2016年9月30日金曜日

入り婿侍商い帖(七)

入り婿侍商い帖(七) 出仕秘命1 千野隆司
 大黒屋の婿・角次郎の兄一家が文化四年(1807)八月十九日の永代橋崩落事故に巻き込まれ亡くなった。兄が死ぬ前に裏切り者が現れた、無念だ、と言い残したことと、兄が何者かに橋から突き落とされたことを知り、角次郎が五月女家に帰り後を継ぎ、殺された理由を突き止めようとする。
 兄の残した書き付けと、調べから、真岡の代官所と仙石屋助左衛門、勘定吟味役・畑山将監、勘定奉行・大久保忠信、田安家の誰かまで繋がって、不正をしていることが分かった。お召縮緬二千五百反の簿外品を江戸に運び込んだところを押さえた。不正品と認められ、織り元・三国屋、仙石屋、代官・御園生の関与が認められ、御園生は切腹、店は闕所、主人は遠島となった。
 兄が裏切り者と言った人物は見付からなかった。仙石屋以上の者の関与も証拠がなかった。

 

2016年9月29日木曜日

貸し物屋お庸4

貸し物屋お庸4 娘店主、想いを秘める 平谷美樹
 萱草の簪 浅草の芸妓・葛葉が萱草の簪を借りに来る。湊屋の本店の主人・清五郎に合う時に使うという。本店をあてにするなとも言われる。お庸は知人に作ってもらう。清五郎と葛葉の関係が気になるお庸は二人を付ける。お庸は自分が清五郎を好きなことに気付く。葛葉は簪を返す時、あたしはもう、清五郎さんに会うことはないよ。安心しなという。お庸は知らないが、葛葉は抱いてくれない清五郎より、西国屋の妾になることを選んだ。
 六文銭の夜 真夜中にお庸の店の前に裸の男の子と十人の死に装束の大人の男女が現れた。お庸の弟・幸太郎の家では家神になる修業中のおりょうが、幸太郎に六十文を持ってお庸のところに行くように伝えていた。男の子が川の杭に引っかかっているのを見付ける。遺体を引き上げ番屋に連れていくと、岡っ引きはお庸と幸太郎が突き落としたのではないかと疑う。男の子と十人の亡魂が現れれ、同心の月代を叩いた。お庸が亡魂の知らせで亡き骸を見付けたということを信じた。次の日、着物の礼に来た父母に、父母がしっかりしている姿を見せれば子供も成仏出来ると思う、という。後ろを絣を着た長七が付いて行っていることは言わなかった。
 秋時雨の矢立 湊屋の手代・松之助はお庸の店の助っ人だ。松之助の昔の仲間・蛇舅母(かなちよろ)の仁吉が、松之助の錠前破りの腕を見込んで誘いに来る。お庸を人質に取る。十年前、松之助の父親・丹波の秀蔵一味は江戸にやって来る途中品川で捕り方に囲まれ、逃げた。助けられた鵺の権兵衛一味に入った。秀蔵は見付からなかった。清五郎が現れ松之助を湊屋に引き取られた。話を付けた権兵衛は亡くなり二代目権兵衛になっていた。
清五郎と秀蔵にお庸と松之助は助け出され、奉行所から捕り方が駆け付ける。
 十年前、現権兵衛・寅之介が秀蔵一味のことを奉行所に知らせた。権兵衛を上方に誘い、毒殺してした。
 松之助に会わないで旅に出ようとする秀蔵にお庸は矢立を渡す。旅先から松之助に文を書けという。松之助を呼ぶ。二人はいい店主だと言い別れる。
 人形 瑞雲はおりょうに言われて百八体の人形を探し出し供養していた。
 初雪 美濃国大岡家の若様の付け女中にお庸が借り出された。十四才の小太郎と父親藩主の仲を取り持つ。また家来と若様の関係も修復する。庸は湊屋に帰る。下屋敷の家老・今田市右衛門が礼に来ている時に、陸奥国神坂家の橘喜左衛門がやってくる。何か力を借りたい時は相談するという。大岡家の相談は受けて、神坂家の相談は受けないということはあるまいという。お庸は喜左衛門の配下がお庸を探っていることを知らない。清五郎たちが牽制していることも知らない。松之助は清五郎に知らせに行く。

2016年9月23日金曜日

神田職人町縁はじめ

神田職人町縁はじめ しろとましろ 知野みさき
五年前、松平定信が老中となる
 咲 26才 万町の小間物屋「舛田屋」に煙草入れや財布を作って置いてもらっている。刺繍を刺す縫箔師だ。
 美弥 30才 舛田屋の主人 六年前に夫を亡くし店を継いだ。
 修次 錺職人
 咲は気に入った簪を見付けるが、高くて買わなかった。気になり次ぎの日に見に行く。半額になったので買う気になったが、修次が現れ、売れないという。身売りする姉のために欲しいという男の子のために、手直ししてやる。咲は簪入れを作る。
 修次に会う度、双子の男の子・しろとましろが現れる。稲荷の狐の化身だと言う。
 痴呆症の梅婆さんが言う、姉・藤が見付かった。姉妹の家は小さい時に離散していた。梅は漆器屋の女将、藤は料理屋の女将になっていた。昔の母親の思いでの料理を食べ梅は藤を認識した。梅の家のお月見の重箱は咲の父親元一の作品だった。見ることが出来た。
 女連れの修次に会う。
 修次としろとましろと咲が蕎麦屋へ行く。出会った大工の小太郎が咲の妹・雪が勤めている料理屋の仲居を好きなのだが何も出来ないと嘆いている。修次と咲はアドバイスをする。相手は雪の友達の伊代だった。手紙を持って行った咲に伊代は許嫁がいるからつき合えないという。雪は小太郎が好きだった。雪は立ち直れない。咲が一泊して話明かす。雪は小太郎が財布を拾ってくれたことを話す。小太郎は拾った財布の持ち主が好きになったと言っていた。小太郎は手紙を書くという。
 
 

2016年9月22日木曜日

もんなか紋三捕物帳

もんなか紋三捕物帳 井川香四郎
 紋三 おかげ横丁に住む。大岡越前から朱房の十手を預かる。江戸市中に十八人の子分がいる。三十半ば。
 光 紋三の妹 二十歳前後
 伊藤洋三郎 ぶつくさ洋三郎 南町奉行所の本所方同心
 鬼三郎 湯島天神下桶職人ばかりのうぐいす長屋の家主兼親方。四十過ぎ
 桶師鬼三郎 鬼三郎に将軍小納戸役の旗本・黒沼弥之介から岡っ引き・紋三の殺しの依頼が来る。鬼三郎は殺すに値する者か調べる。
 黒沼家の中間・蜂助が木場で刺され、浮いて見付かった。黒沼と蜂助は取り潰された大名の家来だった。蜂助の方が剣術も出来、頭も切れるが、黒沼は養子になり蜂助は中間だった。蜂助は奥方・多喜と関係を持ち、強請っていた。蜂助は多喜に殺されていた。蜂助殺しは永尋になってしまった。蜂助は黒沼の公金横領で強請っていたが、闇に葬られた。
 鬼三郎は黒沼を棺桶に入れ、妻の蜂助殺しと公金横領をお詫びするという紙を貼られ、門前に置いた。調べが入り、多喜は死罪、黒沼は切腹、御家断絶になった。
 冥土の客 大工の頭領・幸吉が納骨堂で首を吊って見付かった。自害とされた。娘は孫が生まれるし、仕事も次々とあるので自害では無いと言い張る。
 紋三は寺社奉行大検使・板倉の前で、作事奉行支配大工頭下役「大工棟梁」の坂田小五郎に嫌疑をかけ問い詰める。証拠が無いという坂田に板倉は屋敷を検めた。蔵から寺社修繕の裏帳簿を見付ける。紋三はこの家が空き家であり全部仕込みだったことを暴露し板倉は捕らえられる。板倉が寺社仏閣の改築や修繕に手抜き普請を命じていたことを幸吉は知り辞めて欲しいと訴えた。板倉は寺社奉行の堀部日向守が命じたと言った。
 堀部日向守が棺桶に入れられ見付かった。
 時は鐘なり 横川の鐘つき堂の鐘楼で撞木で頭を突かれて玄悦が死んだ。玄悦は遠州屋の主殺しの疑いが掛かっていた。紋三は幼馴染みの医者・村上浩次郎と玄悦が長崎で知り合い遠州屋と抜け荷し、遠州屋殺しで玄悦が捕まり、玄悦が抜け荷のことをしゃべるのを怖れて浩次郎が殺したとみていた。針がねで玄悦を吊り、叩き方が変わる時間に挟まれるように仕掛けていた。
 大岡の吟味の席に長崎奉行・脇坂も呼ばれ、遠州屋と玄悦殺しと抜け荷の取り調べが行なわれた。鬼三郎が集めた証拠を出してくれた。
 亭主殺し 呉服問屋「京屋」の主人・喜久平と女房・小夜が墓参りの帰りに襲われ勾引かされた。後に小夜は逃げ出して助けられたが、喜久平は見付からない。喜久平が小夜を見初め嫁に入り、半年で先代主人が亡くなっていた。仙台堀に老女が死んでいた。喜久平の実母・紺だった。喜久平は三才の時、目付・五百石・八郷五郎衛門の息子だが、紺の身分が低いため京屋に養子に出されていた。八郷家は養子にした琢磨を十五年前喧嘩で殺されていた。不正を糾すため普請奉行を追いつめ、妻子を殺すと脅され、琢磨を殺された。妻や喜久平に累が及ぶのを怖れ、追求を止めた。自分も呉服屋や喜久平と不正に手を出すようになった。それを小夜と弟・峰次が強請るようになった。喜久平の勾引かしは自作自演、喜久平殺しで小夜と峰次が捕まると考えていた。喜久平が勾引かされた時、強請りを止めるお紺を峰次が川に突き落とした。
 鬼三郎が棺桶に喜久平をいれ八郷家に運んだ時、中から現れた喜久平を父親がおまえが死ねば小夜達は処刑される。と言い殺そうとした。殺さなかった。八郷はあの時、お紺と喜久平を連れて家を出ればよかったかと想った。

2016年9月21日水曜日

励み場

励み場 青山文平
 知恵(ともえ) 父・成宮理兵衛 石澤郡に田畑を持っている。三人の支配人と九人の預かり人を雇うほどの小作を抱えている。姉、多喜30才三度離婚している。知恵は19才で嫁し、子供が出来なくて三年で出戻る。22才で笹森信郎27才と結婚し、三年前、信郎が前勘定所普請役になり、江戸へ来た。
 知恵は結婚の時、自分が理兵衛の子でないことを告げた。信郎は自分が名子だから武士にならなければならないと思っていることを告げた。
 知恵は五才の時、成宮の家に来た。「あの子は名子なのだ。」「あの子なら良いのです。」という父母の話を聞いた。六才の時、その母が亡くなり、もうこの家にいられないと思い家を出たが連れ戻された。人を見、検証し、十三才の時、弥吉に名子とはどういう者かと聞いた。昔、武家だった領主に仕えていた家来、領主が身分よりも領地をとって百姓になった領主の家来のことだと教えられた。
 笹森信郎は陣屋の書き役から元締め手代まで上り詰めた。武士になるために江戸へ出て勘定所の普請役になった。二年で支配勘定になるつもりだった。支配勘定は武士なのだ。そんな時、勘定の青木昌泰から久松加平を調べ、上本条村の視察を言い付かる。支配勘定を飛び越え声がかかることなど珍しい。昌泰は四年前、徒目付から勘定所に、支配勘定から勘定へ、御殿勘定所へ移るのも近いと目されている。
 信郎は上本条村の村を見、加平の話を聞く。加平が私財で開墾をし、御救い米を出し、百姓を助けたように言われているが、加平の下で働く名子・勘平が成したことだった。私財は勘平が作る肥料が生むものだった。勘平は家族共々焼き殺されていた。そして、肥料の中心になる、久松家秘技の塩哨が作れなくなっている。
 信郎は加平に信郎の故郷西脇村の堀越家の嗣子・英輔が亡くなった事を知らされた。信郎は報告書に有りにままを書いた。昌泰の言うように書けば、支配勘定でも徒目付けにでもするつもりだと言われた。信郎は致仕願いを出し、西脇村に帰り、新しい勘三になろうと思った。名子を識り、名子という境遇を己で始末できると思った。知恵が離縁を望むなら仕方がないと覚悟を固めた。
 知恵は信郎が武士になれないのは自分がいる所為だと思っていた。自分がいなければ婿の口が有り引きがあるはずと思う。子供がいなくて良かったと思った時、子供が出来た。子供を無くしてしまおうとするが、知恵のしそうなことを考えた理兵衛によって、多喜がやってきて阻止される。
 多喜は知恵が理兵衛の姪であることを知らし、名子は自分だと言う。知恵は信郎に子供が出来たことを言おうと思った。武家になるのに邪魔なら離縁してもらう。そうでなければ、別れるつもりはない。覚悟を決めた。
 弥吉は多喜の家の名子だった。多喜は自分が名子なのを知恵が知ったと思っていた。知恵が自分が名子と思っていることは知らなかった。多岐は理兵衛が一番好きだった。だから結婚しても帰ってくる。
 

2016年9月20日火曜日

初しぐれ

初しぐれ 北原亜以子
 初しぐれ おこう37才、三枡屋楠太郎45才・おこうの亭主の四十九日が終わった。おこうが17才の時、互いに惹かれ合っていた市之介と一緒になるはずが、姉が亡くなったために楠太郎といっしょにならざるをえなくなった。姉の息子・清太郎3才を育て、長女を17才で嫁に出し、次男15才の養子先も決まっている。十日後、おこうは市之介に会いに行った。知らないと言われた。迎えに来た清太郎に当たり前だと言われる。楠太郎が可哀想なことをしたと言っていたと教えられる。隠居して三枡屋から遠ざかろうと思う。
 老梅 おたかは隠居して一人で暮らしている。若い男・半次が時々訪ねてくるようになる。おたかは許嫁を亡くし、結婚した相手は三年で亡くなった。養子に入った五代目に三十で隠居させられた。十二年経った。
 海の音 文化五年、長崎奉行・松平図書頭康秀の時、阿蘭陀国旗を掲げた英吉利船が長崎に入り、人質をとり、食料の肉、水、薪、等を要求し帰って行った。奉行は切腹した。長崎会所の唐物目利見習いから一代年寄りになった忠兵衛、妹として育った楓。長崎のことを考えていた奉行が何故、死ななければいけなかったのか。
 犬目の兵助 天保七年、甲州、犬目村兵助、下和田村武七がはじめた打ち壊しを兵助の懐手みている手鏡。三百人が一万人に膨れた。兵助は途中で帰った。
 捨足軽 天保十四年、長崎警護の役目の佐賀藩には捨足軽がいた。火薬を入れた筒を體に巻き付け船に乗り込み自爆する。煙草屋のおちょうの婿になる予定の源太は戦闘態勢で出兵した。捨足軽は八十人もいた。煙草吸いの仲間の煙草に火を付けようとして爆発した。源太は二本の指をなくし、佐賀に帰った。おちょうはもうどこにもやらないと言う。
 アーベル ライデル ふみ22才は家具職人・芳次郎48才の後妻だった。漫画家志望だったが家具職人になる予定の息子・洋一郎17才がいる。大卒の俳優のような顔の岩沢賢吾が弟子になった。ふみのいとこ・ゆう子13才が遊びに来る。ふみは洋一郎が好き、絶対に知られてはいけない思い。
 入院中も江戸の町を歩いていた 

2016年9月19日月曜日

剣客春秋親子草6

剣客春秋親子草6 襲撃者 鳥羽亮
 神田豊島町にある千坂道場の若い門弟が「これは立ち合いだ」と次々に襲われる。道場破りも来る。
御小納戸頭取の千五百石旗本土屋家の出稽古が決まっていたが、橋渡しをしていた門弟が斬られ、話は消えた。
 本郷の神道無念流の利根崎道場が小柳町に引っ越すために、近くの千坂道場が邪魔だった。引っ越す前に潰そうとした。門弟に師範代とか幕府への仕官を餌に強要していた。
 籐兵衛は利根崎との立ち合いを望んだ。籐兵衛が勝った。
 門弟が帰って来た。土屋家の出稽古も決まった。
 

2016年9月18日日曜日

中條流不動剣〈二〉 

中條流不動剣〈二〉 蒼き乱刃 牧秀彦
 松平蒼二郎は父・松平定信の命令で塩屋隼人を斬らなければならない。蒼次郎の妻・澄江と仲間・辰次・丈之介・三五郎を守るために。なかなか手をださない蒼次郎を追い立てるように、定信の命令で塙源道は、蒼次郎も馴染みの、日比野左内の道場に通うしじみ売りの市松を勾引かす。道玄は蒼次郎に塩屋を殺すように強要し、蒼次郎は塩屋に市松を助ける為に果たし合いを申し込む。
 蒼次郎を探していた左内と条太郎は、蒼次郎を救いたい澄江たちと手を組む。御庭番から道玄や蒼次郎の居場所を教えられた左内等は市松を救いに行く。市松を救い出し塩屋と蒼次郎の果たし合いを止めに行く。蒼次郎は定信の下にいき、吉宗のお墨付きを寸断し、去る。

2016年9月17日土曜日

浅草料理捕物帖〈三〉

浅草料理捕物帖〈三〉 正直そば 小杉健治
 蕎麦屋「桔梗屋」で修業をしていた与吉は、どんどんつなぎを増やす店に見切りをつけ、独立して蕎麦屋「多幸庵」を出した。与吉はいつも蕎麦を残す常連客・作治のことを孝助に調べてもらう。桔梗屋の嫌がらせかと思っている。
 多幸庵で食中たりを起こした小間物問屋「白河屋」の旦那・左平衛が翌日亡くなった。多幸庵の客が来なくなる。孝助は自分の店の客に左平衛の死亡と多幸庵の関わりが無いことを話、多幸庵を救って欲しいと頼む。作治に残さず蕎麦を食べてもらうために研究した与吉の蕎麦は美味しく人気がでる。品評会で一位になった。品評会に推薦したのは作治で作治に目を掛けてくれるように頼んだのは、桔梗屋の主人だった。
 作治は信州善光寺前で蕎麦屋をやっていた蕎麦打ち名人だった。作治の店も蕎麦を食べて亡くなった人が出たために潰れていた。作治は蕎麦を受け付けない体質の人がいることを知った。
 孝助は白河屋の左平衛の死を調べていた。枕元の少量の白い粉が気になっていた。左平衛の勘当されていた息子・佐吉が帰って来て店を継ぐ。佐吉を調べた孝助は佐吉が下駄屋の主人を殺し、下駄屋に入り込みおすみと一緒に暮らしていたが左平衛がなくなり、おすみを殺して白河屋に帰ってきたことを調べ上げる。左平衛は佐吉が帰るように訪ねたが、別れたくないおすみは、佐吉が亭主を殺したことを左平衛に話したため、左平衛は佐吉を白河屋に戻すことを止める。そのために左平衛が蕎麦アレルギーと知った佐吉は、左平衛の後添え・おしまと番頭・沢太郎を仲間にし蕎麦粉を左平衛の顔に降った。そのために左平衛は亡くなっていた。
 佐吉はおすみ夫婦を殺した罪で獄門、左平衛は発作で亡くなったことに変わりがないが、おしまと沢太郎は白河屋を出た。
 多幸庵はそば殻の入ったお手玉を置き、初めてのお客様に握って貰うことにした。
 

2016年9月16日金曜日

魔術師 イリュージョニスト

魔術師 イリュージョニスト ジェフリー・ディーヴァー
音楽芸術学校の生徒、メイキャップアーチストと殺される。犯人は人に見られるが不思議なトリックで逃げられる。ライムは三人目の犠牲者・弁護士を殺される前に保護する。イリュージョニストの卵・カーラにイリュージョンの技術のアドバイスを受ける。
アメリヤは犯人を追いつめるが、川に逃げられる。
 リンカーン・ライムの部屋に犯人は警官姿で現れる。話をし、火を付けて逃げ、消防署に連絡した。
 犯人はエリック・ウィアーというイリュージョンパホーマーだと思われた。目的は自分のパホーマー生命を無くした火事の元を作ったエドワード・カデスキーへの報復だと思われた。セントラルパークで行なわれるサーカスを止め、観客を外に誘導するが、見込み違いだった。
極右組織の指導者を告発する検事補の命を狙っているように思われた。偽警官になり検事補宅に現れたところを捕まえた。彼はマンハッタン拘置所から看主を殺し脱走した。
 やはり犯人の目的はカデスキーへの恨みだった。狙いはサーカスのテント内で火事を起こすこと。カーラの助言で日時と方法を探り出したライムたちは、火事を見ようと近くにいた犯人を捕まえた。犯人はエリックの弟子だった。エリックのマジシャン生命が失われた時、自分のマジシャン生命も失われた。
 アメリヤ・サックスは昇進試験を受けた。今までにない点数の実地試験だったが、鑑識作業を邪魔する下院議員にマスコミの居る前で手錠を掛け、動き回らないようにしたことのため、横槍が入り、昇進できなかった。定職にせよ、と言う。サックスは巡査から三級刑事になった。黄色のカマロを修理に出す。真っ赤にしよう。
 カーラはカデスキーのシルクファンタスティークに入った。

2016年9月13日火曜日

風烈廻り与力・青柳剣一郎34

風烈廻り与力・青柳剣一郎34 砂の守り 小杉健治
 身元不明の三人が相次いで殺される。
 犯人は仁村道場の師範代をしていた神村左近だった。左近は浅間藩有坂家家臣・大村源一郎だった。信州一帯の出没する信州山岳党と名乗り盗みをする一団を捕まえた源一郎は、盗賊の中心に国家老と大目付、さらに城下両替商の千曲屋が居ることを知った。連判情を手に入れ殿に訴えようとしていた。国許で襲われ、江戸でも襲われていた。
 青柳剣一郎は神村左近を捕まえ、殿様が参勤交代で江戸に出てくるまで牢の揚がり屋で保護することにした。
 青柳剣一郎は知り人の仁村道場の道場主の見舞いに行き、娘・るりの相手に良い青年・高岡弥之助22がいると言われる。高岡弥之助は左近に型稽古の大切さを教えられ、辻斬りの犯人が左近でないことを思いながら調べていた。剣一郎の調べや捕物に手を貸す。神田明神でるりと出会い、名も知らないで、互いに一目惚れをしていた。弥之助が剣一郎を訪ね、再会する。剣一郎も多恵も弥之助を気に入った。
 るいの縁談・小普請支配旗本の及川辰右衛門の息子を断わった。弥之助は小普請だった。御番入りがかないそうだったが、果たせなくなった。弥之助の小普請支配は及川辰右衛門だった。剣一郎は弥之助に 自棄になって大事な方向を見失うな、日頃の修練が大切だ。なにがあろうと平常心を保つのだ。我が心を鍛えよ。と忠告する。

2016年9月12日月曜日

取次屋英三2

取次屋英三2 がんこ煙管 岡本さとる

2016年9月11日日曜日

取次屋英三

取次屋英三 岡本さとる
 文化二年 1805年
 秋月英三郎 大阪住吉大社鳥居前の野鍛冶の息子、江戸京橋水谷町で手習い道場をしている。
 又平 元渡り中間
 松田新兵衛 英三郎の剣友 共に岸裏伝兵衛の門下 

2016年9月10日土曜日

寅右衛門どの江戸日記

寅右衛門どの江戸日記 人情そこつ長屋 井川香四郎
 取り潰された二万三千石越後四条藩主・与多寅右衛門景清30が、駒形長屋に住むようになった。
 奉納芝居で地元の評判の良くない五郎蔵親分を手なずけ、芝居に出し、悪事を止めさせ不法の借金証文を破いて捨てた。
 木曽屋の若旦那が父親の留守に材木札を発行してお金を集めた。そのお金を目当てに盗みに入ったカマイタチの竜一を捕まえた。寅右衛門が見抜いていた。
 居酒屋に忘れた五十両がなくなった。必死で金集めをしていた伸太が酔ってお金を盗まれないように隠したことを忘れていた。思い出して良かった、良かった。
 借金のかたに大工から大工道具を取り上げる大家。
 町名主・徳兵衛の息子・藤吉が臥煙になっていた。火事場泥棒・カグツチ雷蔵一味にされてしまう。藤吉がカグツチの雷蔵を捕まえた。
 四条藩は再興された。寅右衛門は長屋を去るが、新しい従姉妹を殿様に据え、長屋に帰ってくる。寅右衛門は影武者だった。

2016年9月9日金曜日

あっぱれ毬谷慎十郎

あっぱれ毬谷慎十郎 虎に似たり 坂岡真
 播州龍野藩を追放され江戸に来た。強い相手と闘うことを夢見て道場破りをする。女剣士・咲に敗れ、咲の祖父・一徹の丹波道場へ押しかけ弟子になる。
 黒天狗が打ち壊しをしていた。米屋を狙い相場を引き上げ札差しが儲かる。元勘定奉行、蔵奉行、札差しを懲らしめる。
 笹部右京之介が瀧野藩主・老中・脇坂中務大輔安董を狙ってきた時、慎十郎が対峙し、北辰一刀流の奥義・七曜剣を使う右京之介を倒した。慎十郎は安董の威風をさすがと思った。

2016年9月8日木曜日

風烈廻り与力・青柳剣一郎32

風烈廻り与力・青柳剣一郎32 善の焔 小杉健治
 大伝馬町で付け火が続いた。牢屋敷の解き放ちが目的かと思い入牢中の関係者を調べる。
 付け火の狙いは小伝馬町一丁目に住む錺職人修次の所にいる、兄弟子だった麻吉だった。麻吉は中風で半身不随、言葉も思うように喋られない状態で修次のところにいた。
隣の為五郎が付け火を目撃し怪我をしたことで青柳剣一郎が修次と麻吉を知るところとなる。麻吉は倒れた時の記憶が無く、忘れているが、善行の人で知られている「小町屋」の主人・沢治郎が、孝太郎が自訴したこと、内儀が亭主殺しに加担したことはなしているのを聞いていた。思い出す前に麻吉を何とかしたかった。修次が麻吉に辛く当たり、あまり面倒を見ない。麻吉は這って水を飲み、便所へ行く。所帯を持つはずだった親方の娘・くみは自分のものだ。と麻吉を怒らす。麻吉は憎しみから死を考えなくなり、殺すことを考え動かす努力をする。修次の狙い通りだが、沢治郎は焦り、麻吉を小町屋の寮に迎え、火を付け殺そうとした。
 麻吉は助けられ、小町屋で聞いた、孝太郎のはなしを思い出す。修次の気持ちも分かった。修次のおかげでここまで治り動けるようになっていたことが分かった。修次の辛さも理解出来た。麻吉は仏門に入った。
 剣一郎が入牢者を調べた時、孝太郎の話と弟・孝助を聞いていた。疑問に思うことがあったので納得がいった。孝太郎に、孝助が、相馬屋を殺し十両を取ったように言った者がいたのだ。孝太郎は弟を守るために自分がやったと自訴していた。
 何も証拠が無い。剣一郎は沢治郎に、自分は何も知らない。麻吉のことも一太がやったことで自分は関係ないといえばそれで通るという。沢治郎の本当に善の部分を知っている。沢治郎の善と悪に問う。沢治郎は相馬屋の内儀との不倫を相馬屋に知られたことが原因だと自白した。
 

2016年9月7日水曜日

風烈廻り与力・青柳剣一郎29

風烈廻り与力・青柳剣一郎29 まよい雪 小杉健治
 鉄次と弥八が佐渡から放免されて帰って来た。
 鉄次は会いたい女・きみを探す。おきみを探し根津遊郭へ行く。おきみは見付からないが身請けにお金がいる。盗賊の誘いに乗る。根津のおきちかと思われた女郎が仲立ちになり繋ぎをとれ、弥八の居所を知るが会えない。一回目の押し込みは人を殺さなかった。次は火を付けて押し込み、抵抗されれば殺すという。弥八の居る荒物屋の主人・卯平に南町の青柳剣一郎に伝言を頼む。強風の夜、この付近に付け火がある。鍋町の「加賀屋」が襲われる。加賀屋の下男は賊と通じている。と伝える。
 弥八は佐渡に一緒に佐渡送りになった時助がいる。時助を助けたかったら江戸で言われたことをするようにと言われて佐渡を放免されていた。命令は与力・山吹吉五郎と妾・おきちの殺害だった。おきちは鉄次の探している女だと判った。山吹を殺そうとした時、青柳剣一郎に捕まる。
 青柳剣一郎は山吹を公金横領の内定していたため、妾宅を見張っていた。佐渡支配組頭・幸山宅次郎と赤木屋が手を組み、江戸に運びこまれる金銀をくすねていた。約定が盗まれ、約定を手に入れた山吹は強請っていた。人足寄場から山吹に佐渡へ送られた弥八と時助は幸山が仕組んだ佐渡逃亡に乗せられ、放免するかわりに・・・と山吹殺害になったのだった。
 盗賊の火付けは阻止し、加賀屋に押し入ったところを捕縛した。
 山吹は証拠の提出をし、隠居。赤木屋は悪事は露顕したが命が助かる道は時助の放免しかないと手紙を書く。赤木屋光右衛門は隠居した。佐渡金山は老中より佐渡奉行を通して関係各所に注意、不正防止の監督強化
 弥八は卯平の店を継ぐ。鉄次は江戸所払いになり、おきみと加賀屋の本店に行く。
 剣之助は吟味与力見習いをしている。


2016年9月6日火曜日

風烈廻り与力・青柳剣一郎22

風烈廻り与力・青柳剣一郎22 冬波 小杉健治
 金貸しの使用人・多助が主・善兵衛を殺し、おこうの家に逃げ込み、おこうを人質にし、二階に立てこもって喚いていた。静になって四半刻、同心が梯をかけ二階に上がるとおこうは目隠しされ、猿ぐつわをかまされ、両手足を縛られていた。多助は自分で腹を刺して死んでいた。剣之助は違和感を覚えた。廊下の向かいに押し入れを開けた。天井板が少しずれて黒っぽい着物が見えた気がした。
 多助が善兵衛を殺し、立てこもった後、自害したとされた。
 剣之助は納得がゆくまで調べることにする。剣一郎は文七に剣之助の調べを助けてやって欲しいという。文七と剣之助は個人的な付き合いが始まる。
 見廻り中、いつも「備前屋」を見ている男・政次がいることを大信田新吾から聞く。政次が男をつけているのを見、政次をつける。男は備前屋にはいり、政次は自分の長屋に帰った。茶道具屋「懐古堂」の主人が殺されて見付かった。備前屋からの帰りだった。政次が疑われる。懐古堂の殺しには関係が無いようだが、政次は何かを隠しているようだ。
 善兵衛を殺したい者、おこうを知っている者、を探していると、長屋に住む、母親が病気のおたまが浮かんできた。好き合っている砂吉がいる。善兵衛からお金を借り、女衒がおたまを連れて行くことになっていた。善兵衛が亡くなり、善兵衛のおかみさん・おすなに返済期日を延ばして貰い、返済は五両でいいことになっていた。おすみにおたまと砂吉のことを訊くと目に涙をためてくって掛かられた。砂吉の罪を暴いてもおたまを不幸にするだけだ。何の証拠もない。剣之助はこれ以上の調べを止める。
 剣一郎は、商家の旦那がいかさま博打に手を出し自死している事件を調べるように言われる。胴元に部屋をかしていた東條廉太郎が殺された。東條が会っていた商人太田屋を調べ、一緒にいた男は備前屋の番頭だった。備前屋を調べると先代の息子は勘当され、内儀と娘は内儀の巣鴨の実家に帰ったという。巣鴨に実家は無かった。
やはり、最後まで調べようと剣之助が調べると、長屋に住むお房とおたまが備前屋の先代の内儀と娘だった。政次は備前屋の息子・豊太郎だった。おこうの所にお房とおたまは居たことがあった。豊太郎が善兵衛を殺し、多助を殺したのだろうと考えた。
 備前屋の番頭が賭場の中盆の忠助で、主人が胴元の惣兵衛だった。旗本・勝山谷右衛門と惣兵衛が組、豊太郎をいかさまに引っかけどんどん金を貸した。勝山が中に入り、豊太郎を勘当し、惣兵衛を養子に入れ、備前屋を乗っ取ったことが判った。
 備前屋に人が集まり賭場が開かれる日、剣一郎は一計を案じた。豊太郎を備前屋に入り込ませ、豊太郎を捕まえに捕り方が入り、賭博を見付ける。惣兵衛は捕まる。東條は備前屋に強請りをかけていた。勝山の家来に殺された。懐古堂は止めようとした。
 政次・豊太郎は金貸し・善兵衛を殺したのは自分だと自訴した。剣之助はケリがついている事件だと取り合わなかった。別の形で罪を償えと。
 剣一郎は政次に江戸を離れ、五年紙の仕事について学んでくるように言う。まっとうになって帰ってこい、備前屋に戻れるようにすると言う。政次は酒田に旅立った。
 勝山は家来を斬り、切腹した。
 剣之助は見習いがとれ、本勤並になった。

2016年9月5日月曜日

からくさ図書館来客簿〈第五集〉

からくさ図書館来客簿〈第五集〉 仲町六絵
 月下の想い 閻魔庁第七位・八瀬の大将がふくろうに化身してやって来る。
図書館で野鳥を書いても良いかと学生が電話をしてきた。上村松園親子展で道なしの少女に話しかける電話をしてきた学生・古川青一に会う。図書館へ連れて来る。青一の偽書は「花鳥佳人」。道なしは事故で亡くなった画塾の先輩・菅野雪枝だった。青一に取り憑いて美人画を描かせて欲しいという。篁の提言で二人で弁乳母の下絵までを書くことになった。月下の想いという題の下絵が出来た。青一は冥府に行く雪枝に下絵に彩色した絵を渡す。青一の絵は色がおとなしい。月夜が背景だからビビッドにとアドバイスを貰った。青一から雪枝の記憶は無くなっている。
 親王のアキナケス 二人で春に剪定鋏を買った「山城正光」に刃物油を買いに行くと道なしがいた。店員・有馬34才には虎が見えていた。虎に触れた時子の掌に「たかおかしんのう」の文字が浮き出る。有馬を図書館に誘う。高岳親王は799年生まれ、67才で天竺に行く途中で亡くなっていた。日本から来ていた遣唐使にペルシアの商人から買い求めた、アキナケスと呼ばれる短剣を託した。密林で道なしになっていたところ、異国まで冥官が迎えに行き、今は閻魔庁第五位の冥官になっている。もし、短剣が見付かれば、高知県清瀧寺に生前建てた石塔にと言う。
 有馬が虎を従えて図書館に来る。虎が61才で亡くなった山城正光の刀匠・黒崎になった。有馬の偽書は「刃のめぐり」。黒崎は作刀技術を記した巻き物「百刃取揃」の「波斯国不動短剣 アキナケス」を作ろうとしていた。有馬から記憶が消される。有馬は「史学雑誌」を借りて帰る。黒崎との話が夢の中のように残っていた。
 八瀬童子 東京からおじいちゃんの生まれ故郷八瀬に行く少女・緒方瑞希がやってきた。年を取った祖父が13才の時、秋元神社の赦免地踊りで会った秋元神社に祀られている老中秋元喬知に会って来てくれという。手紙を託された。
 瑞希は京都の宿が解らず道を訪ねた。篁・時子・茜・晴明・太田・八瀬童子たちは少女と道なしを見ていた。瑞希をゲストハウスに送りながら後ろの武士に話しかける。秋元と聞いて瑞希は「五十年位前、私のおじいちゃんに、自分だけの手柄ではない。自分だけが祀られるのはいかぬ。と言いましたよね。」と言い始める。気になったが、他の人には見えなかったから無視してしまった。老い先が短いからほうっておきたくないと、手紙を預かってきましたという。秋元は近衛様も家宣様もご恩がある。なのに自分だけが神扱いではあの世に行けんという。篁らはだいたいの事は摑めた。
 瑞希の偽書「日本の弓術」。燈籠飾りに東照宮の猫と雀の同じ意匠がが乗って讃えていることを見付けた。八瀬の祭りに行く。秋元は徳川家への感謝のしるしかと納得した。
 瑞希の記憶は消された。近藤様も家宣公も八瀬で尊敬されていた。お寺で恩人の名前を読み上げて供養している。燈籠の猫と雀が東照宮の写しであること。手紙の封が切られ、秋元但馬守と書いてある。瑞希は東京に帰る。
 月下の想いが完成した。青一から発表会の連絡が来た。
 千五百年を冥官として過ごした八瀬童子は退官する。その後、古い天人たちの語る思い出を採録しながら天道で過ごすことにした。
 時子の背が延び、掌から梵字が現れ、一枚の紙になった。
 
 

2016年9月4日日曜日

からくさ図書館来客簿〈第四集〉

からくさ図書館来客簿〈第四集〉 仲町六絵
 からくり山鉾 安祥儀を持たないと決めた時子を武者修行に出す。篁は過保護と言われるくらい心配する。茜は額田王だった。数万の兵を鼓舞して死地におくり出した事を悔いている。
鳥類学研究所の蜂須賀から祇園祭の鷹山鉾の復元計画を知る。紹介された文化財修復会社の社員・車折美保が図書館に、吉野太夫を連れて来る。美保の偽書は「欠けた半面」。修復師は、国宝や文化財の仏像を作られた当初の姿に戻さない。仏像がたいせつにされてきた長い時間も保存する。鷹山鉾は文化財ではない。灰屋紹益と吉野が考えた仕掛けが後世まで続くか心配で、現世を離れられなかった。鷹山のからくりの振り付けも仕組みも、知っているから職人さんに教えとうてと言う。鷹匠が腕を上げると、鷹が翼を広げる。犬遣いは両手を上げて、つながれていた犬が後ろ足で立ち上がる。後ろにいる樽負いがつまみ食いしょうと粽を口元に持って行く。お囃子衆の中にからくり手を隠す。冥府の工房で文書を作り、見付かった文書だと復元工房に送る。
 猫と睡蓮 菓子職人・本庄雅也が、金魚屋のアルバイト店員・江藤沙央里と菓子・金魚琥珀を持って来る。冥府に持って行く。晴明は花押を書き入れる術式を作っていた。金魚屋の高橋宗介と宗介に付いている冥官と「伴鳥記」を書いている鳥部と晴明が食べるのだろう。
 ゆみはら書房の社長が道なしになって図書館に来た。半年前、古書店主・弓原35才で自動車事故に巻き込まれ亡くなっていた。古書を売却する古書店の割り当て等を書いた遺言書を書き、篁に託す。時子が弓原に擦れ、現れた文字が「もねとしもがも」だった。弓原は冥府の小部屋で飼い猫のキジ虎猫が見付かるまで待つ事になった。キジ虎猫・モネは草木有情庁に探してもらう。
 湖北に眠る 山吹・太田が道なしに憑かれた青年がいることを知らせに来る。篁と時子は下鴨神社の矢取神事に出る青年を見に行く。旅行社の青年・吉政25には観音様の腕を抱いた少年が憑いていた。湖北の観音さん版図を企画している。時子は修行に山吹の所に行く。吉政を連れて湖北の観音めぐりをする。排仏毀釈の折り寺荒らしから集落を護るため観音様の腕を切った神社の息子・久志が現れる。久志は警戒して吉政に憑いていた。
 排仏毀釈で切り落とされてしまったが守り継がれた右腕とする。和紙で装丁した朱印帳を作る。一年中いつでも拝観出来る。何年ぶり何十年振りでも歓迎する。久志は冥府へ行き、吉政の意識は途切れた。
 何度でも、何十年ぶりでも、お帰りなさい。のキャッチコピー。記念品に散華を用意した。
 古本市でキジ虎猫を連れた弓原が目撃された。篁と時子は弓原を見送る。
 時子は蔵書が増えて閉架にする本の閉架目録に、一冊ごとに感想文か紹介文を付けることにした。

2016年9月3日土曜日

からくさ図書館来客簿〈第三集〉

からくさ図書館来客簿〈第三集〉 仲町六絵
馬琴の謎かけ 白石良純の母校・鞍馬口高校で講演し図書館に来た大塚信介は、道なしの曲亭馬琴を連れてきた。信介の偽書は「歴史がたり武者がたり」。信介は、八犬伝はリズムをつけて読むといいようにルビがふってあるように思い、放送部の人に読んでもらう。馬琴は南総里見八犬伝を朗読してほしかった。信介は時代小説で佐藤四郎兵衛忠信を書きたいと思っていた。
 時子は、魂を否応なく天道へ送る安祥儀を持つ許しが出た。どんな道具にするか考える前に持つか持たないかで迷っている。
金魚と琥珀 篁は菓子職人の青年と出会う。二度目の出会いの時、青年・本庄雅也に道なりが付いていた。雅也は菓子・金魚琥珀を作ろうと思い金魚を見に大和郡山に帰り、金魚屋さんの前の社長が憑いた。菓子や陶芸の本を探しに図書館へ来た。亡くなっている金魚屋の社長・高橋宗介が、卒中で倒れた時、最後に聞いた言葉が、死と財産を望む妹の言葉と弟の怒声だったため、家族の事を忘れていた。篁は怒鳴られたのは宗介ではないことを説明し道なしを天道に連れて行った。雅也は金魚琥珀のヒントを貰う。
 記憶を無くした道なしがいる事を教えてくれた、山吹茂は太田道灌だった。
わたの原 隠岐の図書館司書・御堂有紀が、からくさ図書館を見学にきた。道なしの匂いがする。有紀の偽書は「隠岐の国逍遥」篁は隠岐に行く。篁が「隠岐自然抄」を書くのを手伝ってくれた阿児奈だった。図書館の本を船で運ぶ有紀に「本を捨てろ」と言う阿児奈。本を読むと隠岐を出て行ってしまう。人が少なくなる。有紀も本を読み、連れ帰った恋人が隠岐を出ると一緒に出て行くに違いないという。恋人が隠岐で頑張ろうとしているところを見せ、天道に送る。
 時子は篁が書いた本物の隠岐の国逍遥を読んでいる、阿児奈を羨ましいと言う。
 時子は安祥儀を持たない事を決めた。

2016年9月2日金曜日

エンプティー・チェア

エンプティー・チェア ジェフリー・ディーヴァー
 リンカーンは手術を受けるためにノースカロライナ州パケノーク郡に来た。16才の少年・ギャレットが看護婦・リディアを誘拐している事件の捜査協力を要請された。
ギャレットはメアリーをどこかに監禁していた。今はリディアを連れて逃げている。
 アメリヤとルーシーはギャレットを追い、順次リンカーンに情報を送りアドバイスを貰い、ギャレットを捕まえた。リディアは保護したがメアリーは見付からない。
 ギャレットは人殺しもしているように追求されるが、否認する。アメリヤはギャレットを牢から逃がし、一緒に逃亡する。アメリアが逃がさなければギャレットは殺される所だったが、それは誰にも判らない。起こらなかった。
 途中殺されそうにもなるが、アメリア側は警察だと思い、警察側は自分たちがアメリアたちに狙われたと思った。リンカーンはアメリアを追跡する方だ。暴発でアメリアは保安官・ジェシー・コーンを殺してしまう。