めじろ鳴く 時代小説短編集 佐伯泰英
めじろ鳴く 宮本武蔵のもとに 柳生十兵衛の門弟という若者が訪ねてきた。武蔵に遺痕を持つ若者だった。
寒紅おゆう 庄屋の息子から逃れるために江戸で紅作りの修業をするゆう。三年で寒紅おゆうと名付けられた紅を作り出す。追ってきた息子に見付かり簪で刺し殺す。ゆうも殺される。
虚けの龍 深井家五十三石、三男・惣三郎。16才。相良の龍虎の龍と言われた惣三郎だが、かろうじて武士身分だった。師匠は惣三郎に、受けの剣を身に付けよと言う。御右筆百十石金杉由継の一人娘を三人の無頼者から救った。虎と言われる日下左近は壮行試合で優勝し、酔った勢いで惣三郎に難癖を付け勝負に持ち込む。一人対多勢にも関わらず惣三郎が勝つ。上士・駒飼一族の当主が陣頭指揮し押し出す気配が有る中、町奉行が、迅速に動き事を沈めた。
後年、惣三郎は、金杉家に養子に入る。
手毬 奥村兵衛は、国替えとなった榊原政永を追って、姫路から越後に行った。早駆けの邪魔をしたと言う理由で娘をうしなっていた。政永と会い、言葉を賜り納得仕掛けた奥村が、渡した手毬を見て娘のことを知らない政永を偽殿と言い、殺した。政永の本当の父・徒士頭古田が、奥村を討った。この手毬は政永が娘・ちかと名前を書き、手ずから渡した物だった。
寛政元年の水遊び 鎌倉河岸のむじな長屋の三人、亮吉 政次 彦四郎が、10才の夏。水戸屋敷から流れ出る川と神田川の合流部で泳いだ。その場に水戸家の密書を持った若侍二人がやってきた。後からきた半澤は、若侍を殺す。もう一人が危うくなった時、政次は、半澤裏切って殺すかと声を掛けた。半澤は姿を消す。三村は水戸へ行った。三人は、今日見たことは、喋らないと誓った。
妻手指 江戸の小さな道場で育った三兄弟。武者修行に出て帰らない父親の最後を報せる手紙が大阪より届く。読んでも判らないので三男・董次郎がいくことになった。六郷の船着き場で勝ってをいう侍達がいる。董次郎は、名刀・妻手指と百両を賭けた試合をすることになった。美濃部道場で次の日、行われた試合で、董次郎は竹刀を使う。董次郎は勝ちを得、百両を手にした。御救小屋に百両を渡す。上方は遠いのうと呟く。