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2025年2月13日木曜日

風の市兵衛 弐 ㉞ 蝦夷の侍

風の市兵衛 弐 ㉞ 蝦夷の侍 辻堂魁

 西蝦夷地アイヌの集落に、江戸の武士がいるという。元船手組同心、瀬田宗右衛門は、蝦夷の武士が十二年前に刃傷事件で義絶した、長男・徹だと確信し、唐木市兵衛に徹の捜索を頼む。瀬田家の後を継いだ次男の明が成敗され、瀬田家は改易の危機にあった。宗右衛門は、何も問わず義絶した徹の事件と明の事件に疑念を持っていた。徹から話を聞く必要があった。

 両替商近江屋から瀬田家の依頼を聞き、近江屋の伝手で廻船で蝦夷へ行く。
 蝦夷で、ロシアからの交易による武器の密売を探るために蝦夷へ渡っていた弥陀丿介と会う。五六人で、金品を強奪する賊がいることを話す。
 コタンで暮す徹を見つける。徹は熊に襲われ、片足、左手が不自由で、左目は見えない、顔に傷跡が残る身体になっていた。コタンの首長の娘と一緒になり、子どもがいた。徹は狩にも行き、生活していた。熊に襲われ傷ついた徹の介抱をしたのが、首長の娘・レルラだった。
 話しを聞いた徹は、江戸へ帰る。
 松前に行く途中、賊に襲われるが、五人を倒し、並べて置いた。弥陀丿介が話した賊かは判らない。

 江戸へ帰った徹は、家族に会わないで、十二年前に自分が傷つけた男・此度、明を成敗した尾上陣介に果し状を出した。陣介は受けた。が、人斬りと言われる無頼の九竜十太郎と無頼の者を雇った。陣介は徹の同輩だった。陣介には何人かの同輩が件分役で付き、徹には唐木が着く予定だったが、明の事件の時、見て見ぬ振りして申し訳ないと言った二人の同輩が付くことになった。
 十太郎は唐木を襲い、徹は陣介と戦った。十太郎は倒れ、陣介も倒れた。
 船手組頭・田岡仙太郎善純は、十人目付筆頭・片岡信正の呼び出しを受け、明の成敗に事件と徹の果たし合いの事を聞かれる。終わった後、若年寄林様に何を送ろうかと考えながら、卒中で倒れ亡くなった。
 徹は、瀬田家の者と話し合い、蝦夷へ帰った。
 船手頭が新しくなり、瀬田家の逼塞は解かれ、優が、船手同心の見習に出た。

2024年10月6日日曜日

風の市兵衛 弐  うつ蝉 

風の市兵衛 弐  うつ蝉 辻堂魁

 三月、唐木市兵衛が、川越藩から助け江戸に連れてきた娘・村山早菜が、三千石の旗本・岩倉家に輿入れした。岩倉家は小姓番頭であり、嫡子高和も中奥番衆に就いていた。
 岩倉家には大枚の借財があり、高和にも、いろんな噂があった。高和には元町芸者の側女がい、四才になる息子が存在する。金貸し七右衛門に遊興費を借り賭場通いをしている。七右衛門は三日んいあけず屋敷に出入りしていた。
 婚礼から半月経ち早菜は、岩倉家のことを知った。高和は早菜の住む離れに来たことがない。早菜の後ろ立て・両替商の近江屋の財力を充てにした婚礼だったと思った早菜は、付き女中の静と岩倉家を出て近江屋に戻った。
 
 北町同心・渋井は、大阪堂島の米仲買商の泰三郎が殺された事件を調べていた。七左衛門に会いに行くと言って出たことで七左衛門に訪ねるが、人違いだったと言われた。

 四月、市兵衛は元村山家家人・富山小左衛門と七左衛門と高和のことを調べていることが気に入らない七左衛門と岩倉家用人・鎌谷は、二人を殺害しようとする。別々に呼び出された二人は、岩倉家の別邸に連れて行かれ、富山は殺される。高和、鎌谷、七左衛門、助っ人二人がいた。
 高和と鎌谷、七左衛門は逃げた。
 七左衛門は二十年前の大阪時代の七左衛門を知っている泰三郎の甥が江戸に来た事で七左衛門の昔が知れ渋井に捕まった。
 秋、打ち首になった。
 鎌谷は当主の命で、切腹したことにされ殺された。鎌谷がかってにしたこととされた。調べは打ち切られた。
 
 五月、借財が嵩んだ岩倉家は、台所預りとなった。直後、則常は小姓組番頭を解かれた。高和も出仕に及ばずとなった。
 六月、家禄千五百石となり、亀戸へ屋敷替えとなり、無役の小普請になった。つたの息子は高和の子ではなく、七左衛門の息子と判明した。つたは女中となり子供も一緒に長屋に住んだ。
 早菜は、富山の遺骨を郷里・武州松山に納めに行った。市兵衛は見送りに行く。

 

2024年3月24日日曜日

大岡裁き再吟味③ うつし絵

 大岡裁き再吟味③ うつし絵 辻堂魁

 大岡越前は、評定所で、関所破りの罪で裁かれる絵師・土田半左衛門を見た時、十五年前の旗本内藤家と倉橋家の事件を思い出した。内藤斎樹が倉橋弥八郎を斬り、発覚したため内藤斎樹は切腹し、事は収まっていた。

 越前は、古風十一を呼び、土田半左衛門と、内藤斎樹と倉橋弥八郎のことを調べるように言う。越前は、半左衛門に、十五年前の斎樹を見たのだった。

 十一が調べると、倉橋弥八郎は、若い歌比丘尼・鈴を殺していた。鈴の絵を描いていた斎樹は、鈴をわが娘のように思っていた土田庫之助の手を借りて倉橋を斬る。たまたま自身番の親父に顔を見られたため犯人が、斎樹と言われたことで斎樹は切腹したこになっているが、庫之助の亡くなった息子・半左衛門として絵を描きながら旅をしていた。十五年間見破られなかった偽手形が、偽物と発覚し、磔にされることになった。越前は内藤家の刀自に話す。
 越前は、半左衛門から詳しい話を聞いた。斎樹は淡々と事件の話をした。

 越前をうるさく思っている町奉行・松浪と稲生が、老中・本多に越前の行為を訴えた。本多から聞いた吉宗は、越前を呼び内密に牢屋敷で問いただしたのは何故かと聞いた。越前は全てを話した。

 半左衛門の磔は無くなっった。江戸十里四方追放となり解き放たれた。大岡様の御指図かと問う半左衛門に番士は老中かもっと・・・と答えた。

 十一は倉橋家の用人から命を狙われた。倉橋家の噂が城内を巡っているという。調べていた十一が狙われた。

 古風十一は、密猟者の家を潰し、年寄と幼子のいる夫婦・清吉を連れて行った鳥見役平河民部から夫婦を早く返して貰えるように大岡に頼んだ。

 下り物乾物商・升屋と平河民部の仕手方・軍八郎と餌請負人・伊蔵が召し捕らえられた。
御留場の盗鳥並びに密輸の廉だった。清吉の家を訪ねると村人に助けられ二人は働いていた。
 

2023年10月26日木曜日

雇足軽八州御用

雇足軽八州御用 辻堂魁

文政十三年 1830年

 竹本長吉39才は 、紙屋を生業にする殿山に雇われたと思っていたが、本業が高利貸で、用心棒又は、取り立てに雇われていたことに気付き、辞めた。
 新しく紹介されたのは、八州御用・関東取締出役、勘定所の臨時雇いの足軽だった。手当ては一日銀一匁。

 竹本長吉は、元宇潟藩郡奉行配下の下役だった。三年前、百姓一揆の煽りを受け、郡奉行の父親は切腹、配下の者も職を失った。妻と子は名主の実家に預け独り江戸に出てきた。
 十年、もう十年と藩札を発行する執政に対して、父親は藩札発行を抑え身の丈に合った藩政に戻すべきという考えだった。父親亡き後、長吉に藩の厳しい監視の目を向けられていた。
 
 関東取締出役は、家禄五十俵の御家人・蕪木鉄之助56才だった。二十年続けている。29才の息子は家をまだ継いでいない。

 十二月一日出立。蕪木鉄之助、小者・六兵衛、雇足軽・竹内長吉と多田次治44才。約一年旅が続く。

 大きな出来事もなく過ぎる。
 啼きの道助が率いる一味が押し込み強盗を働き、二十年逃げている。道助中心に四人、その時々に人数を集め押し入る。その四人が塩原の湯治場にいる。臨時出役・西野の一手と一緒に四人を捕らえるという命令が来た。
 西野の到着が遅れている。四人が明日の朝出立すると情報が入り、蕪木は自分たちだけで捕まえることにする。手助けも入れて二十数人になる。
 四人は裏から逃げた。西野が着いて、蕪木の不始末を責める。蕪木は、八日も前に下知されているのに何故こんなに遅れたかと責める。西野は黙って帰った。

 九才で元締をする子どもの博打開催を見咎めた。父親の博打の借金のため身を売った母が病気のため看病に行くためのお金を稼いでいた。竹本は、杉作と一緒に母親の所に行く。
母親は死んでいた。雇い主の話を聞き、墓参りをして帰る。

 もうすぐ一年になろうとする時、啼きの道助を捕らえる機会が訪れる。多田は怪我を負い、竹本が、若い二人を倒す。蕪木は道助に殺され、竹本が二人を討った。

 蕪木が心配していた息子は、代官所手付に採用された。
 藩の執政が変わった。長吉は宇潟に帰る。竹本家再興、郡奉行拝命の内示があった。
 長吉は杉作に会いに行った。杉作は田で働き、古着の仕事を覚えようとしていた。
 
 
 
 

2023年8月3日木曜日

乱菊

 乱菊 辻堂魁

 両国大橋 別所龍玄の妻・百合が、子どもの大きい子が小さい子をいじめる場を目撃し仲裁に入る。子供たちの親の申し出で礼に来た寺子屋の先生・深田匡を知った。
 匡が切腹の介錯を龍玄に頼んできた。
 匡は女敵撃ちをした。相手が、千九百石の旗本の中間になっていた。強硬な申し入れで、南部藩は、大目付に付く大城家の横槍を取り合わないわけにいかなかった。
 龍玄は介添えを果たす。匡は、紀代にすまなかったと言葉を残して逝った。
 龍玄は紀代に会う。紀代には志まという子がいた。見届けたこと、言い残した言葉を伝える。深田さんは何もかもご存知でしたよと。

 龍玄は両国橋で深田を見る。

鉄火と傳役 龍玄の剣術の師匠・大沢虎次郎の同郷の誼み、生野清順の頼みで、清順が傳役をした家禄五千八百石の長尾家長男・京十郎の介錯をすることになった。
 京十郎は嫡男だが、高家禄の後添えの母の弟がいた。京十郎は廃嫡された。町方が強請集りを働く一味を一網打尽にした中に京十郎がいた。評定所での裁きの前に切腹させようとしていた。
 時間に長尾家の別邸に着いた時、家人は殺されていた。清順も殺されていた。龍玄は京十郎の膝を斬り、介錯した。
 龍玄は大沢に報告した。

 弥右衛門 龍玄は水戸家家臣・手塚家次男・弥右衛門の介錯を頼まれる。弥右衛門は陰間を生業としたため縁を切られていた。
 弥右衛門の友・御家人・真崎新之助が旗本の三人組に追いかけ殺された。三人は酔った喧嘩の結果だと言い叱りのお咎めだけで終わる。新之助がいじめ殺されたことを知った弥右衛門は三人の旗本を殺した。水戸家家臣手塚家次男と名乗り出頭する。
 父親は息子と認め切腹が決まった。弥右衛門は一度出会った龍玄に介錯を頼む。
 父親も来ていた。弥右衛門の遺体を運んだ。良き最後であった。

 発頭人狩り 百合の幼友達・かな江が中条流の医者を知らないかと訪ねてきた。母・静江の実家・竹内家の兄・好太郎の知り合いの医者・白井堂安を紹介された。
 龍玄は刀剣鑑定の依頼があった都築家の用人・雨宮左内から、福山藩の横目付けが別所家を探っていると教えられた。龍玄は好太郎に話す。好太郎は白井に知らせる。
 白井堂安は、福山藩領で医者をしていた。百姓一揆の際、一揆勢に加勢した土地の侍衆の一人だった。白井は好太郎を頼り江戸に出てきた。三年半経つが、福山藩の横目は白井を探していた。
 好太郎、息子・専太郎、龍玄は白井の元に駆けつけるが、白井は捕まっていた。駆けつけ助けようとする龍玄の前で白井は斬られた。龍玄は横目の首を刎ねる。白井は亡くなった。専太郎は龍玄の手を借り一人を倒した。
 専太郎は龍玄のように強くならねばと道場に行くようになった。三人の横目は国元に帰ったことになっている。

2022年12月13日火曜日

大岡裁き再吟味② 山桜花

 大岡裁き再吟味② 山桜花 辻堂魁

 奉行所を外れてからも大岡越前は裁きが気にかかる。十七年前、雑司ヶ谷村本能寺の若い下男・直介12が折檻され殺され、山桜の下に埋められた。父親が下手人御免の願いを出し、皆お咎め無しと決した。その事件に疑惑が浮かぶ。大岡越前は、鷹匠の息子・古風十一に探索を命じる。

 十一は寺の関係者、御先手鉄砲組与力を引退した父親、父親が通った直介の母親・雪を探し聞き廻る。元読売屋のネタ探しをしていた金五郎の手を借り、折檻した17才と18才の所化二人が手代として務める銭屋を突き止め話を聞きに行く。
  次の日、二人の手代はいなくなった。
 十七年前、本能寺の墓参りにしばしば訪れる武家の内儀がいた。同じ頃本能寺の参詣に訪れる侍がいたことがわかった。
 大岡と敵対する商家・本両替商の海保半兵衛に頼まれ同じ事件を調べている半と出会い話を聞く。
 銭屋は十七年前に開業した。主・角兵衛は中間をしていた。
 雪は息子の墓に参った。息子の父親・一色半四郎に会った。
 一色半四郎は大岡に手紙を書き、下男に大岡が登城する前に届けるように言われた。読んだ大岡は手紙を城中に持って行った。
 一色半四郎は切腹した。大岡に当てた手紙があることが判明。手紙の内容は将軍にも知らされた。

 直吉は家禄五千五百石の鉄砲百人組の頭野添家の奥方と評定所留役・水下籐五の密会を見たために殺された。野添家の息子が、鉄砲を持ち出し、誤って百姓を殺した事件のもみ消しを水木に頼んでからの関係だった。半四郎は上役から金を貰い下手人御免を出した。水木家の中間が店を出し犯人とされた二人を引き取った。
 
 角兵衛は十一の命を狙った。直吉を殺したのは角兵衛だった。手代二人も殺された。角兵衛は十一の元から逃げたが、河原で遺体で見つかった。
 水下籐五は病のため急逝した。家督は倅が継いだ。
 鉄砲百人組之頭野添泰秀が役を解かれ、家禄三千石に減封、無役になり屋敷替えになった。
 十一は雪に話した。雪は菩薩を部屋に置き祀っていた。

 

2022年9月28日水曜日

風の市兵衛〈弐 〉 ㉛ 春風譜 

風の市兵衛〈弐 〉 ㉛ 春風譜  辻堂魁

 小春の兄の又蔵が、妹と渋井の息子・良一郎との縁談を知り家出をした。
市兵衛は、我孫子宿の親戚の南吉の所にいるはずの又蔵に会い、三十両を渡すことを父親・扇職人・佐十郎に頼まれた。
 青山村の南吉の家は空きやになっていた。市兵衛は南吉を探す。南吉は父親が亡くなり、稲が病気になり、虫にやられたり、借金した。寒い夏が二年続き借金が増え田畑を手放した。牛次郎の賭場に入り浸りになった。南吉を牛次郎の子分が探し回っていた。
 南吉の子供を身ごもっているらしいおことに会う。
 南吉の幼い頃の唯一の友だち・竹弥・法名・朱恵を尋ねる。朱恵は南吉から五十両を預かっていた。おことと母親を残して昔青山村から姿を消したおことの父親・勘助が旅姿で南吉を呼び出し、おことのために村に帰って田畑を買い戻せと渡された金だった。
 根戸村の尾張屋源五郎親分が殺されていた。殺したのは、牛次郎に五十両で頼まれた勘助だった。勘助は牛次郎に五十両を取り返すために殺していた。その時五十両は無かった。勘助がおことの父親だと知って、牛次郎は南吉を探していた。
 南吉と又蔵の隠れ場所を見付けた牛次郎は、市兵衛も一緒に殺すつもりで、南吉の所へ案内する。
 市兵衛は牛次郎の子分たちも捕まえる。牛次郎の義父殺しや、妻殺し、源五郎殺し、勘助殺し、陣屋の元締め・小曽木との癒着まで洗いざらい調が進んだ。
 南吉は五十両を尾張屋にお供えした。又蔵は市兵衛の持ってきた三十両を南吉に渡した。南吉は名主の借金を返し田畑を返して貰った。おことを迎えに行く。
 江戸へ帰る許可が出た。又蔵は市兵衛と一緒に江戸へ帰る。渋井が佐十郎の店に立ち寄った。市兵衛から飛脚の便りがあったことを聞く。市兵衛が心配ないとあったのなら大丈夫だと安心する。

2022年3月2日水曜日

風の市兵衛〈弐 〉㉚ 斬雪

風の市兵衛〈弐 〉㉚ 斬雪 辻堂魁

 跡継問題に決着をみた越後津坂藩は、新たな江戸家老・戸田浅右衛門のもと財政再建に心血を注いでいた。

 戸田浅右衛門は江戸に来て、半年も前に、幼馴染の勘定衆・田津民部が百五十両を着服し逐電したことになっていることを知り、唐木市兵衛に探索を依頼する。
 市兵衛は場末の娼婦から、民部が品川の廻漕業者・直乗船頭・笠屋柳太左衛門を訪ねると言ったことを聞いた。
 市兵衛の調べた結果、民部は何年も沢手米など出ていないにもかかわらず、勘定帖には毎年五分から一割近い沢手米が出、代米が出ていること。蔵米の二千俵ほどを若狭で降ろし、大津市場で売り手形で江戸に運ばれていることになっているが、江戸屋敷の勘定方にそんな入金はないことを知った。ようだ。
 それから民部は、本所蔵屋敷を訪れたようだがその後足取りが消えた。五月だった。

 定町廻りの渋井は、唐桟の財布から三ヶ月前・八月に扇橋で見付かった腐乱した斬殺された死体について調べていた。唐桟の財布は、津坂藩の蔵屋敷で殺された亡骸の始末を頼まれた時に死体の懐から抜かれたものだった。その遺体が扇橋の遺体と結び付き、市兵衛の話と結びつき田津民部と結びついた。北町奉行・榊原主計頭から大目付を通して津坂藩留守居役に問い合わされたが、そんな事件も災難も一切無いという返事だった。
 
 市兵衛は、調べたことを戸田に伝えた。民部が調べたこと。民部は五月に殺されたこと。
翌日早朝、戸田は御成書院に集まっている志方、加藤、羽崎他十三名を捕縛に行く。勘定所で何が行われていたか、田津はどうなったかを順に解き、十三人を納得させる。志方は悪あがきし、殺される。二人は捕縛される。
 市兵衛は、早朝、津坂屋五十右衛門に呼ばれ蔵屋敷に行った。市兵衛を殺しに四人の浪人が来る。市兵衛は倒す。五十右衛門も津坂藩に捕まる。津坂屋は五十右衛門の子供が親類の後見を得、米問屋を継ぎ津坂藩の蔵元を続ける。
 

 

 


2021年11月21日日曜日

落暉に燃ゆる 大岡裁き再吟味

落暉に燃ゆる 大岡裁き再吟味 辻堂魁

 大岡忠相は還暦を迎え、江戸町奉行から寺社奉行に転出させられていた。なぜか突然の気鬱に襲われた忠相に町奉行時代のある事件への疑念が芽生えた。「私の裁きは本当に正しかったか?」鷹狩りで出会った江刺・古風十一を使い真相の究明を始める。

 五年前の米問屋高間屋の打ち壊し騒動の後、番頭が殴り殺されているのが見付かった。一ヶ月後、指物職人の与佐が殺しているのを見たと辻番の三人の番人が訴え出た。与佐が捕まり、拷問に掛けられ死罪になった事件だった。

 三人の番人の行方は判らない。捕まえた同心・前波甚之助の行方もわからなかった。

 十一の調べで三人の辻番が番頭を殺し、同心は金を掴まされたと判った。前波は自死した。全てが判ったところで今更何も出来ない。三人をどうにも出来なかったが、酒亭の五平は博打にのめり込み一年も経たないうちに借金が膨らみ酒亭を失った。道三郎は水茶屋の客ともめ刺された。表火之番衆・仲間広之進こと広助は何者かに惨殺された。誰かと口論になり斬られたと見なされた。

2021年10月6日水曜日

風の市兵衛㉙ 寒月に立つ

風の市兵衛㉙ 寒月に立つ 辻堂魁 

 公儀十人目付筆頭・片岡信正の命で越後津坂藩内定の最中、返弥陀丿介が瀕死の重傷を負った。信正は、譜代ながら跡継騒動を抱え、陰に御用商人の不審な噂が絶えない津坂藩の探索の続きを唐木市兵衛に託す。

 津坂藩の江戸家老・聖願寺豊岳は藩御用商人と組み藩政を握っていた。津坂湊の香住屋と長浜湊の武井が手を組んでいた。長浜には朱雀家の采地があり津坂藩藩主鴇江伯耆守憲実の正妻・蘭の方は朱雀家から来ていた。十年前、朱雀家の遠縁から鴇江家に婿養子に入りお世継ぎに決まっていた。お世継ぎの松之丞が錯乱状態になり暴行し、家臣に斬られたことにより跡継ぎ問題が起こった。聖願寺派は朱雀家から養子を得ようとする。十年前、側室の阿木の方と生まれたばかりの若君を殺されると言う事件があった。御年寄役・戸田浅右衛門は助かった若君を死んだものとして真野分蔵夫婦に託し江戸へ逃がした。その若君を呼び戻そうとした。聖願寺が使っている影の目付・丹波一味が動き、若君を探し出し殺そうとしていた。

 市兵衛は若君を探しだし、襲ってきた丹波を倒す。世継ぎ鴇江憲実が正式に幕府に届けが出された。

 将軍が片岡信正の弟・唐木市兵衛の存在を知った。市兵衛は十俵の扶持を貰うことになった。旗本五千石広川家の養子縁組みの見合い話が進んでいる。

2021年4月7日水曜日

風の市兵衛(弐) 乱れ雲

 風の市兵衛(弐)乱れ雲      辻堂魁

 江戸を流行り風邪が襲った。

 市兵衛は金貸しをしている旗本の当主に成り代わり借金取りに行く。

2020年12月3日木曜日

風の市兵衛 弐㉗ 残照の剣

風の市兵衛 弐㉗ 残照の剣 辻堂魁

 唐木市兵衛は、大店両替商「近江屋」から、蟄居謹慎のお咎めを受けている川越藩勘定方の村山永正が改易になれば、永正と家族を江戸に連れてきて欲しいという依頼を受けた。

 近江屋の若主人と母親は二十五年前に川越藩で上意討ちになり改易になった堤連三郎の家族だった。上意討ちに合い、傷を負った連三郎を助け、家族を江戸の商家に預けたのも村山永正だった。連三郎は家族と一緒に暮らすこともなく人足として働き一生を終えた。家族は近江屋の妻・季枝となり若主人・隆明となった。連三郎の死を知らされた季枝は、村山の現状も知った。川越藩・松平大和守は、転封を希望していた。そのために家斉の息子を養子にしたいと借用金を増やしていた。村上はそんな藩主に意見を言い、不興を買い蟄居閉門となっていた。

季枝は昔の恩を返すべく市兵衛に頼んだ。

市兵衛と宰領屋の矢籐太が川越に行く。娘・早菜と話しをする。謹慎が解けた村山は城で上意討ちに合う。大怪我を負って帰った永正は、得度を受け亡くなる。早菜を連れ江戸へ帰る。

追う必要はないという藩の命令に従わない横目たちが立ち塞がる。堤連三郎を上意討ちしようとした菅留吉等だった。市兵衛が倒し、江戸へ行く。

 北町奉行所定町廻りの渋井鬼三次は、息子・良一郎が五才の時、離婚し良一郎は母親・藤が引き取った。藤は良一郎が八才の時、老舗扇子問屋伊藤屋に再縁した。良一郎は伊藤屋の跡取りと決まっていたが、良一郎は渋井の跡取りになりたいと言い始めた。渋井は伊藤屋の文八郎に相談する。文八郎は夏が終わるまでの猶予を願う。

2020年8月9日日曜日

黙(しじま)別所龍玄シリーズ

黙(しじま)別所龍玄シリーズ 辻堂魁
 妻恋坂 龍玄七才の時、父・勝吉と「おなつの店」へ行った。龍玄は四才の十之助と遊んだ十六年後、出家した慈栄の首を刎ねた。慈栄は十之助だった。龍玄はなつに会いに行った。
 破門 龍玄は大沢道場にもうすぐ十才で入門。十二才、昌平黌に通う。十三才、元服。
 十四才の時、十九才の旗本の息子たちに嘲りからかいの稽古試合を強要され、相手に頭を割る怪我をさせる。旗本は龍玄が卑怯で愚劣な振る舞いで息子に怪我を負わしたと言う。証明のため、新番衆の使い手と試合することを求める。龍玄を痛めつけたかった。龍玄は平然としたかまえで打ち負かした。
 十六才、めったに道場へ行かなくなった。
 十八才、罪人の首打ち役の手代わり、勝吉の手代わり、試し斬り刀剣鑑定をした。
 十九才、切腹場の介添え役、介錯人をする。父親没
 二十才、百合を妻に娶る
 惣領除 龍玄は平井喜八に介錯を頼まれる。
平井喜八は嫡男・伝七郎が、同朋頭奥山春阿弥の娘・満代を手籠めにし身籠らせたことで切腹させられた。伝七郎の否認は無視された。その後、満代の相手が市村座の役者だと喜八の耳に入った。真意を確かめ伝七郎の満中陰の法要を終え、春阿弥を討った。屋敷に帰り、龍玄の介錯により切腹。妻・文乃は喜八の書状と喜八病死の届けを出す。
 喜八病死。二男・和之介が平井家を継ぎ出仕が決まる。
 春阿弥の嫡男が同朋見習い、娘は落髪し出家が決まった。
 十両首 烏金の金貸しお庫が、龍玄を訪ねてくる。身体が大きいだけが取り柄の十二才年下の夫が牢にいる。たぶん打ち首になるだろうから龍玄に頼む。怖がりだから暴れると思うが、私がさよならと言っていたと伝えて後のことは任せてと言って大人しくさせて楽に逝かせてやってほしいと願った。
 夫・郡ちゃんは元侍・竹下郡次郎。郡ちゃんは龍玄から庫の言葉を聞き、お庫さあーんとよんで首を刎ねられ死んだ。庫は大枚を叩いて郡ちゃんの首を貰い、弔った。どちらが先に死んでもさよならを言って弔う約束だったと言う。

2020年3月7日土曜日

風の市兵衛(弐) 希みの文

風の市兵衛(弐) 希みの文 辻堂魁
 小春を亡き姉の親友・茂が訪れる。市兵衛に辻斬りに遭い、生死の境をさ迷う幼馴染み・橘の犯人探しを願う。
 犯人は町奉行の用人の部屋住みの息子だという。嘘を言う息子と息子の取り巻きのことを父親の用人に話す。犯人のことをはっきりさせるよりも、犯人からの謝罪と償いを求めた。父親は金銭により償い、苦しめた詫びとした。息子本人は納得せず、市兵衛を狙う。取り巻きは富平と良一郎にやられ、息子は市兵衛に髷を切られる。父親は市兵衛に謝り25両を持ってきた。市兵衛は受け取り、茂に渡す。
 小春、市兵衛、良一郎、富平は大阪を出る。
 土山の宿で近江の保科柳丈の誘いを受ける。野呂川伯丈の兄だ。柳丈の変わりにやってきた室生斎士郎に果し状を受け取り倒していた。保科柳丈を倒した時、室生斎士郎の妻が他の者を制し、争いを止めさせ市兵衛にこのまま帰るよう言った。

2019年10月3日木曜日

風の市兵衛(弐)㉕ 天満橋まで

風の市兵衛(弐)㉕ 天満橋まで 辻堂魁
 小春と良一郎を探し出し、小春が三才の時、父母を殺した押し込みの犯人・両替商堀井の主人・千左衛門兄弟への恨みも晴らし、江戸へ帰ろうとしていた。
 小春が同じ長屋で仕立てを習っていた恒の息子・豊一が殺される。豊一は蔵屋敷蔵元大串屋の手代だった。島崎藩蔵屋敷で殺された。島崎藩の空米切手にまつわる不正の子細を記した帳面を母の長屋に残していた。帳面を欲しがった岡っ引きは小春と恒を勾引かし市兵衛に帳面との交換を持ちかける。岡っ引きは勾引かし犯人として捕まり、帳面を奉行所に提出したことで関係者は捕まる。

2019年4月13日土曜日

介錯人

介錯人 辻堂魁
 静枝47才 御徒町の徒衆、三番勤め職禄七十俵竹内家から24才で首討役・刀剣鑑定をする別所家へ嫁いだ。26才で龍玄を産む。小禄の武家相手に金貸しをしている。龍玄5才之時、地面の沽券を手に入れ妻恋から無縁坂に移る。
 玉16才 住み込み
 竹内好太郎51才 静枝の兄、姉、水江
 杏子1才 龍玄の娘
 百合 龍玄より五才年上の妻。旗本・丸山家の娘。龍玄の一年だけの幼馴染み。前夫には嫁ぐ前から女がいた。嫁いでからも付き合いが続き離縁した。龍玄から申し込まれ身分違いで反対されたが百合は嫁いだ。
 別所勝吉 27才で静枝を妻にする。龍玄の父親。介錯人を名乗る。龍玄19才の年、47才没。
 弥五郎 龍玄の祖父。元摂津高槻藩永井家家臣・別所一門。18才で江戸に出、首打役をする。龍玄5才の年、55才没
 龍玄22才 18才で首打役を始め、19才で介錯をする。
 切腹 私塾を開く、岩本錬三郎43の介錯を頼まれる。元出羽新野領六万八千石の坂本家勘定衆。十年前、小作農民のことを考えた入会地の新田開発について上申書を提出した事によって、商人の娘の奥方の不快の念から領国から追い出された。村名主の援助で江戸で私塾を開く。坂上家の錬三郎の信奉者と政を操る豪商と商人仲間と対立が深まり錬三郎に切腹を申し付けられた。龍玄の介錯により、完全な切腹を執り行い、弔われた。二十日後、錬三郎の家で下働きをし、錬三郎に小作の内情を話した娘・里津が、錬三郎を支援した村名主の嫁として、村名主の娘として育った芙を連れて墓にお参りに来た。
 密夫の首 寛政元年 九月 杏子が歩き始める
龍玄夫婦と杏子・静枝と玉と根津権現へ行き、玉は幼馴染みの姉さん・加江と会う。加江は味噌醤油油問屋の主人の妾のような立場らしい。龍玄は、尾張家松姫の輿入れ道具の小さ刀のお試し御用の依頼がきた。お試し御用に使われたのは姦通の罪で捕らえられた歳が若い親孝行で働き者の畳職人・明次だった。明次は加江に誘い込まれ事に及んだが、主人に見つかり大騒ぎになり、主人が包丁を持ち出し主人が怪我をした。加江は無理強いされたと言い、主人は私を殺そうとしたと言う。同心・本条は納めるために捕まえた。詮議をすれば情状されると思っていた。龍玄は明次の首を討ち、試し斬りした。本条から話を聞いていた龍玄は畳屋に弔う気持ちを届けた。数日後、静枝と玉は加江に会った。主人が変わっていた。
 捨子貰い 倉太郎は妹・陸19才と陸の息子・三月の駒吉を使って捨子貰いをした。自分の縄張りでされたと十五郎は縄張り荒しとお上の大罪を犯したと責めた。縄張り欲しさに庄治を殺した十五郎は倉太郎に自分の代わりに自首することを頼む。倉太郎は罪を被る代わりに陸と駒吉に十両を付け解き放して貰いたいと約束をした。打ち首になる前にこの約束事を倉太郎は張り番に伝えていた。五ヶ月も過ぎてから張り番は倉太郎の妹と子供が十五郎の女の下で遊女として働かされ、虐げられた生活をしている事を知る。張り番は、倉太郎が、龍玄に十五郎に約束を守らせて欲しいと言っていたことを知らせる。四才の龍玄と倉太郎は、倉太郎の頼みごとをきくと約束していた。龍玄は二人を助け出し、十五郎等を斬る。犯人は八州のどこかに逃げているだろうということになった。
 蔵の中 龍玄は大沢道場の先輩門弟・朝比山万之助自身の要望で介錯をすることになった。朝比山家は家禄千三百石の旗本で将軍の御小姓を努める家だった。百助の通夜、相続人・万之助は家老、親戚の男、若党、妻、母に斬り付け殺傷させた。万之助は幼いころより物置のような蔵の天井で人々の内緒話、内諸事を見聞きしてきた。自分の母親のことも。祖父の後妻が遊女だったり、本当の母親は遊女の娘だったこととか。万之助は龍玄に試合を挑むが、龍玄は切腹の介錯をした。不義密通による女敵うちとされ朝比山家は続く

2019年2月23日土曜日

刃鉄の人③ あらくれ

刃鉄の人③ あらくれ 辻堂魁
 刀鍛冶・一戸前国包の鍛冶場に芝神明で興行している役者・巨漢の熊太夫が国包の銘の小さ刀を持って訪ねてくる。小さ刀と同じ設えの大刀を創ることとこの刀を買った者を教えて欲しいという注文だった。国包は武蔵国包と銘を彫り、国包と入れたことは無かった。
 刀商・備後屋で訪ねる。二十五年前、師匠の数打物と一緒に売り払う中の国包の稽古刀を、備前屋が出来栄えの良さに無銘は惜しいと思い国包と銘を入れ売っていた。二十五年前は十六才だった小寺基之が買ったものだった。派手な設えは小寺の希望だった。今は書院番頭家禄四千三百石の旗本だった。小さ刀はあらくれだった頃懇ろになった桜大夫が、身重になったにも関わらず別れなければならないため渡したものだった。大刀は拵えを替え今も小寺が挿していた。十年前、桜太夫の最期の時、熊太夫に熊太夫の父の形見と告げたのだった。
 熊大夫は小寺に会いに行く。熊太夫一座の小屋で対面し、小寺は二人の出会いを、熊太夫は来し方を話す。基之は父であることをほとんど認めるが、用人・橋川周右衛門は基之が認める事を許さない。たぶらかした。の一言で暴れ出した熊大夫を止められない。国包は熊大夫を斬りたくはないが止める事は出来ない。最後には基之の袈裟懸と国包の突きで熊大夫は動けなくなった。父に会いたかっただけなのにと言い残して死ぬ。
 小寺の計らいで熊太夫の骨は俗名・小寺熊大夫と名乗り歌舞伎役者市川団十郎と同じ寺に葬られた。国包の小さ刀と武蔵国包の大刀は小寺家に献上された。
 熊大夫一座の者は江戸を離れた。

2018年8月18日土曜日

風の市兵衛①②③ 

風の市兵衛①②③ 
 雷神 帰り船 2014年4月参照
 テレビドラマ化によりもう一度

2018年6月21日木曜日

風邪の市兵衛(弐) 修羅の契り

風の市兵衛(弐)㉒ 修羅の契り 辻堂魁
 唐木市兵衛は、信夫平八の子・小弥太と織江と暮らすために引っ越した。宰領屋矢藤太の紹介で千二百石の旗本・大久保東馬の渡用人として行くが、相談役・大木駒五郎に支配され、何も出来ないまま辞めさせられる。
 小弥太と織江が勾引かされる。平八を殺し屋として使っていた多見蔵だった。多見蔵は信夫平八と修羅の契りを結んだと言う。平八が斬られた仇を討たねばと思った。多見蔵は斬られた。
 小弥太と織江は二人の母親・由依の両親に育てられることになった。北最上の金木家に行った。
 市兵衛は青物役所に務めることになった。

2018年4月1日日曜日

風の市兵衛(弐) 暁天の志

風の市兵衛(弐)㉑ 暁天の志 辻堂魁
 唐木市兵衛は、四十才になった。宰領屋の矢藤太の仲介で青物御納屋役所で働いている。
 兄・公儀目付け家禄千五百石・片岡信正55の妻・佐波に去年一子信之助が生まれた。
 小人目付け・返弥陀之介の妻・青がこの春の末に女児を産んだ。
 市兵衛が定客だった一膳飯屋『喜楽亭』のおやじが、川開き後突然亡くなり、喜楽亭は閉じた。
 犬の居候は渋井が引き取った。渋井の別れた妻・藤との子・良一郎17才は家業の扇子問屋の修行に身を入れず、岡っ引き・文六に付いていた。
 市兵衛は、父親・信夫平八と子ども二人・兄が小弥太6、妹が織江4の浪人家族と知り合う。
 夏の終わり、市兵衛の所に吉野金峯山寺蔵王堂の配下・大峰奥駈の山伏・猿浄が来る。市兵衛の母・市枝の母・唐木忠左衛門の妻・梢花は吉野の惣年寄役地下老分・村尾家の女だった。猿浄は吉野に来いと伝えるという命令を果たした。母のことを何も知らない市兵衛は吉野に行く。
 秋七月、市兵衛は吉野にいた。百二十才になる村尾家の大婆さまに、仏師・唐木忠左衛門28と村尾家の娘・梢花18が駆け落ちしたことを聞く。兄の話と照らし合わせる。忠左衛門は江戸に出て剣友・片岡賢斎の家の足軽になった。梢花は市枝を産み、22才で亡くなった。
大峰道で市兵衛は忠左衛門と話した。そのまま生きればよいといわれる。
 秋が深まった頃、江戸に帰った市兵衛は文吉親分を助けて、殺しを依頼され請負い人を殺害する組織潰す。殺しを請け負っていたのは信夫平八だった。猿浄も市兵衛に会ったあと殺されていた。市兵衛は平八を倒す。南町は元締め多見蔵を逃した。
 市兵衛は小弥太と織江と一緒に住むことにした。平八は通りで血を吐いて死んだことになっている。