2016年7月31日日曜日

風烈廻り与力・青柳剣一郎 23

風烈廻り与力・青柳剣一郎 23 朱刃 小杉健治
 三ヶ月前から火付盗賊「朱雀太郎」が出没する。堂々と表から押し入り土蔵の鍵を要求する。手向かえば殺し、火を付ける。鼻緒問屋「生駒屋」は千両箱を盗まれた。札差し「後藤屋」は主人が殺され、屋敷は全焼した。五件目酒問屋「伏見屋」用心棒が殺され、主人が殺され周辺の商家が焼けた。薬種問屋「佐原屋」主人が殺され火を付けられた。
 青柳剣一郎は三年前姿を消した『朱雀秀太郎」との関連を考えた。秀太郎は殺さず傷つけず盗みだけの盗賊だった。
 青柳剣一郎は、侍が咳をし、主人が「あっ」と声をあげ殺されたと言う証言から咳をする浪人、御家人を探す。進藤勝之助を割り出し、見張り、他の仲間を探し出そうという時に第二の火盗改めが発足し、進藤を捕まえてしまう。第二の火盗改の長官は、横瀬籐之進で、若い時、真下道場で青柳剣一郎と竜虎と称された、一千石の旗本だった。横瀬は剣一郎を目の敵にしている。
 青柳剣一郎は進藤は何も話さないだろうと思っていた。進藤の周辺、前に会っていた三浦屋助五郎を見張る。朱雀太郎がまた襲った。が助五郎は動かなかった。
 助五郎の立ち回り先、会う人を調べ見張りを置く。進藤が自分の看病をしたために胸を患った女に助五郎が人参を届けていた。
 剣一郎の屋敷に十次屋の女将が相談に来た。朱雀太郎のことを気にしていた。昔の知り合い七兵衛に呼び出されて出て行った後、七兵衛がやって来た。主・庄蔵は帰らない。という。庄蔵と七兵衛は秀太郎の仲間だった。三人は足を洗っていた。朱雀太郎が気になった秀太郎は自分が動けないので七兵衛が江戸へ出てきた。四人に分割した南の哲太郎も東の昌五郎もいなくなっていた。七兵衛は自分たちが密告した霧の鮒吉の身内による仕返しだと思った。十蔵に出合い家で世話になる。身体が動かなくなり寝ている。
 青柳剣一郎は横瀬の屋敷に行き、進藤と話しをさせてもらう。何もしゃべらなかった進藤が剣一郎が話ていくと、全てをしゃべった。朱雀は二人いた。三浦屋助五郎と市助。二人は秀太郎の手下だった。剣一郎は三浦屋へ向かう。横瀬が馬を走らせ追い抜いた。が三浦屋も十蔵の所にいた。
 七兵衛は十蔵の手下・五助に火盗改めへの密書を頼んだが失敗していた。常吉が七兵衛と五助を殺しに掛かった時、南町奉行所の捕り方が廻りを囲み、剣之助が潜み込んでいた。納屋の裏から三人の遺体が出た。玄武の常と白虎の十蔵は獄門、後は死罪と遠島、五助は短期の遠島になった。五助は七兵衛が倉賀野宿の旅籠で知り合った女中の亭主だった。
 

2016年7月30日土曜日

忘却探偵シリーズ5

忘却探偵シリーズ5 掟上今日子の退職願 西尾維新
 掟上今日子のバラバラ死体  マンションで見付かった殺人事件、死体損壊事件の捜査依頼。佐和沢警部・若いキャリア・今日子さんに会うのは五度目、捜査依頼は三度目
 被害者は聖野帳・37才男性 憎んでいる人が多く容疑者は多いが、いくら早くてもバラバラ・十五分割にするための時間が二時間、昼間であるためみんなにアリバイがある。
今日子さんは自分の体に切断された線を書き込む。何故、切断しなければならなかったか。時間が長く掛かったと思わせるため。一人が殺し、次々と人が変わって切断してゆく。そうすれば一人に掛かった時間は短くなる。絞殺された正午のアリバイの無い人を探す。後、力の弱い人、空白時間の短い人、から順に探す。
 掟上今日子の飛び降り死体 プロ野球のピッチャー・桃木両太郎がマウンドで死体となって見付かった。死因は転落死だった。鬼庭警部は上司に気を悪くしないでと言う言葉付きで忘却探偵に解決を依頼すると言われた。鬼庭警部は喜ばしい、ようやく会える。
グラウンドで一番高いバックネットによじ登り落ちてみた今日子さん。怪我はなかった。
 名誉の死と言う言葉を聞いて・スタジアムを一周して出した答えは、マンホールの穴へ落ちた。という。後の捜査の結果、マンホールの蓋は盗まれていた。桃木が下水道の中で瀕死の状態を見付けた人がベテラン投手がこんなところで死なせてはならないと思い、マウンドに運んだのだった。
 掟上今日子の絞殺死体 総合病院の一室で患者・霜葉総蔵さん92才が絞殺死体が見付かった。反忘却探偵派の山野辺警部はベットで寝ている今日子さんを見付ける。
 山野辺警部の人生の締めくくりと言う言葉を聞いて、総蔵さんは自殺です。言いきる今日子さん。一見は百聞に如かず、やってみる。三本の長靴下を繋いだ紐を首に巻、左右のベットフレームに端を結んだ。ベットの操作パネルスイッチを押しマットレスを四十五度ほど上げる。点滴用のチュウブを使ったのでしょう。病院は看護ベットやチュウブを使ったのを隠蔽するためにベットを戻した。総蔵さんにとってベットのフレームに結ぶことは大変なことだった。だが、最後の最後で死にたくなくなった。ナースコールを押し、ベットの動きを止めようとした。が失敗した。
 掟上今日子の水死体 波止場警部はこれを最後の仕事にするつもりだった。退職願いをん持っている。忘却探偵は波止場警部最初の事件を解決した探偵だった。
 池の中央辺りにぷかぷか浮いている死体が見付かった。殺されてから池に沈められた。被害者は加勢木二歩さん、死因は撲殺、容疑者は恋人。水深一、五メートルの自宅近くのこの池に何故死体を沈めたか。
 今日子さんはボートから池に飛び込む。底に寝る。
 波止場警部の退職の話から「足を洗う」がヒントになって、容疑者は飼っている犬の毛が付いている被害者を洗おうとした。と今日子さんは言った。
 

2016年7月29日金曜日

仕舞屋侍 3

仕舞屋侍 3 青紬の女 辻堂魁
 九十九九十郎は桜木家の秋田犬に追いかけられ怪我をした親たちに殿様からの謝罪の言葉と怪我の治療代を支払って欲しいと頼まれた。桜木家に行くが殿様に断わられた。九十郎は12才の女中・七に相談した。犬を取り上げたら改心すると思うという。飼い主が改心すれば犬を返してあげればいいという。
 九十郎は北町奉行所年番方与力・橘左近に、子供に怪我を負わせた秋田犬を中野村の犬屋敷に収容してほしいと頼む。主が自分の愚かさに気付き心を改めるまで犬を主から離してもらいたいと頼む。
 橘から仕舞屋の仕事とし頼まれた。表火之番組頭・結木英之介の死んだことになっている妹・雅27才を探して欲しいという。七年前に欠落した雅に、先が長くない父親がひと言伝えたいことが在るという。
 雅は小太刀に優れていた。二十才の時、旗本との縁談があった。雅は身体を許していた。その相手から一方的に家風に合わぬと破談にされた。男には大名家の重役の娘で数千両の持参金がつくという縁談が持ち上がっていた。雅は男を訪ね、男の口から聞きたいと思ったが、男は体を求めに来た。雅は男を一刀両断にした。自死しようとしたが、家を出、病気で亡くなったことになった。その後七年、雅は壺振りになっていた。
 雅は江戸へ行く途中、青梅宿で親子三人連れと同宿になり、娘・玉に懐かれた。夜、お玉の両親が襲撃され殺された。お玉は雅を頼って逃げてきた。お玉を江戸の住処まで送り届けることになった。
 江戸でまた襲撃される。九十郎が行き合わせ助ける。九十郎は英之介の言葉を伝えるが会いには行けないと言われる。手紙を書きませんか。届けに行きます。と、雅は手紙を書いた。結木家に届ける。雅がどのような生活をしていようとも何も言えることはありません。生きていてくれて良かった。それで十分。と父親・克己は言う。英之介の手紙と克己の言葉を届ける。
 九十郎はお玉が狙われる理由を探索する。米問屋神崎屋の手代・充助が空米取り引きに損失を出し家族で行方不明になっていた。命を狙われる理由は何だ。仲間がいたのだ。損失を出した訳では無く、儲けたのだ。それを独り占めしようと江戸を出たが追いかけられ殺された。まだ仲間は金を手に入れていない。またお玉が狙われる。お玉は勾引かされた。風烈廻りの柴六十次と神崎屋の番頭だった。雅がお金を預かっていると思っている。お玉を連れて来い、渡されたお玉の帯から為替手形を取り出した。お雅と九十郎と藤五郎に殺された。
 桜木家の犬が連れていかれた。桜木家から見舞い金が出、犬の御免願いを出してくれとたのまれた。
 雅はお玉を祖父母の所に連れて行く旅に出た。

2016年7月28日木曜日

アコギなのかリッパなのか

アコギなのかリッパなのか 畠中恵
 佐倉聖21才 父母は離婚し母は亡くなった。伯父に引き取られたがぐれた。高校卒業間近に保護司に大堂に合わされ、勤労学生となった。元国会議員・大堂剛61の経営する関連事務所・アキラの事務員をしている。大堂門下の政治家の問題の処理もする。一年前、12才の拓が一人で聖の元にきた。保護者になった。
 県議会議員・大石梨花が有力後援者・羽生という人の家で飼っている猫の色が変わるという。調べに行かされる。羽生家の未亡人が怪我をして長男と長女と孫が一緒に住むようになったのに、長男はリストラされそうだし、長女は夫の母を看護している姉が倒れたので長女が行ってしまいそうなので、わざと惚けた振りをしていた。だが、未亡人は長男にヘッドハンティングされているオーストラリアの会社に行くよう進めた。また長女にも義母の看護をするように言った。聖は英会話の本をプレゼントしオーストラリアへ行くことを進めた。あなたなら大丈夫という言葉を添えて。家族に言われるよりも他人に言われた方が自分を信頼できる。家政婦も一緒にオーストラリアに行くことになった。
 加納という聖の嫌いな国会議員の選挙地盤へ行くことになった。拓が行きたい私立高校の奨学金のために。加納の後援会の幹部・有田が頭を殴られ警察が乗り出した。後援会が大騒ぎになっている。騒動を収めに行く。
 有田が頭を殴られ倒れていたところに警察署長を呼び出し、聖が床を踏み抜いた所へ誘導し署長が床を踏み抜くようにする。有田も同じように踏み抜き柱で頭を打ったと説明し、事故だったという。警察が手を引いた。そしてみんなの前で事件の説明をする。有田のビニールハウスと馬場の工場が荒らされている。犯人は二人の息子だった。バカ息子をとっちめるために洋館に来たが有田が床を踏み抜いた。二人の親が加納に頼み、加納は息子たちのバイクを壊し、教育的指導を施していた。
 小島議員の秘書・酒井が「月下の青」というリトグラフを持ったまま、宗教団体「加田の会」に入会してしまった。リトグラフを取り返してという任務だった。秘書・真木瞳と一緒に行く。
 聖は、真木が指輪を時によってつける指を変えることで酒井が真木が婚約をしたと思い込み宗教団体に入ったと思った。真木が酒井に説明し教主のところに行っている間に、聖は貴重品置き場でリトグラフを探した。八号のリトグラフは二回りも大きな額縁に入って持ち出せない。見付かってしまった。二度と来ないように言い渡され放り出された。
 小島議員は大堂の奥さん沙夜子議員だった。聖はコピーしたリトグラフと交換していた。
 聖は区議会議員の選挙応援に来た。ぱっとしない商店街の振興のために議員を出したいと言う。選挙の手伝いの竹本は奥さんのダイエットのための甘い物禁止に困っていた。聖はカロリー計算や栄養バランスを整える所を商店街で引き受ければ商店街に来る人が増えるのではないかと提案した。出来合いの品だけでなく野菜や肉素材から量と作り方とカロリーを示すとか。老人食、病人食等、八百屋、肉屋、総菜屋、甘味屋などが協力して商店街の売り物にする。空き店舗でアンテナショップを始めることを提案した。
 商店街振興に現実的な手を打てる候補だと話が広がる。聖は当選確実の感触を得た。
 ある日、拓と父親・佐倉謙が朝食を作ってテーブルに並べていた。聖は逃げた。帰ったら謙と拓は出て行ったようであった。
 インターンシップ参加の学生二人の予定を立てて事務所に連絡するように言われる。二人は聖の世話になるのが気に入らない。少なくとも秘書の人に面倒見て欲しいとのたまう。
 政治家に必要な物は何ですか。と聞く。ずばり言い当てたら秘書として推薦してやると言われたそうだ。紙に書いて金庫にしまったという。夜、多田は金庫を明けに来る。聖は金庫を明けてやる。紙にはやーいと言う口が書いてあった。翌日多田はインターンシップを辞めた。東山を見に行くと忙しそうにしているが加納がいない。お眼鏡にかなわなかったようだ。
 聖はいつもの仕事のように対応した。聖は二人の足跡を摑んだ。拓の母親・きみよが入院している病院で父と会った。父は離婚と家庭崩壊と暴力男だという自己不信のため、誰かと暮らすのが怖くなっていた。海外で連絡を受けた謙は聖に預ける事にした。金も送ったという着いてないのか。どこに送ったのやら。拓に会った。出かける時はちゃんとメモを置いて行け。約束しただろうが。
 きみよの葬儀を終え、謙は日本を出立した。謙はフリーのカメラマンで海外の自然や動植物を撮っている。拓は謙の実子でなかった。でも拓は拓で弟だもん。謙と拓は聖に知られたくなかったのだろう。
 大堂が政治家に必要な物は何かと聞く。聖は気力・体力・時の運ついでに腕力と答える。
 長年大堂の秘書を務めてきた小原が都議会選挙に立候補し、当選した。
 聖はずっと堅い就職先を見付けようと思っていたが、拓が成人するまでオヤジのところにいた方がいいのかなと思い始めた。この仕事場は忙しいが結構面白い時もある。と思った。
 

2016年7月27日水曜日

御家人無頼 蹴飛ばし左門 5

御家人無頼 蹴飛ばし左門 5 落下両断 芝村凉也
 三日日左門の借財を肩代わりしたいと札差天秤屋がくる。
元、青砥現、綿貫清十郎の知人旗本寄合席二千七百石島田内記と久々に出会う。相談を持ちかけられるが、詳しく聞けずに帰って行く。島田が足抜けした遊女と自壊したと聞いた清十郎は調べた。三日日に相談する。
 島田は三百石の四男だった。二千七百石の養子になり義母の姪と結婚したが、家族、家来とは会話もなかった。気を許せるのは吉原の中矩屋の振袖新造の露草だけだった。身請けするつもりで半金渡した。天秤屋は島田のことを承知で露草を百両で身請けする。島田は中矩屋の若い衆に誘われ露草を足抜けさせる。追われ居所が知られた二人は相対死する。天秤屋は中矩屋に乗り込み、倍返しを要求する。吉原の田中屋に中矩屋はすぐに乗っ取れると連絡する。島田家はもみ消しに掛かる。必要な金額を天秤屋から借りようとするが、天秤屋は他の店を何件か紹介する。島田家は潰された。借入金の下げ渡しを扱う勘定奉行は天秤屋と繋がりが無い者になった。島田家から返ってくる金額が解らなくなった。
 三日日は 赤鞘組の轡田兵庫に天秤屋に先に手をつけているようだからはやくしろという。
 天秤屋は轡田から二千両要求されていた。今、繋がっているところと赤鞘組とどちらにもお金を出す気になった。両方を利用するつもりだ。
 轡田は百両持って三日日の所に来る。天秤屋には手を出すなという。左門は断わる。
 左門は遁八と天秤屋の外蔵に忍込み、書き付け紙の束や大福帳を積み上げ書類箪笥の引き出しを開けぱなしにする。鍵も掛け直し帰った。夜中、天秤屋の土蔵の中から火が出た。火消しは火が躍り出ることを畏れ蔵の中から煙が出なくなるまで蔵の戸を開けさせなかった。貸付証文や売り掛け証文が灰になり回収は難しくなった。両天秤に掛けたことでどちらからも助けてもらえない。
 轡田から果たし状が届く。左門がいくら考えても負ける予想しかできない相手だ。右腰を斬られたが、左手で脇差しを逆手に抜き上げていた。

2016年7月26日火曜日

つくもがみ貸します

つくもがみ貸します 畠中恵
 深川に姉・紅と弟・清次が営む古道具屋兼損料屋「出雲屋」があった。出雲屋の付喪神はしゃべっている。紅と清次は聞いている。紅と清次がしゃべりかけても答えはしない。
 利休鼠 佐久間勝三郎がまるで本物の鼠のように走り去った鼠の根付けを探して欲しいと頼まれた。養子先の跡取りの持ち物だった。勝三郎の養子先・蜂須賀家の禄高が四百五十石、兄が跡取りの佐久間家は二百石、部屋住みの弟が裕福で地位も高い家の主になることが嫌で友達に盗ませていた。清次は鼠の根付けを蜂須賀家に返す。蜂須賀早苗には元許嫁がいたが、兄の死によって縁談が壊れた。早苗は元許嫁に未練があるようだが、相手はもう結婚していた。勝三郎に早苗さんにきれいだと言ってあげなさい。と言い、家に振り回されているのはあなただけじゃない、早苗さんと二人で背負って行きなさいと忠告する。
 裏葉柳 幽霊が出る料理屋を買った鶴屋は、大久間屋を懲らしめようとしていた。鶴屋は大久間屋に悪い風邪をうつされ家族を亡くしていた。幽霊は大久間屋の子供を妊り追い出された女中だった。開店祝いに日、大久間屋と幽霊と付喪神たちが一部屋に閉じこもった。
 秘色 清次が探している飯田屋佐太郎を探している、佐太郎の縁談相手だった加乃の店・住吉屋の番頭と知り合った。清次は住吉屋の蔵で蘇芳を見付けた。加乃が隠していた。番頭・権平に相談相手になってあげるように言う。
 似せ紫 琥珀の帯締めの付喪神が紅と清次と佐太郎の関係を話す。佐太郎は紅が好きで日本橋「小玉屋」紅の父親の店に来ていた。佐太郎に縁談があった。佐太郎の母親が櫛一つから大金を用意しろと言い置いて帰る。加乃も来る。佐太郎の嫁は私だ。と。蘇芳の香炉は三つあった。紅と清次は櫛を次々と品物を替えていった。小玉屋が火事になり紅の父親が亡くなった。佐太郎が江戸を出ると言い、帰ってくるから待っててくれないかと言い置く。櫛が変化した蘇芳の兄妹「三曜」を出すが、佐太郎は割ってしまった。今から四年前のことだ。
 蘇芳 佐太郎が江戸に帰ったらしい。紅の所へは来ない。三曜の兄妹「七曜」を探していると思った清次は七曜を追って佐太郎を探す。閉じ込められていた佐太郎を見付けた。紅が心配して駆け付け清次と話す。佐太郎の言葉は届かない。佐太郎は大阪に帰った。

 

2016年7月25日月曜日

新・酔いどれ小籐次〈四〉

新・酔いどれ小籐次〈四〉 姉と弟 佐伯泰英
 久慈屋の長屋の差配・新兵衛の孫・駿太郎と姉弟のように育った夕は、父親錺職人・桂三郎の弟子になった。一月に一日望外川荘に泊まることになった。
 駿太郎の実父・須藤平八郎の埋葬場が分かり、小籐次と駿太郎はお参りし墓を建てることにした。駿太郎は墓石屋に修業に通う。自然石の墓石に「縁」と彫り、後ろに赤目駿太郎と彫り込んだ。
 豊後森藩江戸藩邸の剣道指南役だった猪熊大五郎が、下男と女中を人質にして小籐次の命を狙ってきた。猪熊は倒された。
 

2016年7月24日日曜日

北町影同心〈2〉

北町影同心〈2〉 過去からの密命 沖田正午
 音乃と巽丈一郎は北町奉行・榊原忠之の命令を受け、八丁堀を出、霊岸島川口町に住まいを移す。三十俵二人扶持、十手も授かる。音乃には恩賞がつく。
 二人は十二年前の、米問屋が襲われ四人が殺され、大工職人が火盗改めに捕まり、獄死した事件を探ることにした。
 探っている途中、掏摸が捕まった。掏摸は犯人にされた大工に息子と娘だった。二人はは音乃が十四年前、板谷弥一郎に苛められているところを助けた兄妹でもあった。
 音乃は火盗改同心・中岡伝三郎に近づく。同心・寺内が中岡はお役を罷免され出て行ったといい、音乃から話を聞く。寺内は殺された。
 十二年前、火盗改の長官だった井山忠治は、中岡が使っていた盗賊・壁破の勘十郎を使って、十川屋から井山の三百両の借用書を盗ませた。勘十郎は米問屋の権利書を盗んでいた。隠し部屋のからくり鍵を作ったのは、犯人にされた大工だった。
 勘十郎は「十川屋」の米問屋の権利書を細工し、「千州屋」になり店から上がる収益を全て中岡に持っていかれ、井山の懐に入っていた。それを賄賂に井山は現在、目付になっていた。寺内に知られた中岡は寺内を殺していた。千州屋を捕まえた音乃と丈一郎は井山の所に乗り込み逃げられないようにした。井山は切腹した。井山が誰に賄賂を渡していたか明らかにされなかった。

2016年7月23日土曜日

ボーン・コレクター

ボーン・コレクター ジェフリー・ディーヴァー 池田真紀子・訳
 リンカーン・ライム40は三年半前に首、頭部、左の薬指以外は自力で動かせない状態になったため、自殺志願だった。介助してくれる医師・ウィリアム・バーガーを見付けた。
 アメリア・サックス31パトロール警官最後の二時間に生きて埋められた死体を発見する。現場保存のため機関車を止め、十一番街の渋滞の六車線道路を封鎖した。現場鑑識班を監督するIRD(中央科学捜査部)部長・ヴィンス・ペレッティが来て封鎖解除してしまうが、封鎖したことで、後に、ライムが事件を調べる際、鑑識に抜擢される。
 四年前のライムの人生が変わってしまった事故、ライムに鑑識を頼んだジム・ボーリング。鑑識報告書が無くても逮捕できた、地下鉄工事現場が崩落するかもしれないことを知っていた、なのにライムに鑑識を頼み事故が起こり、ライムから仕事も身体も奪った。惨めな生活をし、自殺志願ということも聞いた。自責の念で四年間過ごしていたボーリングが、力を貸して欲しいと捜査協力を要請しにきた。

以後は保存する。

2016年7月22日金曜日

鬼役【18】

鬼役【18】 跡目 坂岡真
 御髪番・杉岡一馬が上様に傷をつけた。杉岡を見た矢背蔵人介は毒を盛られていると気付く。杉岡はすぐに断罪に処せられた。家禄千五百石、役高二千石、三河依頼の旗本で重職の御側御用取次に最も近い人物・御新番頭格奥勤・杉岡一馬の父親・杉岡日向守義知は切腹した。一馬は御小姓頭取・小山田監物七百五十石に嫉まれ苛めを受けていた。控の囲炉裏之間で毒芹を食べさせられていた。一緒にいた勝俣又五郎と赤西平六は蔵人介に片鱗を語り、全てを語る前に殺される。
 日向守を鬱陶しい隣人、清廉すぎる杉岡が御側衆になっては困ると考えた御側衆・伴野若狭守は昇進口利きを餌に御小納戸頭取・澤井采女と小山田を使い、杉岡の失脚を狙い、一馬に毒を盛っていた。三人を倒す。
 長崎からカピタンの一行が来た。命を狙われているというので、カピタンの願いで矢背蔵人介は警護に付く。毒を盛られたが阻止する。カピタンの従者・コンタが殺された。高力房之介の仕業だった。商売の敵、蘭国を邪魔に思う水戸家御用達廻船問屋・広州屋と攘夷を説く水戸学の師範・榊原瑞雲、元水戸藩士・高力房之介を倒す。
 津和野藩御用達・紙問屋高津屋が蔵屋敷に紙を納めたすぐ、蔵屋敷から火が出、小火にもかかわらず、屋根を壊し水を掛けた。大被害にあい、高津屋は身代を潰した。その後、浜田藩御用達・紙問屋石州屋が伸し上がった。火事の采配をしたのが臨時廻り・川尻六左衛門。川尻が繋がっていたのは石州屋。川尻が石州屋を通じて浜田藩へ剣術指南役に推挙したのは田布施左内だった。石州屋と紙奉行・加計三之丞が繋がっていた。加計は刺客を使い出世争いの相手を謀殺していた。川尻も殺された。田布施が自分が殺した遺体の足裏に十字の文字を書く事を知った卯三郎の後輩・益戸寛次郎は実父を殺した浅原克美が、名前を変えていると確信する。卯三郎に助っ人を頼んでいた寛次郎だったが、田布施に出会い挑んで行く。殺されてしまった。蔵人介は情を消し、お役目と思えと卯之助を連れて行く。石州屋、加計、田布施を倒した。
 卯三郎は、斉藤弥九郎の練兵館の十人抜き、加賀藩の池を借りた旗奉行の鎧を着けた立ち泳ぎでの旗振り修業、十里の遠走りにも優勝し、矢背の跡継ぎに決まった。最後に鯛の尾頭付きを半刻以内に二十尾の骨取りを終え、宴が開かれた。
 綾辻市之進・錦、望月宗次郎、猿彦、御小姓組番頭・立花右近、加賀江戸留守居役・津幡内記、幡奉行・押水金吾、佐倉藩御番頭・兵藤帯刀、物見小頭・早見陽次郎、斉藤弥九郎、遠山景元、
 

2016年7月21日木曜日

小籐次青春抄

小籐次青春抄 品川の騒ぎ・野鍛冶 佐伯泰英
 品川の騒ぎ 前に読んでた。
 豊後森藩の厩番の息子・赤目小籐次18らは日当がいい品川の津之國屋の蔵の番をすることになった。小籐次の仲間・品川村腹っぺらし組八人の中に信州松野藩六万石松平家の妾腹の三男・松平保雅19がいた。蔵番というのは曲者で、もともと保雅を殺そうと企てられたものだった。長男には毒が盛られていた。そのことをこの蔵の番をする最中に知ることになった。
 蔵の番は津之國屋の抜け荷の送る為の勾引かしてきた女の番だった。今夜、船に乗せられる女を助ける為と、兄を助けるために隠居している松平の殿様の元側年寄・御岳五郎右衛門に会いに行き、全てを話し、殿様への書状を託す。
 娘を蔵から出されたとき、腹っぺらし組は姿を現し戦う。奉行所がやって来た。娘達を見張っていた者を倒し、七人は逃げる。一人は津之國屋に付くが、津之國屋の手下に殺される。新助が用心棒のお金を持って逃げ、一人五両三分ずつ、みんなで分ける。
 腹っぺらし組は解散、若様も放埒な日々を終える。寺侍・光之丈は雑司ケ谷村の野鍛冶の出戻りの婿になることに決めた。
 野鍛冶 品川の事件から一年余り過ぎていた。野鍛冶の所に婿に入ったが、なかなか腰の定まらない光之丈のところに小籐次は研ぎを教えに行く。
 雑司ケ谷近辺は下高田村のやくざ・馬場の茂蔵に牛耳られそうになっていた。御用聞きの千造と手を組んでいた。鬼子母神の祭礼を仕切る丸池の為右衛門も言いなりになっていた。農具を作っても自由に売れない。光之丈の義妹・みやが勾引かされた。
 鬼子母神の祭りの日、若い野鍛冶たちが茂蔵の家に忍び込む。小籐次が先に入り込み調べていた。用心棒を捕まえ、情報を入れる。蔵には刀等の他、鉄砲、火薬があるという。光之丈は南町奉行山村良旺宛ての手紙を持って行く。おみやや為右衛門の家族を助け出す。火薬を少し持ち出し爆発させる。奉行所の捕り方がきた。みんなで茂蔵を捕まえる。

2016年7月20日水曜日

使の者の事件帖(三)

使の者の事件帖(三) 何れ菖蒲か杜若 誉田龍一
 鹿を指して馬と為す 南町奉行所同心・高松重春が芝居のように見栄をきって捕物をする。三吉と手を組み末蔵一家を潰している。元岡っ引き・五郎八に罪を着せるため、元子分の足の悪い久助は罪を被せられ顔を潰され殺された。高松は女に囲まれている時、お蝶に殺された。倉次と三吉も殺した。
 何れ菖蒲か杜若 錦絵の版元美人三人を選んだ。小結の直が殺された。関脇のまさも殺された。まさは養子に来る人も決まっていた。父親も病気で倒れている。大関の半を狙いに来た虎が殺され、前の二人も虎が殺したことにされた。虎は半と言い交わしていたが旗本がかっさらっていったので、半を憎んでいたが、前の二人は関係無い事を知っている猪三郎たちは調べる。狙いはまさだった。山崎屋の身代を狙う、女将の連れ子の寛太が同心・柳田と瓦版屋・岩吉の手を借りて養子が来る前にまさを殺し、父親にも薬を盛った。おまさを狙うと、寛太のことが分かるので直を先に殺した。岩吉と寛太と柳田を殺した。寛太は抜け荷をしようとしていた形跡があった。
 鵜の真似をする烏 留蔵がお金を借ていた辰次が殺された。芸者の音吉が殺された。三人の真似をしている者がいる。鹿之助は三年ぶりに兄貴・乙松に会った。乙松は鹿之助を狙いに明日丑三つ時に行くという。三対三で戦う。三人を動かしているのは誰か。
 将を射んと欲すれば先ず馬を射よ 村雨が抜け荷を調べさせていた同心・清田健吾が首を射られ殺された。鹿之丞の客の所に来た北七が殺された。庄右衛門の家が付け火に遭った。奉行職を狙う、田辺光二郎と筆頭与力・安居と松平右兵衛政長結びつきを調べる。村雨は三人を連れて仲間になれという誘いに乗り三人を連れて松平の屋敷へ行く。松平の家臣角野を含めて殺す。

2016年7月19日火曜日

使の者の事件帖(二)

使の者の事件帖(二) 口に密あり腹に剣あり 誉田龍一
 口に密あり腹に剣あり 人気の菓子屋が裏で阿片を混ぜた物を作っていた。阿片の被害が大きくならないうちに菓子屋を殺す。どこから阿片を持って来たか。黒羽織はどこの者か、死んだ長崎奉行所同心の役目は。分からないことが多すぎた。
 命あっての物種 岡っ引きの倉蔵と上総屋と旗本の用人が、娘のいる男の借用書を勝手に作り男を辻斬りに殺さ、娘を借金の形に身売りさせる、ようなことを何軒をしている。明日、実行するというので慌てて三人を殺す。裏に三人を操る「三の字」と呼ばれる人がいることは分かっている。
 地獄の沙汰も金次第 米問屋「五島屋」と「島内屋」が米を買い占め値段を釣り上げている。安く売る三池屋が北町に捕まった。村雨が三池屋に会いに行った後、三池屋は牢破りし、殺された。北町の与力・八代泰三と米屋が会っているところで三人を殺した。
 一枚の紙にも裏表 猪三郎が辻斬りを見た。五月女慎五だった。千田が用人をしていた旗本当主が亡くなった。斬ったのは早く当主になりたい養子の五月女慎五だった。唐松屋で阿片漬けにしたのも、辻斬りで身売りさせたのも、米の値段を釣り上げ儲けたのも黒幕は勘定奉行・旗本七千石・横尾典膳だった。長男・大膳、次男・五月女慎五。三人を斬る

使の者の事件帖(一)

使の者の事件帖(一) 女湯に刀掛け 誉田龍一
 幼い頃親と死に別れた猪三郎、鹿之丞、蝶の三人は筒井和泉守に拾われ、家臣・村雨に育てられた。筒井和泉守が南町奉行になり村雨は内与力になった。猪三郎と鹿之丞は萩の湯の留蔵に預けられ、蝶は姿屋の庄右衛門に預けられた。三節棍 くくり ジーファーという武器を使う。
 猪鹿蝶揃い踏み 若旦那に言い寄られている芸者・大吉を助けた猪三郎は若旦那が殺されたため犯人として捕まった。村雨の口利きで放免になった。大吉の手紙を子供に託された猪之吉はつけられる。子供を人質に大吉に言い寄る旗本がいた。子供がいやがり祖母と共に殺される。子供を助けに出向いた大吉は子供が殺されていることを知り、手向かったため殺される。岡っ引き・米六、旗本・平川一之進、旗本の用人を殺した。
 女湯に刀掛け 萩の湯で本所廻り方同心・守本左内が殺された。女湯にはいっている守本を男湯の穴に釣り糸を通し、首に引っかけ殺していた。北町同心・前田和馬が自分の悪事を守本に被せていた。付いている岡っ引きは米六の弟だった。前田と沢七を殺した。
 鬼が出るか蛇が出るか 同心、岡っ引き殺しに火付盗賊改方与力・石橋辰之介が出てきた。裏で操る者がいるようだ。口封じに殺されたのではないかという。殺したのは女だ。ジーファーを手掛かりにお蝶に迫る。猪之介が使いをしている相模屋の息子が十両を借り千両借りたことになっている証文を持って、岡っ引き・勘八が動いている。主と若旦那が殺された。仙次はお蝶が、勘八は猪三郎が殺した。虎松一家へは火盗改めが踏み込んだ。取り方に化けた鹿之助が辰二郎を追うと石橋が袈裟懸けに殺してしまった。
 幽霊の正体見たり 潰したはずの虎松一家の賭場が昼から営業し、やくざの博打の上がりを侍に渡している。鹿之丞も猪三郎も命を狙われる。お蝶は人質にされ、呼び出される。辰二郎は生きていた火盗改めの石橋と組んでいた。石橋と辰二郎は兄弟だった。石橋兄弟を殺した。

2016年7月18日月曜日

つくもがみ、遊ぼうよ

つくもがみ、遊ぼうよ 畠中恵
 古道具屋兼損料屋「出雲屋」の息子・十夜(とおや)10才 
 小間物屋「すおう屋」の息子・市助10才
 料理屋「鶴屋」の娘・こゆり8才  
 三人は赤子の頃から仲間で親友だ。
 三人は、付喪神がいることを話を始める前から承知していた。二人が寝ているところで付喪神はしゃべっていた。出雲屋の清次と紅は付喪神の話を聞いていた。
新しい双六の付喪神「そう六」が入ったことで三人と付喪神が遊ぶようになった。
 深川でまた押し込みがあった。押し込みの前に怪異があるという。付喪神がいる出雲屋に違った雛人形の付喪神が現れた。出雲屋が押し入られるかもしれない。付喪神と子供たちは市助の部屋へ避難し、清次夫婦は鶴屋へ世話になることにした。付喪神は他の付喪神から情報を得、蔵前の札差し「大久屋」の隠居が別宅に雛人形を集めているらしい。猫神が大久屋に捕まった。三人と付喪神は猫神を助けに行く。隠居は騙され、大久屋の別宅は賊の隠れ家にな利用されていた。修験者になり大久屋が探している娘を見付けるということで入り込んでいた。三人が逃げ出し、賊は奉行所の役人に捕まる。雛人形の付喪神は修験者が行くところに付き廻り元の持ち主・沙耶と沙耶が持っていた雛人形を探していた。沙耶はお産の時亡くなっていたことが分かった。
 大久屋の隠居は三人付喪神におやつや遊ぶ玩具を買ってくれる。独楽の付喪神が稲荷でお告げをしていた。稲荷のお供えをかすめ取る騙し屋といわれている賊を同心・北村と南谷が捕まえるように仕組んだ。
 大久屋の甥二人が、三人の命を狙う。跡継ぎのいない大久屋の身代を狙っていた甥は深川の三人の中に、大久屋の子供がいると思った。たまたま家出を考えた付喪神たちは話を聞いてしまう。大久屋に話す。三人の子供たちは隠居が守るように頼んでいた大久屋の手代に助けられる。大久屋は二人の甥を大阪に修業に行かせる。
 大久屋の娘だという兼が見付かった。兼が居なくなった。親戚が兼を娘だと連れてき、大久屋は本当の娘だと思うが、兼には振りをするよう言っていた。お礼に下総の街道沿いに店を持たせて貰えるように言われていた。が兼を殺そうとした。親戚が娘を探そうとする隠居に探すのを止めさせようと打った芝居でった。
 十夜は稲荷に捨てられ、紅が拾って来た子だということがわかった。
 

2016年7月17日日曜日

万願堂黄表紙事件帖〈一〉 

万願堂黄表紙事件帖〈一〉 悪女と悪党 稲葉稔
久平次25才 戯作者目指して読み本の原稿を万願堂に持ち込む。
歌川百芳 薬種問屋荒木屋の道楽息子 本名は才吉
 久平次は村田小左衛門が神奈川宿のやくざの娘・美沙を勾引かし、二百両を手にしたが、手助けしてくれた沼尻の八十五郎に斬られ、美沙も二百両も持ち逃げされることから始まる物語を書く。
 八十五郎は品川へ行く。品川には自分の店があるが、牛飼いの茂吉に追われ江戸深川に逃げる。美沙は二百両を取り返すべく八十五郎に付いて廻る。村田小左衛門も八十五郎を追う。小左衛門を助けた娘・まきも小左衛門と一緒に行動する。小左衛門は品川で三蔵に助けられ、共に深川に行く。深川で待っていたのは三蔵の借金だった。借金百両の形にまきを取られる。美沙が八十五郎に毒を盛り苦しがっている八十五郎から二百両を取り逃げた。美沙を見付けた小左衛門は二百両を取り返した。小左衛門は百両を隠し、借金を払い、まきを取り返す。小左衛門はまきの働き口を決める。八十五郎と美沙と出会した小左衛門は八十五郎を斬り、美沙を斬るが咽を切られた。まきに百両の隠し場所を告げ重い瞼を閉じた。
 久平次は二月かけて書き上げた。青空虚無斎の名で売り出すことになった。

2016年7月16日土曜日

風烈廻り与力・青柳剣一郎 30 31

風烈廻り与力・青柳剣一郎 30 31 真の雨 上 下 小杉健治
彦崎藩主・戸沢隆興は寺社奉行を目指す。多額の賄賂が必要な為、藩内の茶と椎茸の栽培に財政再建の期待をかける者たちは反対する。江戸家老・大藤主水も反対ではあるが藩主を説得出来ない。藩主を支持する。国許から主水暗殺の刺客が放たれ、青柳剣一郎は老中・相田肥後守からの要請で主水を警護することになった。主水が襲われ、江戸藩邸、下屋敷にも反隆興派の内通者が判明諌めることで治まったと思えた。
 主水は江戸御用商人「片倉屋」ではなく自分の知人の「吾妻屋」と「秋田屋」にお金を借りるつもりだった。彦崎藩の産物の一手御用を狙う片倉屋は殺し屋を雇い吾妻屋と秋田屋を事故、病死に見せかけ殺す。片倉屋から借りるしかなくなる。主水は老中・相田の口利きで後妻を娶る話も浮上する。片倉屋と相田は繋がっていた。隆興が寺社奉行になったところで、戸沢家は片倉屋や肥後守の餌食になってしまうことを憂いた主水は、狙われていることが分かっているにも関われず、剣一郎の警護を断わる。殺し屋に狙われたのを期に腹心・山部保之介に殺すよう命令する。殺し屋に殺されたことになっている。
 主水が亡くなり、隆興は猟官を諦めた。山部保之介は主水の墓前で切腹した。
 主水の屋敷の女中・たみの行方不明の夫・新助が帰って来た。新助が江戸を逃げた原因になった男が川に落ちて死んだ。剣一郎が調べを要請した岡っ引きも川にはまって死んだ。青柳剣一郎は片倉屋が雇った殺し屋を追っていた。新助が殺し屋の一味ではないかと疑う。過去の事故、病死に見せかけた不信死を洗う。殺し屋の親方・甚八は新助を殺そうとする。捕まった新助は剣一郎に協力する。甚八は次々と仲間を殺す。甚八は獄門になった。過去、甚八に殺しを頼んだ者も島送りになった。新助も事件解決に協力したことで罪を減じられ島送りになった。

2016年7月15日金曜日

風烈廻り与力・青柳剣一郎24

風烈廻り与力・青柳剣一郎24 白牙 小杉健治
蝋燭問屋の主・太兵衛が殺され、腹違いの弟だと分かって一年余りしか経っていない忠助が捕らわれる。忠助と出会ったと証言した大工は証言を翻し不審死を遂げる。忠助は否認しないが吟味与力・橋本左門は慎重になる。相談された青柳剣一郎は奉行の許可を得、忠助は処刑された事にして牢から出し、犯人探しの捜査の手助けをさせる。
 主の妾も殺されて床下に埋められていた。忠助を犯人にするために人が動いていた。
 犯人は元旗本・高月杢太郎だった。杢太郎は三年前、西丸書院番士の同僚・室田荘四郎の妻・美津を我が者にしようと室田を斬った。美津の連れ去りを青柳剣一郎に邪魔され、江戸を離れた。箱根で自決している杢太郎が白骨で見付かっていた。が、それは杢太郎ではなく杢太郎が殺し、自分の持ち物を持たせた相良藩の武士だった。太兵衛は美津を奪いに帰って来た杢太郎に出会った。太兵衛は杢太郎を西の番から白虎と呼んだ。昔からの知り合いだった。太兵衛は商売敵・佐太郎が仕事を出来なくなる位の怪我を負わせる事を頼んだ。太兵衛が邪魔な杢太郎は太兵衛を殺し、太兵衛の日記を探したが見付からないので、火を付けていた。忠助が犯人にされるよう、太兵衛の女将や番頭も身方にに、侵入しやすくし、不利な証言もさせたていた。青柳剣一郎の名で美津を呼び出したところ剣之助が阻止し、杢太郎は捕まった。
 何も分からない忠助が店を継いだため、剣一郎は佐太郎を番頭に推薦する。忠助は佐太郎に頼む。
 相良藩の藤瀬浩太郎は藩の金五十両を持って逐電したとして、藤瀬家は断絶家族の身はお預けになっていた。藤瀬家を再興することになった。と連絡があった。

2016年7月14日木曜日

ウォッチメーカー

ウォッチメーカー ジェフリー・ディーヴァー 訳・池田真紀子
 犯行場所に時計が置いてある事件が起こる。岸壁に吊るされて殺されたのだろうと思われる事件。遺体は見付かっていない。川に流れたのだろう。首を重いバーで押しつぶされた事件。次の標的になった花屋の女性、次の標的になった賞状を受ける女性軍人は未然に防いだ。目撃者になり、キャサリンを連れ込もうとしたウォッチメーカーの相棒・ヴィンセントが捕まった。ウォッチメーカーを名乗るのはダンカン。ダンカンも未遂に終わった第五の事件の現場検証時に捕まった。
 アメリアは 自殺を装った首吊り事件を捜査していた。亡くなったクリーリー56は親指を骨折し右手がギブスで固定されておりロープを固く結ぶのは不可能だった。殺人事件として調べて行くと証拠書類とコカインを燃やした痕跡が見付かった。第百十八分署の警察官との接点も危惧された。もう一件事故で処理された案件も見付かった。その事件の捜査資料は行方不明になっていた。・・・・。

長いあらすじを書いた。これは公開しない方が良いようなので、後の部分は保存ページに入れる。

2016年7月13日水曜日

剣客船頭(十四)

剣客船頭(十四) 別れの川 稲葉稔
 船頭・沢村伝次郎は川政の船頭・左久次が本当に事故死か調べる。一緒に釣りに行った松倉屋伊右衛門も不信な亡くなり方をした。二人が行ったと思われる釣り場で埋めた死体を見付ける。松倉屋に関わりのある大名、旗本を調べ、船を借りた者を調べる。
 雨宮文蔵は板尾藤左衛門のところに、仕官の取り持ちを願いに行っていた。自分が行けない時は石倉荘助、木之内新兵衛、須山重蔵の三人に行って貰った。彼らは相当のお金を懐に入れ、高級菓子を買って持って行っていた。それを知った滝下精三郎は殺された。その場を伊右衛門と左久次に見られたと思い二人を殺したのだった。
木之内は死んだが二人を捕まえ、雨宮家に行く。この者たちのやったことを誰にもしゃべらないことを約束し、三百両を要求した。百五十両を左久次の奥さんと子供に。後、百五十両を滝下の妻に渡すことにした。

浮世絵宗次日月抄2

浮世絵宗次日月抄2 冗談じゃねえや 門田泰明
 お待ちなせえ 殺され、内蔵を取り出す辻斬りが出た。北町奉行所市中取り締まり方筆頭同心飯田次五郎も襲われる。平造が通りかかり虫の息で生きている。紫伊之介一座の千夜万之介と一夜時次郎をつけ、竹矢来で封鎖された屋敷に行く。仏壇の前で白装束男女の白骨。血文字の怨と書かれた掛け軸。隣の部屋には血文字の怨の逆さ屏風敷かれた寝床の真中に置かれた黒い塊。黒い塊を持ち帰る。黒い塊は腑体だった。七、八年前の勘定奉行の巨額不正事件を突き止め老中に報告した勘定奉行添役・半多万次郎が逆に蟄居閉門、切腹になった屋敷だった。宗次は人を殺した兄・千夜万之介を倒し、一時時次郎を助けた。女・千世だった。
 知らねえよ 五才で長く生きられないと言われた息子・宗次の絵を描いて欲しいと頼まれる。
絵の代金・三百五十両で心臓の薬を買い、母親・ことぎに渡しその子に飲ませる。津留澤家には何千両の値打ちのある掛け軸があったが盗まれていた。裏流しの骨董屋をあたるが見付からなかった。ことぎが夫の暴力にあっている事を知り、生家に戻す。隠密お調べ方筆頭を名乗り、ことぎと離縁することで切腹を免れる。と言い放つ。
 長屋の肢体不自由な幼子に手押し車と五両が暗闇小僧から送られた。宗次が行きつけの『兆助』の主・吾助が暗闇小僧と睨んだ宗次は、知らない体で、又聞きの話として聖徳太子の掛け軸を返せば子供が助かることを話す。
 冗談じゃねえよ 宗次の絵を買ってくれる清水屋の玄三郎も三嶋屋も加倉屋多左衛門の様子がおかしい。清水屋と加倉屋では大金が失われている。
 桑津藩芳澤伊豆守直正より、上様が来られる部屋の絵を描くことを頼まれた。また、目黒に出没する辻斬りが自分の子かも知れない。和泉守藤原兼定を頂戴し、辻斬りを倒して欲しいと頼まれる。宗次は手傷を負うが辻斬りは倒した。
 清水屋たちは義賊「炎の鳥」集団だった。その用心棒が辻斬りだった。三人であいつを殺そうと相談していた。もう桑津藩目黒下屋敷の野郎は無害だから放っておきなさい。と忠告する。

2016年7月12日火曜日

燦〈7〉

燦〈7〉 天の刃 あさのあつこ
 燦は神波の末裔という者に裏切り者と言われ襲われる。輿次が三人を倒す。輿次に篠音が三人に犯され女郎屋に売られたことを聞く。篠音は燦に会うと死んでしまう畏れがある。燦は伊月に女郎屋に手紙を持って行って貰う。
 篠音はどうにか伊月に会い手紙を読む。やっと燦に会う気になってくれた篠音だったが篠音は常陸屋が三百両で身請けする商談が出来ていた。
 城内で圭寿と燦が襲われる。銃口が向けられていた。銃声がこだました。

あきない世傳金と銀

あきない世傳金と銀 源流篇 高田郁
享保十七年 1732年 雅由18才 幸8才 結5
 幸 武庫郡津門村に生まれる。兄・雅由。妹・結。父は学者だったが、幸10才の時亡くなり、大阪の「五鈴屋」の女衆として奉公する。
 治兵衛 五鈴屋の番頭。幸の商才を見抜き、商いについて教える。
 富久 五鈴屋の先代の母親。三人の孫を育て、店を守ってきた。
 四代目徳兵衛 富久の初孫、現当主。船場の小間物商・紅屋多聞の末娘・菊栄17と結婚するが、三年で離婚する。
  惣次 徳兵衛の次弟。商才に富む。徳兵衛と仲が悪い。
 智臓 徳兵衛の末弟。読書家。菊栄に好きな本を自分で書いてみればと言われる。家を出て生活している。

2016年7月11日月曜日

麹町常楽庵月並の記2

麹町常楽庵月並の記2 縁は異なもの 松井今朝子
小田切と庵主は幼馴染みだった。年頃のころ久しぶりに会って、小生意気になった志乃に縁組みを申し入れるつもりだった。小田切がぐずぐずしているうちに建部伊織に先を越された。西の丸御書院番三番組の同僚だった。伊織と友達になって志乃の顔を見に行った。お腹が膨らみはじめていた。小田切が苛めにあった。一年、堪忍に堪忍で乗り切った。玩具に飽きたように伊織が標的になった。興津勘解由が悪だった。小田切の時よりも酷い仕打ちだった。年の暮れ狩り場で鞍ごと落馬し、川の流れに落ち、ずぶ濡れで何里もの道を歩き帰り着いて高熱を出し亡くなった。二才の子供も亡くなった。全てを打ち明けた。もっと早く教えて欲しかったと言われた。離縁になり大奥じへ上がった。合わせる顔がない。
 宝の持ち腐れ 吉野屋十右衛門は行成の書軸を庵主に持っていて欲しくて、信濃屋に打った書軸を預かり、箱のなかに火箸を入れて返した。明けた信濃屋は五十両の物が無くなったと大騒ぎになった。信濃屋の娘・くみは庵主に失せ物探しを頼む。兄が疑われている。信濃屋と仁八郎は庵主に呼ばれ行ってみると箱に行成の書軸が入っていた。仁八郎は話を聞くが、教えて貰えず怒って帰った。吉野屋が置いて行った行成の書軸を信濃屋の箱に入れただけだった。
 心の仇 柏屋伊三郎が命を狙われているようだ。言いに来る。あくる日、伊三郎は首つり状態で見付かる。自殺だったが、殺されたように細工するように言って亡くなった。番頭が養子に入る物と思われて居たところに先代の内儀の親戚筋から養子に入った伊三郎は馴染めなかった。先代の内儀がなくなり疎外感が強まった。自殺を見付けた里から付いてきた手代・駒臓が踏み台を片づけていた。仁八郎は自殺とし、駒臓のことに触れなかった。
 塗り替えた器 若い女を突き飛ばし、髪を切る事件が多発した。分六は自称経師職の富蔵が犯人だと追っていた。仁八郎はきしが言っていた、日野屋のつね16を付け回している男を追っていた。捕まえた彦次郎は人形師だった。つねの母親が若い時に関係を持ち出来たのがつねだった。彦次郎は子供がいることは知らなかった。祝言を挙げることが決まって教えてもらい人形の顔を娘の顔に似せようと見ていた。母親は自分の二の舞えにならないよう早く結婚させることを考えていた。嫁入り支度をする段になり母子が打ち解けたようだ。きしとつねは彦次郎のことを、雛人形を頼んだ人形師だと話した。
 縁は異なもの 仁八郎は妻もいないし定まった相手もいないと小田切に話した。家に妻子が居れば、男は嫌の役目も我慢できる、と言う。
 年明け、きし20の幼馴染みとの縁談が整った。嫁にするならきしをと待ってくれた人だった。が、但馬屋久五郎が死んだ。仁八郎に久五郎がどんな目に遭わされたか詳しく知りたいと聞く。同僚の筧兵十郎に聞く。惨殺され運ばれて川に遺棄されていた。息のあるうちに試し斬りをされていた。
 女郎が突然乱心して相手を殺す事件が起こった。死んだのは始めての客・上総屋喜右衛門だった。連れてきたのは若様と呼ばれる、菅沼某だった。上総屋は小普請奉行に言われ不正を働いていた。辞めると言い行きこのようなことになった。小普請奉行は興津勘解由だった。菅沼某は七百石の旗本本丸御書院番御番組・菅沼源之丞と判明。
 きしは久五郎のことを調べた。侍に阿芙蓉を渡され、薬を作っていた。
 仁八郎は常楽庵で淺右衛門の話を聞く。生ある者の試し斬り、生きながら胴を真一文字に裂かれた男が断腸の苦しみでのたうち回る。見るに見かねて脇差しで留めを刺し瞼をふさいだ。自責の念で胸にのしかかる、という。久五郎殺しだった。菅沼源之丞。興津勘解由の次男が菅沼家に養子に入っていた。
 全てを聞いた庵主・志乃は正三郎様参る 志乃よりの手紙を仁八郎に託す。小田切は手紙を読んで常楽庵へ行く。きしも呼ばれた。
 梅雨明け間近、興津勘解由は小普請奉行を罷免、閉門、永蟄居。菅沼源之丞は切腹。
小田切は仁八郎に、我慢出来ぬか、困ったのう、早く妻女を迎えるがよい、という。

麹町常楽庵月並の記

麹町常楽庵月並の記 老いの入舞い 松井今朝子
舞手が退場する寸前にもう一度舞台の真ん中で華やかに舞って見せるのが入舞い。それゆえ年寄りが最後に花を咲かせる姿は、老いの入舞いと呼ばれたりする
 見習いから本勤並定町廻り同心に昇格した間宮仁八郎24才は、北町奉行・小田切土佐守直年じきじきの仰せだと、麹町の常楽庵に月に一、二度立ち寄るように内与力・近藤に言われた。常楽庵には白河候松平越中守定信に楯突いて大奥勤めを引いた庵主・滝山・志乃が、女中・梅の井(梅饅頭)とゆい(熊女)と三人で暮らしていた。町娘が行儀作法を習いに訪れる。仁八郎はお気に入りになった。隣の山田淺右衛門も出入りしている。
 巳待ちの春 若い娘・平野屋の祝言を控えた娘・ちせが居なくなり三百両を要求された。弁天さまに三百両を供えると庵主が八卦で但馬屋の寮を訪ねてみやれ、と言う。ちせは但馬屋の娘・きしと一緒にいた。ちせは幼い頃、男に襲われそうになったことがあった。何とか逃げ出していた。縁談の相手がその男だった。ちせときしは三百両を親から取り上げて先方に戻し、破談にしようとしていた。庵主は平野屋を呼び、三百両で娘の命を救おうと思うのなら、祝言を取りやめ三百両を先方に返せば良い。と言う。全てを聞いた仁八郎は憤然と退室した。小田切に質問攻めにされ全て報告することなった。
 妖火の始末 袋物問屋嘉村屋の離れを焼き、主人・惣兵衛が亡くなった。仁八郎は押し入れの床下で鮑の貝殻を見付けるが付け火の証拠とはならなかった。娘・りつは付け火だという。継母・さいと番頭の仕業だという。庵主は大奥で消し炭を鮑の貝殻に入れ布団の入った押し入れに入れおき起こった火事騒ぎの話をする。さいの養母は大奥勤めをしていた。庵主は麹町の町名主・矢部与兵衛を呼び、さいと番頭を不義密通で処罰され、矢部を後見にりつを手代幸助と店を継がすということにした。仁八郎は納得して退室した。
 母親気質 水茶屋の看板娘・いねが、常楽庵の近くで死んでいるのが見付かった。妊娠していた。文六は遊んで暮らす伊八を疑い、仁八郎は船越屋の徳三郎を怪しいと思っていた。徳三郎は両替屋の娘との縁談が整い、妹・たえは母親が大急ぎで縁談を整えようとするのに腹を立てていた。いねは徳三郎を手紙で呼び出していた。いねのお腹に徳三郎の子ができたという手紙を見、母親が会いに行った。突き飛ばした拍子に石で頭を打って亡くなったのだった。母親が娘の縁談を急いだのは事が露顕する前に嫁がせたかったからだろう。それが判った庵主はたえの母親を呼び、殺そうとしたのでは無いことは分かってもらえるからと自主するように進めた。母親は一死を以てお詫びの言葉を残し川に飛び込んでなくなった。委細は庵主さまに・・・。仁八郎は庵主に話を聞く。母親がなくなったから、これ以上は問い質さずこの話も伏せたままが良かろう、という。表沙汰にしたところで死んだ者は生き返らない、得をする者は誰もいない。お身の胸一つに納めておけという。損得の話では無い。死んだ娘にも親はいる。怒って帰る。仁八郎は腹立たしい。初手の検使で調べを怠っていたせいだ。
 老いの入舞い 名主・岡村伝兵衛の篠井備前守のお屋敷から宿下がりの予定の娘が家に帰るまでに殺されて見付かった。仁八郎は大名家のことなので調べにくい。篠井家は奥が奥方派と御袋様派に別れていること、今殿様は国許にいることが分かった。きしは山田淺右衛門の妹と偽り篠井家に女中として入り込んだ。後半年で年季があける女郎と侍が相対死しているのが見付かった。侍は篠井家の留守居役・加納と言う事が分かった。相対死に装わされた。岡っ引きの源蔵が篠井家の中間になって入り込んだが、見張りがきつくなり入り込みを辞めた。危険を察知し山田はきしを連れ帰った。きしは三通の手紙を出したはずが、二通は届いたが三通目は届いていなかった。庵主は仁八郎を呼んだ。きしを家に帰さず常楽庵に泊めた。夜、侍に襲われた。三人で血まみれになりきしを護る。仁八郎は訳がわからない。お互い何も話していなかった。今回も常楽庵が関わり、きしが騒動の火付け役だった。奉行が手を打って下さるでしょうというと、庵主はあのお人は愚図なゆえ埒が明くまいという。篠井家の江戸家老・匂坂主水が奥御殿の男子禁制の酒宴に顔を出し女中に手を出し逃げられて刀を抜いた。諌めた留守居役を殺した。志乃は大奥で仕えた願誠院を訪ね耳に入れた。
 常楽庵の畳や襖が新しくなった。仁八郎は篠井の江戸家老が国許へ召喚されたことを聞いた。切腹になるだろう。始めうれしそうで、だんだん面白くなさそうで最後は腹を立てて帰った。自分が何も出来なくて悔しかったのだろう。志乃は亡き夫とよく似ていると思う。

2016年7月10日日曜日

鎌倉河岸捕物控〈二十八の巻〉 

鎌倉河岸捕物控〈二十八の巻〉 吉原詣で 佐伯泰英
 金座裏の宗五郎、八百亀、酒問屋豊島屋の隠居・清蔵、呉服屋松坂屋の隠居・松六が吉原へ行った帰り、浪人の強盗に出会した。模倣犯だった。
 若親分・政治、船頭・彦四郎、独楽鼠の亮吉等で三人組の浪人の強盗を捕まえる。百八十両もの大金を隠し持っていた。夜、大番屋の仮牢から二人のうち一人が仲間と同心と小者を殺して逃げた。逃げた浪人も何者かに殺され見付かった。調べの途中、佃島の安治川糸右衛門一族が船問屋・阿波屋に乗っ取られ、阿波屋のしたい放題になっていることを知る。浪人の強盗も阿波屋がやらしていた。阿波屋の地下蔵に若い娘が閉じ込められていることも判る。用意をし夜、阿波屋と千石船を取り押さえた。
 宗五郎の昔の仲間、宗五郎を嫉妬し憎んでいた猪飼兼道が小町屋兼三と名乗り江戸に現れた。安永七年、二十五年前、兼道19才の時、押し込みで捕まり島送りの途中海に飛び込み逃げていた。奈良や京の寺社仏閣から盗んだ仏像、仏画を骨董商・山城屋で売るつもりだった。捕まった。
 豊島屋の主・十右衛門には京の織り元の娘と文のやり取りがある事がわかった。松坂屋の松六が早速手紙を出す。

2016年7月9日土曜日

とびきり屋見立て帖3

とびきり屋見立て帖3 赤絵そうめん 山本兼一
 赤絵そうめん 坂本龍馬が赤絵を欲しがっている人がいると廻船問屋・三国屋を教えてくれる。とびきり屋の赤絵は唐子が泣いていたため気に入って貰えなかった。銅屋の万暦赤絵が五十売りに出されるらしい。真之介は買いたいが、からふね屋善右衛門と大雲堂孝右衛門が裏で手を結び最高値を決めている。赤絵を欲しがっている三国屋と銅屋を会わす。三国屋は目の病気で食が進まない娘に赤絵の器でそうめんを食べさせたかった。真之介とゆずも一緒に贅沢なそうめんを食べた。
 しょんべん吉左衛門 真之介は銅屋の万暦赤絵を買うために千両を集めた。京焼の雉の香炉以外は殆ど売っている。店の沽券を抵当に金を借りた。現物を見ずに金をだしてくれる道具屋が何人もいた。三国屋が銅屋に買いに行った。銅屋は売ってくれなかった。道具屋の安値で買いたたこうとすることが気に入らなかった。真之介は売り立てをすることにした。二千両以上になる。二千両に足らなかったら真之介が埋め合わせをするという。銅屋の寮で赤絵の鉢を五十鉢、美しく見えるように展示して順番に入れ札で売り立てた。二千八百三十七両になった。真之介は礼金百両受け取った。
 からこ夢幻 ゆずは唐子が泣いている夢を見た。
空っぽになった店に風炉先屏風を巡らせ風炉をすえ釜をかけ茶席にした。唐子が描いてある徳利に花を生ける。番頭、手代、丁稚、女子衆と茶を習う。芹沢鴨が前に店にあった唐子が泣いている赤絵を持ってくる。蓋がついて茶道具の水差しになっていた。茶道の若宗匠が店に来る。元ゆずの許嫁になりそうだった人だ。水差しを「泣き唐子」と言った。からふね屋善右衛門が来る。ゆずの父親だ。泣き唐子と名付けたのは善右衛門だった。泣き唐子が好きな天狗堂の主人の事を教えてくれる。ゆずと真之介と二人で行く。主人は亡くなっていた。息子は父親の集めた物を売ろうとしていた。真之介は朝、泣いている唐子の夢を見たので二割高く付けた。という。赤絵も染め付けも唐銅や磁器の置き物も掛け軸も仙人と唐子の図柄だった。他に人魚の木乃伊、猿の骸骨、蛇の骨など全てを引き取った。
 笑う髑髏 天狗堂から買い付けた皿や壺を飾ると赤絵の店になった。近藤勇が来る。髑髏の掛け軸を買う。祇園社で相撲興行をする横で、手代と丁稚が人魚や髑髏の見世物小屋をすることになった。見世物小屋へ若宗匠が来て、天狗堂の親父が亡くなったら親父さんが集めた珍品の数々すっくり譲り受けることになっていたという。相撲興行が終わったあと珍品は若宗匠の元に運ばれた。真之介は笑っているようにみえる髑髏の根付けを一つ持っていた。
 うつろ花 真之介とゆずは銅屋の一番蔵の茶道具の書き上げを頼まれた。百両貰った時に百一両あったため一両返していた。試されたようだ。少しずつ箱書きと中身を確かめ書いて行く。借用書が入った箱があった。若宗匠が三年前に持ち出したままになっていた。若宗匠はゆずが茶事をすることになった。最後の御薄を外花で飲むことになっていたが、片づけて外花を持って帰ってきた。
 虹の橋 西本願寺別邸の翠紅館の離れで桂小五郎に頼まれ、三条実美の接待をすることんなった。会議の休憩のときにこの部屋を使う。夕立後、虹が出ると言って、用意する。

2016年7月8日金曜日

忘却探偵シリーズ6

忘却探偵シリーズ6 掟上今日子の婚姻届 西尾維新
隠舘厄介が囲井都市子からインタビューを受ける。終わってから自分のつき合った人は破滅する。結婚して欲しい。と言われる。
 隠舘は掟上今日子に、囲井さんのつき合った相手六人と囲井について身辺調査を頼む。
幼稚園時に事故に遭った初恋の君は結婚して元気に暮らしている。
小学校時の飛び降り自殺については現在も話し合い中
高校のサッカー部の先輩はその時は怪我で試合出場辞退だったが現在プロのクラブチームでプレイしている。
大学時の彼は大学を辞め、自分探しを始め、現在NGOに参加している。
会社員時の彼は会社を自主退職。複数の女子社員と関係を持ち自業自得。
現職場に移ってからの青年実業家はその時の会社は潰してしまったが、同業の新たな会社を立ち上げようとしている。
今日子さんは、厄介がお断わりをするつもりで調べてもらったと言う言葉にびっくりした。
深夜に今日子さんが厄介の部屋に来る。今日の調べが完璧じゃなかったと言い、一旦寝てからもう一度考え直すという。
明くる日、今日子さんの結論は小学校時の飛び降りの原因がもしかして囲井さんの一言とか態度だったと考えているのかもしれないということになった。
囲井さんに話す。囲井さんははなれて行った。

2016年7月7日木曜日

蔵前片思い小町日記

蔵前片思い小町日記 めぐり逢ふまで 浮穴みみ
まきは今年二十三になった。蔵前の札差し・伊勢屋宗助の娘。まきが産まれて実母あさひが亡くなり三年後みちが後妻にきた。宗太郎とあや15が産まれた。
 おまきは七才のとき、袋に入れられ勾引かされそうになった。途中袋からだされ助けられ抱かれて家の近所まで運んでくれた人が居た。残ったのは芥子玉絞りの手拭いと男の腕の逞しさ檜の様なさわやか香り、まばゆい微笑、十七、八の大人の記憶。もう一度会いたい。淡い初恋は、まきの光る君になった。結納を交わすところまで行ったことが二度あった。二人とも急死した。蔵前小町は祟られている。蔵前嫁き遅れ小町。
 若い医者順庵が先生の年上の娘・久をさらって上方に行く決心をさせる。
 菓子屋うさぎやのおかみ・おくま、絵の師・柳扇との恋は諦めなくてはならないかもしれないが、絵を描くことまで諦める必要は無いことを説く。書画会に出品された紅柳の作品、柳扇の作、二幅の夏一夜、川端の柳と花火。紅柳は恋が実らなくても描き続ける。
 幼馴染みの助兄が帰って来た。松平定信の改革で札差しが打撃を受けた。十年経ってから株を売った若松屋、一家離散だった。借金を返し、株が買えると帰って来た助五郎だったが、金を騙し取られた。まきと丈二のお節介で昔の許嫁の縁談を壊して一緒になることになった。
 助五郎が昔から丈二はまきが好きだったことを言う。知らない、気がついていないのはまきだけだった。
 打算的な結婚を望んでいたあやが恋をした。丈二の片倉屋で借金を重ねている、小普請の次男・柴田新九郎20才以下だった。母親は三味線の師匠で新九郎も玄人はだし。あやも三味線を弾く。二人は死ぬ気で駆け落ちするが、まきに見付けられ、母親の下に行く。母親は夫婦養子があるかも、という。
 丈二はずっとまきが好きだったという。嫁にするならおまえしかいないと思っていた。俺はおまえの「この人だ」と思える相手じゃないんだな。縁談がある。俺は身を固める。という。
 実母あさひの姉・とよの紹介で屋敷奉公に行く予定だったあやの代わりにまきが行った。とよは代わりはいらないから帰るように言う。まきは庭で迷子になり別邸で光の君を見、倒れた。当代藩主の妹の息子・榊新之丞だった。まきは夜、別邸に忍んでゆく。新之丞は女誑しだった。まきは逃げる。兄が出てきて助けてくれた。この人だ。まきは十六年前の助けられた話をする。豊野の姪だという。七つの時からお慕い申しておりました。お別れするのはいや。どこにも行かないでと叫ぶ。また話をしよう。榊篠生(しのぶ)だった。別邸の名は真木舎という。昔、殿様の弟・永次郎様が住んでいたところ。宗助が迎えに来てまきは家に返された。宗助はまきの御殿勤めは反対だった。
 両国広小路の料理屋へまきは篠生に呼び出された。十六年前、打ち壊しの指示を出した。処罰された者もいた。何の処罰も受けず私は卑怯者だと告白する。まきが永次郎に似ているという。豊野と永次郎の子ではないかと。まきは宗助に聞く。あさひととよは同じ頃妊った。あさひは流産した。豊野は里子に出すというからあさひの子として育てた。
 まきは奥奉公に行くことになった。篠生が是非にという。私はおとっつあんの娘だといいながら御殿に上がる。
 

2016年7月6日水曜日

若さま十兵衛 天下無双の居候4

若さま十兵衛 天下無双の居候4 御前試合 早見俊
 若い娘が殺され、お腹を切り裂かれる事件が三件起こった。三人とも信濃諏訪藩主・福山石見守義里の屋敷奉公を終えた者たちだった。義里の妻・鶴姫は駿河大納言忠長の養女だった。忠長が御前試合を催すというので推挙願いに行く。鶴姫と共に大納言家から供侍として入り、剣術指南役をしている河野新十郎と手合わせする。十兵衛は三人の娘を斬ったのは新十郎だと思う。もう一人辞めた女中がいた。福山家勘定吟味役三百石の鈴鹿籐三郎の娘・君江だった。千両の使途不明金のため河野を糾弾仕様としたやさき、鈴鹿は無実の罪を着せられ娘も一緒にお役御免にされていた。鶴姫は石見守の身の回りのお世話そしていた女中に悋気を起こし、順に殺して子供がいないか見たようだ。君江が狙われた時、籐三郎と十兵衛が守り、十兵衛は新十郎を倒した。
 従三位権中納言八坂小路基経卿が江戸見物のため堅苦しい接待を抜け出して十兵衛の所に来る。浅草で唐人服で力自慢の大道芸を見た。基経が睨み、虎を大人しくさせた。鬼一法眼が開いた、鞍馬流法眼流を使う。
 平戸屋が襲われ、店の者と奉行所の捕り方が殺された。大道芸をしていた者が犯人だった。平戸屋は海賊団「蛇牙」に加担していた。隠してあった略奪品を略奪してきていた。海賊一味が復讐と略奪品の奪還にやってきたのだった。平戸屋の手代・善次郎が一人生き残った証言だった。基経と十兵衛で海賊一味を片づけた。基経は善次郎を殺した。
 助蔵が風吉爺さんと出会う。宮本武蔵に敗れた吉岡憲法・清十郎だった。遅れて来て後ろから狙うという卑怯な手に負けても負けは負けと剣を捨て欲を捨てた自然な剣になっていた。宮本武蔵が剣道指導をしている明石藩小笠原の家来・飯尾源之進が清十郎を倒そうと挑んで来る。飯尾は敗れた。
 家光と十兵衛の父・宗矩がお忍びで富士見湯の二階にやってきた。忠長の御前試合に出て、忠長の様子を探って来いという。家光と手合わせをしているのを巴が見て、家光に基本が出来ていないと指導した。将軍とは知らない。
 御前試合に出るために東海道を下る。忠長の側室・麻衣の方を護ることになった。真剣の部は柳生十兵衛が優勝し、木刀の部では鈴鹿籐三郎が優勝した。
 終わる寸前、柳生但馬が馬で乗りつけ、駿府城下に逃げてきた盗賊たちの捕縛の助勢を頼みに来た。遠藤出羽守雅盛が、盗賊たちを出場者に見せかけ道中手形を発行し江戸から逃す代わりに、盗んだ金子と財宝の半分を自分の物にしようとした。旅の途中やたら出場者が多かったのと麻衣の方も盗賊だった。麻衣の方と言う側室はいなかった。
 

2016年7月5日火曜日

大江戸科学捜査八丁堀のおゆう2

大江戸科学捜査八丁堀のおゆう2 両国橋のご落胤 山本巧次
 江戸と現在で二重生活をおくるもとOL 関口優佳=おゆうは小間物問屋の主人から息子が実の子か調べて欲しいと相談を受ける。産婆のおこうから脅迫まがいの手紙が届いていた。おゆうはDNA鑑定で実の親子と判明していたが、それを証拠に出来ない。
 同心の鵜飼伝三郎は、大名のご落胤について調べていた。大名には将軍家から養子を貰う話が浮上していた。落胤かと思われたのはおゆうが調べた小間物屋の息子だった。
現在の社会で岡山のお寺の仏像から出た体内文書をもう一枚作り、二体作られた江戸の仏像にも体内文書が入っていたと捏造して証拠とした。文書には赤ん坊も母親も亡くなったことが書かれていた。
 産婆のおこうは殺されていた。ご落胤は死産であり、母親も亡くなったことを知っている産婆が邪魔になったから。小間物屋の息子の友達も間違って殺されたことにしたくて殺された。
 大名家のおゆうたちに藩内のことを話してくれていた男・伊原が二十年前のことも承知でおこうの名前で手紙を送っていた。藩内に波風を立て、異端分子をはっきりさせ無くしてしまおうと思っていた。
 おゆうにすべて見破られる。一万石減らされ、将軍の養子の話も無くなった。

2016年7月4日月曜日

素浪人半四郎百鬼夜行〈七〉

素浪人半四郎百鬼夜行〈七〉 邂逅の紅蓮 芝村凉也
聊異斎は殿様が病気になった川田藩に、聊異斎が連れ去った殿の子供を返せと詰め寄られる。捨吉が我が孫だと言い、連れ帰るのを諦めさせる。このことにより、田沼に聊異斎の居所が知れてしまう。
榊半四郎は田沼意次の用人に田沼家に召し抱えると誘われる。
聊異斎と捨吉の居所が判ると、命を狙われる。松平定信が派遣していたお久良によって助かる。浅間山にいる聊異斎の所に案内される。
聊異斎と捨吉は田沼の家来と川田藩と小諸藩の者たちに追いつめられていた。
半四郎と田沼に雇われている涸沼との対戦になった。半四郎が涸沼を倒しても何度もやり直しになる。四度目、半四郎は左腕を切り落とされる。半四郎が斬られる覚悟を固めた時爆発が起きた。天明三年 1783年皐月二十六日
田沼に雇われている真名久はやり直しが効く、涸沼にしがみついた。

2016年7月3日日曜日

隠密同心

隠密同心 小杉健治
隠密廻り同心のさらに裏で極秘に探索する隠密同心。佐原市松29は奉行から密命を受けさる大名のお家騒動を未然に防ごうと捜査を始めた。
大名の調略や暗殺を請け負うという”風神一族”を調べるために飾り職人になり長屋に住む。隠密同心になるために飾り職人の修業をしていた。
 市松が怪しいと思った幸吉は、本当の幸吉を殺し、幸吉になりすましていた六助だった。六助は幸吉を知っていた亀三を久米彦に殺させ、久米彦を殺していた。六助は市中引き廻しの時、市松に、ときじろうにきをつけろ しちべいがいうさいぞうは と口を動かした。

2016年7月2日土曜日

寺社奉行 脇坂閻魔見参!〈一〉

寺社奉行 脇坂閻魔見参!〈一〉 閻魔裁き 風野真知雄
 脇坂淡路守安菫(やすただ)播州竜野藩藩主 松平定信に二十四才で寺社奉行に抜擢される。巷で「脇坂閻魔守」と言われる。決め台詞は「神も仏も、俺が裁くのだ!」
 亀山雷臓45 評定所から寺社奉行の元に派遣された支配留役 百五十俵二十人扶持旗本
神道無念流の達人 雷神と呼ばれる。
 鶴田風二郎 竜野藩藩士 小検使、風神と呼ばれる。
 えい姫17 淡路守の正室 伊予今治藩から嫁いできた。
「出世不動尊略記」のビラを見、骨董屋から一両で不動像を購入したことを調べ、久留里藩江戸家老に不動の賽銭は寺社方の管理として孤児の養育を行なう寺に与える基金とすることを通知した。
 二十人もの丑三つ参りの話を聞き、調べる。骨董屋の今昔堂が、近所の永寿堂の主を殺し、何人も居る僧侶に化け、店に隠れ、夜中に主人の趣味の茶道具の高山右近の五徳と三人形蓋置と蟹蓋置を丑三つ参りに紛れて盗んでいたことをつきとめる。
 くぐってはいけない鳥居をくぐり、三人が亡くなった、と言う話を聞いた。寛永寺の輪王寺宮様が神社を訪れる予定だった。宮様を恨む山同心が鳥居の横の団子屋から狙うため団子屋の主人を殺していた。参拝予定前夜、団子屋に集まった同心を捕まえた。
 逆さまの幽霊が出るという。増上寺の上人さまが祈祷をするが無駄だった。淡路守は川上から流れてくる物を拾い上げているのだと気付く。庭で朝鮮人参を栽培していた大名が廃絶になり、もったいないと思った下働きが夜間掘り返した人参を塀の外に放り、それを幽霊が拾っていた。増上寺に行き、幽霊は贋物だった事を話し、上人さまの祈祷が効き、幽霊の影が薄くなったことにしましょうという。
 土砂崩れがあり骸骨がでた。頭部と足、腕など三人分が数が合わなかった。三年前白幡神社の近くの和泉屋という味噌問屋で五千両盗まれていた。四人の泥棒が若竹屋主の命令で押し入った。元々四千両と思っていたが五千両あった。五千両を盗み、白幡神社に運ぶ。宮司が泥棒に毒をいれた酒を振るまう。大きな天秤棒で屋根瓦を真ん中に重しと千両箱をくるりと回す。四つ用意していた五つ目を移動させるのにばらばら死体を使った。と本当に千両箱と手足が吊り合うか遺体を借りてやってみた、とみせる。元宮司と若竹屋の主は畏れ入った。二人は打ち首獄門。遺体はえいが作った作り物だった。

2016年7月1日金曜日

半席

半席 青山文平
 徒目付・片岡直人26は小普請世話役から徒目付になって二年、早く勘定所に席を替え御家人の支配勘定から旗本の勘定へ駆け上がりたい。片岡の家は父が小十人入りを果たしたが、小普請に戻され半席となった。直人は小普請からはい上がらねばならなかった。直人が勘定所の勘定になれば半席を脱して旗本になれるのだ。直人は未だ居ぬ子供のために頑張っていた。
 徒目付組頭・内藤雅之38は徒目付組頭を七年務める。徒目付は踏み台にしているようでもなく、目付の余禄の見返りを期待している訳でも無い。
 今春、雅之の頼まれ御用を一度っきりと承諾した。 思っていたよりも遥かに励み甲斐があり身が入る。後断わり続けて九ヶ月が経った。勘定所に力を持つ人の頼みと言う誘いに乗った。
 半席 勘定所に力を持つ人の頼みごと。筏で鱮釣りをしていた表台所頭・矢野作左衛門89が落ちて亡くなった。事故とされた事件を調べて欲しいということだった。作左衛門は矢野家の当主だった伯父が亡くなった時、子供・信二郎が五才だったので作左衛門が家督をついだ。信二郎が七十二才になっても家督を譲っていない。信二郎と二人で釣りをしていた。作左衛門が落ちた時には信二郎は一緒ではなかった。作左衛門は走ってから落ちていた。直人は信二郎から話を聞く。作左衛門は脇差し・埋忠明寿と斉藤武兵衛の釣り竿を交換していた。信二郎が家督と共に譲られるはずの刀だった。信二郎は家督よりも楽しみにしていた。信二郎が怒ったのは家督を譲らないからだと作左衛門は思った。作左衛門は年を取ってもお役を辞められない。死ぬまで辞められないと言った。自分で釣り竿を川に投げ、後を追って川にはまった。信二郎はそうなることが分かってそこを立ち去った。信二郎は全てを話した。信二郎も何かを探しながら川にはまって亡くなった。
文化六年
真桑瓜 直人27才  八十才以上でお役目に付いている者の集まりで刃傷沙汰が起きた。二月に一度、持ち回りで仲間の屋敷で食事をする。岩谷庄右衛門87の当番で最後の水菓子が出て最後の挨拶を待っている時、山脇籐九郎87がいきなり脇差しで斬りかかった。幸い死ぬほどの傷では無かった。頼み人は五千石でみんなと違いすぎて出られない人が籐九郎はしゃべりたいはずだ、思いっきり吐き出させてやって欲しい、という。直人は病の禁忌を書いた表を手に入れ、籐九郎に会った。二十八年前、籐九郎の次男が麻疹にかかった。その前に惣領を亡くしていた。真桑瓜を食べさせて良いかどうか岩谷に尋ねた。岩谷は良いと言った。食べさせた次の日急変して亡くなった。手に入れた刷り物も真桑瓜は駄目だとなっていた。自分が真桑瓜のことで心中もがき続けたように、岩谷も大丈夫と言った一言を抱え込んでいると思っていた。水菓子に真桑瓜が出たことで岩谷が二十八年間全く、真桑瓜に気を留めることなく生きてきたことを悟った。気がつけば斬りつけていた。申し訳なく思っている。と話した。庄右衛門は籐九郎んに会いに行った。明くる日籐九郎は病気で亡くなった。真桑瓜が食べても良い物にはいっている麻疹の時の刷り物があった。
六代目中村庄蔵 十一月 旗本・高山家の当主を殺した罪で牢にいる無宿人が何故旗本を殺したのか調べることになった。茂平は二十年以上高山家に仕えた。茂平は肝の臓の病気になり迷惑をかけたらいけないと思い、屋敷を出た。なかなか死ねなくて切羽詰まって高山家に行った。新しく入った侍を紹介された時、茂平は高山を突き飛ばした。縁側から落ちた高山は石に頭を打って亡くなった。茂平は紹介された名が中村庄蔵だったために取り乱し殿様を突き飛ばしてしまったという。中村庄蔵としての二十年は茂平のすべてだったのだ。二日後茂平は揚座敷で息を引き取った。譜代の最後の家侍が中村庄蔵だった。忠義の侍だったのであやかるように中村庄蔵を名乗っていた。六代目も立派な家侍だったので茂平で終いにしようかとも思ったが、やっぱりあやかって欲しくて七代目を作ったのだった。
蓼を喰う 文化七年 直人28才の三月 御目見以下から始めて永々お目見以上の旗本になった古坂信右衛門69が、御目見以下の御徒から叩き上げの勘定組頭・池沢征次郎57を手にかけた。傷は浅くないが死んではいない。征次郎は亀を見ていた。斬った理由を信右衛門は言わない。二人は関係がないようだ。古坂家は御庭番筋の家柄だった。征次郎は深川育ちで溝浚いを人任せに出来ない性分だった。時々は古坂家の溝浚いをしていた。御庭番筋の家は溝浚いをしなくて良いことになっていた。信右衛門は一度遠国へ行っただけで御庭番の仕事をしていない、なのに溝浚いを免除されていることを負担に思っていた。征次郎が自身で溝浚いをするのは愚弄していると思った。若い時はまだ遠国ご用もあるかもしれないと我慢していたが、六十九才、溝の流れを検分しているのを見て歯止めが外れた。と言う。直人は、溝攫いをする征次郎のことを話した。
 このことの頼み人は信右衛門の始めての遠国ご用の相棒だった。自分の失敗で信右衛門が遠国ご用から外されたことを気に病んでいた。
見抜く者 直人の上司・芳賀源一郎は道場主だ。源一郎が襲われた。途中その者は倒れた。心臓の発作だった。凄腕と言われる、元大番組番士・村田作之介だった。これは表の御用だった。表の御用で何故を調べる。作之介は立ち合ったつもりだ。大番のお役目のために梶原派一刀流を修めた。最後に剣技を解き放ってやりたかった。という。二度目の発作が起こった。
役替え 直人は十五の時から一日も欠かさず逢対をかさね、小普請世話役の役目にありついたのは七年が経った二十二の秋だった。直人と北島士郎だけだった。三年前徒目付の役に付いた時、旗本になるための踏み台でどう務めようかなど考えたこともなかった。
 頼まれ御用をするうちに一件落着した事件の何故を解き明かす、見抜く者になろうとして、旗本へ邁進する路から逸れていった。
 北島士郎の父親・泰友に会った。士郎は病気になり小普請に戻っていた。家に来るようになった。直人をつけるようになった。直人を襲おうとしていた。徒目付を襲えば追放では済まない。直人は撒くことにした。逃げた。雅之と一緒の時、泰友が襲ってきた。夜、直人は致仕願いを書いた。今のお役目に未練が残った。
 勘定所から片岡を欲しいと打診があったが、目付筋の総意で出さないことにした。目付一本で何故を掘り起こしてもらう。それで北島親子は川越えにでも住んだらいい。ということになった。