2023年6月30日金曜日

町医・栗山庵の弟子日録(一) 仇持ち 

町医・栗山庵の弟子日録(一) 仇持ち  知野みさき  

 仇持ち 藩の上役の奸計によって家族を亡くし、遊女に落とされた伊勢国津藩の武家娘・石川凛。
 遊女から救い出し、武術、医術を教えてくれていた刀匠・望月要がいなくなった。要は元伊賀者だった。仇の一人は辻斬りに殺された。もう一人・山口を追って江戸へ行く。要の伝手を頼る。千歳の前で川に身投げするする。助けられ栗山庵で、千歳と佐助との三人暮らしが始まった。
 千歳も元伊賀者だった。町医者千歳は津藩江戸屋敷に出入りしていた。
 凛は、千歳と津藩江戸屋敷に行き、仇・山口成次は病気で寝ていた。薬を用意していくが、耳元で仇、お命頂戴と言った切りで殺さなかった。山口は生きる屍だった。その夜、山口は死んだ。
 千歳と要は知り合いだった。要の死んだ妻に凛はにているらしい。千歳は要は不治のやまいだったのだろうと言う。
 千歳を仇と狙う者がいた。清水柊太郎が用心棒をしていた。佐助は火事の時、千歳に助けられたが、片手を失っていた。彼は女だったが男として生活している。凛は千歳の元で医術を習うことにした。

 夏の鎌鼬 凛は柊太郎が師範をする佐々木道場で剣道を習うことにした。
 料理屋の息子・由太郎14才の病気相談される。由太郎は診察を拒む。気鬱を疑う。
 凛は由太郎と文のやり取りで話をした。誰にも聞こえないように。紙はすぐ破棄するように。凛は兄の友人・仇の一人から手込めにされたことを書いた。由太郎は友人だと思っていた岳哉から男色を仕掛けられていた。病気と称して閉じこもった。脅迫されているようだ。
 岳哉に天罰が下った。鎌鼬にあい、顔を怪我し、尾張に帰った。由太郎は元気になった。

 凛は一月前の山口の死までの話を佐助と柊太郎にした。全てでは無いけれど。
 千歳も話したいことがあると言う。

 忘れぬもの 千歳と要の恩師・清衛。清衛の娘・蓮と菫。菫は要と十二年前に一緒になる。三年後難産で赤子は亡くなり、菫は臥せった。忍を抜けていた千歳は、医者として菫を診ていた。要も忍を抜けた。刀匠の要としての用で要が大阪に行き、千歳が町の薬屋に行っている間に菫は毒死した。要は自死と信じてくれたが、清衛は、千歳が殺したと思った。清衛は千歳の命を狙った。お頭が間に入り仇討ちは断念された。
 先月、清衛の弟子・慶二に襲われた。
 凛、千歳、佐助は、門人が帰った後で稽古した。佐助は手裏剣、凛は剣術、千歳と柊太郎が剣術を稽古する時、凛は佐助に手裏剣を教える。千歳が忍の武器の訓練をする時、凛と佐助は柊太郎の剣を除ける稽古をした。佐助は書き方や算術を習った。
 清衛が健忘になり寝たきりになっていた。品川に行く。凛に来てほしいようだ。
 佐助は留守番、凛は清衛に会う。清衛は八年前に戻っていた。死ぬ前に会いたかった。凛は千歳に振られ、要と一緒になったと思っている。千歳に話すと菫は要を好いていたが蓮が要を好いていたので私のところにきたのだと言う。慶二は清衛は、菫を振り一族を抜けた千歳を良く思っていなかったと言う。
 清衛は亡くなった。

 凛は佐助の腕に胴乱を付け籠を入れて財布にし、物入れにした。
柊太郎は佐助が女児であると分っていると思っていたが、気がついていないようだ。



2023年6月28日水曜日

とりどりみどり

 とりどりみどり 西條奈加

 螺鈿の櫛 飛鷹屋の末息子・鷺之介11才は、去年長姉・瀬已20才がお嫁に行き喜んでいた。伯母さんに、次女・日和17才と三女・喜路の見合いを頼む。
 姉が婚家から帰って来た。大切な母親の形見の螺鈿の櫛が無くなったという。婚家も金遣いが荒くやっていけないと言う。瀬已は、ちゃんと言ってくれればいいのにと言うが・・・。
 三人の姉が、自分の名前に因んだ螺鈿の櫛を持っていることを知った。

 ふういんきり 姉たちと一緒に芝居に行った鷺之介は、職人の息子・五百吉と妹・つきと友達になった。五百吉は、何度も何度も同じ男と出会うと話す。顎に傷があるその男と稲荷の境内であったと言う。話を聞いた姉は、五百吉が危ないと言う。五百吉が勾引かされる寸前、姉が五百を助ける。封印切りをした封印を拾われたと思っていたのだった。日和は、そんなの有るわけないのに・・・。

 とりかえばや 喜路が戯作者になるために竹内丙蔵の弟子一刻歳に会いに行く。一刻歳は怪我をして倒れていた。一刻歳は丙蔵の娘婿の弟だった。丙蔵は住まいを隠していた。そのために喜路は一刻歳に会いに来たのだった。やってきた兄。一緒にきた丙蔵の妻・雁に、喜路は、丙蔵先生ですねと言う。三年前に、書けなくなって江戸からいなくなった丙蔵の代わりに、雁が書いていた。そのことを知った一刻歳が、強請っていた。原稿を持ち出し、2代目丙蔵の名を継がせと言ってきた。原稿を取り返すため雁が殴った。喜路は、女にしか書けない。雁の弟子になると言う。一刻歳も喜路も雁の弟子になった。

 五両の手拭い 亀甲堂という手拭い屋で、売れないと言われた手拭いを五両で買った。手拭いやの主人が返して欲しいとやってくる。姉たちは返さない。おかしいと姉たちは柄を読む。主人は捕まった。盗人が調べたものを書き手拭いにしていた。

 鷺と赤い実 母・七の月命日に、初めて鷺之介が一人で墓参りに行った。母の好物の拳骨饅頭を買って行く。母の墓に、拳骨饅頭と、姉たちの櫛と同じような櫛があった。鷺と南天かなと思い持って帰ってしまう。姉たちは、櫛を見て、鷺と七竃だと話す。鷺之介は、寺で誰が置いたか調べるが分らない。拳骨饅頭屋で聞く。知っていた。十年ぶりに江戸に来た錺師の佐木蔵さんだった。佐木蔵への言づてをする。姉たちと待ち合わせの場所へ行くと、姉たちは夜中に泣いていた赤子の話をしていた。鷺は捨て子なの?

 とりどりみどり 飛鷹屋の長男は、飛鷹屋の主人と七の息子・鵜之介23才。三人の娘はそれぞれ母親が違った。
 鷺之介は、家出して五百吉の家に行った。次の日の朝、鵜之介が迎えに来た。そして鷺之介に出生の話をした。
 鷺之介の母は七だが、父親は飛鷹屋の主人ではないこと。七は草津で鷺之介を産んだこと。草津には、喜路の母親が付き添ったこと。七が恋しく、鵜之介と瀬已は女中頭・滝と共に草津へ行き産んだのを見たこと。知れたら七が赤ん坊と家を出なければならないため、赤ん坊を捨て子とし、七が私が息子として育てると主人に話したこと。
 鵜之介と鷺之介は、佐木蔵に会う。二人で話す。拳骨饅頭の好きなのは佐木蔵だった。櫛を貰って欲しいと言われ、好いた人が出来た時その人に贈りますと返事する。
 父・鳶右衛門は鵜之介から話を聞いた。いつから知っていたのかときく鵜之介に、七と鵜之介と鷺之介の三人で楽しそうに語らっていた時、三人は親子なんだと、よく似ていた。
 知らない振りをしたのは、七んい何度も痛い思いをさせていたことに気がついたから。
 鷺之介が大きくなったら男三人で愚痴をこぼそう。と鳶右衛門と鵜之介は楽しみですねとしゃべっている。

 

2023年6月26日月曜日

空也十番勝負(九) 荒ぶるや

空也十番勝負(九) 荒ぶるや 佐伯泰英 

 空也は祇園感神院・八坂神社で、祇園はんの氏子の古老に、催しの手伝いで武蔵坊弁慶を演じてほしいと頼まれる。
 牛若丸は舞子の桜子、五条の橋の上を演じた。芝居が終わった時、薩摩藩の侍が舞台に現れ空也は三人を打った。
 三日で興業は終わった。
 翌日、所司代・七万四千石越後長岡藩九代藩主・牧野備前守忠精に一力に呼ばれる。桜子等とかっぽれを踊るが、踊りを知らない空也は、扇子を持ち直心影流奥義を披露する。のち、刀を持ち踊ったのが直心影流の奥義だったことを伝える。
 神保小路尚武館と、高野山の姥捨の里に当てた手紙を所司代から送ってくれることになった。
 空也は鞍馬山に向かった。

 藥丸新蔵は府中宿音羽山清水寺で、野太刀自顕流対薩摩示現流の最後の試合をした。一対六の試合はすぐに終わった。新蔵は立ち去った。

 鞍馬で半月を過ごし、鞍馬から鯖街道を通り若狭小浜へ行く。羅城坊が着いてくる。
 途中、若狭小浜藩酒井家家臣・調役野尻源左衛門夫婦と道連れになる。野尻は、牧野備前守も用人の室尾寺も知っていた。そして薩摩藩の武芸者が追っていることも知らされた。京の薩摩藩を指揮っているのは、建部民部という剣術家だと知らされた。
 足に怪我をした野尻の妻を庇いながら峠を越す。薩摩藩士が来るが退ける。

 小浜藩藩校道場で数日を過ごし、琵琶湖竹生島へ行く。手島道場へ行くと空也は捕まり、牢舎に入れられた。道場主と孫が殺された時間、別な場所で空也は見られ、犯人でないことは分っていた。野尻と羅城坊が来てくれる。
 
 竹生島の宝厳寺で建部が待っていた。隻眼で左足を引きずり竹杖で歩いた。不自由な右手で竹杖の中の忍刀が空也に放たれた。空也に眼帯を切られ隻眼が予期せぬ両眼になり焦点が変わっていた。空也は除けた。民部が間合いを詰めた。首筋に刃を打ち込む。民部は崖下に飛翔した。建部民部は策を弄する剣術家だった。島津重豪が放った最後の刺客だった。
 九番勝負なり。

 神無月 重富霧子、利次郎夫婦、眉月も姥捨の里にいた。長浜からの空也の文と今津屋の船で江戸からの荷物が届いた。
 
 佐伯彦次郎は、和歌浦で百両勝負をし、空也が来るのを待っていた。

 


2023年6月9日金曜日

京都寺町三条のホームズ ♦6

京都寺町三条のホームズ  ♦6 望月麻衣
 〜新緑のサスペンス〜

 真城葵はホームズこと家頭清貴と交際が始まって一週間。彼氏になったことが信じられない。上田さんが持ち込んだ、茶碗で勉強会ができた。黄瀬戸と志野の茶碗

 オーナー、清貴の祖父・家頭誠司から、五月三日の葵の誕生日に、清貴とええ仲になったお祝いも兼ねて葵の18才の誕生日パーティーをしようと言われた。

 鑑定士や美術収集家の蔵や倉庫から、一点だけ仏教関係の美術品を盗むという盗難が起こっていた。
 相笠くりすの相談を受けた時にいた小松という探偵が、蔵を訪れる。清貴を心が読めると信じ、怖いという彼が、自分の行方不明の娘・優子を探して欲しいと言ってくる。
 雨宮議員のパーティーに参加し、議員から話を聞く。盗難はなく息子が持ち出していたと言った。
 高校生の家出が多くなったという情報が入る。二三日で帰ってくる。
 また高校生の間で、大麻が広がっていると言う情報。
 メンタル・サポート・セミナーに参加する。
 小松の別れた奥さん・雅美に会う。小松ほどの緊迫感はない。清貴は一度会ったことがあるような気になる。
 セミナーの二泊三日の合宿に行くことになった。清貴と小松が合宿所に入った後、店長と葵、利休と雅美の四人は、キャンピングカーで合宿所の近くに待機した。
 夜、清貴と小松は、小松がセキュリティーを解除し、合宿所内を探し、大麻を見付け、優子がいる場所らしきものを見付けるが、合宿所の人々に見付かる。塀を越えて入った利休の助け、店長が呼んだ警察のおかげでみんな捕まった。
 そこには、國代先生が雅子をモデルに描いた薬師如来図があり薬師如来にそっくりの優子がシンボルにされていた。盗まれたのは、暁のメンバーの作品であり十二神将、薬師如来の守護神だった。
 韋駄天という不良グループのリーダー・原口宏郎と進学校のトップクラスの学生が一緒になり宗教で、宏郎のカリスマ性と頭脳で金儲けを企んだ。薬師如来の掛け軸を利用していると暁が加わった。暁は大麻愛好会だった。韋駄天の五人、高校生二人、暁の五人。優子を薬師如来にしたて、自分たちは十二神将、セミナーと大麻を使って教団を始めた。首謀者は、國代豊と清貴は話した。清貴は小学生の時その絵を見ていた。
 國代は優子が自分の娘だと言う。雅子は分らないと言う。
 宏郎は怖くなっていた。宗教に大麻、金はどんどん入り、國代は優子を操り、洗脳し軟禁していた。誰かに止めて欲しいと思っていた。
 警察が来て捕まえた。雨宮九郎率いる暁のメンバーが大麻を操り教団を起こしていた。清貴は、裏で糸を引いていたのは雨宮史郎ではないかと思っている。史郎は、離婚した母親とアメリカに行った。
 小松はDNA鑑定をしなかった。行き来出来る距離に住んで親子三人で食事をする関係に戻った。

 五月三日、誕生パーティーに行く前、蔵に葵の元彼・克実が訪れた。清貴は、パーティ着に着替えた葵を見せる。あなたが手放してくれたお陰で僕は素晴らしい女性の手を取ることが出来ました。あなたが別れを告げていなければ見向きもされなかったでしょうと。今日は彼女の誕生日です。また別の日に連絡して下さいと伝える。
 
 

2023年6月8日木曜日

京都寺町三条のホームズ ♦5 

京都寺町三条のホームズ ♦5 望月麻衣

 桜色の恋文 三月二十五日 葵、香織、清貴、秋人、店長、五人で城崎へ行く。途中、天橋立に行く。
 大晦日の家頭家のホームパーティーで柳原茂敏先生が、真贋ゲームで手に入れた「月見屋」の宿泊券使うたかと聞いてきたことから秋人が加わり五人で行くことが決まった。
 秋人はどこに行っても人気が出てきた。
 「月見屋」では、香織の姉・佐織がアルバイトをしていた。途中で、利休が加わる。利休は、清貴と佐織はお似合いだと言う。清貴は、佐織さんがお付き合いしている人に失礼だと言う。付き合いを隠している佐織は、清貴に彼からきた手紙を見せ、どういう意味なのか聞く。清貴は、会いたい、会いたくて仕方なく抑えられない気持ちを絵に込めていると言う。
 葵は、清貴に回りくどく気持ちを伝えたことがあるかと聞く。清貴はあると答える。伝わっていなかったと答える清貴。
 佐織の彼が帰ってきた。米山だった。

 シャーロキアンの宴 葵と清貴は、シャーロック・ホームズクラブの221記念会に行く。
 桜の木の枝が切られたり、持ち籠れたコナン・ドイルの未発表の原稿が無くなったりした。
 みんなの動きを聞いたホームズの格好をしたホームズは、会の場所を提供したマダムの執事・西澤が持っていると指摘する。そして桜の木を切ったのは、カーテンを開けた杉村だと言い切った。カーテンを開けるためのレバーにピアノ線が仕掛けられレバーを回せば桜の枝が切れるようになっていたと指摘する。マダムが誤る。あまりに欲しかったと。ホームズは、マダム、皆さん名演技でした。ゲストに向けての寸劇でしたと締めくくる。
 未公開原稿を見たホームズは、偽物だと言った。書いている人の感動とか興奮が伝わってこないと言う。
 葵はシャーロックホームズを読もうと思った。

 紫の雲路 葵は学校行事で、西京極スタジアムで京都サンガF・C・の応援に行く。京都サンガには大木高校出身の一条選手がいた。大木高校新三年生の女子は、サンガチアガールになってダンスをする。
 清貴の高校の先輩・田宮が、土曜のサッカー観戦の誘いに来る。一旦は断るが、イベントの話を聞き、行くことにする。田宮は京都サンガの広報だった。一条の様子が変だということ、そして不調だと心配だと言う。
 当日、清貴と昼を食べ、京都市西京極総合運動公園陸上競技場兼球技場へ言った。出会った同級生に彼氏と聞かれる。いつもカップルと間違われてすみませんと言う葵に、清貴は、光栄ですと言う。葵は相変わらずお上手な人だと思う。
 試合中に、一条選手20才が、高校教師・早川29才に交際を申し込んでいることが分る。年上であること教師であることを考え、早川先生は、ハイと、答えられないことを、清貴は暴く。それを聞いた周りの高校生は、先生を応援し、一条にYESとポンポンで知らせる。一条の元気は復活しゴールを決め、試合に勝った。早川の手を取ろうとした一条にキャプテンが言った。選手はプライベートを試合に持ち込んではいけない。見に来る人のため人も、自分の大切な人を守るためにもと言った。
 今回のホームズさんはちょっと手厳しかったと言う葵に、清貴は、煮え切らなさが自分を見ているようで、自分自身に言っていたのかもしれないと言う。

 茜色の空に 店長にインタビューと言い青磁の壺を見て帰った雑誌記者。店長のマグカップを持って帰ったと聞いた清貴は、多分円生でしょうと言って木刀を持って待つ。やってきた円生に、あんな才能を持つあなたなのに、どこまで落ちるのか、何をやっているのかと言う清貴。青磁の壺の盗みを失敗した円生は、「志野の茶碗」を持って帰っていた。
 次の日、茶碗奪回のために、清貴と秋人と葵は、パソコンのヒントに誘われ二条城に行く。清貴は、書と生け花の円生の作品を見付け、次の誘いの場所に行く。葵は、いやな予感がして、ホームズに蔵で待っている。遅くなっても待っていると伝える。
 化野で出会ったホームズは、円生と話す。円生は自分のアトリエの地図を渡し、そこに茶碗があるから持って帰りと言う。古いアパートに行った。鍵の掛かった箱の中に茶碗があった。時間内に鍵を開けないと爆発すると言う。清貴は十六文字の英字を考える。時間ぎりぎりでキーボードを叩いた瞬間、爆発音がした。直後、ディスプレイに花火の映像が流れ、ウェストミンスターの鐘の音が流れた。清貴は腰を抜かしていた。鍵が明き、茶碗は戻った。
 蔵に帰った清貴は、待っていた葵に話す。聞いた葵は、我慢できなくてずっとホームズさんを・・・言いかけた葵を清貴は止める。葵は受け入れられるとは思っていないが、告白もさせてもらえないのかと俯く。清貴は葵を抱きしめ、「そこまで言わせて堪忍、僕がちゃんというべきやった。僕は葵さんが好きや」・・・。まだ言う気はなかったが、死ぬかと思った時、あなたに気持ちを伝えたかったと思い、帰ったら絶対にと思った。
 オーナー、店長、秋人も揃い、近所の三嶋亭に行く。二人は手を繋ぐ。店長はあんな清貴を見るのは初めて本当に良かったと言い、秋人は小学生かよと言う。
 

2023年6月7日水曜日

京都寺町三条のホームズ♦4

京都寺町三条のホームズ♦4 望月麻衣
 〜ミステリアスなお茶会〜 
 
 序章 年の初めに
一月三日 蔵の営業初日 和服で出社。葵は弘法さんで買ったクリーム地の小紋を着る。
 清貴と近くの矢田地蔵尊に行く。オーナーは行こうとした秋人を止める。着物姿の葵ちゃんと歩きたいのやと一言。矢田地蔵尊で、自己犠牲は自分への冒涜という話しになる。
 喫茶店でフレッシュの話し。清貴のいけず京男子健在

 ビスクドールの涙
葵は清貴から、埼玉から来る友達の京都案内のレクチャーを受ける。八坂神社から清水寺。デートみたいと思う葵は、清貴と一線を引くと決めたことを再認識する。地主神社で恋とは無縁だと言い。私には縁遠い場所だと言う。清貴に対して勘違いしてはだめ。恋ではないと言い聞かす。蔵にいられなくなることが嫌だから。
 祇園のカフェで清貴の祖母・椿に会う。椿の家に行く。オーナーが椿に送ったビスクドールの男の子がいた。この頃、ビスクドールが泣いたり移動したりすると言う。清貴は椿の現夫・義男の気持ちを感じ蔵に戻すことにした。蔵には女の子がいる。

 バレンタインの夜会
二月、オーナーが清貴が名探偵だと噂を広める。
手が触れ合うと勢いよく手を引っ込める葵に、清貴が、僕が怖いですか?と問う。嫌っていますか?少し触れることも嫌なのか・・・それなら気を付けます。
 葵は、蔵が大好き、オーナーも店長もホームズさんも大好きですし、尊敬していると言い握手する。一線を引こうと心がけている自分の態度が悪い印象を与えているのかと反省。
 清貴から鑑定用の手袋を貰う。
 店長が、バレンタインに吉田山荘で開かれる相笠クリスの朗読会に行って欲しいと頼んできた。清貴は吉田山荘なので了承した。
 当日、葵はパイプを咥えたシャーロック・ホームズの横顔のチョコレートを渡す。清貴は言い誕生日プレゼントになったと受け取る。葵は今日が清貴の誕生日だと知った。
 集まったのは、クリスの前編集長、高校の同級生が二人、クリスの公式サイトのカメラマンと助手、私立探偵が一人だった。クリスの妹・香奈の「あの日、わたしは殺されました」と言う言葉で始まった。クリスは自殺し、助かったが記憶を無くしていると伝わっていた。清貴と葵以外はクリスの快気祝いだと言われていた。
 清貴の、目をみれば何でも判る探偵という噂のため、真相を明らかにして欲しいという頼みだった。クリスは誰かに突き落とされた。クリスには、何故、誰にという疑問があった。
 小田は帰った。清貴に、二人と後一人の素行調査を頼まれたかの質問を受けた。
 一通り話しを聞いた清貴は、判ったことを話す。相笠クリスの名前の謂れ、同級生三人の名前から文字って付けられたこと、クリスの売れている本の内容は三人の合作から生み出されたものということ。クリスが売れて二人が何かと頼みごとをすること。強請られているように感じたクリスは二人の弱みを調べたこと。クリスが好きになったカメラマン助手・小田を友人が恋人にしたこと。慰めてくれていた編集者・橋本に心を寄せると彼が結婚したこと。小田が設定し用意した場所で、同級生が知られたくないことをほじくりだしてきたクリスが憎くなって突き落としたことを話した。間違いではなかったようだ。
 クリスは後に小説にした。

後継者の条件 
滝山利休・好江さんの息子・前蔵のアルバイトがフランス留学から帰ってきた。利休は、清貴の信奉者だ。利休が、バイトは辞めて勉強に専念したらと言うのに、清貴は葵を庇う。機嫌が悪いですね。これ以上葵さんに失礼なことをすると許しませんよと微笑む。
 利休の父親・桐嶋左京が、利休と共に左京の父親・斉藤右近の家に呼ばれているが、鑑定士を伴うようにと言われているので清貴に一緒に来てもらいたいと言う。清貴は大喜びで了承する。いろいろ有るようなので葵も行くことにした。
 途中、今宮神社に寄る。あぶり餅を食べる。
 斎藤家に集まったのは、長男の桐嶋左京・デイトレーダー、次男司・鑑定士は田中、円生だった。三男和彦・会計士、鑑定士は藤原慶子。清貴とは知り合いだった。利休の祖父・右京は、場違いの葵を試すことにした。葵は、出された八腕の樂茶碗の陶工を言い当て、それぞれの特徴も言う。右京は葵を認めた。葵は今年に入ってから清貴から樂茶碗のレクチャーを受けていた。
 斎藤家にはいろんなお宝があった。その中でもどれが斎藤家にとっての宝かを見極めよ。と右京は三人の息子と孫に言った。
 右近は、鏡に写った兄弟だと言った。司は、武士の心を忘れないようにという太刀だと言った。和彦は七宝焼きの壺を選んだ。清貴に腹を立てた司は、清貴に掴みかかる。利休は嫉みややっかみを引き寄せてしまうと言いながら司を勢いよく一本背負いし床に転がせた。利休は清兄は主君だからねと言う。後継者選びの試験はみんな失格だった。
 尋ねられた清貴は、太刀だと言った。桔梗紋の太刀は明智光秀の太刀。斎藤家の先祖は斉藤利三なのでしょう。光秀様のおかげの感謝の心、斎藤家における宝でしょう。
 そして最後に右京は聞く。一番の価値のあるお宝はどれでしょう?慶子は七宝焼の壺、円生は白磁、清貴は奥の襖絵だと言う。無名だが、俵屋宗達でしょう。涙を堪えるのが大変だったと言った。
 右近は清貴に利休を宜しくお願いしますと頭を下げた。清貴は利休を弟のように思っているこれまで通り仲良くさせてもらいたいと。
 葵と清貴は、襖絵を見てから帰る。清貴は、円生を挑発する。失敗しましたね。葵は円生が一方的に嫉んでいると思っていたが、清貴も同じような感情を抱いていた。彼の存在が疎ましい。僕にあれだけの才能があったら・・・清貴の呟き。
 好きです、清貴さん。葵は自分の気持ちを解放しようと思う。
 清貴は今夜は、月がとても奇麗ですねと言う。
 

2023年6月6日火曜日

京都寺町三条のホームズ♦3

京都寺町三条のホームズ♦3 望月麻衣
 〜浮世に秘めた思い〜

 序章 忍ぶ思い 葵がバイトを始めて八ヶ月 オーナー・清貴の祖父が、平兼盛の「しのぶれど・・・」の歌の掛け軸を店の壁に掛けた。
 上田が持ち込んだ浮世絵の掛け軸から浮世絵のレクチャーを受ける。
 上田は、店長・清貴の父に見合いを段取りしたが断られていた。店長は、一番美しい時に、一番愛しい時に亡くなった妻・清貴の母を忘れられない。妻より愛せない人と結婚は、相手に申し訳ないと言う。
 店長・作家・伊集院が、書いていた作品と同じ人を題材にした作品が出版された。店長は・作品を没にして新たに書き直さなくてはならない。いきずまった店長に清貴は鎌倉の観音様の話をする。店長は里見義弘と幼なじみの尼の話を書くことにした。

 第一章 歌舞伎美人の恋慕 11月、
 葵は清貴に顔見世に誘われる。葵は、定期試験の結果が悪く、今度のテストでも悪かったらバイトを辞めるよう言われている。頑張って勉強しないといけないので出ずらいと漏らす。結果、清貴に勉強を教えて貰うことになった。
 清貴の大学の女子大生たちが店に来る。清貴は、楽しげにくだけた口調で語らう。
 葵は、清貴の接し方で、自分が「特別」じゃないかと思ったが、特別ではなくあくまでバイトだと分った。敬語だし、他の人よりさらに離れている。勘違いを暴走させる前に現実を知って良かった。私みたいな平凡な人間につり合わないし。一線を引いてミーハーな気分で眺めていようと思った。

 秋人が歌舞伎役者・市片喜助と女優・元宝塚男役スター・浅宮麗を連れ蔵に来る。
 秋人は、品行方正に京都を紹介しいていた秋人の「本当の姿」が、ドッキリ映像で放送されお茶の間に大きな衝撃とインパクトを与え、話題、評価が高まりテレビの出演回数が増えた。今もロケの合間だと言う。
 市片喜助は九月に襲名し、顔見世に出演する人気者だ。喜助と浅宮麗が付き合っているという関係が分った。華やかな来客。
 秋人が人気者になったにも関わらず、天狗にもならず以前と変わっていないことに、清貴の秋人評価が上がる。
 数日後、喜助と元モデルで資産家の令嬢との婚約報道があった。またグラビアアイドルと付き合いのあったことが報道された。
 葵は三つ股だと憤る。清貴はそういう世界だと言う。
 
 顔見世初日の前日、喜助が「お前が市片喜助の名を継ぐのは許しがたい。襲名を辞退しろ。口上を断固阻止する」と書かれた紙を持って蔵に来た。状況をホームズは言い当て喜助は驚く。襲名の決め手は市片藤三郎の押しだと言った。帰る喜助にホームズは、止められない想いが伝わります。何を仕出かすか分らない。気をつけてくださいと言った。

 昼の顔見世の後、先斗町で夕食。蔵からのボーナスだった。最高の席で、音声ガイド付きで見る。秋人も麗もいた。秋人の四等席に喜助と話題になったグラドルもいる。
 演目のラスト、喜助出演のクライマックスのワイヤーアクションの最中、喜助が空中から落ちた。ホームズは、麗と一緒に楽屋に行く。葵も付いて行く。秋人はグラビアアイドルを連れてくる。婚約者もいた。ホームズは喜助の足を触り、折れてはいないことを確かめる。患部を冷やし、応急処置をする。
 事故だという喜助に、ホームズは故意と仮定した場合の話しをし、犯人を追いつめる。ホームズは藤三郎の妻・あやめに向き合い、喜助さんに裏切られたと感じられましたかと問う。婚約者とあやめとの言い合いで、喜助と藤三郎の妻の関係が明るみに出る。襲名のために関係をもったのは仕方がないと思ったという婚約者の弁に対し、どうしようもなく惹かれたからだという喜助。謝る喜助に藤三郎の平手が飛び、「足をどうにかし、立派な口上をせい!」と一言「あやめ、行くぞ!」とその場を退散。謝るあやめに、昔の報い、因果かな。お前に寂しい思いをさせていたのかもしれない。すまなかった。と言っているのが聞こえた。
 婚約者は、婚約を解消した。グラドルはバイバイと帰った。麗は喜助の背中をばしっとっ叩き元気付ける。
 奥様の不貞を許した藤三郎の器の大きさに圧倒されたという葵に、過ちを許すことで相手の全てを支配できるという清貴。自分の大きな過ちを許してくれるような人になら支配されてもいいかなという葵。先斗町で食事。その後、勉強。

 第二章 聖夜の涙とアリバイ崩し 年末定期試験の総合得点、過去最高。まさかこんなに点数が上がるなんて!
 母親に不正を疑られた葵は、バイト先の「蔵」と家頭家の説明をする。京大院生ホーム・ズに勉強を教えてもらったことを話す。母はお礼をしたいので家にお呼びしろと言う。
 上田さんが、北山通りにイケメンカフェを出す。四日間、清貴は手伝うことになった。
 試験の結果が良かったことを清貴に報告し、母親の誘いを言う。土曜日、上田のカフェに行く前に葵の家に寄ることになった。祖父の骨董品を見たいという清貴の言葉もあった。
 土曜日、母親と弟・睦月中二がいるところへ清貴が来る。アップルパイ、クッキー、豆餅。
ホームズの武勇伝を葵から聞いていた母親と弟は、事件に巻き込まれたら相談してもいいかと言った。
 祖父のコレクションを見るが、価値のある物はなかった。清貴は、この中から何も知らなかった葵が、白隠禅師の掛け軸を選んで持ってきたことを良い目を持っていると誉めた。
 葵の部屋で清貴は、この子は自分を好きなんだろうと思っていたが、自惚れだったようで残念でしたと告白する。自分とカップルだと勘違いされて、心底困ったと迷惑そうに強く反論されたと言う。(葵のことだが、葵は気付かない)

 上田さんの店を見に行く。流行りそうだ。店の話の後、元彼女・和泉が現れる。清貴が高校生の時付き合っていた。清貴は大切に扱っていたが、和泉は大学生になるなり合コンで知り合った男性と深い仲になり、清貴と別れた。その彼と結婚の話になったが、破談になった。父親が進める見合いをした。相手が魅力的で話しは進んだ。婚約パーティが開かれた。その婚約パーティの日に、彼が私の部屋に来たという女が現れた。和泉は彼女のSNSを見つけ彼に問いただした。彼女は桃山に住んでいる。松ヶ崎から桃山にその時間に行けるはずがないという。彼のアリバイを崩してほしいと言う。ホームズは、真相を知る覚悟はあるかと問う。ホームズは調べることを言い揃ったら連絡を下さいと言った。

 クリスマスイブ。葵は蔵の店番。店長が帰って来ればアルバイトが終わり。上田さんのカフェへ行こうと思っている。清貴は上田の店の手伝い四日目だ。店長に自作クッキーをプレゼントして帰る。イケメンカフェは大人気、葵を見つけた清貴は、葵に店が終わった後、和泉が来るからご一緒にと声を掛けた。
 和泉と婚約者・橘が現れる。寺町三条のホームズを知っていた橘。和泉との関係を聞かれ、高校時代の同級生と言い、葵を婚約者と紹介する。
 ホームズは、橘のその日の行動を話す。彼女は桃山に住んでいたのではなく、松ヶ崎近辺に住んでいた。橘がコンビニでお金を下ろし、慰謝料・手切れ金を渡し、すぐ桃山へ引っ越す条件を付けた。念書を書かせたか?等ホームズは話す。橘は認めない。すべてホームズの仮説通りだとしても終わったことだと言う。葵は、橘に不誠実だと言う。大好きな人にでも誤魔化され続ければ信じられない。何もかもが嘘に感じる。どんなに良い言葉を並べても嘘では意味がないんですと泣く。和泉もあなたに惹かれたが、もう駄目です。信用できない人と人生を共に出来ない。勘当されるかもしれないが、嘘をつき通されるのは嫌ですと涙をお流す。橘はほぼ清貴の仮説通りだと言う。和泉と結婚しなければ多額の借金を背負うことになると彼女に言った。彼女がそれでもいいと言えば考えようと思っていたが、彼女は、掌を返すように別れてくれた。後は清貴の言った通りだった。前の彼との別れが女性関係と聞いていたので、嘘をつき通そうと思ったと謝った。清貴と葵は席を外した。
 清貴と葵は教会の庭で話す。和泉と橘のこと。清貴はクリスマスプレゼントとして「植物園の年間パスポート」と「京都市美術館友の会」の会員カードを渡す。
 葵は手作りのクッキーを渡す。「ほんま、あかん」と言う清貴に迷惑と思われないように「純粋にお礼です。他意はありません」と念押しする。冷たくなった葵の手を包み込み「葵さん」と言いかける清貴。和泉と橘が現れる。誠実で有りたいと言う橘。お幸せに。

 第三章 祇園に響く鐘の音は 十二月末 オーナーが蔵に来て、しのぶ恋の掛け軸の話をし、葵を見る。葵は蔵の人たちに清貴に恋をしていると思われては蔵にいられなくなる。絶対に嫌だ。
 大晦日の家頭邸でのパーティに行く。
 清貴はパーティの準備に錦市場に行く。葵と途中の「新京極八社寺」に行く。清貴が用意していた薄紅色の朱印帳を貰い、寺社巡りをしていると秋人に出会う。清貴は仕方なく三人で行く。今までカフェオレを飲んでいた葵は、清貴の入れたコーヒーをブラックで飲めるようになりたいと思う。
 パーティの用意ができるまで、家頭邸の居住スペースに行く。そして清貴の部屋に。清貴の部屋は、散らかっていた。本の山だった。
 秋人のどう思うという質問に、葵は、素敵だと思うが、美意識の高い人は私を選ばないと思うから一線を引いていると答える。変人ぶりには、もう慣れました。
 オーナーの友人、美術関係者、市片喜助、浅宮麗等揃った。
 宝探しゲームが始まる。もうすぐ見つかる手前で入ってきた円生が見つけてしまう。円生と清貴は睨み合い、円生が用意した真贋ゲームが始まる。樂茶碗を二個出す。清貴はどちらも割る。山岡鉄舟の「清濁」。こことここにあなたが出ています。書を切り裂く。写楽。清貴は切り裂く。本物だと言う円生。清貴は決めては耳だ。心の叫びを聞いてもらいたいのではないですかと言う清貴。互いに胸ぐらをつかみ力を込める二人に、葵は、二人ともパーティの席です。いいかげんにしてください。終わったのですね。円生さん片づけて下さいと声を上げた。二人は笑みを浮かべ、内側の黒い感情を隠すことなくぶつけ合う。
 上田が葵に、清貴は自分にとって特別な子だと話す。親友の彼女を好きになり、結婚、妊娠はショックだったが、清貴が生まれた時はほんまにうれしく涙が出た。清貴は変わり者で捻くれ者やけどこれからも仲良くしたってと言われる。
 奥の部屋の窓際にいた清貴に葵は声を掛ける。反省していたという清貴。円生のことを考えている。
 
 三人で八坂神社に行く。白朮火を貰って清貴と父親が住むマンションに行く。
秋人の今年の抱負は、公私共にガンガンいこうぜ。らしい。
葵は、ブラックコーヒーを飲めるようになりたい。
清貴は、去年は情けなかったので、今年こそは・・・です。
 
 
  

2023年6月5日月曜日

京都寺町三条のホームズ♦2

 京都寺町三条のホームズ♦2 望月麻衣
 〜真贋事件簿〜

 序章 夏の終わりに 
 苗字が家頭だからホームズと呼ばれているという清貴。
 お勉強タイムと称して古美術勉強会が始まった。黄瀬戸だという贋茶碗を持った男が来る。葵偽物だと判る。
 偽りを許せない真っ直ぐな人
 京男子は腹黒い。

 第一章 目利きの哲学 二学期が始まる。
 家頭誠司の喜寿の祝いの誕生パーティ。
 清貴と哲学の道から銀閣寺
 香織は、清貴を得体の知れない怖い人と言う。
 オーナーは2年前、家宝探訪というテレビ番組に出ていた。ドン・影山の持ってきた染付の壺を偽物と判断した。番組のため本物だと言うように強制されたオーナーは、拒否し、テレビに出なくなった。
 オーナーの家は石造りの洋館で、美術品展示用屋敷だった。庭は和庭園。
 オーナーには、付き合って十年になる好江さんという彼女がいた。淡いピンクのワンピースを貰う。
 香織は家族で出席、芸能人や秋人もいてミーハーぶりを発揮。
 ドン・影山が恥をかかされたことを恨み、青磁の壺を割ったように見せかけた悪さをしかけたマジシャンがいた。オーナーも清貴も贋青磁だと見抜く。マジシャンとポーカーの勝負をする。清貴はカードが配られた段階で、繰り方、配り方でカードを見る前に、相手の手持ちカード、自分のカードを見抜き勝てないことを宣言する。
 自分は見習い鑑定士だが、ー目利きを舐めたらあかんでー 微笑み瞬時に鋭い眼差しで。
 オーナーは言う。影山さんに恥をかかせたことは申し訳なかった。しかし、鑑定士が、偽物を本物とは絶対言えへん。目利きの哲学や。
 清貴は人を怖がらせたことを自嘲した。葵はオーナーを護ろうとして素敵でしたという。清貴は尊敬し、全てを受け継ぎたい、そして超えることが出来れば・・・・と漏らす。

 第二章 ラス・メニーナスのような 秋。岡崎の高宮邸に行く
 米山涼介、蔵に来る。元贋作師。オーナーに見破られ罪を償い足を洗う。贋作師時代に関係した高宮に「ディエゴ・ベラスケス」のような絵を描いてほしいと頼まれる。完成品を持って行く時付き添う。高宮氏は亡くなった娘の少し成長した絵を気に入ってくれたが、希望した絵とは違ったようだ。
 清貴は、高宮の望みはラス・メニーナスのような絵を希望したと解釈した。高宮一家が幸せそうに遊んでいる光景を希望したと解釈した。米山はもう一度挑戦指せて欲しいと頼む。

 第三章 失われた龍 梶原秋人のレポート 
 梶原秋人の 五分間の京の町を伝える旅番組が始まる。
 美術館で清貴が、偽物を見つけた。
 
 秋人は清貴に南禅寺案内を頼む。南禅寺紹介と共に、清貴の恋愛感・相手の嘘、打算が分ってしまうことを聞く。葵が初めて蔵に来た日に助けてあげたくなったことを話す。
 
 清貴は南禅寺に呼び出されていた。相手をした僧は円生。相談は副住職から、龍を頂戴いたしました。という手紙を見せられる。清貴は、「瑞龍」の書が偽物と取り換えられているという。その犯人はと、扇子を円生の頭上に叩きつけるが、円生は両手で受け止める。
 いつ判った?という問いに。始めから違和感があった。清貴のことを知っていた。瑞龍の書の前で少し緊張した。口数が増えた。あなたの模倣性。
 円生は、贋作師を極めた。誰も偽物と気付かない。快感からつまらなくなり、罪を改め出家しようとした。何年も見破られなかった贋作を大学生・清貴に見破られた。挑戦したくなった。
 本物は寺の倉庫にあった。
 副住職は、贋作を見抜いて貰ってうれしかった、個を認めて貰ったような気になった。宿命のライバルを見つけたような気持ちだろう。円生を頼みますよ、寺町三条のホームズはんと言う。

 第四章 秋の夜長に 
 東福寺に三人で行く。
 近くの空家になった秋人の伯母の家の骨董品の鑑定に行く。
 秋人の第一回の京都を紹介する番組を三人で見る。
  
 葵は、東福寺がホームズと和泉の思い出の場所だということを思い出す。在原業平のなれ初めの歌。ホームズは別の歌、
  きみにより 思いならひぬ世の中の 人はこれをや 恋といふらむ
憧れだと言う。
和泉への想いは精算したが、裏切られたショックはトラウマのように残った。もう傷つきたくないから恋をすることに拒否反応をしている。葵は自分とホームズが同じだと思った。
 
 清貴は、洋館の内部の骨董品の鑑定をする。葵は清貴の記入をする。秋人は庭の草むしりをしてバーベキューの用意をする。
 清貴は南禅寺の副住職に言われた「深窓の坊ちゃん」に拘る。唯我独尊な祖父と超マイペースな父に囲まれ、二人の世話をし、家や店の管理、調理師、運転手、荷物持ち、ボディガード、翻訳家、小間使いとこき使われている。が、円生に比べると温室育ちだと判っている。そして円生の幼少期を語る。何も知らないけれど感じられることを。
 秋人のテレビ番組を見る。葵、素敵だった。まんまホームズの真似だった。清貴は、あそこまで自分を偽れば、後々苦しくなると言う。秋人はあの番組に合わせた役者としての演出だと言う。

 停電する。秋人の絶叫。人形が歩く、笑う。一人になった秋人の前に白い女の影が。秋人は絶叫。秋人は心霊現象だと言う。葵が、怪奇現象の犯人はホームズだと言う。ホームズは、秋人のマネージャーに、番組で上品に京都を紹介している梶原秋人はこんな奴だ、というのをお茶の間に届けたいから協力してほしいと頼まれていた。ドッキリ番組で、年末の特番だった。

 最終章 迷いと悟りと 十月下旬 
 クラスの友達に大学生との合コンにさそわれていると葵が清貴に言う。
 日曜の午前、秋人と三人で嵐山の鈴虫寺・華厳寺へ行く。
 午後、柳原重敏鑑定士の生誕祭に行く。真贋ゲーム葵優勝。
 柳原邸の後、鷹峯の源光庵へ行く。
 葵の清貴評 負けず嫌い、頑固で真っ直ぐ。いつも見せている顔と全く違う顔を持つ。そんな面も素敵だ。
 清貴の弁 負けず嫌いで頑固、普段見せている顔とは違う面を持つ表裏のある男。表はさておき裏の顔を誉められたことがない。
 葵 表も裏も同じホームズさんだ。

 鈴虫寺でホームズと秋人の掛け合いを聞き、テレビの人と言う声が聞こえる。雰囲気が全然違うよと。秋人はホームズ的男子を求められ辛い。ホームズは猿まねするからですよと言う。秋人は芸術界で成功できますようにと願う。
 渡月橋、十三参りの話。
 保津川下りのはなし。
 天龍寺
 柳原先生の八十才の誕生日の祝い。秋人は「京日和」の子やな。
 真贋判定ゲームが行われる。信楽の壺、古九谷の皿、古瀬戸の壺、黄瀬戸の茶碗、志野の茶碗、全て当てた葵は優勝し、城崎の高級旅館のペア宿泊券を貰った。
 清貴は自分の目に狂いはなかったと誇らしげだった。秋人は実はすげーんだ、と感心する。米山は生まれ持った鑑定眼に真っ直ぐ真実をみようとする人だと言った。柳原は、この若さでこんな子なかなかいない。さすが清貴の選んだ子だと言った。
 柳原が、清貴に「我がイギリスの海岸」の真贋を鑑定してほしいと出してきた。清貴は偽物と判定する。誰がこの問題を出したかと質問した後、丸い鏡を見て、清貴はパーティを退出する。葵と秋人も一緒に行動する。
 源光庵にいたのは円生だった。父は画家だった。飲んだくれの父の代わりに絵を描いた。
円生は扇子を喉元に突き出し返した。白紙だった扇子に勝の文字が書かれていた。
 見破りはしたが、今回は僕の負けやと言う清貴に、葵は次に円生が仕掛けて来た時、しっかり見破ってくださいと言った。今度は絶対に負けないでという葵に、今度は完膚なきまでに叩きのめしてみせると言う清貴。
 葵さん、僕は・・・何かを言いかけた清貴だったが、秋人に呼ばれてそのままになった。
 

2023年6月4日日曜日

京都寺町三条 のホームズ① 

京都寺町三条 のホームズ① 望月麻衣

 ホームズと白隠禅師 真城葵17才は、亡くなった祖父の掛け軸を持って寺町三条の「蔵」へやってきた。葵は付き合っていた彼に別れようと言われ、葵が親友だと思っていた女子と付き合い始めたと聞き確かめに埼玉に帰るためのお金が必要になった。掛け軸は白隠禅師の本物だった。店番のホームズこと家頭清貴22才は、志野の茶碗の前で足を止め見入っている葵に、ここでアルバイトしませんかと奨める。交通費を稼いで帰りたければ帰ればいいのではと。葵はアルバイトをすることにした。

 願わくは桜の下にて 葵は心の声に応えるホームズに驚く。葵は倉の二階で古美術品のレクチャーを受ける。オーナーの車・ジャガーが蔵の社用車になっている。
 仁和寺で岸谷さんの父親が残した野々宮仁清の京焼を見ながら、父親が息子に遺した気持ちを伝える。売れる漫画を描いても、自分の魂を込め自分のブランドを作る。
 葵は、願わくば桜の下にて春死なむそのきさらぎの望月のころ と言うと、桜の下ではなく花の下だと訂正される。
 京男はいけずやから
 
 葵の頃に 今年の斎王代の母子がホームズに相談に来る。西陣の宮下呉服店の奥さんと娘・斎王代の佐織さん、妹の香織さん。香織は葵とクラスは違うが同級生で顔見知りだった。斎王代を辞退しろという怪文書が二度届いた。ホームズに誰が出したか調べて欲しいという。
 佐織が出品している華道展に行く。友達の佐織批評を聴く。
 糺の森で判ったことを話す。家の経済状態を考えた香織が怪文書を書いた。父母が広告費と思えば安いものだと言うのを聞いて処分しようと思ったが、怪文書を見つけた佐織が自分でバックに入れ、二通目も佐織が書いた。佐織は友達に嫌われたくなくて斎王代を辞めたかった。香織は、しょうもないこと、ええ加減に卒業して新しい世界にでて、あの人と友達だったと言い出すほど素敵な女性になってと言う。佐織は店のためにと婿を取って家を継ぐことを考えている。自分は自由にできる身なので、できるだけ姉をサポートするつもりだという香織。
 葵は、ホテルオークラの名物アンパンを食べに行こうと香織を誘う。ホームズは、友達になりたいと思える人に出会えて良かったねと言う。
 百万遍の願い 店長・清貴の父・作家伊集院武史の小説に込めた気持ちを聞く。息子・清貴の才能に嫉妬する気持ち。
 百万遍知恩寺の手づくり市に行く。毎月15日。清貴は文献文化学を学ぶ。清貴はフリーマーケットで逸品と思うカップを買う。清貴は、骨董屋が売ろうとしている茶碗を偽物だと言い、ただの茶碗を川喜田半泥子の物だと言う。二百万だと言う。
 百万遍の由来を聞く。善阿は、念仏を百万遍唱えた。
 清貴は高三の頃に相手に裏切られた失恋話しをする。父親の小説に込めた気持ちを知っている。祖父の努力も知り、自分も努力している。そして父は甘いと言う。
 葵は埼玉に行くことをやめた。一生懸命バイトしたお金をそんなことに使いたくない。鞍馬にハイキングに行くことにする。
 
 鞍馬山荘遺品事件簿 葵は清貴と鞍馬に行くことになった。店長に梶原先生の鞍馬の山荘に行ってほしいと頼まれた。貴船の川床での食事が決まった。
 葵は清貴を見るたびにかっこいいなと思う。鋭さにドキンとする。
 三ヶ月前に亡くなった作家・梶原の山荘に行き、梶原の妻・綾子、IT企業社長の長男・冬樹33才、イケメン俳優の次男・秋人25才、府立大二年の三男・春彦20才の相談に乗る。父親が三兄弟に残した掛け軸が、燃やされた。誰が燃やしたのか。燃やしたのは、綾子。掛け軸を送られた意図を解明する。綾子と春彦がいない時に、清貴は、春彦の父親は秘書の倉科だという。二人は次期を見て春彦に教えることにする。
 綾子が貰ったアクアマリンの石言葉は自由だと伝える。
 
 祭りのあとに チャライ秋人は、清貴の所に遊びにくる。
 祇園祭の間、蔵は浴衣を着る。葵のナデシコの浴衣を清貴が選んだ。清貴は祇園祭を動く美術館と言う。
 清貴の元彼女が蔵に来る。結婚が近いらしい。意味深な手作りの茶碗を置いて帰る。葵は和泉の「やっぱりあなたが好き。今も忘れられない」という告白だと感じた。
 宵宵宮の夕方、和泉が蔵へ来た。
 葵は 祇園祭見学に京都へ来ている埼玉の友達に会いに行った。元彼・克実と元親友・早苗がいた。二人が葵に謝り、廻りの友達もふたりの見方に廻る。泣かないで踏ん張っている葵を清貴は迎えに行き、みんなの中から助け出す。葵は清貴の胸で思い切り泣く。
 清貴に和泉のことを聞いた葵に、夏の夜の夢のような短くはかないあなたの気まぐれに、僕との間につまらない噂が立っては困りますと歌を返したと言う。茶碗には打算と迷いが見え、逃避だと伝わって来たと言う。彼女に結婚を迷うのであれば両親に相談したほうがいい。一生後悔しますよと伝えた。
 葵は清貴を、優雅だが鋭い切れ味「京男子」と名付ける。
 

2023年6月3日土曜日

宇ぽっぽ同心〈一〉 終活指南

 うぽっぽ同心〈一〉 終活指南 坂岡真

 長尾勘兵衛、臨時廻り同心。娘・綾乃は定町廻りの末吉鯉四郎に嫁ぎ娘が生まれている。仁徳の手伝いをしている。

 島帰り 勘兵衛は水戸藩作事方の和久井から、水戸藩御畳奉行・片瀬の不正を調べてくれと頼まれた。片瀬の不正の影響で、畳屋が殺される。勘兵衛が捕まえた左官の岩吉が島から帰ってくる。水戸藩の片瀬の言いなりの同心が岩吉の残した娘に絡んでくる。
 片瀬の不正の帳簿を勘兵衛に渡してくれた和久井の朋輩・村橋。勘兵衛は裏帳簿で片瀬を呼び出し捕まえる。片瀬は水戸家で切腹になる。片瀬の命で名主を殺した同心・高木は勘兵衛が斬った。
 村橋は水戸家を辞した。岩吉から鏝絵を習おうかと考えている。

 月見の味 勘兵衛は、黒鍬者のまとめ役・常八から、土手の一部が再三崩れるのはわざと崩れるように作っているとしか思えないと聞かされた。常吉が殺される。常吉殺しを勘兵衛に被せる小細工をしていた。七年前に勘兵衛のために江戸を追われた俵太が、江戸に戻り口入屋・三筋屋となっていた。
 三筋屋と手代元締・草間、材木石奉行・久米が不正を働いていた。久米は若年寄を使ってまで、勘兵衛を除こうとする。
 久米が視察に訪れた川淵で勘兵衛と黒鍬者は不正を暴く。そこに根岸肥前守が若年寄の許可をもらい現れ裁定する。

 埋み火 勘兵衛の元同僚・木元源之進は、半年前に隠居したが、捕まえ損なった大蛇の段五郎をまだ追いかけていた。十年ぶりに段五郎が押し込みをした。
 若い例繰り方同心・平賀又右衛門が、調べた結果一味と通じた者がいると断じた。吟味与力・松井田監物。
 先回りして証人が殺される。出役の命が出た日、本当に大蛇が狙っている商家はどこかを探る。勘兵衛と木元は駆けつける。段五郎を捕まえることが目的だったが、勘兵衛が来ないことで駆けつけた松井田の息の掛かった佐尻主水によって段五郎は殺された。
 佐尻の訴えで夜、内輪で勘兵衛の評定が行われる。根岸肥前守、松井田監物、佐尻主水、勘兵衛。肥前守は佐尻に殺された岡っ引き・与一が残した帳面があり松井田、佐尻の命で
押し込み先、が書かれていたとされ松井田は裁かれた。
 木元の娘と平賀は見合いをした。