2018年3月31日土曜日

額を紡ぐひと

額を紡ぐひと 谷瑞恵
 五年前、事故で恋人を亡くした奥野夏樹は、恋人・柴崎弘海の仕事・額装を勉強し、額縁作りの店を持った。弘海の遭った事故はバスが崖下に落ちる事故だった。死亡者は弘海だけ、一人早く崖を上がり食堂に着いていたにも関わらず連絡をしなかった人がいた。その人のことを知りたくて夏樹は池畠が開くカレー店の近くに店を出した。二人の店の近くに、表具と和額を専門に扱うくおん堂がある。次男の久遠純が夏樹にところによく来る。純は川で溺れている時、池畠に助けられた。二人溺れて自分だけが助かったことに蟠りがある。
 夏樹の所には変わった注文が来る。
 宿り木を額に入れる。父親との思い出、蟠り。会うこともなく骨だけ送られてきた父親。ネイルサロンを開くゆかりの店に優しい額縁に宿り木を入れた。
 妻が飼っていたインコの声を額縁に入れて欲しいと言う注文。妻が突然亡くなった。飼っていたインコが居なくなった。夏樹はインコを探し、声を聞く。インコは喋った。妻が一人でインコに話しかけ、夫が答えていた。妻の一人芝居だ。奥さんが亡くなっても今までここにいたような佇まい。夏樹はインコが飛び立った直ぐのような鳥のブランコを額縁に入れる。
 毛糸玉の中に算盤珠が入っている。居ない妹を作った昔の思い出。毛糸玉に入っている人形が妹。ネグレクトの親。八重原は額縁に入れないで毛糸玉で生まれてくる赤ちゃんに何かを作ることにした。
 純の部屋の壁に描いた川底の風景の額縁を作ることになった。純は難読症になっていた。溺れて亡くなった友達が難読症だった。
 池畠の思い出の銀色のカレーのソースポットの額縁を作る。中学生の時、池畠は母親と波止場から車で海に飛び込んでいた。純だけが車から出、泳いで助かりファミレスまで行きカレーを食べていた。弘海の最後に残したスケッチノートの最後から二枚目の絵はソースポット。最後のページの未完成の額縁の絵を参考に西洋と東洋の融合したドーム屋根の額縁を作った。
 純の壁の絵を額縁に入れた大作は児童専門の心療内科の待合室に飾ることになった。
 純は蒲田氏の所で額縁作りの勉強をすることにした。

2018年3月30日金曜日

オランダ宿の娘

オランダ宿の娘 葉室麟
 長崎屋の娘・るんと美鶴
 シーボルト事件

2018年3月29日木曜日

紅雲町珈琲屋こよみ⑤

紅雲町珈琲屋こよみ⑤ まひるまの星 吉永南央
 コーヒー豆と和食器の店「小蔵屋」の敷地に、山車蔵を移転する話が持ち上がった。もともとは草が引退する頃に移転する話しだったが、山車蔵のある山上の孫が病気で大変なお金がいるため土地を売らなくてはならなくなった。小蔵屋の駐車場二台分だが五メールトルの高さがいる。小蔵屋の風情にも合わなかった。
 もう一ヶ所丁度良い場所がある。鰻屋や支那そば屋等の前だった。鰻屋の清子と草の母・瑞とはすごい仲良しだったがある日を境に行き来が無くなった。理由を探るうちに町全体に関わる重大事に気付く。
 山車蔵を建てようとしている土地は二十年の内に転売が重なった。二十年の間にドラム缶が並べられドラム缶から液体が流れ、地面にしみ込んでいた。地下水汚染が心配された。今の持ち主は手放した紅雲町の住民だった人が買い戻し、蔵を建てることにも賛成してくれているので、草は水質調査をし、土の入れ替えをすることを相談してから町議会に掛けた。山車蔵の移転が決まった。
 水質汚染を公にしようとする瑞と水質汚染が発表されると営業に差し障ると思った青子との仲違いだった。発表されることなく今まで過ぎてきたのだった。
 

2018年3月28日水曜日

コンビニたそがれ堂

コンビニたそがれ堂 村山早紀
 コンビニたそがれ堂 アメリカに引っ越した同級生からの受け取り損ねたメッセージをコンビニで受け取った。
 手をつないで ママが捨ててしまったリカちゃんを探しに行ったえりかは、コンビニで古いリカちゃんを見付ける。ママは悪いことをしたと思ってえりかのリカちゃんを探しているとコンビニでえりかのリカちゃんを見付けた。ママはえりかにごめんねと誤る。えりかの持っているリカちゃんはママのお母さんに捨てられたママのリカちゃんだった。スカートに刺繍をしていた。
 桜の声 ラジオ局でアナウンサーをしている桜子は、一人暮らしでもうすぐ三十才になる。コンビニで桜の花のストラップを買う。田舎に帰ろうかなと考えながら生活している。桜子の番組に1954年からのメールが届く。空から降ってくる音楽と桜の声に勇気付けられた話し。未来からのメールも届く。桜子は番組を任された頃の気持ちを思い出す。
 あんず 寿命を知った猫のあんずはコンビニに行く。死にそうだった私を拾ってくれたお兄ちゃんの家の人と同じ目の高さでお話ししたい。猫のあんずは首輪をコンビニに預け、人間になって家に帰る。家の人は従姉妹のあんずが来たのだと思った。あんずはお兄ちゃんと話して消えた。十日たった。帰ってこない猫のあんずを心配したお兄ちゃんはコンビニであんずの首輪を見付ける。五円で買って帰る。
 あるテレビの物語 赤ちゃんだった時から見ていた家族が大好きだったテレビ。家族もテレビが大好きだった。写らなくなったテレビの代わりに新しいテレビが来た。女の子がコンビニで古いテレビさんに会いたいの。寂しいのと言った。テレビは光りの粒になった。新しいテレビの横に映らない小さなテレビが大事に飾ってある。

2018年3月27日火曜日

帳尻屋仕置〈六〉 吠え面

帳尻屋仕置〈六〉 吠え面 坂岡真
 旗本心中 十二年前、五百石の八男16才が五千石の養子になり藤枝外記教行となった。養母の親戚筋の二千五百石から妻・みつが嫁いでくる。三男一女が生まれた。外記は吉原に思う女・綾衣が出来た。吉原の火事が起こり外記が綾衣等を助け出したことで、みんなに知れる。醜聞のため藤枝家は外記を無用と見なす。綾衣の身請けが決まった後、二人が会っている所を身請けする呉服屋石川屋撫兵衛に見られ二人とも殺される。二人は心中とされ外記は名無しとして処分された。外記の味方・藤枝家の用人が綾衣と心中したことにし、切腹した。忠兵衛たちは、綾衣の抱え主と石川屋と同心と藤枝家の叔父と養母を殺して帳尻を合わせた。
 生き肝 内蔵を抉られた少女の死体の側に絵蝋燭が手向けられた事件が起こる。絵蝋燭の絵を描いていた浪人が自決を装い殺され九才の娘・佐枝が連れて行かれる。蝋燭を立てていたのはりんという、五右衛門一座の座頭・五右衛門に拾われ育てられた女だった。庄内藩酒井家の側室・萩の方の子どもの病の治療のため、医師・魯庵が生き肝を欲しがった。お金を借りている五右衛門は子どもを誘拐し生き肝を取っていた。りつは子どものため蝋燭をお供えしていた。りつは忠兵衛を子どもを閉じこめている堂宇へ案内する。七人の子どもを助け出す。忠兵衛等は大目付の使者を名乗り酒井家の中老・船形大膳に会い、佐枝を助け出し大膳を自死に見せかけ殺す。五右衛門と魯庵も殺す。魯庵は江戸の闇の元締めの一の子分・白澤の実弟だった。佐枝は旅籠・弁天屋に預けられ、りつは旅籠弁天屋で下女奉公する。
 吠え面 帳尻合わせの仲間・くうの結婚相手・三太郎の父親・五郎吉は元錠前破りだった。三太郎を勾引かし五郎吉に昔五郎吉が作った二重錠前を開けさせた。三太郎は殺された。五郎吉も自死した。後ろでやらせているのは白澤だと思われたが、白澤は手伝い金を貰っただけだった。白澤と白澤の情婦であり舐め猫である女と晒し場に背中合わせで晒された。白澤の後ろに仙次がいた。仙次は元盗人忠兵衛の弟分だ。仙次は忠兵衛を町役人に売り、捕まった忠兵衛は仙次を庇い仙次を逃がし、与力に使われるようになった。弱かった仙次は大坂で非道になって戻った。

2018年3月26日月曜日

御家人無頼 蹴飛ばし左門⑩

御家人無頼 蹴飛ばし左門⑩ 天下頽弊  芝村凉也
 三日日左門は甲府にいる。前回左門を狙った者がいる。左門は御番入りし、勤番組頭付き同心と言う臨時の役を貰い、待機している。屋敷は勝手小普請街にある。左門の扱いが判らなかった。
 左門を付けた山本は左門に見付かり、自分と左門の関わりを白状する。左門と関わりが出来左門の留守にでも貫太の話し相手をしに左門の屋敷を訪れるようになる。甲府の細かい情報を左門に伝える。
 左門は甲州金山方御用係・折口に付いて調べ始め、金山方御用係付という役に付いた。前に術を左門に封じ込められた鬼界坊がいた。左門に金山の話をする。折口に付いて江戸へ行く。江戸の札差が、左門に折口は札差になろうとしていることを調べて欲しいと頼みに来るが、左門は札差の間者にはならないよと断る。
 赤鞘組を潰すことになり入金の道を断たれ、自分の意の侭に動かす人員も断たれた老中は、左門を甲府に飛ばしただけでは収まらず、赤鞘組との連絡役だった先手弓之頭・籐東主税に左門のそ始末を命令する。甲府に帰った左門の屋敷が襲われ、貫太を守った山本を斬られ、鬼界坊は術が復活し、賊は取り押さえられる。賊は幕府先手弓之頭籐東家の郎党だと判り、身分を示す書状が出てきたことで江戸に送られることになる。籐東は牢内で自死した。老中の取り調べには至らなかった。
 左門は江戸へ呼び出され折口の調べの証人にされた。目付けの二村の知恵で左門と折口の顔を合わす。裏切り者という折口に左門は滔々と折口の悪さを述べる。詐欺のような行為で人夫を集め、金を集めたこと。出るはずのない金が出ればとただ働きで人が死んでいく。集めた資金と公儀からの金で札差を始める手筈を整えていること。鑽鉄運送場というのは川から遠い札差を始めるための場所だ。二村に聞かす。そんな場面に、百姓の格好をした人を斬り慣れた男が現れる。死者四人、負傷者七人折口の始末のための刺客だった。左門が相手をし、取り押さえられた。折口は赤鞘組を使っていた老中に対抗する老中が作ろうとしていた資金源だった。刺客を取り押さえるために無腰の左門に脇差を与えた忍びは将軍の信任厚い「兵衛殿」の使う忍びだった。折口の計画も終わった。
 左門は呼び出され、若年寄と「兵衛」の前で赤鞘組を使っていた者も折口の後ろにいた者も「兵衛」も同じような者だと言い放つ。「兵衛」は飼いならすのは無理だったと思った。
おっ放っといてくれという左門の御番入りを取り消し江戸の小普請に戻した。元に戻った。
 老中間の争いに巻き込まれる前に戻ったが、借金がなくなり、金を都合してくれる札差がいて、左門に味方するものが増えた。

2018年3月25日日曜日

御刀番・左京之介⑨ 井上真改

御刀番・左京之介⑨ 井上真改 藤井邦夫
 京の公家家から井上真改が盗まれたと情報が入る。
 汐崎藩の国許で一揆が起こりそうだという情報が入る。殿・家憲の腹違いの兄・祥慶に母の妹・ゆいが国許に帰ったのでゆいを助けて欲しいと言われる。ゆいの叔父・庄屋の伊丹左兵衛が襲われ大怪我をしていた。京之介は国許に帰る。
 一揆の誘いを断った左兵衛は襲われた。一命は取り留める。目付けと共に一揆の誘いを受けた大滝村の庄屋と柴田村の庄屋を捕まえ一揆の目は潰した。一揆の誘いを掛けた破れ寺を隠れ家にする竜聖と黒木兵庫を追う。竜聖は邪魔をする京之介を呼び出すためにゆいを勾引かす。ゆいは助けられ流聖は死ぬ。黒木は井上真改を持っていた。京之介の霞左文字を欲しがった。
 京之介はゆいと一緒になることになった。
 江戸に行った黒木を追い江戸に戻る。黒木は諸藩に騒ぎを起こし、闇討ちを請け負う羅刹組の頭だった。直接命令を受けていたのは、沼津藩江戸留守居役・松島清兵衛だった。松島の後ろに土方縫殿介がいるのか?汐崎藩を取りつぶし沼津藩預かりにし、幕府直轄地にし、水野忠成を大老に押し上げる計画だった。松島は黒木に汐崎藩から手を引くように命じ、沼津藩の影目付けに黒木を殺すように命じる。京之介は黒木を助け出し、松島が土方を出し抜き、忠成の懐刀になりたがって計画したことだと聞き出す。黒木を倒し、井上真改を手に入れ、元の持ち主に返す。
 松島清兵衛を殺す。
 江戸に帰ったゆいを汐崎藩江戸上屋敷に入れた。
 

2018年3月24日土曜日

新・剣客太平記〈八〉 哀歌

新・剣客太平記〈八〉 哀歌 岡本さとる
 峽竜蔵を狙う者がいる。
 久しぶりに会った昔馴染みの髪結いが殺される。師範代に次ぐ壮介が浪人風の者に襲われる。母・志津が勾引かされる。竜蔵を狙う者を師と呼ぶ弟子たちがやったことだった。
 昔、藤川道場で下働きをしていた廉三だった。剣術の稽古もしていた。時綾に言葉を残し藤川道場を去った。荒くれ剣客の弟子になり、人斬りになっていた。綾と一緒になり剣客と言われる竜蔵と闘いたかった。峽道場で果たし合いをし、廉三は敗れた。

2018年3月23日金曜日

新・古着屋総兵衛〈十五〉

新・古着屋総兵衛〈十五〉 故郷はなきや 佐伯泰英
 信一郎とりんはベトナムで勝幸とふくの母親・総兵衛の母・恭子と会った。襲われる危険があるのでイマサカ号に保護し、日本に行くことになった。ベトナム統治者・嘉隆(ザーロン)と会い、交易が決まった。
 人を雇って総兵衛を殺そうとする旗本の用人・前畑叡五郎は総兵衛を殺すために雇った築後平十郎に髷を落とされた。糸を引いていた甲府屋輿兵衛とともに総兵衛に殺された。総兵衛を殺し、大黒屋の後がまを狙っていた。

2018年3月22日木曜日

空也十番勝負 青春篇③

空也十番勝負 青春篇③ 剣と十字架 佐伯泰英 
 五島列島に行く。
 長崎で何人もの人を殺したラインハルト神父が野崎島にいた。長崎から長崎会所から派遣されたしま(高木麻衣)に頼まれラインハルトと剣を交えることになる。ラインハルトは一人ではなかった。双子だった。ラインハルトを捕まえ長崎に連れて行くと隠れキリシタンのことが公になるので、殺した。他のラインハルトを殺すためにやってきて殺された人と一緒に埋めた。
 五島にも薩摩藩旗をあげた船がくる。

2018年3月21日水曜日

紅雲町紅緋屋こよみ④ 糸切り

紅雲町紅緋屋こよみ④ 糸切り 吉永南央
 紅雲町にある五軒だけの商店街ヤナギ・ショッピング・ストリート。ヤナギ全体の改装をすることになった。草は電気屋の前で車に撥ねられそうになり改装を知った。設計は注目の若手建築家・弓削真澄だった。誰にも知られていないが、弓削は所有者・水上手芸店の千景の前の婚家に残してきた娘だった。千景の九十を越えた姑は、昔あった辰川といううどん屋さんの壁を壊すことに反対だった。壁には古谷敦の絵があった。壁の絵は残されるように改装することになった。古谷の絵を買い取りたいというジェイコブソンという収集家がいる。草は辰川屋の息子が子どもの頃の作文を読んで、古谷の香炉がセメントで設置された灯籠になっていたことが判った。最終的にはジェイコブソンの元で保護されるようだ。

2018年3月19日月曜日

紅雲町紅緋屋こよみ③

紅雲町紅緋屋こよみ③ 名もなき花の 吉永南央
 小蔵屋がコーヒー豆を仕入れている有限会社ミトモ珈琲商会の社長が替わる。紅雲町にミトモの直営店が出来るという噂がある。新社長は会長の娘。会長と話し、井さんと話し、最後に紅雲町の視察に来ていた新社長と話す。草の言っていることが社長に伝わっていない。会長の話しが社長に伝わっていない。草は親子の仲だもの直接伝えたらと伝言する。社長は紅雲町には出さないことにした。草の店・小蔵屋より紅雲町にぴったりな店は出来ないと判ったから。
 二で由紀乃は九州に行ったと思っていたが、そんなそぶりもなく普通に同じ状態でいる。由紀乃の夫の従兄弟に勅使河原という郷土史家がいる。郷土史家の弟子たちの中に、藤田と萩尾がいる。草は新聞記者・萩尾の高校生の頃から知っている。勅使河原の娘・ミナホは草や由紀乃の通っている美容院の経営者。
 勅使河原は円空仏を見付けたことで有名だったが、蟠りがあった。本当のことが判った。
十五年前、高校生のミナホは萩尾が見付けるように藤田に頼み円空仏の贋物を研究していた寺に置いた。見付けた萩尾は喜んで勅使河原に見せた。萩尾の捏造と思った勅使河原は論文にまとめた。届けるはずがないと思っていた論文を、本物と信じる萩尾は研究者の元へ届けてしまった。萩尾は自分の発見を先生の発見とされてしまったことだけが残った。研究者には止めてくれと言ったが新聞社に送られてしまった。恩師の顔を潰せないで今まで来てしまっていた。円空仏は科学鑑定される前に盗まれていた。それが草の手元に現れた。隠したのはミナホだった。恩師が亡くなり、勅使河原は発表した。草は萩尾の今後に道筋を付けと欲しいと頼んだ。
 萩尾は日本文化関係の研究センターに入った。ミナホと会うつもりだった。

2018年3月17日土曜日

入り婿侍商い帖 大目付御用〈二〉

入り婿侍商い帖 大目付御用〈二〉 千野隆司
 米問屋和泉屋の親子が差し違えてなくなった。嶋津惣右介は二人が殺されたとみて調べる。和泉屋は武蔵岡部藩の御用達だった。岡部家は三河に七千石の領地があった。吉田藩と接している。吉田藩の米を牛耳る千草屋が和泉屋の御用達を狙っていた。
 角次郎は、大目付・中川忠英と会い、和泉屋の事件を調べることと、三河を治める次席家老・蓮見工内のことを聞く。岡部藩主に宜しくと言われる。
 和泉屋の仕事に妨害が起こるが岡部藩ご用達に齟齬が起きないよう大黒屋が協力する。蓮見の不正を調べ上げた寺原を襲撃する。角次郎たちが防ぎ、捕まえた。和泉屋殺した犯人が町奉行所に送られる。千種屋の下で働いていた房川屋の扱っていた岡部藩の上野の九百石を大黒屋が扱うようになった。房川屋と千種屋の関係まで行かなかった。
 札差神崎屋の主人と父親・兄との仲を取り持ち、神崎屋は大黒屋に八百両で株を売った。札差・羽黒屋が誕生した。

2018年3月16日金曜日

仕舞屋侍④ 夏の雁

仕舞屋侍④ 夏の雁 辻堂魁
 地酒問屋の三雲屋の内儀・曾良の依頼で七雁新三を調べることになった。
 七雁新三は曾良の双子の兄だった。岩槻領勘定方・日比野信兵衛の息子と娘27才。
 信兵衛は二十一年前、酒造業者に造石高以上の酒作りに目をつぶり運上冥加を懐にいれていたことで不正を咎められ駆け落ちをはかり、増水した川にはまって亡くなったことになっていた。本当は不正を知った信兵衛が江戸へ知らせに行く途中、勘定奉行配下に殺されていた。殺す時に利用された船頭の昔はなしを聞いた新三が船頭を殺したことから復讐が始まる。
 息子・太一郎は商家から逃げ出し、柿右衛門に育てられた。娘・紗衣は吉原へ売られ曾良と名乗り、花魁になり七雁となった。三雲屋に身請けされた。
 新三は料亭に集まる勘定奉行配下を殺すつもりだった。仲間の三雲屋もいる。曾良は新三が復讐をしないよう止めて欲しいと頼む。新三は復讐を果たす。すぐ、江戸を出た。生き残った三雲屋は二十年間の不正を訴え出た。三雲屋は岩槻領の店を失った。勘定奉行は切腹した。

2018年3月15日木曜日

アンティーク弁天堂の内緒話

アンティーク弁天堂の内緒話 仲町六絵
 谷崎紫乃には「ふることぎき」と呼ばれる力がある。紫乃にそのことを教えてくれた祖母は亡くなった。古い者が持つ過去や心を知る力。紫乃は声が聞こえる。
 京都の久多で育った紫乃は高校に行くために京都市内で下宿をする。祖母の残したガラスの白鳥に小さな人が乗っている。見えているのは紫乃だけのようだ。現れた弁財天に教えられた骨董店に行く。白鳥に乗っていた人は、盆の送りの日に祖母が亡くなり帰れなくなっていた。骨董店の店主・影近洸介が送り出した。
 骨董店はアンティーク弁天堂。影近洸介は、竹生島の弁財天の孫だった。紫乃は弁天堂でアルバイトをすることになった。洸介は紫乃と呼ぶ。
 野良猫を守っている猫神さまがいる。弁財天と鏡を通して話が出来る。洸介と手を繋ぐと持ち主や昔の光景が見える。
 茶箱のこころ 買い取りをお願いしたいと持ってきた客の抹茶腕が寂しいと言っていた。桜柄の茶碗を「春の茶箱」にセットした。茶碗の桜の花が増える。御客様は売らずに全てを買って帰る。家を離れた娘に送る。娘さんから礼状が届く。
 茶人はめぐる 紫乃は洸介と東寺の弘法さんに行く。洸介は茶ノ木人形を買う。利休が切腹前に細川三斎に送った利休が彫った茶ノ木人形だった。細川家の私立美術館・永青文庫へ行き、茶杓「ゆがみ」と対面する。洸介は道を付けた。後日、永青文庫の近くに住む男が、茶ノ木人形を買って行く。
 魔女のチャームブレスレット イギリスからのお客様。ブレスレットのブックロケットを開けると妖精たちが現れ歌う。彼女は魔女のお孫さん。
 閻魔大王と愉快な仲間たち 毎日眠れない里沙を弁天堂に連れて行く。里沙には牛頭と馬頭が付いていた。閻魔大王を盗もうとしている者がいる。寺の住職に閻魔大王を渡さないと村の人間に危害を加えると脅している。聞いた洸介は牛頭馬頭を連れて湖北へ行く。閻魔大王を手に入れた泥棒が警察のパトロールに引っかかる。窃盗団は捕まった。

2018年3月14日水曜日

たった月2万円の二人ごはん

たった月2万円の二人ごはん 奥田けい
 夫が借りてきた。作ったのは「ピリ辛こんにゃく」

2018年3月13日火曜日

おれは一万石② 塩の道

おれは一万石② 塩の道 千野隆司
 塩仲買問屋伊勢屋の跡取りが倒れてきた醤油樽に当たり亡くなった。高積み見廻り与力・山野辺蔵之介はただの事故ではないと調べる。都倉屋が伊勢屋を手に入れようとしていた。
 高岡藩井上家継嗣となった正紀は、高岡の河岸場を貸し舟運送の中継地にしようと考えた。行徳の桜井屋長兵衛が伊勢屋の借金を払い下り塩仲買の世界に踏み込み、高岡に塩の中継地をつくることにした。納屋を建て初めての塩を高岡に運ぶ途中、邪魔をしようとした者に塩を盗まれる。予想していた正紀は、盗人を捕まえる。高岡藩国家老・園田頼母の腹心・鵜川がいた。都倉屋の番頭・弥七がいた。塩を高岡に運び入れ、盗賊が捕まったことを聞いた園田は切腹した。
 捕まった弥七が、都倉屋の命令で伊勢屋の運ぶ塩を横流ししたこと、醤油樽をわざと倒したこと、実行した杵蔵を殺したことを白状した。弥七の家族は高岡へ移り住んだ。
 正紀の母が、正紀のために京が手放した黒の茶碗の代わりに大切にしていた赤の茶碗をよこしてくれた。正紀は京に茶を点てた。


内田康夫没 83才

2018年3月12日月曜日

栄次郎江戸暦19 影なき刺客

栄次郎江戸暦19 影なき刺客 小杉健治
 栄次郎が顔のそっくりな「高樹清四郎」に間違われて刺客に襲われる。清四郎は備中水沢家の殿様の息子だった。中屋敷にいる息子・忠常の行状が悪く、殿様が清四郎を次期藩主にしようかと言ったため、忠常派に命を狙われた。清四郎は何も知らなかったが自分の留守の間に父母、妹、妹の許嫁が殺され、父の友人に清四郎のこと殺した者のことを教えられ、敵討ちのため江戸に出てきた。
 全てのことを調べた栄次郎は清四郎と、殺害の刺客を出した的場伊右衛門の果たし合いの場を作る。徒士目付けの兄・栄之進は的場家の存続を約束する。
 栄次郎は囮になり、家来を忠常から遠ざけている間に清四郎は忠常に近付き、髷を落とす。
 清四郎は国許に墓を立て仏門に入るという。忠常の側に仕え、清四郎を殺そうとしていた畑伊十郎に、心を入れ替え、御家のために尽くすと言う忠常を見極め、忠常は藩主にあらずと思われれば清四郎を探し出せばいいと言う。

2018年3月11日日曜日

鎌倉河岸捕物控㉛ 島抜けの女

鎌倉河岸捕物控〈三十一の巻〉 島抜けの女 佐伯泰英
 宗五郎たちは京に行き江戸を不在にした。
 愛猫・菊小僧が盗まれたが広吉が探し出した。
 大坂奉行の時の捕まった小田切奉行に恥をかかせて恨みを晴らすと、夜桜の寅が島抜けをした。大坂屋に賊が入る。政次らは隠れ家を突止め捕らえる。寅は殺された。寅と小田切の関係は臥せられた。
 亮吉は夜分寄った屋台の蕎麦屋で押し込みの話をする二人を見付ける。蕎麦屋の爺さんに連絡を頼み盗人の見張りをする。押込む前に飛び出し、匕首で刺される。押込む早々政次が駆け込み奉行所のとりかたも来て捕まった。亮吉が気がつかない間も菊は看病する。四日目の朝、目が覚める。
 京都野一行がかえるしたくにとりかかる。

2018年3月10日土曜日

はりま伝説散歩

はりま伝説散歩 編集・橘川真一
 大国正美・尾崎美紀・甲斐史子・岸本道昭
 夫婦で姫路城に行き、お菊井戸を見た私が、「こんな所にお菊井戸があるのはおかしい」と言ったために、夫が図書館で借りてきたきたのがこの本だった。
 私は、遠足・写生大会は法華山一乗寺、蕨取りは古法華(ふるぼっけ)で育った。
 650年孝徳天皇が大伽藍を寄進、一乗寺の創建、法道仙人説、高砂一帯の古代渡来系の人々の神仙思想。
 古法華、繁昌廃寺・殿原廃寺・吸谷廃寺(くだに)は白鳳期の寺院跡
 江井ケ島、室津の話しも面白かった。

2018年3月6日火曜日

紅雲町珈琲屋こよみ②

紅雲町珈琲屋こよみ② その日まで 吉永南央
 如月の人形 フリーの設計士・田沼と田沼が預かっている姉の息子・タケルと小蔵屋の草と久美はお近づきになる。姉の離婚話しが決着するまで預かっている。
 カメラマンを夢見ていたが諦め温泉施設で働いていたが、温泉施設が亡くなりライカを売ろうとしていた男がいた。ライカを売ったが母親が買い戻し、男の手元に戻ったようだ。 
 久美は田沼とタケルと三人でスキーに行く約束をするが、タケルの母親が離婚を止めることにしたようで、タケルは母親の元に帰った。田沼とのスキーの約束も無くなったようだ。
 卯月に飛んで 青砥27才が福祉作業所のキャンドルを店に置いてくれないかと来た。草は断った。近くに雑貨屋「つづら」が開店した。キャンドルも置いてある。ラジオで言っていた。
 温泉旅館に行くとライカの男がいた。田沼が声をかけて雇ってもらえたらしい。ライカの男は、自分と田沼の違いを田沼は本来の仕事以外の物にも心を配るという。
 草は小蔵屋に置いて欲しいと送ってくる瑠璃釉の青い器に蝋を入れ「水の明かり」と名付けて夏限定で売り出すことにした。定価四千二百円、たんぽぽの取り分は一個千円
 明日の結婚式の引き出物が10個欲しいと若い二人がやって来る。つづらで頼んでいたが数が足りなかった。お金を返したらいいでしょと言われていた。青砥が小蔵屋なら何とかしてくれると教えてくれたと言う。青砥の娘三才がまだ歩けないという。
 水無月、揺れる緑の 三十年振りに会った彫刻家の須ノ内ナオミが草に頼んできた。病気のようだ。アメリカに移り日本に帰らないだろうと言う。三十年前にアメリカへ旅立つ日、旧講堂の窓辺にいたのは誰かを知りたいと言う。私の油絵の道具を焼いたのは彼女だから。
ナオミが高校生の時に草と出会った事件を思い出し、ナオミの同級生に尋ねる。ナオミと連絡が付かなくなってナオミの妹・洋子に相談する。日本に馴染めず、がんじがらめにする母から逃げるように離婚し自国に帰ったの父の肩を持つナオミは、母に嫌がられ、洋子は何でも母の言う通の子だった。今では洋子も判っている。洋子が油絵道具を燃やしていた。近くのに深緑色のスカーフを置いた。そしてあの日、自分の仕業と判るようにスカーフを振った。
 駅の西口の円形広場にナオミのグリーンフラッグ__始点もしくは終点__と言うタイトルだった。全く同じ物がニュウヨークにもある。
 葉月の雪の下 香菜というカレー屋さんを知った。店のオーナー香菜さんは脅迫され小遣いを渡していた。詐欺まがいの方法で安く店を手に入れたから仕方ないと言っていた。香菜の友人の江戸小紋の職人・妹尾を紹介される。妹尾の雪の下の夢と名付けた着物を借り、香菜に着せる。香菜に妹尾は全てを知っていると教える。見守っていると。
 神無月の声 香菜の不動産屋と同じようなことが何度もおこなわれていた。香菜は加害者側で心を痛めているが、つづらも同じらしい。前は和菓子屋だった。温泉施設も、ナオミと同級生の寿司屋も引っかかったようだ。
 師走、その日まで ダイデン不動産と長要とマルフジが不動産詐欺に近いことをしていると気が付いた。マルフジの会長は昔、草と見合い話しがあった人で、呉服屋をしていたのでアルバイトをしたことがあった。草は断るために無断欠勤をした。会長は藤原一京、草は会いたいと一京の居場所を探す。一京は血がつながらないが次男を愛した。自分から離れていかないように東京の彼の職場まで手を延ばした。次男は田沼だった。田沼は長要とダイデンとマルフジの仲がおかしくなるように画作していた。草が一京と会っている所に田沼にナイフを突きつけた男が入ってくる。田沼を刺す直前一京は田沼を庇い自分が刺された。田沼の思い出「ぼくを探しに」を一京が大事にしていること、田沼が作ったモビールを一京が持っていることを知る。

2018年3月4日日曜日

仕立屋・琥珀と着物の迷宮〈2〉 

仕立屋・琥珀と着物の迷宮〈2〉 旧暦屋、始めました 春坂咲月
 奈良町の端っこに琥珀の仕立屋「旧暦屋」はある。
 何屋か判らない。和風小物が売れる。前の喫茶店に人形がいっぱい。その人形の小物があるのが旧暦屋だった。離れに表具師・銀次と由依が住み、琥珀の仕事部屋と佐山祭文が反物を広げる部屋、箪笥を並べディスプレーの部屋。二階は琥珀の住み家。
 今日の料理は?、セルジュの仲間をさがしてきたら。
 今日の料理は鰹。セルジュの仲間を探して着たらで海老茶のウール着物と浅葱色の襦袢すててこを用意し着せる。
 アルバイトを辞めると言い出す八重に琥珀は「琥珀色の風が次のように娘に伝えて参りました。旧暦屋にない密とはなにか」このなぞなぞが解ければ辞めても良いと言った。
 誕生日のお祝いプレゼント、桜色で牡丹柄の繻珍の吾妻袋。牡丹の簪を貰う。
 八重は旧暦屋の拘りについて、嫌味なくスマートに美しく、手水鉢を使いおしぼりを出し、手袋をはかないで呉服物を扱う。
 〈きぬ、よして〉のイベントの二部にファッションショーを行うことになった。八重は琥珀の質問の答えを探すために表向きは着付けを習うため、琥珀の仕事ぶりを確かめるために毎日旧暦屋に通う。ファッションショウが終わった時、すべてが解き明かされる。
 ファッションショウで使われたのは琥珀が持っている人間国宝の着物だった。着物を盗みに来た僧がいた。罠を仕掛けて捕まえた。彼は結婚詐欺師でもあった。詐欺にかかった娘が亡くなっていた。僧を預けられた人形供養をする和尚は怖がらせ震え上がらせ悔い改めさせたかった。現場を見た八重に10年後位に娘の両親に話して欲しいと言う。お礼に東京でホームページ作成会社に務めていた和尚に琥珀は旧暦屋のホームページ作成をお願いする。
 八重に出されたなぞなぞは、琥珀がレンタル着物やをやって欲しいと頼んでいる雛菊さんの問いに対する答えでもあった。
 琥珀の雛菊に対する答えは自分はまだ真の花ではない。己は時分の花であると承知しています。ということだった。八重が見付けたのは旧暦屋には休みが無いことだった。
 持ち帰りが出来るレンタル屋を出してもらえることになった。雛菊さんは和裁教室オーナーだった。〈箪笥の肥やしを増やそう〉プロジェクト。
 琥珀が八重に言う。この路地の土地と建物は、東雲という資産家の夫人の持ち物だった。それがいつの間にか琥珀の祖母の持ち物になっていた。人間国宝の着物も同じ、雛菊さんは何かを知っているだろう。
 雛菊の後ろに誰かがいる。

2018年3月2日金曜日

仕立屋・琥珀と着物の迷宮

仕立屋・琥珀と着物の迷宮 花を追え 春坂咲月
 仙台の夏の夕暮れ。篠笛教室に通う女子高生・八重は、着流し姿の美青年・宝紀琥珀(とものりこはく)と出会った。
 篠笛の袋を貰う。
 琥珀は着物の仕立屋だった。着物にまつわる様々な謎に挑む。
 着物を着ると泥棒になると言う三才の女児に七五三の着物を着るように仕向ける。姑と嫁のいざこざになっていた女児の着物。宮参りの一つ身で着物を作り、被布を作る。母親のワンピースも着物で作る。
 八重には着物にまつわる嫌な思い出があった。鎌倉に住んでいた小学一年生の時のことだった。父は知り合いから辻ケ花の古裂を盗み、無罪を主張したがロッカーから出てきたことで犯人にされた。父母は離婚した。父は八重に会いにきていた。花は八重に渡す。辻ケ花のことは誰かに聞かれたら自分のことだと言いなさい。名前が守ってくれると言った。父は亡くなった。八重が一人でいる時、数人の男が押し入り、布団やクッション、枕等を切り裂いた。七五三の赤い晴れ着も縫い目を解かれた。八重も裸にされた。晴れ着の布を身体に巻いていた。
 気がついた時、隣の青年が「大丈夫?」と声をかけてくれた。それが現在の父親・陸郎だった。
 琥珀に話して思い出した。裸のはずだったのに、陸郎に声をかけられた時、服を着ていた。睦郎より前に服を出してくれたお兄ちゃんがいた。鎖骨の下のほくろを琥珀は知っていた。琥珀は何も言わなかったが、琥珀は小学生の時から八重を見守っていた。
 辻ケ花の生地で作ったシュシュを貰う。
 昔、家に押し入ったのは怪石と言い、琥珀の知り合いだったことが判った。
 連絡がなかった琥珀から葉月八日に奈良の家で待っていて。という手紙を受け取った。
 奈良の家に配達された小包を奪われた。見張っていた琥珀が捕まえたのは仙台で篠笛を習っていたムッシューだった。ムッシューと琥珀と怪石と琥珀の友達で呉服屋の祭文と八重の五人。八重の父は俳号を深見と言った。辻ケ花とは昔、牡丹の花だった。父が手に入れたのは牡丹の花・八重のことだったのだ。琥珀は説明する。
 話しは十五年前になる。辻ケ花が縫い締め絞りでないと話しが出て古裂が暴落すると困るムッシューが深見の学会発表を止めるために盗難事件をでっちあげていたことを暴露した。ムッシューの小包盗みを調べる口実に車を調べると、余罪が出てきた。逮捕される。琥珀はこのために絵巻物の贋作まで用意していた。
 みんなが帰った後、本当の父からの贈り物が届く。最高の振り袖だった。牡丹柄の麻の赤い帷子の一部・本当の辻ケ花の裂を背にかけつぎをしたような琥珀が仕立てた振り袖だった。振り袖は名取屋の堅田に預かって貰う。
 八重は奈良の大学に合格した。奈良に行くと何も知らないはずの琥珀が奈良に来るはずだと店を出していた。
 琥珀は人魚姫は自分だったという。