったカメラマン。事故を起こした運転手は自殺していた。事故を起こしたのは天童と考えられた。天童は気を失うことがある病気だった。自殺した運転手の兄が、天童の車の整備点検をしている店のオーナーだった。

ルノー・キャトル

聞き取りにどんなところにも行くのに、今回、電話で済ませたところがあった。結局それが犯人だった。何故?



2023年8月8日火曜日

総目付臨検仕る〈五〉 霹靂

総目付臨検仕る〈五〉 霹靂 上田秀人

 水城聡四郎は、目付坂崎左兵衛尉に評定所にかけられることになった。評定所に出頭前に久世大和守の家来に狙われるが倒して時間までに入る。
 大岡越前に助けられる。

 入江無手斎は、医者と尾張に入った。 

2023年8月6日日曜日

貸し物屋お庸謎解き帖③ 五本の蛇目 

貸し物屋お庸謎解き帖③ 五本の蛇目 平谷美樹
 
 能管の翁 横笛を借りに来る翁がいる。神降ろしの笛を湊屋に預けてしまった能管吹きのために、季節が来ても降りられない神様が、気付かせるために出てきていた。湊屋九段下出店だった。本店清五郎に言わずに儲けを考えていた。

 魚屋指南 呉服屋の若旦那が、水茶屋の好意を持った女・かつに、魚屋になれと言われて、担ぎ魚屋道具の一式を借りに来る。一日ついて廻り、自分が魚屋になるのは無理、かつは自分を好きではない。どうしようもないことが分った。どうしようもないことを認めるのは諦めること、認めなきゃ次に進めない。

 五本の蛇目 何故五本の蛇目を借りにかたのか。魔除けだった。お庸が聞き出す。善太郎が女に誘われ関係を持った。気がつくと荒れ果てた小屋で寝ていた。傍に骨があった。女が迎えに来る。お札を張っていたが札が破れた。庸は、荒れ果てた小屋を探し、弔いをしてもらえる所を探す。弔って貰って女が礼に来る。父親と関係があった女のようだ。父親に言い、墓を建てると言う。

 野分の後 馬を何かされると猿を借りにきた馬子がいた。庸は男の後を付け夜の様子を見る。歩いたような後を付け流された道祖神を見つける。村人が掘り出し、流される前の場所に備え直す。

 湯屋の客 湯屋に初見の客が来る。庸の背中を見るためのようだ。みんなで阻止される。「みずら」を見たいらしい。庸の背中の文字を消されたのだろう。清五郎は庸にきずかれないように護っている。


2023年8月3日木曜日

乱菊

 乱菊 辻堂魁

 両国大橋 別所龍玄の妻・百合が、子どもの大きい子が小さい子をいじめる場を目撃し仲裁に入る。子供たちの親の申し出で礼に来た寺子屋の先生・深田匡を知った。
 匡が切腹の介錯を龍玄に頼んできた。
 匡は女敵撃ちをした。相手が、千九百石の旗本の中間になっていた。強硬な申し入れで、南部藩は、大目付に付く大城家の横槍を取り合わないわけにいかなかった。
 龍玄は介添えを果たす。匡は、紀代にすまなかったと言葉を残して逝った。
 龍玄は紀代に会う。紀代には志まという子がいた。見届けたこと、言い残した言葉を伝える。深田さんは何もかもご存知でしたよと。

 龍玄は両国橋で深田を見る。

鉄火と傳役 龍玄の剣術の師匠・大沢虎次郎の同郷の誼み、生野清順の頼みで、清順が傳役をした家禄五千八百石の長尾家長男・京十郎の介錯をすることになった。
 京十郎は嫡男だが、高家禄の後添えの母の弟がいた。京十郎は廃嫡された。町方が強請集りを働く一味を一網打尽にした中に京十郎がいた。評定所での裁きの前に切腹させようとしていた。
 時間に長尾家の別邸に着いた時、家人は殺されていた。清順も殺されていた。龍玄は京十郎の膝を斬り、介錯した。
 龍玄は大沢に報告した。

 弥右衛門 龍玄は水戸家家臣・手塚家次男・弥右衛門の介錯を頼まれる。弥右衛門は陰間を生業としたため縁を切られていた。
 弥右衛門の友・御家人・真崎新之助が旗本の三人組に追いかけ殺された。三人は酔った喧嘩の結果だと言い叱りのお咎めだけで終わる。新之助がいじめ殺されたことを知った弥右衛門は三人の旗本を殺した。水戸家家臣手塚家次男と名乗り出頭する。
 父親は息子と認め切腹が決まった。弥右衛門は一度出会った龍玄に介錯を頼む。
 父親も来ていた。弥右衛門の遺体を運んだ。良き最後であった。

 発頭人狩り 百合の幼友達・かな江が中条流の医者を知らないかと訪ねてきた。母・静江の実家・竹内家の兄・好太郎の知り合いの医者・白井堂安を紹介された。
 龍玄は刀剣鑑定の依頼があった都築家の用人・雨宮左内から、福山藩の横目付けが別所家を探っていると教えられた。龍玄は好太郎に話す。好太郎は白井に知らせる。
 白井堂安は、福山藩領で医者をしていた。百姓一揆の際、一揆勢に加勢した土地の侍衆の一人だった。白井は好太郎を頼り江戸に出てきた。三年半経つが、福山藩の横目は白井を探していた。
 好太郎、息子・専太郎、龍玄は白井の元に駆けつけるが、白井は捕まっていた。駆けつけ助けようとする龍玄の前で白井は斬られた。龍玄は横目の首を刎ねる。白井は亡くなった。専太郎は龍玄の手を借り一人を倒した。
 専太郎は龍玄のように強くならねばと道場に行くようになった。三人の横目は国元に帰ったことになっている。

2023年8月1日火曜日

日暮坂右肘斬し

日暮坂右肘斬し 門田泰明

 戟戦 芳原竜之助頼宗56才の剣友・具舎平四郎満行が、平四郎の得意技・右肘斬しで殺された。傍にいた妻・早苗は傷を負ったが命は助かった。竜之助は、右肘斬しで仇を討つつもりで右肘斬しの訓練をする。 
 平四郎は二十過ぎの頃。信河数右衛門高時と料理屋で喧嘩をし、階段から転がり足を骨折した。喧嘩の後、平四郎は無役になった。
 竜之助は平四郎の家に寄ったところ三人組の浪人に襲われた。右腕を斬り落とした。辻斬りだった。平四郎を殺した張本人だった。

 夢と知りせば 
 六百石の鷹野家当主・九郎龍之進と七百石信河家三男・和之丈高行が、旗本家武徳会・剣術決勝戦を戦っていた。勝ったのは龍之進だったが、判定直後高行が側頭部を木刀で殴り龍之進は怪我を負い、亡くなる。
 龍之進が自分の息子だったと知った竜之助は和之丈高行に挑む。右肘斬しを放つ。名前を名乗り、龍之進の父だと名乗り、高時と喧嘩した平四郎の友だと名乗った。

2023年7月30日日曜日

勘定侍柳生真剣勝負〈七〉 旅路

勘定侍柳生真剣勝負〈七〉 旅路 上田秀人

 淡海一夜は、柳生十兵衛と国元へ向かっていた。
 箱根で小田原藩の横目付と関所番頭から足止めの嫌がらせに遭う。宗矩の命で伊賀者に狙われるが、十兵衛は全てを乗り切る。

 宗矩は信州高藤藩 の保科肥後守を執政にすべく大石高への領地替えを企む家光の意向に沿わねばと、会津藩に潜り込ませた伊賀者に密命を発する。

 一夜への嫁入りを望む信濃屋の永和と伊賀忍・佐夜は江戸の駿河屋を訪れる。宗矩の知るところとなり伊賀忍を差し向けられる。佐夜は切抜け、国元に向かった一夜を追い二人も江戸を出る。
  
 老中・堀田加賀守は、左門を陰謀に巻き込む。家光からの密書・柳生を滅ぼせ。

2023年7月28日金曜日

闇医者おゑん秘録帖③ 残陽の廓

 闇医者おゑん秘録帖③ 残陽の廓 あさのあつこ

 おゑんが武士から預かった由利が自殺した。子が授かり体力が落ち、死ぬか生きるかの堺を越、子を亡くし、それでも生きると思い始めていたにも関わらず、自裁した。
 五年前に別れた兄に会ったから。兄・甲三郎は、吉原の首代になっていた。由利も甲三郎も自分を卑下し名乗り会えなかった。ために由利は死んだ。

 甲三郎は吉原で変わった死に方で亡くなる者が続いたためゑんに診察を頼んで来た使者だった。ゑんの元で働く末音が、毒・越冬虫だと見抜いた。誰かが、越冬虫の毒としての効き目を吉原で試していると考えた。また、越冬虫を使って強請ろうと考えたのではないか。使っていた占い師は自死した。占い師は十年前の花魁と大名の殿様との相対死の殿様の家来だった。お取りつぶしになった恨みだったようだ。
 ゑんが狙われたのは、占い師と結託した、美濃屋の番頭の命令だった。美濃屋の番頭は好きだった花魁の仇討ちだったと言う。

 小夜は姉花魁の死を見ていた。殿様が、丸薬を花魁に飲ませ眠ってから咽を突き、それから自裁した。小夜は丸薬が入った印籠を大事にしまった。小夜はゑんに印籠を渡す。

2023年7月26日水曜日

吉原裏同心〈39〉 晩節遍路

 吉原裏同心〈39〉 晩節遍路 佐伯泰英

 吉原会所の裏同心・神守幹次郎にして八代目頭取四郎兵衛は、九代目長吏頭に就任した十五才の浅草弾左衛門に面会した。そして吉原乗っ取りを目論む西郷三郎次忠継が弾左衛門にも触手を伸ばしていることを知る。

 切見世で起きた虚無僧殺しの背後に、吉原を支えてきた重要人物がいることに気付く。三浦屋の隠居が動かしていた者に、三浦屋の宝なる物を取られ、隠居は強請られる。三浦屋の隠居が、虚無僧を殺させたことで起こったこと、当代は、見世の存続を願い、幹次郎は、隠居を四国八十八ヶ所のお遍路巡りに出した。六郷の渡しまで送った幹次郎は、現れた隠居を強請る者を斬り、海に流した。
 虚無僧の死は自殺とされた。

 西郷三郎次忠継と、神守幹次郎との勝負は一対一で行われた。西郷は倒れた。他の者の勝負は、桑平市松と瀬口竹之丞率いる若い同心や八丁堀の部屋住みに任された。

 四郎左衛門の父親から旅の手紙が届いた。百年の功績、一日の愚行に消えし。
次は四国に着いた時。

 浅草田圃の吉原検番の地で稲刈りが始まった。切見世にいたあやめは、吉原会所で働くようになった。

 

2023年7月24日月曜日

入船長屋のおみわ⑥ 隣人の影

入船長屋のおみわ⑥ 隣人の影 山本巧次
  江戸美人捕物帳 

 入船長屋に焼物屋の紹介で。畳職人が住み始めた。職を偽っていると噂があり、美羽が調べると茶人と分った。焼物屋が死因不明でなくなった。茶人は失踪する。茶人は詐欺に関係したと噂があった。茶人を慕う、智之助が長屋を訪ねてくる。智之助は二枚目で実直。茶人が詐欺に関係しているとは考えられないと言い、美羽を助ける。
 詐欺とは、本阿弥光悦の茶碗を五腕を一客、三百万で売っていた。偽物と見抜いた者がいた。本物と鑑定書を書いていたのが、茶人・露風だった。一客は本物だった。
 偽物四腕を作った者を探し出し、露風の鑑定書を真似て書いた者を暴き出した。智之助が美羽が言った所を訪ねると久乃源はいた。
 騙された者の中に大名がいたため詐欺の調は止められた。本物の光悦の茶碗を買った者が大名だと分り、偽物を作らせ売った者を捕まえた。
 露風は智之助を知らなかった。智之助は姿を消した。たぶん、智之助は大名家の忍だろうと思われた。

2023年7月22日土曜日

八丁堀強妻物語〈三〉 隠密夫婦

 八丁堀強妻物語〈三〉 隠密夫婦 岡本さとる

 芦川柳之助と千秋は、団子屋の扮して、奉行所も手を焼く悪の巣窟・日暮れ横丁にせんにゅうすることになった。
 掏摸の頭目・百足の助松から逃げてきた市太郎も一緒に住むようになる。
 出刃の楽次郎という流れ板前と、傘治しの浪人・猫塚禄兵衛と知り合う。
 日暮れ横丁には、顔を知られていない幻の儀兵衛が牛耳っていた。
 逃げてきた賭場荒らしの乙三が殺された。百足の助松が逃げ込んで来た。市太郎が勾引かされた。市太郎は儀兵衛のところにいる。儀兵衛との繋ぎ役、「きよの」の女将のぶは、市太郎を助け出そうとする。儀兵衛の手下に斬られる。そこへ楽次郎と猫塚、柳之助、奉行所の役人が踏み込む。
 楽次郎はのぶの幼なじみで恋しい人だった。楽次郎はのぶを助け出す。猫塚は、儀兵衛が父の仇だと分り名乗りを上げ、敵討ちをする。市太郎は助け出される。市太郎の両親は亡くなったが、二つの大店の孫だとわかり引き取られた。
 正体が分ることを恐れ、柳之助と千秋は姿を現さない。
 

2023年7月20日木曜日

佐倉聖の事件簿 アコギなのかリッパなのか

佐倉聖の事件簿 アコギなのかリッパなのか 畠中恵 

 一度読んでいる。
 特別収録の「思い出した・・・」は前にはなかった?

 沙希・私は殺された。結婚半年、夫・秀夫と私の友達・夫の愛人・真紀子に。
 大学生の頃から片思いの秀夫は、硝子工芸の小さな工場で働いている。夢は硝子芸術で身を立てること。大学卒業から二年、秀夫は、プロポーズしてきた。裕福な妻が欲しいと。私には親から受け継いだ資産がある。
 真紀子は専業主婦が夢だそうだ。
 沙希は結婚前、余命一年と言われた。普通の生活を送りたくて、医者には口止めをした。親の代からの弁護士、私を可愛がってくれる弁護士には、家にビデオカメラを仕込んであることを言っておいた。
 私は、睡眠薬の入ったワインを飲まされ、風呂場で手首を切って自殺したようにされた。
駆けつけた弁護士、医者、警察と話し合われ、秀夫に部屋にビデオがあることを伝えられた。
 みんなが帰った後、秀夫と真紀子は24のビデオを見つけた。安心して二人は話している。
 真紀子が23個のビデオを持ち帰ろうとした時、帰ったはずの警察も弁護士も現れる。
 ビデオは押収され、少し窓が開いていたので、録音させて貰ったとも。
 秀夫と真紀子は連行される。

2023年7月18日火曜日

手指の痛み・変形 リュウマチ最高の治し方太全 

 手指の痛み・変形 リュウマチ最高の治し方太全 金子祐子

右小指  へバーデン結節

右人差指 ブシャール結節

2023年7月16日日曜日

おいち不思議がたり⑤ 渦の中へ 

おいち不思議がたり⑤ 渦の中へ  あさのあつこ 

 いちと新吉の祝言中、浦之屋で食中毒が出た。松庵も明乃も美代もいちまで浦之屋へ手当てに行く。松庵も仙五朗親分も、毒だと思い調べ始める。
 浦之屋の子ども付き女中・津江が、毒を盛ったのは私です。と書き置きを残して死ぬ。書き置きは昔の物だった。
 浦之屋の主の頭に釜が落ち、大怪我をする。
 元菖蒲長屋の住人・巳助が捕まる。巳助も自分だという。巳助は妻を亡くし、落ち込んだ日々を送っていた。再婚し長屋を出たが、再婚の相手は芝居だった。出入りのあった浦之屋の手代・文吉に犯人に仕立てられたのだった。使い込みを主人に咎められない前に殺そうとした。

2023年7月14日金曜日

北の御番所反骨日録〈七〉 辻斬り顛末 

北の御番所反骨日録〈七〉 辻斬り顛末 芝村凉也

 裸の死人 小普請の御家人 の若侍が裸の死体で見つかった。親戚筋が養子を取り病死で方をつけようとする。若侍の許嫁・小夜が、裄沢の前に現れ、何故彼・村田健志郎が亡くなったかはっきりさせてほしいと頼む。
 村田は、百人組に登用されることになっていた。昔の役どころ・与力、玄米取り八十石となるはずだった。親戚が同心で一緒にと願った。村田の出費で祝いの席を開かさせ、これからの同僚・上役の接待をさせられた。村田に無体を働いた。そして村田は死んだ。
 判ったことを、村田の親戚、小夜を集め、裄沢は話した。小夜は後のことは自分には関係がないこととしたが、演席代七十両は、新しく村田を継いだ養子に払わせず、親戚筋で払うようにと注文を付けた。
 小夜は大奥に奉公する。裄沢は、五年先、十年先に、百人組の組頭や高梨与力に復讐する気かなと考えた。

 痴情の死 物乞いのような僧が、あだっぽい女を路上で刺し殺した。調べた筧も藤井も何も分らない。僧は真ともに答えない。
 裄沢は、二人は盗賊仲間ではないかと言い出し、調べ方が変わり盗賊集団を見つけ捕まえられた。隠れ家が寺であったため寺社奉行まで引っ張りだした。
 裄沢を引き立てようとする声が上がる。

 辻斬りの顛末 三、四件の辻斬りがあった。何も残さない。どこに現れるか判らない。そんな時、裄沢が、今度は吉原辺りだろうと推察する。張り込んでいた所に辻斬りが現れ、下っ匹が殺される。近所に煙草入れが落ちていて初めて手掛かりを掴んだ。
 浮かび上がったのは宇和島藩抱えの漢学者・乱艟。将軍の父親・治済のお気に入りだという。奉行所は手を出せなくなった。
 裄沢は、ずーと張り込んでいた見張りを外し、裄沢が囮になって乱艟をおびき出す。浪人姿の来合と代わり抜き打ちしてきた乱艟を来合が斬り捨てる。
 辻斬りをしようとして今回は斬られたと見られた。一ツ橋家は何も言ってこない。裄沢は謹慎した。
 裄沢をどうするか考え中。

2023年7月12日水曜日

武商繚乱記〈二〉 悪貨

 武商繚乱記〈二〉 悪貨 上田秀人

 山中小鹿 大阪東奉行所普請方同心。東町奉行所増し役に出向した。
 伊那   和田山の娘。小鹿の妻になったが不義をはたらく。
 伊三次  阿藤家の三男。伊那に近づき追放される。
 中山出雲守時春 幕府目付から、大阪東町奉行所増し役。
 堺屋太兵衛 商人
 淀屋重當

2023年7月10日月曜日

京都梅咲菖蒲の嫁ぎ先

 京都梅咲菖蒲の嫁ぎ先 望月麻衣

 時は大正、四神の力を持つ「神子」が台頭する時代。いわく付きの名家・梅咲家の令嬢・菖蒲は、幼い頃、許嫁として垣間見た桜小路家の御曹司・立夏に一目惚れをする。
 立夏を一途に思い続け、十五才で桜小路家に越してきた菖蒲だったが、立夏は冷たい瞳で菖蒲を拒絶した。
 梅咲家も桜小路家も賀茂家の分家だった。江戸時代、梅咲規貴が世を乱す悪人として捕らえられ流罪になっていた。梅咲家は誇りを取り戻そうとした。伝わる「玄武」の力、商才があり指折りの大富豪になった。
 桜小路家は伯爵だった。芸術の「朱雀」でもあった。今や没落の危機にあった。
 菖蒲と立夏の結婚は政略結婚だった。
 梅咲家の長男・藤馬は幼い頃「白虎」の力を持っていた。成長と共に薄れ「神子」になれず十八才で家をでてしまった。菖蒲には能力の兆しがなかった。

 冷たい桜小路家での扱いだったが、菖蒲は心を尽くしていれば必ず伝わる。と明るく過ごす。そんな菖蒲に、立夏と女中・千花との仲が聞こえて来た。菖蒲は、自分がこのまま家に帰ると、桜小路家が困ったことになるため、パーティで自分が失敗して家に帰ることになったことにしようと決心する。
 パーティの日、立夏は千花と家出をしようとして、千花に断られた。桜小路家の長男の嫁・蓉子は、夫・喜一が、愛人と蓉子のベットにいるのを見て、錯乱した。部屋に火を付けた。
 菖蒲は、立夏が大切にしている母親の肖像画を護るため飛び込んで行く。気を失うが、その前に特殊な力を発揮した。立夏が菖蒲を助ける。菖蒲が「麒麟」の力に包まれたのを見た。
 家を出て、力が戻った藤馬は審神者になっていた。見えないところで菖蒲を見守っていた。使用人として菖蒲に付けていた桂子から報告されていた藤馬は、立夏の仕打ちを許せない。
 桂子は、立夏に礼を言って立ち去る。立夏は、菖蒲が、本当に優しい人物だったのだと思った。
 菖蒲は、立夏は、身分で人の判断をしない人、自分が間違っていたと思えば頭を下げられる誠実な人と思った。思っていた以上に素敵な人に恋をしていたと思った。千花と幸せに暮しているだろうと。

 菖蒲は兄と病弱な母と審神者が集う椿邸で暮した。菖蒲は「斎王」の候補になった。菖蒲は自分の能力を知らない。菖蒲に護衛が付くことになった。梅咲家の父親は、桜小路家の長男・喜一と菖蒲をこちらに側に拉致することを考えた。喜一は蓉子を離縁した。心が壊れた蓉子は、施設に入っていた。
 家を出て一人暮らしの立夏の所に妹・撫子が来る。兄の企みで菖蒲を拉致するため立夏を菖蒲の護衛にしようとした。撫子は、兄の計画を立夏に伝える。立夏は菖蒲の護衛をすることにした。
 護衛は立夏を含む四人に決まった。
 審神者との会話で、菖蒲は「麒麟」の能力のある者が斎王になるのではなく、「斎王」を指名するのだと知った。自分の能力を知らないまま、遠くの風景を見る。そして話す。蓉子を指名した。兄・藤馬と蓉子の関係も知った。藤馬に蓉子を迎えに行くように言った。

 父親が菖蒲を拉致し、桜小路家に連れて行った時、桜小路家は、警察が取り囲んでいた。立夏が兄の悪事を暴いた。桜小路家の父親は阿片中毒で地下に軟禁されていた。喜一は逮捕された。
 立夏は詫び、菖蒲は恋を貫いた。

2023年7月8日土曜日

御刀番黒木兵庫 無双流逃亡剣

 御刀番黒木兵庫 無双流逃亡剣 藤井邦夫

 国許で暮す側室と長子・虎松を溺愛する水戸八代当主・斉修が、虎松五才の袴着の祝いに裃と家紋入りの脇差を贈った。その事実を知り、正室・蜂姫は虎松を亡き者にするよう隠密組織・裏柳生に頼む。刺客の凶刃が虎松に迫る。御納戸方・黒木兵庫が立ちはだかる。
 代々・無双剣を受け継ぐ黒木家の兵庫は虎松と二人で江戸へいく。

 斉修から贈られた脇差と裃で虎松と証明され殿様に会うことが出来た。兵庫は最後に幼なじみを斬った。相良竜之介・柳生の草だった。

2023年7月6日木曜日

鬼役〈三十三〉 初心

 鬼役〈三十三〉 初心 坂岡真

 天保十五年 弥生 矢背蔵人介は鬼役を養子の卯三郎に譲り、隠居のはずが、どうしたわけか、小姓頭取格奥勤見習いという役に付き中奥の炭置部屋に留め置かれている。役料は無し。
 志乃の客・徳大寺実堅が、誰かが、僅かな分量の効き目の無い物を不老長寿の薬と偽り徳大寺のおすみつきまで添えて打っているものがいる。と情報をくれた。本物を所持しているのは、水戸中納言だった。
 弥生四日 町人が城内でお能見物を許される日、面を付けた大男が刀を抜いた。蔵人介は立ち塞がり、面を切る。紅毛人だった。狙いは水戸斉昭だった。
 蔵人介の知り人薫徳は、毒薬作りを頼まれる。時間稼ぎに断っていると勾引かされた。
 紅毛人・捨飯を使っているのは道伯だった。蔵人介が斉昭を守り道伯と対している時、金縛りの術を使われた。捨飯は蔵人介に袈裟懸けで胸を切った。ために蔵人介は覚醒し、斉昭を助けられた。
 和蘭陀商館長たちが、括られ屋形船で見つかった。江戸城へ急ぐ蔵人介。和蘭陀商館長たちに化けた道伯の前に立つ。蔵人介が突き出す刀の前に捨飯は立ち、突き刺さる。

 卯三郎に初密命が下った。蔵人介は迷いながら、殺される菅沼弥兵衛を調べる。代々徒目付で、新たな普請下奉行となっていた。菅沼は名主の用心棒に斬られた。火除地を我が物とするな名主、普請奉行、代官を目安箱に訴えていた。菅沼は名主の用心棒に斬られた。蔵人介は調べた。名主が殺された。火除け地を我が物とする計画を立てたのは奥右筆だった。密命を下す者・阿部伊勢守。奥右筆・安西は死なせてならぬ役人だ。と言う。安西は初心を忘れた。番士の初心は道理を曲げぬこと。政治をなさんとする者は、私心を捨てること。阿部にも、初心を忘れないこと。
 安西に密命が下った。

2023年7月4日火曜日

辻番奮闘記五 絡糸  

辻番奮闘記五 絡糸  上田秀人

平戸藩士・斎弦丿条は長崎警護の辻番。長崎代官・末次平蔵から、先代藩主が関わった密貿易の書きつけの存在を知らされる。
 密貿易の対応について国許や江戸の指示そ待ちながら辻番をこなす。長崎の目下の問題は、各国から流入してくる牢人だった。牢人たちが食い詰め、交易で潤う長崎を目指す。
 長崎奉行・馬場三郎左衛門と長崎代官・末次平蔵に挟まれ牢人対策に走り廻る。

2023年7月2日日曜日

焼け野の雉

 焼け野の雉 梶よう子

 小松町で飼鳥屋「ことり屋」を営む女主人のけい。
 店の元主人でわけありの夫・羽吉とは離縁した。

 江戸の町に火事が起きた。けいは九官鳥の月丸はもちろん店の鳥を大八車に乗せて逃げる。店の廻りの人たちと一緒に逃げる
 八丁堀同心・永瀬の娘・結衣を預かった。結衣は文鳥のチヨを連れていた。結衣は母親が殺されるのを見て声が出なくなっている。
 回向院へ行く。知り合いの医者・沢渡や、鳶の若頭などの好意で回向院の庫裏に行く。
御救小屋ができ、両国の御救小屋に行く。鳥は回向院の僧に頼み、けいは毎日回向院へ行く。与力の好意で御救小屋の端の方で鳥籠も一緒にいる。
 御救小屋での生活が、十日を超えても永瀬の安否が判らない。鳥を見に来る者がいる。長くなると鳥を嫌がる人もいる。けいの昔馴染が、噂を流す。みんなのけいを見る目が変わり、けいと一緒にいる人にまで嫌みを言う人が出る。けいたちへの風当たりが強くなる。
 火事と聞いた羽吉が大阪から江戸へ来た。けいとやり直すつもりで来たと言う。小松町の鳥屋は自分の店だ。羽吉と一緒に店を続けるか、出て行くかしか選ぶ道はないと言う。永瀬のことも噂を言われ、羽吉に攻められ、けいは永瀬を慕っていると気がついた。
 夜、御救小屋に泥棒がでた。月丸が声を出しみんなを起こした。泥棒は捕まった。月丸が皆に礼を言われ、また人気者になった。
 毎日、小鳥を見に来るさいを助けたのは役人だと知った。まだ眠ったままだと聞き会いに行く。永瀬は馬琴の家にいた。馬琴の息子・宗伯は医者だった。永瀬はやっと目を覚まし、食事をとれるようになったところだった。顔半分は晒しが巻かれていた。沢渡が宗伯の所にきて永瀬を見つけた。馬琴からけいに知らせられたが、けいの昔馴染みに告げられけいの所に届かなかった。
 永瀬は、妻を殺した男の義兄弟を見つけ尋ねた。火事で下敷きになった男からさいを託され永瀬はさいを助けた。永瀬はボロ布を着せられ火傷が酷く、口も利けない状態で運ばれた。
 けいは、いつまでも籠の鳥ではなく、自分で飛び立とうと思う。雉は飛ぶのが苦手だ。焼け野の雉のように地をしっかり掴んで颯爽と立つ。
 結衣を永瀬ところに連れて行く。結衣は父上と声を出した。永瀬は動けるようになる。結衣の声は出ない。永瀬の母親を殺した男が捕まる。結衣が顔の確認をする。母上を刺した男です。父上と結衣は言った。飛びの若頭が呼ばれた。犯人は頭の妻の弟だった。人を刺したと頭に大阪に逃がして貰っていた。
 一緒に逃げていた人が、身寄りを頼って離れて行く。結衣が、同心仲間の妻の迎えで御救小屋を離れた。
 けいは月丸を連れて、羽吉が奉公していた越前屋に行く。けいは奉公し勉強する。羽吉は越前屋の長崎支店に行った。

2023年6月30日金曜日

町医・栗山庵の弟子日録(一) 仇持ち 

町医・栗山庵の弟子日録(一) 仇持ち  知野みさき  

 仇持ち 藩の上役の奸計によって家族を亡くし、遊女に落とされた伊勢国津藩の武家娘・石川凛。
 遊女から救い出し、武術、医術を教えてくれていた刀匠・望月要がいなくなった。要は元伊賀者だった。仇の一人は辻斬りに殺された。もう一人・山口を追って江戸へ行く。要の伝手を頼る。千歳の前で川に身投げするする。助けられ栗山庵で、千歳と佐助との三人暮らしが始まった。
 千歳も元伊賀者だった。町医者千歳は津藩江戸屋敷に出入りしていた。
 凛は、千歳と津藩江戸屋敷に行き、仇・山口成次は病気で寝ていた。薬を用意していくが、耳元で仇、お命頂戴と言った切りで殺さなかった。山口は生きる屍だった。その夜、山口は死んだ。
 千歳と要は知り合いだった。要の死んだ妻に凛はにているらしい。千歳は要は不治のやまいだったのだろうと言う。
 千歳を仇と狙う者がいた。清水柊太郎が用心棒をしていた。佐助は火事の時、千歳に助けられたが、片手を失っていた。彼は女だったが男として生活している。凛は千歳の元で医術を習うことにした。

 夏の鎌鼬 凛は柊太郎が師範をする佐々木道場で剣道を習うことにした。
 料理屋の息子・由太郎14才の病気相談される。由太郎は診察を拒む。気鬱を疑う。
 凛は由太郎と文のやり取りで話をした。誰にも聞こえないように。紙はすぐ破棄するように。凛は兄の友人・仇の一人から手込めにされたことを書いた。由太郎は友人だと思っていた岳哉から男色を仕掛けられていた。病気と称して閉じこもった。脅迫されているようだ。
 岳哉に天罰が下った。鎌鼬にあい、顔を怪我し、尾張に帰った。由太郎は元気になった。

 凛は一月前の山口の死までの話を佐助と柊太郎にした。全てでは無いけれど。
 千歳も話したいことがあると言う。

 忘れぬもの 千歳と要の恩師・清衛。清衛の娘・蓮と菫。菫は要と十二年前に一緒になる。三年後難産で赤子は亡くなり、菫は臥せった。忍を抜けていた千歳は、医者として菫を診ていた。要も忍を抜けた。刀匠の要としての用で要が大阪に行き、千歳が町の薬屋に行っている間に菫は毒死した。要は自死と信じてくれたが、清衛は、千歳が殺したと思った。清衛は千歳の命を狙った。お頭が間に入り仇討ちは断念された。
 先月、清衛の弟子・慶二に襲われた。
 凛、千歳、佐助は、門人が帰った後で稽古した。佐助は手裏剣、凛は剣術、千歳と柊太郎が剣術を稽古する時、凛は佐助に手裏剣を教える。千歳が忍の武器の訓練をする時、凛と佐助は柊太郎の剣を除ける稽古をした。佐助は書き方や算術を習った。
 清衛が健忘になり寝たきりになっていた。品川に行く。凛に来てほしいようだ。
 佐助は留守番、凛は清衛に会う。清衛は八年前に戻っていた。死ぬ前に会いたかった。凛は千歳に振られ、要と一緒になったと思っている。千歳に話すと菫は要を好いていたが蓮が要を好いていたので私のところにきたのだと言う。慶二は清衛は、菫を振り一族を抜けた千歳を良く思っていなかったと言う。
 清衛は亡くなった。

 凛は佐助の腕に胴乱を付け籠を入れて財布にし、物入れにした。
柊太郎は佐助が女児であると分っていると思っていたが、気がついていないようだ。



2023年6月28日水曜日

とりどりみどり

 とりどりみどり 西條奈加

 螺鈿の櫛 飛鷹屋の末息子・鷺之介11才は、去年長姉・瀬已20才がお嫁に行き喜んでいた。伯母さんに、次女・日和17才と三女・喜路の見合いを頼む。
 姉が婚家から帰って来た。大切な母親の形見の螺鈿の櫛が無くなったという。婚家も金遣いが荒くやっていけないと言う。瀬已は、ちゃんと言ってくれればいいのにと言うが・・・。
 三人の姉が、自分の名前に因んだ螺鈿の櫛を持っていることを知った。

 ふういんきり 姉たちと一緒に芝居に行った鷺之介は、職人の息子・五百吉と妹・つきと友達になった。五百吉は、何度も何度も同じ男と出会うと話す。顎に傷があるその男と稲荷の境内であったと言う。話を聞いた姉は、五百吉が危ないと言う。五百吉が勾引かされる寸前、姉が五百を助ける。封印切りをした封印を拾われたと思っていたのだった。日和は、そんなの有るわけないのに・・・。

 とりかえばや 喜路が戯作者になるために竹内丙蔵の弟子一刻歳に会いに行く。一刻歳は怪我をして倒れていた。一刻歳は丙蔵の娘婿の弟だった。丙蔵は住まいを隠していた。そのために喜路は一刻歳に会いに来たのだった。やってきた兄。一緒にきた丙蔵の妻・雁に、喜路は、丙蔵先生ですねと言う。三年前に、書けなくなって江戸からいなくなった丙蔵の代わりに、雁が書いていた。そのことを知った一刻歳が、強請っていた。原稿を持ち出し、2代目丙蔵の名を継がせと言ってきた。原稿を取り返すため雁が殴った。喜路は、女にしか書けない。雁の弟子になると言う。一刻歳も喜路も雁の弟子になった。

 五両の手拭い 亀甲堂という手拭い屋で、売れないと言われた手拭いを五両で買った。手拭いやの主人が返して欲しいとやってくる。姉たちは返さない。おかしいと姉たちは柄を読む。主人は捕まった。盗人が調べたものを書き手拭いにしていた。

 鷺と赤い実 母・七の月命日に、初めて鷺之介が一人で墓参りに行った。母の好物の拳骨饅頭を買って行く。母の墓に、拳骨饅頭と、姉たちの櫛と同じような櫛があった。鷺と南天かなと思い持って帰ってしまう。姉たちは、櫛を見て、鷺と七竃だと話す。鷺之介は、寺で誰が置いたか調べるが分らない。拳骨饅頭屋で聞く。知っていた。十年ぶりに江戸に来た錺師の佐木蔵さんだった。佐木蔵への言づてをする。姉たちと待ち合わせの場所へ行くと、姉たちは夜中に泣いていた赤子の話をしていた。鷺は捨て子なの?

 とりどりみどり 飛鷹屋の長男は、飛鷹屋の主人と七の息子・鵜之介23才。三人の娘はそれぞれ母親が違った。
 鷺之介は、家出して五百吉の家に行った。次の日の朝、鵜之介が迎えに来た。そして鷺之介に出生の話をした。
 鷺之介の母は七だが、父親は飛鷹屋の主人ではないこと。七は草津で鷺之介を産んだこと。草津には、喜路の母親が付き添ったこと。七が恋しく、鵜之介と瀬已は女中頭・滝と共に草津へ行き産んだのを見たこと。知れたら七が赤ん坊と家を出なければならないため、赤ん坊を捨て子とし、七が私が息子として育てると主人に話したこと。
 鵜之介と鷺之介は、佐木蔵に会う。二人で話す。拳骨饅頭の好きなのは佐木蔵だった。櫛を貰って欲しいと言われ、好いた人が出来た時その人に贈りますと返事する。
 父・鳶右衛門は鵜之介から話を聞いた。いつから知っていたのかときく鵜之介に、七と鵜之介と鷺之介の三人で楽しそうに語らっていた時、三人は親子なんだと、よく似ていた。
 知らない振りをしたのは、七んい何度も痛い思いをさせていたことに気がついたから。
 鷺之介が大きくなったら男三人で愚痴をこぼそう。と鳶右衛門と鵜之介は楽しみですねとしゃべっている。

 

2023年6月26日月曜日

空也十番勝負(九) 荒ぶるや

空也十番勝負(九) 荒ぶるや 佐伯泰英 

 空也は祇園感神院・八坂神社で、祇園はんの氏子の古老に、催しの手伝いで武蔵坊弁慶を演じてほしいと頼まれる。
 牛若丸は舞子の桜子、五条の橋の上を演じた。芝居が終わった時、薩摩藩の侍が舞台に現れ空也は三人を打った。
 三日で興業は終わった。
 翌日、所司代・七万四千石越後長岡藩九代藩主・牧野備前守忠精に一力に呼ばれる。桜子等とかっぽれを踊るが、踊りを知らない空也は、扇子を持ち直心影流奥義を披露する。のち、刀を持ち踊ったのが直心影流の奥義だったことを伝える。
 神保小路尚武館と、高野山の姥捨の里に当てた手紙を所司代から送ってくれることになった。
 空也は鞍馬山に向かった。

 藥丸新蔵は府中宿音羽山清水寺で、野太刀自顕流対薩摩示現流の最後の試合をした。一対六の試合はすぐに終わった。新蔵は立ち去った。

 鞍馬で半月を過ごし、鞍馬から鯖街道を通り若狭小浜へ行く。羅城坊が着いてくる。
 途中、若狭小浜藩酒井家家臣・調役野尻源左衛門夫婦と道連れになる。野尻は、牧野備前守も用人の室尾寺も知っていた。そして薩摩藩の武芸者が追っていることも知らされた。京の薩摩藩を指揮っているのは、建部民部という剣術家だと知らされた。
 足に怪我をした野尻の妻を庇いながら峠を越す。薩摩藩士が来るが退ける。

 小浜藩藩校道場で数日を過ごし、琵琶湖竹生島へ行く。手島道場へ行くと空也は捕まり、牢舎に入れられた。道場主と孫が殺された時間、別な場所で空也は見られ、犯人でないことは分っていた。野尻と羅城坊が来てくれる。
 
 竹生島の宝厳寺で建部が待っていた。隻眼で左足を引きずり竹杖で歩いた。不自由な右手で竹杖の中の忍刀が空也に放たれた。空也に眼帯を切られ隻眼が予期せぬ両眼になり焦点が変わっていた。空也は除けた。民部が間合いを詰めた。首筋に刃を打ち込む。民部は崖下に飛翔した。建部民部は策を弄する剣術家だった。島津重豪が放った最後の刺客だった。
 九番勝負なり。

 神無月 重富霧子、利次郎夫婦、眉月も姥捨の里にいた。長浜からの空也の文と今津屋の船で江戸からの荷物が届いた。
 
 佐伯彦次郎は、和歌浦で百両勝負をし、空也が来るのを待っていた。