2024年1月31日水曜日

八丁堀強妻物語〈四〉恋女房 

 八丁堀強妻物語〈四〉恋女房 岡本さとる

 隠密廻り同心・芦川柳之助に、香具師の大立者・三喜右衛門一家に単身潜り込み、三喜右衛門が引退すると噂が流れると、廻りがどういう反応するか見定めることが密命だった。
 渡世人に化けて三喜右衛門に近づくと、柳之助は三喜右衛門に気に入られる。
 賭場に鬼松がうろつくようになる。賭場に千秋と花が壺振りとして入っていた。
 三喜右衛門は、元旗本の浪人の金貸し塙政之助に縄張りを譲りたいと話を持って行く。塙は二千両でと言いだした。賭場が荒らされる。荒らして居たのが鬼松と知れ、後ろで糸を引く者を聞き出そうと、三喜右衛門が動いた時、鬼松たち四人が殺される。殺したのは三喜右衛門という噂が流れ始めた時、その辺りを廻っている定町廻り同心・江田要次郎が、三喜右衛門と塙と賭場の場所を貸す経堂の殿様が集まると言う話を持って来た。
 料理屋「はなわ」に集まった。江田は顔を出さない。塙は三喜右衛門を殺そうとした。三喜右衛門には柳之助しかいないが、彼の危ない時には助っ人がくる。
 賭場荒らしに利用された剣道場の師範と利用された者三名。料理屋の前には職人や町人が逃げる侍に石礫を投げる。
 経堂家に入った千秋は、経堂家が塙に高額の借金があることを突き止めた。
 町奉行所も動き塙は捕まる。
 三喜右衛門が、大旦那と呼び、大芝居をしたのは、南町奉行・筒井和泉守の指しがねだった。塙政之助に危惧を抱いていた。


2024年1月26日金曜日

紅雲町珈琲屋こよみ⑪ 雨だれの標本

紅雲町珈琲屋こよみ⑪ 雨だれの標本   吉永南央
 
 高名な映画監督・沢口の新作の撮影候補地になった小倉屋。
 小倉屋を訪れた監督は、草に、映画の事とは別に、十六年前、所属した映画専門学校に潜り込んでいた男が作った映像作品を見せ、これを作った男を探してほしいと頼まれる。
 鈴木か田村か田丸か、出身は神戸とか、あやふやな手掛かりを残して帰る。

 草が倉庫の片づけをしていて壊した、懐かしい食器をゴミに出していると自転車の男が割れた物を持って帰る。草は墓参りの後歩いて帰り、別荘ふうの家を見付けた。ウッドデッキから見ると部屋の中に、空き缶を利用したオブジェや、粘土に磁器やガラス器を切り研磨したものが幾重にも刺さっているもの、窓の雨だれを瞬間冷凍したかのような物が並んでいた。今は亡き両親や兄、妹の一部が創作の世界に活かされるかもしれないと思うと愉快だった。
 彼は、高橋朔太郎、二十二才。草と久実が手を焼いた倉庫の片づけをしてくれることになった。
 店に朔太郎の母親と姉が来た。朔太郎と揉めて朔太郎は二人を追い出し、朔太郎も出ていった。一ノ瀬と久実と一緒に草は朔太郎の山の家に行く。朔太郎は、早稲田の政経を出ていた。十一才の時、父は家を出た。母は単身赴任と言い、父が、ここで別居していた時は、出張だった。草は、タカハシマートの高橋辰太郎の功績を讃える表彰状を見た。映画好きの部屋だった。朔太郎は祖父の趣味だという。

 映像の商店街は銀座通り、リビングには三山カルタがあり、神戸は、この辺りの昔の町名だった。映画好きから調べ、タカハシマートの現社長、高橋辰太郎の甥・敬太郎に会い、沢口に預かった映像を見せる。敬太郎は自分が撮った。が、沢口監督には会わないと言う。草の中では、敬太郎と映像が合わなかった。
 草の友人・由紀乃は、タカハシマートのことは詳しいが、脳梗塞の後遺症で、記憶が定かでない。昔に行ったり現在に戻ったり、そんな由紀乃の話から、敬太郎の従姉妹は朔太郎の母だと分った。辰太郎の死によって敬太郎は、辰太郎の娘と結婚しなくてもタカハシマートの社長になれた。娘は、敬太郎の友人と結婚した。
 草は、山の朔太郎の家で、朔太郎の家の草刈りの世話をしている田丸と会う。高橋さん、朔太郎のお父さんですよね、と。あの映像は定次が撮ったものだった。昔のこと現在のこと話しているところに朔太郎が現れる。朔太郎は、彼が父だと気がついていたと言う。また逃げられるかも知れないからと言う。二人で話したようだ。
 沢口には合わないと言われた。あなたを変えたのはあなた自身だ。
 沢口の映画は、別の場所になった。草は安堵する。
 沢口に会わないと言っていることを伝える。草はにっこり笑い、京都の広告デザイン会社・エルプラスの映像部に、面白い仕事をする、高橋定次という人がいると伝える。

 久実は、一ノ瀬と同棲している。あと三か月で住んでいるところを出ないといけないので将来を考える時期にきていた。
 一ノ瀬は山男だった。登山ノートがあった。谷川岳15才、谷川岳平標山縦走16才、一ノ倉沢烏帽子沢南鐐18才・・・メラピーク24才、マッキンリー25才。国内、海外でもほぼ単独。ネパールに登るパーティーから誘われ登山計画あり。
 一ノ瀬は、谷川岳の救助隊に参加し、無線が途絶えまだ帰って来ない。一ノ瀬が車を止めている駅に行く。途中、連絡が入り病院へ搬送されることが分った。一ノ瀬から電話が入り、駅前の車に彼が見えた。久実は携帯を置いたまま車に走る。携帯から結婚しないかの声が聞こえた。おれはおまえのところへ帰るんだ。人のプロポーズって恥ずかしいなと朔太郎は呟いた。
 
 朔太郎は八月から、野党第一党の職員になる。



 
 

2024年1月23日火曜日

蘭方医・宇津木新吾⑯ 友情

蘭方医・宇津木新吾⑯ 友情 小杉健治

 天保三年 1832年

 次郎吉が捕まった。小幡藩松平家の中屋敷に忍び込んだ次郎吉はあわてて壁を乗り越えたところ、見回り中の大石杢太郎同心に捕まった。もう盗みは止めたと言っていた次郎吉が盗みに入ったことが不思議で、新吾は調べ始める。
 新吾は次郎吉は誰かの頼みで屋敷に盗みに入り、待っていたように捕まり、罠にはまったと考えていた。 同心・津久井半兵衛と升吉と一緒に調べる。
 次郎吉にも牢内で何度も会う。次郎吉は、刑を言い渡されても覚悟を決めていた。
 引き回しの時、次郎吉は化粧をしていた。新吾とも目を合わせ覚悟していた。
 処刑された顔は引きつり、覚悟を決めた顔に見えなかった。
 次郎吉と付き合いのあったせつは、あれは次郎吉ではないという。耳の後ろの黒子も無い。
新吾は、半兵衛と升吉に話し、また調べる。
 調べたことをが、次郎吉に伝わるように、また何かが動くかと、次郎吉に盗みを頼んだ女に、次郎吉に会いたいと伝えてと言う。
 隠密を辞めた間宮林蔵にも伝える。幕府の上部の人間が関係していると思われるから。知っててくれたらいいと伝える。
 新吾は次郎吉が生きていればどうすればいいか迷っていた。幻宗は、生きていてはいけない人間だ。自殺を呼びかけるか、新吾が殺すかしかないだろうと言う。
 
 次郎吉から連絡があり、覚悟が定まらないまま会う。
 次郎吉は、覚悟していたが怖かったという。最後の休憩所で別部屋に連れて行かれ生かされた。折角生きているのに死ぬのは嫌だと言う。五人の侍が現れ、新吾を殺そうとする。幻宗が現れ、新吾は次郎吉に対するが、もうねずみ小僧ではなかった。矜持が無かった。殺そうと斬り付けた次郎吉を押さえ込んでも新吾は一太刀が出来なかった。次郎吉は逃げた。
 五人の侍は捕まり奉行所に入ったが、どこの誰かわからないまま釈放された。
 林蔵が、五人の侍は鳥居の手の者だったと伝えた。水野越前守も承知のようだ。今、ねずみ小僧は鳥居の手の内にいないようだ。

 天保四年 1833年 新吾と香保の間に男の子が生まれた。お宮参りに出かけた。
 雲水姿の行脚僧が、次郎吉が立って居たところに立っていた。すぐ姿が見えなくなった。

2024年1月21日日曜日

猫弁と狼少女⑨

 猫弁と狼少女⑨ 大山淳子

 百瀬の依頼人は夫を亡くしたばかりの左野麦子。迷い猫のヒマラヤンのせいで、脅迫状を貰う。百瀬は依頼人との話の後、左野の家に忘れ物を取りに行き、塀の上に座っている少女を見付ける。追いかけ助けてと言う少女を負ぶって左野の家に行く途中で、パトロール中の警官に出会う。少女が、助けてと言い逃げる。捕まった少女は警官に誘拐されたと言う。百瀬は逮捕された。 百瀬は逮捕した巡査に、あの子をよく見てあげてと言い残す。
 百瀬は黙秘した。事件に付いては何も言わない。拘置所で、みんなの相談に乗る。警察官は被疑者は、黙秘するようになったが、嘘をつかなくなったと感じている。被疑者が落ち着いていると感じている。拘置所の担当さんは、百瀬の相談を黙って聞いていることにした。自分の心持ちも変わってきたことを感じる。
 検事・明石は同期だった。同じく黙秘。個人的な話には応じる。亜子のことも聞かれるが、亜子はたぶん家に帰っただろうと思う。明石は個人的な質問をする。同性結婚は違法か?両性の同意が男女でないと違法なら、両性の説明に異性でなければならないとはいるだろう。と答えた。
 亜子が一人きりになった時、父母が来た。食事をして帰る時、父親は「あいつが大嫌いだが、あいつを選んだお前は天晴れだ感心する。がっかりさせるな。」母親は「実家に帰ってると思ってるよ。どーんと構えてここにいて、帰って来た時、何食わぬ顔でおかえりていうの。おいしいぬか漬けを食べさせてあげなさい」と言って帰った。
 百瀬は逮捕されすぐに当番弁護士を呼んだ。沢村だった。百瀬に紹介され正水直がいた。テレビで報道されていた。沢村は百瀬に会い、左野のことを頼んだ。依頼されたことは、沢村と直で調べる。百瀬は沢村にしか会わなかった。鈴木晴人のことは野呂に頼むと沢村に伝えてと頼む。
 鈴木晴人は保釈され事務所の二階に住んでいる。
 百瀬は、少女も少女の親も警察と話をしない。証言も告訴もしないため、百瀬は二十三日で釈放された。左野家にいき、警官から聞いた少女の家に行く。双子の妹・あかねにも会う。少女・冬月るいにも会い、話す。母親の会社の人事と話し合い母親の特別休暇を願う。復帰した時のことも不利益が無いよう書面に書き入れた。
 母親は、子どもと向き合うことにした。ヒマラヤンは、左野家に預け冬月家は左野家にチョクチョク行くことになった。
 鈴木晴人は、懲役二年、執行猶予三年になった。
 千住澄世と天川が結婚式を挙げることになった。出席は、天川の姉と晴人だけだそうだ。まだ一緒に住むのは無理なようだ。
 百瀬は、保釈され一週間して家に帰った。亜子は普通に迎えた。百瀬はいないものと思っていたので驚いた。無断外泊の罰金を払った。亜子は百瀬に何かあった時に、一番に教えて貰う権利の取得に必要な手続きと言って婚姻届けを出してきた。百瀬はサインした。
 直は、沢村のところでバイトをすることになった。

2024年1月18日木曜日

猫弁と幽霊屋敷 ⑧

 猫弁と幽霊屋敷 大山淳子

 百瀬は、男性恐怖症で引きこもりの千住澄代から依頼を受ける。知らないうちに親から不動産を受け継いでいたが、管理が行き届いておらず「幽霊屋敷」と地域で問題になっているらしい。どうするか任された。
 幽霊屋敷の実態を調査する。猫が子猫を産んでいた。五匹の内一匹が生き残りハクビシンと町内会長の孫が育てていた。住所の無い鈴木が、郵便ポストを借りていた。造りのしっかりした家だった。

 ホテルを利用した猫と人とのお見合いイベントが行なわれた。百瀬の事務所の猫も参加した。ペットホテルでたてこもり事件が発生する。百瀬の猫も巻き込まれたため百瀬にも事件が告げられた。犯人の要求はイベントに声の出演をしている玉野みゅうと話がしたいというものだった。警察は要求に応じない。百瀬は玉野みゅうを探すが、実態ではなかった。声が似ている千住澄代に頼む。澄代は犯人の前で、映画のゆるりの言葉「ハルト、一生そばにいる。二度とひとりにしないから」と言う。ナイフを落とし座り込む犯人を澄代は抱きしめた。
 犯人は逮捕された。刑事・天川が「千住、ぼくだ、天川だ」と呼びかけた。澄代は気を失った。
 
 百瀬は、犯人・鈴木晴人国選弁護人になった。百瀬は鈴木晴人が自分に出し、幽霊屋敷で受けとるはずだった手紙を持っていた。晴人はネットで幽霊屋敷を見て自分の家にし、自分宛の手紙を配達してもらっていた。行くところが泊まるところが無くなってロビーで暖を取った。隣のイベントに玉野みゅうがいると思い、言葉をかけて欲しくて事件を起こした。
 晴人の過去は独りぼっちだった。晴人の知らない過去もあった。映画でハルトと呼ばれ感激していた。幽霊屋敷で三十年前に行われたお食い初めの儀式は、晴人のものだった。四年後、一酸化炭素中毒で両親が亡くなり晴人は助かった。幽霊屋敷の借家の住人は晴人の家族だった。小学生時代から養母の介護をし、中学にまともに行けず働いていた。
 晴人は鳥獣猫の介護をしていた。具合が悪そうな猫を獣医に預けた。ナイフは、果物を切り動物に食べさせるのに使っていた。執行猶予がつくだろう。
 晴人は、千住澄代からの手紙を受け取った。幽霊屋敷は百瀬が事務所として使うので出てきたら住みませんか。玉野みゅうは私でした。騙してすみません。一生お友達でいるというのは本当の気持ちです。一生あなたを一人にしません。自分も一人で引きこもりです。あなとの所へ遊びに行けるようになるため頑張ります。というものだった。

 澄代は、四本指だった。小学生の時、妖怪と言われ引きこもりになった。妖怪と言ったのが天川だった。天川は澄代が好きで、妖精と言うつもりだった。警察からの感謝状を持って行った。結婚相談所の亜子のアドバイスを受け、昔のことを誤り誤解を解き、結婚を申し込む。花束を持ちありったけの言葉を言う。何度も通う。澄代はもう玄関を開けてもいいかなと思う。 

 取り込み最中に、一年前、太郎に赤ちゃんを預けた柊木真弓が、小太郎を預けに来た。小太郎はくせ毛だった。預かった七重は、お母さんは子どもの手を放してはいけない。おかあさんという女の特権を手放してはいけないと、百瀬の母親に言ったと言った。七重は夫に運転してもらい片道六時間かけて金沢に行き、百瀬は文句を言わないだろうと思い、言ってやったと言う。百瀬は七重をハグする。母親は太郎のためにありがとう、安心したと言った。
 真弓は赤ちゃんを迎えに来た。亜子は困ったことがあればいつでもどうぞと言った。
 

2024年1月15日月曜日

猫弁と鉄の女⑦

 猫弁と鉄の女 大山淳子

 百瀬太郎は、迷い犬を交番に連れて行く老婦人と知り合った。大型犬のサモエド種の犬を自分の家に連れ帰った小高トモエのために、朝の散歩を請け合った百瀬、夕方の散歩は正水直が請け合う。小高家に通ううちに、連れ帰ったポチがここ掘れわんわんと掘ったところから、千両箱と小判が見付かった。報償金として土地の所有者のものになる。また、彼女は解離性健忘を患い解離性遁走の経験者であることがわかった。

 二世衆議院議員・宇野勝子は、選挙公約に花粉症対策を挙げた。そのため財産を多摩の山岳部につぎ込んだ。杉の伐採計画を立てる。一緒に仕事をする弁護士がみつからないため、秘書・佐々木が自分のカメレオンのことで世話になった百瀬に頼む。勝子は百瀬と話し気に入る。
 山の持ち主が、伐採許可に森林蔵の許可があればと但し書きする山の神と言われる人物がいる。モモリンと呼ばれる彼がいるために、もえぎ村の杉はリッパで山の事故も無い。彼は勝子に杉を勉強することを求める。

 モリリンが有名になり、もえぎ村にいくツアーができる。
 モリリンと見合いをしたいという客のために亜子は、ツアーに参加し、森の洞穴に落ちる。
亜子が行方不明になったことを知り、森に飛び込んだ百瀬も遭難する。亜子はモリリンに助けられ、百瀬は猫の長老に夜、暖めてもらい難を越す。
 選挙で勝子は落ちた。事務所を締め、家は無くなる。勝子はもえぎ村に移り住み山を昔の広葉樹のある森に変えていく運動をしようとする。
 百瀬は小高トモエの家に勝子を連れて行く。トモエは勝子の七才の時にいなくなった母だった。勝子の父は、トモエのことを承知していた。亡くなる前に離婚し、千両箱を埋めた土地と家をトモエの所有にしていた。
 勝子がもえぎ村に移住することを知ったトモエは一緒に行きたいと言った。勝子と家をシェアすることになった。
 トモエは生き生きと暮し、時々昔が蘇りつつある。

 百瀬は金沢に母の面会に行った。あまりしゃべらないまま三十分が終わった。母が、たびたび変装して太郎に会いに来ていたことが分った。母は、結婚式の太郎と亜子の髪を整えるために美容師資格をとるための訓練を受けている。

 トモエの家が空く。太郎は、亜子の家族に亜子と一緒に住む許可を貰いに行った。トモエの家を借りることになった。

2024年1月12日金曜日

猫弁と星の王子⑥

猫弁と星の王子⑥ 大山淳子 
 百瀬太郎は、喫茶エデンで亜子と朝食中に、知らない女性から赤ちゃんを預かる。喫茶店のウエーターに連絡先を伝えて事務所に連れ帰る。
 百瀬、岡から相談を受ける。十年会っていない父親と連絡が取れない。目白の家は猫・五美と暮す者に居住権を与えるという公正証書がある。十年経つが、十年前でも年寄猫だった五美が未だに元気だ。調べて欲しいという。父親は、岡丈太郎こと占い師・星一心だった。

 赤坂春美が日本に帰ってきた。妊娠し五ヶ月、日本で産む。百瀬と亜子が暮すアパートで産むという。春美は途中で、大学受験を失敗したにも関わらず、詐欺にあい入学金、授業料、寮費を払い込んだという正水直に出会い、百瀬の所に連れてきた。被害届を出し、アパートの部屋へ居候させる。春美は、アパートの大家代行をする。
 直は、入学式に行く。東京に着いた日に、横断歩道を負ぶって渡ったおじいさんに遇った。じいさんは、お金は儲からないが、返ってくると占ってくれた。

 百瀬は目白の家に行き、住んでいる片山碧人と会う。星一心を探すために番組を作っていた制作会社を訪ねる。片山碧人は五才の時、一心に引き取られ、家庭教師を付けられ家政婦を付けられ生活していた。早稲田に合格し、一心は、早稲田近くに家を買い碧人を見守っていた。
 直が写真を見、自分を占ってくれたのが星一心で、自分を騙したのは、片山碧人だと言った。百瀬は警察に情報を提供した。碧人は逮捕された。
 目白の家は、特殊詐欺グループのアジトになっていた。逮捕されたのは全員学生。比較的裕福にな家庭に育ち、偏差値の高い学校に通っている子たちだった。碧人は猫を百瀬に預けた。
 百瀬は碧人の心が開くように導く。星一心が、碧人を大切に思っていることを説く。
 一心が碧人と面談する。一心は碧人に語りかけない。監視員に歯磨きのこと、入浴の回数、毎日の入浴を希望する。日光浴を認めよと注文する。コーラを、歯に悪いものをどうして売ると。変わった面談だったが、愛されていることに気付いた碧人は泣いた。

 亜子は、結婚相談所でうまくいかなかった佐藤が、母親が元気なうちに一人暮らしをするというので、自分が住んでいるアパートを紹介する。アパートを見に行った佐藤は、猫が木から降りるのを助け足を捻挫した。処置をした青木その子と付き合いが始まり、始めてあった母親と意気投合し、その日に結婚届を出した。その子は同居を申し出た。家が理想的だった。
 
 直は、全てを話すために家に帰った。母が迎えに来ていた。相談した明くる日、百瀬が母に会い全てを話していたことを知った。亜子が、電話で、直の生活を知らせていた。直と母親は、父に会いに行った。

 赤坂の母親が、春美を迎えに来た。赤ちゃんは自分のものではない。みんなの助けで産むものだという母親に連れて帰られた。

 碧人は、保護観察になった。詐欺グループ全員の親が、被害者全てに全額返済し、示談を成立させた。百瀬は早稲田に何度も行き、退学は免れ一年の停学、のち復学できることになった。一心は碧人を養子にする手続きを進めている。古い早稲田の近くの二階建てで暮している。五美二世は、シャルルと名付けられた。百瀬は二人の耳の形が同じなので本当の親子ではないかと思っている。

 直が、東京へ来た。
 百瀬は金沢の母親に会いに行くことにした。亜子を誘う。

2024年1月9日火曜日

九代目長兵衛口入稼業〈五〉 本所松坂町の怪

 九代目長兵衛口入稼業〈五〉 本所松坂町の怪 小杉健治

 幡随院の九代目長兵衛は、無銭飲食騒ぎに出くわす。侍たちは「大代屋」が払うと言い、大代屋は知らないと言う。
 大代屋の近辺では、商売の邪魔をするやからがいたり、客足が落ち店を畳む店がある。
 無銭飲食していた不良御家人には、夜鷹殺しと中間・六助殺しの疑いがあった。
 この嫌がらせには、立ち退きが隠されていた。口入屋・寺田屋、材木問屋・槙田屋、三千石の赤塚主水、吉原の華屋がいた。
 華屋が吉原の外に店を持ち、吉原が火事になった後の仮宅にする。華屋は吉原の付け火まで考えていた。
 長兵衛は、赤塚家に行き、計画段階の話をぶつける。長兵衛を殺そうとする家臣に公儀の目につくように暴れるぜ、家は潰れるぜと脅す。一人の家臣が赤塚を止める。華屋らの計画は頓挫した。
 松坂町に活気が戻った。


2024年1月7日日曜日

小余綾俊輔の封印公儀 猿田彦の怨霊

小余綾俊輔の封印公儀 猿田彦の怨霊 高田崇史 

 日枝山王大学 民族学科 水野研究室 小余綾俊輔
  申は神、なのに猿を当てはめたか。
  猿に関して調べるのは止めよ。危険というメモを貰った。

 大手出版社契約社員 フリー編集者 加藤橙子
  庚申信仰について 庚申堂

 日枝山王大学 歴史学科 熊谷源二郎研究室助手
  「男系・女系天皇」問題  住吉大社


 庚申は天帝、太陽神 猿田彦神
 猿田彦神、式内宿禰、蘇我氏らの系列は歴史の闇に葬られる。

 

2024年1月5日金曜日

栄次郎江戸暦〈29〉 殺される理由

栄次郎江戸暦〈29〉 殺される理由 小杉健治

 若い女・まちが、兄は人を殺したり自死したりしない と訴える。栄次郎が三味線の練習場所にしている秋の兄ということになっている南町奉行所筆頭与力・崎田を頼って来る。話を聞いた栄次郎は調べると約束する。

 まちの兄・多吉は、首を括って自死していた。その場にあった血の付いた合口から、とせが殺されていることが分った。多吉はとせを殺し、自殺したとされていた。とせの囲い主や、とせの周りの人に聞き込み、とせの昔からの情夫が殺されていることが判明した。多吉には言い交わした女がいたが、姿を消していた。栄次郎は岡っ引きや同心を動かす。

 栄次郎に見合い話しが来た。栄次郎は気乗りがしないが、兄の上司からの話で義務的に会う。相手は三千石の旗本・岩城主水介の娘・若菜。話によると若菜も、栄次郎がどうしても会いたいと言う「大御所」の息子だから仕方なく会ったということだった。栄次郎はこの見合いの理由が分らないので岩城家のことを調べる。若菜は母親は、美濃藩大野家より嫁いでいた。
 大野家は当主が倒れ、息子が乱暴なため廃嫡し岩城家の二人の息子のどちらかを大野家の養子にする案があった。
 栄次郎が調べた結果を、大野家にぶつける。多吉は亡くなっていなかった。亡くなったのは多吉の双子の兄・大野家の政友だった。政友に成り代わった多吉は、自分は隠居し、岩城家の息子を養子にすると言う役どころだった。
 栄次郎は、政友の死を隠しこのまま多吉を政友として藩主に付かせる。岩城の奥様に訳を話し養子を諦めるよう説得する。聞き入れてもらえなければ、政友殺しが公になりお家取り潰しになる危険がある。
 政友が藩主についた。
 栄次郎は若菜に会った。大御所の息子の立場から離れていたいという栄次郎に、無理だと言う若菜。栄次郎は大御所の息子の立場を利用しようと考え直した。
 親の決めた男と別れたいために栄次郎にこのままもう少し付き合って貰いたいという若菜。
栄次郎は承知する。

2024年1月3日水曜日

柳橋の桜 〈三〉二枚の絵

柳橋の桜 〈三〉二枚の絵 佐伯泰英 

 公儀勘定奉行筆頭用人倉林から、江戸から離れるように言われた桜子は、江ノ浦屋彦左衛門に相談する。その夜、大河内小龍太と共に船で江戸を離れる。
 長崎に着いた二人は、総町年寄高島家の武道場で生活する。桜子が江戸へ手紙を書き船の乗り組み員に届けを頼んだことから、乗組員は殺され桜子が長崎にいることが知れた。桜子に刺客を送ってきたのは薩摩藩だった。父・広吉の死と関係があった。桜子は広吉から何も聞かされていないが、薩摩藩は桜子を狙った。
 二人は、長崎から出港する船団の新造船・長崎一丸の用心棒として乗り込むことにした。
 出島のケンプル医師が、桜子の幼少期の話を聞き、アトリエに招待し、十数年前にコウレルが描いた絵を見せた。コウレルの絵は長崎から江戸までのカピタン一行の江戸参府の光景だった。最後に現れたのは、柳橋の神木三本桜に合掌する三才の桜子の絵と、猪牙舟を漕ぐ広吉と艫下で遊ぶ三才の桜子の絵だった。