2024年2月28日水曜日

すべての神様の十月〈三〉

 すべての神様の十月〈三〉 小路幸也

結ばれたものは 福の神の吉岡と岡橋が、漫画家の大野原顕と小説家の酒井美海と合わし共同で作品作りを奨めようとした。合わせた瞬間縁結びの神が動いた。縁結びの神は人間界に暮していない。会ったことがない。縁結びの神に仕事をさらわれたと二人は思った。

コンビニで恩返し 父が亡くなり、父のコンビニを手伝っていた兄を助けるために弟は、東京から故郷に帰った。弟は彫像家。高校三年の女子に彫像を教える。女の子は猫を彫って持ってきた。兄弟は招き猫にする。彼女は、猫。猫の恩返しでコンビニのために招き猫を置いてきた。 

間に合わせます 神原は、映像を記憶するのが得意。巻き戻しも再生もアップにも出来る。そんな神原が、父危篤の時、不思議なタクシーに乗った。いつの間にか病院に着き、父の死の前に会えた。神原の後輩、鮫島も撮影で使う料理の材料を集めなければならなくなった時、不思議なタクシーに乗った。いつの間にか材料が揃っていた。運転手は同じ、佐藤一郎だった。
 二年後、神原は、佐藤一郎のタクシーに乗った。自分と友人の話をした。佐藤は、自分は韋駄天だと言った。ご馳走の用意はお手の物。そして神原は、八咫烏の末裔だと教えてくれた。映像で覚えて記憶が良い。自由人でしょう。地に縛られず何をするのもどこへ行くのも自由です。神原には覚えがあった。佐藤は末裔は末裔です。家系に色濃く力が出る人が生まれるかもしれない。また教えてあげてください。神様に出会うことがあるかもしれないと。

運が良くても悪くても 木沢は古いバーのマスターに相談にきた。たまたま一緒に暮すようになった潤子という子がいた。その子と住むようになっていろいろ悪いことが起こった。そして母が倒れた。実家に帰っている間に昔馴染みと仲良くなり結婚しようかとかんがえだした。就職し、電話で潤子に別れを言った。そして東京の部屋に帰ると潤子はいない。居た様子もない。そして一年になる。潤子のことが気になってしかたないと話した。マスターは、潤子さんは疫病神だった。疫病神が災いを運んできた。疫病神という神様がプレゼントをくれた。と思えばいいのではないか。
 マスターは道祖神、隣にいたのは潤子さん疫病神。
当たり過ぎる 書道を教えながらボランティアをして生活している農家だった、広い家と土地がある。人捜し、猫探し、剪定、掃除の手伝い。隣の高校の寮生が一人先生の紹介で手伝いに来た。小井戸君は実家に帰らない。小井戸君は、懸賞でもくじでも何でも当たる。そのために父親が働かなくなった。父親に利用されないために家に帰らない。一億と五千万を当てたという。雷獣は、家に雷を落として、その拍子に強運もなくなったと言えばいいと。
 父親は土地を売り、アパートに引っ越し元の会社に戻った。小井戸君も父親と一緒にすむことになった。

気象予報士は雨女 気象予報士をしている私は雨女だ。超能力があるのかと思えるほど雨がふる。それを聞いた後輩の伊勢崎瞬君が、自分の実家に私を誘った。湖の祠の守り人だと言う。湖の露天風呂に入り祠に行く。湖の龍が現れ、久しぶりだと話す。雨女だという土井真里奈だと紹介する。おそらく何百年も昔に、龍神と人の間に生まれた子孫に連なるのだと言う。

方向音痴は治りません 万梨は大学の教育学部で心理学を学んでいる。万梨の彼・二ノ宮凌平の母親がものすごい方向音痴だと言う。万梨は精神科医で心理カウンセラーをしている親戚の大学教授を紹介した。凌平は母の相談に行く。先生は家族の行動記録をつけてほしいと言う。毎日どこへ行って何をしたか。時間ごとに。お父さんと凌平の行動記録を付け、母と妹にも聞いて簡単に聞き取る。十日続けて欲しい。
 母と万梨と凌平で先生を訪ねる。先生は、行動記録を見ながら、母・喜子は、天性の感覚で方違えをしている。生まれながらにして「厄払いの神様」がついているのでしょう。ご先祖に力の強い陰陽師がいる家系かもしれない。物忘れや物理的の事故を喜子の道に迷う方違えで祓って来たんだろう。何も治す必要はないということだった。
 先生も同じ陰陽師の家系、同じ物を持っているとすぐ分った。

座敷童は大人になるのか 柿崎亮太は、父親が意識不明だと警察から電話を貰った。彼女・めぐみも一緒に実家に帰る。二百年以上の古い屋敷の玄関先に松が倒れていた。父親は気がついたが、お手伝いさんが行方不明だった。父親は小松さんは座敷童かもしれないと言う。
 亮太はこの家は自己修復機能があるみたいに思う。九十九神かもしれない。二人は松の木を退け庇の破損を修復した。
 小松さんは現れた。良く気付いてくれましたね。めぐみの髪飾りも九十九神だという。

死神よ来い 死神に恋した夏川麻美。医者になった。小児科医だった。麻美は、親友の奈々子から花井幸夫さんに会ってみない。と言われた。
 風神が飛び込んでき、死神を呼んで解決した幸夫は、死神の幸夫さんに風邪を引いているようだから小児科医に行くように進める。三人の風神も着いて行く。そこの先生は死神が見える先生だから。麻美のクリニックに行く?

地味すぎる あたしは、幼稚園の時からスライムみたいな人が見える。大水で田畑が駄目になった後、作業着で話している二人を見た。おれたちのこと見えてる。土の神様と火の神様だった。自分たちは地味な神様だと愚痴った。
 ほんのちょっと手助けして元の状態にする。
 神様は人間がいるかぎり、望む限りいる。


2024年2月26日月曜日

棟居刑事の証明

棟居刑事の証明 森村誠一

 夏の終わりに熱海の海の沖にある休憩台に男が五人、十二三の少女と二十代の女性七人が休んでいた。少女を除く六人は、女性の出した煙草をくゆらした。五時になりそれぞれの方向へ泳ぎ出した。

 雑木林に生き埋めにされた数十匹のヒヨコの下から変死体が見付かった。政財界に大きな影響力を誇る大物総会屋・税所重信だった。
 ヒヨコを見付けたのは熱海の沖にいた少女・尾形奈美だった。税所の事件を調べるのは熱海の沖で煙草を一本吸った棟居だった。税所の愛人・大杉則子は、熱海の沖で煙草を出した女性だった。
 会社から総会屋税所対策を命じられ、税所から奴隷のように扱われ、自分の命が後半年ないし一年と言われた時、税所を殺すことを最後の目標とした男もまた、熱海沖で煙草を一本吸った八坂正章だった。
 サラリーマン生活の出世は、専務に付いて来たからだと思っていたが、妻が昔税所と関係があり、専務の後ろに税所がいたことが分り、現在も続いているような、息子と娘は自分の子でないかも知れない疑惑がわく。妻が容疑者の一人となり、じぶんも容疑者の一人となったのも、熱海沖で一本煙草を吸った三崎陽一郎だった。
 ヒヨコを埋めた犯人・関野が殺された。関野を追いかけていた男・末岡がいた。暴力団幹部の付き人だったが、幹部が関野に銃で撃たれた。末岡の機転で幹部に玉が当たらなかったのだが、銃を撃たれる所までされたことで末岡は付き人を外された。銃を撃ったのが、対抗する暴力団の下っ端関野だった。税所を埋めたところを、ヒヨコを埋めにきた関野に見られ、関野を殺したのかもしれないと考えられた末岡は棟居たちに捕まった。末岡は関野も税所も殺してはいなかった。末岡も煙草を吸った一人だった。
 もう一人の男・奈美の兄・尾形良一。兄弟の父は、税所に死に追い込まれ会社を奪われた。復讐等考えなかったが、熱海沖で出会い、その後再開し付き合うようになった良一と則子だった。税所が則子を無理やり犯すシーンを見せられ良一は税所を殺した。埋めるところを関野に見られ恐喝されたため関野を殺したと思われた。税所殺しは認めたが関野殺しはしていないと良一は言った。
 八坂が自殺した。関野を殺したと遺書を残して。
 
 一年後、奈美と棟居は熱海沖の休憩所にいた。棟居は関野殺しは、関野のへの恐喝を知った奈美のやったことだろうと思っている。岬の突端に関野を呼び出し、その前に岬の突端の道にオイルを撒いておいたのだと思っている。
 兄と末岡が出所すれば、大杉と三崎を誘ってまたここに集まろうと奈美は言った。

2024年2月24日土曜日

部屋住み勘兵衛 闇の剣 

 部屋住み勘兵衛 闇の剣 鈴木英治

 2012年10月23日参照

 古谷勘兵衛、幼なじみ久岡蔵之介の妹・美音と結婚し、久岡勘兵衛となる。


 2012年10月23日 
古谷勘兵衛 久岡蔵之介 美音 
 跡継ぎの無い若殿の何件ものの死 首を取っていく辻斬り、両方の事件が勘兵衛に関係してくる。
 目付 八丁堀同心
 2014年3月11日 2024年追加
 久岡蔵之介、勘兵衛の弟・松永弥九郎、弥九郎が仕える殿・上田春隆も心臓発作に見せかけ殺される。
 勘兵衛は自分に関係するので調べる。
 器量が優れていると言われる堀井長次郎を上田家に入れ、大名復帰を願う大殿上田隆憲の隠れた弟・剣道指南役・藤井信左衛門の企みだった。

 首を取る辻斬り闇風は、勘兵衛の大きな首が欲しくなり狙ったが失敗、四年間腕を磨いていた。今回も二回失敗する。
 闇風は蔵之介が事件に手を貸す事もあった従兄弟の町奉行所与力・桐沢市兵衛だった。
 友達の左源太が人を殺したと目付けに追われ、勘兵衛の所に逃げてくる。勘兵衛は調べ濡れ衣をはらす。

2024年2月22日木曜日

藍染袴お匙帖⑭ 雨のあと

 藍染袴お匙帖⑭ 雨のあと 藤原緋沙子

 ほととぎす 倒れたと呼ばれて行った先には、今度倒れれば危ないと思われる左兵衛がいた。左兵衛は、四年前、女房が働きに出た先の料理屋の板前と駆け落ちしていた。まさに家を出られてから酒を飲むようになった。十三才の息子・与七は、父親と袋物を縫う職人になるつもりだったが、母親を探すために貸本屋になっていた。この瓢箪長屋は、麻疹が流行った時、東湖が診療した長屋だった。一人も死人が出なかったと東湖に感謝していた。

 馬喰町の八百屋の店主・仙吉の妹・なおが川に浮いて見付かった。千鶴は検死を頼まれた。
首の後ろに指跡があり、首の後ろを押さえて水の中に顔を押し付けられ溺死した。それから川に投げ捨てられたと見た。なおは妊娠していた。なおは水茶屋に務めていた。なおには借金があった。なおには、板前をしているという色の白い富蔵という男がいた。

 谷中の感応寺の参道で、与七は富蔵を見付けた。富蔵はまさが働いている屋台の団子屋で、無視するまさから銭を取ろうとしていた。暴力を振るう富蔵に与七は、木刀を振り回した。富蔵はまさの肩に匕首を突き刺した。
 まさは粋楽の所に運ばれ千鶴が手術した。まさは助かった。家を出てすぐ富蔵から逃げたが、長屋には帰れなかった。長屋に帰ろうと言われても、申し訳ない。帰れないというまさ。左兵衛がもう危ないと言われ、まさは長屋へ。もう理解しているのか分らない左兵衛が、謝るまさの言葉を聞いて涙を流し亡くなった。

 なおの殺しを認めない富蔵。千鶴は、富蔵の長屋の瓶の水の中から髪の毛を見付けた。富蔵は捕まった。
 
 桂治療院に、毎日詰めて来てくれる圭之助と、医師助手をしている道が、いい関係になっているようだ。
 
 雨のあと 松井町の遊女屋の「浪速屋」の遊女から遊女の扱いが阿漕だと相談を受け、元遊女・現金貸しのつねは、浪速屋に談判に行く。男衆に殴る蹴るの暴力を受けたつねは、簪をれんの肩に突き立てた。ちょうど来合わせた同心・浦島亀之助が、つねを捕まえた。番屋で治療をした千鶴。腕の骨が折れ、時間が経てばますます酷くなるかもしれないと言う。
つねは大番屋に送られたが、相手には何らお調べも無いという。
 大番屋へ治療に行った千鶴は、つねに伏見屋という呉服屋の七之助19才が、元気で暮しているか確かめて欲しいと頼まれた。七之助はいなかった。七之助はつねの息子だった。生まれてすぐ伏見屋の前に置いた。伏見屋の主は、つねの客だった。伏見屋には子供がいなかった。五年後に子供が産まれた。七之助は、山口泰安という医師のところに行った。
 
 泰安は良い医者だったが、紀州家の出入り医者で、良くない者に利用されていた。泰安が殺された。泰安が最後に行ったのは旗本木島家だった。木島左門。泰安を詐欺の手先に使ったのは木島左門だった。遊女屋浪速屋の主も木島左門だった。
左門一行が屋敷から出た。浦島は捕まえようとする。千鶴も助ける。左門を倒し、詮議を受け罪を償えと言ったのは求馬だった。

 根無し草だという七之助に千鶴は、つねのことを伝える。つねが大番屋から出る時、七之助は、おっかさんと迎えに行った。

 
 

2024年2月20日火曜日

大江戸科学捜査八丁堀のおゆう⑨

大江戸科学捜査八丁堀のおゆう⑨ 山本巧次 
 抹茶の香る密室草庵
 
 茶問屋の清水屋が、根津の寮の茶室で殺害された。居合わせた南町奉行所の与力・戸山の証言によれば、被害者の入室後、茶室に近づいた者はいないという。
 戸山の呼びで、駆けつけた同心・鵜飼伝三郎、岡っ引き・源七・ゆうは、聞き込みを始める。
 源七とゆうは、同じお茶関係の駿河の名主・徳左衛門殺しとの関連も調べた。徳左衛門は何か訴えがあって馬喰町の宿に泊まったようだが、茶問屋を訪ねたと思われるが、土左衛門で見付かった。徳左衛門は江戸では茶の値段が上がっているのにも関わらず買い取り値が、あまりに安く抑えられていることで訴えにきていた。茶問屋との話がうまくいかなければ、勘定所、あるいは評定所に訴えるつもりでいた。
 伝三郎は、旅ゆけば駿河の国に茶の香りってぐらいだ。と口にした。
 ゆうは、冥加金のことで、伝三郎に相談、戸山様にも話を聞きに行った。

 根岸の聞き込みをしていると、侍が、清水屋のことを調べ廻っていた。井角四郎兵衛という。
 
 茶室の密室を解くために、ゆうは、宇田川を呼び、地下道がないか調べた。寮の離れには地下室が見付かった。鍵が掛かっているためファイバースコープで中を調べる。茶葉を発酵させていた。清水屋は永山という蘭学者と二人だけで離れにいたようだ。失敗していたが、紅茶を作っていたようだ。

 茶問屋筑後屋の娘が勾引かされた。ゆうは考えられる範囲をドローンを飛ばした。それらしい蔵を見付けた。ファイバースコープで覗き、娘の存在を確かめた。全面上部にカメラを設置し、明るくなってから動くつもりだった。朝、娘が帰って来た。カメラを確かめる。井角が諸肌脱いで助けていた。井角は遠山金四郎だった。屋敷から出てきた遠山を尾行し、話を聞く。
勘定奉行の父親の指図で、勘定所内の不正を調べていた。

 裏木戸の閂の指紋を調べ、一番遅れて来た遠州屋辰治郎が犯人だと割り出した。戸山が清水屋が躙り口から入ったと思った時、辰治郎が清水屋を殺し躙り口から出ようとしたが、誰かがいると分かりもう一度茶室に戻っていく姿だった。戸山がいなくなってから茶室を出、裏木戸から外に出て、表から遅くなったと今着いたように入ってきたのだった。

徳左衛門と清水屋殺しの犯人として、遠州屋辰治郎は捕まったが、冥加金の中抜きや、冥加金追加を逃れるための賄も計画はあったが、まだ動いてはいないため勘定所の佐戸江は捕まらなかった。
 ゆうの機転で、佐戸江の首実検をした。清水屋の女中に佐戸江を合わし、永山という蘭学者が佐戸江だったことを暴いた。清水屋に金儲けと言い、作り方もはっきり知らない茶を作り出し儲けようとしたことを暴いた。諸々の動きのため御役御免にはなるだろう。

 徳左衛門の息子が、新しい御茶・紅茶の作り方を教えて欲しいという。ゆうと宇田川は自分たちも知らないと教えなかった。まだ日本に紅茶の記述はない。

 宇田川は、伝三郎が口にした旅行けば・・・を調べる。大正から昭和の初めに流行った浪曲だと分った。ロシア船事件の時も伝三郎はオロシャと言わずにロシアと言った。
 伝三郎は、紅茶と言った二人をしくじりだと考えた。二人が自分より未来から来ていることは分っている。何のために来ているのか。未来人だとはっきりさせることはゆうとの関係を壊してしまうことになる。どうしても避けたい。やっぱりこのままで行こう。
 
 

2024年2月18日日曜日

時代小説傑作選 はなごよみ

時代小説傑作選 はなごよみ 細谷正充編

 吉原桜 中島要 「着物始末暦五 なみだ縮緬」
 綾太郎は、吉原の紅鶴から恋しい人への文を託される。綾太郎は届けようとするが余一に止められる。唐橋の恋話を聞き、花魁の妹分への責任を聞く。恋の始末の仕方を聞いた。弔いのためのふきにいろは柄が使われている百花の打掛。
 綾太郎は紅鶴に言われた通り、開き直って玉に心のうちを語る。互いに焼きもちを焼いていることが分った。
 
 桜の森に花惑う 廣嶋玲子 「妖怪の子預かります3 妖たちの四季」
 ほろ酔い加減の久蔵は、弥助と千弥の後を付け、妖しの庭の桜見に入ってしまった。猫の姫に恋される。現実の世にも、猫の姫は、廻りを許嫁の術をかけ現れる。久蔵は、いっぱいあるお気に入りを猫の姫に見せてあげようと手を取る。

 あじさい 梶よう子 御薬園同心 水上草介 柿のへた」
 嫁を鬼嫁という隠居が、道場の若者に騙され京へ二人で行こうとする。二人の前に立ち塞がった嫁は、隠居を助ける。薬を飲めない嫁が熱を出し寝込んでいることを聞いた草介は、熱冷ましのあじさい茶を届ける。草介は、聞いた勝俣家の献立から、隠居は胃が悪いのだろうと言い、三日に一度の墓参りの話を受けて足腰もさぞやと続ける。嫁は、隠居のことを考えたことをしていた。
 草介は、あじさい茶に解熱作用があることを教えた千歳に、熱を出して寝ていた時にあじさい茶は出されなかったと詰った。
 
 ひとつ涙 浮穴みみ 「蔵前片想い小町日記 めぐり逢うまで」
 札差の娘・まきは七才の時、救ってくれた恩人に恋している。二十三才になった今も独身だ。札差の潰れた家の幼なじみが四年ぶりに現れた。まきに、もう一人の幼なじみ丈二が、昔からまきのことが好きだったことを話す。まきは気がついていなかった。毎年朝顔を枯らす。丈二は明日、話に行くと言う。家に明日花が咲く朝顔が届けられていた。
 
 縁の白菊 諸田玲子 「お鳥見女房 蛍の行方」
 君枝は、菊祭りに行くために、隼人との待ち合わせていた。茶屋の娘・さんに伝言を頼まれた。君枝は行く。お産が始まった。男・与助が産婆を呼びに行き、君枝はお産を手伝う。夕方、赤子が産まれ母親は亡くなった。小袖はよれよれ、襦袢は汗で肌に張り付き、髪はほうけ、顔も汗と涙で汚れていた。そんなところに、さんと隼人が来る。みんなが探し回っていた。次の日、辰吉親分が、与助のもめ事はおさまり、赤子は母親の妹・さんが育てゆくゆくは、与助と所帯を持ち、植木屋をはじめるだろうと知らせてくれた。珠代は、ようやりました。そなたを誇りに思いますと君枝に告げる。母の言葉を聞いた君枝は、母の膝にとりすがり堰を切ったようにしゃくりあげた。
 
 侘助の花 宮部みゆき  「幻色江戸ごよみ」
 質善の隠居・吾兵衛は、碁敵の看板屋の要助に相談される。要助の看板には、侘助の花が描かれていた。理由を聞かれ、一度だけ、火事で別れ別れになった娘が、好きな花だった。娘が生きていると信じている。娘の目に触れれば巡り合うことがあるかもしれないという、嘘の話をした。娘だと言う娘が現れた。ゆきという。誰かの囲われ者のようだ。菓子折りを持って現れる。吾兵衛が会って話をしても、生き別れてやっと会えたんですよ。他人は関係ないでしょう。構わないでという。唐突に現れ、土産を下げて、父親に対するように話しかけ、妹たちに笑いかける。四半刻ほどで「じゃ、またね」と帰って行く。
 三月経ったころ、ゆきの家に行くと、彼女は追い出され、違った若い女が住んでいた。
 


2024年2月16日金曜日

夜鳴きめし屋 新装版

夜鳴きめし屋 新装版 宇江佐真理
  2014年に読んでいる。

長五郎が営む鳳来堂は、深夜食堂。
かっての恋人みさ吉は、八才の息子・惣吉を連れて芸者に戻った。
はっきりしない長五郎だったが、惣吉が昔自分が働いていた叔父の質屋に奉公に行ったことで、惣吉が自分の子だと自覚する。
みさ吉にも、一緒に鳳来堂で働いてほしいと告げる。 

2024年2月14日水曜日

吉原裏同心㊵ 蘇れ、吉原

 吉原裏同心㊵ 蘇れ、吉原 佐伯泰英

 寛政五年十月、江戸は大火事に見舞われた。客が減ることを覚悟していた会所だったが、客が来る。客の正体を知った時、八代目頭取四郎兵衛こと、裏同心神守幹次郎は苦悩する。
 公儀は、浅草弾左衛門の差配下の者の吉原出入りを禁じていた。
 弾左衛門の従兄弟・弥一郎が、吉原で殺される。神守も狙われる。隠して弥一郎を送り届ける。
 九代目弾左衛門の後見・佐七の店・灯心問屋の番頭の娘が誘拐され、五百両を要求された。要求された場所に澄乃を行かせ、幹次郎は少なくなった敵の店に行き、娘を助け出す。澄乃は敵の船を揺すり、川に投げ出し、五百両を守り帰った。
 澄乃は、切見世の女郎に焚き出しを考え、幹次郎の命で弾左衛門の焚き出し方法を学ぶ。炊き出しのために使って欲しいと慶長大判で五百両が置かれていた。
 幹次郎は、奉行所に持って行く。江戸城の金庫の物だった。奉行所も困る。
 老中・戸田氏教と関わりがある勘定奉行・佐橋則武と、川に投げ出された道場主・向来重五郎が斬られた。
 奉行所より百両が下賜された。
 炊き出しが始まった。汁の具は、魚河岸から頂戴した魚のあらや、大根河岸からの萎びた野菜だった。寄贈された調味料と引きて茶屋の残り飯だった。


2024年2月12日月曜日

満月珈琲店の星詠み⑤ 秋の夜長と月夜のお茶会

満月珈琲店の星詠み⑤ 秋の夜長と月夜のお茶会  望月麻衣
  
 木星と銀河のカッサータ 淡路島で母を看取った百花。
 百花の父は四十年前、祖父の百か日が終わった頃、別れてくれと家を出た。百花は、幼稚園から保育園に変わり、母一人娘一人の生活が始まった。
 家から離れる神戸の大学に行かず、近くの看護学校に行き看護師になった。恋した男性が遠距離であったため、結婚しなかった。母の看護のため看護師を辞めた。母が亡くなった。
 母の葬儀の日、父が同じだという弟が来た。父は好きな人が出来離婚したようだ。十年し、生まれた弟だった。
 何もせずただ家にいる。母親の荷物を片づけ見付けたのは膨大な量の本だった。
 夜中に、猫に誘われ行った「満月珈琲店」で、母との関係、勝ってな思い込み、母の思いいろいろ考えた。
 未来をこれからのことを考えた。

 水星のお茶会とベテルギウスのプリン 真中総悟の記憶
 社長・桐島祐司、後輩・鈴宮小雪と、「musubi」出版社兼広告代理店で働く真中総悟。現在は元気な総悟だが、小学生の時は身体が弱く、岩手、遠野の祖父母の家で過ごした。十二才の夏、父母と母の姉妹夫婦、従姉妹たちと忘れられない夏を過ごした。母の言う「罪の子」の意味を知った。母は不倫後、父を略奪し、夫婦になった。その時お腹にいた子は流産し、十年後総悟が生まれた。ということも知った。母も身体を壊し、総悟も身体の弱い子どもだった。
 子猫を助けた。子猫は明日の命が知れない状態だった。ティルと名付けられたその猫に因って、銀河鉄道の夜を経験する。食べたベテルギウスのプリンのお陰で溜めた物を吐き出した。
 夜明け前、野原で寝ていた総悟はカメラマンに起こされた。そのカメラマンは、後に写真集で知った桐島だった。

 金星と三日月リンゴのアップルケーキ 松浦果歩の告白
 真中総悟は、広島の従姉妹の結婚式に出る。淡路島の葬儀の後だったので、式には参加せず、披露宴に出た。総悟の従姉妹の妹・沙耶の結婚式。
 姉は大人しく、賢い、総悟と本の話で持ち上がる。広島大学を出て図書館司書になっていた。妹は明るく、専門学校を出て美容師になった。
 妹は、高校生の頃から彼がいなかったことがなかった。専門学校生の時、いつもと違ったタイプの彼・聡史を連れてきた。父母も喜こび、気に入っていた。
 果歩は苦しんだ後、沙耶に告白した。ごめんね。聡史君を好きになった。
 十一年後沙耶は結婚した。十二年後、厳島神社で結婚式をする。沙耶は姉に手紙を渡す。
 姉の告白の後、聡史と別れた。理由は聡史の浮気と言ったが、聡史が、お姉さんを好きになってしまったから君を付き合えないと言われたのだった。披露宴に聡史が来るからというこことだった。

 エピローグ 総悟は、桐島に、めがね橋で死体みたいに転がっていたぼうずは、おまえだろうと言われた。思い出したのだ。
 総悟は告白すると桐島に言う。振られたら辞めるのは、独立出来るお前だろう。二人が上手くいったら、会社二人で継いでくれよ。

  

2024年2月10日土曜日

入舟長屋のおみわ⑦ 長屋の危機

入舟長屋のおみわ⑦ 長屋の危機 山本巧次

 家主・寿々屋の商売に難が持ち上がる。美羽の仕切る長屋を売る話が持ち上がる。買い手は金にしか頭にない悪名高き商人・常葉屋だった。美羽は住人を守ろうと奔走する。
 すると、材木屋・田村屋の若旦那が、長屋を買い取ろうと志願してくる。二枚目で仕事もできる若旦那・充治は、美羽に結婚を申し込む。
 長屋の前の炭屋の丸伴屋が常葉屋に買われていた。田舎に帰った主家族の、息・善太郎が殺された。廻りをうろつく男が現れた。善太郎の友人・栃木屋の三男・隆祐と名乗る。隆祐は、善太郎は田村屋を疑っていたと言う。
 同心・青木喜十郎にはなしを聞く。本所与力、唐物屋、大奥役人と繋がりが大きくなる。
 寿々屋の難儀も偶然ではなく、長屋を売るように仕向けられていた。田村屋も常葉屋と仲間だった。充治には、愛人が居り、愛人の証言で、善太郎殺しは、充治だと判明した。長屋買い取りの話はなくなり、寿々屋の美顔水に漆を入れたのも田村屋に命じられた瓦版屋の者だと判明した。美顔水は、新しく開発され、「みわの彩」という名で売れ出されることになった。大奥に寿々屋が出さされた二千両は、大奥役人の勝手な話だったと分かり、千八百両が返った。そのお金で地震で痛んだ長屋を建て直すことになった。丸伴屋も寿々屋が買い取り長屋にする話もある。

 美羽が、大川へ投げ込んだと言われている男が、隆祐だった。隆祐は美羽に結婚を申し込んだ。隆祐は婿に入った。
 

2024年2月6日火曜日

すべての神様の十月〈二〉

 すべての神様の十月〈二〉 小路幸也

 戌の日に イラストレーターとなりフリーになった僕。二才のカノンを連れた美耶子と結婚。三年目に美耶子は、早産で入院した。家に残された僕とカノンの所に、父から頼まれたと雑賀たねさんが、家政婦として来てくれた。美耶子との結婚を反対され付き合いの無い父だった。たねちゃんとカノンがなつき、弟が無事産まれた。報告に実家に行く。父は家政婦を知らなかった。カノンを頼み家に行く。たねさんはもういない。昔飼っていた犬と同じところに痣があった。お稲荷さんに安産祈願に行ったからね。

 お稲荷さんをよりしく 北海道の大学を終え、北海道で就職を考えていた戸川みつる。父が亡くなったあと、母一人で喫茶店を経営していたが、心筋梗塞で倒れた。みつるが帰ってきて営業している。まだ先を決めきれていない。裏のお稲荷さんにお供えする小さい稲荷寿司を、たまたま来た高校生に出した。進学校の生徒、塾に行く前だった。キーちゃんとフーちゃん。おいしいの声に押され店に出す。「こいなりさん」「恋なりさん」
 この店を続けることが商売繁盛。
 キーちゃんは狐のキー。フーちゃんは、フォックスのフー

 天狗さまのもとに  西川は消防士、彼が出場すると、消火する前に火が消えるとうわさされる。到着すると消える。来て欲しいと引く手あまた。四年ぶりにホームに帰ってきた。現場写真によく写っている猫探しの探偵に会いに行く。しっぽが二つに分かれた白猫を捕まえた彼は、これで勝ってに火は消えなくなりますよと言った。西川が三才の頃、怪我した白猫を見付け母親に必死で訴え助けられた。西川の役に立ちたくて自分の尾に込められた羽団扇の力を使って火を消していた。やり過ぎると世の中を騒がせるので天狗さまのもとに連れ帰ると言う。猫探し探偵さんは、先祖が烏天狗だった人間。話ができたりするので神様や天狗様にいろいろ頼まれると言う。西川は、今夜のことは忘れるように天狗様がするようだ。

 死神に恋 夏川麻美は高三の夏に一度死んだ。バスに乗っていて銃の流れ玉に当たり死んだ。が生き返った。自分の傍にイケメンの男性がいたことを覚えている。病院で彼に合った。彼と話した。本来見えないものらしい。彼は死神だった。麻美は死神に恋をして、会うために医者になることにした。麻美についていた看護師・井沢は、福の神だった。バスの中にいた。彼女のお陰で、こめかみに当たる銃弾がすこしそれて肩に当たった。生き返ったのは不思議。

 眠れぬ夜の神様  枕の九十九神と寝ている間に話し、マンガが売れていく。御手洗咲子と名乗る貧乏神が来た。売れっ子になっててっぺんからどん底に落ちないように貧乏神が来た。貧乏神と九十九神は相談し、枕を洗い、九十九神は消える。また、二、三十年してから九十九神になって現れることにする。

 笑う門には福来る 売れていない芸人・きっとキッド。福の神であるお笑い芸人。三か月前、練習している公園で、ファンです。というまちゃさんにサインした。まちゃさんは、それをイラストしTwitterniアップした。編集者の目に留まりマンガ家デビューとなった。好きになってくれた人に福を撒き幸せにしている。もっと笑ってもらって福を撒きたい。

 落とした物を探しています 忘れ物センターの新人・明野さん。彼女が窓口で応対した人の忘れ物、落とし物は全て見付かっている。隣で見ている私は、保管質の主・二ノ宮さんに彼女のことを話した。二ノ宮さんは、ここの神棚に手のひら地蔵が祀られていて手のひらさんと呼ばれていることを教えてくれた。

 引きこもりにおじさん 僕は市役所に就職し公園管理になった。自宅の前が公園、向かい側の同級生に会った。彼は引きこもりになっていた。そこから救い出してくれたのは鳥おじさんだったという。公園の鳥に餌をやっているおじさん。鳥おじさんは餌をやり掃除もする。近所の人も同じようにする。鳥おじさんがいるだけで皆が幸せになる。彼は年を取らないずーと同じ。神様みたい

 子供は風の子 仕事帰り、子供がぶつかってきた。すごく活発で運動能力が高そうな子。男の子と女の子。部屋まできてしまった。三人になった。いつもはスカスカの冷蔵庫がいっぱいになっている。いつの間にか寝ていた。女性がいて説明する。風の子・風神があなたにぶつかった。貧乏神が知らせてくれた。あなたは熱を出して倒れる寸前だった。あなたが風神を見えることがうれしい。私は女神だと言う。

 七回目の神様 花井幸夫は、入院したので母親に、今まで人が思わぬ事が起き、助かったシーンに七回会ったと話した。今回、ダイブしてきた車が、落ちて来る前に、バックしろと言われてバックした所に車が落ちてきたことを話す。母は、あなたに神様が付いているのだろう。そういうこともあるのだと言った。母は昔、神様とお酒を飲んだ間だと言った。
 夜、看護師の福の神の井沢と死神のが訪れ、七回も死んでいたはずの人が助けられる場面に出会ったのは幸夫がそういうものを引き寄せるようになってるようだと言う。彼は仙人で、趣味のようなものだと聞いた。
 死神が母とお酒を飲んだ神様だった。母親が話さなかったことを死神の幸夫さんは話してはくれなかったが、何かに巻き込まれた時には、死神の幸夫さんと呼べば参上すると言ってくれた。

2024年2月2日金曜日

お蔦さんの神楽坂日記 いつもが消えた日

お蔦さんの神楽坂日記 いつもが消えた日 西條奈加

 もと芸者で今でも粋なお蔦さんはご近所の人気者だ。
 滝本望はそんな祖母と神楽坂で二人暮しをしている。
 三学期が始まって間もないある日、同じ中学校に通うサッカー部の彰彦と後輩・金森有斗、幼なじみの洋平が、滝本家を訪れていた。
 望と彰彦が有斗を自宅に送り届けた直後、有斗が血相を変えて飛び出してきた。部屋が血だらけで、家の中に、誰もいないと言う。その日から有斗は滝本家に住まう。

 家中の血は有斗の家族の者の血と思われていたが、借金の相談にのっていた古谷保と言う男のものだった。
 お蔦さんはいろいろな人の話を聞きながら、有斗の家族のいるところを考える。
 望の学級担任で、サッカー部顧問でもある小野先生は、有斗のサッカーの上手さを見抜きいろいろ相談にのっていた。
 有斗の家には借金があった。毎日借金取り・鹿渡部が来るようなこともあった。借金を一つに纏め世話を焼いてくれたのは古谷だった。が、古谷と小野には、二十年前、鹿渡部と金森 の執拗な借金取りたてのため、父親が自殺に追い込まれ亡くなったという過去があった。古谷は復讐のため金森に近づいていた。小野は手をかしていながら、古谷を止めようともしていた。
古谷は金森の借金を纏めながら二倍に増やし、そのことが鹿渡部の損になるように仕組んだ。そのことを知り金森家に乗り込んだ鹿渡部は、古谷を殺してしまう。遺体の始末を金森家族に手伝わせた鹿渡部、埋めた場所が小野の元別荘に近かったことから、金森家族・父母姉は、鹿渡部のもとから、元別荘に逃げ込む。鹿渡部の知らない台所の地下倉庫に逃げ込んだ三人だったが、探し廻る鹿渡部のために戸に鍵が掛った状態になってしまった。

 お蔦さんは、二週間以上になり、有斗の家族が連絡してこないことで、早く見付けなければならないと小野先生に詰め寄る。小野が三人がいるかも知れないと見に行ったのはどこか?と摘める。小野のもと別荘のことを話す。三人は見付かった。

 有斗は福岡に転校した。
 小野は先生を辞めた。