2024年3月31日日曜日

うっぽぽ同心十手綴り⑤ 藪雨

 うっぽぽ同心十手綴り⑤ 藪雨 坂岡真

 鹿角落とし 綾乃が、去年座員が赤ちゃんを産むのを手伝った女芝居一座が、河原芝居を打っている。勘兵衛は様子を見に行く。幹太郎と名付けられた乳飲み子を抱いたりんに会った。一座の人気は衰えを知らず、連日女芝居は大入り札止めだった。三座からの嫌がらせがあった。夜、縄を切られ芝居小屋が倒壊し、りんは下敷きになり亡くなった。新しく建て直した小屋も、奉行所の見回りをかい潜り、火矢を打たれ焼けてしまう。みんなの応援で、中村座で、りんの法要と名打った一日芝居が行われた。元一揆掃蕩の指揮を執った砂絵師は、佐保之丞一座と一緒に旅に出る。

 足力おでん 勘兵衛は、邯鄲師神輿草、新宿追分えんま屋におりという投げ文を貰い、内藤新宿へ出張る。印伝屋の番頭になり銀次と共にえんま屋を見張る。見せ物小屋の怪力おでんの足力が、神業だと聞き、予約する。勘兵衛は、一朱を出しても惜しくないほど気持ちがいい。でんの話を聞く。飲んだくれの已代治に買われ、逃げようとしても逃げられない。道具として扱われている。三日目、見倒屋備前屋が、九両二分盗まれた。でんに背中を踏んで貰った後だった。勘兵衛は八丁堀で、でんの噂を聞く。でんは夜鷹の元締・伊助に捕まっていた。奉行から礼を言ってもらうことを条件に、でんを引き取る。でんから已代治の居場所を聞き出し已代治を捕まえる。伊助は根岸奉行に呼び出され、夜鷹のために努力するようにと労いの言葉を貰った。でんのこれまでの話をし、連れて行く。備前屋はでんを内儀にする。番頭と心中事件を起こし助かった妾もいずれ溜めから出してもらうと考えている。

 藪雨 三十半ばの女が、袈裟懸けに斬られ胸をひと突き、同じ殺され方で二人が殺された。一人は大店の内儀、一人は、船饅頭。抱え主・与一の行方が分らない。二人は浮瀬のふうと同じ辰巳芸者だった。旗本・黒木が犯人かと名前が挙がる。ふうの廻りに与一がいる。
いちという芸者が訪ねて来た。十五年前に上役に強要され剽げた裸踊りをされたことを少し前に座敷に呼ばれたお大尽に懐かしくしゃべった。ものすごく剣幕で怒り死んでも許さんと帰った。黒木兵馬だった。その時の芸者が五人の内三人が殺された。あと二人はいちとふうだった。勘兵衛は浮瀬に行くが、ふうは斬られ仁徳に運ばれていた。斬った浪人は捕まえた。
 黒木を稲荷の祠に連れ込んだ。与一が仲立ちで浪人を雇い元芸者を殺させたことを白状させた。腹を切ることを強いる。与一を捕まえようとしたが、大川へ逃れた。七日経っても見付からなかった。与一はふうを刺した。ふうは死んだ。浮瀬はこまが継いだ。

 


2024年3月29日金曜日

栄次郎江戸暦30 闇夜の烏 

 栄次郎江戸暦30 闇夜の烏 小杉健治

 矢内栄次郎は、南町筆頭与力・崎田孫兵衛から相談を受けた。商家から二千両以上を盗んだ盗賊の頭が捕まり、手下の闇夜の烏と名乗る者から、三日以内に頭を解き放たなければ、どこかで人が死ぬという脅迫状が届き、すでに一人殺されたという。同心・蕪木真一郎に協力し犠牲者が出ないようにして欲しいと言われる。

 栄次郎は解き放つ気がない奉行所と闇夜の烏の繋ぎの手紙を見張る。また一人死ぬ。三人が殺された。
 頭を捕まえた時、手下を二人逃がしていた。その二人が闇夜の烏だと思われた。盗んだ金の在りかが知りたいのだろうと。一千両の要求があった。が手を付けられず、その後連絡がなくなった。

 栄次郎は、新八と調べ始める。栄次郎と新八が襲われた。
 栄次郎は火盗改めにもはなしを聞き、捕まっている女囚にもはなしを聞く。初めて栄次郎は大御所の子ということを利用した。
 始めに殺された正蔵は、鏑木が妾にしている園の亭主だった。二人目三人目に殺されたのは、逃げた盗賊だった。鏑木は盗賊の隠し金も自分の物にしていた。栄次郎が鏑木に突きつけると夜、自分と共に動いた岡っ引きを殺そうとした。栄次郎は鏑木に素直にしゃべるように諭す。

 若菜から呼び出しがあった。心が弾んでいた。

2024年3月27日水曜日

長兵衞天眼帳

 長兵衞天眼帳 山本一力

天眼帳開き 長屋のさちが、隣の老婆を殺した疑いで岡っ引き巳之吉に捕まった。巳之吉はさちが犯人と決めつけて捕まえたが、間違いでも構わないという考えだった。放してやるから自分の女になれというような。
 さちは助けたい小網町の新蔵は、縄張り違いでも長兵衞に相談し、真実の犯人を捕らえようとする。
 犯人を突き止めたが、注連次は船宿で賭場を開くゑさ新に捕まりす巻きにされるところだった。賭をし、注連次を取り返す。番所で話を聞いてから巳之吉の渡す。さちを取り返した。
 老婆は甥の注連次のためにお金を貯めていた。金を借りに来て、言い争い首を絞めた。金を貯めているという書きつけを見、喜んで叔母を見た時、首を締められ死んでいた。そこへさちが来た。逃げた。注連次もすぐに逃げていた。

 真贋吟味 木場の材木商・檜問屋の福島屋の当主が急な病で亡くなった。当主の弟・川並の岐阜新の新次朗が、もしもの時には後をお願いするという「書残」を預かっていると持ってきた。福島屋の内儀と頭取番頭・中悟郎、息子・豊太郎に頼まれた同心・宮本は、真贋鑑定を眼鏡屋村田屋の長兵衛に頼んだ。長兵衞は、新蔵と共に動くため、富岡八幡の幹次郎に声を掛ける。
 長兵衛は、二通の書残を比べ、福島屋の方には、日にちの脇に小さな点があることを見付ける。天眼鏡で見、米粒の先にも満たない刻印を発見した。主人・矢三郎は、身代を確実に豊太郎に渡すため、傳七親方の元には、わが手でしたためた書残には年号の脇に当該年の干支が押印されている。押印なき書残は、贋作であるという書状を残していた。

 

2024年3月24日日曜日

大岡裁き再吟味③ うつし絵

 大岡裁き再吟味③ うつし絵 辻堂魁

 大岡越前は、評定所で、関所破りの罪で裁かれる絵師・土田半左衛門を見た時、十五年前の旗本内藤家と倉橋家の事件を思い出した。内藤斎樹が倉橋弥八郎を斬り、発覚したため内藤斎樹は切腹し、事は収まっていた。

 越前は、古風十一を呼び、土田半左衛門と、内藤斎樹と倉橋弥八郎のことを調べるように言う。越前は、半左衛門に、十五年前の斎樹を見たのだった。

 十一が調べると、倉橋弥八郎は、若い歌比丘尼・鈴を殺していた。鈴の絵を描いていた斎樹は、鈴をわが娘のように思っていた土田庫之助の手を借りて倉橋を斬る。たまたま自身番の親父に顔を見られたため犯人が、斎樹と言われたことで斎樹は切腹したこになっているが、庫之助の亡くなった息子・半左衛門として絵を描きながら旅をしていた。十五年間見破られなかった偽手形が、偽物と発覚し、磔にされることになった。越前は内藤家の刀自に話す。
 越前は、半左衛門から詳しい話を聞いた。斎樹は淡々と事件の話をした。

 越前をうるさく思っている町奉行・松浪と稲生が、老中・本多に越前の行為を訴えた。本多から聞いた吉宗は、越前を呼び内密に牢屋敷で問いただしたのは何故かと聞いた。越前は全てを話した。

 半左衛門の磔は無くなっった。江戸十里四方追放となり解き放たれた。大岡様の御指図かと問う半左衛門に番士は老中かもっと・・・と答えた。

 十一は倉橋家の用人から命を狙われた。倉橋家の噂が城内を巡っているという。調べていた十一が狙われた。

 古風十一は、密猟者の家を潰し、年寄と幼子のいる夫婦・清吉を連れて行った鳥見役平河民部から夫婦を早く返して貰えるように大岡に頼んだ。

 下り物乾物商・升屋と平河民部の仕手方・軍八郎と餌請負人・伊蔵が召し捕らえられた。
御留場の盗鳥並びに密輸の廉だった。清吉の家を訪ねると村人に助けられ二人は働いていた。
 

2024年3月22日金曜日

芋洗河岸 1 陰流苗木

芋洗河岸 1 陰流苗木 佐伯泰英

 神田明神下にある一口長屋に妻子を連れた侍・小此木善次郎26才が住むようになった。美濃から江戸に来る途中で、妻が懐妊、出産し二年掛かって江戸に着い。
 職業なし、金もなしだが剣の達人だった。陰流苗木の剣術 夢想流抜刀術
 幽霊坂の青柳道場で、客分指導者として月々一両二分貰えることになった。
 大家の米問屋越後屋の、返金額の五分を貰う口約束で、大名貸の取り立てに付いて行き、三十両を貰うことになった。二十八両を越後屋に預ける。
 毎日、道場に通う。
 越後屋の要請で、船で江戸の地図を覚える。
 越後屋の二代前の庶子・次郎助が、一口長屋の譲渡状を持っている六百両と交換すると言ってきた。次郎助の後ろには、悪辣で有名な伊吹一家が付いていた。
 根津権現の近くの荒れ寺の尼に厄介になる。尼が伊吹一家の者が権現に行けないようにしてくれた。譲渡状とお金を自分の物にしようとする次郎助たちを斬った。

 一口長屋は、もともと神田明神の分地だった。越後屋に頼まれ善次郎は守護人となった。一軒屋は要らぬという善次郎の長屋の店賃は無くなった。みなには内緒だった。妻・佳世には伝える。守護人料として年二十五両が入った。

 青柳道場で善次郎に負けた大名の家臣・壱場裕次郎が、隠居し浪人者を集め善次郎を襲った。三遺体の始末を越前屋に頼み、三人の懐の持ち物や手形を回収した。
 十四両あった。差配の義助が持ち、長屋の植木の剪定と崖際の竹垣を新しくすることにした。
 
 一口長屋には何か秘密があるようだ。

2024年3月18日月曜日

うぽっぽ同心十手綴り④ 凍て雲 

 うぽっぽ同心十手綴り④ 凍て雲 坂岡真

笹りんどう 天は照々として誠を照らすーーー。斬首に立ち会った臨時廻り同心の長尾勘兵衛は、罪人の最期の言葉を受け取ってしまった。
 多くの者に慕われていた医師だった。仁徳にもせっつかれ調べる。小栗玄朴。元常陸下館藩の御用医師、殿様が亡くなり辞め国払いになった。
 別の医師に引き取られた幼子・陽太郎9才は、熱を出し、意識が朦朧とし、腐った味噌汁の前で震えていた。母を亡くし拾われた娘・果穂は置屋に売られていた。陽太郎は、家に連れ帰り仁徳に頼み、果穂は置屋と話を付け連れ帰った。
 陽太郎を引き取っていた医者良意は殺された。玄朴が、長屋の店賃の借金の請け人になっていた治助も隠れていたお堂ごと燃やされた。
 玄朴が犯人とされた枡屋の泥棒は、良意と治助が金欲しさと玄朴を犯人にするために計画したものだった。調べていた同心・桐野と岩七は、計画に乗り玄朴を犯人とし、二人を殺した。その犯人も関係がない者に濡れ衣を着せようとした。
 根岸奉行の了解を得、勘兵衛は、幼子に玄朴の仇を討たせた。桐野と岩七を殺した。筆頭与力・宗像は隠居した。

 凍て雲 勘兵衛は、襲われている若者を助けた。若者・垣添兵庫は礼に茶碗を置いていく。兵庫は松江藩の家来で、姉・香苗は藩主お気に入りの側室だった。姉は女中頭とその父による嫉妬から、茶会で毒を飲まされ一命は取り止めたが醜い顔になり、寝たきりになり奥に閉じこめられている。兵庫は「凍て雲」と呼ばれる茶碗を盗んだ。松江藩から返すようにと要望される。勘兵衛は、留守居役に会いに行き、茶碗を返す条件として香苗の身柄を要求した。
 勘兵衛と兵庫は下馬先で、松江藩主と会う。藩主に呼び出された。十日余りで香苗は、山帰来を飲み、自分で寝起きし、家事を手伝えるよう回復していることを報告した。毒茶会に加わった者は蟄居になった報告を受け、兵庫も国元扱いになったが、姉弟は断り町に住むことにしたと伝える。勘兵衛は、晦の茶会の招待状を貰った。

 つわぶきの里 勘兵衛は、町で見かけた、釣りをしている津和野藩出身の紙漉きの職人・平助・坂崎平内に興味を持つ。
 元津軽藩の侍で今は、今戸で土器を焼いている三田村惣次郎という浪人がいる。惣次郎は、七年前、許嫁の深雪が、柿沢彦之進と深い仲になったことを知り、柿沢と話をした。柿沢が逃げるので、「誰かその男を斬ってくれ」と叫んだ。通り掛かりの男が柿沢を斬った。三田村は逃げた。柿沢は右手を失った。三田村が逃げた事で斬った男は、助太刀の証明がなく辻斬りと見なされ八丈島へ遠島となった。三田村が知ったのは、男が遠島になった後だった。その男が坂崎平内だった。三か月前、平内は御赦免船で江戸へ帰った。
 勘兵衛は、その後の柿沢を探す。坂崎の家族を探す。坂崎を連れて見付けた柿沢に会いに行く。柿沢は巣鴨で百姓をしていた。赤ん坊を負ぶった深雪がおまえさんと呼び、かか様のもとへまいろうと子供を左腕でひょいと抱えた。それを見た坂崎は、会うこともなく立ち去った。
 坂崎の妻と娘は、公事宿に住み込み賄いをしていた。会いにいくことは伝えた。坂崎が行くと、宿の入り口に続く道に黄色い花が、鉢植えが敷き詰められていた。つわぶきだった。「父上ですよ」と言った。

 野きつね 勘兵衛は、火盗改与力・堀平太夫の指揮十手を拾った。持病の疝気の痛みに蹲って居る時、豆腐屋の権兵衛に出会った。
 野ギツネ一味が盗みを働いた。今まで人を傷つけたこともなかった野ギツネが、評判のよくない金貸しに押し入り六人を斬り護符を貼って逃走した。同じ時間、「浮瀬」のふうが、瓢屋から二人の賊が千両箱を抱え飛び出し船で逃げるのを見たと言った。賊はふうに手を振ったと言う。護符が貼られていた。瓢屋は被害届を出さない。勘兵衛が店に行くと火盗改が来ていた。
 辻占のきぬが五人組の盗賊を見たという。置屋のこんと知り合う。勘兵衛は、四人に襲われる。
 火盗の堀は、盗人を使って人を殺し金を奪った。本物の野ギツネが、堀と瓢屋の関係を教えるために瓢屋に盗みに入り、十手を置いた。
 堀を呼び出し乱闘になったところに、火盗改の頭・岩村が現れ、堀を捕まえた。奉行・根岸が手配してくれた。
 捕まるつもりで権兵衛は、勘兵衛の前に現れたが、勘兵衛は捕まえなかった。

2024年3月16日土曜日

すべての神様の十月

古本食堂 原田ひ香

「お弁当づくり ハッと驚く秘訣集 」小林カツ代著と三百年前のお寿司

「極限の民族」本多勝一著と日本一のビーフカレー

「十七歳の地図」橋口譲二著と揚げたてピロシキ

「お伽草子」とあつあつカレーパン

「馬車が買いたい!」鹿島茂著と池波正太郎が愛した焼きそば

「輝く日の宮」丸谷才一著と文豪たちが愛したビール

珊瑚は、北海道のマンションで、父母の介護をし二人を看取った。次兄・滋郎が急に亡くなり、自分が好き勝手できたのは珊瑚のお陰、と遺産を残してくれた。神田の古い三階建てビル。一階は自分の店「鷹島古書店」、二、三階は、翻訳書を出版している「辻堂出版」。

 私は、決心し、いつか私にこの店をやらせてもらえないかと珊瑚さんに言った。珊瑚さんはありがとうと言ってくれた。

2024年3月15日金曜日

貸し物屋お庸謎解き帖④ 髪結い亭主

貸し物屋お庸謎解き帖④ 髪結い亭主 平谷美樹

 髪結い亭主 髪結いの道具一式の入った台箱を借りて帰った男が、台箱を置いたまま魚の棒手振りをしている。庸は、男のことを調べる。男は髪結いの亭主だった。女と一緒に江戸を出たが帰ってきた。髪結いの妻は、旦那は名古屋の叔父の手伝いに行っているとふれている。娘の祝言が近く、男は娘の髪を結いたくて帰ってきていた。庸は男の尻を叩く。男は、娘の祝言が近いので名古屋から帰ったことになった。

 割れた鼈甲櫛 五才の三太が、拾った割れた鼈甲櫛を売りに来た。庸は引き取ったが、夜、幽霊が現れ鼈甲櫛は三太の元に帰る。鼈甲櫛には縁談が破談になった女の生き霊が付いていた。瑞雲にお札を書いてもらった庸は、三太の家で結界を作る。現れた霊に、三太の母親は、三太に付くのはお門違いだ。破談にした男に付けという。霊は引き下がった。瑞雲は、大店美濃屋に行った。

 六尺の釣り竿 幼なじみのさえちゃんが、叔父の代わりに上等の釣り竿を借りに来る。叔母が、釣り道具を置いたまま夜出かける。魚は持って帰ったことがないから、浮気を疑っていた。庸は調べに行きたいが、出歩くことを松之助に止められる。庸は二人に部屋を調べてもらい、叔父と会う。荏胡麻を撒き餌にし引っかけ釣りをしていた。

 火の用心さっさりやしょう 火の番人の兵衛六が、拍子木を借りに来る。庸は並んで歩き、夏に死んだことを教える。そろそろ火の番の時期なのに、拍子木を棺桶にいれることを忘れたことも、そろそろ手筈のはなしをしないといけないことも忘れ、番屋で酒ばかり飲んでいることを怒っていた。兵衛六は「火の用心さっさりまやしょう」庸は番小屋で兵衛六の言葉を伝える。拍子木は、若い者に受け継がれた。四十九日だった。

 凶刃と大火鉢 商家の主が、法事の間だけ使っていない空家に集まる親戚のためにと、大火鉢と布団を十組借りて行った。不審に思った庸は、陰間長屋の者に見張りを頼む。松之助の父親の知り合いの盗賊が江戸に来た。空家にいるのは盗賊たちだった。庸は、分ったことを本店の清五郎に話す。清五郎は奉行所を動かし、賊が動く日に役人を手配し、捕まえる。

  

2024年3月11日月曜日

口入屋用心棒㊿ 殺し屋の的

口入屋用心棒㊿ 殺し屋の的 鈴木英治 

 同心樺山富士太郎と中間・珠吉は、世間から蛇蝎のように嫌われていた元岡っ引き津之助と会う。翌朝津之助が無残な姿で発見された。
 津之助を殺した犯人を追う。蛇蝎のようにいわれていた津之助だったが、津之助は、何人もの孤児を育てるためのお金を集めていた。隠居し、孤児を育てることも辞めていた。犯人は津之助に捕まりそうになり江戸から逃げた鉄三だった。鉄三は病気に掛かり命が永くないと分った時、復讐を考えた。自分を捕まえようとした津之助と、じぶんを騙した珠吉を殺そうと江戸に帰ってきた。
 津之助を殺し体力が無くなった鉄三は、珠吉殺しが出来なくなった。そんな時、殺し屋を知っているという鹿右衛門に会った。鉄三は紹介された殺し屋に珠吉殺しを頼む。殺し屋は、昔、鉄三が船乗り水夫をしていた頃の船頭・猪四郎だった。
 鹿右衛門は、直之進が師範代をしている、秀士館の門弟・源六を男妾にしようと誘っている男だった。

 津之助を捕まえようとした珠吉と話し、珠吉が騙していなかったことを知った鉄三は、殺し屋に珠吉殺しを頼んだことを話す。殺し屋の話をしようとした時、鉄三は咳込みそのまま亡くなる。

2024年3月9日土曜日

みとや・お瑛仕入帖④ 江戸の空、水面の風

みとや・お瑛仕入帖④ 江戸の空、水面の風 梶よう子

 兄・長太郎 を亡くした瑛。今、成次郎と夫婦になり長太郎5才という子がある。
 三年前、旗本の隠居・森山様も亡くなった。名付け親であり、長太郎の袴着の用意までしていた。長太郎は、森山の残した脇差を見、菅谷親子の父・道之進から剣術を習っていた。
 秋に、長太郎は袴着、菅谷道之進と花の娘・花甫7才は、帯解きの祝いをする予定。

 瑛は、森山の残した七十年前の袴着の衣装を見、自分には不要でも、別の人には必要な物、大切に使ってくれる人の手に渡る。そんな仕事をしようと思った。

 料理茶屋「柚木」に新しい奉公人・圭太が現れた。柚木の女将・加津は瑛兄弟の母親のような人だった。加津は圭太を褒める。圭太は仕事も手際よくこなし、加津にも優しく、良く気が付き、良く動く。でも、瑛は何かおかしいという思い、胸がざわついた。
 加津は圭太に何もかも任せ、圭太の母と温泉に湯治に行く。
 誰も知らなかった加津の書家になっていた息子が、亡くなっていたことを加津に知らせる。
 柚木の古くからの板前や、女中が辞めさせられ、圭太の連れてきた人たちに入れ替わった。
 大工の頭領から、柚木の建替えを頼まれたことを聞く。施主は、圭太の元いた按摩で金貸しの角市だった。

 瑛は、船を漕ぎ、圭太と二人で話す。圭太は、頑張ってきた女将にもう楽になっていいと言い、寂しい人だと言い、可哀想な人だと言う。私は印判を預かっている。好きに使って構わないということでしょう。角市に証文も書いた。柚木は角市の物だと言った。瑛は、印判は本物かしら?と言った。
 瑛が圭太と話している間に、勘平や、成次郎や直孝が走り廻った。加津と縁のある人を柚木の前に集めた。百人以上が集まり帰ってきた圭太を黙って睨む。圭太は母親を連れて逃げ出した。

 加津は偽印判を渡していた。悪事を企んでいたらいいように使うと思ったから。半分信じていたのに。
 辞めた奉公人を呼び戻した。

 瑛は団十郎のグッズと、光を当てると鏡の背面の細工が映し出される鏡を、売りたい人から買いたい人に縁を結んだ。

 成次郎は何者?

2024年3月4日月曜日

脳科学捜査官真田夏希⑲

脳科学捜査官真田夏希⑲   鳴神響一 
  インテンス・ウルトラマリン

 警察庁サイバー特捜隊の真田夏希は、神奈川県警の刑事・小堀沙羅と休暇を取り、神戸間でのショートクルーズに出発した。楽しい船旅に気分を踊らせたのも束の間、沙羅のスマホに強盗事件の知らせが入る。さらに、傷害事件の犯人を追って、江の島署の加藤刑事たちが船に乗り込んでいると知らせが入る。
 どちらの事件の犯人もクルーズ船にいる可能性が高くなる。そんな中で、若林船長とジャズシンガーの牧村真亜也と沙羅を人質にしたシージャックが起こった。三人を人質に、全ての乗客を個人の部屋に摘め入れ、軟禁状態にされた。連絡をしようとしても海上にで圏外になる。
 パーサーの八代の計らいで、加藤、北原刑事は、夏希の部屋に入り、衛星携帯電話の端末を手に入れる。神奈川県警捜査本部と通信できるようになった。捜査本部に織田がいた。
 犯人は、五億円相当の暗号資産を要求してきた。犯人との話し合いは真田がすることになった。
 海上保安航空基地から特殊部隊SSTが動いた。ヘリが船に近づき犯人からヘリを近づけるなのメッセージが入る。加藤と北原は動いた。見張りを縛りブリッジに向かう。ブリッジには船長、操舵手、甲板手、沙羅ら人質がいた。ブリッジの犯人三人を制圧した。人質だった真亜也が拳銃を持って夏希を人質にし、犯人三人を自由にするよう求めた。夏希は死を覚悟した。その時助けが入った。船内で出会った大沢だった。警察官だった。犯人は全て制圧された。八代も警察官だった。船内に連絡された。これから出発港、横浜港に帰ると。警察本部にも連絡を入れる。

 大沢が真亜也の取調をした。大沢基隆は、警視庁公安外事三課所属の警部補だった。八代尚美は同じく巡査部長だった。
 プルトニウムが盗まれていた。真亜也はそれを運ぶための工作員だった。公安はどこから盗まれどういう方法で盗まれたかを知りたかった。地下保管庫から盗まれ、盗んだのはコードネームC157であることしか知らなかった。

 大桟橋に迎えがいた。アシリアもいた。織田もいた。織田は神奈川県警の刑事部長になったという。織田に県警に戻って来てくれませんかと言われた真田は、よろしくお願いしますと言っていた。

2024年3月2日土曜日

小余綾俊輔の不在講義① 采女の怨霊

 小余綾俊輔の不在講義① 采女の怨霊 高田崇史

春日氏が和邇氏 和邇氏は海人火血族 海人族は海部氏・安曇氏。安曇磯良。
安曇磯良は、春日大明神。
春日大社若宮の祭神は雨押雲根命、別名天叢雲命
磯良を称える歌だった君が代

猿沢も池の采女祭りの采女は?安積采女、聖武天皇の子・安積親王の母親。
郡山へ帰ったとされる安積采女春姫。

天智が亡くなった。天武(大海人王子)による暗殺。
天武は吉野に逃げ込む。
天智皇后の倭姫王が即位、あるいは称制を敷く。
天智と倭姫王の子である大友皇子が、補佐。あるいは称制を敷いた。
このままでは大友皇子が次期帝。
天武はクーデターを起こす。成功した。
皇位簒奪の汚名を残さぬため、大友皇子の母は身分の低い采女だったとされる。
また、天武自身は皇統と無関係な「下層の遊民」ではなく、年上にもかかわらず、天智の弟であるとした。年齢を誤魔化す。
全てを糊塗するため「記紀」の作成を命じた。