ラベル み・宮部みゆき の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル み・宮部みゆき の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2023年12月28日木曜日

三島屋変調百物語九之続 青瓜不動

三島屋変調百物語九之続 青瓜不動  宮部みゆき

 青瓜不動 ちかのお産が近づいた頃、手習所の青野先生の知り合いの行然坊が三島屋を訪れた。行然坊の紹介で、高月村の洞泉庵のいねが、うりんぼ様という不動明王を背負ってきた。うりんぼ様がこちらの産婦の力添えをするというので連れてきた。富次郎が、黒白の間で話を聞き、富次郎がお祀りすることにした。
 うりんぼ様は、心に痛みを抱えた女たちが集まって暮す洞泉庵の青瓜畑から掘り出された瓜坊の顔を持つ不動明王だった。
 ちかが産気付いた時、富次郎は黒白の間のうりんぼ様の前に座った。
 呼びかけられひっくり返った先は、青瓜畑だった。うりんぼ顔の青瓜を摘んでゆく。山の麓から摘む。麓から大百足が追いかけてくる。富次郎はうりんぼたちを摘みながら逃げる。全てのうりんぼを摘み大百足から逃げる。山の上から海に落ちる。海に飛び込んだ。うりんぼに囲まれうりんぼが泣いている。富次郎は目が覚めた。ちかが女の子を産んだ。ほぼ丸一日掛かった。小梅と名付けられた。

 だんだん人形 百物語を止めないかと言っている伊一郎の紹介で、人形町の味噌屋・丸升屋の三男・文三郎が話しに来た。祖父から言い伝えられた話をする。祖父は四代目、丸升屋の初代・一文から伝わった話だった。
 北国のとある藩の味噌・醤油を商う石和屋に奉公していた。醸造元を訪ねて三倉村で騒動に巻き込まれた。三倉村は良い代官に恵まれ、米は採れないが村中で味噌を作り年貢を払った。土人形を作って売って村は潤った。突然代官が代わり味噌を石和屋に売らずに井達村の問屋に売れという。村長も大人の多くは代官所に連れて行かれた。水牢に入れられたという。一文と一緒に村を回っていた勇次と村長の妻は、一文と飛び猿とおびんを逃がすために役人の前にでて殺された。一文と飛び猿とおぶんは三倉村のことを城下、石和屋に知らせるために逃げる。
 おぶんを土人形を作る村に預け、一文は飛び猿と洞窟に入る。二人は死ぬ思いを何度もしながら城下に付き石和屋に告げる。代官の悪事が暴かれ処分が下されるまで一年掛かった。三倉村のほとんどが殺され、元の村には戻らなかった。おぶんも捕まり代官屋敷の奥に閉じこめられていた。
 おぶんが一文に武者の土人形を贈った。四度死ぬ思いをしたと言った一文に、おぶんはこの武者は四度一文を守よ、と言って。
 一文は文左衛門となり江戸で丸升屋を開いた。二代目の時、火事が起こりきらきらと光る物について行くと安全なところに逃げられた。十年後の火事でも、土人形が宙を舞い演舞をやりながら道案内をしてくれた。三代目の時は、近所の放蕩息子に金を貸してから出せになり合口で脅された時、放蕩息子の手首と眉間に何かが突き刺さり事切れた。人形の短槍だったが、見たのは丸升屋の者だけだった。四代目の時、寮を買い、寮に泊まった時に、盗賊が押し入った。土人形が九人の盗賊を殺し、これで勇さんのところに行けると呟き、粉みじんに砕けた。

 自在の筆 富次郎は骨董店〈古田庵〉で、出会った絵師・栄松師匠が、後日、古田庵に押し入り、古田庵で預かっていた筆を持ち出しばらばらにし、食べて死んだことを聞いた。
 富次郎は店主に聞きに行く。
 自在の筆と言う。あの筆で絵を描くとすごい絵が書け、和算の術式を五才の子が解いてしまうっという。ただ廻りの者の生気を吸い取る。妻の目から血を出し右目がつぶれ、左目が飛び出る。正気を失い十日目に骨と皮になって亡くなった。臨月の娘が産気付き、三日三晩苦しみ亡くなった。跡取り息子、嫁、内弟子、女中と亡くなった。そんな中で栄松は絵を描いた。筆を手放せば良いと分っていても手放せない。幼なじみが得々と説く。手を放した筆を火ばしで挟み、紙箱に納め紐をかけ蝋で封印した。それを古田庵は預かっていた。
 素晴らしい絵が描けたと思っていたが、見てみると勘違いだった。稚拙の線、汚らしい色、異臭を放っていた。栄松は、自在の筆を退治した。
 富次郎は絵師に憧れていた。百物語を聞いて絵にしていた。この話を聞いて絵を描くことを止めようと思った。

 針雨の里 八十助が大番頭になった。伊一郎から羽織、着物、襦袢を貰って、それを着てちかの赤ちゃんを見に行った。
 門次郎は捨子だった。捨子を育てて鳥の羽毛と卵の殻を売って生計を立てている村があった。木を登り木を渡り採るから十七才まで働く。村はお金を貯めており、子供らが村を出ていく時に纏まったお金を渡す。躾けと字が書け、算盤が出来る。お金を貰って独り立ちする。
そんな村に門次郎はいた。十七才になった時、門次郎は村にいたいと言う。村と町を行き来する増造の後を継いだ。
 そんな村に大噴火が起こった。村人は子どもを助け雨と土石流と溶岩み飲み込まれる。村人は風舞さんだった。風舞さんの化身が村の衆という身分を得て富を得られるまでの仕組みができていた。
 富次郎は泣いた。描きたい。


2022年10月12日水曜日

きたきた捕物帖〈二〉 子宝船

 きたきた捕物帖〈二〉 子宝船 宮部みゆき

 子宝船 文庫を作る作業場ができた。図柄は欅屋敷・小普請組支配組頭・椿山勝本様の別邸のご子息に描いて貰っている。ご子息と言うが、出会ったのは、北一と同じくらいの女だった。名前は栄花。

 おでこの中身 おでこ・三太郎が出てくる。二十五年くらい経っているらしい。すぐ長さを測っていた少年・ぼんくらの同心の息子は長崎に行き、学者になってる。
 茂七親分の名前が出る。
 おべんとう桃井の家族三人が毒殺される。北一は、通夜の時、銀杏の木に隠れて見ていた女を見た。うなじの下に銀杏の葉の入れ墨があった。

 人魚の毒 検視の与力・栗山周五郎に教わり、犯人が捕まった事件を、追う。銀杏の入れ墨の女は九崎村で二十一年前「染めちょう」の一家五人と機長を毒殺していた。九崎村へ連れて行く途中船から北一を道ずれに海へ飛び込んだ。北一は喜多次に助けられた。



2022年6月7日火曜日

きたきた捕物帳 

 きたきた捕物帳 宮部みゆき

  ②が出た。①を読む。

2022年1月29日土曜日

昨日がなければ明日もない

 昨日がなければ明日もない 宮部みゆき

 絶対零度 2011年 11月3日 杉村探偵事務所十人目の依頼人。筥崎静子さん。結婚している娘・佐々優美が自殺未遂で入院して一ヶ月以上になるが会わせてもらえない。娘が会いたくないと言っているということしか聞いていない。一度会って話しがしたいと相談にきた。杉村は、クリニックやフェイスブック優美の夫のことを調べる。大学のホッケーチームのOBに横暴な俺様的な人・高根沢輝征がいることがわかった。また、優美が自殺未遂をした二日前に自殺し亡くなった、メンバーの奥さんがいることも判った。優美がクリニックにいないことがわかった。優美は高根沢の別荘にいる。閉じこめられているのかと心配したが、優美自身が隠れていることがわかった。
 高根沢が殺された。仲間の重川がいなくなった。優美が、トモ君も殺されると言いながら母親の元に帰ってきた。
 杉村が連絡を付けようとしていた奥さんが亡くなったホッケー仲間の田巻康司が事務所に来た。二人を殺したと言った。杉村はこちらの経緯を話した。彼は殺した理由を話した。二人は殺したが、佐々夫婦は殺すつもりはなかったと言う。生き証人が必要だ。二人には生き地獄を味わいながら長生きして欲しいと言う。
二人でホットサンドを食べコーヒーを飲んで、証拠品を乗せた車を置いてタクシーで目黒警察署に行った。
 田巻夫婦は、高根沢たちから距離を置こうとしていた。9月30日 優美が相談に乗って欲しいと田巻の家に来ることになった。高根沢たちを連れて来た。逃げようとした奥さんを優美が止めた。奥さんは強姦された。次の日、田巻の妻は飛び降りた。十日後、佐々は集団強姦容疑で手配された。佐々夫婦は被害者意識的な弁護発言をした。

 田巻から聞いたと警視庁刑事部捜査一課継続捜査班の立科警部補が事務所を訪れる。十三年前の暴行絞殺事件の犯人が高根沢だったようだ。高根沢を殺さないで欲しかったと言う。杉村は十三年前にあなたが捕まえていれば、田巻夫婦は今も幸せに暮らしていたはずだと言った。
 
 華燭 2012年 事務所のオーナー竹中さんと一緒に、駅前のバイクショップ小崎の奥さん・佐貴子の姪の結婚式に行く中二の加奈ちゃんの付添をすることになった。佐貴子は二十五年前、結婚式の日に、結婚相手と妹に駆け落ちされていた。妹のお腹は三ヶ月だった。妹の肩を持つ両親と妹と絶縁していた。結婚するのは妹の娘・その時お腹にいた子・静香だった。妹は二年後離婚し、再婚している。佐貴子は十年後結婚した。加奈が入った学校の事務職員に静香がいた。
 三人が会場に行くと、礼服の人が群れている。竹中さんはホテルの一室にチェックインする。
 同じフロアの結婚式は二組、一組目の花嫁がいなくなっていた。二組目の結婚式は静香。だが、二股だった彼の所に彼女がきてこそこそしているのが見付かってしまった。真相だ。
 杉村は逃げた花嫁を見付け部屋に伴った。花嫁は21才、相手は62才だ。親に借金があった。全部を粉々にぶっ壊すには大勢に知られるように隠したり出来ないタイミングでしようとした。竹中さんは関係者が引き挙げるまで時間を潰し、化粧も落とし服も替えて出て行きなさい。ウエディングドレスを残していかないでねと言って会場へ行く。
 一ヶ月後、一人で挨拶回りをしていると静香が竹中家にやってきた。杉村もおじゃまする。静香は破談になり仕事も辞めて神戸へ行く。
 杉村は竹中夫人と話す。静香と21才の花嫁・菅野は計画を立てた。花嫁の着替えを静香が用意し、静香の新郎側の控室でもめ事が起こって居る隙に菅野が逃げる予定だったのだろう。それが新郎は誰も寄らないよう静かに事をしていたものだから菅野が逃げられなくなってしまったのだろう。やっと荷物を受け取った時、杉村たちと会ってしまったと言うことだろう。二股の彼女に知られないようにしていた結婚式の詳しい内容を元かのに教えたのは、静香に頼まれた菅野だったのではないだろうか。当たっているか確かめられないけれど。

 昨日がなければ明日もない 2012年ゴールデンウィーク。竹中家長男夫婦の長女・有沙中一    の友達の母親が来る。次男・竜聖が殺されると言う。
 杉村は調べ始める。朽田美姫は16才で長女・漣を産んだ。美姫の両親が育児を引き受けた。A氏と東京に来た。一年で終わり、B氏と生活、鵜野一哉と交際、鵜野の両親に結婚を反対される。鵜野の子・竜聖を産む。結婚。美姫の借金が数百万になり、鵜野家が借金を払い離婚。竜聖は鵜野家が引き取った。漣が五年生の時、串本憲章と生活するためこの町に来た。竜聖は養子縁組みを考えている夫婦・浜本家で暮らしている。
 竜聖は交通事故だった。美姫は竜聖の養子を認めない。鵜野家の遺産相続の権利があると言う。鵜野一哉も再婚が決まる。美姫の妹・三恵と会う。
 報告書、動画は朽田家に送る。美姫は串田と別れ漣を連れて実家に帰っていた。
 
 竹中家の長男のお嫁さんの話を聞く。普通の格好の美姫と漣が連れ立っているところに行き合わせた。漣が「あんた私に逆らえると思ってんの」と言っていた。美姫さんも逆らわないで目をそらしているだけ。杉本は串田に会う。美姫は実家にもいない。
 朝食に侘助に行くと、立科吾郎警部補がいた。私と一緒に来ませんか。どんな探偵か判りますよ。と誘う。たぶん人が死んでいます。
 朽田家に着いた。三恵は自分が殺したことを自白した。遺体は父が運んだので何処にあるか判らない。杉本の報告書を見ている時、美姫が竜聖を引き取って鵜野と復縁しようかと言った。思わず鵜野の再婚を言ってしまい美姫がヒステリックになるのを止められなかった。思わず硝子のスノードームで殴ってしまった。
 


2021年9月24日金曜日

三島屋変調百物語七之続 魂手形

 三島屋変調百物語七之続 魂手形 宮部みゆき

 火焔太鼓 ある大名家に火焔太鼓がある。火事の火を飲み込み火事が起こらないと言われる。話をしに来た若い侍の兄嫁の実家が火焔太鼓を生み出した湖の管理をしている家だった。ある年火焔太鼓が隣の国の侍に盗まれ火を吹いた。大勢が亡くなり、侍の兄は足を失った。侍が元服を迎えると兄は、妻の実家に行った。何年か経ち湖の主の交代年になった。兄が主になっていた。 
 富次郎は、森の中の小さな沼に遊ぶ人に似た影と、沼のほとりの笠をかぶり被布を着、短い丈の槍を持ったお地蔵様を書いた。

 一途の念 富次郎がよく買いに行く美味しいお団子の屋台があった。売り子はみよ、十六才。母親が亡くなって屋台を休んでいるみよに富次郎が誘いを掛けた。母は死にたくて自分で目を付いて潰した。死ねなくて五年生きた。やっと死ねたと言う。小さいときの養女に行った家で子供ができ邪険な扱いをされていた。料理屋の女将が助けてくれ行儀から習い事まで教えられ中居をしていた。女将が亡くなり新しい女将は料理屋の中居を遊女にした。肺の病を持つ板前の夫を養うためにそのまま中居を続けた。母は三人の男の子を産む。三人とも夫にそっくりな子供だった。そしてみよが生まれた。ある日、男が長屋で母親が客を取っていたことをぶちまけた。そして母は自分の目をくり貫こうとした。その時から兄三人の顔が変わった。誰だか判らないぐらい。それから五年が経った。
 富次郎は盥に張った水の中に浸された麻袋を書いた。砂糖を取る。

 魂手形 木賃宿の主人だった人が話す。この世に未練を残す魂を運んでいる人がいる。自分・吉富にも見えたし、父親の後添えにきた竹にも見えた。運んでいる七之助の身体が弱っているので魂が自由に出て行くと言う。吉富は魂の力を取り込み七之助と魂・葵の故郷に行き、父親の後妻の悪行を言い巻、葵を殺した者を引き出し、葵を埋めている場所へ連れて行く。全てを終えると魂は消え、吉富は普通に戻っていた。吉富は魂の里があることを誰にも言わなかった。竹は薄々知っていた。
 富次郎は木賃宿かめやの看板を書いた。

 ちかに子供が産まれる。富次郎の夢にちかに縁のあった者だという男が現れた。


2020年3月5日木曜日

三島屋変調百物語六之続

三島屋変調百物語六之続 黒武御神火御殿 宮部みゆき
 三島屋の変わり百物語の聞き手が、主人・伊兵衛の姪のちかが嫁に行き、次男・富次郎に替わった。
 泣きぼくろ 富次郎の幼馴染みの近所にあった豆腐屋の息子・八太郎がやってきた。十四年前の自分の家で起った話をする。両親と24才から7才まで八人兄弟姉妹に長兄・次兄の嫁、次姉の許嫁、女中さんが一人が住んでいた。長兄の嫁と次兄の同衾が発覚した。長兄の嫁が誘ったと言う。八太郎のすぐ上のちい姉ちゃんが長兄の嫁に泣きぼくろがあることを発見する。その泣きぼくろが取れ次兄の嫁に泣きぼくろが現れ、次兄の嫁と次姉の許嫁の同衾が発覚する。泣きぼくろが長女に出来、長女が父親に迫っているのが発覚し、父親は家を出た。兄弟弟子の豆腐屋で父親が亡くなり、家族がばらばらになったと言う話だった。富次郎は端っこが欠けた豆腐の絵を描いた。
 姑の墓 商家の大おかみとおぼしき女性・花がやって来る。養蚕の盛んな実家の話をする。かがり屋という棚主の家だった。村では毎年、小高い丘にある墓所で五軒の棚主の家族、働く人々桑畑の小作人たちが花見をすることになっていた。お神酒とご馳走を詰めた重箱を囲んで過ごす。かがり屋の女達だけは行かない決まりになっていた。花の爺様が話したところでは、ひい祖父様の、嫁いびりがひどかったひい婆様の亡くなった後の花見で嫁が階段から落ち亡くなってしまったことからかがり屋の女は丘での花見に参加しなくなったという。花が13才の春、町の商家からやってきたかがり屋の嫁は理不尽だと言いだした。みんなが行く前日に墓掃除をして重箱を持って花見に行った。帰る道、花の母が前を行く嫁を呼び振り返る半身の両肩を突き飛ばした。嫁は階段を落ち亡くなり、母も置物になってしまって夏に亡くなった。祖父が亡くなり、父と兄は腑抜けのようになり、伯母が養子とりかがり屋は養子の連れ子が継いだ。花は舞い込んだ縁談をすぐに受けた。父と兄は遍路の旅に出た。花は村に一度も帰っていない。消息を聞くこともなかった。花は自分の息子に嫁が決まった時、両肩に手の形の痣が出てきたと富次郎に見せる。富次郎には見えないが、富次郎はありましたね。でも今は消えた。花がここで話したため語って語り捨ての力で消えたと話す。富次郎は優しく何かを包もうとする手のひらの左右一対を絵にした。
 同行二人 11才でやってきた継父に馴染まず、反発し、何者にもなれなかった。飛脚になった亀一は結婚し、娘ができ、継父にも詫び幸せだった。娘が2才、性質の悪い風邪で両親、女房、娘が死んだ。何も考えない、何が悪くてこうなった憤怒と後悔を噛みしめ自問自答で走っていた。箱根峠と三島宿の間の茶店に雷が落ち一軒無くなっていた。その時から亀一にのっぺらな赤いたすきの男が半丁離れてついてくるようになった。飛脚屋の支配人に茶屋まで連れて帰ってやれと言われ、亀一は引き返した。廻りの茶屋の人たちにものっぺり男が見えるようだ。彼・寛吉はよちよち歩きの娘を囲炉裏で亡くしていた。女房・よしも娘を亡くしたことが自分の咎と思い込み飲まず食わずで弱って亡くなった。十日後、立ち直れないまま寛吉の亡くなった。二三日で寛吉が戻ってくるようになった。住職に仏壇に封印してもらっっていた。茶屋に雷が落ち、仏壇が燃えたことで封印がとけた。亀一はのっぺらを連れてさいの河原に行く。走りながら亀一は自分のことを話す。泣きながら走っていた。寛吉も泣き、ふっと消えた。亀一は本店の支配人になる。東の端に箱根峠、峠道に幟を立てた茶屋と暖簾を掲げた萬屋、茶屋の前に前垂れを付けた男、画面の手前に赤い襷を掛けた、しっかりの肉の付いた腿とふくらはぎの飛脚が走る絵を描いた
 黒武御神火御殿 三原山と思われる火山を描いた襖絵をもつ屋敷に閉じこめられた6人の話。十年前、神隠しに遭ったと言われた。季節がどんどん変わる中で暮らしていた。帰ってみると三日だった。別々になった二人だけが昔の暮らしに戻った。

2020年2月27日木曜日

この世の春上・中・下

この世の春上・中・下 宮部みゆき
 下野北見藩藩主・北見重興が強制隠居になり居城から別邸・五香苑の座敷牢に移った。重興は幼少期に父親から苛まわれ、誰にも言えないことから自分の内に別人格の者を作ってしまった。その者たちが頻繁に現れ家臣たちに不審がられ隠居に追い込まれた。
 藩医の三男・白田医師と元江戸家老・石野織部、御霊繰ができる刀自の孫・各務多紀、多紀の従兄・田島半十郎が重興を救うため重興に起ったことを調べ始める。
 重興が取り立て権勢をほしいままにしたご用人頭・伊東成孝は切腹したことになっているが、五香苑に捕らわれていた。成孝は16年前に村ごと根絶やしにされた御霊繰の里の住人だった。根絶やしの犯人と理由を調べるために重興に近づいていた。成孝から多紀が刀自の孫だと知らされる。多紀の母は幼少時に田島家に養女になっていたことを知らされる。
 成孝の証言から何人かの子供の勾引かし事件、里ごとの根絶やし事件のことが判る。
 三十年前の重興の父が北見藩の陰廻と北見藩の飛び地・明野領の北見一門を守る狭間を一つにしようとしたことが判った。潰されそうになった狭間の一人・桐葉の呪術によって父親が重興を苛んだ事実あきらかになる。
 明らかになり、白田医師に、多紀に事実を話すことで、重興の別人格が消えていった。
 重興は多紀と根絶やしにされた村跡に住むことにした。

2020年1月30日木曜日

マサの事件簿 心とかすような

マサの事件簿 心とかすような 宮部みゆき
 元警察犬、ジャーマンシェパード。名前はマサ、蓮見探偵事務所の用心犬。
蓮見探偵事務所 所長・蓮見浩一郎。長女・加代子。調査員としてマサを連れて働く。
次女・糸子。高校生。
 こころとかすような 諸岡進也と糸子が夜中、車のトランクの中の小学生を見つけた途端、気を失い、ホテルで目覚めた。話を信じない父親と姉を納得させるために調査を始める。進也が付けていたニンニクの匂いからマサが、車を突き止める。車の持ち主を恐喝するために親子で考えられた偽誘拐事件だった。親とうまくいかないという触れ込みで近づいた小学生の提案で誘拐を装う。親が見付け誘拐だと騒ぐ、そして金を要求する。二人は途中を見てしまったのだった。
 てのひらの森の下で 加代ちゃんとマサは、毎朝同じ時刻に水上公園を散歩する。藤実咲子と一緒に散歩している時、死体を見付けた。加代と咲子が警察に連絡に行く。マサが死体じゃないと思うまもなく死体は動き出した。追いかけようとしたマサは鈍器で殴られ気を失う。マサは死人ではないことも二人組だと言うことも知っていた。死んでいたのは借金で逃げ回っていた男・井波洋だと思われた。死体ではなかったと判った時、弟・孝が、兄が死んだことになれば追われないだろうと芝居したと名乗り出た。マサはしっている。本当の洋が、死んだまねをしていたことを。同じ時刻、孝の勤めるディスカウントショップで、公にできない五千万円が盗まれていた。加代たちは咲子がグルであることに気付き、孝に金を返す説得を頼む。
 白い騎士は歌う 宇野友恵さんからの依頼。強盗殺人で警察から追われている弟・宇野敏彦を見付けて欲しい。敏彦がしていた借金があると言われたが何のための借金だったのかを調べて欲しいというものだった。東京日報新聞社 社会部 奥村孝が近づいてくる。敏彦は、町で会った薬中毒で売春をしている少女のために「戸山メンタルクリニック」で薬物中毒患者の治療を受けさせていた。そのための二百万円を借金していた。
 殺された社長の友人であり会社の部下・秋末の息子が覚醒剤中毒だった。再犯だった。また中毒になっていることを知った社長を殺し、社員の敏彦に罪をなすりつけ、敏彦を殺していた。加代は秋末の工事中の地面をマサに嗅いでもらい敏彦の遺体を探り当てる。
 マサ、留守番する 蓮見一家は台湾へ旅行に行った。隣のアパートの住人・早川純子がマサの世話を引き受けた。彼女は三十代の翻訳家だった。蓮見事務所に小うさぎが五匹置かれる。純子さんが引き受けた。マサは持ってきた小学生を探す。小学生・ゆかりちゃんはウサギをまた殺すと話していたのを聞き、うさぎが危ないと思い保護したのだった。
 水上公園で人が殺された。ウサギを殺す話をしていた兄弟の父親だった。弟が自分が殺したと出頭した。弟にはアリバイがあった。父親を殺したのは兄だった。ウサギを殺しに行く父親を止めようとして、父親が持っていたペンチで刺してしまった。二年前のウサギ殺しも父親だった。父親の同級生が校長だった。校長への嫌がらせだった。
 マサの弁明 依頼主・宮部みゆき

 

2018年12月27日木曜日

負の方程式 

負の方程式 宮部みゆき
 ソロモンの偽証6より
 私立探偵・杉村三郎は、精華学園の校舎を使って行われた「体験キャンプ」の真相を突き止めて欲しいと依頼を受けた。
 キャンプの夜、火野岳志教諭が、災害時に誰かが犠牲にならないと誰もが助からないとなった時に誰が犠牲になるか相談しろという課題を出した。と生徒九人に迫ったというものだった。生徒の一人が逃げ出し家に電話を入れ、公になった。火野教諭は否認し、九人は先生が嘘をついていると言う。
 学校側は火野教諭に謝罪を求め、三ヶ月の停職を受け入れるようにいうが教授は拒否する。
 杉村は生徒の親に頼まれた。学校側の弁護士として現れたのは、藤野涼子だった。
 子供を連れて火野教諭と再婚し、暴力を受けている瑛子と育司を助けるために生徒が起こした捏造事件だった。火野教諭のあからさまな生徒蔑視が要因になっていた。
 藤野弁護士は子供たちに、目的が正しくても手段に不正があれば全てが不正になる。本当に悪い事をこつこつ集めて立証して正面から戦う。嘘に頼っては駄目だと言った。
 
藤野弁護士はソロモンの偽証の検事役、弁護人だった神原和彦と結婚していた。あれから二十年が過ぎた。
 

2018年7月22日日曜日

三島屋変調百物語伍之続

三島屋変調百物語伍之続 あやかし草紙 宮部みゆき
 開けずの間 長姉の塩断ちが元で、家に行き逢い神を引き入れ、父母と五人の兄姉と義姉を亡くした末の弟の話。最期に母親が自分の命と引き換えに行き逢い神に出て行ってもらった。
 ちかと三島屋の次男・富次郎とで話しを聞き、富次郎は家から出て行く女の後ろ姿を描いた。
 だんまり姫 駿河の大名のお国様のしゃべらない姫様のおまる付き女中になったもんも声の女・せいの話。もんも声はあの世の者を呼んでしまう。現藩主の兄・一国は側室の子で父親は国家老だった。十才の時、国家老が藩が二つに割れることを苦にして孫に毒を盛る。悲しんだ側室は亡くなり、家老は切腹する。せいは亡くなった一国と話すようになった。一国を城から連れ出し解き放つ算段をする。大蜘蛛退治を演目にする人形芝居を呼び、武者人形の中に入れて城外に連れ出した。一国様は武者人形より大蜘蛛がいい我の入れ物と言った。諸国を巡り土地の禍を一身に集める形代になろう。恨みと悲しみを食らう。姫の声は戻った。
 富次郎は、右半分の大蜘蛛に乗った草笛をふいている男の子の背中を描き。遠景に海、雲の中に鷗を描いた。
 面の家 沢山の面が逃げ出さないように見張りをする娘・種のはなし。悪いことをしたものにしか見えない面。見える種は見張りを頼まれるが、面は種をお金で買収する。逃げるが知らないふりをしておけ。面たちは逃げた。火事があり、外に出れば番犬のような者はいっぱいる。面は見付かり封じられた。面が外に出ると禍が起ると言われている。種は面に齧られた足の指を針で浄められた。話しの後、三島屋の守り役・勝が種に古い柘植の櫛をやった。富次郎は櫛の絵を描いた。
 あやかし草紙 ちかを嫁に欲しいと言っていた越後屋の清太郎の縁談が決まった。
 瓢箪古堂の勘一の助言で、富太郎の描いた絵を入れる箱ができた。桐の箱で、厚手の美濃紙に貼り付けた絵を柵に挟んで縦にしまうようになっていた。聞き捨て筐。あやかし草紙と名付ける。
勘一は不思議話をする。貸本屋・井泉堂の持ち出し禁止の己の運命と寿命を知る本があった。瓢箪古堂の写本をしてくれる人が関係し、知ることになった。その人が亡くなり、勘一は井泉堂の主から、見せてあげると言われた。勘一は井泉堂には行っていないと言う。
 小さな婆さまが自分のことを話す。十五才で嫁いでから六度も嫁に行ったと言う。一人目は四年で死別。二人目はその弟、前夫への悋気で三年で実家に帰る。三人目は家作持ちの三男で五年で死別。四人目は風流人で二十四年で死別。五人目は四人目の夫の遺言で結婚。娘が身代狙いだと煩く、一年半で離婚。六度目は商家の番頭。七年と十ヶ月で死別。
婆さまは六人の顔がそっくりだったと言った。
 婆さまの長閑な笑顔と動じない物腰。同じよう人を知っている。
 ちかに川崎から手紙が届く。ちかが逃げ出した川崎、ちかの兄・喜一はちかの分の咎を背負って暮らし続けている。老いてゆく両親を助けながら逃げずに旅籠を続けていた。申し訳ないと思っていた。喜一が先月末に先夫との間に五つの子がいるえいを嫁に貰ったと書かれていた。えいのお腹に喜一の子がいると。
 ちかは黒白の部屋に籠り考えた。瓢箪古堂に行き、勘一に、井泉堂に行き、寿命を教える冊子の写本をしたでしょうと問い詰める。見届ける覚悟をしたので嫁に貰って下才と願った。祝言は一月二十日になった。
 金目の猫 百物語は富次郎が続けることにした。兄・伊一郎が三島屋にくる。伊一郎が不思議話をする。伊一郎が十才、富次郎が八才。三島屋がこの場所に店を構えて直ぐのころ。富次郎がお稲荷さんの木の上で子猫を見付けた。三島屋で飼えないので、近所の油屋で飼うことになった。まゆと名付けられ、三島屋にも来た。まゆが三島屋の二階の縫子の赤ちゃんの顔に上に乗りかっているのを見付けられ、大騒ぎになりまゆはいなくなった。
まゆの正体は三島屋の縫子・きんの生き霊だった。きんは縫子を続けたかったが辞めなくてはならなかった。代わりに行ったさとは三島屋の悪口を言いふらす。我慢できなかった。稲荷の木上で三島屋を見ていた。大騒ぎになった日、逃げるまゆは伊一郎の懐に飛び込み、いちの坊ちゃんごめんなさいね。猫がしゃべる。伊一郎はきんの長屋へ行き、きんのはなしを聞いて知った。きんは遠くへ行くところだった。
 祝言の日、小旦那・富次郎は、商人風の者に祝言は終わりましたかと声をかけられた。ご縁のあった者です。お幸せにとお伝え下さいと姿を消した。勝は小旦那を百物語の継ぎ手と認めたのでしょうと言った。
 

2018年2月28日水曜日

捕物 時代小説傑作選 なぞとき

〈捕物〉時代小説傑作選 なぞとき 細谷正充
五月菓子 和田はつ子 
 呉服・太物屋の京極屋の乳母として務めたいとは気に入られ、主・迪太郎の妾になった。いとのお腹に子ができた。いとの手作りの柏餅を食べ、息子・弥太郎が死んだ。いとは捕まるが季蔵が調べ、柏餅の前にカステーラを食べていた。弥太郎は小麦粉アレルギーだった。初めて口にした小麦粉だった。
煙に巻く 梶よう子 
 煙草屋の人気の双子の若旦那。十ヶ月違いの兄妹ということになっている。長男の見合い相手は次男の相思の相手だった。長男は煙管職人になりたがっていた。二人は入れ替わっていた。二人を取り上げた産婆・辰が殺された。犯人は産婆の茶飲み友達だった。双子の若旦那を脅してお金を取ろうとした。辰と揉めて殺してしまった。知られた若旦那たちは、長男が煙管師の元に行き、弟が祝言を挙げて家を継いだ。
六花の涼 浮穴みみ 
 継母が大好きな少年・兎一郎。兎一郎が毒を飲まされていることに気付いた蝶は、調べ始める。継母・蔦は蝶の昔馴染みだ。毒を飲ませていたのは、昔馴染みの女中と蔦の昔の男だった。蔦は昔のことを話すと脅され、兎一郎を育てても大きくなったら知らん顔だと言われていた。蝶は蔦が継母に育てられ苛められていたことを知っていた。蔦に自分の母親と同じことをするのかと問われる。兎一郎は三年かかって育てた変わり朝顔の花を蔦に持って行く。
人待ちの冬 澤田瞳子 
 薬屋・成田屋の娘・香津がいい加減な商売をする婿とその仲間に福寿草の毒を盛ることに気付いた真葛は、馴染みの薬屋で自分の考えた毒消しを作り成田屋に行く。七人が亡くなり二人が助かった。死ぬつもりだった香津と女中の雪も助かり捕まった。婿たちの仲間を装った雪のお腹に子がいた。真葛は雪を助けて欲しいと言ってきた平馬は生まれた子どもを育てるのではないかと思った。
うき世小町 中島要
 一膳飯屋たつみの娘・加代が江戸錦絵小町比べに出場すると言ったことから、加代の幼友達・八重が志乃を殺し、加代が見破り自訴して出るという。容姿を武器に成り上がろうとした志乃、恵まれた境遇ながら見た目の善し悪しに囚われた八重、二人のことを知らず女であることを恨んでいた加代。
鰹千両 宮部みゆき
 双子の一人を生まれて直ぐ捨てさせられた伊勢屋。伊勢屋の先代内儀が亡くなり、今の内儀の一人娘が亡くなった。伊勢屋は棒手振りの角次郎に千両で鰹を買うと言う。角次郎に相談された茂七は角次郎夫婦の娘が拾い子であることを見抜く。手放す気が無いことを確かめ、伊勢屋に行く。伊勢屋の娘は十三年前に死んだ。角次郎に払ったと思って千両くれと言い放つ。伊勢屋が怒って出したお金を伊勢屋の前に出し、「俺からの口止め料だ。二度とちょっかいを出すな。あの子が捨て子であることを誰にも口外するな。」と言う。

2017年5月16日火曜日

情けがからむ朱房の十手 

情けがからむ朱房の十手 
 江戸怪盗記  池波正太郎 
  にっぽん怪盗伝 葵小僧
 鰹千両    宮部みゆき 
  初ものがたり 双子の子供
 夜鷹三昧線  村上元三  
  加田三七捕物そば屋 夜鷹廃業
 夜の橋    澤田ふじ子 
  公事宿事件書留帳 闇の掟 島帰りの土左衛門
 めんくらい凧 都筑道夫 
  いなずま砂絵 殺したくなく殺される
 三本指の男  久世光彦
  逃げ水半次無頼帖 棺桶から出てくる老婆
 三ツ橋渡った 平岩弓枝
  御宿かわせみ 幽霊流し 盗賊にさらわれた少女

2017年5月14日日曜日

悲嘆の門 上下

悲嘆の門 上下 宮部みゆき
 三島孝太郎19才大学の教育学部一年生、高校のフットサル部の先輩・真岐誠吾の紹介で誠吾が執行役員の株式会社クマーでアルバイトをしている。ネットの警備会社だった。
 何人ものホームレスがいなくなっていた。孝太郎のアルバイト仲間・森永はアパートに住んでいた猪野さんを探していて、森永も行方不明になった。孝太郎は森永を探していて、お茶筒ビルの屋上のガーゴイルに行き当たる。飛んでいるガーゴイルを描いた母親を亡くし、しゃべらなくなった少女・真奈ちゃんに出会う。真奈ちゃんは孝太郎をお兄ちゃんと呼び、お母さんはどこへ行ったと尋ねる。夜、お茶筒ビルに忍び込む。同じ日、元刑事・都築茂典も不審に思ったため合い鍵を作り忍びこんだ。二人は屋上で合い、しゃべるガーゴイルに会う。ガーゴイルが持つ鎌の中に森永がいた。彼女は大鎌の力を強くするために人の願望を集めていた。
 殺してから身体の一部を切り取る連続殺人事件と思われる事件が起きていた。苫小牧、秋田、三島、戸塚と起こっていた。五番目に殺されたのはクマーの社長・真岐の婚約者・山科鮎子・孝太郎のあこがれの人だった。孝太郎は連続殺人の犯人を渡すから犯人を見付ける手助けをしてくれるように契約する。左目が見えなくなりガラと通じている。
 孝太郎の妹・一美と姉妹のような一つ下の隣の園井美香中学二年はネット上でいじめを受けていた。テニス部の先輩・下川岳が美香に告白したため、岳に気がある〈きらきらキティ〉にいじめられていた。
 孝太郎は山科鮎子を殺した犯人をつき止めた。大学時代の友人だった。誠吾は自分を好きなのに鮎子が離さない、誠吾のために殺したと言い張る。誠吾は自分のために鮎子が殺されたと悩むだろうと言われ、ガラに狩って貰う。都築は苫小牧の犯人を見付ける。孝太郎は戸塚の犯人を見付ける。ガラに狩って貰う。秋田の犯人は自首してきた。連続殺人のではなく単独犯だった。ガラが殺した二人は行方不明でいつまで経っても捕まることはない。
 美香が連れ去られた。見付けた時、美香は殺されていた。キティが雇った夫婦に殺されているのを見た時、孝太郎は自制が効かなく、夫婦とキティを殺してしまった。力強くなった大鎌を持ってガラの領域に行く。悲嘆の門でガラは自分の息子を助けるために孝太郎と交換しようとする。息子は断った。孝太郎は放り出され真奈ちゃんに導かれ、元の世界に戻ってきた。
 孝太郎は救急車で運ばれ、美香とガク先輩は助けられ、犯人は捕まった。

2017年4月28日金曜日

希望荘

希望荘 宮部みゆき
 聖域 杉村三郎38才 東京都北区尾上町に杉村探偵事務所を開設。近所の主婦から、亡くなったと聞いていた三雲勝枝さんとそっくりな人を見た。調べて欲しいということだった。勝枝さんは貯めていたお金を娘に取られ、娘から逃げていたが、宝くじが当たり娘と二人で暮らしていた。宝くじに当たったことを人に言いたくなくて、亡くなったことにして姿を消していた。
 希望荘 老人ホームで亡くなった武藤寛二の息子・相沢幸司が、父親が亡くなる前に人を殺したというような事を言っていたので調べて欲しいと依頼してきた。告白を聞いたのはホーム主事・柿沼と担当介護士・見山、ちょうど掃除をしていたクリーニングスタッフ・羽崎だった。テレビで最近起こった婦女暴行目的の殺人事件を放送している時だった。武藤が言う殺人事件は昭和五十年の若い娘の殺人事件だった。犯人は知人に連れられ自首している。付き添っていたのが武藤だった。希望荘で六人の独身男性が住んでいた。殺人を犯し様子のおかしい同居人を見ていた。今回起こった殺人事件の犯人は羽崎だった。殺人を犯して様子が変なのがわかったから、羽崎に自首を勧めるつもりでしゃべっていたのだった。杉村は殺人現場にスポーツタオルがきれいに三つ折りにされて残っていたことで気がついた。ホームの
クリーニングスタッフはタオルを三つ折りにして膝置きに使う。相沢氏への報告書に全てを書いた。相沢氏は知り合いの警察関係者に報告書を見せた。羽崎は捕まった。
 武藤は四十年前、離婚して消息不明だった。十年前、息子がレストランをオープンしたことを知り近所をうろついていて会った。
 砂男 杉村が離婚して実家に帰り、父親を看取ってから探偵事務所を始めたきっかけ。
 杉村がアルバイトしていた〈なつめ市場〉のお得意さんの店の主人・巻田広樹が不倫相手の女性と駆け落ちをした。不倫相手と思われる女性の母親が、納得できないから探して欲しいと蛎殻調査事務所に依頼した。所長の蛎殻昴と行動を共にした。
 巻田広樹・香川広樹は12才の時、自宅に火を付け母親と妹・10才を殺した疑いがあった。妹への虐待があったようだ。広樹の妻・典子に子供が出来たことを知り、人を殺した自分が子供の父親になれないと言い、自分が悪者になるよう駆け落ちを騙り家を出ていた。不倫相手と思われた子・典子の友達は広樹のアドバイスで医療事務の勉強をしていた。彼は広樹ではなかった。病気の母親の入院費が欲しいため自分の戸籍を広樹に売っていた。広樹が妹に近づいたため広樹を殺していたのでろう。それは突き放した広樹の父親が知っていた。
 蛎殻昴に誘われて探偵事務所を開いた。蛎殻調査事務所の調査をしながら。
 二重身(ドッペルゲンガー) 2011年東日本大震災が発生、杉浦の事務所は傾き取り壊すことになり、大家・竹中家の西端に間借りすることになった。
 相沢氏の次男・幹生の友達・伊知明日菜が母親の交際相手が東北へ行ったまま消息不明なので探してほしいと依頼してくる。
カジュアルアンティークショップのオーナー・昭見豊はアルバイト店員・松永に殺されていた。松永が、昭見が明日菜の母親に贈るつもりで買ったピアズリのダイヤの指輪を持っていることで明らかになった。殺してしまった次の日におきた地震を利用していた。

2017年4月25日火曜日

三島屋変調百物語 四之続

三島屋変調百物語 四之続 三鬼 宮部みゆき
 迷いの旅籠 鶴見川の北、小森村のつぎという13才の子供が三島屋の黒白の間の語り手としてやってきた。
 領主の子供が亡くなったため立春の前日に行う行灯祭りが禁止された。行灯祭りは冬の間眠っている田圃の神様・あかり様に目を覚まして頂くためのお祭りで、あかり様が目を覚まさなければ凶作になるという。
 名主の客・絵師・岩井石丈(与之助)の発案で小森神社の脇の名主の父親の隠居屋を大きな行灯に見立てようということになった。壁を壊し、障子をはり、絵を描く。大行灯に火が灯った。息子の親不孝を詰る名主の父親が現れる。つぎの兄・一平の許嫁・なつが現れる。死んだ人が現れる。代わりに関係者が一人意識不明になる。あの世からの道が開いた。大行灯を燃やそうという。絵師は通行手形を書き、現れた亡霊に渡す。みんなが去った後、生まれるはずだった子供と女房を亡くした寛太郎は向こう側に入り戸を閉めた。そして隠居屋は燃やされた。
 名主たちは、領主・旗本・堀越の所へ行ってこの話をつぎにさせるつもりだ。ちかは私が代わりに行く。主・伊兵衛は碁相手だからと言い、つぎが行かなくて良いようにする。
 食客ひだる神 だるま屋さんの仕出し料理屋のお弁当は人気がある。桜の時期が終わると、秋の紅葉狩の頃まで店を閉める。だるま屋の主・房五郎が黒白の間に来た。ちかが夏場に店を閉める理由が知りたくて招いた。
 15才で江戸に出てきて五年、辛抱した仕出屋を飛び出し親切にしてくれた蒲焼き屋に世話になり煮売りやをしていた孫娘と一緒になった。25才の時、実家の母親が病気と聞いて搗根(とうがね)藩に帰った。江戸への帰り道で、ひだる神に会い、憑いて来てしまった。ひだる神は何をするわけでもないがよく食べる。煮売りやから弁当屋になった時も、裏店から表だなに変わった時も、客を連れてきたのはひだる神だった。家が傾く、隙間ができる。理由はひだる神が太り過ぎて重すぎ家が傾いていたのだった。ひだる神のために休むようになった。47才、父親が病みついたという事で実家に帰る。父親の葬儀を出し、帰る途中。ひだる神に話しかけてもいなくなっていた。
 房五郎は江戸の店を弟子に任せ、ひだる神の近くに店をだすかも
 三鬼 改易された栗山藩の江戸家老をしていた・村井清左衛門が黒白の間の語り手として来る。清左衛門の若い頃の話。
 清左衛門は小納戸役六十石だった。妹が藩の上層部、役方の次男、三男の三人に非道なことをされた。清左衛門は許せず、果たし合いの形で一人を斬り、二人は逃げた。切腹を師範に止められ、罰として洞ケ森村の山番士を三年勤めることになった。三年勤めれば、村井家は再興、お納戸役として戻れるという。須加利三郎といっしょになった。利三郎は砲術隊の隊員だった。
 洞ケ森村は、山は険しく、気候も厳しい、夏は旱、冬は大雪、生きるに厳しい、労力の無駄な所だった。清左衛門は上の村で過ごし、大雨の時、気安くなった兄弟の兄が泥水に流され生きてはいたが、怪我がひどく、医者を呼びに村に降りようと思った時、何者か判らない者が現れ、けが人を殺したとわからないように殺したと感じた。清左衛門は何者か分からない者を見た。この世の者ではないほど早い走りで逃げた。利三郎は下の村で暮らし、姉妹の妹と夫婦のように暮らし、子供が出来た。産後の肥立ちが悪く、母親は寝たきり、子供も弱い。やはり、何者か判らない者が現れ二人を殺したようだ。間引きだ。二十六年前から村長が自分がやるつもりで行くともう誰かが終わらせていた、という。二人は村長に頼み鬼を呼び寄せる。鉄砲で撃つ。誰もいなかった。着物と編み笠だけが残った。雪崩が起こる。二人は助け出される。三年経ってないが、二人は山の実情を訴えに行く。筆頭家老が殿と共に話を聞き、山の村の者を呼び戻した。清左衛門は小納戸役となった。江戸家老に呼ばれ江戸に出府。藩を離れた利三郎は清左衛門の妹と一緒になって江戸で砲術指南所をしている。
清左衛門は切腹した。介錯は利三郎だったようだ。
 おくらさま おくらさまの話をしに来た梅婆様がいた。香具屋の美仙堂にはおくらさまがいた。蔵座敷で常香盤のお香を絶やさずたき続ける。姉妹で順に替える。おくらさまが店を守ってくれる。火事で廻りが焼けたが美仙堂は守られた。その代わりに三姉妹のうち一人が蔵に閉じこもらなければならない。次のおくらさまになる。菊が選ばれ蔵に閉じこもる。
藤が跡取りとなった。話が終わると梅が消えた。
 三島屋の次男・富次郎21が奉公先の木綿問屋「恵比寿屋」で奉公人の喧嘩仲裁をして頭を打ち意識不明になった。気がついても起られず、やっと動けるようになって、三島屋に帰ってきた。
 貸本屋・《ひょうたんこ・どう》の若旦那・勘一と富次郎とに助けられ、美仙堂を探し、梅を見付ける。美仙堂は三十年前に燃えていた。梅以外の家族は死んでいた。梅ももう眠っていた。ちかが話の礼を言う。梅の魂が三島屋に来ていたようだ。梅はちかに家に閉じこもっているとおくらさまになるよ。と言い残して亡くなる。
 深考塾の青野利一郎が国許に帰ることになった。国許で用達下役をしている朋友・木下源吾が病に侵された。母親、妻、子供が四人いる。一番下の男の子が三才。源吾は利一朗の許嫁の従兄弟だった。利一郎は木下家に養子に入ることになった。
己の人生の道筋を変えようとしています。それが正しいと思うから。あなたにも訪れるその時には躊躇わず、黒白の間から踏み出して下さい。という言葉を残して旅立った。

2016年12月7日水曜日

お文の影 

お文の影 宮部みゆき
 2014年 1月20日 ばんば憑き参照
ばんば憑き
 坊主の壺 壺を描いてある絵の中に他のものが見える人が居る。
 ありとあらゆる疫病から守ってくれる、又無力な人々を守る知恵を与えられる。
 お文の影 影踏みをしていると人数より多い。亡くなった子供が影を置いていった。
 影が寂しがっている。
 博打眼 博打眼の退治の仕方をお稲荷さんの狛犬が教えてくれた。
 討債鬼 討債鬼を信じてしまった商家の主
 母と子は家を出、行然坊の妹が商家に入った。
 青野利一朗たち 三島屋 おちかに出てくる人たちだ。
 ばんば憑き 殺された人の魂を殺害者に移らせる。
 野槌の墓 人を殺した野槌を殺してくれと化け猫に頼まれる。
 
おでこちゃんも登場していた。

2015年11月4日水曜日

平成お徒歩日記

平成お徒歩日記 宮部みゆき
 真夏の忠臣蔵 両国・吉良邸跡→鉄砲洲・浅野上屋敷跡→高輪・泉岳寺
 罪人は季節を選べぬ引き廻し 小伝馬町→堀端→鈴ケ森→小塚原
 関所破りで七曲がり 小田原→箱根湯本→箱根旧街道
 桜田門は遠かった 皇居江戸城一周
 流人暮らしでアロハオエ 八丈島
 七不思議で七転八倒 本所深川
 神仏混で大団円 善光寺→伊勢神宮
 剣客商売「浮沈」の深川を歩く
 いかがわしくも愛しいまち深川