2024年4月8日月曜日

すべての神様の十月

すべての神様の十月 小路幸也 
 2022年10月14日 何も書いていないのでもう一度読んだ。

 幸せな死神 バー・キャリオットで、ウィスキーを頭から注がれ榎本帆奈に見えるようになった死神。彼女との契約が成り立ちアパートの彼女の部屋にも行けるようになった。死神の幸せは誕生に立ち会うことという死神。花井帆奈になり赤ちゃんの誕生の場に死神を招待する。生命の誕生は素晴らしい、うれしいこと、幸せですねと言いながら死神は消えて行く。名前がないと言う死神に、赤ちゃんと同じ名前を付けた。私が死ぬ瞬間に来てよ。久しぶりですねって会いに来て看取ってよ。

 貧乏神の災難 自分の家が貧乏だと話す池内雅人25才。国立大学卒、三年で三社を首になった。話す相手は、貧乏神。雅人はそんなことは知らない。大庭と名乗ってもう会うことも無いだろうと話す。雅人の両親はよい両親だ。雅人の強運が発揮されると彼の両親は堕落してしまう。そうならないように貧乏神は彼に取り憑き彼の強運人生を〈小吉人生〉に変えてきた。貧しくとも幸せな人生を歩んでもらうために。貧乏神は、福の神と話している。彼は強運で莫大な富を手に入れる。最愛の母を失い、得たものを報われない人のために使おうとすると。福の神はこのバーを教えてくれた死神が消えたと話した。
 
 疫病神が微笑む  叔父・森山晴行が開業している小児医院に勤め初めた、看護師千佳21才。森山先生29才、イケメンのためお母さんからのアプローチが激しく、困った先生は、お母さん達に対して事務的で冷たい対処をするようになっていた。そんな中で、千佳は、保護者のように患者に付いてくる和服の夫人を見付けた。千佳はお大事にと声を掛ける。先生に、和服美人が見えるのは自分だけだったと聞かされる。今度見えた時に尋ねることにした。ドアを閉めあなた何者ですか?診察時間後彼女は来た。疫病神・小百合さんだった。疫病神が子供を病気にするのは、母親に子供と向き合わせ生活を変えるよう警鐘を鳴らしていると知った。先生のお母さんに対する態度が変わった。お母さんに微笑みながらお母さんを元気付ける。現れた疫病神の小百合さんは、微笑んでいた。先生が明るくなった。彼女が出来て結婚が決まった。

 動かない道祖神 オレは、交通整理の仕事場で少女から拾った財布を預けられた。交番へ持って行ってと。オレは忙しくてナカさんに代わって行って貰った。落とし主が現れ、入れていた58万円がないと騒ぐ。ナカさんは一週間休まなければならなくなった。オレは、少女が母親の財布から抜き取って隠していた56万円をくちばしで挟み、表に出す。母親がホストに貢ぐ金を持って行かさないように抜き取っていた。今から親子はどう建て直すか?
 道祖神のなかさんと八咫烏の私は見守る。

 ひとりの九十九神 大学を出て就職浪人を一年し、地元の印刷会社にグラフィックデザイナーとして就職した。一人暮らしを始めた部屋に、おばあちゃんが使っていたお釜を持って来た。幼稚園の頃からこのお釜は放しかけてっくる。九十九神だと言うお釜。彼女が出来た。彼女の前で父親が、母親の病気のことを話した。二人で母親の病気の心配をしている時、お釜が話しかけてくる。大丈夫おかあさんは助ける。そう言ってお釜は笑った。そして割れた。母親は良くなった。一年半後結婚した。よう久しぶりと電気炊飯器がしゃべった。

 福の神の幸せ 

 御蒔け・迷う山の神 

2024年4月6日土曜日

鬼役伝〈五〉 武神 

 鬼役伝〈五〉 武神 坂岡真

 市川団十郎が舞台上で殺された。犯人は生島半六。その場で捕まった。団十郎は猿婆の命の恩人である。事件の真相を突き止めようとする、行き着いた先は弾左衛門だった。弾左衛門と会い、弾左衛門から事件の裏があると言われる。
 求馬は、御用之間で橘主水から密命を受ける。相手は五十崎玄蕃。今将門を名乗る無頼の頭だという。納得できないと密命を受けられない求馬は会いに行く。求馬は五十崎が悪だと思えなかった。中町奉行所内与力・荒尾に声を掛けられ五十両で乞胸頭に誘われていた。五十崎は乞胸頭になり、浪人を率いて謀反を企てた首謀者として斬首され、市中引き回し晒された。
 会津屋五兵衛の灯心造りの利権を得るために団十郎が殺され、五十崎が捕縛された。老中・阿部豊後の右腕となるべく奥右筆・速水数之進がいた。
 切腹を覚悟で城中厠で速水を殺した。

 矢背から酒呑が江戸に来た。東山天皇と近衛、霊元上皇と二つに分かれていた。公弁法親王・寛永寺貫首。右衛門佐局は近衛家と繋がりが深い。
求馬自身の近衛家との繋がりを示唆される。


2024年4月4日木曜日

口入屋用心棒51 五重塔の骸

口入屋用心棒51 五重塔の骸 鈴木英治 

 南町奉行所同心・樺山富士太郎らは、駒込追分の鹿右衛門の隠居所で珠吉の命を狙っていた鉄三を見付け出す。瀕死に鉄三は今際の際に珠吉殺しを依頼したと告白する。殺し屋の正体を明かさぬまま息を引き取る。富士太郎と珠吉は、男妾を殺して姿を消した鹿右衛門を追う。
 翌朝、湯瀬直之進の愛弟子・源六と鹿右衛門の心中事件が判明する。怒りに燃える直之進は、源六の行動から、富士太郎は、鹿右衛門から殺し屋を探す。
 直之進は、源六が勾引かされていた破れ寺と隠れ家として借りていた家を割り出す。死神の似顔絵も作った。隠れ家に行くがもう居なかった。

 珠吉が寝ているところを襲われ勾引かされる。富士太郎は直之進と破れ寺に行く。鉄三は、珠吉を殺すにあたり、浅草寺の五重塔に骸を吊るし、朝日に照らされる惨めな姿を参詣に来る者に晒してほしいと頼んだ。珠吉は生きたまま破れ寺に連れ込まれた。直之進と富士太郎は、間に合った。直之進は、縛ろうとした死神に首を絡まされ締められる。直之進は脇差で死神を突き殺す。

2024年4月2日火曜日

長兵衞天眼帳② ぼたん雪

長兵衞天眼帳② ぼたん雪 山本一力 

 蒼い月代 室町の大店米問屋の三男・岡三郎が、小網町の扇屋・吉野家の一人娘に惚れ、持参金付きで養子に入った。吉野家は、一家総掛かりで、岡三郎を虚仮にすることをたくらんでいた。持参金目当てだった。一緒に住むようになり廻りの岡三郎にたいする気持ちが変わってきていた。
 長兵衛は、四五六が作った鼈甲の眼鏡を渡す時、福徳神社で、宮司に吉野家に幸を運んだのは野島屋の守護神様だ。野島屋から迎え入れた婿殿を大事にするよう言わしめる。

 よりより 村田屋の跡取り・敬次郎は、二年前の地震の前に長崎へ行った。二年の長崎遊学を経て江戸に帰った。江戸に帰った政三郎は、何かにつけ長崎では、オランダではだった。長兵衛は、敬次郎を研ぎ常兄弟に半年預けることにした。
 研ぎ常近くのつきかげで顔合わせをした。敬次郎は、長崎で通っていた店がここの女将の叔母の店だと知った。長崎から帰る前日、女将は敬次郎に唐土から伝わったよりよりという菓子を作ってくれた。敬次郎は、何故女将がお菓子を作ったのか分らなかった。
 二十日間ただただ見ているだけだった。自分の仕事場をあてがわれた日、研ぎ常は、料理屋の小火で使い物にならなくなった包丁類の研ぎを頼まれる。店に行き、常治は取り急ぎの三種・十二本の包丁を粗研ぎから始めた。敬次郎は、板長を筆頭に板前たちが、安堵の色を顔に浮かべたことが分った。
 敬次郎は常治とのはなしの中で、疑問の答えがわかった。唐土から伝わった物が、土地の自前の菓子として大事にしている。異国の物に寄りかからず自前のものに育てることに汗を流せと女将は教えてくれたのだろう。

 秘伝 鰻屋・初傳の傳助52才が鰻場で船から落ちた。傳助は、三年前から息子・太一郎に鰻割きを教え始めた。傳助は太一郎に譲ることを決めた。店を屋台骨から改築することにした。村田屋の眼鏡のことを聞き、村田屋で眼鏡を作ることにした。
 薬問屋柏屋の光右衛門62才は、柏屋秘伝の三種薬・乙丸・丙丸・丁丸の調合をしていた。村田屋で目の検査をする。長兵衞は、光右衛門の目が悪くなりすぎ眼鏡を作れないと言う。光右衛門に、こんな目で調合していて何かあったらどうするのだと言う。光右衛門は、代替わりを決心した。はらを決めれば軽くなった。

 上は来ず 十年前、老舗飴屋の吉右衛門の提案で、室町暖簾組合の冬の間の夜回りを火消し人足に頼むことにした。請負は鳶宿・豊島亭の安次郎、百両だった。長兵衛も一緒に掛け合った。
 長兵衛は、贔屓の芸者・純弥が、金持ちではなくても遊べる茶屋を作る決心をした時、飴屋本舗の吉右衛門と一緒に奉加帳を作り、広目屋の段取りもした。でき上がって分った。あの建物の持ち主は、安次郎だった。上は来ず、中は朝来て昼帰る、下は夜来て朝帰る、下下はそのまま居続ける。

 湯豆腐牡丹雪 安政三年(1856年)十二月六日 長兵衛は新蔵に誘われ王子村飛鳥山の鷹ノ湯にいた。二日目湯豆腐を食べ、按摩を呼ぶ。豆腐のおいしさを褒め、村田屋の眼鏡を話をする。按摩が聞いていた。夜更けに自身番に連れて行かれる。新蔵が十手を見せる。
 豆腐屋の豆助が、事情を話す。室町の村田屋の手代頭・与四郎と名乗る者が、八百善の板長に豆助の豆腐を仕入れさせるため天眼鏡を貢げと言われ、端切れに九両二分を包んで渡したと言う。与四郎は、村田屋の手代の証しだと言って天眼鏡を置いていた。長兵衛は、村田屋の天眼鏡が騙りの種にされたとあっては放っては置けない。豆助を騙りに嵌めた一味が来たと勘違いされたのだった。お金を包んだ端切れと同じものを預かり帰る。
 与四郎が置いて行った天眼鏡に刻まれた番号から与四郎の住まいが分った。差配に、端切れを見せて与四郎のことを尋ねると、与四郎は、去年の地震の時、隣の怪我人を助けに行き、落ちてきた屋根の下敷きになって亡くなっていた。江戸の外れで作る豆腐を名の通った料理屋に卸す仕事が始められそうだと意気込んでいた矢先だった。同じ端切れに包んだ九両二分を出してくる。
 十二月八日、与四郎のことを話に行く。豆助は与四郎に預けた金で天眼鏡を作って欲しいと頼む。

 
 

2024年3月31日日曜日

うっぽぽ同心十手綴り⑤ 藪雨

 うっぽぽ同心十手綴り⑤ 藪雨 坂岡真

 鹿角落とし 綾乃が、去年座員が赤ちゃんを産むのを手伝った女芝居一座が、河原芝居を打っている。勘兵衛は様子を見に行く。幹太郎と名付けられた乳飲み子を抱いたりんに会った。一座の人気は衰えを知らず、連日女芝居は大入り札止めだった。三座からの嫌がらせがあった。夜、縄を切られ芝居小屋が倒壊し、りんは下敷きになり亡くなった。新しく建て直した小屋も、奉行所の見回りをかい潜り、火矢を打たれ焼けてしまう。みんなの応援で、中村座で、りんの法要と名打った一日芝居が行われた。元一揆掃蕩の指揮を執った砂絵師は、佐保之丞一座と一緒に旅に出る。

 足力おでん 勘兵衛は、邯鄲師神輿草、新宿追分えんま屋におりという投げ文を貰い、内藤新宿へ出張る。印伝屋の番頭になり銀次と共にえんま屋を見張る。見せ物小屋の怪力おでんの足力が、神業だと聞き、予約する。勘兵衛は、一朱を出しても惜しくないほど気持ちがいい。でんの話を聞く。飲んだくれの已代治に買われ、逃げようとしても逃げられない。道具として扱われている。三日目、見倒屋備前屋が、九両二分盗まれた。でんに背中を踏んで貰った後だった。勘兵衛は八丁堀で、でんの噂を聞く。でんは夜鷹の元締・伊助に捕まっていた。奉行から礼を言ってもらうことを条件に、でんを引き取る。でんから已代治の居場所を聞き出し已代治を捕まえる。伊助は根岸奉行に呼び出され、夜鷹のために努力するようにと労いの言葉を貰った。でんのこれまでの話をし、連れて行く。備前屋はでんを内儀にする。番頭と心中事件を起こし助かった妾もいずれ溜めから出してもらうと考えている。

 藪雨 三十半ばの女が、袈裟懸けに斬られ胸をひと突き、同じ殺され方で二人が殺された。一人は大店の内儀、一人は、船饅頭。抱え主・与一の行方が分らない。二人は浮瀬のふうと同じ辰巳芸者だった。旗本・黒木が犯人かと名前が挙がる。ふうの廻りに与一がいる。
いちという芸者が訪ねて来た。十五年前に上役に強要され剽げた裸踊りをされたことを少し前に座敷に呼ばれたお大尽に懐かしくしゃべった。ものすごく剣幕で怒り死んでも許さんと帰った。黒木兵馬だった。その時の芸者が五人の内三人が殺された。あと二人はいちとふうだった。勘兵衛は浮瀬に行くが、ふうは斬られ仁徳に運ばれていた。斬った浪人は捕まえた。
 黒木を稲荷の祠に連れ込んだ。与一が仲立ちで浪人を雇い元芸者を殺させたことを白状させた。腹を切ることを強いる。与一を捕まえようとしたが、大川へ逃れた。七日経っても見付からなかった。与一はふうを刺した。ふうは死んだ。浮瀬はこまが継いだ。

 


2024年3月29日金曜日

栄次郎江戸暦30 闇夜の烏 

 栄次郎江戸暦30 闇夜の烏 小杉健治

 矢内栄次郎は、南町筆頭与力・崎田孫兵衛から相談を受けた。商家から二千両以上を盗んだ盗賊の頭が捕まり、手下の闇夜の烏と名乗る者から、三日以内に頭を解き放たなければ、どこかで人が死ぬという脅迫状が届き、すでに一人殺されたという。同心・蕪木真一郎に協力し犠牲者が出ないようにして欲しいと言われる。

 栄次郎は解き放つ気がない奉行所と闇夜の烏の繋ぎの手紙を見張る。また一人死ぬ。三人が殺された。
 頭を捕まえた時、手下を二人逃がしていた。その二人が闇夜の烏だと思われた。盗んだ金の在りかが知りたいのだろうと。一千両の要求があった。が手を付けられず、その後連絡がなくなった。

 栄次郎は、新八と調べ始める。栄次郎と新八が襲われた。
 栄次郎は火盗改めにもはなしを聞き、捕まっている女囚にもはなしを聞く。初めて栄次郎は大御所の子ということを利用した。
 始めに殺された正蔵は、鏑木が妾にしている園の亭主だった。二人目三人目に殺されたのは、逃げた盗賊だった。鏑木は盗賊の隠し金も自分の物にしていた。栄次郎が鏑木に突きつけると夜、自分と共に動いた岡っ引きを殺そうとした。栄次郎は鏑木に素直にしゃべるように諭す。

 若菜から呼び出しがあった。心が弾んでいた。

2024年3月27日水曜日

長兵衞天眼帳

 長兵衞天眼帳 山本一力

天眼帳開き 長屋のさちが、隣の老婆を殺した疑いで岡っ引き巳之吉に捕まった。巳之吉はさちが犯人と決めつけて捕まえたが、間違いでも構わないという考えだった。放してやるから自分の女になれというような。
 さちは助けたい小網町の新蔵は、縄張り違いでも長兵衞に相談し、真実の犯人を捕らえようとする。
 犯人を突き止めたが、注連次は船宿で賭場を開くゑさ新に捕まりす巻きにされるところだった。賭をし、注連次を取り返す。番所で話を聞いてから巳之吉の渡す。さちを取り返した。
 老婆は甥の注連次のためにお金を貯めていた。金を借りに来て、言い争い首を絞めた。金を貯めているという書きつけを見、喜んで叔母を見た時、首を締められ死んでいた。そこへさちが来た。逃げた。注連次もすぐに逃げていた。

 真贋吟味 木場の材木商・檜問屋の福島屋の当主が急な病で亡くなった。当主の弟・川並の岐阜新の新次朗が、もしもの時には後をお願いするという「書残」を預かっていると持ってきた。福島屋の内儀と頭取番頭・中悟郎、息子・豊太郎に頼まれた同心・宮本は、真贋鑑定を眼鏡屋村田屋の長兵衛に頼んだ。長兵衞は、新蔵と共に動くため、富岡八幡の幹次郎に声を掛ける。
 長兵衛は、二通の書残を比べ、福島屋の方には、日にちの脇に小さな点があることを見付ける。天眼鏡で見、米粒の先にも満たない刻印を発見した。主人・矢三郎は、身代を確実に豊太郎に渡すため、傳七親方の元には、わが手でしたためた書残には年号の脇に当該年の干支が押印されている。押印なき書残は、贋作であるという書状を残していた。

 

2024年3月24日日曜日

大岡裁き再吟味③ うつし絵

 大岡裁き再吟味③ うつし絵 辻堂魁

 大岡越前は、評定所で、関所破りの罪で裁かれる絵師・土田半左衛門を見た時、十五年前の旗本内藤家と倉橋家の事件を思い出した。内藤斎樹が倉橋弥八郎を斬り、発覚したため内藤斎樹は切腹し、事は収まっていた。

 越前は、古風十一を呼び、土田半左衛門と、内藤斎樹と倉橋弥八郎のことを調べるように言う。越前は、半左衛門に、十五年前の斎樹を見たのだった。

 十一が調べると、倉橋弥八郎は、若い歌比丘尼・鈴を殺していた。鈴の絵を描いていた斎樹は、鈴をわが娘のように思っていた土田庫之助の手を借りて倉橋を斬る。たまたま自身番の親父に顔を見られたため犯人が、斎樹と言われたことで斎樹は切腹したこになっているが、庫之助の亡くなった息子・半左衛門として絵を描きながら旅をしていた。十五年間見破られなかった偽手形が、偽物と発覚し、磔にされることになった。越前は内藤家の刀自に話す。
 越前は、半左衛門から詳しい話を聞いた。斎樹は淡々と事件の話をした。

 越前をうるさく思っている町奉行・松浪と稲生が、老中・本多に越前の行為を訴えた。本多から聞いた吉宗は、越前を呼び内密に牢屋敷で問いただしたのは何故かと聞いた。越前は全てを話した。

 半左衛門の磔は無くなっった。江戸十里四方追放となり解き放たれた。大岡様の御指図かと問う半左衛門に番士は老中かもっと・・・と答えた。

 十一は倉橋家の用人から命を狙われた。倉橋家の噂が城内を巡っているという。調べていた十一が狙われた。

 古風十一は、密猟者の家を潰し、年寄と幼子のいる夫婦・清吉を連れて行った鳥見役平河民部から夫婦を早く返して貰えるように大岡に頼んだ。

 下り物乾物商・升屋と平河民部の仕手方・軍八郎と餌請負人・伊蔵が召し捕らえられた。
御留場の盗鳥並びに密輸の廉だった。清吉の家を訪ねると村人に助けられ二人は働いていた。
 

2024年3月22日金曜日

芋洗河岸 1 陰流苗木

芋洗河岸 1 陰流苗木 佐伯泰英

 神田明神下にある一口長屋に妻子を連れた侍・小此木善次郎26才が住むようになった。美濃から江戸に来る途中で、妻が懐妊、出産し二年掛かって江戸に着い。
 職業なし、金もなしだが剣の達人だった。陰流苗木の剣術 夢想流抜刀術
 幽霊坂の青柳道場で、客分指導者として月々一両二分貰えることになった。
 大家の米問屋越後屋の、返金額の五分を貰う口約束で、大名貸の取り立てに付いて行き、三十両を貰うことになった。二十八両を越後屋に預ける。
 毎日、道場に通う。
 越後屋の要請で、船で江戸の地図を覚える。
 越後屋の二代前の庶子・次郎助が、一口長屋の譲渡状を持っている六百両と交換すると言ってきた。次郎助の後ろには、悪辣で有名な伊吹一家が付いていた。
 根津権現の近くの荒れ寺の尼に厄介になる。尼が伊吹一家の者が権現に行けないようにしてくれた。譲渡状とお金を自分の物にしようとする次郎助たちを斬った。

 一口長屋は、もともと神田明神の分地だった。越後屋に頼まれ善次郎は守護人となった。一軒屋は要らぬという善次郎の長屋の店賃は無くなった。みなには内緒だった。妻・佳世には伝える。守護人料として年二十五両が入った。

 青柳道場で善次郎に負けた大名の家臣・壱場裕次郎が、隠居し浪人者を集め善次郎を襲った。三遺体の始末を越前屋に頼み、三人の懐の持ち物や手形を回収した。
 十四両あった。差配の義助が持ち、長屋の植木の剪定と崖際の竹垣を新しくすることにした。
 
 一口長屋には何か秘密があるようだ。

2024年3月18日月曜日

うぽっぽ同心十手綴り④ 凍て雲 

 うぽっぽ同心十手綴り④ 凍て雲 坂岡真

笹りんどう 天は照々として誠を照らすーーー。斬首に立ち会った臨時廻り同心の長尾勘兵衛は、罪人の最期の言葉を受け取ってしまった。
 多くの者に慕われていた医師だった。仁徳にもせっつかれ調べる。小栗玄朴。元常陸下館藩の御用医師、殿様が亡くなり辞め国払いになった。
 別の医師に引き取られた幼子・陽太郎9才は、熱を出し、意識が朦朧とし、腐った味噌汁の前で震えていた。母を亡くし拾われた娘・果穂は置屋に売られていた。陽太郎は、家に連れ帰り仁徳に頼み、果穂は置屋と話を付け連れ帰った。
 陽太郎を引き取っていた医者良意は殺された。玄朴が、長屋の店賃の借金の請け人になっていた治助も隠れていたお堂ごと燃やされた。
 玄朴が犯人とされた枡屋の泥棒は、良意と治助が金欲しさと玄朴を犯人にするために計画したものだった。調べていた同心・桐野と岩七は、計画に乗り玄朴を犯人とし、二人を殺した。その犯人も関係がない者に濡れ衣を着せようとした。
 根岸奉行の了解を得、勘兵衛は、幼子に玄朴の仇を討たせた。桐野と岩七を殺した。筆頭与力・宗像は隠居した。

 凍て雲 勘兵衛は、襲われている若者を助けた。若者・垣添兵庫は礼に茶碗を置いていく。兵庫は松江藩の家来で、姉・香苗は藩主お気に入りの側室だった。姉は女中頭とその父による嫉妬から、茶会で毒を飲まされ一命は取り止めたが醜い顔になり、寝たきりになり奥に閉じこめられている。兵庫は「凍て雲」と呼ばれる茶碗を盗んだ。松江藩から返すようにと要望される。勘兵衛は、留守居役に会いに行き、茶碗を返す条件として香苗の身柄を要求した。
 勘兵衛と兵庫は下馬先で、松江藩主と会う。藩主に呼び出された。十日余りで香苗は、山帰来を飲み、自分で寝起きし、家事を手伝えるよう回復していることを報告した。毒茶会に加わった者は蟄居になった報告を受け、兵庫も国元扱いになったが、姉弟は断り町に住むことにしたと伝える。勘兵衛は、晦の茶会の招待状を貰った。

 つわぶきの里 勘兵衛は、町で見かけた、釣りをしている津和野藩出身の紙漉きの職人・平助・坂崎平内に興味を持つ。
 元津軽藩の侍で今は、今戸で土器を焼いている三田村惣次郎という浪人がいる。惣次郎は、七年前、許嫁の深雪が、柿沢彦之進と深い仲になったことを知り、柿沢と話をした。柿沢が逃げるので、「誰かその男を斬ってくれ」と叫んだ。通り掛かりの男が柿沢を斬った。三田村は逃げた。柿沢は右手を失った。三田村が逃げた事で斬った男は、助太刀の証明がなく辻斬りと見なされ八丈島へ遠島となった。三田村が知ったのは、男が遠島になった後だった。その男が坂崎平内だった。三か月前、平内は御赦免船で江戸へ帰った。
 勘兵衛は、その後の柿沢を探す。坂崎の家族を探す。坂崎を連れて見付けた柿沢に会いに行く。柿沢は巣鴨で百姓をしていた。赤ん坊を負ぶった深雪がおまえさんと呼び、かか様のもとへまいろうと子供を左腕でひょいと抱えた。それを見た坂崎は、会うこともなく立ち去った。
 坂崎の妻と娘は、公事宿に住み込み賄いをしていた。会いにいくことは伝えた。坂崎が行くと、宿の入り口に続く道に黄色い花が、鉢植えが敷き詰められていた。つわぶきだった。「父上ですよ」と言った。

 野きつね 勘兵衛は、火盗改与力・堀平太夫の指揮十手を拾った。持病の疝気の痛みに蹲って居る時、豆腐屋の権兵衛に出会った。
 野ギツネ一味が盗みを働いた。今まで人を傷つけたこともなかった野ギツネが、評判のよくない金貸しに押し入り六人を斬り護符を貼って逃走した。同じ時間、「浮瀬」のふうが、瓢屋から二人の賊が千両箱を抱え飛び出し船で逃げるのを見たと言った。賊はふうに手を振ったと言う。護符が貼られていた。瓢屋は被害届を出さない。勘兵衛が店に行くと火盗改が来ていた。
 辻占のきぬが五人組の盗賊を見たという。置屋のこんと知り合う。勘兵衛は、四人に襲われる。
 火盗の堀は、盗人を使って人を殺し金を奪った。本物の野ギツネが、堀と瓢屋の関係を教えるために瓢屋に盗みに入り、十手を置いた。
 堀を呼び出し乱闘になったところに、火盗改の頭・岩村が現れ、堀を捕まえた。奉行・根岸が手配してくれた。
 捕まるつもりで権兵衛は、勘兵衛の前に現れたが、勘兵衛は捕まえなかった。

2024年3月16日土曜日

すべての神様の十月

古本食堂 原田ひ香

「お弁当づくり ハッと驚く秘訣集 」小林カツ代著と三百年前のお寿司

「極限の民族」本多勝一著と日本一のビーフカレー

「十七歳の地図」橋口譲二著と揚げたてピロシキ

「お伽草子」とあつあつカレーパン

「馬車が買いたい!」鹿島茂著と池波正太郎が愛した焼きそば

「輝く日の宮」丸谷才一著と文豪たちが愛したビール

珊瑚は、北海道のマンションで、父母の介護をし二人を看取った。次兄・滋郎が急に亡くなり、自分が好き勝手できたのは珊瑚のお陰、と遺産を残してくれた。神田の古い三階建てビル。一階は自分の店「鷹島古書店」、二、三階は、翻訳書を出版している「辻堂出版」。

 私は、決心し、いつか私にこの店をやらせてもらえないかと珊瑚さんに言った。珊瑚さんはありがとうと言ってくれた。

2024年3月15日金曜日

貸し物屋お庸謎解き帖④ 髪結い亭主

貸し物屋お庸謎解き帖④ 髪結い亭主 平谷美樹

 髪結い亭主 髪結いの道具一式の入った台箱を借りて帰った男が、台箱を置いたまま魚の棒手振りをしている。庸は、男のことを調べる。男は髪結いの亭主だった。女と一緒に江戸を出たが帰ってきた。髪結いの妻は、旦那は名古屋の叔父の手伝いに行っているとふれている。娘の祝言が近く、男は娘の髪を結いたくて帰ってきていた。庸は男の尻を叩く。男は、娘の祝言が近いので名古屋から帰ったことになった。

 割れた鼈甲櫛 五才の三太が、拾った割れた鼈甲櫛を売りに来た。庸は引き取ったが、夜、幽霊が現れ鼈甲櫛は三太の元に帰る。鼈甲櫛には縁談が破談になった女の生き霊が付いていた。瑞雲にお札を書いてもらった庸は、三太の家で結界を作る。現れた霊に、三太の母親は、三太に付くのはお門違いだ。破談にした男に付けという。霊は引き下がった。瑞雲は、大店美濃屋に行った。

 六尺の釣り竿 幼なじみのさえちゃんが、叔父の代わりに上等の釣り竿を借りに来る。叔母が、釣り道具を置いたまま夜出かける。魚は持って帰ったことがないから、浮気を疑っていた。庸は調べに行きたいが、出歩くことを松之助に止められる。庸は二人に部屋を調べてもらい、叔父と会う。荏胡麻を撒き餌にし引っかけ釣りをしていた。

 火の用心さっさりやしょう 火の番人の兵衛六が、拍子木を借りに来る。庸は並んで歩き、夏に死んだことを教える。そろそろ火の番の時期なのに、拍子木を棺桶にいれることを忘れたことも、そろそろ手筈のはなしをしないといけないことも忘れ、番屋で酒ばかり飲んでいることを怒っていた。兵衛六は「火の用心さっさりまやしょう」庸は番小屋で兵衛六の言葉を伝える。拍子木は、若い者に受け継がれた。四十九日だった。

 凶刃と大火鉢 商家の主が、法事の間だけ使っていない空家に集まる親戚のためにと、大火鉢と布団を十組借りて行った。不審に思った庸は、陰間長屋の者に見張りを頼む。松之助の父親の知り合いの盗賊が江戸に来た。空家にいるのは盗賊たちだった。庸は、分ったことを本店の清五郎に話す。清五郎は奉行所を動かし、賊が動く日に役人を手配し、捕まえる。

  

2024年3月11日月曜日

口入屋用心棒㊿ 殺し屋の的

口入屋用心棒㊿ 殺し屋の的 鈴木英治 

 同心樺山富士太郎と中間・珠吉は、世間から蛇蝎のように嫌われていた元岡っ引き津之助と会う。翌朝津之助が無残な姿で発見された。
 津之助を殺した犯人を追う。蛇蝎のようにいわれていた津之助だったが、津之助は、何人もの孤児を育てるためのお金を集めていた。隠居し、孤児を育てることも辞めていた。犯人は津之助に捕まりそうになり江戸から逃げた鉄三だった。鉄三は病気に掛かり命が永くないと分った時、復讐を考えた。自分を捕まえようとした津之助と、じぶんを騙した珠吉を殺そうと江戸に帰ってきた。
 津之助を殺し体力が無くなった鉄三は、珠吉殺しが出来なくなった。そんな時、殺し屋を知っているという鹿右衛門に会った。鉄三は紹介された殺し屋に珠吉殺しを頼む。殺し屋は、昔、鉄三が船乗り水夫をしていた頃の船頭・猪四郎だった。
 鹿右衛門は、直之進が師範代をしている、秀士館の門弟・源六を男妾にしようと誘っている男だった。

 津之助を捕まえようとした珠吉と話し、珠吉が騙していなかったことを知った鉄三は、殺し屋に珠吉殺しを頼んだことを話す。殺し屋の話をしようとした時、鉄三は咳込みそのまま亡くなる。

2024年3月9日土曜日

みとや・お瑛仕入帖④ 江戸の空、水面の風

みとや・お瑛仕入帖④ 江戸の空、水面の風 梶よう子

 兄・長太郎 を亡くした瑛。今、成次郎と夫婦になり長太郎5才という子がある。
 三年前、旗本の隠居・森山様も亡くなった。名付け親であり、長太郎の袴着の用意までしていた。長太郎は、森山の残した脇差を見、菅谷親子の父・道之進から剣術を習っていた。
 秋に、長太郎は袴着、菅谷道之進と花の娘・花甫7才は、帯解きの祝いをする予定。

 瑛は、森山の残した七十年前の袴着の衣装を見、自分には不要でも、別の人には必要な物、大切に使ってくれる人の手に渡る。そんな仕事をしようと思った。

 料理茶屋「柚木」に新しい奉公人・圭太が現れた。柚木の女将・加津は瑛兄弟の母親のような人だった。加津は圭太を褒める。圭太は仕事も手際よくこなし、加津にも優しく、良く気が付き、良く動く。でも、瑛は何かおかしいという思い、胸がざわついた。
 加津は圭太に何もかも任せ、圭太の母と温泉に湯治に行く。
 誰も知らなかった加津の書家になっていた息子が、亡くなっていたことを加津に知らせる。
 柚木の古くからの板前や、女中が辞めさせられ、圭太の連れてきた人たちに入れ替わった。
 大工の頭領から、柚木の建替えを頼まれたことを聞く。施主は、圭太の元いた按摩で金貸しの角市だった。

 瑛は、船を漕ぎ、圭太と二人で話す。圭太は、頑張ってきた女将にもう楽になっていいと言い、寂しい人だと言い、可哀想な人だと言う。私は印判を預かっている。好きに使って構わないということでしょう。角市に証文も書いた。柚木は角市の物だと言った。瑛は、印判は本物かしら?と言った。
 瑛が圭太と話している間に、勘平や、成次郎や直孝が走り廻った。加津と縁のある人を柚木の前に集めた。百人以上が集まり帰ってきた圭太を黙って睨む。圭太は母親を連れて逃げ出した。

 加津は偽印判を渡していた。悪事を企んでいたらいいように使うと思ったから。半分信じていたのに。
 辞めた奉公人を呼び戻した。

 瑛は団十郎のグッズと、光を当てると鏡の背面の細工が映し出される鏡を、売りたい人から買いたい人に縁を結んだ。

 成次郎は何者?

2024年3月4日月曜日

脳科学捜査官真田夏希⑲

脳科学捜査官真田夏希⑲   鳴神響一 
  インテンス・ウルトラマリン

 警察庁サイバー特捜隊の真田夏希は、神奈川県警の刑事・小堀沙羅と休暇を取り、神戸間でのショートクルーズに出発した。楽しい船旅に気分を踊らせたのも束の間、沙羅のスマホに強盗事件の知らせが入る。さらに、傷害事件の犯人を追って、江の島署の加藤刑事たちが船に乗り込んでいると知らせが入る。
 どちらの事件の犯人もクルーズ船にいる可能性が高くなる。そんな中で、若林船長とジャズシンガーの牧村真亜也と沙羅を人質にしたシージャックが起こった。三人を人質に、全ての乗客を個人の部屋に摘め入れ、軟禁状態にされた。連絡をしようとしても海上にで圏外になる。
 パーサーの八代の計らいで、加藤、北原刑事は、夏希の部屋に入り、衛星携帯電話の端末を手に入れる。神奈川県警捜査本部と通信できるようになった。捜査本部に織田がいた。
 犯人は、五億円相当の暗号資産を要求してきた。犯人との話し合いは真田がすることになった。
 海上保安航空基地から特殊部隊SSTが動いた。ヘリが船に近づき犯人からヘリを近づけるなのメッセージが入る。加藤と北原は動いた。見張りを縛りブリッジに向かう。ブリッジには船長、操舵手、甲板手、沙羅ら人質がいた。ブリッジの犯人三人を制圧した。人質だった真亜也が拳銃を持って夏希を人質にし、犯人三人を自由にするよう求めた。夏希は死を覚悟した。その時助けが入った。船内で出会った大沢だった。警察官だった。犯人は全て制圧された。八代も警察官だった。船内に連絡された。これから出発港、横浜港に帰ると。警察本部にも連絡を入れる。

 大沢が真亜也の取調をした。大沢基隆は、警視庁公安外事三課所属の警部補だった。八代尚美は同じく巡査部長だった。
 プルトニウムが盗まれていた。真亜也はそれを運ぶための工作員だった。公安はどこから盗まれどういう方法で盗まれたかを知りたかった。地下保管庫から盗まれ、盗んだのはコードネームC157であることしか知らなかった。

 大桟橋に迎えがいた。アシリアもいた。織田もいた。織田は神奈川県警の刑事部長になったという。織田に県警に戻って来てくれませんかと言われた真田は、よろしくお願いしますと言っていた。

2024年3月2日土曜日

小余綾俊輔の不在講義① 采女の怨霊

 小余綾俊輔の不在講義① 采女の怨霊 高田崇史

春日氏が和邇氏 和邇氏は海人火血族 海人族は海部氏・安曇氏。安曇磯良。
安曇磯良は、春日大明神。
春日大社若宮の祭神は雨押雲根命、別名天叢雲命
磯良を称える歌だった君が代

猿沢も池の采女祭りの采女は?安積采女、聖武天皇の子・安積親王の母親。
郡山へ帰ったとされる安積采女春姫。

天智が亡くなった。天武(大海人王子)による暗殺。
天武は吉野に逃げ込む。
天智皇后の倭姫王が即位、あるいは称制を敷く。
天智と倭姫王の子である大友皇子が、補佐。あるいは称制を敷いた。
このままでは大友皇子が次期帝。
天武はクーデターを起こす。成功した。
皇位簒奪の汚名を残さぬため、大友皇子の母は身分の低い采女だったとされる。
また、天武自身は皇統と無関係な「下層の遊民」ではなく、年上にもかかわらず、天智の弟であるとした。年齢を誤魔化す。
全てを糊塗するため「記紀」の作成を命じた。

2024年2月28日水曜日

すべての神様の十月〈三〉

 すべての神様の十月〈三〉 小路幸也

結ばれたものは 福の神の吉岡と岡橋が、漫画家の大野原顕と小説家の酒井美海と合わし共同で作品作りを奨めようとした。合わせた瞬間縁結びの神が動いた。縁結びの神は人間界に暮していない。会ったことがない。縁結びの神に仕事をさらわれたと二人は思った。

コンビニで恩返し 父が亡くなり、父のコンビニを手伝っていた兄を助けるために弟は、東京から故郷に帰った。弟は彫像家。高校三年の女子に彫像を教える。女の子は猫を彫って持ってきた。兄弟は招き猫にする。彼女は、猫。猫の恩返しでコンビニのために招き猫を置いてきた。 

間に合わせます 神原は、映像を記憶するのが得意。巻き戻しも再生もアップにも出来る。そんな神原が、父危篤の時、不思議なタクシーに乗った。いつの間にか病院に着き、父の死の前に会えた。神原の後輩、鮫島も撮影で使う料理の材料を集めなければならなくなった時、不思議なタクシーに乗った。いつの間にか材料が揃っていた。運転手は同じ、佐藤一郎だった。
 二年後、神原は、佐藤一郎のタクシーに乗った。自分と友人の話をした。佐藤は、自分は韋駄天だと言った。ご馳走の用意はお手の物。そして神原は、八咫烏の末裔だと教えてくれた。映像で覚えて記憶が良い。自由人でしょう。地に縛られず何をするのもどこへ行くのも自由です。神原には覚えがあった。佐藤は末裔は末裔です。家系に色濃く力が出る人が生まれるかもしれない。また教えてあげてください。神様に出会うことがあるかもしれないと。

運が良くても悪くても 木沢は古いバーのマスターに相談にきた。たまたま一緒に暮すようになった潤子という子がいた。その子と住むようになっていろいろ悪いことが起こった。そして母が倒れた。実家に帰っている間に昔馴染みと仲良くなり結婚しようかとかんがえだした。就職し、電話で潤子に別れを言った。そして東京の部屋に帰ると潤子はいない。居た様子もない。そして一年になる。潤子のことが気になってしかたないと話した。マスターは、潤子さんは疫病神だった。疫病神が災いを運んできた。疫病神という神様がプレゼントをくれた。と思えばいいのではないか。
 マスターは道祖神、隣にいたのは潤子さん疫病神。
当たり過ぎる 書道を教えながらボランティアをして生活している農家だった、広い家と土地がある。人捜し、猫探し、剪定、掃除の手伝い。隣の高校の寮生が一人先生の紹介で手伝いに来た。小井戸君は実家に帰らない。小井戸君は、懸賞でもくじでも何でも当たる。そのために父親が働かなくなった。父親に利用されないために家に帰らない。一億と五千万を当てたという。雷獣は、家に雷を落として、その拍子に強運もなくなったと言えばいいと。
 父親は土地を売り、アパートに引っ越し元の会社に戻った。小井戸君も父親と一緒にすむことになった。

気象予報士は雨女 気象予報士をしている私は雨女だ。超能力があるのかと思えるほど雨がふる。それを聞いた後輩の伊勢崎瞬君が、自分の実家に私を誘った。湖の祠の守り人だと言う。湖の露天風呂に入り祠に行く。湖の龍が現れ、久しぶりだと話す。雨女だという土井真里奈だと紹介する。おそらく何百年も昔に、龍神と人の間に生まれた子孫に連なるのだと言う。

方向音痴は治りません 万梨は大学の教育学部で心理学を学んでいる。万梨の彼・二ノ宮凌平の母親がものすごい方向音痴だと言う。万梨は精神科医で心理カウンセラーをしている親戚の大学教授を紹介した。凌平は母の相談に行く。先生は家族の行動記録をつけてほしいと言う。毎日どこへ行って何をしたか。時間ごとに。お父さんと凌平の行動記録を付け、母と妹にも聞いて簡単に聞き取る。十日続けて欲しい。
 母と万梨と凌平で先生を訪ねる。先生は、行動記録を見ながら、母・喜子は、天性の感覚で方違えをしている。生まれながらにして「厄払いの神様」がついているのでしょう。ご先祖に力の強い陰陽師がいる家系かもしれない。物忘れや物理的の事故を喜子の道に迷う方違えで祓って来たんだろう。何も治す必要はないということだった。
 先生も同じ陰陽師の家系、同じ物を持っているとすぐ分った。

座敷童は大人になるのか 柿崎亮太は、父親が意識不明だと警察から電話を貰った。彼女・めぐみも一緒に実家に帰る。二百年以上の古い屋敷の玄関先に松が倒れていた。父親は気がついたが、お手伝いさんが行方不明だった。父親は小松さんは座敷童かもしれないと言う。
 亮太はこの家は自己修復機能があるみたいに思う。九十九神かもしれない。二人は松の木を退け庇の破損を修復した。
 小松さんは現れた。良く気付いてくれましたね。めぐみの髪飾りも九十九神だという。

死神よ来い 死神に恋した夏川麻美。医者になった。小児科医だった。麻美は、親友の奈々子から花井幸夫さんに会ってみない。と言われた。
 風神が飛び込んでき、死神を呼んで解決した幸夫は、死神の幸夫さんに風邪を引いているようだから小児科医に行くように進める。三人の風神も着いて行く。そこの先生は死神が見える先生だから。麻美のクリニックに行く?

地味すぎる あたしは、幼稚園の時からスライムみたいな人が見える。大水で田畑が駄目になった後、作業着で話している二人を見た。おれたちのこと見えてる。土の神様と火の神様だった。自分たちは地味な神様だと愚痴った。
 ほんのちょっと手助けして元の状態にする。
 神様は人間がいるかぎり、望む限りいる。


2024年2月26日月曜日

棟居刑事の証明

棟居刑事の証明 森村誠一

 夏の終わりに熱海の海の沖にある休憩台に男が五人、十二三の少女と二十代の女性七人が休んでいた。少女を除く六人は、女性の出した煙草をくゆらした。五時になりそれぞれの方向へ泳ぎ出した。

 雑木林に生き埋めにされた数十匹のヒヨコの下から変死体が見付かった。政財界に大きな影響力を誇る大物総会屋・税所重信だった。
 ヒヨコを見付けたのは熱海の沖にいた少女・尾形奈美だった。税所の事件を調べるのは熱海の沖で煙草を一本吸った棟居だった。税所の愛人・大杉則子は、熱海の沖で煙草を出した女性だった。
 会社から総会屋税所対策を命じられ、税所から奴隷のように扱われ、自分の命が後半年ないし一年と言われた時、税所を殺すことを最後の目標とした男もまた、熱海沖で煙草を一本吸った八坂正章だった。
 サラリーマン生活の出世は、専務に付いて来たからだと思っていたが、妻が昔税所と関係があり、専務の後ろに税所がいたことが分り、現在も続いているような、息子と娘は自分の子でないかも知れない疑惑がわく。妻が容疑者の一人となり、じぶんも容疑者の一人となったのも、熱海沖で一本煙草を吸った三崎陽一郎だった。
 ヒヨコを埋めた犯人・関野が殺された。関野を追いかけていた男・末岡がいた。暴力団幹部の付き人だったが、幹部が関野に銃で撃たれた。末岡の機転で幹部に玉が当たらなかったのだが、銃を撃たれる所までされたことで末岡は付き人を外された。銃を撃ったのが、対抗する暴力団の下っ端関野だった。税所を埋めたところを、ヒヨコを埋めにきた関野に見られ、関野を殺したのかもしれないと考えられた末岡は棟居たちに捕まった。末岡は関野も税所も殺してはいなかった。末岡も煙草を吸った一人だった。
 もう一人の男・奈美の兄・尾形良一。兄弟の父は、税所に死に追い込まれ会社を奪われた。復讐等考えなかったが、熱海沖で出会い、その後再開し付き合うようになった良一と則子だった。税所が則子を無理やり犯すシーンを見せられ良一は税所を殺した。埋めるところを関野に見られ恐喝されたため関野を殺したと思われた。税所殺しは認めたが関野殺しはしていないと良一は言った。
 八坂が自殺した。関野を殺したと遺書を残して。
 
 一年後、奈美と棟居は熱海沖の休憩所にいた。棟居は関野殺しは、関野のへの恐喝を知った奈美のやったことだろうと思っている。岬の突端に関野を呼び出し、その前に岬の突端の道にオイルを撒いておいたのだと思っている。
 兄と末岡が出所すれば、大杉と三崎を誘ってまたここに集まろうと奈美は言った。

2024年2月24日土曜日

部屋住み勘兵衛 闇の剣 

 部屋住み勘兵衛 闇の剣 鈴木英治

 2012年10月23日参照

 古谷勘兵衛、幼なじみ久岡蔵之介の妹・美音と結婚し、久岡勘兵衛となる。


 2012年10月23日 
古谷勘兵衛 久岡蔵之介 美音 
 跡継ぎの無い若殿の何件ものの死 首を取っていく辻斬り、両方の事件が勘兵衛に関係してくる。
 目付 八丁堀同心
 2014年3月11日 2024年追加
 久岡蔵之介、勘兵衛の弟・松永弥九郎、弥九郎が仕える殿・上田春隆も心臓発作に見せかけ殺される。
 勘兵衛は自分に関係するので調べる。
 器量が優れていると言われる堀井長次郎を上田家に入れ、大名復帰を願う大殿上田隆憲の隠れた弟・剣道指南役・藤井信左衛門の企みだった。

 首を取る辻斬り闇風は、勘兵衛の大きな首が欲しくなり狙ったが失敗、四年間腕を磨いていた。今回も二回失敗する。
 闇風は蔵之介が事件に手を貸す事もあった従兄弟の町奉行所与力・桐沢市兵衛だった。
 友達の左源太が人を殺したと目付けに追われ、勘兵衛の所に逃げてくる。勘兵衛は調べ濡れ衣をはらす。

2024年2月22日木曜日

藍染袴お匙帖⑭ 雨のあと

 藍染袴お匙帖⑭ 雨のあと 藤原緋沙子

 ほととぎす 倒れたと呼ばれて行った先には、今度倒れれば危ないと思われる左兵衛がいた。左兵衛は、四年前、女房が働きに出た先の料理屋の板前と駆け落ちしていた。まさに家を出られてから酒を飲むようになった。十三才の息子・与七は、父親と袋物を縫う職人になるつもりだったが、母親を探すために貸本屋になっていた。この瓢箪長屋は、麻疹が流行った時、東湖が診療した長屋だった。一人も死人が出なかったと東湖に感謝していた。

 馬喰町の八百屋の店主・仙吉の妹・なおが川に浮いて見付かった。千鶴は検死を頼まれた。
首の後ろに指跡があり、首の後ろを押さえて水の中に顔を押し付けられ溺死した。それから川に投げ捨てられたと見た。なおは妊娠していた。なおは水茶屋に務めていた。なおには借金があった。なおには、板前をしているという色の白い富蔵という男がいた。

 谷中の感応寺の参道で、与七は富蔵を見付けた。富蔵はまさが働いている屋台の団子屋で、無視するまさから銭を取ろうとしていた。暴力を振るう富蔵に与七は、木刀を振り回した。富蔵はまさの肩に匕首を突き刺した。
 まさは粋楽の所に運ばれ千鶴が手術した。まさは助かった。家を出てすぐ富蔵から逃げたが、長屋には帰れなかった。長屋に帰ろうと言われても、申し訳ない。帰れないというまさ。左兵衛がもう危ないと言われ、まさは長屋へ。もう理解しているのか分らない左兵衛が、謝るまさの言葉を聞いて涙を流し亡くなった。

 なおの殺しを認めない富蔵。千鶴は、富蔵の長屋の瓶の水の中から髪の毛を見付けた。富蔵は捕まった。
 
 桂治療院に、毎日詰めて来てくれる圭之助と、医師助手をしている道が、いい関係になっているようだ。
 
 雨のあと 松井町の遊女屋の「浪速屋」の遊女から遊女の扱いが阿漕だと相談を受け、元遊女・現金貸しのつねは、浪速屋に談判に行く。男衆に殴る蹴るの暴力を受けたつねは、簪をれんの肩に突き立てた。ちょうど来合わせた同心・浦島亀之助が、つねを捕まえた。番屋で治療をした千鶴。腕の骨が折れ、時間が経てばますます酷くなるかもしれないと言う。
つねは大番屋に送られたが、相手には何らお調べも無いという。
 大番屋へ治療に行った千鶴は、つねに伏見屋という呉服屋の七之助19才が、元気で暮しているか確かめて欲しいと頼まれた。七之助はいなかった。七之助はつねの息子だった。生まれてすぐ伏見屋の前に置いた。伏見屋の主は、つねの客だった。伏見屋には子供がいなかった。五年後に子供が産まれた。七之助は、山口泰安という医師のところに行った。
 
 泰安は良い医者だったが、紀州家の出入り医者で、良くない者に利用されていた。泰安が殺された。泰安が最後に行ったのは旗本木島家だった。木島左門。泰安を詐欺の手先に使ったのは木島左門だった。遊女屋浪速屋の主も木島左門だった。
左門一行が屋敷から出た。浦島は捕まえようとする。千鶴も助ける。左門を倒し、詮議を受け罪を償えと言ったのは求馬だった。

 根無し草だという七之助に千鶴は、つねのことを伝える。つねが大番屋から出る時、七之助は、おっかさんと迎えに行った。

 
 

2024年2月20日火曜日

大江戸科学捜査八丁堀のおゆう⑨

大江戸科学捜査八丁堀のおゆう⑨ 山本巧次 
 抹茶の香る密室草庵
 
 茶問屋の清水屋が、根津の寮の茶室で殺害された。居合わせた南町奉行所の与力・戸山の証言によれば、被害者の入室後、茶室に近づいた者はいないという。
 戸山の呼びで、駆けつけた同心・鵜飼伝三郎、岡っ引き・源七・ゆうは、聞き込みを始める。
 源七とゆうは、同じお茶関係の駿河の名主・徳左衛門殺しとの関連も調べた。徳左衛門は何か訴えがあって馬喰町の宿に泊まったようだが、茶問屋を訪ねたと思われるが、土左衛門で見付かった。徳左衛門は江戸では茶の値段が上がっているのにも関わらず買い取り値が、あまりに安く抑えられていることで訴えにきていた。茶問屋との話がうまくいかなければ、勘定所、あるいは評定所に訴えるつもりでいた。
 伝三郎は、旅ゆけば駿河の国に茶の香りってぐらいだ。と口にした。
 ゆうは、冥加金のことで、伝三郎に相談、戸山様にも話を聞きに行った。

 根岸の聞き込みをしていると、侍が、清水屋のことを調べ廻っていた。井角四郎兵衛という。
 
 茶室の密室を解くために、ゆうは、宇田川を呼び、地下道がないか調べた。寮の離れには地下室が見付かった。鍵が掛かっているためファイバースコープで中を調べる。茶葉を発酵させていた。清水屋は永山という蘭学者と二人だけで離れにいたようだ。失敗していたが、紅茶を作っていたようだ。

 茶問屋筑後屋の娘が勾引かされた。ゆうは考えられる範囲をドローンを飛ばした。それらしい蔵を見付けた。ファイバースコープで覗き、娘の存在を確かめた。全面上部にカメラを設置し、明るくなってから動くつもりだった。朝、娘が帰って来た。カメラを確かめる。井角が諸肌脱いで助けていた。井角は遠山金四郎だった。屋敷から出てきた遠山を尾行し、話を聞く。
勘定奉行の父親の指図で、勘定所内の不正を調べていた。

 裏木戸の閂の指紋を調べ、一番遅れて来た遠州屋辰治郎が犯人だと割り出した。戸山が清水屋が躙り口から入ったと思った時、辰治郎が清水屋を殺し躙り口から出ようとしたが、誰かがいると分かりもう一度茶室に戻っていく姿だった。戸山がいなくなってから茶室を出、裏木戸から外に出て、表から遅くなったと今着いたように入ってきたのだった。

徳左衛門と清水屋殺しの犯人として、遠州屋辰治郎は捕まったが、冥加金の中抜きや、冥加金追加を逃れるための賄も計画はあったが、まだ動いてはいないため勘定所の佐戸江は捕まらなかった。
 ゆうの機転で、佐戸江の首実検をした。清水屋の女中に佐戸江を合わし、永山という蘭学者が佐戸江だったことを暴いた。清水屋に金儲けと言い、作り方もはっきり知らない茶を作り出し儲けようとしたことを暴いた。諸々の動きのため御役御免にはなるだろう。

 徳左衛門の息子が、新しい御茶・紅茶の作り方を教えて欲しいという。ゆうと宇田川は自分たちも知らないと教えなかった。まだ日本に紅茶の記述はない。

 宇田川は、伝三郎が口にした旅行けば・・・を調べる。大正から昭和の初めに流行った浪曲だと分った。ロシア船事件の時も伝三郎はオロシャと言わずにロシアと言った。
 伝三郎は、紅茶と言った二人をしくじりだと考えた。二人が自分より未来から来ていることは分っている。何のために来ているのか。未来人だとはっきりさせることはゆうとの関係を壊してしまうことになる。どうしても避けたい。やっぱりこのままで行こう。
 
 

2024年2月18日日曜日

時代小説傑作選 はなごよみ

時代小説傑作選 はなごよみ 細谷正充編

 吉原桜 中島要 「着物始末暦五 なみだ縮緬」
 綾太郎は、吉原の紅鶴から恋しい人への文を託される。綾太郎は届けようとするが余一に止められる。唐橋の恋話を聞き、花魁の妹分への責任を聞く。恋の始末の仕方を聞いた。弔いのためのふきにいろは柄が使われている百花の打掛。
 綾太郎は紅鶴に言われた通り、開き直って玉に心のうちを語る。互いに焼きもちを焼いていることが分った。
 
 桜の森に花惑う 廣嶋玲子 「妖怪の子預かります3 妖たちの四季」
 ほろ酔い加減の久蔵は、弥助と千弥の後を付け、妖しの庭の桜見に入ってしまった。猫の姫に恋される。現実の世にも、猫の姫は、廻りを許嫁の術をかけ現れる。久蔵は、いっぱいあるお気に入りを猫の姫に見せてあげようと手を取る。

 あじさい 梶よう子 御薬園同心 水上草介 柿のへた」
 嫁を鬼嫁という隠居が、道場の若者に騙され京へ二人で行こうとする。二人の前に立ち塞がった嫁は、隠居を助ける。薬を飲めない嫁が熱を出し寝込んでいることを聞いた草介は、熱冷ましのあじさい茶を届ける。草介は、聞いた勝俣家の献立から、隠居は胃が悪いのだろうと言い、三日に一度の墓参りの話を受けて足腰もさぞやと続ける。嫁は、隠居のことを考えたことをしていた。
 草介は、あじさい茶に解熱作用があることを教えた千歳に、熱を出して寝ていた時にあじさい茶は出されなかったと詰った。
 
 ひとつ涙 浮穴みみ 「蔵前片想い小町日記 めぐり逢うまで」
 札差の娘・まきは七才の時、救ってくれた恩人に恋している。二十三才になった今も独身だ。札差の潰れた家の幼なじみが四年ぶりに現れた。まきに、もう一人の幼なじみ丈二が、昔からまきのことが好きだったことを話す。まきは気がついていなかった。毎年朝顔を枯らす。丈二は明日、話に行くと言う。家に明日花が咲く朝顔が届けられていた。
 
 縁の白菊 諸田玲子 「お鳥見女房 蛍の行方」
 君枝は、菊祭りに行くために、隼人との待ち合わせていた。茶屋の娘・さんに伝言を頼まれた。君枝は行く。お産が始まった。男・与助が産婆を呼びに行き、君枝はお産を手伝う。夕方、赤子が産まれ母親は亡くなった。小袖はよれよれ、襦袢は汗で肌に張り付き、髪はほうけ、顔も汗と涙で汚れていた。そんなところに、さんと隼人が来る。みんなが探し回っていた。次の日、辰吉親分が、与助のもめ事はおさまり、赤子は母親の妹・さんが育てゆくゆくは、与助と所帯を持ち、植木屋をはじめるだろうと知らせてくれた。珠代は、ようやりました。そなたを誇りに思いますと君枝に告げる。母の言葉を聞いた君枝は、母の膝にとりすがり堰を切ったようにしゃくりあげた。
 
 侘助の花 宮部みゆき  「幻色江戸ごよみ」
 質善の隠居・吾兵衛は、碁敵の看板屋の要助に相談される。要助の看板には、侘助の花が描かれていた。理由を聞かれ、一度だけ、火事で別れ別れになった娘が、好きな花だった。娘が生きていると信じている。娘の目に触れれば巡り合うことがあるかもしれないという、嘘の話をした。娘だと言う娘が現れた。ゆきという。誰かの囲われ者のようだ。菓子折りを持って現れる。吾兵衛が会って話をしても、生き別れてやっと会えたんですよ。他人は関係ないでしょう。構わないでという。唐突に現れ、土産を下げて、父親に対するように話しかけ、妹たちに笑いかける。四半刻ほどで「じゃ、またね」と帰って行く。
 三月経ったころ、ゆきの家に行くと、彼女は追い出され、違った若い女が住んでいた。
 


2024年2月16日金曜日

夜鳴きめし屋 新装版

夜鳴きめし屋 新装版 宇江佐真理
  2014年に読んでいる。

長五郎が営む鳳来堂は、深夜食堂。
かっての恋人みさ吉は、八才の息子・惣吉を連れて芸者に戻った。
はっきりしない長五郎だったが、惣吉が昔自分が働いていた叔父の質屋に奉公に行ったことで、惣吉が自分の子だと自覚する。
みさ吉にも、一緒に鳳来堂で働いてほしいと告げる。 

2024年2月14日水曜日

吉原裏同心㊵ 蘇れ、吉原

 吉原裏同心㊵ 蘇れ、吉原 佐伯泰英

 寛政五年十月、江戸は大火事に見舞われた。客が減ることを覚悟していた会所だったが、客が来る。客の正体を知った時、八代目頭取四郎兵衛こと、裏同心神守幹次郎は苦悩する。
 公儀は、浅草弾左衛門の差配下の者の吉原出入りを禁じていた。
 弾左衛門の従兄弟・弥一郎が、吉原で殺される。神守も狙われる。隠して弥一郎を送り届ける。
 九代目弾左衛門の後見・佐七の店・灯心問屋の番頭の娘が誘拐され、五百両を要求された。要求された場所に澄乃を行かせ、幹次郎は少なくなった敵の店に行き、娘を助け出す。澄乃は敵の船を揺すり、川に投げ出し、五百両を守り帰った。
 澄乃は、切見世の女郎に焚き出しを考え、幹次郎の命で弾左衛門の焚き出し方法を学ぶ。炊き出しのために使って欲しいと慶長大判で五百両が置かれていた。
 幹次郎は、奉行所に持って行く。江戸城の金庫の物だった。奉行所も困る。
 老中・戸田氏教と関わりがある勘定奉行・佐橋則武と、川に投げ出された道場主・向来重五郎が斬られた。
 奉行所より百両が下賜された。
 炊き出しが始まった。汁の具は、魚河岸から頂戴した魚のあらや、大根河岸からの萎びた野菜だった。寄贈された調味料と引きて茶屋の残り飯だった。


2024年2月12日月曜日

満月珈琲店の星詠み⑤ 秋の夜長と月夜のお茶会

満月珈琲店の星詠み⑤ 秋の夜長と月夜のお茶会  望月麻衣
  
 木星と銀河のカッサータ 淡路島で母を看取った百花。
 百花の父は四十年前、祖父の百か日が終わった頃、別れてくれと家を出た。百花は、幼稚園から保育園に変わり、母一人娘一人の生活が始まった。
 家から離れる神戸の大学に行かず、近くの看護学校に行き看護師になった。恋した男性が遠距離であったため、結婚しなかった。母の看護のため看護師を辞めた。母が亡くなった。
 母の葬儀の日、父が同じだという弟が来た。父は好きな人が出来離婚したようだ。十年し、生まれた弟だった。
 何もせずただ家にいる。母親の荷物を片づけ見付けたのは膨大な量の本だった。
 夜中に、猫に誘われ行った「満月珈琲店」で、母との関係、勝ってな思い込み、母の思いいろいろ考えた。
 未来をこれからのことを考えた。

 水星のお茶会とベテルギウスのプリン 真中総悟の記憶
 社長・桐島祐司、後輩・鈴宮小雪と、「musubi」出版社兼広告代理店で働く真中総悟。現在は元気な総悟だが、小学生の時は身体が弱く、岩手、遠野の祖父母の家で過ごした。十二才の夏、父母と母の姉妹夫婦、従姉妹たちと忘れられない夏を過ごした。母の言う「罪の子」の意味を知った。母は不倫後、父を略奪し、夫婦になった。その時お腹にいた子は流産し、十年後総悟が生まれた。ということも知った。母も身体を壊し、総悟も身体の弱い子どもだった。
 子猫を助けた。子猫は明日の命が知れない状態だった。ティルと名付けられたその猫に因って、銀河鉄道の夜を経験する。食べたベテルギウスのプリンのお陰で溜めた物を吐き出した。
 夜明け前、野原で寝ていた総悟はカメラマンに起こされた。そのカメラマンは、後に写真集で知った桐島だった。

 金星と三日月リンゴのアップルケーキ 松浦果歩の告白
 真中総悟は、広島の従姉妹の結婚式に出る。淡路島の葬儀の後だったので、式には参加せず、披露宴に出た。総悟の従姉妹の妹・沙耶の結婚式。
 姉は大人しく、賢い、総悟と本の話で持ち上がる。広島大学を出て図書館司書になっていた。妹は明るく、専門学校を出て美容師になった。
 妹は、高校生の頃から彼がいなかったことがなかった。専門学校生の時、いつもと違ったタイプの彼・聡史を連れてきた。父母も喜こび、気に入っていた。
 果歩は苦しんだ後、沙耶に告白した。ごめんね。聡史君を好きになった。
 十一年後沙耶は結婚した。十二年後、厳島神社で結婚式をする。沙耶は姉に手紙を渡す。
 姉の告白の後、聡史と別れた。理由は聡史の浮気と言ったが、聡史が、お姉さんを好きになってしまったから君を付き合えないと言われたのだった。披露宴に聡史が来るからというこことだった。

 エピローグ 総悟は、桐島に、めがね橋で死体みたいに転がっていたぼうずは、おまえだろうと言われた。思い出したのだ。
 総悟は告白すると桐島に言う。振られたら辞めるのは、独立出来るお前だろう。二人が上手くいったら、会社二人で継いでくれよ。

  

2024年2月10日土曜日

入舟長屋のおみわ⑦ 長屋の危機

入舟長屋のおみわ⑦ 長屋の危機 山本巧次

 家主・寿々屋の商売に難が持ち上がる。美羽の仕切る長屋を売る話が持ち上がる。買い手は金にしか頭にない悪名高き商人・常葉屋だった。美羽は住人を守ろうと奔走する。
 すると、材木屋・田村屋の若旦那が、長屋を買い取ろうと志願してくる。二枚目で仕事もできる若旦那・充治は、美羽に結婚を申し込む。
 長屋の前の炭屋の丸伴屋が常葉屋に買われていた。田舎に帰った主家族の、息・善太郎が殺された。廻りをうろつく男が現れた。善太郎の友人・栃木屋の三男・隆祐と名乗る。隆祐は、善太郎は田村屋を疑っていたと言う。
 同心・青木喜十郎にはなしを聞く。本所与力、唐物屋、大奥役人と繋がりが大きくなる。
 寿々屋の難儀も偶然ではなく、長屋を売るように仕向けられていた。田村屋も常葉屋と仲間だった。充治には、愛人が居り、愛人の証言で、善太郎殺しは、充治だと判明した。長屋買い取りの話はなくなり、寿々屋の美顔水に漆を入れたのも田村屋に命じられた瓦版屋の者だと判明した。美顔水は、新しく開発され、「みわの彩」という名で売れ出されることになった。大奥に寿々屋が出さされた二千両は、大奥役人の勝手な話だったと分かり、千八百両が返った。そのお金で地震で痛んだ長屋を建て直すことになった。丸伴屋も寿々屋が買い取り長屋にする話もある。

 美羽が、大川へ投げ込んだと言われている男が、隆祐だった。隆祐は美羽に結婚を申し込んだ。隆祐は婿に入った。
 

2024年2月6日火曜日

すべての神様の十月〈二〉

 すべての神様の十月〈二〉 小路幸也

 戌の日に イラストレーターとなりフリーになった僕。二才のカノンを連れた美耶子と結婚。三年目に美耶子は、早産で入院した。家に残された僕とカノンの所に、父から頼まれたと雑賀たねさんが、家政婦として来てくれた。美耶子との結婚を反対され付き合いの無い父だった。たねちゃんとカノンがなつき、弟が無事産まれた。報告に実家に行く。父は家政婦を知らなかった。カノンを頼み家に行く。たねさんはもういない。昔飼っていた犬と同じところに痣があった。お稲荷さんに安産祈願に行ったからね。

 お稲荷さんをよりしく 北海道の大学を終え、北海道で就職を考えていた戸川みつる。父が亡くなったあと、母一人で喫茶店を経営していたが、心筋梗塞で倒れた。みつるが帰ってきて営業している。まだ先を決めきれていない。裏のお稲荷さんにお供えする小さい稲荷寿司を、たまたま来た高校生に出した。進学校の生徒、塾に行く前だった。キーちゃんとフーちゃん。おいしいの声に押され店に出す。「こいなりさん」「恋なりさん」
 この店を続けることが商売繁盛。
 キーちゃんは狐のキー。フーちゃんは、フォックスのフー

 天狗さまのもとに  西川は消防士、彼が出場すると、消火する前に火が消えるとうわさされる。到着すると消える。来て欲しいと引く手あまた。四年ぶりにホームに帰ってきた。現場写真によく写っている猫探しの探偵に会いに行く。しっぽが二つに分かれた白猫を捕まえた彼は、これで勝ってに火は消えなくなりますよと言った。西川が三才の頃、怪我した白猫を見付け母親に必死で訴え助けられた。西川の役に立ちたくて自分の尾に込められた羽団扇の力を使って火を消していた。やり過ぎると世の中を騒がせるので天狗さまのもとに連れ帰ると言う。猫探し探偵さんは、先祖が烏天狗だった人間。話ができたりするので神様や天狗様にいろいろ頼まれると言う。西川は、今夜のことは忘れるように天狗様がするようだ。

 死神に恋 夏川麻美は高三の夏に一度死んだ。バスに乗っていて銃の流れ玉に当たり死んだ。が生き返った。自分の傍にイケメンの男性がいたことを覚えている。病院で彼に合った。彼と話した。本来見えないものらしい。彼は死神だった。麻美は死神に恋をして、会うために医者になることにした。麻美についていた看護師・井沢は、福の神だった。バスの中にいた。彼女のお陰で、こめかみに当たる銃弾がすこしそれて肩に当たった。生き返ったのは不思議。

 眠れぬ夜の神様  枕の九十九神と寝ている間に話し、マンガが売れていく。御手洗咲子と名乗る貧乏神が来た。売れっ子になっててっぺんからどん底に落ちないように貧乏神が来た。貧乏神と九十九神は相談し、枕を洗い、九十九神は消える。また、二、三十年してから九十九神になって現れることにする。

 笑う門には福来る 売れていない芸人・きっとキッド。福の神であるお笑い芸人。三か月前、練習している公園で、ファンです。というまちゃさんにサインした。まちゃさんは、それをイラストしTwitterniアップした。編集者の目に留まりマンガ家デビューとなった。好きになってくれた人に福を撒き幸せにしている。もっと笑ってもらって福を撒きたい。

 落とした物を探しています 忘れ物センターの新人・明野さん。彼女が窓口で応対した人の忘れ物、落とし物は全て見付かっている。隣で見ている私は、保管質の主・二ノ宮さんに彼女のことを話した。二ノ宮さんは、ここの神棚に手のひら地蔵が祀られていて手のひらさんと呼ばれていることを教えてくれた。

 引きこもりにおじさん 僕は市役所に就職し公園管理になった。自宅の前が公園、向かい側の同級生に会った。彼は引きこもりになっていた。そこから救い出してくれたのは鳥おじさんだったという。公園の鳥に餌をやっているおじさん。鳥おじさんは餌をやり掃除もする。近所の人も同じようにする。鳥おじさんがいるだけで皆が幸せになる。彼は年を取らないずーと同じ。神様みたい

 子供は風の子 仕事帰り、子供がぶつかってきた。すごく活発で運動能力が高そうな子。男の子と女の子。部屋まできてしまった。三人になった。いつもはスカスカの冷蔵庫がいっぱいになっている。いつの間にか寝ていた。女性がいて説明する。風の子・風神があなたにぶつかった。貧乏神が知らせてくれた。あなたは熱を出して倒れる寸前だった。あなたが風神を見えることがうれしい。私は女神だと言う。

 七回目の神様 花井幸夫は、入院したので母親に、今まで人が思わぬ事が起き、助かったシーンに七回会ったと話した。今回、ダイブしてきた車が、落ちて来る前に、バックしろと言われてバックした所に車が落ちてきたことを話す。母は、あなたに神様が付いているのだろう。そういうこともあるのだと言った。母は昔、神様とお酒を飲んだ間だと言った。
 夜、看護師の福の神の井沢と死神のが訪れ、七回も死んでいたはずの人が助けられる場面に出会ったのは幸夫がそういうものを引き寄せるようになってるようだと言う。彼は仙人で、趣味のようなものだと聞いた。
 死神が母とお酒を飲んだ神様だった。母親が話さなかったことを死神の幸夫さんは話してはくれなかったが、何かに巻き込まれた時には、死神の幸夫さんと呼べば参上すると言ってくれた。

2024年2月2日金曜日

お蔦さんの神楽坂日記 いつもが消えた日

お蔦さんの神楽坂日記 いつもが消えた日 西條奈加

 もと芸者で今でも粋なお蔦さんはご近所の人気者だ。
 滝本望はそんな祖母と神楽坂で二人暮しをしている。
 三学期が始まって間もないある日、同じ中学校に通うサッカー部の彰彦と後輩・金森有斗、幼なじみの洋平が、滝本家を訪れていた。
 望と彰彦が有斗を自宅に送り届けた直後、有斗が血相を変えて飛び出してきた。部屋が血だらけで、家の中に、誰もいないと言う。その日から有斗は滝本家に住まう。

 家中の血は有斗の家族の者の血と思われていたが、借金の相談にのっていた古谷保と言う男のものだった。
 お蔦さんはいろいろな人の話を聞きながら、有斗の家族のいるところを考える。
 望の学級担任で、サッカー部顧問でもある小野先生は、有斗のサッカーの上手さを見抜きいろいろ相談にのっていた。
 有斗の家には借金があった。毎日借金取り・鹿渡部が来るようなこともあった。借金を一つに纏め世話を焼いてくれたのは古谷だった。が、古谷と小野には、二十年前、鹿渡部と金森 の執拗な借金取りたてのため、父親が自殺に追い込まれ亡くなったという過去があった。古谷は復讐のため金森に近づいていた。小野は手をかしていながら、古谷を止めようともしていた。
古谷は金森の借金を纏めながら二倍に増やし、そのことが鹿渡部の損になるように仕組んだ。そのことを知り金森家に乗り込んだ鹿渡部は、古谷を殺してしまう。遺体の始末を金森家族に手伝わせた鹿渡部、埋めた場所が小野の元別荘に近かったことから、金森家族・父母姉は、鹿渡部のもとから、元別荘に逃げ込む。鹿渡部の知らない台所の地下倉庫に逃げ込んだ三人だったが、探し廻る鹿渡部のために戸に鍵が掛った状態になってしまった。

 お蔦さんは、二週間以上になり、有斗の家族が連絡してこないことで、早く見付けなければならないと小野先生に詰め寄る。小野が三人がいるかも知れないと見に行ったのはどこか?と摘める。小野のもと別荘のことを話す。三人は見付かった。

 有斗は福岡に転校した。
 小野は先生を辞めた。

2024年1月31日水曜日

八丁堀強妻物語〈四〉恋女房 

 八丁堀強妻物語〈四〉恋女房 岡本さとる

 隠密廻り同心・芦川柳之助に、香具師の大立者・三喜右衛門一家に単身潜り込み、三喜右衛門が引退すると噂が流れると、廻りがどういう反応するか見定めることが密命だった。
 渡世人に化けて三喜右衛門に近づくと、柳之助は三喜右衛門に気に入られる。
 賭場に鬼松がうろつくようになる。賭場に千秋と花が壺振りとして入っていた。
 三喜右衛門は、元旗本の浪人の金貸し塙政之助に縄張りを譲りたいと話を持って行く。塙は二千両でと言いだした。賭場が荒らされる。荒らして居たのが鬼松と知れ、後ろで糸を引く者を聞き出そうと、三喜右衛門が動いた時、鬼松たち四人が殺される。殺したのは三喜右衛門という噂が流れ始めた時、その辺りを廻っている定町廻り同心・江田要次郎が、三喜右衛門と塙と賭場の場所を貸す経堂の殿様が集まると言う話を持って来た。
 料理屋「はなわ」に集まった。江田は顔を出さない。塙は三喜右衛門を殺そうとした。三喜右衛門には柳之助しかいないが、彼の危ない時には助っ人がくる。
 賭場荒らしに利用された剣道場の師範と利用された者三名。料理屋の前には職人や町人が逃げる侍に石礫を投げる。
 経堂家に入った千秋は、経堂家が塙に高額の借金があることを突き止めた。
 町奉行所も動き塙は捕まる。
 三喜右衛門が、大旦那と呼び、大芝居をしたのは、南町奉行・筒井和泉守の指しがねだった。塙政之助に危惧を抱いていた。


2024年1月26日金曜日

紅雲町珈琲屋こよみ⑪ 雨だれの標本

紅雲町珈琲屋こよみ⑪ 雨だれの標本   吉永南央
 
 高名な映画監督・沢口の新作の撮影候補地になった小倉屋。
 小倉屋を訪れた監督は、草に、映画の事とは別に、十六年前、所属した映画専門学校に潜り込んでいた男が作った映像作品を見せ、これを作った男を探してほしいと頼まれる。
 鈴木か田村か田丸か、出身は神戸とか、あやふやな手掛かりを残して帰る。

 草が倉庫の片づけをしていて壊した、懐かしい食器をゴミに出していると自転車の男が割れた物を持って帰る。草は墓参りの後歩いて帰り、別荘ふうの家を見付けた。ウッドデッキから見ると部屋の中に、空き缶を利用したオブジェや、粘土に磁器やガラス器を切り研磨したものが幾重にも刺さっているもの、窓の雨だれを瞬間冷凍したかのような物が並んでいた。今は亡き両親や兄、妹の一部が創作の世界に活かされるかもしれないと思うと愉快だった。
 彼は、高橋朔太郎、二十二才。草と久実が手を焼いた倉庫の片づけをしてくれることになった。
 店に朔太郎の母親と姉が来た。朔太郎と揉めて朔太郎は二人を追い出し、朔太郎も出ていった。一ノ瀬と久実と一緒に草は朔太郎の山の家に行く。朔太郎は、早稲田の政経を出ていた。十一才の時、父は家を出た。母は単身赴任と言い、父が、ここで別居していた時は、出張だった。草は、タカハシマートの高橋辰太郎の功績を讃える表彰状を見た。映画好きの部屋だった。朔太郎は祖父の趣味だという。

 映像の商店街は銀座通り、リビングには三山カルタがあり、神戸は、この辺りの昔の町名だった。映画好きから調べ、タカハシマートの現社長、高橋辰太郎の甥・敬太郎に会い、沢口に預かった映像を見せる。敬太郎は自分が撮った。が、沢口監督には会わないと言う。草の中では、敬太郎と映像が合わなかった。
 草の友人・由紀乃は、タカハシマートのことは詳しいが、脳梗塞の後遺症で、記憶が定かでない。昔に行ったり現在に戻ったり、そんな由紀乃の話から、敬太郎の従姉妹は朔太郎の母だと分った。辰太郎の死によって敬太郎は、辰太郎の娘と結婚しなくてもタカハシマートの社長になれた。娘は、敬太郎の友人と結婚した。
 草は、山の朔太郎の家で、朔太郎の家の草刈りの世話をしている田丸と会う。高橋さん、朔太郎のお父さんですよね、と。あの映像は定次が撮ったものだった。昔のこと現在のこと話しているところに朔太郎が現れる。朔太郎は、彼が父だと気がついていたと言う。また逃げられるかも知れないからと言う。二人で話したようだ。
 沢口には合わないと言われた。あなたを変えたのはあなた自身だ。
 沢口の映画は、別の場所になった。草は安堵する。
 沢口に会わないと言っていることを伝える。草はにっこり笑い、京都の広告デザイン会社・エルプラスの映像部に、面白い仕事をする、高橋定次という人がいると伝える。

 久実は、一ノ瀬と同棲している。あと三か月で住んでいるところを出ないといけないので将来を考える時期にきていた。
 一ノ瀬は山男だった。登山ノートがあった。谷川岳15才、谷川岳平標山縦走16才、一ノ倉沢烏帽子沢南鐐18才・・・メラピーク24才、マッキンリー25才。国内、海外でもほぼ単独。ネパールに登るパーティーから誘われ登山計画あり。
 一ノ瀬は、谷川岳の救助隊に参加し、無線が途絶えまだ帰って来ない。一ノ瀬が車を止めている駅に行く。途中、連絡が入り病院へ搬送されることが分った。一ノ瀬から電話が入り、駅前の車に彼が見えた。久実は携帯を置いたまま車に走る。携帯から結婚しないかの声が聞こえた。おれはおまえのところへ帰るんだ。人のプロポーズって恥ずかしいなと朔太郎は呟いた。
 
 朔太郎は八月から、野党第一党の職員になる。



 
 

2024年1月23日火曜日

蘭方医・宇津木新吾⑯ 友情

蘭方医・宇津木新吾⑯ 友情 小杉健治

 天保三年 1832年

 次郎吉が捕まった。小幡藩松平家の中屋敷に忍び込んだ次郎吉はあわてて壁を乗り越えたところ、見回り中の大石杢太郎同心に捕まった。もう盗みは止めたと言っていた次郎吉が盗みに入ったことが不思議で、新吾は調べ始める。
 新吾は次郎吉は誰かの頼みで屋敷に盗みに入り、待っていたように捕まり、罠にはまったと考えていた。 同心・津久井半兵衛と升吉と一緒に調べる。
 次郎吉にも牢内で何度も会う。次郎吉は、刑を言い渡されても覚悟を決めていた。
 引き回しの時、次郎吉は化粧をしていた。新吾とも目を合わせ覚悟していた。
 処刑された顔は引きつり、覚悟を決めた顔に見えなかった。
 次郎吉と付き合いのあったせつは、あれは次郎吉ではないという。耳の後ろの黒子も無い。
新吾は、半兵衛と升吉に話し、また調べる。
 調べたことをが、次郎吉に伝わるように、また何かが動くかと、次郎吉に盗みを頼んだ女に、次郎吉に会いたいと伝えてと言う。
 隠密を辞めた間宮林蔵にも伝える。幕府の上部の人間が関係していると思われるから。知っててくれたらいいと伝える。
 新吾は次郎吉が生きていればどうすればいいか迷っていた。幻宗は、生きていてはいけない人間だ。自殺を呼びかけるか、新吾が殺すかしかないだろうと言う。
 
 次郎吉から連絡があり、覚悟が定まらないまま会う。
 次郎吉は、覚悟していたが怖かったという。最後の休憩所で別部屋に連れて行かれ生かされた。折角生きているのに死ぬのは嫌だと言う。五人の侍が現れ、新吾を殺そうとする。幻宗が現れ、新吾は次郎吉に対するが、もうねずみ小僧ではなかった。矜持が無かった。殺そうと斬り付けた次郎吉を押さえ込んでも新吾は一太刀が出来なかった。次郎吉は逃げた。
 五人の侍は捕まり奉行所に入ったが、どこの誰かわからないまま釈放された。
 林蔵が、五人の侍は鳥居の手の者だったと伝えた。水野越前守も承知のようだ。今、ねずみ小僧は鳥居の手の内にいないようだ。

 天保四年 1833年 新吾と香保の間に男の子が生まれた。お宮参りに出かけた。
 雲水姿の行脚僧が、次郎吉が立って居たところに立っていた。すぐ姿が見えなくなった。

2024年1月21日日曜日

猫弁と狼少女⑨

 猫弁と狼少女⑨ 大山淳子

 百瀬の依頼人は夫を亡くしたばかりの左野麦子。迷い猫のヒマラヤンのせいで、脅迫状を貰う。百瀬は依頼人との話の後、左野の家に忘れ物を取りに行き、塀の上に座っている少女を見付ける。追いかけ助けてと言う少女を負ぶって左野の家に行く途中で、パトロール中の警官に出会う。少女が、助けてと言い逃げる。捕まった少女は警官に誘拐されたと言う。百瀬は逮捕された。 百瀬は逮捕した巡査に、あの子をよく見てあげてと言い残す。
 百瀬は黙秘した。事件に付いては何も言わない。拘置所で、みんなの相談に乗る。警察官は被疑者は、黙秘するようになったが、嘘をつかなくなったと感じている。被疑者が落ち着いていると感じている。拘置所の担当さんは、百瀬の相談を黙って聞いていることにした。自分の心持ちも変わってきたことを感じる。
 検事・明石は同期だった。同じく黙秘。個人的な話には応じる。亜子のことも聞かれるが、亜子はたぶん家に帰っただろうと思う。明石は個人的な質問をする。同性結婚は違法か?両性の同意が男女でないと違法なら、両性の説明に異性でなければならないとはいるだろう。と答えた。
 亜子が一人きりになった時、父母が来た。食事をして帰る時、父親は「あいつが大嫌いだが、あいつを選んだお前は天晴れだ感心する。がっかりさせるな。」母親は「実家に帰ってると思ってるよ。どーんと構えてここにいて、帰って来た時、何食わぬ顔でおかえりていうの。おいしいぬか漬けを食べさせてあげなさい」と言って帰った。
 百瀬は逮捕されすぐに当番弁護士を呼んだ。沢村だった。百瀬に紹介され正水直がいた。テレビで報道されていた。沢村は百瀬に会い、左野のことを頼んだ。依頼されたことは、沢村と直で調べる。百瀬は沢村にしか会わなかった。鈴木晴人のことは野呂に頼むと沢村に伝えてと頼む。
 鈴木晴人は保釈され事務所の二階に住んでいる。
 百瀬は、少女も少女の親も警察と話をしない。証言も告訴もしないため、百瀬は二十三日で釈放された。左野家にいき、警官から聞いた少女の家に行く。双子の妹・あかねにも会う。少女・冬月るいにも会い、話す。母親の会社の人事と話し合い母親の特別休暇を願う。復帰した時のことも不利益が無いよう書面に書き入れた。
 母親は、子どもと向き合うことにした。ヒマラヤンは、左野家に預け冬月家は左野家にチョクチョク行くことになった。
 鈴木晴人は、懲役二年、執行猶予三年になった。
 千住澄世と天川が結婚式を挙げることになった。出席は、天川の姉と晴人だけだそうだ。まだ一緒に住むのは無理なようだ。
 百瀬は、保釈され一週間して家に帰った。亜子は普通に迎えた。百瀬はいないものと思っていたので驚いた。無断外泊の罰金を払った。亜子は百瀬に何かあった時に、一番に教えて貰う権利の取得に必要な手続きと言って婚姻届けを出してきた。百瀬はサインした。
 直は、沢村のところでバイトをすることになった。

2024年1月18日木曜日

猫弁と幽霊屋敷 ⑧

 猫弁と幽霊屋敷 大山淳子

 百瀬は、男性恐怖症で引きこもりの千住澄代から依頼を受ける。知らないうちに親から不動産を受け継いでいたが、管理が行き届いておらず「幽霊屋敷」と地域で問題になっているらしい。どうするか任された。
 幽霊屋敷の実態を調査する。猫が子猫を産んでいた。五匹の内一匹が生き残りハクビシンと町内会長の孫が育てていた。住所の無い鈴木が、郵便ポストを借りていた。造りのしっかりした家だった。

 ホテルを利用した猫と人とのお見合いイベントが行なわれた。百瀬の事務所の猫も参加した。ペットホテルでたてこもり事件が発生する。百瀬の猫も巻き込まれたため百瀬にも事件が告げられた。犯人の要求はイベントに声の出演をしている玉野みゅうと話がしたいというものだった。警察は要求に応じない。百瀬は玉野みゅうを探すが、実態ではなかった。声が似ている千住澄代に頼む。澄代は犯人の前で、映画のゆるりの言葉「ハルト、一生そばにいる。二度とひとりにしないから」と言う。ナイフを落とし座り込む犯人を澄代は抱きしめた。
 犯人は逮捕された。刑事・天川が「千住、ぼくだ、天川だ」と呼びかけた。澄代は気を失った。
 
 百瀬は、犯人・鈴木晴人国選弁護人になった。百瀬は鈴木晴人が自分に出し、幽霊屋敷で受けとるはずだった手紙を持っていた。晴人はネットで幽霊屋敷を見て自分の家にし、自分宛の手紙を配達してもらっていた。行くところが泊まるところが無くなってロビーで暖を取った。隣のイベントに玉野みゅうがいると思い、言葉をかけて欲しくて事件を起こした。
 晴人の過去は独りぼっちだった。晴人の知らない過去もあった。映画でハルトと呼ばれ感激していた。幽霊屋敷で三十年前に行われたお食い初めの儀式は、晴人のものだった。四年後、一酸化炭素中毒で両親が亡くなり晴人は助かった。幽霊屋敷の借家の住人は晴人の家族だった。小学生時代から養母の介護をし、中学にまともに行けず働いていた。
 晴人は鳥獣猫の介護をしていた。具合が悪そうな猫を獣医に預けた。ナイフは、果物を切り動物に食べさせるのに使っていた。執行猶予がつくだろう。
 晴人は、千住澄代からの手紙を受け取った。幽霊屋敷は百瀬が事務所として使うので出てきたら住みませんか。玉野みゅうは私でした。騙してすみません。一生お友達でいるというのは本当の気持ちです。一生あなたを一人にしません。自分も一人で引きこもりです。あなとの所へ遊びに行けるようになるため頑張ります。というものだった。

 澄代は、四本指だった。小学生の時、妖怪と言われ引きこもりになった。妖怪と言ったのが天川だった。天川は澄代が好きで、妖精と言うつもりだった。警察からの感謝状を持って行った。結婚相談所の亜子のアドバイスを受け、昔のことを誤り誤解を解き、結婚を申し込む。花束を持ちありったけの言葉を言う。何度も通う。澄代はもう玄関を開けてもいいかなと思う。 

 取り込み最中に、一年前、太郎に赤ちゃんを預けた柊木真弓が、小太郎を預けに来た。小太郎はくせ毛だった。預かった七重は、お母さんは子どもの手を放してはいけない。おかあさんという女の特権を手放してはいけないと、百瀬の母親に言ったと言った。七重は夫に運転してもらい片道六時間かけて金沢に行き、百瀬は文句を言わないだろうと思い、言ってやったと言う。百瀬は七重をハグする。母親は太郎のためにありがとう、安心したと言った。
 真弓は赤ちゃんを迎えに来た。亜子は困ったことがあればいつでもどうぞと言った。
 

2024年1月15日月曜日

猫弁と鉄の女⑦

 猫弁と鉄の女 大山淳子

 百瀬太郎は、迷い犬を交番に連れて行く老婦人と知り合った。大型犬のサモエド種の犬を自分の家に連れ帰った小高トモエのために、朝の散歩を請け合った百瀬、夕方の散歩は正水直が請け合う。小高家に通ううちに、連れ帰ったポチがここ掘れわんわんと掘ったところから、千両箱と小判が見付かった。報償金として土地の所有者のものになる。また、彼女は解離性健忘を患い解離性遁走の経験者であることがわかった。

 二世衆議院議員・宇野勝子は、選挙公約に花粉症対策を挙げた。そのため財産を多摩の山岳部につぎ込んだ。杉の伐採計画を立てる。一緒に仕事をする弁護士がみつからないため、秘書・佐々木が自分のカメレオンのことで世話になった百瀬に頼む。勝子は百瀬と話し気に入る。
 山の持ち主が、伐採許可に森林蔵の許可があればと但し書きする山の神と言われる人物がいる。モモリンと呼ばれる彼がいるために、もえぎ村の杉はリッパで山の事故も無い。彼は勝子に杉を勉強することを求める。

 モリリンが有名になり、もえぎ村にいくツアーができる。
 モリリンと見合いをしたいという客のために亜子は、ツアーに参加し、森の洞穴に落ちる。
亜子が行方不明になったことを知り、森に飛び込んだ百瀬も遭難する。亜子はモリリンに助けられ、百瀬は猫の長老に夜、暖めてもらい難を越す。
 選挙で勝子は落ちた。事務所を締め、家は無くなる。勝子はもえぎ村に移り住み山を昔の広葉樹のある森に変えていく運動をしようとする。
 百瀬は小高トモエの家に勝子を連れて行く。トモエは勝子の七才の時にいなくなった母だった。勝子の父は、トモエのことを承知していた。亡くなる前に離婚し、千両箱を埋めた土地と家をトモエの所有にしていた。
 勝子がもえぎ村に移住することを知ったトモエは一緒に行きたいと言った。勝子と家をシェアすることになった。
 トモエは生き生きと暮し、時々昔が蘇りつつある。

 百瀬は金沢に母の面会に行った。あまりしゃべらないまま三十分が終わった。母が、たびたび変装して太郎に会いに来ていたことが分った。母は、結婚式の太郎と亜子の髪を整えるために美容師資格をとるための訓練を受けている。

 トモエの家が空く。太郎は、亜子の家族に亜子と一緒に住む許可を貰いに行った。トモエの家を借りることになった。

2024年1月12日金曜日

猫弁と星の王子⑥

猫弁と星の王子⑥ 大山淳子 
 百瀬太郎は、喫茶エデンで亜子と朝食中に、知らない女性から赤ちゃんを預かる。喫茶店のウエーターに連絡先を伝えて事務所に連れ帰る。
 百瀬、岡から相談を受ける。十年会っていない父親と連絡が取れない。目白の家は猫・五美と暮す者に居住権を与えるという公正証書がある。十年経つが、十年前でも年寄猫だった五美が未だに元気だ。調べて欲しいという。父親は、岡丈太郎こと占い師・星一心だった。

 赤坂春美が日本に帰ってきた。妊娠し五ヶ月、日本で産む。百瀬と亜子が暮すアパートで産むという。春美は途中で、大学受験を失敗したにも関わらず、詐欺にあい入学金、授業料、寮費を払い込んだという正水直に出会い、百瀬の所に連れてきた。被害届を出し、アパートの部屋へ居候させる。春美は、アパートの大家代行をする。
 直は、入学式に行く。東京に着いた日に、横断歩道を負ぶって渡ったおじいさんに遇った。じいさんは、お金は儲からないが、返ってくると占ってくれた。

 百瀬は目白の家に行き、住んでいる片山碧人と会う。星一心を探すために番組を作っていた制作会社を訪ねる。片山碧人は五才の時、一心に引き取られ、家庭教師を付けられ家政婦を付けられ生活していた。早稲田に合格し、一心は、早稲田近くに家を買い碧人を見守っていた。
 直が写真を見、自分を占ってくれたのが星一心で、自分を騙したのは、片山碧人だと言った。百瀬は警察に情報を提供した。碧人は逮捕された。
 目白の家は、特殊詐欺グループのアジトになっていた。逮捕されたのは全員学生。比較的裕福にな家庭に育ち、偏差値の高い学校に通っている子たちだった。碧人は猫を百瀬に預けた。
 百瀬は碧人の心が開くように導く。星一心が、碧人を大切に思っていることを説く。
 一心が碧人と面談する。一心は碧人に語りかけない。監視員に歯磨きのこと、入浴の回数、毎日の入浴を希望する。日光浴を認めよと注文する。コーラを、歯に悪いものをどうして売ると。変わった面談だったが、愛されていることに気付いた碧人は泣いた。

 亜子は、結婚相談所でうまくいかなかった佐藤が、母親が元気なうちに一人暮らしをするというので、自分が住んでいるアパートを紹介する。アパートを見に行った佐藤は、猫が木から降りるのを助け足を捻挫した。処置をした青木その子と付き合いが始まり、始めてあった母親と意気投合し、その日に結婚届を出した。その子は同居を申し出た。家が理想的だった。
 
 直は、全てを話すために家に帰った。母が迎えに来ていた。相談した明くる日、百瀬が母に会い全てを話していたことを知った。亜子が、電話で、直の生活を知らせていた。直と母親は、父に会いに行った。

 赤坂の母親が、春美を迎えに来た。赤ちゃんは自分のものではない。みんなの助けで産むものだという母親に連れて帰られた。

 碧人は、保護観察になった。詐欺グループ全員の親が、被害者全てに全額返済し、示談を成立させた。百瀬は早稲田に何度も行き、退学は免れ一年の停学、のち復学できることになった。一心は碧人を養子にする手続きを進めている。古い早稲田の近くの二階建てで暮している。五美二世は、シャルルと名付けられた。百瀬は二人の耳の形が同じなので本当の親子ではないかと思っている。

 直が、東京へ来た。
 百瀬は金沢の母親に会いに行くことにした。亜子を誘う。

2024年1月9日火曜日

九代目長兵衛口入稼業〈五〉 本所松坂町の怪

 九代目長兵衛口入稼業〈五〉 本所松坂町の怪 小杉健治

 幡随院の九代目長兵衛は、無銭飲食騒ぎに出くわす。侍たちは「大代屋」が払うと言い、大代屋は知らないと言う。
 大代屋の近辺では、商売の邪魔をするやからがいたり、客足が落ち店を畳む店がある。
 無銭飲食していた不良御家人には、夜鷹殺しと中間・六助殺しの疑いがあった。
 この嫌がらせには、立ち退きが隠されていた。口入屋・寺田屋、材木問屋・槙田屋、三千石の赤塚主水、吉原の華屋がいた。
 華屋が吉原の外に店を持ち、吉原が火事になった後の仮宅にする。華屋は吉原の付け火まで考えていた。
 長兵衛は、赤塚家に行き、計画段階の話をぶつける。長兵衛を殺そうとする家臣に公儀の目につくように暴れるぜ、家は潰れるぜと脅す。一人の家臣が赤塚を止める。華屋らの計画は頓挫した。
 松坂町に活気が戻った。


2024年1月7日日曜日

小余綾俊輔の封印公儀 猿田彦の怨霊

小余綾俊輔の封印公儀 猿田彦の怨霊 高田崇史 

 日枝山王大学 民族学科 水野研究室 小余綾俊輔
  申は神、なのに猿を当てはめたか。
  猿に関して調べるのは止めよ。危険というメモを貰った。

 大手出版社契約社員 フリー編集者 加藤橙子
  庚申信仰について 庚申堂

 日枝山王大学 歴史学科 熊谷源二郎研究室助手
  「男系・女系天皇」問題  住吉大社


 庚申は天帝、太陽神 猿田彦神
 猿田彦神、式内宿禰、蘇我氏らの系列は歴史の闇に葬られる。

 

2024年1月5日金曜日

栄次郎江戸暦〈29〉 殺される理由

栄次郎江戸暦〈29〉 殺される理由 小杉健治

 若い女・まちが、兄は人を殺したり自死したりしない と訴える。栄次郎が三味線の練習場所にしている秋の兄ということになっている南町奉行所筆頭与力・崎田を頼って来る。話を聞いた栄次郎は調べると約束する。

 まちの兄・多吉は、首を括って自死していた。その場にあった血の付いた合口から、とせが殺されていることが分った。多吉はとせを殺し、自殺したとされていた。とせの囲い主や、とせの周りの人に聞き込み、とせの昔からの情夫が殺されていることが判明した。多吉には言い交わした女がいたが、姿を消していた。栄次郎は岡っ引きや同心を動かす。

 栄次郎に見合い話しが来た。栄次郎は気乗りがしないが、兄の上司からの話で義務的に会う。相手は三千石の旗本・岩城主水介の娘・若菜。話によると若菜も、栄次郎がどうしても会いたいと言う「大御所」の息子だから仕方なく会ったということだった。栄次郎はこの見合いの理由が分らないので岩城家のことを調べる。若菜は母親は、美濃藩大野家より嫁いでいた。
 大野家は当主が倒れ、息子が乱暴なため廃嫡し岩城家の二人の息子のどちらかを大野家の養子にする案があった。
 栄次郎が調べた結果を、大野家にぶつける。多吉は亡くなっていなかった。亡くなったのは多吉の双子の兄・大野家の政友だった。政友に成り代わった多吉は、自分は隠居し、岩城家の息子を養子にすると言う役どころだった。
 栄次郎は、政友の死を隠しこのまま多吉を政友として藩主に付かせる。岩城の奥様に訳を話し養子を諦めるよう説得する。聞き入れてもらえなければ、政友殺しが公になりお家取り潰しになる危険がある。
 政友が藩主についた。
 栄次郎は若菜に会った。大御所の息子の立場から離れていたいという栄次郎に、無理だと言う若菜。栄次郎は大御所の息子の立場を利用しようと考え直した。
 親の決めた男と別れたいために栄次郎にこのままもう少し付き合って貰いたいという若菜。
栄次郎は承知する。

2024年1月3日水曜日

柳橋の桜 〈三〉二枚の絵

柳橋の桜 〈三〉二枚の絵 佐伯泰英 

 公儀勘定奉行筆頭用人倉林から、江戸から離れるように言われた桜子は、江ノ浦屋彦左衛門に相談する。その夜、大河内小龍太と共に船で江戸を離れる。
 長崎に着いた二人は、総町年寄高島家の武道場で生活する。桜子が江戸へ手紙を書き船の乗り組み員に届けを頼んだことから、乗組員は殺され桜子が長崎にいることが知れた。桜子に刺客を送ってきたのは薩摩藩だった。父・広吉の死と関係があった。桜子は広吉から何も聞かされていないが、薩摩藩は桜子を狙った。
 二人は、長崎から出港する船団の新造船・長崎一丸の用心棒として乗り込むことにした。
 出島のケンプル医師が、桜子の幼少期の話を聞き、アトリエに招待し、十数年前にコウレルが描いた絵を見せた。コウレルの絵は長崎から江戸までのカピタン一行の江戸参府の光景だった。最後に現れたのは、柳橋の神木三本桜に合掌する三才の桜子の絵と、猪牙舟を漕ぐ広吉と艫下で遊ぶ三才の桜子の絵だった。