2022年3月30日水曜日

江戸の雷神② 敵意

江戸の雷神② 敵意 鈴木英治

 伊香雷蔵は右肩が痛くなり、長崎での幼なじみ不二世と再会した。不二世は九綱拳という唐人拳法の道場の同門だった。薬種問屋日善屋の娘・不二世は富士診庵という診療所の長飛と名乗る医者になって現れた。

 北町奉行・名古屋冬兵衛が心臓を刳り貫いた遺体が見つかったことで相談に来る。調べ始める。匠小僧・玄慈、公事宿・武田屋の主・矢之助を頼る。

 安斎六右衛門が用心棒をしていた三笠屋が病死した。長屋で柳生新陰流のすご腕の刺客に襲われ、長屋を出、雷蔵を頼った。

 仁旺教の宗祖・多顕尼が、自分の病を治すために人間の心臓を取り出してした。多顕尼の弟は賭場の用心棒をしていて雷蔵に斬られていた。多顕尼は雷蔵を敵と思い、刺客を送っていた。多顕尼は老中・松平伊豆守と繋がっていた。用人・若林をつけ多顕尼の住処を見つける。多顕尼は血を吐き死んだ。

 若林は、六右衛門を襲った刺客だった。松平伊豆守は六右衛門が斬った殿の実の兄だった。

 

2022年3月28日月曜日

警視庁捜査二課・郷間彩香 特命指揮官

警視庁捜査二課・郷間彩香 特命指揮官 梶永正史

 渋谷の銀行で立てこもり事件が発生した。捜査二課主任代理、郷間彩香警部補が呼ばれ現場の指揮および交渉役を任命するよう名指しされた。

 指揮車にはSITの特殊犯捜査第一係の後藤警部がいた。警察庁長官の要請で警察庁の吉田警視長がいた。SATの如月巡査部長・狙撃手を連れていた。 
 野呂刑事部長は、郷間彩香のためバックアップしたかったが、警察庁へ呼び出され、警察庁次官・百瀬と官房長・佐伯と一緒にいた。
 この事案はただの立てこもり事件ではないと思えた。

 犯人からの要求はない。応答もない。犯人の目的も分からない。人質は客四人、行員六人、犯人は三人。犯人・國井から電話があった。犯行直前、長官と次長宛に犯行予告メールがあった。國井は元二課の刑事だった。國井は捜査を上層部の圧力に妨害され辞職に追い込まれた。

 銀行から爆発音がした後、人質が八人解放された。
 野呂は携帯で郷間と連絡し、携帯を通話のままトイレに行った。百瀬と佐伯の話が聞こえた。射殺してでも流出を止めると言う。モノの確保は吉田にやらせましょうと言っている。

 郷間は國井と話をした。
 國井は人質の丸山の携帯を110番に通話にし、丸山に話しかける。敗戦を予期し私服を肥やした陸軍士官が二人いた。戦後資産を増やし、一人は政治家になり、一人は銀行を設立した。主要な官庁に息のかかった者を送り込み陰で権力を掌握しようとした。真面目に仕事をし、人脈を作り出世する。法案を出し決定する。最終的に二人の利益につながる。警察組織にも紛れ込む。救民党の伊藤、新世界銀行の寺内、寺内の息子・現会長を、父親の野望を達成するために育てた。その時、取り巻きとして育てられたのが警察庁の百瀬と佐伯だ。
 指揮車内で、今聞いたことは機密扱いにすると郷間は言った。

 吉田が食料と水を差し入れる。國井が出てきた。國井は撃たれた。吉田が國井の胸を抑え、救急車に乗る。吉田も乗った。吉田から連絡があり國井は心肺停止だった。
 二人の人質は助けられた。犯人はいなかった。一ヶ所破壊されたが元々故障で人に貸していなかったところだった。犯人の目的が分からない。國井は、郷間に「私を追え」と丸山に伝言していた。

 國井はどこにも運ばれていなかった。吉田にも連絡が取れない。逃げた犯人は救急隊員になっていた。郷間は長官に呼び出される。手を引けと言われる。吉田の捜査から手を引かないと言い切る。如月の後をつける。

 如月は羽田空港のホテルに行った。吉田がいた。部屋には二人の犯人と最後まで残っていた奥様風の人質だった。そして國井がいた。
 新世界銀行を追っていた國井と、救民党の伊藤を追っていた吉田。朝鮮王朝の王のもつ国璽が伊藤と寺内に奪われていた。それがあの銀行にあった。取り返した。銀行にあった国璽と手帳を奪っていた。昔彩香の父も関わっていた。
 百瀬と佐伯は更迭された。野呂は次長になった。

2022年3月26日土曜日

新・酔いどれ小籐次〈二十一〉 雪見酒 

新・酔いどれ小籐次〈二十一〉 雪見酒 佐伯泰英

 文政九年(1826年)暮れ、久慈屋の店先で研ぎをする赤目駿太郎の持つ孫六兼元を狙って浪人が来る。相良 大八は大雪のため久慈屋に泊まった駿太郎の持つ孫六兼元を狙って、夜久慈屋に押し込む。駿太郎は立合いに勝つ。相良は井上真改を持っていた。相良の手形は尼崎藩武具方野尻誠三郎となっていた。
 尼崎藩では何年も前に真改を持ち出されていた。届けが出され尼崎藩の物となれば返却する。南町奉行筒井政憲が預かっている。
 相良大八を調べるうちに、出羽米沢新田藩から井上真改を騙しとっていたということがわかった。偽物とすり替えられた。用人・三方原次郎左衛門は探していた。相良と付き合いのある刀剣商・候やで、上杉真改を見つける。
 駿太郎と淵野辺与左衛門と真剣勝負をした。真改を手に入れる。筒井紀伊守政憲に伴われ定町廻り同心近藤精兵衛は、米沢新田藩上杉家と尼崎藩松平家に真改を返却に行った。
 具足開きの日、駿太郎は、14才で元服をした。鳥帽子親は、りょうの父・御歌学者北村舜藍が務めた。赤目駿太郎平次となった。桃井道場、久慈屋に披露した。

 小籐次と駿太郎は、森藩八代目藩主・久留島通嘉に呼ばれて会いに行った。四月に豊後国玖珠郡の森に帰国するとき、通嘉と同道することになった。

2022年3月24日木曜日

鬼役〈壱〉

 鬼役〈壱〉 坂岡真

 二度目
 矢背蔵人介が矢背家に入る前の、養父・信頼が矢背家に入る前を読んで鬼役の壱をよんでみたくなった。
 五から少し変わるらしい。前に書いた文を読む。壱から九
 

2013年05月03日(金)
鬼役壱 (春の修羅) 坂岡真
 矢背蔵人介 将軍の毒味役御膳奉行を18年 42才
 養父時代から暗殺役 
 江戸城金蔵荒らし、大奥へのアヘン持ち込み 盗賊隼小僧、正義だと思っていた依頼者に裏切らる。
 暗殺する

 
依頼者・若年寄・長久保加賀守
 養父が清廉潔白と言っていた長久保加賀守が黒幕だった。信頼は長久保の正体を知ったことで殺されていた。蔵人介を助けている矢背の家人・串部六郎太は元々は長久保家に仕えていた。
 矢背家は、蔵人介が六年前隣家の綾辻幸恵と婚姻したことで、徒目付けの綾辻の父親から屋敷替えを言われ、浄瑠璃坂を上りきった御納戸町の望月家の土地二百坪を借り屋敷を建てた。望月左門は信頼と志乃を争ったという。五才の鐵太郎がいる。



2022年3月23日水曜日

PPバンドで作るプラかごとバック

PPバンドで作るかわいいプラかごとバッグ 古木明美 

2022年3月21日月曜日

組ひも

組ひも 多田牧子
 楽しい&美しい いちばんやさしい

 

2022年3月19日土曜日

あなたと式神お育ています

 あなたと式神お育ています。 仲町六絵
 〜京都西陣かんざし六花〜
 
 さくら色、さんご色 清明様がご先祖様だよ。といわれて十九年。大学に入学した桔梗家の総領・桔梗晴人、祖父の言いつけで真如堂に挨拶に行く。疎水を泳いでいる鯉に人間の形をしたものがしがみついている。真言を唱える。ありがとうと言い人の形をしたものが飛び立った。安倍の晴明から見てくるように頼まれた茜が晴人に声を掛ける。式神を持たないか?西陣で待っていると誘われる。西陣のかんざし六花に行く。晴人が地蔵堂に手を合わせると地蔵様がきらきら喜びなさると言いながら白い狐がついてくる。観世稲荷の御使い水月だった。もう一人、黒い着物の常照皇寺の九重桜の精だった。振り袖と呼んでから毎年見に行っていたのに今年は行っていない。次の休みに行くよというと帰って行った。
 薄紅色の珊瑚がかんざしから深い紫色の組紐のブレスレットに変わっていた。晴人の式神を作る、苗床・依り代だそうだ。左手に付ける。

 イワナガ様と少年 晴人の一人暮らしの部屋にハル坊と言いながら水月がついてくる。お目付け役だという。晴人は今日のこと、式神のことを祖父に話す。祖父の所に茜がいた。晴明が弱くなった結界を張り直すために地鎮祭をしようとしているそのさきがけ祭に弟子が必要だという話しをビデオ通話で話した。
 桔梗家から南天家に婿入りした、祖父の弟の息子・昌和おじさんが二十五年前、大好きな先生が病気で学校を辞めると聞き、神様に治してもらうから大丈夫と言った。神様が怒り、桔梗家、南天家、柊家、傍流三家のこどもたちは二十才前後になるまで神仏の声や姿を捕らえられないよう呪いをかけた。昌和はイワナガ様に謝りに行く。三家の子供たちが神の威を勝手に借りて発言せぬようにしっかり教育することを約束させた。
 晴人は式神に「さんご」名付けた。イワナガ様もさんごやと呼ぶ。みんながおまえが生まれるのを待っているよという呼びかけに「みんな」と答えた。イワナガ様は昌和も式神を持てと言ってくれた。

 木ぼっこと少女 晴人は元は唐破風屋根の銭湯だったカフェで、歌い踊っているこけしを見た。晴明神社でこけしを探している少女にあった。少女は星乃、土湯温泉からきていた。木ぼっこを捜している。晴人がカフェで見たこけしだ。閉店間際のカフェで木ぼっこに話しかけ星乃の元に連れて行った。連絡を受けた両親が迎えに来て帰った。

 神様との再開 茜の店で、晴人のさんごが現れた。さんごは水月とそっくりだった。白い尻尾の先、耳の先、前掛けが薄紅色だった。目は青。安倍晴明にも会った。清明公と呼ばず、晴明さんと呼ぶようにする。
 昌和も訪れ、式神の依り代を作る。薬玉の花かんざしにした。昌和は、角の生えた赤い仮面を着けた神様に「神の呪いの匂いがする。土の気を持つ者よ、京を守れ」と言われた。その神様を知りたいというと、晴明は昌和が式神を生み出した時分かるだろうと言った。
 昌和は式神に楽土と名付けた。京の地と京北を守りたかった。楽土が現れた。赤べこならぬ白べこだった。右手に八坂神社の神紋が現れ、牛頭天王が現れた。

 雪国の陰陽師と茶室の神 六花で晴人がさんごに餅を食べさせていると昌和が来る。楽土を呼ぶ。
 柊那月が会津からやって来る。那月の依り代を選ぶ。月と兎の髪飾り。穂波と名付ける。小さな茶室神が現れる。

茶室神と茶人狐 からくさ図書館に行き、会津漆器を手に取り茶室神は少しおおきくなった。夜桜の棗の写を見、元気になり大きくなる。猫サイズになった。
 吉報庵で宗旦狐に会い、前の大きさに戻った。

2022年3月17日木曜日

向島・箱屋の新吉 新章〈二〉

向島・箱屋の新吉 新章〈二〉 忍び寄る危機 小杉健治

 桔梗屋の芸者・葉の世話をする箱屋の新吉は、骨董屋の主人を襲って来た賊から守った。守ったつもりだったが、新吉は襲われ続ける。自分が襲われたのではないかと思い始める。

 押し込みや辻斬りが頻繁に現れ、定町廻り同心・梶井扇太郎は忙しい。新吉に客の中に不審な者がいないか聞き込みにくる。

 襲われたと思った骨董屋・松本屋に話しを聞き、調べる。新吉は梶井にも調べてもらう。また、先日自分が関係した事件のことを聞く。佐渡奉行の大畑が勘定奉行の座を狙って笠木を殺したと思われたが、大畑は笠木の後の勘定奉行になることが決まっていた。笠木が死んだことで空くはずだった役は何だったのか。町奉行ではないか。辻強盗や残忍な押し込みは町奉行の解任させるためではないか。

 辻斬りや押し込みが無くなったは、自分を襲って来た者が怪我をしたからだと新吉は言う。襲われるたびに相手の腕が上がっていた。二人が働けないので押し込みも辻強盗も中断している。

 次期町奉行は笠木と八巻があがっていた。笠木が亡くなり奉行は続行した。松本屋は定九郎一味の盗人宿だった。松本屋の主人は八巻の後押しで主人になった。主人の叔父・孫兵衛は定九郎で、一歩遅く、殺されていた。黒幕に会ったのは定九郎だけで、松本屋の現主人は黒幕のことは知らなかった。 押し込みと辻強盗は解決した。

2022年3月16日水曜日

隠密船頭〈八〉 金蔵破り

隠密船頭〈八〉 金蔵破り 稲葉稔 

 江戸が野分の被害を蒙る。沢村伝次郎は江戸湊で見付かった男の死体を調べる。持ち主不明の船が見付かる。蝋燭問屋が押し込みに襲われている。関連を調べる。

 深川中島町の自身番に詰めている新太は、野分の翌朝、船と死体と金箱を見付けた。引き上げられたのは金箱だけ、死体と船は流された。自身番の詰めていた三人は、金箱を隠した。
 自身番に船と遺体の捜査に現れたのは、伝次郎を助けている粂吉。米倉清三郎という男だった。伝次郎たちも、清三郎という男たちが船を探していることを知った。
 自身番の三人は金箱を移動させる。清三郎たちが追う。墓で二人が殺されていた。新太がいなくなった。新太が二人を殺して金箱を奪ったように見えた。新太と清三郎の関係を調べる。
 清三郎の家から金箱が見付かった。家を見張る。
 新太が見付かった。金箱を埋めるために墓に行った時、清三郎たちが現れ、新太はすぐ逃げた。後がどうなったか全く分からないと言った。野分の朝、金箱を引き上げ中に四百三十両入っていたと言った。
 清三郎たちが家に帰ったところを捕まえた。清三郎たちは山城屋に入り錠前を破り金箱を盗んだ。金箱を船に積んだところで長五郎が裏切り船を漕いで逃げた。聞き廻った。番屋の三人の様子が変だった。三人を追いかけ金箱を取り戻したが、入っていたのは石だったという。
 伝次郎たちは入っていた金を捜す。自身番の金箱を隠していたところにあった。殺された年長の徳兵衛がやったことだった。金は山城屋に返された。

2022年3月15日火曜日

吉原裏同心㊱ 陰の人

 吉原裏同心㊱ 陰の人 佐伯泰英

 会所頭取り四郎兵衛が殺され、全てを乗っ取ろうと着々と勢力を固める一味。周到な計画に、残された面々は苦境に耐えるばかり。

 京で四郎兵衛の話しを聞いた神守幹次郎は、京から姿を消した。

 幹次郎は会所、石榴の家に姿を現さない。誰にも顔を見せることなく、三浦屋の四郎左衛門を助け、柳生新陰流の遣い手・板倉無向斎を斬り、丸裸の御側御用取り次ぎの朝日奈義稙と二人の女が、酒と阿片の刺激で絡みあって官能に狂っている姿で朝日奈と遣手の沙世を斬った。遊女は気絶していた。

 澄乃と新之助は惨劇そのまま、遊女を連れて行き、八丁堀の桑平に知らせた。南北両奉行が駆けつけ、調べた。九郎助稲荷から沙世の文箱が見付かった。
 公方方に朝日奈なる御側ご用取り次ぎは存在しない。吉原で死んだ人物は公儀とは無関係の輩ということになった。荒海金左衛門は公儀んぽお認めた妓楼を騙し取った罪で死罪、私財没収になった。

 幹次郎は東山から北山、西山とひたすら歩いて修業していたということにした。
 京の人々への別れの挨拶が始まった。
 三十石舟で大阪に出、札差伊勢亀の持ち船で江戸へ向かう。


2022年3月14日月曜日

浪人奉行十二ノ巻

 浪人奉行十二ノ巻 稲葉稔

 居酒屋の店主として生活する八雲兼四郎。雇い主・升屋九右衛門に頼まれ材木問屋岸本屋の長女・律を勾引かしから助ける。

 岸本屋は、五百両を要求されるが、見せ金で良いといった兼四郎の言葉を受け入れ三十両を手渡した。律を助けることが出来なかった。二度目の要求で五百両を渡す。官兵衛に船を流された犯人たちは動けなかった。兼四郎と官兵衛と定次が隠れ家を見付け、律を助ける。五百三十両も戻った。岸本屋が兼四郎に三十両出した。

 御家人・御徒組を含む浪人たちだった。

 兼四郎は居酒屋の主に戻った。

 

2022年3月13日日曜日

江戸は浅草〈4〉 冬青灯籠

江戸は浅草〈4〉 冬青灯籠 知野みさき

 冬青灯籠 身請けが決まった吉原の遊女・冬青は笛師・大介の幼馴染。調べると申し分のない嫁ぎ相手に安心する。冬青は嫁ぐ前に大介に会いたい。
 そんな時、身重の遊女・八重昌の足抜けが起こる。冬青は真一郎に無事に連れ戻すことを頼まれる。八重昌は宝生尼 に手引きされていた。八重昌は殺された。宝生尼は双子の弟・琴哉が殺したと話す。次の日、宝生尼は毒で殺された。琴哉は、宝生尼が毒饅頭で殺そうとしたところすり替えて自分が食べて死んだんだという。そしていつもみんなは姉の言うことを信じる。とも言う。琴哉は自分が殺したと自白し、死罪になった。
 冬青の願いを聞き、舟箪笥に冬青を入れ長屋に運んだ。おいて屋で一晩すごし帰った。女将も儀十郎も承知だった。真一郎と多香は大介の願いは、どこにいようと達者でいること。と伝える。

 座敷わらし 真一郎は松永屋に、家の中にいる座敷わらしか猿か確かめて、猿なら飼い主に返したいという。
 猿が見付かる。松永屋の後妻・芹の元夫・竹春の使っていた猿だった。竹春は嫉妬心が強く人を殺した。芹は満徳寺に逃げ込み離縁した。江戸に出て再婚し、竹春は芹を見付けた。芹は逃げた。松永屋の娘・登代が、言った通りだった。登代は座敷わらしが言ったと言う。
 松永屋の屋敷には、元座敷牢だった隠し部屋があった。地袋に今では隠し戸になっている通り抜けの出来る戸があった。出てきたのは子供だった。叔父だと言う男が子供を連れて行こうとするが、子供・悠太郎は、こいつは盗人だ。妹を殺した人殺しだと訴える。
 悠太郎は盗みを強要されていた。妹は亡くなり、長屋の床下に埋められていた。
 悠太郎は、芹が竹春に脅されているのを目撃した。登代に竹春の居場所を教えた。
 悠太郎の叔父夫婦は死罪になった。悠太郎は五十敲きになり、口入れ屋の奉公人になる。
 竹春は江戸追放になり、信濃に殺人のことを知らせる意向で今後死罪も有りうる。
 芹は松永屋に帰る。

 浅草勝吉伝 伊吹屋の彦太郎の弟・彦次郎が近江から江戸にやってきた。真一郎はゆっくりするという彦次郎の江戸の案内を頼まれた。錠前師の忠也から話を聞いている彦次郎は、鈴の胡弓、多香の楊弓、守藏の錠前、大介の笛、何でもしっていて要求した。
 彦次郎は同じ宿に泊まる、奈津に興味を持つ。真一郎は奈津のことを調べる。人気のある料理屋の女将だったが、夫が亡くなり、息子が亡くなり、嫁の代になり嫁の親兄弟が店に入り、乗っ取られる形で離れに追いやられていた。三百両を持ち出し、奈津を支えてくれていた昔からの奉公人に七十五両づつ分け両替商に託すつもりだった。
 奈津が病人でやくざに追われている・勝吉を助けた。勝吉は病気で長くはない。別れた女房と子供のため十両を手品を使って博打場から盗んだ。奈津のため彦太郎は廻船で江戸から勝吉を逃がす。いつまで生きられるか分からない。勝吉から預かった十両を上手くごまかし両替屋の為替を渡した。
 彦次郎は奈津を誘って近江に帰った。
 真一郎は多香にぞっこんだが、真剣に誘うと元忍びの多香は痛い目みるよという。
 戯作者・天音は勝吉伝を書くらしい。

 矢馳舟 刀匠の行平が、真一郎に会いに来た。刀を頼まれ出来た上がり持って来ると依頼主はもっと前に亡くなっていた。依頼主を探して欲しいというものだった。
 行平の刀を狙って偽物の依頼主が現れる。
 真一郎の友人・弓士・友部や浅木は旗本天野家に仕えている。辻斬りの事件で天野家から暇を出された長崎が、天野銀之丞を目の敵にする大沢家に仕官するため行平の刀を狙っていた。大沢は邪魔者を消し去ることが出来るなら喜んで迎えようと言った。
 行平に刀を頼んだのは天野家の用人・後藤だった。息子と娘を亡くした後藤は浅木に刀を授けたくなり頼んだ。病で倒れている間に約束の日が訪れてしまった。友部から行平の話を聞き、屋敷に行平を呼んだ。
 殿の楽しみのために、矢馳舟で真一郎と友部が勝負することになった。五射見事な引き分けだった。屋形舟に襲われる。矢と剣で取り押さえる。襲って来たのは長崎だったが、大沢は何も関係がないで通した。
 偽依頼主は行平を仇と狙う大橋だった。長崎と一緒にいたが死んだ。
 行平は、多香に一緒になるかと問いかけたが、多香は断る。真一郎が良いか。行平は王子に帰った。
 

2022年3月12日土曜日

動物はいつから眠るようになったのか?

 動物はいつから眠るようになったのか? 大島靖美

2022年3月10日木曜日

脳科学捜査官真田夏希⑩

脳科学捜査官真田夏希⑩ 鳴神響一 
 〜エピソード・ブラック〜

 十年前、警察庁の同期入庁八年目、平成二十二年十月十八日、警察庁刑事局捜査一課の課長補佐・上杉輝久と警察庁警備企画課総合情報分析室の課長補佐・織田信和と神奈川県刑事部捜査二課の管理官・五条香里奈は、香里奈の三十才の誕生日を横浜で祝った。帰り、香里奈は暴走してきた車に轢かれ亡くなっていた。

 現在、2020年、上杉は神奈川県刑事部根岸分室長だ。上杉は上司の不正を隠蔽した周囲に反発して神奈川県刑事部の管理官になったが、正義を押し通し上司に反発し続ける上杉は煙たがられ根岸分室を作って隔離された。
 織田は、警察庁警備局理事官になっている。
 二人は、自分の使えるものは何でも使い事件を調べ始める。

 事故を起こした荒木重之は事故数日後、首を括って自殺した。織田はかっての部下、公安第一課の長谷川に調べてもらう。
 運転免許証の本籍地は東京ディズニーランド。履歴書の専門学校、職歴の裏が取れない。

 二課で香里奈が追っていた事件を調べる。香里奈が残した「県内の罪のない子供たちのために頑張らなきゃ」の言葉を手掛かりに。
 香里奈の直属の上司だった・藤堂高彦・長官官房総務課秘書室長に話しを聞く。詐欺事件を追っていたことしか話されなかった。そして織田には手を引くようにと言った。判ったこと詐欺犯は大物だということ。

 長谷川が調べたこと。荒木の本籍は下北半島、高校まで実家。東北大学を卒業、二級建築士資格取得。高校生の時、父を亡くし、二年後母を亡くす。平成十八年五月二十八日から行方不明。背乗りに決定。
 上杉の頼んだ組織犯罪対策本部の堀秀幸警部補が調べてきた吉弘組と皆川組の話しを聞いた。むつに本部がある皆川組が荒木を殺し戸籍を持ってくるそれに吉弘組が荒木の戸籍を持った偽荒木を作った。上杉の根岸分署が銃撃された。犯人を捕まえ吉弘組へ行く。偽荒木の名前は臼杵、注文者は津田信倫とわかった。津田信倫の逮捕状を持って行った時、津田は死んでいた。
 津田の隠し通帳から見付かったのは国会議員・柴田勝範。十年前アルカリイオン水の精製水を全国の公立小中学校、特別支援学校に置こうとしていた。まず、神奈川の高校に置かれた。二年してカビが見付かり話しは頓挫した。教育庁関連の野村が贈収賄の疑いで捜査二課に相談に行っていた。彼は崖から滑落死していた。警察内部に内通者がいる。
 手詰まりになった二人は、夏希に相談する。

 関係者は死んでいる。何人かいる実行犯とその首謀者を追いつめたい。二人の願いを聞いた夏希は、ネットに犯罪事実を暴露し、関係者の名前を出し、発信者情報をさらして、自分が囮になるという方法を考える。小早川に相談する。
 カモメ★百合のアカウントを使って投稿した。すぐ、アカウントが乗っ取られた。情報は県警に意志ではないと情報を流した。
 
 憎むべき凶悪犯人へ
 五条香里奈女性警察官を交通事故に見せかけて殺し、実行犯の臼杵を自殺に見せかけ殺し、津田を自殺強要して殺したおまえ、地獄に底から訪ねて行く。首を洗って待っていろ。
  正義の使者X

  上杉は根岸分署で待つ。襲って来たのは暴対の阿部だった。そして命令したのは藤堂だった。十年前、捜査が進んでいれば、たくさんの人が贈収賄で捕まった。議員の柴田、教育庁の職員、県警からも藤堂も。藤堂は柴田の引きで出世した。詐欺罪でも捕まっただろう。
 そのために香里奈は殺された。臼杵を殺したのは阿部だった。
 中央合同庁舎第二号館の十九階の小会議室の前で、上杉と織田は藤堂が出てくるのを待っていた。上杉は逮捕状を出し、堀が手錠を掛けた。出てきた鍋島総括審議官に織田は丁寧に説明する。藤堂は全ての指示は柴田議員の言いなりになったおまえから出ていたんだ。一人逃げられると思うなと毒づいた。鍋島は失神。藤堂は上杉が連れて行く。織田は鍋島について行った。

 夏希が親戚の結婚式で帰省することを知った二人は、香里奈の墓参に行くと言い出した。上杉と織田は香里奈に、藤堂と鍋島が法の裁きを受けることになったことを報告した。


先に⑪を読んでから、⑨と⑩を読んだ。⑩でこんなことがあったのに⑪があんなのっておかしい。私の読み零しか?もう一度読まなきゃ。
      
 

 
 

2022年3月9日水曜日

脳科学捜査官真田夏希⑨

 脳科学捜査官真田夏希⑨ 鳴神響一
 〜ストレンジ・ピンク〜

 神奈川県茅ヶ崎署管内で爆破事件が発生。人的被害はなかった。直後、容疑者と思われる人物からSNSに犯行声明が出された。心理職特別捜査官・真田夏希は捜査本部に招集され、ネット上で容疑者との接触を開始した。

 捜査一課情報係・別所美夕が夏希の助手に付いた。
 第二、第三の爆発が起こる。誰もいない畑地等で小さな爆発なので人的被害はない。夏希は犯人の意図が読めない。犯人は社会正義を実行するという。
 夏希は朧げながら三ヶ所の共通点を見付ける。新駅の開設予定地周辺の土地だった。東海道新幹線、相模鉄道いずみ野線、上瀬谷ライン等。織田理事官は口外しないように口止めした。
 ハッピーベリーのアカウント用いて犯行メッセージを投稿していたのは村井貞夫と判明した。村井貞夫捜しが始まる。村井貞夫は夏希が導き出した犯人像とは違った。村井貞夫は行方不明だ。
 
 内部監査の用意のため美夕は捜査本部を離れる。加藤は村井貞夫の実家に行く。夏希を誘う。アリシアも行くことを聞き、夏希も行く。東丹沢の入り口、廃村になっていた。村井がドヤに残したタオルの匂いから村井の実家を見付け、中に白骨化した遺体を見付けた。村井は死んでいた。

 ハッピーベリーは村井ではなかった。第四の犯行も起こった。不動産開発に影響を及ぼすようになっていた。夏希は犯人の目的が不動産開発に関わる人々にダメージを与えたいこと、営利目的の不動産開発に対する怨恨による犯行だと言った。
 村井の知りあいでアパート経営詐欺で訴え最後には自殺した親子・赤川元文がいた事がわかった。元文の息子・元哉・彫金家が警察に相談に行っていた。受け付けたのは別所美夕だった。夏希は思い出した。美夕の指輪を。葡萄のつるをかたどったピンクオパールの指輪。赤川元哉の手彫りだった。

 ピンクベリーからのこれが最後の警告だ、というメッセージが来た。真田と織田は不動産会社の社長宅へ急ぐ。大庭城趾公園で美夕が社長の首にナイフを突きつけていた。夏希の説得で美夕は投降した。織田が連れて行く。美夕は夏希に織田をいつまでもほっといちゃいけないとアドバイス。織田さんは鈍感だからという。

 織田と上杉は、背乗りと警察内部の者の犯行を考えた時、十年前の香里奈の事件を調べ直そうと思った。
 

2022年3月8日火曜日

脳科学捜査官真田夏樹⑪ 

脳科学捜査官真田夏樹⑪ 鳴神響一
 〜ヘリテージ・グリーン〜

 正月元日 爆破事件発生で招集される。事件は北条義時法華堂跡で爆発が起こった。犯人は「ワダヨシモリ」と名乗り脅迫文を送って来る。
 真田夏樹ことカモメ*百合に鶴岡八幡宮の舞殿で「鬼賊の剣」のオープニングテーマ「レッドフラワー」を歌って踊ることを要求してきた。サクラテレビの生中継を要請する。無視すれば北条氏ゆかりの寺を爆破するという。
 夏樹はベネチアンマスクを付けて歌った。鎌倉幕府が滅びた戦い、東勝寺合戦の東勝寺の廃寺跡地で爆発が起こった。犯人はマスクが許せないと言う。

 鎌倉署地域課五人で、「BAN BAN DANCE!!」をやれと言ってきた。五人でやったにも関わらず、北条政子が頼朝の菩提を弔うために建てた長楽寺跡で爆発が起こった。踊ったから人的被害は出さなかったと言う。

 捜査本部長や管理官等で、ラッキーハウスマーチのパラパラをリクエストする。
 福島一課長の妻・真由美の指導で練習する。福島、佐竹、小早川、織田。

 最後の要求が突きつけられる。松平家由本部長に土下座してもらいたいということだった。

 小川はアシリアを連れて、北条氏ゆかりの跡地を巡っていた。アシリアは匂いを嗅ぎどんどん進んで行く。スタンガンでやられた。アシリアは逃げた。小川は足錠を掛けられ小屋に閉じこめられた。
 次の日、アシリアが見付かり夏樹が赴く。夏樹も捕まる。ワダヨシモリ、本名・稲田大助。東工大の院を卒業、東大大学院で日本中世史を学ぶ。鎌倉仏教美術館の学芸員。酔って自分の自転車と隣の自転車を間違えて乗った。盗難自転車で現行犯逮捕され、四日目に隣の自転車が自分の自転車と証明され無罪放免になった。美術館はクビ。仕事は見付からない。女の子にも無視された。

 瞬間を狙って夏樹は稲田に攻撃し外に連絡する。突撃され稲田は捕まる。無視されたと思っていた女の子は捜査一課に配属されたばかりの小堀沙羅だった。沙羅は彼の顔を覚えていなかった。

 

2022年3月7日月曜日

鬼役伝〈一〉 番士

鬼役伝〈一〉 番士 坂岡真 

 江戸城門番を務める持組同心・伊吹求馬は剣術の修業に余念がない。

 老中直々び命で剣の技量のみで使えるものを選ぶことになった。求馬は剣の師である星雲寺の慈雲の所に行く。慈雲は、さまざまな流派の奥深い剣理をたたき込んでくれた。身にしみ込ませることが求馬に課された修業だった。求馬は力量を知らなかった。修羅の道を進むのならもう山門をくぐるのではないと言われた。

 助っ人で加わった盗賊捕縛で、盗賊の頭からこの野郎、約束を違えるな。と言う言葉と隠し蔵の鍵と辞世の句を託される。

 求馬は持組随一の使い手になった。
 襲われた商人・飛騨甚と襲った盗賊・籐兵衛と火盗改・荒山勘解由の三者は裏で通じていると言った修也が殺された。公人朝夕人・土田伝右衛門と、命を救い適切な手当てをしてくれた志乃が現れる。
 鬼役の見習いになる。室井作兵衛から課された密命は、上様に毒を盛ったとされる奥医師・栗橋玄以を勾引かすことだった。伝右衛門と二人で行く。怪我を負えば市ケ谷御納戸町の矢背家に行けと言われる。駕籠を襲った。玄以は殺されていた。伝右衛門は短刀で刺された。伝右衛門を背負って矢背家に走る。黒幕は尾張家老の成瀬家中老・姫野監物と考えた。
 母から、父は御所に仕えた番士、母は近衛家に仕えた女官だったことを聞いた。

 浪人を使い、町中を荒らし、事件を大きくして火盗改・荒山勘解由が赴く。火盗改が全て解決すると計画した。事件で寺子屋の子供たちが全て殺された事は隠された。手助けに赴かなかった秋元老中は、謹慎させられた。荒山の乱暴なやり方に付いて行けなかったためか石動が自裁した。

 盗賊・籐兵衛から預かった辞世の句の謎解きをした志乃と求馬は飛騨甚が大名に貸している借用書の束を見つける。秋元但馬守の右腕・吉倉河内守の三万両の借用書があった。綱吉を殺し、尾張の殿様を担ぎ出し第二の柳沢になろうとしたようだ。

 求馬の母・多恵が、お役目を果たしなされの言葉を残し亡くなった。
 飛騨甚と荒山勘解由、姫野監物を始末する密命が出た。求馬も行くが、やはり殺せなかった。
 吉倉の命を受けたはぐれ忍びが秋元を殺しにくる。求馬は秋元の身代わりに褥に入る。やってきた猪狩兵庫之助を殺した。求馬の愛刀・国光は飾るだけの刀ではなくなった。

 幼馴染で初恋の人だろう咲希は持筒組の屋敷から組紐屋へ嫁いだ。兄・丈太郎も侍を辞めた。
 吉倉は病死とされ切腹した。秋元は謹慎が解けた。

 

 

2022年3月6日日曜日

阿佐ケ谷姉妹ののほほんふたり暮らし

 阿佐ケ谷姉妹ののほほんふたり暮らし 阿佐ケ谷姉妹

 渡辺江里子さんと木村美穂さんのエッセイ
 アパートの同居生活から、隣部屋に別居する。

2022年3月5日土曜日

入船長屋のおみわ③ 春の炎

 入船長屋のおみわ③ 春の炎 山本巧次
 〜江戸美人捕物帳〜

 付け火が続いている江戸の町で、美羽が仕切る長屋の塀でも小火が出た。住み始めて間もない仏師の弟子・仙之介の部屋の脇だった。火事場に長さを測るためのような紐が残されていた。

 長屋の小火の後、呉服屋大倉屋が燃えた。大火事にはならなかったが、居住部屋が燃え、大名家に収める花嫁衣装が燃えた。仙之介の師匠・恒徳の彫った地蔵菩薩を家に置いておくと火除けに効き目があると評判だった。三浦屋の寮が燃えた。恒徳の地蔵菩薩があったにもかかわらず全焼し、誰もいないはずの寮で寝ていた老人が亡くなった。
 大倉屋の付け火の跡にも紐が残され、若旦那に頼まれ美羽は付け火の真相を探る。

 大倉屋と西島屋の呉服店争い、行人坂の大火の三十三回忌の法要の火除け地蔵菩薩の奉納の仏師の競い、恒徳か円劉の争いが関わっているのか。

 仙之介が頭を殴られ命を狙われる。

 長屋の壁と三浦屋の寮の付け火の犯人は、円劉だった。恒徳の地蔵菩薩の評判が許せなかった。法要の奉納が恒徳に決まることが許されなかった。

 海辺大工町の納屋の付け火は蝋燭を使った時限装置の試しだった。そして大倉屋に犯人は長屋に火をつけた者と考えられるように紐を残して火を付けた。仙之介は紐のことを知っている数少ない者の中から犯人を推察したため犯人に命を狙われた。犯人は恒徳だった。二年前の火事で地蔵菩薩の御利益の評判があがったが、下がらないようにもう一度という考えから、大倉屋に火を付けた。だが、婚礼衣装が燃え、効能に疑いが挟まれた。
 大火の法要は行われるが、地蔵菩薩の奉納は取りやめになった。

 大倉屋に呼び出された美羽は、大倉屋の女将が、嫁に来たくば、長屋を出、行儀見習い躾けをし直して来い。と言う言葉を聞いた。美羽はこんなふざけた家への嫁入りはこっちから願い下げだと障子を壊して帰って来た。

 

 

2022年3月4日金曜日

桜風堂夢ものがたり 

 桜風堂夢ものがたり 村山早紀

 秋の怪談 桜野町に住む小学六年生の三人組、楓太と透と音哉は、冒険をすることにした。ハロウィンの夜に森の幽霊屋敷に行こうということになった。大人たちには近寄るなと言われていた。
 森の傍の洋館は千野玲也という作家が住んでいた。静養のため隠れ家に住むように暮らしたいという彼女の望みを叶えるよう、誰も洋館には近づかず見守るようにしていた。子供たちが近づかないように悪霊だとか、お化けの話を作った。
 透は、洋館に忍び込み壊れかけた石塀が崩れ落ちた。助けられ洋館の中で黒いドレスのおばあさんと話した。ふるい建物も落ち着くし町から離れた静かな生活が好きなのよと話した。透はここにいるのが寂しいわけじゃないならよかったと言った。本棚の「空色の騎士」がとても好きな本だと伝えたら、いつでも読みにいらっしゃいと言ってくれた。
 目を開けると二人が見つめていた。怪我をしていた。
 黒い服のおばあさんに呼び止められた牧場の若者は、助けを呼ぶ子供たちを見つけた。
 知野玲也の世話をしている沢本毬乃は入院中の千野のお見舞いに行き、先生の話を聞いた。先生は夢を見た。うちの庭に子供たちが遊びに来て塀から落ちそうになった子を助け、部屋で話しをした。私が昔書いた童話を好きだと言ってくれたのでいつでも遊びにおいでって話し、子供たちが帰れるようにヒッチハイクでトラックを止めたのと。

 夏の迷子 銀河堂書店店長・柳田六郎太は桜野町の桜風堂書店の月原一整を訪ねた帰り、すぐ傍にあるはずのバス停に行くまでに遭難したようだ。
 昔、隣の祖母と二人暮らしだった五才上の従姉・美保を思い出した。美保は四十手前で亡くなったと聞いた。猫を助けようとして川に落ちたという人もいた。田舎の町で貸本屋をやっていた猫田のさんを思い出す。猫田のおじさんの貸本屋が好きというと、じゃあ、ぼうずにいつかやるよと言ったおじさん。数年前に拾いすぐ死んでしまったキジ白の子猫。
 朝、女の人に誘われたように散歩に出た。柳田にあった。

 子狐の手紙 三神渚砂はドレッシーな白いダウンコートで大きなボストンバックを引きずるように下げながら山道を歩いていた。夏に柳田が遭難しかけた山道だった。徒歩三十分の山道を甘く見過ぎていた。後悔。桜風堂書店を見に行こうと浮かれていた。一整の職場の元同僚、ネット上では「星のカケス」という古くからの友人である。こちらは知られていない。荷物が重い。思い出す。四年生の渚砂と母を置いて愛人の元へ去った父。大好きだった、著名な編集者だった夏野耕陽。父が現れ、今話題の本屋を見ておこうと思って。歩き始めたら思ったより遠くて、年寄りだってことを忘れていたよと言う。一緒に行く。ボストンバックを置き、入院中だという痩せた父を背負う。
 話しながら歩き、柳田遭遇した不思議な体験を思い出す。懐かしい死者と会い、亡くした子猫にやさしい言葉をかけられ、朝空を舞う美しいあやかしを見たという。
 「七つの人形の恋物語」という本の話しになる。ある時期まではお気に入りの本だったが、たいそう「胸くそ悪い」物語だ。もう良いよと背から降り、お前に渡したい物があったんだ。また今度と言っていなくなった。桜風堂で話しをすると、始めから一人だったよと言われる。あの山道は、会いたいけれど会えないはずの誰かに会えたりする。会いたかったお父さんに会えて良かったね。と言われる。
 母からの連絡で父が亡くなったことを聞いた。通夜、葬儀を済ます。ななつの人形の恋物語と同じ許すんだ。部屋にあった包みは、昔大事にしていた外国で無くした赤い子狐の縫ぐるみだった。特に親しかった二人、俳優と新聞記者は、外国から来ていた子狐の手紙は俺たちが書いていたんだと言った。父から頼まれたとバラした。

 灯台守 桜野町この町には、猫のマリアだけが知っていることがある。山あいの別荘地の一軒に異星人がすんでいる。峠でしばしば起こる不思議は、彼が隠している船の影響かしらと思う。桜風書店に一整には見えていないお客さんがある。男の人と女の人が一整を見まもている。

 

2022年3月3日木曜日

満鉄探偵 欧亜急行の殺人

 満鉄探偵 欧亜急行の殺人 山本巧次

 昭和十一年、満州。南満州鉄道株式会社資料課の詫間耕一は、総裁・松岡洋右の命令を受け、密偵の辻村とともに社内で頻発する書類紛失事件を調査する。
 調査対象だった塙に会いに刑事・矢崎と家に行くと塙は殺されていた。書類も無かった。
 塙が通っていた倶楽部紗楼夢に行き、女給・春燕と話した。
 憲兵隊・柴田に調べられる。途中で帰るように言われ、哈爾浜特務機関・帝国陸軍少佐・諸澄敏久に質問を受ける。どちらも塙を見張っていたようだ。

 春燕から見つけたボリスコフをつけると、憲兵も特務も見張っていた。ボリスコフを追って哈爾浜に行く。欧亜急行に乗ると、諸澄も春燕も乗っていた。耕一と辻村と諸澄と同じ車室で行動を共にする。春燕は一等寝台車の外国人と話しをしている。
 銃声がした。匪賊の襲撃があった。託間は炭水車を超え、機関車に行き、止めないように指示する。諸澄が用意していた一個小隊と機関銃で応戦し撃退した。怪我人はなかったが、ボリスコフが殺されていた。犯人探しを始める。
 シマノフスキー、クラウザー、デュナン、が怪しい。春燕は諸澄に雇われていた。三人を追って満州里へ行くことになった。

 耕一は夜中、五六人の線路工夫を見た。いるはずの無い線路工夫のことを諸澄に伝える。諸澄は列車を止める。襲撃に備え後ろの線路工夫に化けた連中を制圧する。前面を一個分隊が調べに行き、列車の機関銃も使われ制圧した。線路には爆薬が埋まっていた。
 ボリスコフの書類はまだ手に入れていないようだ。この列車にあるということ。
 耕一は書類を運ぶあらゆる手段を考える。手荷物にも荷物車にも無かった。捕らえた者は興安嶺トンネルを守る哨所の収容所に入れられた。
 耕一はボリスコフの殺され方を考え、犯人を割り出した。窓から顔を出した所を隣の三号室から撃ったのだ。犯人はシマノフスキだ。諸澄はわかっていたようだ。

 満州里でシマノフスキを尋問する。シマノフスキの二重底の鞄から、耕一の追っている書類は見付かった。耕一の知っている書類が改竄され極秘の判が押されていた。
 シマノフスキはソ連から疑われ粛正されようとしていた。ボリスコフから書類を奪い日本に渡し外国に亡命しようと考え、列車襲撃を頼んだ。ボリスコフには憲兵の手荷物検査が行われると話し窓からの受け渡しを指示した。受け渡された後、撃った。ボリスコフが渡した書類は囮の書類だった。本物はまだある。
 耕一は車掌の引き継ぎ書類の鞄を怪しんだ。車掌を問いただし、ボーイ・劉から車掌・于と情報運搬ルートがあることがわかった。耕一は満鉄の社員が手先だったことが口惜しかった。書類はソ連側に渡っていた。諸澄は全貌が摑めたことでいいと言った。書類は模擬計画の偽書類で実際の作戦計画書ではない、軍参謀部が作ったものではないということだった。

 塙を殺したのは、ボリスコフではなかった。書類を持ち出しボリスコフに渡したのは誰か。書類を改竄したのは誰か。哈爾浜から大連に帰る列車内で考える。
 星が浦で早朝海釣りしている庶務課の淵上に資料課の書類を盗み出し改竄して塙に渡したことを追求した。塙に馬鹿呼ばわりされ殺していた。耕一は塙の事件には憲兵隊が介入している。特務機関も関係している。他の情報機関の影も見える。何が飛び出すか判らない状態だと話した。次の日から淵上は会社に来なくなった。

 辻村は耕一の父親の友人・耕一の恩人・西島昌平の息子だった。西島は満鉄がらみの詐欺事件に巻き込まれた被害者だが、結果的に他の人を巻き込んでしまったので責任を感じて自殺していた。託間の事は父親から聞いて知っていたと言った。

 託間は総裁に報告する。欺瞞書類を作ったのは総裁だろうということも含め、模擬の輸送計画書を作成したのだろうということも。
 今回の作戦は、欺瞞作戦だったが、諸澄は、満州国内のソ連スパイ網を摘発しようと考えていた。目的を果たした。

 春燕は蒋介石の側近・張に関東軍の動きを報告していた。春燕は満州は満人のものだと思っている。満人の手に取り戻すために何でもやるつもりだった。

2022年3月2日水曜日

風の市兵衛〈弐 〉㉚ 斬雪

風の市兵衛〈弐 〉㉚ 斬雪 辻堂魁

 跡継問題に決着をみた越後津坂藩は、新たな江戸家老・戸田浅右衛門のもと財政再建に心血を注いでいた。

 戸田浅右衛門は江戸に来て、半年も前に、幼馴染の勘定衆・田津民部が百五十両を着服し逐電したことになっていることを知り、唐木市兵衛に探索を依頼する。
 市兵衛は場末の娼婦から、民部が品川の廻漕業者・直乗船頭・笠屋柳太左衛門を訪ねると言ったことを聞いた。
 市兵衛の調べた結果、民部は何年も沢手米など出ていないにもかかわらず、勘定帖には毎年五分から一割近い沢手米が出、代米が出ていること。蔵米の二千俵ほどを若狭で降ろし、大津市場で売り手形で江戸に運ばれていることになっているが、江戸屋敷の勘定方にそんな入金はないことを知った。ようだ。
 それから民部は、本所蔵屋敷を訪れたようだがその後足取りが消えた。五月だった。

 定町廻りの渋井は、唐桟の財布から三ヶ月前・八月に扇橋で見付かった腐乱した斬殺された死体について調べていた。唐桟の財布は、津坂藩の蔵屋敷で殺された亡骸の始末を頼まれた時に死体の懐から抜かれたものだった。その遺体が扇橋の遺体と結び付き、市兵衛の話と結びつき田津民部と結びついた。北町奉行・榊原主計頭から大目付を通して津坂藩留守居役に問い合わされたが、そんな事件も災難も一切無いという返事だった。
 
 市兵衛は、調べたことを戸田に伝えた。民部が調べたこと。民部は五月に殺されたこと。
翌日早朝、戸田は御成書院に集まっている志方、加藤、羽崎他十三名を捕縛に行く。勘定所で何が行われていたか、田津はどうなったかを順に解き、十三人を納得させる。志方は悪あがきし、殺される。二人は捕縛される。
 市兵衛は、早朝、津坂屋五十右衛門に呼ばれ蔵屋敷に行った。市兵衛を殺しに四人の浪人が来る。市兵衛は倒す。五十右衛門も津坂藩に捕まる。津坂屋は五十右衛門の子供が親類の後見を得、米問屋を継ぎ津坂藩の蔵元を続ける。
 

 

 


2022年3月1日火曜日

蘭方医・宇津木新吾 ⑭ 間者

蘭方医・宇津木新吾 ⑭ 間者 小杉健治

 新吾が治療した松江藩年寄り付きの女中は背に拷問のような傷を負っていた。数日後その女中と中間の遺体が屋敷外で見付かる。状況から心中とされた。新吾は間宮林蔵から二人が林蔵の間者だったと打ち明けられる。二人の死に疑問を抱いた新吾は真相を探る。

 棒手振の清助が殺された。新吾が検死した。袈裟懸に斬られていた。清助は長持を見、遺体を見、長持をつけ、松江藩と知った。世羅紋三郎を強請り斬られた。世羅紋三郎も殺された。

 清助が助けたかった病気の夜鷹のせんの商家の下男をしている元夫に会いに行く。元夫は貯めた金でせんを自由にし、幻宗先生の元へ入院させる。商家は三室屋、松江藩に出入りを始めた店だった。その三室屋に老中板野美濃守の用人・岩田羽左衛門が人目を忍ぶように出入りしていた。
 新吾は襲われるようになった。三室屋の主人に、岩田羽左衛門に会わせるように頼む。新吾は判り得たことを岩田に話す。
 半年前の松江藩の抜け荷の強請りは美濃守が黒幕だったこと。
 新吾の命を狙っているのは、強請った時、戸川源太郎と名乗った男だということ。
 美濃守が三室屋に松江藩の抜け荷を再開するように言って来たことを二人の間者が知ったことが始まりだということ。
 偽の戸川は美濃守の家来だということ。世羅を殺した犯人だということ。
 新吾は岩田に間宮林蔵の知るところとなるだろうから、松江藩から手を引くように言う。

 新吾は偽戸川と浪人に襲われる。偽戸川の名は、鹿島銀次郎。助けてくれた人がいた。鹿島は逃げた。
 松江藩の家老・宇部治兵衛に合う。判ったことを話すと、松江藩は二度と抜け荷をしないと言った。新吾は助けてくれた人は治兵衛が付けてくれた人だと思った。

 せんの元夫は三室屋を辞め、せんを見守りながら幻宗の治療院の下働きを始めた。