2022年5月31日火曜日

仏像破壊の日本史

仏像破壊の日本史 古川順弘
 〜神仏分離と排仏毀釈の闇〜

 1867年(慶応三年 )明治天皇の王政復古の大号令に伴い新政府が行った神仏分離によって巻き起こった排仏毀釈。
 神社と寺院を分離する政策が、なぜ仏教攻撃、文化財破壊にエスカレートしたのか。

2022年5月30日月曜日

八丁堀強妻物語

八丁堀強妻物語 岡本さとる

 日本橋将軍家御用達扇屋「善喜堂」の娘・千秋は、八丁堀同心・芦川柳之助に一目惚れする。心の底から恋いうる相手に出会えた千秋は、芦川の気持ちを確かめ夫婦になるため突き進む。

 芦川の母・夏枝は、息子の気持ちを知り、これからが大変だと思った。相談した上司・与力の中島嘉兵衛はあきらめろと反対した。
 千秋の父・善右衛門は反対するが、母・信乃に説かれ、老中青山下野守に相談に行き、許可を貰った。南町奉行・筒井和泉守政憲には青山より話してくれることになった。
 善喜堂は将軍家影武芸指南役という裏の顔があった。千秋は子供の頃から武芸に才を見せつけ任務に駆り出されていた。
 作事方奉行配下同心・内田源左衛門の養女となって芦川家に嫁いだ。千秋付きの花も一緒に行く。

 定町廻り同心だったが、隠密廻り同心が怪我をしたため芦川が代わりに働く。気が気でない千秋は伯父の勘兵衛の力を借りて柳之助を助ける。
 青山下野守、筒井和泉守、善右衛門の許可を貰い千秋は、秘事を柳之介に話した。そして手を貸した。


2022年5月28日土曜日

花咲家の 怪

花咲家の 怪 村山早紀

 別れの曲 桂はりら子の手伝いで桜野観光ホテルに行った。五年前に一度来たきりだった。
ホテルのピアノを弾く。習ってもいないのに「別れの曲」が弾ける。少女と犬が傍に立つ。少女はユリアと名乗った。五年前、シェパードのいる洋館でユリアにピアノを習ったことを思い出した。でも五年前にはもうその洋館はなかった。洋館があったと言われている場所でまた来ますを言う。

 夏の川 お習字の先生だった菊野弥生先生が亡くなり、先生が家やその他の物を残された遠縁の娘・みぎわちゃん。先生の告別式の夜、着物をはらりと脱ぎ、庭から星空に向かって行進する不思議なあやかしの群れの一番後ろにほっそりした二本足のカワウソの姿で加わった。天の川を目指すように練り歩き夜空から消えて行った。草太郎はそう話した。

 火車 駅前の古い居酒屋の常連さんが、同じく常連さんのケーキ屋さんを元気つけるための花束の注文があった。木太郎は花束を配達に行く。花瓶を探し皆川さんと話し花を生けて帰る。次の日、訪れた木太郎に、娘を殺した少年が大人になって帰って来て、猫を殺していると訴える。怪我を負わされた逃げてきた猫を抱え皆川さんは亡くなった。
 後日、猫を殺していた男は警察に保護を願い出る。皆川さんが火車になり怨念で男を追いかけ、炎に焼かれながら遠いところに連れ去られた。

 約束 千草苑の店内で花咲茉莉亜と漫画家の有城竹友のオンエアがあった。有城の調子が悪そうだ。
 有城は寂しい少年時代を過ごし、友だちはこっくりさんだった話しとか、ゴミ捨て場に捨てられていたのを拾ってきたボロボロのロボットとおもちゃが、大切な友だちだったことを話す。ロボットはずっと君のそばにいるよ。ぼくが君を守ると言ってくれた。約束するずっと君と友だちと言ったのに、転校し友たちができロボットは手元にない。
 一世を風靡した少女漫画家、私の話し相手になってくれるのと言ったかの子。年月が経ち、先日かの子が行方不明になった。真奈姫川に身を投げた噂がある。話し相手になる約束をしたのに。
 有城の具合が悪そうだ。茉莉亜は一緒に行く。有城は真奈姫川で川の方に降りて行く。かの子に誘われる。ロボットが有城の足首を引っ張り引き止めた。間に合った。死んじゃだめ。約束を守れて良かったと言うロボット。誘うかの子。草むらの草が道を開け、茉莉亜が近づく。帰りましょう。かの子は川の中へ、有城は茉莉亜に医者に連れて行かれた。有城はロボットを抱えていた。光る神様も見える。神様は元気になったら見えなくなる。見えなくなってもそばにいる。
 この夜のことは余り覚えていない有城でした。

 


 

2022年5月27日金曜日

花咲家の旅

花咲家の旅 村山早紀

 introduction 風早の街は古くから魔法じみた出来事や伝説が多い街だった。洋館の花咲家の人々が遠い昔から当たり前の人とはどこか違うとささやかれる畏怖の対象だった。

 浜辺にて 千草苑のショウケースの冷蔵庫が壊れ、修理の間店を休む。木太郎は新婚旅行で行った宮崎に行く。妻・琴絵の思い出にどっぷりつかった。

 茸の家 小雪はベランダからトラックの荷台に落ち知らない山奥の町に連れてこられた。家の方向は分かる。小雪はまっすぐ帰る。山の中でおばあさんと猫が暮す一軒家を見付けた。食事を貰い休ませて貰う。猫は名前は丸子。丸子は宇宙人だった。たまたま事故でたどり着いた所で魂が乗り移れる体が猫だった。無理して猫のままおばあちゃんと暮しているので、おばあちゃんが生きているあいだは頑張っていきていると話す。
 次の日、頑張って歩いていると、探してくれていたいた桂が見付けてくれた。小雪は一軒の世話になった家のことを話すが、桂にはつたわらなかった。

 潮騒浪漫 桂は父・草太郎から留学先での話を聞く。教授と北欧の研究に行った時、立派なボートに係留された手漕ぎボートに乗っている時下流に流されオールも失った。流され気付いた時、岸に打ち上げられ、足に怪我をし、傍に壊れたボートがあった。
 スープを飲ませてくれ熱がある自分を介抱してくれた少女は女神だと思った。少女はこのままでは殺されると言い逃げ道を教えてくれた。逃げる前に彼らの仕事を見に行く。彼等はマリファナを作っていた。草太郎は逃げた。ノーターボートの所まで行く前に追いつかれそうだ。助けてくれたのは昆布だった。モーターボートを人がいる浜辺まで連れて行ってもらった。警察に連絡した。森の中の大麻草は燃やされた。
 草太郎の若い頃のお話です。

 鎮守の森 りら子は大学受験に失敗し、家にいた。花咲家の遠い親戚の花咲楠夫さんに会いに行きました。山越えの半ばにある休憩所で、花咲木太郎の孫・父草太郎に聞いて来ましたと呼びかける。カメラで賞を貰い別れていた妻子に会いにここまで来て、今晩の大雨で山が崩れ人里に被害が出ると楠の子供たちが泣いていた。下の町は妻子が住む故郷だった。
楠夫が力を出し祈り、楠の根が土を掴み土砂を食い止めた。彼は鎮守の森の一部となり樹木として生きていた。昔、草太郎は楠夫に会い帰った。
 りら子は妻子に会いに行った。アルバムという喫茶店。楠夫が賞を貰った少女がカメラで写真をとっている写真、と少女が、写真を撮っている父を写した写真が掛けてあった。
 店内の植物がりら子に語りかける。この家のお父さんは山の神様になった。お父さんがいなくなった代わりに私たちがこの喫茶店を守る。ずーとそうしてきたよ。大丈夫だよ。と
 もう一度鎮守の森に行き帰った。

 空を行く羽 茉莉亜はゆすらの歌声を聞いた。ゆすらのために舞台で歌う歌を作られたというのに、ゆすらは自分に自信がなく舞台に立てない。故郷、ダムに埋没した風景、花を思い出し舞台に立つ決心をした。

 Goodo Luck 桂は空港で、SOSを聞いた。電動車椅子の植物たちが先生と呼ぶ人がSOSを発進しています。喋れないようでした。桂は先生とテレパシーで会話する。母親に虐待されている少女を助けたいようだ。母親が少女を抱え階段の手すりの向こうへ放り投げそうです。先生は桂に後は頼んだと言って車椅子で突っ込みました。親子は手すりから離れたが、先生は車椅子ごと階段の下に転がり落ちた。植物が葉と蔓を伸ばし支える。ゆっくりと落ちて行った。桂は母親の虐待を訴えた。先生が呼んでいた紳士に、事情を説明した。
 桂は先生に会った。桂の不思議な力を認めた。先生は私の脳は動き、心臓も動いている。指が3本動くからね、諦めるのはまだ早いと考え直していた。家を改装しようとしていた。




 

 

2022年5月26日木曜日

花咲家の休日

花咲家の休日 村山早紀

 プロローグ 風早駅前商店街の一番奥辺りの花屋さん・千草苑は、今では 、花束や鉢物を売り、なじみの家の庭を手入れをするくらいの仕事に縮小された。店の一部でカフェ千草を営業、花屋の中にFMラジオ局のサテライトスタジオができた。
 昔、プランツハンター今樹木医・木太郎じいさん。息子・草太郎五十代。風早植物園の広報部長であり学者。十数年前に妻・優音に先立たれ三人の子供を育てる。
 長女・茉莉亜。カフェ千草を営むみ、週二日、パーソナリティとして活躍。次女・りら子。末っ子・桂。小学生。
 家族は植物とはなしができるのです。

 魔法のコイン 草太郎は小学校の頃、友だちとは距離を置く付きあいだった。転校生の星野聖也とだけは違っていた。君植物の言葉がわかるって。素敵だね。魔法使いみたいだね。きっかけに話すようになった。草太郎が書く物語を読んでくれる人だった。雨宿りした壊れかけた廃屋で草太郎は聖也の前で植物と話をする。信じるという聖也。
 聖也は、こことは違う次元にある魔法の国の王子だった聖也を、故郷から迎えが来たと言う。たぶんこれでお別れ。草太郎の物語を書いたノートと魔法のコインを交換した。
 聖也は行方不明になった。どこの国の物かわからないコインが残された。

 時の草原 小学生の桂は 夏休みに友だちと半月山に日本狼を探しに行く。子狼を見付けた。お兄さんに捕まえられた。崖から落ちるが、桂の願いがきかれ草木に包まれ落ち子供たちに怪我はなかった。雨も降った。お兄さんは未来から来たと言う。子狼の親は死に、このままだと子狼も死ぬ。子狼を自分たちのところで活かすために連れにきたと言う。

 死神少女 りら子は、夏の夜、塾の帰り、黒く長いフード付きのマントを着て大きな鎌を手にした少女を見た。風邪を引いて寝ているりら子の枕元に現れ、お見舞いに来たと言う。
 りら子は思い出した。母の死の後、しーさんと呼んだ友だちが、風邪を引いて寝ている枕元に現れたことを。お母さんを迎えに来た死神だった。

 金の瞳と王子様 小雪は生まれて間も無いころに段ボール箱に入れられ川を流れている時に桂に助けられ一才になる。桂は友だちと一緒に山に行ってからすこしおかしい。小雪が探っていると熱を出し眠っている桂が、陶器の人形を握っていた。山から拾ってきたようだ。
小雪は庭の石の上へ落とし粉々に割った。誰もいないところに捨てられて寂しかったのだろう。小雪は私の大切な王子様だから命に代えても守り抜く。

 朝顔屋敷 8月13日お盆 木太郎は古い住宅地の中で、オーシャンブルー琉球朝顔の咲き誇る家・内藤さんの奥さんに呼び止められ冷たい寒ざらしを頂く。今日帰るという孫娘・亜矢の話を聞く。
 今年も寒ざらしをご馳走になった。8年前のあの日と同様に。帰らぬ孫を待って3年目内藤さんは亡くなった。その年から毎年内藤さんに寒ざらしをご馳走になっている。

 エピローグ 茉莉亜のカフェに学者のような老人が、ハロウィンの前日、毎年訪れる。明日が誕生日という老人にバラを一輪あげる。老人は港の倉庫街の地下で、精霊とガーゴイルと住んでいた。学者とガーゴイルは人々の生活を守りながら旅をしていた。学者は亡くした娘を思いながら亡くなった。ガーゴイルは、風早を襲う大型台風を飲み込んだ。
 海上で急に消えて無くなった台風のことを知り、風早には不思議なことが起こるからと人々は言った。

 

2022年5月25日水曜日

彼女が知らない隣人たち

彼女が知らない隣人たち あさのあつこ

 地方都市で暮らす咏子は、パートとして働きながら家族とともに平凡な毎日を送っていた。だが連続爆発事件が発生し、今まで気にも留めなかった周囲の異変に気がついていく…。


 息子・翔流が不機嫌で感情の起伏が激しくなり、テロだテロだと言うようになり心配になる。
 咏子は、母親から酷い言葉を浴びせられ平気で呵まれた。娘・紗希には酷い言葉を浴びせないように気をつけ、傷つけないよう注意した。どうして私はこんなに苛立っているのだろう。自分の苛立ちに勝てて良かったと自問自答している。

 パートで古着の縫製を指導している外国人実習生・クエが、石を投げられたり蹴られたり国に帰れといわれたりしていることを知る。
 紗希のクラスメートの母親で、難民支援団体・モトユイを立ち上げた吉澤と連絡をするようになった。事務所に行き、送られてくる誹謗中傷を見た。
 翔流が誹謗中傷を書き送っているのではないかと心配になる。
 翔流は事務所に関わっていた。何かを確かめたくて事務所に来ているようだと吉澤は言う。

 北向きの納戸を片づけミシンを置こうか。自分のための空間を自分で作る。良いかも知れない。

 夫・丈史はヘイトスピーチを送っていた。丈史がはまっているサイトは不法滞在者に対して無茶苦茶な発言をしていた。丈史はパソコンを持って出て行き一晩帰らなかった。翔流は、「親父はっわかっている。これはおかしい、間違っているって。なのに抜け出せない」

 
 
 

 

 

2022年5月20日金曜日

神田職人えにし譚 獅子の寝床

 神田職人えにし譚 獅子の寝床 知野みさき

 のちの薮入り 縫箔師・咲27才の弟・太一は薮入りに嫁取りをした。嫁にきたのは菓子屋・五十嵐の娘・桂。桂を好きなために太一の情婦と間違え咲を尾けた小間物屋・萬作堂の秀吉と知りあう。小間物屋の大店・楓屋の娘・かつらは秀吉が好きで店にも度々行っている。かつらの母親に秀吉は、真面目にとりあわないでと言われて、あきらめて桂に思いを寄せたのだった。二人がどうなるかは分からない。

 花梨が実る頃 姉・冴が吉原に行き、父親も亡くなり、櫛師に弟子入りしたくて師匠の家事手伝いをしている。
 油屋福栄屋の娘・理代15才と知りあう。父親と跡取りの兄を亡くし、母親から邪険に扱われていた娘・理代が婿をとって店を継ぐことになった。理代には母の違う弟がいる。父が亡くなり家から追い出されていた。理代はそちらの家庭との仲が良かったが、兄の代になった時、三年前から付きあいが出来なくなった。理代は弟・祥太を探す。祥太は吉原で暴れた客から冴を助けるため怪我を負い亡くなっていた。
 理代は自分が福栄屋を継ぎ、母の言う相手を婿に迎える決心をした。婿の結納金で冴を身請けし福栄屋に入れた。

 獅子の寝床 咲と修次は、煙草入れと煙管と金具を作ることになった。意匠は牡丹。頼み人は牡丹さん。根津屋という小間物屋に間借りしている紅屋の女将で職人。牡丹さんは、咲の長屋の大工・辰治の元許嫁。太一の師匠・恵三の妹だった。
 腕の良い大工だった辰治は棟梁を目指していた。二十年ほど前、屋根から落ち、怪我をした。中々治らず、見舞い来る牡丹に当たり散らし愛想を尽かされ去られた。牡丹は出羽の紅の行商人と一緒になった。五年前、江戸に帰ってきた。
 咲と修次は、お互いの物を作って交換することにした。

2022年5月19日木曜日

野菜の垂直仕立て栽培

 野菜の垂直仕立て栽培 道法正徳

 植物ホルモン活性化で驚きの収量を実現





 

2022年5月18日水曜日

幽玄の絵師

幽玄の絵師 三好昌子
 〜百鬼遊行絵巻〜
 
 妖異が見える異能の絵師・土佐光信は将軍足利義政から人身を惑わす妖物の正体を解くよう命じられる。
 風の段 五年前に姿を消した朱音の遺体は、取り壊される室町殿の梨花殿の塗籠の唐朱瓶の中にあった。

 花の段 顔を斬られ血まみれの女の幽霊が出るらしい。光信は正体を探す。義勝・義政の兄が七代将軍に就いた時、祝いの宴で言祝ぐために呼ばれた桂女の最期の一人が、何も言わなかった。二三日塗籠に閉じこめるつもりが、女は自死していた。傍の屏風に血で予兆をしたためていた。しまい込まれ燃やされる運命の屏風の絵を描いた。蓮花地獄図と梨花極楽図。

 雨の段 光信が真魚だったころ、於菟也がいつも一緒に居てくれた。命を助けた鯉に友が欲しいと言った真魚に二人の友が出来た。二人ははるおうとやすおう。謀反で鎮圧された足利持氏の息子二人が処刑された。春王丸と安王丸。一月後、義教が赤松邸で暗殺された。赤松満祐の息子だった於菟也は死罪を免れるが、右腕を斬り落とされた。
 真魚が絵師になる決意を持った日。

 鳥の段  光信、三十一才。義政の室町御所が完成。後花園院の御幸のために、自然のゆりかもめを自由に操る笛吹と鳥面冠者を室町御所に呼ぶ。鳥面冠者の沙衣と笛吹の真汐は刺客になった。真汐の放つ矢の前の義政の盾になったのは光信だった。桂丸の放った矢で死んだのは沙衣だった。沙衣は真汐を助けてと言って死ね。光信は真汐に逃げ道を教える。二人は沙衣の泣き声で鳥を操っていたと光信は考えた。光信は沙衣の形見になった声の卵石を真汐に渡す。笑い声が聞こえるという。

 影の段 光信は矢傷を治していた。義政は義視を後継者にした。富子は納得していない。影を食われた者が、高熱を出す事件が起こる。二日程で熱は下がる。富子の熱が下がらない。誰かの呪詛だと噂が流れた。
 占い所司の玉桂が、妖物の望みを叶えてやればいいと光信に言った。作事方・忠時が庭に埋もれた鏡を拾い、きれいに磨き上げていた。天人鏡と呼び、池で天が見えるように沈めていた。鏡に忠時の絵をやる。
 富子は仮病だった。
 
 嵐の段 富子が懐妊した。よく当たる占い師が現れた。於菟也が於菟阿弥と名乗っていた。ないはずの右手が現れ墨が滲み円が描かれる。誰にも右手は見えていない。於菟也には飛行丸という子供がいた。於菟也は願い事をしている。於菟阿弥は義政に会うことになった。於菟阿弥の願いは飛行丸を母に合わせること。
 於菟阿弥、飛行丸、玉桂は夫婦、息子だった。人の願いを叶えることで存在する童子のおかげで、義政が変わり、光信も含めて謀反の罪で殺すと言っていた義政が一転、四人を自由にした。が義政の望みは嵐為天心、乱為君子だった。騒乱を起こすつもり

 終の段 義政が藤見の宴を催す。光信が結婚する小萩も呼ばれる。鳴らない鼓を順に鳴らすがならない。小萩は鳴らした。光信には誰か・義光に殺された鼓方の楽師が見えた。
義政の中の夢童子は男の亡霊が鼓を打ちたいと願っていたと言う。小萩は亡霊を呼ぶ寄せる質だという。嵐が来る。早く帰れと。
 翌年三月 応仁の世の始まり。

 

2022年5月17日火曜日

風烈廻り与力・青柳剣一郎56

 風烈廻り与力・青柳剣一郎56 隠し絵

 青柳剣一郎は「馬と猪に目をむけるように」と錦絵を託された。そこには黄金の茶釜を囲む羽織姿の竜、頬被りをした猿など十二支の動物が描かれていた。直後、男は姿を晦ます。

 名前に馬、猪、寅が名に付く男が殺された。五年前、盗品扱いで闕所になり、流罪になった大和屋辰五郎、番頭・馬之助、手代・亥之助、下男・寅次。武士・鳥海甲斐守、家老・犬山喜兵衛、家臣・鼠顔の男・川下和之進。骨董品盗みが得意な・巳之助と猿の久助、畳職人の丑松、居酒屋「うさぎ」の女将は辰五郎の妾。と判明。辰五郎は流島先で亡くなった。隠し金の取り合いが始まったのではないか。

 剣一郎は、旗本・大貫佐賀守に盗まれた茶わん「芝夢」を、次の茶会までに取り返して欲しいと頼まれる。
 茶わんは無役の大貫が老中に差し上げ役を得ようとしていた。
 
 大和屋の隠し金は鳥海が預かり、役を得るため老中に差し出していた。預かっていることを知っている、馬之助、亥之助、丑松を殺そうとした。丑松は殺されると思い逃げて隠れた。
寅次は殺されたと思えたが、同名の者を探しだし殺していた。寅次は鳥海家の中間だった。寅次と和之進が、殺していた。大垣の茶わんのことを知り、渡す前に盗んでいた。

 丑松を見つけ、寅次の替え玉のことを証言した。鳥海は評定所に掛けられる。大貫は茶わんを贈ることを止め、老中も茶会に出席することを見合わせた。

 

2022年5月16日月曜日

QER 神鹿の棺

QER 神鹿の棺 高田崇史

 奈々と崇は小松崎の運転で茨城に向かう。鹿島神社、香取神社、息栖神社。

 三人が茨城に行く数日前に、茨城県の山中にある寂れた三神神社の宝物庫にあった陶製の大瓶の一つから、膝を抱える大勢をとった古い白骨死体が発見された。警察や郷土史家らが出入りするなか、 同じ神社で瓶に入った遺体が発見された。91才の元宮司、赤頭善次郎。
 後輩が取材している小松崎は、事件現場に行く。崇を誘うが崇は行かない。そして今度は水死体が出るかもと言う。

 二日目、二人は、大甕倭文神社(おおみかしとり神社)元倭文神宮。静神社 元静太神宮、を回る。

 三神村の女性の水死体が発見される。自殺だった。小松崎は手を回し、県警刑事に崇の話を聞く手はずを整える。
 呼び出された崇は、三神神社へ行く。女千木だった。
  
 終戦後、安渡川が氾濫し人柱を立てることになった。人柱はこれで最期にすると言う約束で沖墨友子に決まった。その夜、終戦直後に人柱になったはずの明越ナエが現れ、友子に代わりにナエが人柱になると言った。ナエは当時妊娠していた。姉のヨシが代わりに人柱となり、ナエは駆け落ちした。戦争で子供を失い、一人になったナエは姉のところに行きたいと大瓶に入って船にのり川の真ん中で沈められた。友子はナエがいた諏訪で暮らす。
 数年後、戦死したとされていた悟・友子の兄が帰ってきたという噂があった。
 やがて、友子は村に帰り、善次郎に二回の身代りの人柱の話をする。
 何年も過ぎて今回の白骨死体発見があり、善次郎に詰め寄り話された。帰ってきたのは悟だった。悟は友子を人柱にしたのが、善次郎だと聞き、善次郎のところでもめ悟は死んだ。善次郎も怪我をし、川に流せなくて瓶にいれるのが精いっぱいだった。鍵は自分が持っているから発見されなかったと話した。話を聞いた友紀子は善次郎を突き飛ばした。善次郎は頭を打ち亡くなった。善次郎に安渡川に沈んでもらおうと思ったが、時間がなく出来なかったので、替わりに自分が川に沈んだ。  ということだった。

 三神村は赤白黒が名前に入った名字の九家が、三家づつ三ヶ所に分かれ、三角の結界を組んで真ん中に三神神社を置く。三神神社は、人柱に立った女性の怨霊を閉じこめ祀って居る神社だった。

 
 

2022年5月15日日曜日

京都人の密かな愉しみ

京都人の密かな愉しみ 源孝志

 NHK「京都人の密かな愉しみ」制作班+源孝志 

2022年5月14日土曜日

またあおう しゃばけ外伝

 またあおう 畠中恵
 〜しゃばけ外伝〜

 長崎屋あれこれ 長崎屋紹介 先代長崎屋の妻は皮衣という齢三千年の妖狐だった。娘・たえを守る妖狐・守狐が庭の稲荷にいる。鳴家という小鬼のような者たちがいる。
 若旦那・一太郎が暮らす離れには妖が集まってくる。兄やは犬神と白沢。碁相手な付喪神の屏風のぞき。借家には噺家は漠・場久。三味線を教える猫又・おしろ。貧乏神の金次もくる。近くの神社の鈴・付喪神の鈴彦姫も来る。
 広徳寺の僧・寛朝が弟子・秋英を伴ってやってきた。寛永寺の寿真の話が出る。寿真の弟子の黒羽は飛べなくなった天狗が人に化けている。二人の僧は妖封じが出来る数少ない僧だ。
 大黒天が遊びに来た。一緒にお稲荷様、生目神、橋姫もやってきた。宴会になった。

 はじめての使い 戸塚宿の猫又が、約束通り江戸の染物屋が出した猫又柄の手ぬぐいを沢山送ってくれた長崎屋にお礼をすることにした。白狐のきつね膏薬を持ってとら次と藤沢宿のくま蔵が行くことになった。二人ははじめての旅、江戸だった。
 保土ケ谷で二人は雲助に金も荷物も奪われる。雲助との交渉中、猫が口入れ屋大阿部屋の者に追いかけられているのに出くわす。皮を剥ぐことを聞いた二人は猫たちを逃がす。その場は雲助たちに助けられたが雲助たちは捕まってしまう。二人は大阿部屋に乗り込む。捕まる。大阿部屋は、泥棒の集まりだった。江戸で盗みをし、すぐ帰ってくる。二人が長崎屋にいくことを知って、一緒に行くことにする。長崎屋の前で、得体の知れない者にみんなやられる。二人は戸塚に助けを求めていた。大阿部屋は自分たちが窮地にたっているのに二人の心配をしていた。影の声が、もう江戸に来るな。己の宿で必死に働け。あんた盗賊には向かんよ。と言った。

 またあおう 長崎屋の主・籐兵衛のお供で金次と屏風のぞき・風野が、連に行った。面白い書や巻物、絵を見せあう。急に天気が崩れ突風で屋根が飛ぶ。二人は付喪神たちをできるだけ助けたが、傷を負っていた。付喪神を修繕できるのは長崎屋だけだとできるだけ預かって帰る。みんなで修繕する。草双紙の引き込まれる。桃太郎の本だが話が違う。金次やおしろたちが話を聞くと、桃太郎や鬼や村人らが年月が経ち付喪神になって仲良くなった。鬼が農民になっていた。もう戦いをする気がないという。
 直しが終わって大亀屋に草双紙を返す。また借りる約束をして返す。以前よりきれいになったと帰って行った。鬼ケ島にいる皆で芝居をするよう提案していた。世間に知られている桃太郎を演じていた。

 一つ足りない 九千坊河童は中国のぐっと奥に棲んでいた。寒さと飢えに見舞われ仲間を守るため東へ海を越えてやってきた。九州に住み始めた。猿が河童を襲ってきた。九州の河童の一団は東に向かった。九千の河童を受け入れてもらえるか心配している時、流されている河童を助けた。禰々子の一の子分・杉戸河童だった。眠った禰々子を猿が勾引かし、人間に捕らわれている。飲めばどんな相手とでも話せる秘薬を持ってこいと言っている。九千坊が持っている秘薬だった。九千坊は禰々子を助けに人間の屋敷に潜り込む。捕まるが、そこに禰々子はいなかった。守りが厳重な倉を見つけた。戦いが始まった。声を聞いた禰々子が目を覚ます。猿と人間が悪さをしていると思った禰々子と、中国で飢えた時から仲間を庇い己を諌めてきた九千坊は、遠慮なく戦った。二人は相談した。坂東太郎も参加し、築後次郎の側の水天宮に頼み領主に住む許可を貰い落ち着き、猿から青玉を回収していくことになった。九千坊は九州に帰った。河童たちは恩義を感じ水天宮の使いとして役に立つようになった。

 かたみわけ 寿真が亡くなり、寛朝も亡くなった。寛朝から妖退治を引き継いだ秋英から一太郎に文が来た。寛朝の形見分けということで護符が貼られた物をいくつか渡してしまった。その中で逃げた者がいた。それを探して欲しいと言う。見える者が探し出してきた。寛朝の最期の弟子・寛春が、三途の川へ流される袋に入れられている。秋英は、鬼よけの護符と交換に寛春を助けた。今まで寛春が無事でいられたのは寛春が妖が見える子だったからだ。秋英は己が支える側に回ったことを得心した。
 

2022年5月12日木曜日

千成屋お吟② 菜の花の道

千成屋お吟② 菜の花の道  藤原緋沙子

 青山平右衛門 元北町奉行所定町廻り同心、吟の父親・丹兵衛に十手を預けていた。
 千次郎と與之助 丹兵衛の元手下。千成屋の手代
 
 うば桜 青山平右衛門は釣りの帰り、浪人に斬り付けられた老婆・とらを助ける。とらは帳屋の隠居だが、嫁が岡場所あがりなのが気に入らない。息子に離縁しろと言い続けている。
 平右衛門が懇意にしている山城屋の番頭と手代が殺された。金貸しから三百両を借りて帰る途中だ。謝金が残った。平右衛門が調べるととらを殺そうとした浪人が山城屋の手代たちを殺していた。金貸しが大黒屋徳兵衛が昔は徳蔵だったと判った時、とらが自分の昔を語り出した。
 とらは宿場の飯盛り女だった。自分を女房にしてくれた商人・多助と働いて息子が五才になったころ店が持てるようになった。多助は悪所に通いたまったお金を無くした。徳蔵に騙されたと徳蔵の所に行った翌日、首を絞められて川に放り込まれて亡くなった。徳蔵が犯人と訴えたが徳蔵はいなくなっていた。それから働き息子が二十才になった五年前、店を持った。
 自分が貧しい家の出で夫が苦労し、金銭面で助けられなかったので息子の嫁は良いとこの出をとおもっていた。
 とらは浪人に斬り付けられた前に、橋の物陰にいる男に徳蔵だねと声をかけていたのだった。大黒屋は金を貸したあと殺していたことが判った。山城屋の手代が大黒屋に出入りしていた。大黒屋は捕まった。
 とらと嫁は話しあう。おっ母さんを見習ってがんばると言う嫁。吟の案で、透かしの入った美しい紙や、掌に載る小さな表紙の帳面を作った。評判がいい。

 菜の花の道 天野屋から相談に来る。婿養子が悪所通いで借金を作り困っている。止めさせてくれというものだった。
 天野屋は四年前、偶然行き合わした千次郎と與之助が。天野屋の婿にしようとしていた佐之助が殺されそうになった時、助けていた。佐之助は顔に傷を負い、商売に害すると故郷の近江に帰った。その後、主人が亡くなり、主人の妹・たねが、婿養子に多七を連れてくる。
 調べて行くと、佐之助を殺そうとした時蔵がたねのところにいる。多七が殺された。近江から出てきた佐之助が疑われる。
 たねは腹違いの兄妹で、主人がいるころは兄妹の付きあいもなかった。多七を天野屋に入れるために佐之助を殺そうとした。佐之助がいなくなり多七を天野屋に入れられた。多七は天野屋からお金が出なくなりたねのところに行くようになり、たねは多七を殺させた。捕まった。
 佐之助は自分でお金を集め天野屋に渡して貰う。

葛の裏風 岡野藩の奥女中をしているそでが、千成屋に茶わんを預けに来る。私か、岡野藩の成瀬以外に渡してはいけないと言い置いて帰る。岡野藩の横目付けと家老が成瀬探しを頼みに来る。勘定方・串田が成瀬は人参で挙げた収益を横領していたと言う。
 そでが下屋敷に連れていかれたことをしり、吟はたすけに行く。成瀬も見つかり千成屋に集まったみんなに話される。
 茶わんの布団に入った、証拠の書きつけ。人参を仕入れる商家の主と串田の名前が書かれていた。詮議があり串田が横領で捕まった。上司の娘との婚姻のため持参金が必要だったと訴えた。

2022年5月10日火曜日

風の港

風の港 村山早紀

 旅立ちの白い翼 亮二35は漫画家だった。今は料亭を舞台に心優しい若い料理人が修業を重ねながらいろんな人々や出来事と出会う人情物語を描いている。元々は少年漫画で熱いヒーローが活躍する物を描いていた。 漫画家をやめて故郷に帰る決心をして空港に来た。
 この空港は、大学生の時から付きあっていた彼女・詩織が、連載が少なくなってきたころから手荒く当たるようになり別れ亮二の高校からの親友・章と結婚式を挙げたところだった。
 空港をぶらついていた亮二は、似顔絵を描く老紳士に出会った。似顔絵を描いてもらいながら親友と元カノの結婚式に出ておめでとうと言えば良かったと言うと、知ってますよと言われた。二人も似顔絵を描いてもらい、きっとあなたが来るから飾っておいて欲しいと言われたと話す。五年待ちましたがいらっしゃいましたね。二人の横に並べて飾ってくれた。
 自分を応援してくれる書店員さんと出会った。

 それぞれの空 小さな書店の書店員・佐藤夢芽子は、迷子の子供を見つけた。白いワンピースの女の子を案内しながらこの子は私だと思った。いっぱい話したいことがあるように思うが、早く案内しないとおばあちゃんのところに行けないと思う。
 20年前にこの書店に来たことがあると言っても話が合わなかったり、あの書店で見た本を探してもなかったのだ。あれは未来だったのだと納得した。
 今、書店には、女優さんと文芸誌の最優秀賞を受賞した新人作家がいる。

 夜間飛行 家に帰っても寂しいしと思っている女優・眞優梨と明日のことを心配する新人作家・恵が書店のレジで顔を合わせた。中学校時代の友だちだ。二人は時々この空港に遊びに来ていた。眞優梨は休みになると恵の家に泊まった。昔話が続く。
 三十数年前、恵は眞優梨に裏切られたと思っていた。恵に好きな男の子がいた。眞優梨に相談して手作りのチョコレートを作った。空港で渡そうとした時、目の前で眞優梨が高級チョコを彼に渡し、彼の腕をつかんでその場を離れて行った。恵は二日後この空港から北海道へ引っ越しした。眞優梨が何故そんなことをしたのか判らないまま現在に至る。
 眞優梨は、ショックなことを聞いても大丈夫?と言いながら、三十三年前の二月のことを話す。高級チョコは恵へのプレゼントのつもりだった。彼は数人の男の子と一緒に空港に来ていた。眼鏡の告白なんて気持ち悪いよ。チョコなんて貰ったら気持ち悪い。受け取ってからこんなのいらねーよって返そうかと思って。ドッキリカメラみたいにみんなで「残念でした」て笑うの。と言っているのを聞いてしまった。恵ちゃんを彼に会わせては駄目と彼を引き放した。そしてあんたは恵ちゃんのチョコレートにふさわしいような人間じゃないと言ってやったと話す。自分は裏切り者でいいと思った。私のことは忘れるだろうと。

 花を捲く魔女 黒いコートの上品なおばあさま。自分で魔女という奇術師・フェリシア幸子。終戦の年、父が亡くなり、故郷の家が燃え家族が亡くなり、家の焼け跡でこのまま自分も死ぬかと思った時、黒装の老女が魔法を覚えないかと誘ってくれた。魔法と魔法道具の使い方を教えてくれた。道具を置いてある日いなくなった。子供を授かり東京に住んだが、娘が亡くなりまた元に戻った。

 空港にて 夜、眞優梨は恵に細かく注意し、空港を後にした。恵は朝、食後のテーブルで魔女の絵を描いている男性を見た。男性にサインを入れた魔女の絵を描いたナプキンを貰った。サインが滲んだ紙ナプキンを大切に保存した。彼は久しぶりに古い友人に電話してほとんど寝ていないと言っていた。

2022年5月8日日曜日

花咲小路二丁目の写真館

花咲小路二丁目の写真館 小路幸也

 桂樹里23は、三代目が急死し、カメラマンを急募していた久坂写真館に住み込みで就職した。 新社長・久坂重30は、写真を撮るが人を撮ると、普通は見えない者まで撮ってしまうため、写真館に来る人の写真を撮れなかった。

 重は樹里を動画で撮った。撮った途端真っ暗になり1990年(平成二年)になっていた。重が生まれる二ヶ月前。机の上に、重の父親宛の置き手紙があった。差出人は樹里の母だった。重の母親は出産のため実家に帰っていた。母の手紙はもうここには居られないというものだった。駅にいた母に重が会い話を聞く。地上げ屋に騙されて土地を売る契約書に判を押してしまった。ということだった。重は〈怪盗セイント〉といわれている近所のセイさんに頼むことにする。顔ヲ合わせず声だけで頼み、セイさんは矢車聖人・このあたりの地主として解決すると言ってくれた。また何かの形で借りを返してくれと言われた。
 スタジオに戻りカメラのシャッターを押すと、戻った。

 セイさんに、父親が撮っていた写真を持って行く。ドネタス・ウィリアム・スティヴンソンさん。矢車聖人。昔話にはなが咲いた。

 二人は、またもやテストをする。おもちゃの車を撮っただけでまた時を移動した。二人と思っていたが、セイさんも一緒だった。セイさんは何もかもわかっていた。セイさんの隠れ家に行き、セイさんの願いを聞く。
 十日後に四丁目のアーケードが火事で焼ける。その時、セイさんが養子で入った矢車家も燃える。その前に人に借りていた皿を偽物と替えてきてほしいという。二人はカメラマンとして矢車家に行き、写真を撮る途中ですり替える。
 二人は矢車家とその周辺の写真を撮る。矢車家のセイさんの奥さん・志津さんの腹違いの姉と言われる美礼さんのお店を中心に。火事を止めることは出来ないが何故火事が起こったのかが分かるように。美礼さんは火事の後行方不明になり今も判っていない。一週間で判ったこと、美礼さんは志津さんの父の違う姉だということ。父親は丸子橋。矢車家の前のスマートセンターの社長。二人は結婚できなくて美礼は矢車家の親戚の子として育った。
 火事の火付けはスマートセンターの実質の経営者・木佐ゲンに絞った。アーケードを焼くだけのつもりが大きな火事になってしまったのだろうと思い、スマートセンターの二階の窓を中心にカメラを用意する。
 灯油の匂いがして火矢が飛んだ。写真を撮る。火事に巻き込まれないよう逃げた。現像し若いやくざ風の二人が写っていた。写真を整理し、久坂写真館に写真を隠す。
 重が動画を撮ろうとして今に帰った。
 写真館に出てきた重の母・聖子が、美礼が亡くなった葉書が来たと言った。そして一枚の写真を出す。樹里が撮った火矢の写真だった。この写真のおかげでみんなが犯人だと疑われないで済んだと言った。美礼は木佐になっていた。孫からの葉書だった。お礼がしたいと言っていたという。

 

2022年5月6日金曜日

旋律

旋律 望月麻衣

 一人娘・亜美と専業主婦として過ごす西沢円香31。楽しみは、毎朝、端正 な顔立ちの高校生とすれ違うことだった。
 気になっていた高校生・広瀬楓と言葉を交わすようになる。円香は、楓から英語を教わり、楓にピアノを教えるようになる。
 夫・和馬と、元同僚・美華との裏切りを知り、離婚するつもりで荷物を整理する。楓が現れ、亜美と生まれてくる子のためにも、和馬と話し合うべきだと諭す。いつでも良い子で正論を吐く楓に、もっと我が侭に生きていいのよと言う円香。我が侭に生きても言ってはいけない言葉があると言い楓は帰る。
 謝る和馬に、同じようなことがあれば終わりにすると告げる。
 和馬は円香が亜美を連れて一人で生きることを選ぶと思わなかった。しがみついてくると思っていた。円香と亜美を失う現実に恐怖を感じた。一番大切なものが何か分かった。
 美華に別れ言った。美華は人前でなりふり構わず何度もしがみつく。泣き叫ぶ美華を同僚が抑えた。
 和馬は、不倫騒動が原因で本社のエリート社員が地方支店からの出直しとなった。
 庭付きの一戸建て住宅は人に貸すことにした。
 美華は退職した。

 楓が出場するディベート大会の地区予選の会場に行く。優勝した挨拶をする楓は円香を見つけ、自分にとってディベート部がどんな存在だったかを伝える。それは円香に楓にとって円香がどんな存在かを伝えるものだった。

2022年5月4日水曜日

岡っ引き 黒駒吉蔵

岡っ引き 黒駒吉蔵 藤原緋沙子 

 甲斐国生まれの吉蔵は、坂崎大和守に連れられて江戸へ来た。北町奉行所与力・金子十兵衛の誘いで臨時廻り同心・菱田平八郎から十手を貰って岡っ引きをしている。岡っ引きを引退していた清五郎と若い金平が助けてくれる。吉蔵は凧・黒駒屋を営む。牧に吉蔵を預けて江戸に出た父親を探している。

 凧たこあがれ 吉蔵は、町中を走り回っていた暴れ馬に乗り、手綱をつかんで止めた。馬は上野国松田藩のものだった。松田藩の山下太一郎と知り合いになる。馬が暴れたために怪我をした者はいなかったか調べを頼まれる。
 年寄りを助けた板前の仙太郎が怪我をしていた。仙太郎は五日前に浪人に斬り付けられていた。そして、仙太郎の母親が、同じ浪人に自宅長屋で殺された。
 仙太郎は松田藩の息子だった。双子で生まれたため一人を捨て、近江屋に拾わせていた。近江屋は跡継ぎとして育てていたが、20年前近江屋が盗賊に襲われ、五才の仙太郎と仙太郎付きの女中・みよと外出中の番頭だけが助かり、店は無くなった。
 みよは母となり仙太郎を育てた。松田藩では仙太郎たちが生まれた後一年で、側室が男も子を生んでいた。仙太郎の兄は体が弱い。兄に何かあると仙太郎がいなければその子が跡継ぎになるので、仙太郎は命を狙われた。仙太郎は松田藩に行くつもりはないと言っている。
 松田藩の仙太郎の腹違いの弟の祖父・中老・友近玄蕃が御役御免で減俸永の蟄居になった。

 やぶからしのおてい 柳原の土手で甘酒屋を営む五十才のていはギヤマンの煙管を持つ夜鷹の憧れだった。吉蔵も寄るようになった。過去を話すようになった。板前と女中とていの三人で奈良茶漬けの店を営んでいた。スリに有り金を擦られたという若い男・巳之助を助けた。店を手伝っていた巳之助がていと関係ができ豹変した。板前が辞め、女中が辞める。巳之助はていが貯めていた三百両を盗んで出て行った。店は潰れた。
 ミノてめい、許せねえと言った男・丑松が殺された。
 甘酒屋を休んだことがなかったていが店を出さなくなった。ていは、二十五年前、旗本の屋敷で働いていた時、旗本の三男・彦三郎の子供を産んだ。生まれてすぐ取り上げられ、父親がはなと名付けて里子に出されていた。瓦版で商家の女将・はなが自宅に入った泥棒を捕まえたと言う話を読み、自分の娘だとわかった。はなは去年の野分けに襲われ店の修理代がかさみ、借金に困っていることを知り、助けてやりたくなった。ていは巳之助を見つけた。人を殺しているところを見た。名前を変えて料理屋の主人になっていた。ていは昔の金を返して欲しい、人を殺しているところを見たと脅迫する。そして殺された。
 吉蔵は巳之助を捕まえる。妾がていの煙管を持っていた。大阪での老夫婦殺しと丑松殺していの殺害で処刑された。
 吉蔵は彦三郎に会いていの話をする。はながていの遺骨を引き取り墓に収めた。彦三郎も現れる。畑をしているという話を聞き、一緒に住もうと誘う。

2022年5月2日月曜日

拵屋銀次郎半畳記〈三〉汝想いて斬

拵屋銀次郎半畳記〈三〉 汝想いて斬 門田泰明

 大坂に幕府を創ろうとした、大津河安芸守の企みは潰えたかにみえたが、安芸守の遺志を継ぐ勢力がまだ各地に存続していた。そんな中、黒書院直属監察官・桜伊銀次郎は不穏な動きのある近江・水口宿を訪れた。

 江戸に白装束の一団が現れ、幕閣の要人を襲う。銀次郎が恋人・艶を預けた津山近江守忠房邸も襲われ、艶は忠房の妻と娘を助け白衣の曲者に殺された。

 黒鍬黒兵の副頭領・司から、艶が殺されたことを伝えられた銀次郎は、白衣の集団・御嬢隊の尚冬岳の本拠地を襲う。黒鍬が、火薬庫、食糧庫を爆発させ、馬を解き放つ。銀次郎は肩に矢を受けながら幹部御嬢を倒して行く。