2017年11月30日木曜日

御家人無頼蹴飛ばし左門⑨ 雷火一閃

御家人無頼蹴飛ばし左門⑨ 雷火一閃 芝村凉也
 赤鞘組の頭目に財部擬宝軒が返り咲き、左門の周りの人々を危険に巻き込まないように左門はじっとしていた。
 三日日家の札差・小桝屋で大目付の家臣が番頭を斬り殺す場面に遭遇する。小桝屋が手鎖になった。赤鞘組の裏に御前と呼ばれる老中がいることを知る。
 二人組の槍使いは倒した。
 左門は赤鞘組の息の掛かった代官所の書類を盗み出す。
 小桝屋に対する刑に納得がいかない札差が、左門が手に入れた書類を参考に勘定所の米価の定めに疑義を目安箱で申し立てた。御前に敵対する老中・兵衛様が調べることになった。兵衛の元で働く忍は札差の下にあった左門の手に入れた書類を盗み出す。この書類を元に、各代官所で行なわれていることを知った兵衛は証拠を揃えていく。代官所は正しい米相場よりずっと低い額をお上に申告し、納めるべき年貢金より大金を抜いて着服していた。
赤鞘組に属する各地方の代官は代えられる。御前の包囲網は狭まる。御前は擬宝軒を殺した。
 兵衛は左門が気付きしたことに驚く。忍は兵衛に左門を手懐けるのは権力のある人には無理だという。
 三日日左門は二十五俵一人扶持のまま、甲府勤番になった。小桝屋は借金を帳消しにし、後ろ盾になることを伝えた。八月、乾太と共に江戸を発った。

2017年11月29日水曜日

秘め事おたつ 細雨

秘め事おたつ 細雨 藤原緋沙子
 米沢町の稲荷長屋に「青茶婆」たつが住んでいる。たつは貸し屋と金貸しをしていた。
たずは元は花岡藩江戸屋敷の奥を取り締まっていた。多津の部屋子美佐は側室になり男の子を産んだ。病気になった(毒?)美佐は息子・吉次朗を屋敷から出した。五年前、女中と吉次朗がいなくなり、正室の跡継ぎは疱瘡の後重い障害が残ったため吉次朗を探し出すことになった。多津は屋敷をでて吉次朗を探していた。
 細雨 同じ長屋の棒手振り弥之助が身投げをしようとしていた女・ちよを連れてくる。ちよは植木屋の里子だった。七才の時、養父母に娘が生まれ、ちよは使用人待遇になった。娘は十五才で疱瘡で亡くなり、養母も亡くなった。養父が木から落ち亡くなった途端、借金取りに家屋敷を取られた。ちよが中居として働き、醤油問屋「丹波屋」の主人・七兵衛の内儀に納まった。七兵衛は妾を囲い、ちよは手代との不義を疑われ、妾に子どもが出来た。ちよは家を飛び出していた。
 たつは元岡っ引き・岩五郎に頼みちよのことを調べる。千代の父親は二千石の旗本の三男で養子に行き、今は亡くなっていた。母は女中でちよを産んだ後亡くなった。千代の養父は旗本の庭の植木の手入れをしていたと分かった。七兵衛の妾は番頭・富蔵の情婦だった。七兵衛が何者かに刺された。富蔵の仕業であることを暴き、富蔵が丹波屋の乗っ取りを謀ったことを暴く。
 朝顔 たつは医者・田中道喜に一両を貸す。軒看板に「煎薬一服十六文」と書くようにアドバイスする。
 たつは掏摸をする又吉8に会う。又吉は病気の父親のために掏摸をしていた。父親を道喜に見てもらう。父親は大工で時蔵という。又吉の生い立ちを話す。八年前、大坂で子どもを産み亡くし、三ヶ月後夫婦で大坂から江戸に帰る途中、藤沢宿で、産後の肥立ちが良くない夫婦連れから生まれて間もない赤ちゃんを預かった。時蔵の妻はお乳を含ませ、赤ちゃんは育った。夫婦から赤子を貰い江戸に帰った。赤子が又吉だった。
 道喜はたつから貰った扇子の絵を書いた人を探していた。吉原の遊女・梅里の父親が書いた絵だという。たつは落款の幽仙を探し出した。幽仙は大坂の商人だった。江戸店に娘を探しに来ていた。梅里は手代・直介と大坂を飛び出し、藤沢宿で赤子を産み、直介に売られていた。
 時蔵は亡くなり、又吉は岩五郎夫婦が引き取っていた。弥之助は藤沢に行き、二組の夫婦の名前を調べ、又吉が幽仙の孫であることが分かった。直介は昔の同僚にお嬢さんが吉原にいることを伝える。直介も病気だった。又吉は引き取られた。養父母の墓を建てたいと要望した。
 たずは元は花岡藩江戸屋敷の奥を取り締まっていた。多津の部屋子美佐は側室になり男の子を産んだ。病気になった美佐は息子・吉次朗を屋敷から出した。五年前、女中と吉次朗がいなくなり、正室の跡継ぎは疱瘡の後重い障害が残ったため吉次朗を探し出すことになった。多津は屋敷をでて吉次朗を探していた。
 

2017年11月28日火曜日

風の市兵衛⑳ 架け橋

風の市兵衛⑳ 架け橋 第一部  辻堂魁
 文政七年 1824年 二月 唐木市兵衛40 武州忍田領阿部家当主・阿部豊前守武喬の御側衆大庭桐右衛門と見合いをする。婿養子の話。居酒屋、喜楽亭に集まった者により、市兵衛には十年前に京都の公家の娘との間に子がいることが聞こえ、破談になる。
 相模の須賀湊の廻船問屋弓月の七左衛門より助けてと言う「青」の伝言を受けとる。
 青は弥陀ノ介の元から逃げ大坂へ行く途中船が難破し、外国船に助けられ、海賊船に引き取られ海賊船から逃げ海を漂っている時に弓月の船に助けられていた。弥陀ノ介の子どもがお腹にいた。
 市兵衛は須賀に行く。伊豆を拠点にした海賊が大店を次々と襲っていた。須賀に現れた海賊を市兵衛は退治する。海賊の本拠地を見付けた弥陀ノ介等は海賊を根絶やしにする。
 江戸に帰った青は、弥陀ノ介と祝言を挙げる。
 
風の市兵衛⑬ 遠雷 2014年10月22日 既読
 

2017年11月27日月曜日

よろず占い処陰陽師屋へようこそ

よろず占い処陰陽師屋へようこそ 天野頌子
 東京都北区王子 駅の南側の昔ながらの商店街のビルの地下に陰陽屋が開店した。店長は安倍祥明。ここでアルバイトをすることになった沢崎瞬太。母親・みどりが王子稲荷で拾った子どもだった。興奮すると目が光り、耳が上に上がり狐の耳になるり、狐のしっぽが現れる。親も瞬太も一生懸命隠している。小学校の同級生はみんな知っていた。知らない振りをしていた。陰陽屋のバイトでは耳もしっぽも出し、本物でやっている。中学で一緒になった委員長こと高坂史尋は瞬太に興味を持っていたが、気付かない振りをしてやれと言われた。
 祥明は祥明命の過保護ママに育てられた。安倍家は何代も続く学者の家で書庫には膨大な書物のコレクションある。祖父は民族学者、父は宗教学者、祥明も陰陽師について研究者だった。夜も寝ないで片手で食べられる食事をする祥明を見て、このままでは身体を壊すとパソコンに一リットルのジュースを掛けた。そんな家から出ていたのだった。
 「カリスマホスト、陰陽師に転職して人助け」そんな記事が新聞に出たため母親がやってきた。
 

2017年11月26日日曜日

警視庁幽霊係と人形の呪い

警視庁幽霊係と人形の呪い 天野頌子
 警視庁幽霊係の仲間 特殊捜査室(通称お宮の間)
 渡部室長 特殊捜査室のボス。オカルト好きのエレガントな英国風紳士。お気に入りは玉露の御茶
 高島佳帆警部 物に宿った記憶を読む。美女だが酒乱でキス魔。柏木をケンタ(昔飼っていたいた犬)と呼ぶ。今回の人形が妹の持ち物だったことで、両親と妹の事故当時の妹の気持ちが判明する。休みの度に身体が弱く療養している姉・佳帆のところにばかり行くことに嫌気が差していた。両親を独り占めして遊びに行きたかった。療養地に行く途中事故で亡くなった。
 伊集院馨警部補 警視庁の最終兵器? 犬と会話が出来る。かわいいものが大好きなオネエキャラ。
 清水貴行警部補 柏木の先輩刑事。おしゃれでいつも細身のスーツを着ている。マイホームパパ。
 柏木雅彦警部補32才独身 幽霊と話せる能力を持つ。ストレスのため胃痛持ちで牛乳を手放せない。事件現場に行き、幽霊がいれば事情聴取をする。
 桜井史也巡査部長 母親はベルギー人だが大阪生まれの関西人。写真に写っている人の現在の生死を見分ける。ひやしあめが大好物。
 及川結花 とある事件がきっかけで柏木に取り憑いてるキュートな女子高生幽霊。柏木の守護天使と言う。
 三谷啓徳 新進気鋭の霊能者。どけちで守銭奴。清水の高校の同級生。
 
 団地で火事があり一室が燃え一人暮らしのお婆さんが亡くなった。天ぷら油に火が入り火事になった事故だということになった。向いの団地に住む池袋警察署生活安全課勤務の青田がおばあさんの幽霊がいるので見に来てほしいと訪ねてきた。柏木は自分の後継にして自分はここを脱出できると考え、二代目幽霊係の研修のつもりで青田に付き合う。
 お婆さん・堀内さんはチャッピーという犬を探していた。玄関にあった人形を持ち帰り高島に見せる。二人は周りの部屋の住人に聞き込みをし、犬を探す。
 堀内は犬と住める所に引っ越すためのお金が欲しくて保険金を狙いぼやを出すために台所に油鍋をセットして置いた。犬好きと思われていた下の階のスーパーに勤めている息子・石倉良人がコンロの火がとろ火だったのを大きな火にし、油鍋に豆腐を入れた。火がつきやすくなるように。そして出会った堀内にチャッピーを部屋に入れたといった。堀内は犬を探していて死んだ。
 チャッピーは小学生が飼っている。犬に会いお婆ちゃんは消えた。
 人形の持ち主の過去を見ていた高島。亡くなった恋人と柏木の身体を借りて話をした。
 
華麗なる一族の事件簿〜伊集院家の場合〜
 伊集院の従姉妹のストーカーを犬の証言で捕まえた。従姉妹のストーカーではなく、犬のクララのストーカーだった。
 
 

2017年11月25日土曜日

鎌倉不動産のあやかし物件

鎌倉不動産のあやかし物件 安東あや
 紺野清花は夏休みに、鎌倉の老舗不動産の御曹司と見合いを仕組まれた。相手の最上雅秋は霊が見える体質だった。十四才の時、家庭教師・藤川紗英の兄が八才の女児の殺害を暴いてしまい、殺されそうになった。別人のような恐ろしい顔だった。その後、雅秋は世捨て人のような生活を送っていた。清花は見合いの場で幽体離脱をしてしまい、雅秋に戻して貰う。そのため清花は雅秋と同居することになった。
 鎌倉のいわく付きの物件のお客様相談室での仕事をするようになった。
 幽霊が出ると次々と住人が出て行く物件を見に行く。幽霊はいた。以前に住んでいたうれないで引退して引っ越しした女優だった。引っ越ししてからはどこにいるか判らない。彼女は元マネージャーに殺され、庭に埋められていた。二人が場所を特定し遺骨を見付け供養した。霊は出なくなった。
 一軒家から誰もいないが、子どもが走り回る気配がする。相談があった。五才くらいの着物を着た男の子の霊だった。海岸で拾った矢じりを犬が家に持ち帰っていた。鎌倉の古い昔、矢じりで殺された子どもの霊だった。盆送りをする。
 東慶寺で藤川紗英に十年ぶりに会った。東京で暮らし仕事も成功しているらしい。雅秋は清花に十年前の話をした。
 次の日、スーパーでまた紗英に会った。紗英の横に血みどろの女性の霊がいた。清花が気を失った。近くの紗英の家に運ばれた。清花の魂が離脱したまま紗英の家の中を調べる。霊になっている女性は仲の良かった同級生・千香子だった。千香子は紗英の婚約者・花岡伸吾と結婚していた。疲れて倒れた雅秋を置いて、清花は一人で花岡伸吾に会いに行く。清花は地下室の隠し部屋に閉じこめられる。その部屋には何人もの女性の持ち物があった。殺した女の記念品だと言う。千香子が気が付いたために殺していた。インターホンが鳴り続けるため伸吾は清花を縛り、口をガムテープで塞ぎ出ていった。雅秋が来た。携帯のGPS機能を使って。清花は魂だけすり抜けて玄関に行く。雅秋は監禁と殺人で警察を呼ぶように運転手に連絡する。清花が地下室の隠し部屋に案内する。包丁を持った伸吾を霊たちが押さえている瞬間に雅秋が伸吾を突き飛ばし、落ちた包丁を清花が拾う。警察が来た。紗英に嫉妬していた千香子の霊は紗英に付いたままだった。清花は紗英を東慶寺に誘い三人で行く。天秀尼の墓で清花は千香子の怨霊を切り離して下さいと頼む。紗英が千香子を偲び泣いている。千香子の怨霊は紗英の肩に手を置いて消えた。
 君がうちに嫁入りしたら魂は抜けなくなるかもしれない。試してみる?と言う雅秋。
 それってプロポーズ?
 そういう道もあるってこと、考えておいてと言う雅秋。

2017年11月24日金曜日

新・酔いどれ小藤次〈九〉 船参宮

新・酔いどれ小藤次〈九〉 船参宮 佐伯泰英
 文政八年 1825年 
赤目小藤次は久慈屋昌右衛門の供をして国三と三人で伊勢参りに出た。島田宿で大井川の川止めに会う。島田宿で三つの旅籠を持つ紋屋鈴十という隠居と孫娘、数日分の旅籠の売り上げを持った手代が四人組に襲われそうなところを助け、紋屋鈴十の船形屋敷の離れ屋に泊まれることになった。赤目小藤次の名は知られていた。
 島田宿で川止めの間に、中本陣に泊まる京都所司代勘定方の猿橋飛騨が胴元でやくざ者の宮小路の猪助親分と十手持ちの白髪の熊五郎親分がかんで旅籠の泊まり客を誘っていた。神路院すさめという巫女が付いていた。猪助親分と熊五郎親分は島田宿から追い出された。猿橋は浪人者み斬られたように装う。神路院すさめは逃げた。
 川止め分を稼ぐために伊勢まで船で行った。
 伊勢参りをした後すさめを退治した。
 五十年前の昌右衛門が出会った、元久慈屋の女中さんは昌右衛門の実の母親だった。

2017年11月23日木曜日

町触れ同心公事宿始末③ 初音の雲

町触れ同心公事宿始末③ 初音の雲 藍川慶次郎
 花が鈴屋をずっと手伝っていた。文政五年 1822年正月
多門慎吾(おかどしんご)  寿々   白樫寛十郎
 除夜の鬼 鈴屋に来るはずの客・太左衞門が曼荼羅華(朝鮮朝顔)を嗅がされ意識を無くして医学館に運び込まれた。太左衞門は父親・太郎兵衛は百軒ほどの家主で筆硯問屋大和屋を商っていたが、一年前に行方不明になっていた。遺産を兄弟で争っていた。太郎兵衛の女房が見付けた遺言書を出してきた。「お珠を養育するものに遺産を託す」お珠探しが始まった。医学館に一年前瀕死の傷で運び込まれた老人がいた。記憶を失っていた。太郎兵衛だった。記憶も戻っていた。二組の暴漢に襲われていた。兄弟が雇ったのだろうと思った。お珠は太郎兵衛の妾と娘が飼っていた猫だった。母娘の住む袋物屋に押し入った弟・次郎右衛門は出役支度の捕り方に囲まれ逃げた。母親のところで顔を合わせた兄弟は取っ組み合いをして息も絶え絶えになった。母親は自死した。
 太郎兵衛が鈴屋にいる間、早苗が付き添った。早苗と寿々が顔を合わせた。慎吾は寿々に神田明神の初日の出を拝みにいこうと誘う。
 初音の雲 南部藩の浪人・相馬大作が弘前に戻る津軽候を狙撃しようとしたが密告で未遂に終わった。大作の無念を晴らすと諸国から同門が江戸に集まっていた。慎吾と寛十郎の師匠・長沼一哲は平山行蔵と同門を止めに廻っていた。長沼は慎吾と寛十郎に江戸府内での一触即発の事態を止めてくれるよう頼んだ。鈴屋に滞在している兵聖閣の娘・千草に集結して裏切った嘉兵衛と笠原を討ったとしても大作は喜ばない。報復しても無駄死になる。平山先生にも迷惑が掛かる。慎吾は説得する。弘前藩は嘉兵衛たちを囮にした。千草は同門を説き伏せたようで数人だった。松林に隠された鉄砲隊に撃たれる。慎吾と寛十郎は浪人たちを斬りまくり逃げる嘉兵衛と笠岡を千草の前に連れ出す。虫の息の千草は二人を討つ。千草たちは相馬大作が埋められる回向院に葬った。
 紅蓮心中 益田屋の町は火事になればに組の纏持ち健次が見られると思い、健次の弟分・一太に頼み付け火をする。健次の心が琴にあると思う町は琴の家・大坂屋に火を付け琴に成りすまし健次と無理心中しようとする。町は一太に止められ、纏いを持つ健次と死んだのは琴の母親だった。健次と千代と一太が死んだ。
 狂い咲き はだしで逃げてきた登季を助けた鈴屋で話を聞いた慎吾は、阿片を使って信者を集める新興宗教の存在を知る。寿々は登季を縛り身体から阿片をぬくのを手伝う。登季の代わりに娘・佐江が連れて行かれる。寛十郎の父・臨時廻り同心・白樫寛蔵も現れ、秘密の屋敷を突き止め、佐江を救い出し一網打尽にしたが、教祖・瑠璃は逃げた。
 
この本は2008年発行、その後4は出ていないもよう。

2017年11月22日水曜日

町触れ同心公事宿始末② 縁切り花

町触れ同心公事宿始末② 縁切り花 藍川慶次郎
 三途の闇 鈴屋に泊まっていた嘉左衛門が毒死した。慎吾は筒井奉行に呼ばれ、裏に不審な死が絡んでの訴人の願い下げが三件有り内偵するように言われた。嘉左衛門の後を久右衛門が引き継いだ。
 幇間の河太郎、羽織芸者の咲、糞尿船頭の甚右衛門、お城坊主の株を買い西の丸中奥坊主の道阿弥が三途の川の渡し守の闇仕事を行っていた。
 慎吾等の探索が邪魔になった四人は鈴屋に火を付け、九右衛門を殺そうとし、逃げ捕まった。
 八州かたり 八州廻りの古旗源三郎が夜伽を命じたり江戸の屋敷に奉公に来いと言ったりすることを御用屋敷に訴えようとする女・花が鈴屋を訪れる。慎吾は兄に尋ねる。古旗大三郎がいた。古旗を調べる。常陸では花の許嫁・千吉は捕まり番手の朝次が閉じこめていた。実家の児島屋は朝次に乗っ取られていた。大三郎は源三郎に八州廻りを詐称させ、巡回地から目溢し金を吸い上げて江戸で隠居暮らしをしていた。密談している所に慎吾が踏み込み捕まえた。
 修羅の雪 この所慎吾が手柄を立てたために義母の様子が変わった。慎吾に子が無いため本家から養子をとるつもりにしていたが、慎吾に後妻を取らせようとするようになった。慎吾が養子に入った多門家の娘・秋江は亡くなっていた。慎吾は本家から養子を入れ、家督を譲って自分は鈴屋に転がり込むといっている。
要屋長右衛門の娘・由美は牢にはいっている仙蔵に会いたいという。仙蔵は自分の父親かも知れないと言う。慎吾は仙蔵を調べる。仙蔵は溜にいた。
長右衛門・松吉と仙蔵は十六年前、奥会津で一揆に巻き込まれていた。村人だが役所に勤めていた二人はどちらにも付けず、どちらからも疎遠にされた。村人から家族を守るため松吉は村人を殺していた。元締手付けの小室の娘・由美を預かる。家族とは逸れる。由美を人に預け江戸に出て暮らせるようになってから由美を引き取った。会津に行けるようになって仙蔵の息子・新吉に出会い、手代になっている。長右衛門は強請に来るものを三人殺していた。仙蔵は慎吾に十六年前の話をした。慎吾は仙蔵にも長右衛門にも誰にも言わない約束をした。長右衛門は自死した。番頭に新吉と由美を一緒にして店を切り盛りしてくれるように託していた。
 縁切り花 南町奉行所定中役同心・笹目三十郎の敷地内に借家している遠藤正典という医学館に務める御番医師の娘・早苗21が慎吾の縁談相手だった。
 内与力から探索命令が出た。夫・房次郎から殴るけるの暴行を受け東慶寺に入った照が夫から訴えられた。照が間男しし、房次郎の大工同具を換金し、間男を信州に逃がし、寺から下りたあと所帯を持つつもりだと訴えた。慎吾は寿々と東慶寺に行く。
照から房次郎の行状を聞いた慎吾は江戸へ帰り、房次郎の行状を暴く、娘・千佳の勾引かしを考え、千佳を預かっていた兼を脅している所に現れた慎吾は房次郎を斬る。房次郎は照の信州の実家から離縁を餌に財産の半分を巻き上げていた。

2017年11月21日火曜日

町触れ同心公事宿始末 日照雨そばえ

町触れ同心公事宿始末 日照雨そばえ 藍川慶次郎
 公事宿・鈴屋の女将・寿々 公事宿・常陸屋の三男・彦三郎が入り婿になった。翌年父・与兵衛が亡くなり、一年足らずで彦三郎も亡くなったのが七年前だった。
 与兵衛が可愛がっていた多門慎吾(倉田慎吾) 実兄は勘定奉行所の同心。三男のため多門家に養子に入っていた。今は南町奉行所の町触れ同心
 慎吾の道場仲間・白樫寛十郎 南町奉行所定町廻り同心
 日照雨 相模の国の川名の石屋・弥兵衛が鈴屋に来る。息子・弥太郎が腰越の漁師の娘・浜を嫁入先の小坪の網元との祝言の夜、勾引かしたと訴えられた。浜の親元・潮五郎と嫁ぎ先の勝蔵、勝次親子が訴訟に持ち込み、弥兵衛の田畑で弁償しろと言っている。百八十日が過ぎると弥太郎は無宿になるという期限までついてくる。
 親の勝蔵が浜を狙っていた。浜は逃げた。逃げた先に言い交わしていた弥太郎がいた。一緒に品川に隠れていた。弥兵衛の田畑も手に入れようとした勝蔵親子は二人を見つけ出しどこかに閉じこめようとした。慎吾と願人坊主たちが二人を助け出す。浜を寿々の伯母がいる鎌倉の東慶寺に入れた。
 母恋風車 川口の金貸し業・沢田屋庄八に訴えられている川口の漆器屋・西田屋幸右衛門の息子・幸吉10が一人で訪ねてきた。庄八は先代・幸右衛門の署名がある五百六十両の借用証文を持っていた。幸右衛門は印判を使うはずだから偽物だと言っていた。
 幸吉の母親・きよは失踪した。幸吉は江戸に来た。幸右衛門は連れ去られた。きよが見付かった。証文の爪印は先代の後妻・松のものと気がついたきよは、遊び人に脅され幸吉を守るために家を出た。幸右衛門は家を手放すという証文に爪印を捺すように脅されていた。幸吉を預かっているといわれ、爪印を捺す。慎吾は川口へ行き、お家さんと沢田屋と親分と呼ばれる丑五郎の企みを聞き出し、代官所の役人を呼ぶ。寛十郎は沢田屋の出店から幸吉を助け出す。出入物から吟味物になり、西田屋の身代は守られた。
 赤い涙 慎吾が怪我人・兼吉を運び入れたことで巻き込まれる。兼吉は訴状を持っていた。尾花沢代官所から中村村宗右衛門に貸し付けた二千両は相沢久太夫が着服、罪を貸付窓口・元締め手代に擦りつけた。大石田村利兵衛が紅花問屋茜屋喜兵衛と抜荷をし、隠蔽されたこと。が調べられていた。慎吾は兄・倉田平四郎の所へ走り、代官所江戸詰めの二人は役を解かれ兼吉を襲ったことで町方に捕らえられる。茜屋も捕らえられる。訴えのために身を売った美津も助け出される。
 千両の夢 鈴屋の中居・梶の妹の夫・又八が富くじで千両を当てた。今までに富くじを当てた者が三人なくなっていた。又八の女房とその親が連れて行かれた。又八はお囮になった。三人を人質にしされているためまんまと金箱を持っていかれた。金箱のなかは鬼瓦だった。人質は助けられ捕まった。
 
真貫流 平山行蔵
 

2017年11月20日月曜日

おとなりの晴明さん

おとなりの晴明さん 陰陽師は左京区にいる 仲町六絵
 滋賀から京都に引っ越しして来た糸野桃花。隣は安倍晴明の仮の姿・堀川晴明だった。大学の研究者になっている。閻魔大王の部下、冥官として若者の姿で生き返った。
 私立からくさ図書館の小野篁も時子も出てくる。
 やすらい祭 足袋型の付喪神、いらなくなった型を燃やすといわれ、夫婦二人で一緒にいたいという足型の願いを聞いて、晴明は自分の家の庭の石にした。縦石と横石と名付け式神にした。
 優しい鬼 桃花は西陣で通りゃんせを歌う鬼を見た。鬼は鬼瓦だった。屋根にある雀の巣が青大将に狙われていた。雀は家人ではないので竈神や屋敷神は動いてくれない。桃花は梟になって鬼瓦が晴明に怖い顔に変えられひとにらみで青大将を飛ばすのを見ていた。
 おサル戦線異常なし 奈良町からきたお嫁さんに付いてきた魔よけ猿・身代わり猿が軒先に下げられず室内にしまわれ戸惑い、お役御免ではと悲しんでいた。晴明は鬼門を守る猿や近所の地蔵菩薩に会わせ、年中行事を教わるように手筈した。
 舞子の神様 祇園の置屋の女将さんから相談された茜がくる。舞子さんの食事を作る賄いの女性の極端な小食についてだった。晴明と桃花が会いに行く。女性は八坂神社の美御前社のうつくし御前という神だった。一人の舞子見習いのニキビを治すために賄いになっていた。晴明は蚕と書いた水をうつくし御前に飲ませまじないをした。後日、桃花が晴明とクリームパフェを食べているとメグミちゃんと呼ばれたうつくし御前が女将さんとパフェを食べていた。晴明は蚕の形相が栄養をむさぼり食べていると言う。

2017年11月19日日曜日

あきない世傳金と銀〈四〉 貫流篇

あきない世傳金と銀〈四〉 貫流篇 高田郁
 五鈴屋五代目徳兵衛・惣次31は、羽村に前貸ししていた銀四貫の預かり手形が両替商の分散で紙くずとなり銀四貫の借財を負うことになった羽村の人々の怒りをかったため、羽村に持って行くつもりで用意した銀三貫と共に行へ不明になった。帰郷屋と弟・智蔵に手紙を託し隠居した。
 智蔵は女房ごと後を継ぐことになった。幸21は智蔵と幸は羽村へ行き銀二貫を渡し借金は五鈴屋が負う事にした。羽村で生産される羽二重はすべて五鈴屋が買い取ることになった。智蔵は六代目徳兵衛になり幸は智蔵と祝言を挙げた。智蔵は人形遣いの人形に徹するつもりだ。幸は帳簿類もすべて見ることになった。すべてを整えてお家はん・富久66は亡くなった。
 延享三年 1746年
 五鈴屋が羽二重の横流し商品を売っていると言われる。幸は羽村で貰った残糸をみせ乗り切った。
 元番頭治兵衛の女房・染の叔父・茂作が五鈴屋から羽二重を仕入れ東北で売ってくれることになった。
 元五鈴屋の奉公人・留七と伝七に反物を貸し出し地方で売るという形で商売を始めた。呉服を背負って諸国を廻る。河内木綿の青みがかった緑色の風呂敷を作った。大風呂敷には担いだ時に鈴の柄と五鈴屋の名前が出るように染め、二尺巾の風呂敷には全体に鈴の模様が散らしてある。元御寮さん・菊栄が鉄漿粉の産地・備前国の取引相手への紹介文を書いてくれた。地蔵盆に大坂を出、神無月の二十日に帰った二人は注文を取ってき、また明日発つという。
 幸は智蔵に連れていってもらった人形浄瑠璃の人形使い・亀三が作っている人形の着物にちょうど良い桑の実色の縮緬を一反渡す。幸は人形と同じ着物を縫い、筑後座の天神記見物に十日通う。五鈴屋の蔵には桑の実色の縮緬がぎっしり詰まっていた。仕掛けが功を奏し桑の実色の反物は売れた。桑の実色は着る者の年齢によって印象が変わる。
 桔梗屋は店ごと真澄屋に売るらしい。桔梗屋が売る条件を呑んで買い取るはずが、真澄屋が買い取ってから桔梗屋の条件を全く呑まないことが判った。桔梗屋は売ることを渋るが手付けを貰い、使っていた。真澄屋は銀二十貫返してくれと言う。幸は桔梗屋の買い上げに名乗りをあげる。

2017年11月18日土曜日

風烈廻り与力・青柳剣一郎㊴ 伽羅の残香

風烈廻り与力・青柳剣一郎㊴ 伽羅の残香 小杉健治
 伽羅に似た香りの鬢付け油が大人気の「錦屋」の主・卯三郎は、何でも他人のものを金で奪い取ると評判だった。卯三郎を尾けていた男が殺された。剣一郎は卯三郎と錦屋を探る。
 卯三郎は金を出し手に入れたものを、少しすると返していた。飽きたからという理由だが、元の持ち主は卯三郎に感謝している。子どもの風車、龍の香炉、大工の女房。
 錦屋の伽羅は本物だった。卯三郎の幼馴染みの父親は念仏の五郎という盗賊だった。
 元々の伽羅・鬼涙の持ち主は小野家の所有だった。鬼涙を欲しがった商人泉州屋に借金があった瀬戸家は、盗人・十蔵に鬼涙を盗ませ、泉州屋に渡していた。十蔵は殺された。仲間の五郎は泉州屋から鬼涙を盗んで、錦屋の鬢付け油の香りに使っていた。小野家の殿様は瀬戸家と泉州屋を殺そうとした。瀬戸家は家臣・吉富が勝ってにしたこととし、小野家の草間が吉富を討ち、泉州屋を討った。草間は小野家を出、浪人となり剣一郎に討たれた。
 五郎は卯三郎に人のためになるようにお金を使ってくれるように頼んで死んだ。
 剣一郎の妻・多恵の実家を継いでいる弟・高四郎の病気が重い。剣一郎の探索を手伝っていた文七は多恵の腹違いの弟だった。高四郎は文七に湯浅家を継いで欲しいという。
 剣一郎の探索の手伝いは猫の蚤取りをしている太助がしている。
 
 

2017年11月17日金曜日

風の王国〈10〉 草原の風の如く

風の王国〈10〉 草原の風の如く  平谷美樹
 白頭山の噴火は何度も起こり、南渤海の民を別の地域に移してゆく。
 高元譲を討つために上京龍泉府 忽汗城で手引きし、協力してくれた元渤海の遣日本使・裴璆と賀伯端に 高麗や南唐、呉越、南漢、楚まで南渤海の民の受け入れを要請する使者として旅立って貰う。東日流にも民を送った。
 二人の協力を得、忽汗城内に入り込んだ明秀・勇魚・蓮姫・チョルモンと二百人の東日流人によって忽汗城は落ちた。一人忽汗城から逃亡した高元譲も明秀が父母の敵として討ち取った。
 尭骨は晋との戦いには勝った。だが晋の反乱を平らかに治めることは出来なかった。兀欲は薬で尭骨を殺した。季胡が皇太子だが兀欲が即位した。
 突欲は晋から分捕った船で麗津を攻める。東日流軍は何個もの仕掛けで猖獗兵を殺すが数が多い猖獗兵は麗津に入り込んできた。麗津のことを知り尽くしている突欲。民の隠れている洞窟へ行く。突欲の息子・隆先も芳蘭も戦うことを決意した。夕凪の中の橘と亡くなった石奈と木垂の術で動けなくなった突欲を芳蘭が殺し、芳蘭も自死する。洞窟から皆を出し、洞窟は爆破される。陵墓とされた。
 東日流軍は東日流に引き揚げた。勇魚も帰った。
 明秀は夕凪と北に向かった。何年か経つ。明秀は勇魚を待っている。ひとっ走りといいながら東日流の船が着く千キロ先の吐号浦まで行く。夕凪も続く。チョルモンは一人で羊を柵に入れる。
 隆先と道隠は二人で父親の話をする。これからどうするか二人で考える。
 月理朶は契丹の未来を見る。兀欲は耶津安端の息子に殺され、尭骨の息子・述律が継ぐ。述律の死後五代に渡り突欲の血を継ぐ者が皇帝となる。百数十年大遼が続くらしい。

2017年11月16日木曜日

風の王国〈9〉 運命の足音

風の王国〈9〉 運命の足音 平谷美樹
 明秀の元に15才になったチョルモンが来た。蓮姫は夕凪にチョルモンを預けた。
 高氏渤海が須哩奴夷靺鞨の幕営地を攻めにきた。明秀とチョルモンは雷公を持って助けに行く。黒水の向こう岸に追い返す。
 突欲率いる猖獗兵が硝硫炭を持った。遼陽城の硝硫炭の工房を潰しに行く。爆破させる。
 突欲の息子・兀欲は見近で尭骨を見、尭骨は阿保機を殺したのは尭骨だろうと思うようになった。

2017年11月15日水曜日

風の市兵衛⑲ 遠き潮騒

風の市兵衛⑲ 遠き潮騒 辻堂魁
 干鰯〆粕問屋「下総屋」の主人・善之助が殺され調べを始めた渋井鬼三次43は、善之助がひっかいた後が残る久蔵という男に目を付けた。銚子から来た男だった。銚子に行く。
 公儀小人目付役・返弥陀ノ介かえりみだのすけは子どもの頃世話になった八十石の御家人松山家の隠居から二年半前に亡くなったことになっている長男・松山卓を見た者がいるので確かめて来て欲しいと頼まれる。卓は弥陀ノ介の幼馴染みだった。銚子湊の勘定所番所の務場に赴任し行方不明になっていた。亡くなったとみなされ弟が出仕していた。弥陀ノ介は休みをとり銚子に行く。
 唐木市兵衛40は兄・旗本千五百石目付片岡信正に頼まれ弥陀ノ介と一緒に銚子に行く。弥陀ノ介を助けるためだが、三年前、銚子湊に幕領米の密米の噂があった。気になりながらそのままにしたことが気になっているということだった。一緒に調べるつもりで行く。
 渋井は顎にひっかき傷のある男久蔵が、鯵切の団六という人斬り家業をしている者だと判った。渋井は捕まえた。密米を江戸へ流す船便の相談をし、断られたために殺していた。
 卓は見付かった。怪我をし、浜に打ち上げられ、助けられていた。記憶を無くし所帯を持ち子どもが出来ていた。今では記憶も戻っている。三年前、米の密米に気がつきこっそり調べ始めたとたん、崖から落とされたのだった。三年前、卓を殺したつもりだった者が、卓が行きていると判り命を狙ってきた。市兵衛と弥陀ノ介は捕まえた。銚子の務場の役人は自害した。
 卓は卓に頼まれた者ということで松山家を訪れた。松山家に帰らない決心を告げる。
 市兵衛は見合い相手の父親と会うことになった。
 

2017年11月14日火曜日

着物始末暦〈七〉 なでしこ日和

着物始末暦〈七〉 なでしこ日和 中島要
 男花 呉服太物問屋大隅屋の綾太郎に玉との離婚を強要する井筒屋の愁介は後藤屋の後ろ盾が欲しいのだろうと考えた綾太郎は、後藤屋は身内の情に流されない、商人として認められないと駄目なんだと言って愁介を後藤屋の隠居に会わせることにした。玉を諦めるという条件で。どんな格好で月見に来るか楽しみだと言う後藤屋。愁介は着物の裾に蝙蝠の刺繍を入れていた。裏が雑なのを見て半端な工夫ならしない方がいい、良い生地が刺繍のせいで台無しだと批評する。綾太郎は余一が始末した黒羽織にすすきの刺繍だった。裏表のない男が好かれると言った余一は表も裏も変わらない刺繍をしていた。愁介はもっと人の気持ちを考えろと言われた。娘の嫁ぎ先の素性も知らんくせにという愁介の言葉を若造が知ってることをこの年寄が知らないとでも。という言葉で遮った。愁介は帰った。後藤屋の隠居は淡路堂の話をしながら、道を選ぶ時は険しい道を選ぶべきだ。後藤屋はそういう商いをする人の後見をすると言う。輝のことは桐屋の光之助が、おまえさんは玉のことを頼む。守ってやってくれと言われる。
 二つの藍 余一は始末したしごきを六助に店に持ってきた。糸が貰った井筒屋が配った美人の証しのしごきを二つに切り一枚は韓紅に水浅葱、もう一枚は韓紅に二藍を真ん中で縫い合わせたしごきだった。六助は何度も店に足を運ぶ今は落ちぶれて苦労している娘に安く売ってしまう。娘に売ったしごきを持って井筒屋の愁介がしごきを作った人を探しにくる。六助は親方が余一を井筒屋に近づけるなと言った言葉を思い出す。愁介は余一に井筒屋の仕事をして欲しいというが、余一は古着が好きだから新品には興味がないと追い返す。六助は今のは腹違いの弟だ。おまえは天涯孤独ではないと心で思う。
 なでしこ日和 余一との結婚を反対している糸の父親に会いにいくことを許された。父親は「一緒になる気はない」と言った余一を許せない。九月一日に祝言を挙げることになった。母親の形見のなでしこの着物に余一が始末した黒繻子に糸巻きの刺繍の帯を締めることになった。
 三つの宝珠 余一は発破をかけてくれたみつに余一が始末した小ぶりの風呂敷を渡した。三つの宝珠を刺繍された風呂敷だった。

2017年11月13日月曜日

奏者番陰記録

奏者番陰記録 上田秀人
 水野備後守元綱は出世の入口奏者番に取り立てられる。
 福島家を牢人して六年前に水野家の家人になり供先徒をしていた林右近が黒鍬者とのいざこざを上手く治め目が留まり奏者番関係の留役五人に入れられる。
 松平伊豆守の引きを得る。由井正雪の事件が起こり、右近は元綱の命で事件を調べる。
家光は大名家を潰し浪人を輩出した。死にさいして松平伊豆守を残した。家光に牢人問題を片づけるために残された。由井正雪事件は伊豆守が仕立てた者だった。
 六年後、明暦三年火事がおこり死者は十万人を超えた。
 水野備後守は辞職を願う。許されず二年後、職を離れた。十年後跡取り元綱が乱心、水野家は改易となった。

2017年11月12日日曜日

うき世櫛 

うき世櫛 中島要
 天保十一年 1840年
 結15は髪結いの夕を師匠に半年前から髪結いを習っている。十年前に母が亡くなり、藩を離れた父親が代書や写本をしていたが、今年の正月に亡くなった。紹介された奉公先から一ヶ月で暇をだされ行き場の無い結を何かの縁だと夕が引き取った。女髪結いは公儀から禁じられていた。結はこのままでいいのか迷いがある。
 柏屋の娘・久は食べ物を受付けず死を待つばかりだった。縁談相手の店の経営が心配になった父親に破談にされ、無理をした縁談相手が亡くなった。別の縁談話をもってくる父親に反抗し何も口にしなくなった。それから久は食べても吐くようになってしまった。死ぬ前に死んでも髪を残してと言う久の遺言を聞き、夕は親にも逆らって髪をきれいに結って棺桶に入れる。
 夕のお客様の足袋屋のご隠居さんは、十五で父親を亡くした息子が店を継ぐまで頑張り息子に店を渡し隠居していた。店が火事になり隠居は自分が大切にしていた櫛や簪を夕に頼み買い手を探してもらい、まとまったお金を息子に渡す。結は再度頼む息子をしからなくては駄目だと隠居に言う。残した櫛は孫に渡すものなのだから。隠居は息子と一緒に住むことになった。
 蝋燭問屋松川屋は、新造の千佳に子がなく、五年前に妾の子・松之助を引き取り育っている。時々松之助を千佳が妾の所に連れて行く。千佳に子が出来た。結は松之助を帰すべきだという。松之助は本当の母親と暮らしただろうからと。松之助を返して欲しいという妾と話に行った千佳を追った松之助は本当に母親に対して、おっかあをいじめるなと怒った。
 同じ長屋のるりは、棒手振りの魚屋徳松と恋仲だ。絹の良い着物が着られない現在、祝言を挙げたくないと言いながら伸ばしていいる。徳松に魚辰のお嬢さんとの縁談が起きた。徳松はるりと祝言をあげる気でいた。るりも祝言を挙げる決心をする。るりの打掛けは母親が縫っていた。夕が髪を結う。同じ長屋の夫婦が密告屋をしていることが判った。そんな中でるいは徳松に自分が飛びっきりきれいな姿を見て欲しいと祝言を挙げる。
 夕は元芸者だった。お座敷で客を庇い顔に傷を負い芸者を止めて守結いの修業をしていた。庇った客は遠山奉行だった。結は夕が髪結いを止めても大丈夫なように遠山からお金を出してもらおうと思った。遠山も同じように考えていたらしく遠山がお金を出した。が夕は受け取らなかった。顔に傷のある髪結いのうわさがでた。大名の隠し子だとか、香具師の情婦だとか、大目付の手先だとか、大変な後ろ立てがある等。

2017年11月11日土曜日

隅田川御用帳〈十七〉 寒梅

隅田川御用帳〈十七〉 寒梅 藤原緋沙子
 霜月の末に塙十四郎と登勢は祝言を挙げた。
 寒椿 数日後、松平定信の密偵を頼まれた。越後秋山藩五万石に来ている。
 藩主幸忠18才は国家老戸田により軟禁状態にあった。先代藩主の息子・松之助を藩主にしようとしていた。殿は病気という。十四郎は城に忍び込み幸忠に会う。毎日薬を盛られ徐々に病気が重くなる振りをしていた。戸田に命じられた玄斎は言われた通にしなかった。
三日後、みんなの居る前で殿は死んだふりをする。次期藩主は松之助にと遺言されたと言う戸田家老の前でそんな遺言をしていないと殿様が目覚める。戸田派は捕まった。
 海なり 塙十四郎は白河藩の飛び地・柏崎に行く。四人組の盗賊が神出鬼没、いろんな所に現れ、死亡者が出ていた。去年、佐渡の金銀を運ぶ途中で人足不足、荷の積み直し作業で銀十貫が残され、今年運ぶことになっていた。その銀を狙ってくるところを捕まえた。

2017年11月10日金曜日

おれは一万石

おれは一万石 千野隆司
 天明六年 1786年 将軍家治と跡継ぎ家斉を前にした上覧試合が行われる。
最後に残ったのは、美濃今尾藩三万石竹腰勝起の次男・竹腰正紀17と常陸下妻藩一万石井上正棠の長男・井上正広15だった。井上正広が勝った。
 竹腰正紀に縁談があった。下総高岡藩一万石井上家に娘・京19。藩主・正国は正紀の父・勝起の弟だった。正紀の祖父は尾張徳川家八代徳川宗勝、勝起は八男、正国は十男だった。尾張家当主は叔父・宗睦が継いでいる。正紀の兄・睦群は尾張藩付家老をしている。
 正紀は正国と娘・京に会いに高岡藩上屋敷に行く。門前払いされている名主の息子・申彦に会う。利根川の堰が切れそうなので杭が二千本欲しいという話だった。正国に話しても江戸家老・児島に話しても上手くいかない。まだ婿入りが決まったわけでもないが正紀は手を貸すことになった。
 正紀の婿入りが決まった。高岡藩と下妻藩の本家・浜松藩の集まりに行く。浜松藩の当主・正甫12と下妻藩当主・正棠34才と顔合わせする。下妻藩の正広・正建兄弟・江戸家老・園田次五郎兵衛とも会った。
 正紀は中老・佐名木源三郎から下妻藩の園田が次男・正建を藩主にするために嫡男・正広を高岡藩に婿入りさせることを考えているということを教えられる。
 杭八百本を高岡藩は用意した。正紀は尾張藩・宗睦から千二百本を餞別として送られ下野国阿久津河岸から鬼怒川利用で送ることになった。正紀付き中小姓・植村21と阿久津まで行く。京にも高岡へ行くことを伝える。山王権現の守り袋を貰う。
 阿久津で受け取るはずの杭、六百本を偽の荷送り書で盗まれたが取り返し、激しい流れの中で船を襲い正紀たちの命を狙い、杭を流そうとする三人の侍を撃退した。雨の中で川ぎりぎりの所に杭を打ち土嚢を運ぶ、正紀と植村も作業をする。侍に命を狙われる。撃退する。雨が止んだが寝ずに川の番をする。
 江戸への帰り道、行徳の塩問屋桜井屋長兵衛と知り合い、命を狙った浪人と侍に傷を負わされた青山を桜井屋に預け、植村を佐名木への連絡に行かせ、正紀は捕まえた下妻藩の侍を連れて後から江戸に向かうことにした。
 佐名木は正広から下妻藩の様子を聞き、船着き場で待つ。船着き場目前に船で襲われた。正広と同門の高積見廻り与力・山野辺蔵之介が助けに来てくれ、正広も佐名木も加わった。正広が捕まえた侍を下妻藩の瀬川と断じた。
 下妻藩の園田は切腹、園田家は減封になった。正広は下妻藩の跡継ぎとして公儀に届けられた。正紀の婿入りは遡って八月九日になっていた。竹腰正紀は井上正紀になった。植村も高岡藩に移った。
 正紀と正広は稽古試合をした。

2017年11月9日木曜日

町奉行内与力奮闘記〈五〉 宣戦の烽

町奉行内与力奮闘記〈五〉 宣戦の烽 上田秀人
 内与力・城見亨と親しいため播磨屋伊右衛門の姪・西咲江が闇の者に狙われていることが播磨屋の知る所となった。城見亨の主・曲淵甲斐守を追い落とそうとする町方役人の思惑だった。播磨屋から聞かされた甲斐守は闇の者と手を結ぶ与力同心など言語同断。全面対決を決意する。甲斐守から咲江の護衛を命じられる。咲江は囮になって刺客をあぶり出し元締め・陰蔵の組織を潰そうとしていた。隠密廻り同心・江崎羊太郎は甲斐守に付いた。甲斐守は奉行所の配下全部が一枚岩でない事が分かった。
 咲江を勾引かそうとしたものは撃退した。陰蔵の居場所を突き止めた。陰蔵は旗本屋敷に入った。
 陰蔵の失敗を突きつけ、甲斐守は吟味方筆頭与力・竹林一栄に降伏を求めた。竹林は拒否し、甲斐守は竹林を敵とみなした。奉行所は何もしない。そのために起こることの責任は町奉行甲斐守が取らされると言い放つ。年番方与力・左中居作吾は答えを保留する。年番方はどちらにも組みしないという。
 顔なじみになった闇都の付き合いを亨が任された。
 陰蔵が 旗本屋敷に逃げ込んだことを知った、甲斐守は目付け部屋に行く。

2017年11月8日水曜日

しゃばけシリーズ〈16〉 とるとだす

しゃばけシリーズ〈16〉 とるとだす 畠中恵
 とるとだす 薬種問屋の主たちが和薬改会所を作るか作らないか長崎屋を自分たちの方に付けるために、広徳寺に集まっていた。長崎屋の主・籐兵衛は若旦那・一太郎の病気が治るという上方の薬屋の薬を飲んだ。他の薬も飲まざるを得なくなり五種類もの薬を飲んで意識不明になってしまった。一種類ずつ解毒していく。目を開いた。
 しんのいみ 枕返しを探しに一太郎は蜃気楼の中に入る。枕探しに枕を返して貰うと飲んでしまった薬を吐き出せるかもしれないから枕返しを探していた。蜃気楼の主・蛟龍が天に上り龍になろうとしていた。天に昇る道と帰る道が開いた。見付けた坂左さんに籐兵衛の枕をひっくり返して欲しいと頼む。雨の塊に打ち付けられ気がついたら長崎屋に戻っていた。
籐兵衛の病は一段軽くなった。話せるようになった。
 ばけねこつき 染物屋小東屋が番頭と娘・糸を連れて糸を一太郎の嫁にと言ってきた。大坂から伝わった秘伝の薬を持参金代わりに付けるという。糸が化け猫憑きといわれ二度縁談が壊れていた。小東屋が蔵にしまい込んだ秘伝薬の作り方を書いた物を持って長崎屋を訪れる途中、番頭が奪おうとした。番頭に秘伝薬を譲るとか店を持たせるとか言葉で釣り、番頭に何もしない。番頭は縁談を潰し、書付が蔵から出る時を作った。鳴家たちのために持って遁げることは出来なかったが番頭は店を辞め、馬久や金次やおしろたちと住んでいるうちに周りのおかみさんに奨められ、煮売り屋の三人の子持ちの亭主が亡くなったおかみさんと所帯を持つことになった。
 長崎屋の主が死んだ 長崎屋に狂骨が現れた。狂骨の主は吉原の遊女・菊を好きになった広徳寺の僧・安時だった。菊は年期が明け、安時は還俗し所帯を持つ予定だった。菊は瘡毒だった。小検使に告げられた菊は井戸に身を投げ、安時も後を追った。安時は何故治せないと薬家長崎屋に現れたのだった。寛朝の護符を持った鳴家を狂骨に投げ、狂骨はいなくなった。
 ふろうふし 大黒様の少彦名神・薬祖神への文を持って常世へ行くことになった。途中、神田で落ちてしまう。一寸法師と金時が常世から非時香菓を持ち出した島子を追いかけていた。非時香菓を狙う侍に追いかけられていた。一太郎は橘の実を川に流し非時香菓は流れて無くなったと言いくるめた。一寸法師は少彦名神だった。毒消しを貰い籐兵衛は元気になった。

2017年11月7日火曜日

口入れ屋用心棒㊳ 武者鼠の爪

口入れ屋用心棒㊳ 武者鼠の爪 鈴木英治
 雄哲と助手・一之輔を探しに川越に行く。
 城代家老の新発田屋敷で軟禁状態で八重の解毒をしていた。藩主の弟が次期藩主と思われていたが八重が懐妊し、八重の命が狙われた。
 左腕を骨折している湯瀬直之進と倉田佐之助は川越忍と戦い、雄哲の手に薬が入ることを助ける。

2017年11月6日月曜日

渡り辻番人情帖② 浅草の月

渡り辻番人情帖② 浅草の月 吉田雄亮
 御家人の三男だった浅井源三郎は侍を辞め辻番請負人組合に所属する組合辻番人入「吾妻屋」主人・文蔵に奉公している。古着屋の娘・千賀と一緒になるため辻番になった。文蔵が人柄と天真正伝神道流免許皆伝の腕に惚れ込み揉め事の多い辻番所へ出向き厄介事を落着し後任に任せるという役割を担う渡り辻番として年三十両で雇われた。
 二十軒茶屋御福の茶 酔った大番組番士と寺侍の間に入った辻番人頭が峰打ちされ大怪我をして動けなくなったため源三郎が薬師橋たもとの辻番人頭に任じられた。
 刀にぶつかった母子を刀で叩きのめそうとしている番士から母子を護ろうとした源三郎。番士・高部を止めようとしている武士は源三郎と同門の中山良次郎だった。高部は刀を引き去った。翌日、源三郎は中山を通じて高部に呼び出され、大番組組屋敷で組屋敷支配・石沢の前で高部と試合をすることになった。高部は剣を落とし決着した。
 水茶屋で働く藤が辻番所の前に佇み毎日大塚新次郎を待っていた。大塚新次郎は敵を探していた。その生活を藤が支えていた。新次郎の敵は見付かっていた。桶職人になり妻も子もあった。新次郎の敵討ちが終わることを待っている母が国許にいた。新次郎は藤を置いて国許に帰りたくない。仇討をすることに躊躇いがあった。桶職人に立会いの申し入れをしながら仇討を止める。刀を捨てる。職人になる道を選んだ。
 新堀薬師橋 茶店に子どもが置き去りにされた。千賀が預かる。小間物問屋「倉見屋」の末松だと判った。倉見屋の内儀が旗本八百石柴田勘太夫の屋敷で行儀見習いをしていた。嫡男の子どもを身ごもり、家に帰された。嫡男が病になり跡継ぎがいなくなるため倉見屋の末松3才を連れ帰ろうとしていた。店は見張られ、毎日嫌がらせに来ていることが分かり、源三郎は火付盗賊改役与力・和田隆太郎から若年寄に訴えようとした。店を見張る家臣を捕まえ、柴田勘太夫に事を荒立たせると家禄召し上げということもある。と話を持ちかけてもらい、向後一切倉見屋には関わらぬと言う約定書をいただいた。
 源三郎に五百石の旗本・金子惣右衛門からの養子話しが来た。石沢は武士を捨て町人になった男がいる。このまま埋もれさせるのはもったいない男だと源三郎を褒めちぎって回るため養子を探している金子から話がきたのだった。源三郎の兄は乗り気だ。千賀は妾にして妻は親戚から貰うという話になっていた。源三郎は断りに行くが、会ってみて金子はもっと乗り気になる。妻も源三郎を気に入るが、金子に諦めさす。源三郎の下に諦めるという手紙が届く。

2017年11月5日日曜日

とびきり屋見立て帖④ 利休の茶杓

とびきり屋見立て帖④ 利休の茶杓 山本兼一
よろこび百万両 真之介とゆずは、銅屋別邸の蔵の道具の目録を作っている。吉左衛門は二人に納得できる値段なら売ってもいいと堆黄の菓子器を預けてくれた。帰り道、ゆずの兄が待ちかまえ父・からふね屋善右衛門と大雲堂幸右衛門が待っていた。堆黄の菓子器を五百両で買うという。真之介は千両という。銅屋さんは急いではいない。いい時代になるのを待った方がいいといいますと言い帰った。
 茶の湯の家元に呼ばれる。堆黄の盆と別の堆黄の菓子器と抱き合わせの交換という。真之介は逃げ帰った。
 清国のお坊さんに見てもらった。堆黄値百万金 と隷書体で書き落款まで押した。大切にしておいて欲しいと言われたことを吉左衛門に告げた。
 みやこ鳥 天皇の大和行幸は延期になり、長州は京を追い出され、三条公も長州まで都落ちすることになった。 幾松からの預かり物を桂に、春にあふ心は花の都鳥 のどけき御代のことや問はまし という句を付けて都鳥の香合を三条実美公に送る。
 鈴虫 吉左衛門が 長治郎焼 黒茶腕 鈴虫 という銘の箱に入った茶碗を持ってきた。九部もんだった。真之介もゆずも常慶の作とみた。
 壬生浪の一団に新撰組の名が付いた。近藤勇が見廻に来る。鈴虫で茶を一服。近藤が昨日鈴虫の茶碗で一服したと言う。家元に会いに行く。芹澤が茶碗を持っていってしまっていた。近藤に取り返して欲しいと頼む。茶碗が返ってきたってきた。返ってきた茶碗は鈴虫の銘の箱にぴったり納まった。家元が出してきた 二代目 黒茶腕 銘 春雷卜伝 と書かれた箱はゆずの持ってきた茶碗がぴったり納まった。
 鈴虫の銘の茶碗で茶を点てると茶筅の音がかろやかで鈴虫が鳴いているように聞こえた。
 自在の龍 桝屋喜左衛門が明珍作の自在の置物を持ってきた。蟷螂、伊勢海老、蟹、鷹、鯱、鯉節が自在に動く。桝屋は売ってもらっていいが大きい龍だけは残して龍の首の向きを言った通にして飾って欲しいという。芹澤がやってきて勝手に龍の格好を変える。ゆずは外から見えないように丁稚を龍の前に立たせた。茶を飲み自在を動かして遊ぶ芹澤を近藤が連れ出してくれた。二年前に競りで負けたという茶道の若宗匠が自在を全部買う。龍だけ残して買って帰った。
 龍を起こして東に向けるように言われた。桂小五郎がお薦さん姿で現れた。
 芹澤が現れ、龍の頭の向きは合図になっているのだろうと聞く。ゆずはお稲荷さんのお告げです。で通した。
 ものいわずひとがくる 吉左衛門が十一個の楽茶碗を預けてくれた。一代から当代まで全部揃っている。畳を敷き茶碗を並べる。土間に座って薄茶を点てる。目利きの人が集まってくる。芹澤がくる。無理なことを言う。茶の家元がやって来る。楽家十一代の茶碗は国の宝や。それを持ち去ろうなどとは押し込み強盗のすることやとしかりつける。
東の家元が「ものいわずひとがくる」という。すばらしい道具が持っている力。楽家の他の単品の茶碗がたくさん売れた。
店の者だけが知る暗号・符丁にすることにした。
 利休の茶杓 真之介が茶杓林と書かれた茶杓箪笥を仕入れてきた。若宗匠がやってきて買って帰る。真之介は大坂へ仕入れに行く。
 茶杓箪笥の元の持ち主・竹次郎が一本本物の利休作の茶杓が入っていたから返して欲しいと言いに来る。芹澤も一緒に来る。若宗匠は芹澤に本物が判ったら返すというが、芹澤が選んだものが偽物だと言うと本物だと教えられた物を折ってしまう。ゆずは本物が判らない。竹次郎は折れた茶杓を見て本物ではないという。茶杓箪笥は竹次郎に返された。
 竹次郎の竹屋へ行く。家元も来ていた。真之介が大坂から帰ってきた。真之介は茶杓箪笥を買った時気になったと一本茶杓を抜いていた。本物の利久作の茶杓だった。家元は来年の朝顔が咲いたら貸して欲しいと頼む。掛け軸を掛け、しののめの茶杓で茶事をするという。真之介は竹次郎に返す。その代わり茶杓箪笥を一式作ってうちに頂きたいと申し出る。 
 

2017年11月4日土曜日

風の王国〈8〉 黄金の仮面

風の王国〈8〉 黄金の仮面 平谷美樹
 夕凪は橘の霊を背負った。霊の穢れは消えた。
 突欲は暗殺されるが、劉于が蘇らせる。葬儀は晋陽で行われ、棺は上京臨黄府へ送られた。芳蘭と隆先は遼陽城へ行く途中、明秀と会い、麗津に帰った。隆先は父上を父だと思ってはいけないと言う。隆先十才。
 真瑩と息子・道隠は遼陽城へ入った。
 白頭山が噴火する。
 南渤海は灰まみれになった。明秀は遼東南部から引いて南渤海の農民を入れようとする。
別人のようになった突欲は黄金の仮面を被り無敵の黒い軍団を率いて血の雨を降らす。軍団は人も馬も突欲の術がかけられていた。突欲は国を潰そうとする。王も皇帝んも必要ないと言う。須哩奴夷靺鞨の蓮姫の前に現れ蓮姫を仲間に誘う。蓮姫は断る。
 蓮姫と明秀の息子・チョルモン(明けの明星)10才、バアトルとの息子・マンダフ(昇り行く旭日)7才になっていた。
 烈万華は安定国の建国を宣言した。
 940年
 勇魚の息子・安東廣満13才と母・晶閠は東日流に渡る。
 東日流浦を突欲の海軍が偵察で襲った。東日流浦の腕を試し、水軍の実力と防備を推し量るため。
 安定国の五百隻の船が盗まれ、繋がれた軍船に火が付けられた。
 東日流浦にも現れ、船が襲われる。突欲は亞都偉を探していた。明秀は胸騒ぎを感じ馬を走らす。亞都偉に親子の関係を聞く。何故、明秀のためにここまでするか?
 乙津根と亞都偉と奥津姫が死んだ。突欲は明秀に亞都偉を生き返らせてやる。私と手を組めという。明秀は断る。
 明秀は夕凪と結婚することになった。

2017年11月3日金曜日

風の王国〈7〉 突欲死す

風の王国〈7〉 突欲死す 平谷美樹
 明秀は壱萬栄から芳蘭から預かった鐘公偉の形見の剣を受け取る。
 契丹暦天顕四年 929年
 契丹皇帝耶津尭骨から謀反の疑いを受けた突欲は医巫閭山で隠棲させられることになった。高元譲は天福城を占領し、渤海の復興を宣言する。
 白頭山が噴火した。
 契丹暦天顕五年 930年 
 尭骨は弟・季胡を天下兵馬大元帥の役を与え、正式に皇位継承順位第一位の皇太弟の座につけた。
 突欲は壱萬栄の手を借り、芳蘭と隆先と共に唐に亡命した。唐の季嗣源の招きによる。月理朶の願い出もあった。隆先の近くにいると突欲の力は薄れていく。
 突欲に真瑩・高元譲の娘が近づく。932年 子どもを産んだ。
 933年 季嗣源死亡 季従厚即位。都は汴京から落陽に遷された。
 四ヶ月後季従厚は討たれ、季従珂が即位した。契丹は石敬瑭と手を組み季従珂に対抗することを決めた。
 934年 明秀は高元譲と手を組んでいた烈万華を遼東東日流府に引き入れた。
 旧渤海は三つ?に割れた。
烈万華の東京龍原府、定理府、安辺府、安遠府。
東丹国は扶余府、長嶺府。
高元譲の高氏渤海
南渤海は敢州、南海府、西京鴨緑府。
 936年 契丹が晋陽を攻め、落陽に攻め込む噂が広まる。
十一月 後唐は滅亡、石敬瑭は晋国皇帝に即位した。
 橘の霊が悪さをしている劉于が突欲の力を吸い取る隆先を殺そうとした時、止めようとした突欲に刺客が襲った。突欲は死んだ。

 

2017年11月2日木曜日

風の王国〈6〉 隻腕の女帝

風の王国〈6〉 隻腕の女帝 平谷美樹
 宇鉄亞都偉明秀の育ての親と遊女・夕凪が東日流から来た。
 明秀は勇魚と共に東日流軍を率いて契丹に抵抗していた。建部清瀬麻呂は契丹軍として戦っていたが、契丹軍の韓廉に殺される。
 十一月、勇魚は刀鍛冶・晶鈺と結婚した。
 須哩奴夷靺鞨の蓮姫が子種を貰うとやってくる。
 契丹暦天顕二年 927年 一月 芳蘭が突欲の子ども・隆先を産んだ。
 契丹皇帝・耶律阿保機は息子・尭骨に殺された。突欲は生き返る術を施すが間に合わなかった。突欲を次の皇帝にしようとしていた阿保機が亡くなり、月理朶は尭骨を天下兵馬大元帥に就任させる。十月、即位式の時、芳蘭は宝物蔵から明秀の剣を持ち帰る。壱萬栄に託し、明秀に渡してもらう。突欲の正室と息子は上京城で生活する。
 尭骨が東丹国の王都を遼陽に遷すようにと命令してきた。遼陽城は東日流軍に落とされている。取り返さなければならなかった。遼陽城陥落・上京遼陽府を名乗る。

2017年11月1日水曜日

着物始末暦(六) 錦の松

着物始末暦(六) 錦の松 中島要
 赤い闇 岡っ引き矢五郎は六助と余一を調べようとする。余一の出所と自分の昔のことを調べられたくない六助は、矢五郎の女房・奈美に矢五郎が岡っ引きをしているために生まれてくるはずだった麻吉が生まれず、霊になって憑いていると千吉が化けた庵主様に言わす。奈美は霊でいいから麻吉に会わせて欲しいと言われ、余一に相談する。
 余一は奈美が生まれなかった子どもの歳を数え縫ってきた着物を預かる。着物二枚で達平に着せた。余一はおかみさんが我が子の死を悲しむ限り、親分は己を責める。これからは着せる当てのない着物より、亭主の着物っを縫った方がいい。その方があの世の麻吉ちゃんも喜ぶだろうという。
 矢五郎が余一の長屋の話を全て聞いていたことを話、お前たちには近づかないと言う。
 泣かぬ蛍 大隅屋の園と珠はそれぞれの亭主に初めて浴衣を縫った。珠たちは糸は天乃屋の若旦那に嫁ぐと決めて話をする。みつは余一と所帯を持てばいいと。みつは余一の浴衣を縫うが渡せないで帰ってきた。珠は余一が断ったと思っている。
 錦の松 綾太郎は井筒屋・愁介から桐屋の先代は駆け落ち者で人別を偽っている。今のうちに玉を離縁しろと言われる。桐屋の光之助はその話が本当ならば離縁すると思うのなら今すぐ離縁して下さいと言われる。綾太郎は離婚しない苦しい時こそ助け合う精神を選んだ。
 淡路堂の三和の結納時の振り袖の図案を頼まれた。余一に相談し三和に松尽くしの振り袖を考えた。幸いが待つ、待つだけで幸せになれる。
 糸の先 糸はまだ振り袖を礼治郎に返していなかった。周囲は糸が玉の輿に乗るものと考えている。達平が糸を余一の所に連れて行く。余一は自分の父親は縁談を断わられた腹いせに母を手込めにし出来た子どもが自分だ。そして母親は亡くなったということを告白する。糸は礼治郎に断ることを決心する。余一も一緒に行く。余一は振り袖をきっちり始末していなかったことを謝る。礼治郎の母・節も話をし、縁談は無くなった。