2023年11月30日木曜日

あずかりやさん③ 彼女の青い鳥 

あずかりやさん③ 彼女の青い鳥 大山淳子

 ねこふんじゃった 母と娘がぬいぐるみのキリンを預けた。お金を出さずにおはじきを出した。帰り際、蚤がいると大騒ぎして帰った。商店街で、あずかりやに蚤がいることが話題になり、客が来なくなった。そのことを相沢さんが教えてくれた。相沢さんは店前に、蚤注意と書いた紙をはがしていた。
 キリンを預けた娘の父が来た。まだキリンはあった。薄汚れていたが奇麗に洗ってあった。主は蚤がいたと言われたので洗ったと言う。元妻は娘を預けたのかと聞いた。ここに預ける人は預けるものが大切だからきてくださると思っていると言う。

 スーパーボール 毎日百金で三個づつ買い物をする年寄。百金が閉店し、あずかりやへ行く。二日に一回、以前買った物を預けに行き、取りにいかない。部屋の中が片づいた。押し入れに中のデパートの未開封の物を預けに行く。四つの押し入れも片づいた。最後に以前、自分が預けたものは何か聞いてみる。記憶障害があった。
 十三年前に、手紙を預けていた。自分に買い物依存症があるため怒って家を出ていったと思っていた姉からの手紙だった。主は残してくれていた。手紙を置いて、主は外へ行った。
 遠藤ヨシノ。主が覚えていた名前。ヨシノは姉からの手紙を読み、買い物依存症が姉の病気だと知った。アルコール依存症にもなって、医療刑務所に送られ、医者と結婚したと連絡してきていた。結婚したきになっているということか。
 姉に会いに行こう。

 青い鳥 あずかりやが休み、店主は留守。相沢さんが、猫に餌をやるため鍵を預かっている。店の前のハナミズキにルリビタキという青い鳥が止まっている。女の子が店に来る。相沢さんと一緒に入って宿題をやり出す。 

 かちかちかっちゃん 里田ぬるま、デビュー三十周年で芥川賞を受賞した。どなたに報告しますかと言う質問に、名前を知らないから「青年A」にと答えた。
 里田は「刑事あめんぼ」シリーズを出している。他の物を書いても編集者に相手にされない。昔書いたどうしても読んでほしい「かちかちかっちゃん」を出す。読んでくれない。里田はあずかりやを訪れた。店主と話している途中、少年が本を預ける。刑事あめんぼだった。試験があるのに手元にあると読んでしまうので、試験が終わるまで預けると言う。
里田は店主とぬるまに付いて話す。ぬるまの話には父親が存在しないと話す店主に、里田は持っている紙束に書いてある話の内容を話す。店主は泣きながら預かれないと言った。里田は持ち帰り、編集者に送った。編集者は会社と闘った末に、ライバル出版社に持ち込んだ。編集者は会社を辞め、里田の妻になった。
 次作の構想は?と聞かれて「刑事あめんぼ和歌山へ行く」と答えた。

彼女の犯行 古い時計を修理に出している間に、「あずかりや」の時計は、金属で出来たスタイリッシュな時計に代わった。その時計が盗難品だった。警察が来て押収する。時計を預けたのは桜原さとみだった。彼女はいろいろ預けるが取りにきたことはない。警察は盗品がないか預けられている物を調べた。ある日突然捜査は終わった。盗難届けが取り下げられた。
 少女が、手紙を預けに来た。半年後に彼女が取りにこなければ投函してほしいということだった。彼女・一ノ瀬はずみは再発した病気の治療が始まる。自分が居なくなっても好きだったことを知らせたいと手紙を書いていた。
 和装美人が来た。桜原さとみと名乗る。偽名だったさとみは、彼女の家で、貰った物を預かりやに預けていた。彼女に時計を贈った男が時計が無いことに気付き盗難とどけを出したのだった。店主は対等でいたいがために手元に置かず預けていたと言った。桜原は時計を老いて行った。彼女と話してみると言って。彼女の名は沙世
 時計が残った。店主は、時計を気に入っている相沢さんに預けた。
 
  

2023年11月27日月曜日

あずかりやさん② 桐島くんの青春

あずかりやさん② 桐島くんの青春 大山淳子

 プロローグ 宇宙飛行士になった男性が、中学一年生の最初に、変わったお店、あずかりやさんに預けたい物はと聞かれた先生に手紙を書いた。あの時答えたランドセルは、嘘でした。先生に、本当のことを伝えてすっきりした。
常にあったあずかりやの存在、いつか店主と話してみたい。 

 あくりゅうのぶん 語り手は机。職人に作られた檜の無垢材の机。倉庫の台になっていた文机をぶん机と言う男が買った。彼は机をぶんと呼んだ。芥川龍之介に憧れ小説を書いている一人暮らしの男だった。友人からあくりゅうと呼ばれた。小説は書いていない。
 三十才、母親が帰るようにと迎えに来る。ぶんを質屋に預けるつもりで、行った先は、一週間前に開店した、あずかりやだった。
 あくりゅうは、7時の開店時間、11時から3時までの昼休み、3時から7時までの開業時間を決める。開店中はのれんを出すことを提案する。店主・17才の盲目の少年と話し、ぶんを二百日預けることにし、二万円と机を置いて、芥川龍之介と名乗って帰った。
 家の権利書、カブトムシ、古時計、粗大ごみいろんな物が預けられた。二百日が過ぎた。あくりゅうは来なかった。ぶんは店に出され店主が客を待つ机になった。ボンとなる古時計も店にあった。
 若い女性が、店主に内緒で寝泊まりした。七日いて七百円を置いて出ていった。
 相沢さんが点字本を持って来た。店主は二十五才になった。
 ぶんはあくりゅうが訪れた夢をみた。彼は教師になっていた。

 青い鉛筆 中学一年生の正美。3才下に身障者の弟・直樹がいる。転校してきたクラスメート・織田さんの青い鉛筆を盗んでしまった。鉛筆をあずかりやに三日分三百円で預けた。じっとしていない直樹が、星の王子さまをじっと聞いているという。
 織田さんに鉛筆のことを話しあずかり屋さんに取りに行く。途中で、祖母に貰ったお守りを織田さんにあげる。一緒に行った織田さんは鉛筆をまた預けた。そして、あの鉛筆は由梨絵から盗んだ物だと言った。正美が風邪で学校を休んでいる間に、織田さんはまた転校していた。由梨絵から無くした鉛筆が落とし物箱に入っていたと聞いた。由梨絵の鉛筆に直樹がかんだ後が付いていた。あずかりやさんに行った。織田さんはチェックの布カバーが付いた外国語の文庫本を預けていた。受け取った。
 二十年後、正美は、亡くなった祖母の家に一人で住んでいる。ファミレスで雇われ店長をしている。父は高校の時、家を出た。母は働くため直樹を施設に預けた。月一回母と直樹がファミレスに来る。時々家族をするのは楽なのだ。
 母が直樹を預けたことがあると言う。そこで星の王子さまを見たのだ。直樹は、母に音読され全てを暗記していた。正美は母と弟と一緒に住むことを考えた。

 夢見心地 あずかりやさんのガラスケースの中のオルゴールの話。
 祖父は時計職人、父は途中でオルゴール職人に転向。ゼムスは三十五才の時、スイスでこのオルゴールを作る。百二十年前。シューマンの子どもの情景の7番、トロイメライ(夢見心地)。もうすぐ出産の奥さんへのプレゼントだった。出産がうまくゆかず、奥さんと子どもは亡くなった。一年後、時計職人に戻った。二十年後、作らなかったオルゴールを再び作る。妻と同じ名前の7才の少女の誕生日祝いに。乙女の祈りを音源に使われたオルゴールはでき上がったが、小火で焼けた。新しい美しい象牙細工のスミレの上品な木箱が作られ音源を入れる時、昔のトロイメライが入れられた。乙女の祈りの音源は、前の箱に入れられた。
 少女は耳が聞こえなくなっていた。ゼムスは共鳴台に手を乗せて聞くことを奨める。音が伝わった。二ヶ月するとクララは聴覚を取り戻した。二十二才のクララは調律師と駆け落ちした。クララはオルゴールを持ち出し古道具屋に売った。オーストリアの店で日本人に買われた。大事にされ奥さんの病院のお見舞いにも行き、看取った。旦那さんはオルゴールの引き取りてを探し、五十年の約束であずかり屋さんに預けられた。時々鳴らされる。

 海を見に行く 桐島透、高校三年生。陸上部で百と走り幅跳びの記録更新を狙い、東大の法学部を点字受験するつもりで頑張っている。音楽科の河合都を幸福のピアニストとこっそり呼び憧れている。
 父が来た。家を売ると言う。透はあの家が好きではなかっただろうという父。7才の交通事故後、ランドセルを使わないまま盲学校の寄宿舎に入った。家に帰っても話をしない母親にどう接していいか判らなかったから家に帰らなくなっただけ。北海道に転勤になった父は、いつ東京に帰るか判らないと言う。マンションを買う予定。透は母が帰られなくなると言う。
 石永小百合という転校生が入った。彼女に図書館への案内を頼まれ出かけると、鎌倉の由比ヶ浜へ海を見に行きたいと言う。彼女は今はうっすら見えるらしい。砂浜で脱いだ靴を見付けられず時間が掛かった。見付けたお礼に彼女は顔を触って見せてくれた。彼女の顔は、透が想像していた河合都の顔だった。
 透に東大受験を奨めた先生、柳原先生が亡くなった。ホームから落ちた杖を付いたおばあさんを助けホームから飛び降りた。先生はいい人だったけど死んでしまったのは大失敗だと思う。
 明日から夏休みという日、音楽室で始めて河合さんと話した。いっぱいあるという石鹸を貰った。大好きな曲だというトロイメライを引いてくれた。透は、トロイメライを聞き、急に大人になった。子どもの頃の情景を思い出した。映像として思い出せる唯一の場所は、生まれ育った家だった。家に帰ろう。東大も卒業もどうでもよくなった。
 
 

2023年11月24日金曜日

江戸人情短編傑作選 御厩河岸の向こう

江戸人情短編傑作選 御厩河岸の向こう 宇江佐真理 菊池仁編

御厩河岸の向こう ゆりの八才違いの弟・勇助は、前世を覚えていた。年を取ると未来が判っていた。ゆりが婚礼を迷っていると幸せになるよと背を押した。自分が十六才で死ぬことも伝えて来た。ゆりは弟の死をゆっくり看取った。

蝦夷錦 古着屋・日乃出屋の主・喜十の店に、着物をハギにした変わった生地を持って来た者を断った。後日、隠密廻り同心からその着物を探すように言われる。端布屋を廻り探し出すが売られていた。買ったのは大津屋の娘だった。人形を抱き本当の赤子のように話しかける娘だった。盗まれた物で買い取りたいと言うが、相手にされない。喜十は娘が、気が振れた振りをしていることを指摘する。娘は手放した。同心に渡す。

仲ノ町・夜桜 岡っ引きをしていた夫が亡くなり、息子が結婚する。とせは家を出て働くことにした。吉原の縫子だった。住み込みだった。

秘伝 黄身返し卵 臨時廻り同心・椙田忠右衛門家の嫁・のぶは、離婚を考えている。忠右衛門は舅、伝説の同心だった。姑はふで、口調ほどきつくはなかった。六年経つが子どもはいない。夫・正一郎の大失恋の最中、ふでが連れてきたのぶと結婚させられた。それを知ったのぶは、この家には合わないと思っている。

藤尾の局 元大奥で暮した藤尾の局・梅は、呉服屋の娘。両替商「備前屋」の後妻に入り、二人いる兄弟とうまくいかないまま。娘・利緒がいる。兄弟は身を持ち崩し勘当された。主が倒れた。梅は、兄弟に意見し、売り言葉に買い言葉で実家に帰る。主が持ち直し兄弟は梅を迎えにくる。かんしゃくを起こしてくれていい。初めて意見した梅に兄弟はそう言った。

赤縄 呉服屋の一人娘・このが恋した相手はお坊さまだった。このは赤い糸で繋がっていると言う。お坊さま・清泉。清泉が国に帰ったら死ぬというこの。このが自裁したら私も後を追うきがすると言う清泉。奉行と住職が話して、清泉の還俗が決まった。

慶長笹書大判  口入屋の姪・ふく。青物屋の主人が大判を持っていることを知らせる。
    昨日みた夢より

2023年11月22日水曜日

風烈廻り与力・青柳剣一郎63 心変わり

 風烈廻り与力・青柳剣一郎63 心変わり 小杉健治

 火付け盗賊改を翻弄するかのように狐の神楽面を被った盗賊の押込みが二年の間続いていた。人は殺めず、盗んだ金は七千両余り。
 老中から青柳剣一郎に密かに探索を命じられた。
 剣一郎は調べ始めると火盗改の動きに不審を抱いた。一味とおぼしき男に目を付けた矢先、刺殺体となって川に浮かんだ。彼が狐面の一人と考えた剣一郎は、盗賊に火盗あらための手の内が漏れていたことを確信する。
 火盗改の頭・天野が、自らの仲間を調べたくなく剣一郎に頼んだと考えた剣一郎は、天野に内密に伝える。自浄すればいいと思ってのことだったが、天野は、用人・奥野の言葉に心変わりし、隠ぺいに進んだ。
 剣一郎は、狐面の仲間を割り出し自首を進める。
 火盗改の与力・佐久間と同心・野中、下っ匹・銀次が、辞めたいと言う狐面の頭・一筆堂主・矢五郎を殺していた。殺した現場を見たと脅し文が来たため、近所にいた巳之助を殺していた。
 脅し文を書いた男を割り出し自首させる。

 野中は、奥野の命で佐久間を妾と共に殺そうとする。剣一郎はその場に行き止める。

 天野家は火盗改めの任を解かれ、家も取り潰しになった。


2023年11月20日月曜日

柳橋の桜〈二〉 あだ討ち

 柳橋の桜〈二〉 あだ討ち 佐伯泰英

 猪牙船の船頭を襲う強盗事件が起こっていた。
 そのためか親方からの桜子の船頭の許しがなかなかおりなかったが、北町奉行・小田切直年が、女船頭の監察を出してくれた。お披露目も行われる。
 船頭の強盗事件が頻発する。船頭が殺される。千社札が残され、詳しいことは同心にも知らされない。千社札の作者を探し当てると、作者は殺され、同じ長屋に住む若夫婦も狙われ、船宿さがみに避難する。
 千社札に書かれた百面相頭領 雷鬼佐衛門は、若夫婦を脅し、まだまだ船頭強盗が続くと脅しを掛ける。お城の中の誰かに向けて書かれているように思われる。誰が何のためにか分らない。
 五人目の犠牲者が出た。桜子の父親・広吉が殺された。桜子は自分の代わりに広吉が殺されたと感じる。あだ討ちを決心する。
 葬儀の場で、桜子と棒術の師匠大河内家の小龍太との祝言が決まる。
 夜、桜子は鬼左衛門からの呼び出し状の場所へ行く。真槍を持った鬼左衛門と短筒を持った鬼左衛門の情婦が現れた。飛び上がった桜子は鬼左衛門の頭部を一撃で倒した。隠れ付いていた小龍太は情婦を倒す。集まっていた一味は奉行所の役人に捕まった。桜子も小龍太もいなかったことになった。

 阿蘭陀の骨董品店の店先に「花びらを纏った娘」「チョキ船を漕ぐ父と娘」という絵がある。


 
 

2023年11月18日土曜日

大江戸監察医② 望みの薬種

大江戸監察医② 望みの薬種  鈴木英治

 沼里藩の御典医だった仁平は、若殿の病を治せず亡くなった後、沼里を出、江戸に来た。
薬種問屋・和泉屋の若旦那を病から救い、和泉屋の預かりで町医を開業していた。

 和泉屋の大旦那が病に倒れた。開業した町屋には、大量の本があり、本の中から大旦那の病に効くだろう薬草を調べる。必要だと思われる薬草を集め、必要な薬草に代わる薬草を調べ、集める。
 仁平は、沼里藩邸に薬があることを知っていた。藩邸に赴くと自分がどうなるか心配だったが、薬を分けて貰いたく藩邸に赴く。牢に入れられるかと思ったが、藩主が現れ、自分が病から救われたことの礼を言い、息子に対しても頑張ったことに礼を言い、必要な薬をくれた。
大旦那は快方に向かう。
 大旦那は、毒を飲まされていた。同じような症状で亡くなった人を調べる。仁平は命を狙われる。刺客を捕まえた。
 江戸に、子どもを育て優秀な人材を商家の重要人物に育て、なくてはならない人物に育て、商家の主を殺し、養子となって商家に入ませる僧がいることがわかった。
 和泉屋もその商家の一つだった。
 仁平の息子・幹太郎が江戸へ来ていた。亡くなった母の無念のため、父を斬るために。親子は一度はぶつかった。二度目には、一緒に住みたい気があるが、沼里に気掛かりな弟・元次郎がいる。

2023年11月15日水曜日

ポリ袋で簡単!もみもみ発酵レシピ

 ポリ袋で簡単!もみもみ発酵レシピ 荻野恭子

2023年11月13日月曜日

いつまで

いつまで 畠中恵 

 若旦那・一太郎は、長崎屋のために、薬升を作った。

 医者の火幻と場久がいなくなった。心配していた一太郎もいなくなった。
一太郎は五年後の江戸にいた。
薬升が盗まれ、長崎屋と同じ薬効の薬を扱う大久呂屋があらわれ、繁盛している。
籐兵衛は腕の立つ商人だが、一太郎を探すことに時を割き、対抗しきれていなかった。
 長崎屋の近所に店を出す用意をしていた。
 一太郎の許嫁・中屋の於りんは、回向院の団子屋で、夢と名乗って働いていた。大久呂屋は於りんに旗本との縁談を持って行っていた。
 於りんは、先の中屋の女将の話をし、旗本の覚悟を聞いていた。旗本は帰っていった。

 火幻と場久と一太郎は、火幻のところにいた以津真天の嫉妬のため、場久の影の世界にきてしまった。火幻や場久が人間の中で楽しく暮していること、火幻を仲間にしてしまった若旦那を許せなかった。

 一太郎は、深川の三人の僧を、現れた大日如来、寺に帰ってもすぐ若旦那の下にやってくる大日如来のおかげで火事から救った。一太郎は、三人の僧を助けるために五年後の江戸に送られたのだと思った。

 場久が残した通り道を探し、広徳寺の井戸から火幻と一郎太は元の所に戻る。以津真天は淋しいのだと気付いた一郎太は以津真天も一緒にと声を掛け、一緒に戻る。
以津真天は、火幻の家の二階で、掃除、食事の用意、薬研で薬草を刻んでいる。

2023年11月10日金曜日

痛風・高血圧症に効くおいしいレシピ二週間メソッド

痛風・高血圧症に効くおいしいレシピ二週間メソッド 谷口敦夫 

2023年11月7日火曜日

心淋し川 

心淋し川 西條奈加

 心淋し川 十九のちほ。ここから救い出してくれると思っていた男は、紋の上絵師。ちほに縫い物仕事を出してくれる呉服屋で知り合った。もうすぐ年季が明けると言っていたが、彼は京に修業に行った。三年は帰らない。呉服屋の手代が、自分と一緒にならないかと言ってきた。

 閨仏 りきは、六兵衛の妾そしている。四人いる妾が一緒にすんでいる。りきは、一番古い。りきは、六兵衛が持っていた張形に仏を彫った。六兵衛が面白がって何本も彫らせた。
 本職の仏師が、りきの持つ仏像に興味を持ち、三日に一度、仏師と一緒に仏像を彫るようになった。
 六兵衛が死んだ。四人は長屋を出ないといけない。りきは差配の茂十に以前に作った張形の仏像を見せ売り物にならないかと聞く。茂十は、閨仏と銘打ち話を付けた。家賃を払いそのまま暮すことになった。
 これまで通り、時々仏師と仏像が彫れればうれしい。あたりまえの仏像を彫ることはしないと決めた。

 はじめましょ 稲次は長屋で「四文屋」を営む。小鉢は四文銭が一枚、煮っ転がしや、鰯は二枚、飯と汁で二枚。稲次は料理屋で修業した板前だった。おとなしいから苛められた。転がり込んできた与吾蔵は、弟弟子、人に突っかかるから苛められる。行くところがなく稲次の所にきた。手伝っている間に稲次は急に痩せ、寝込むようになり亡くなった。客の要請で「四文屋」を継ぐ。
 仕入れに行く途中、はじめましょと歌う子どもを見る。与吾蔵は、子どもが出来たと言った女を捨てたことを思い出す。女・るいが歌っていた歌だった。与吾蔵は毎日、女の子・ゆかと遊ぶ。
 ゆかの母親はるいだった。与吾蔵は昔のことを誤り、もう一度やり直したいと申し入れる。るいは二人の子は産まれて五日で死んだと言う。すぐ捨子があり、るいが育てることになった。るいには商家の隠居夫妻が後ろ盾になってくれた。ゆかは夫妻の養女になりるいが育てた。ゆかが四つの時夫婦の妻が亡くなった。息子から放り出された。と話す。ゆかは与吾蔵の子ではない。
 与吾蔵はトンビが鷹を生むことはあると言って、るいを迎えに行く。

 冬虫夏草 大店の息子と母親が長屋にいる。息子は足が悪く動けない。母親が全てをやる。息子は怒鳴り散らしてばかりいる。長屋の皆は、なんという息子だと非難するが・・・。
 差配の茂十は、息子の将来のためという結構な話を母親が全て断っていることを知っている。息子の全ての世話をしているい今が幸せ。子どものためといいながら、子どもの事なぞ考えていない。

 明けぬ里 ようは以前、根津の遊廓にいた。葛葉という。同じ頃大人気の明里ねえさんがいた。明里は札差に落籍された。葛葉は、隠居に落籍されたが、後の面倒は見られないと自由になった。行くところがない葛葉は、客だった桐八と一緒になった。
 葛葉と明里が出会った。二人共にお腹に子どもがいる。葛葉は下ろすつもりだった。明里は、札差に落籍されたくなかったという。子どもは同い年、元気な子を産もうと別れた。
 ようは体調を崩した。直りかけた時、明里の心中が読売にでた。相手は、札差の手代だった。ようが知っている手代だ。二人は昔から惹かれあっていたのだ。ようは泣いた。大声で泣いた。ようは、子どもが出来たことを桐八に話そうと決めた。

 灰の男 茂十は昔、諸式掛かり同心だった。十二年前、息子は、内勤を嫌い、外回りに憧れた。町奉行所あげての取締になっている地虫の次郎吉を探していた。会田親子と四人連れの時、地虫一味に遭遇する。息子は滑った拍子に若い男を殺した。次郎吉はよくも斉助をと言いながら息子を殺した。地虫一味は捕まったが次郎吉は逃げた。
 茂十は、妻の甥を養子にし、隠居した。妻は自殺した。次郎吉の顔を知っている茂十は探し周り、楡爺と呼ばれる男を見付けた。奉行所に言っても、五年がたち、奉行が変わり、惚けた年寄を捕まえはしなかった。
 茂十と名乗り長屋の差配になり、楡爺を見張っている。
 りきが作った雪だるまに赤い襦袢が掛けられた時、楡爺が、「斉助と叫んだ」斉助は殺された。おれの息子。やっと会えた俺の息子。泣きながら眠り、惚けた年寄に戻った。そしてぽっくり逝った。十八年経った。

  

2023年11月4日土曜日

おやこ相談屋雑記帳① 出世払い

おやこ相談屋雑記帳① 出世払い 野口卓

 猫は招く 
 ハツが、「駒形」に来たきっかけは、夢の中で猫が、駒形という将棋会所があると教えてくれたからだと告白した。
 猫が三匹、信吾に噂の猫の集まりがあることを知らせてくれた。信吾と波乃は、そこに行く。何匹もの猫が集まっているが話しをしていない。信吾は話しかけるが反応はない。
 猫は猫の世界でいきている。

 山に帰る 
 看板が「おやこ」に変わったことで、竹輪の友たちが、お祝いを言いに来た。
 高丸と名乗る青年に相談したいと呼び出しを受けた。故郷・美馬のおいしい料理の話をして相談を受けずに帰ってきてしまった。すぐ二度目に会う。高丸は、自分のやりたいことが定まらないようだった。信吾の相談所開設の話しを聞き、将棋会所を見て帰る。
 十二日後、三度目に会った時、妻になる人を伴い、美馬に帰ることになったと伝えた。明後日と言っていたが、翌日出立したようだ。手紙が残されていた。是非、お二人で美馬にお越し下さいと書かれていた。
 信吾は三四年すれば行けるだろうと計算した。

 サトの話
 信吾が十二才の時、サトに話しかけられた。出会えば時々話しかけられる。
 相談屋と将棋会所を開いて数日した時、久しぶりに出会った。サトは開いたことを知っていた。サトの家が分った。息子が二人で、一人は番頭、次男は手代をしている。主人は、通い番頭だと話した。
 サトの亭主が亡くなった。サトは元気に話かけた。
 サトは目が悪くなったようだ。
 サトが亡くなった。長男は、独立し店を持ち、妻も子もいた。一緒に住もうと言われても妻と合わなくて拒んでいた。亭主が亡くなっても一人で住んだ。七十一才だった。信吾は六十位に思っていた。

 同志たれ 
 天眼が、相談屋のことで話に来た。信吾のところに相談屋について聞きにきた男が、困ってそうな金持ちのことを調べ、相談にのってやると強請まがいのことをしている相談屋になっていると言ってきた。
 相談屋を始めるという男が来た。雲似郎という二十七才の男。
 天眼が、悪徳相談屋にご注意 弱みにつけ込み大金を と瓦版を書いた。相談屋がどんなものかを書くにあたり信吾のことを書いた。相談屋に、ただしゃべるために来る客が増え、宮戸屋へ呼び出されることが続いた。波乃も一緒に行く。波乃はどんな人に会えるか楽しみだと言った。

 出世払い
 二年半前に相談に来て、今はお金がないのでといい、一朱を置いて、出世払いでと言って帰った園造が、来た。頂く気がない信吾を何やかやと言って帰す。
 この頃では、お金が有る者が、出世払いでいいからと使うようになった。元々は、お金のない者が、なんとか融通してほしいというもの。
 
 
 

2023年11月1日水曜日

新・秋山久蔵御用控〈十六〉 帰り道

新・秋山久蔵御用控〈十六〉 帰り道 藤井邦夫

 返討ち 雲海坊と同じ長屋に住む佐吉が、悪い仲間と一緒にいるところを目撃される。一緒にいた長吉が殺された。長吉は強請、集りの常習犯だ。強請られていた住職を調べるが殺していない。長吉の仲間が一人殺される。
 雲海坊と同じ長屋に住む浪人・片平兵庫が、佐吉を悪に引き込む長吉と仲間を斬っていた。
秋山は、長吉が強請相手に返討ちにあったということにした。

 帰り道 小間物屋紅花堂が付け火の被害に遭った。紅花堂には、五年前に 妻子を捨て女郎と駆け落ちした主・二吉が、未だ行方不明だった。秋山久蔵は、付け火を見付け食い止めた謎の男の正体が、二吉ではないかと睨む。
 二吉は付け火犯人を捕まえた。大黒屋が犯人か突き止めるために強請る。斬られる。二吉は秋山に保護され、紅花堂に知らされた。
 紅花堂の主人がいなくなり店を買おうと言ってくる大黒屋がいた。
 紅花堂が建つ前からあった祠の下に金の観音蔵があった。
 鬼薊の喜平次の手下・徳兵衛が捕まった。

 淡路坂 和馬の道場仲間・神谷平四郎が、役目に就けるかもしれないと言った。
 小普請支配・小笠原刑部宅から帰りの骨董の目利き・風雅堂の主が殺された。神谷が小笠原の屋敷に入るのを見た和馬は、神谷の屋敷を訪ねる。
 小笠原の屋敷の神谷が襲われる。小笠原家を訪ねた秋山は、神谷が生きていることを伝える。小笠原の家臣が神谷家に見舞いに訪れ、平四郎を殺そうとするところを捕まえる。家臣ではないという小笠原家に、神谷と和馬は訪れ、神谷は小笠原を殺す。神谷を捕まえた和馬。帰りに、神谷は切腹する。

 忠義者 秋山久蔵の息子・大助は、学問所からの帰り、掏摸と追いかけられている男を捕まえた。掏摸は武士の財布を持っていなかった。帰った大助は財布を見付けた。財布には毒薬が入っていた。
 次の日、大助は、柳橋の薮十に行き、幸吉に話しが通じるようにした。太市が付け、幸吉たちが見張り、掏摸と命じた者を突き止めた。
 旗本牧野家、主が病気、嫡男が幼い、部屋住みの弟が継ぐか、揉めている。
 牧野家家臣・桑田がまた毒薬を買い、家臣・夏目左門が、桑田を襲い毒薬を奪った。
 夏目は主・京大夫に世話になり、京之介に暇を出されたという。
 夏目は京之介に二百両で毒薬を売ろうとした。京之介は夏目に斬りかかり、夏目に斬られた。夏目は秋山たちに捕まった。
 京之介は命を取り留めたが、歩けなくなった。