2022年6月28日火曜日

恋せぬふたり

恋せぬふたり 吉田恵里香
 NHKドラマ ノベライズ
  
 アロマンティック アセクシュアル 
 誰にも恋愛感情を抱かず、性的にも惹かれない兒玉咲子(さくこ)と高橋羽(さとる)。ふたりが自分たちなりの生き方を模索するべく始めた共同生活。

 羽は野菜作りに静岡に行き、咲子が羽が祖母から譲られた古い家を守っている。

2022年6月27日月曜日

風烈廻り与力・青柳剣一郎57 一目惚れ

 風烈廻り与力・青柳剣一郎57 一目惚れ 小杉健治

 武家ばかりを狙う盗人兄弟の弟・亀二は、忍び込んだ勘定奉行・藤森兼安の屋敷で百合のように可憐な女に魂を奪われ、盗人から足を洗いあの人を守りたい一心で下男として雇って貰う。

 藤森が火盗改頭時代の配下が相次いで殺された。十年前、凶賊一味を捕縛した者たちだ。残った息子と仲間が、復讐をしていると思われた。

 藤森の妾・百合が何度も命を狙われる。その度に亀二が防いでた。青柳は誰が狙っているのか。誰が頼んだのか調べる。

 以前の与力等が藤森を守るが、藤森は殺される。藤森が殺された時、百合も狙われた。犯人は一緒に訪れた。

 飛騨屋は百合の実家・下駄屋に結婚の申し込みをしたが、妻のある飛騨屋をいやがり、藤森家に奉公に上がっていた。飛騨屋は藤森の妻を嗾け、百合を狙うよう頼まれるように仕組んだ。
 青柳は、百合を狙うように頼まれたように仕向けた材木商・飛騨屋と与力・糸崎伊十郎の関係を調べた。
 十年前、飛騨屋は、盗賊の情婦と逃げた仲間が持っていた盗賊の隠し金から、五百両を貰って匿った。糸崎も六百両を貰って見逃していた。
 勘定奉行になった清廉潔癖な藤森は、二年前に終わった橋の掛け替え工事に絡む不正を調べようとしていた。不正に絡む飛騨屋は藤森を殺すために、凶賊一味の復讐話を作り、糸崎の十年前の行為をねたに強請り藤森を殺させた。

 糸崎に、自決をすれば、飛騨屋は糸崎にすべての罪を被せると解き、自首を促した。糸崎の自白から飛騨屋の自白を引き出し、前の勘定奉行・大富甲斐守を追いつめたいと思った。大富は役目を退いた。
 
 亀二兄弟は盗んだ金を全て出し、盗んだ場所と金額を書いた。被害届が無く、拾い金として奉行所に届けた。青柳は許した。亀二は家に帰る百合に、告白する。百合は亀二の所に行くと言う。
 


2022年6月26日日曜日

晴明の事件帖②

 晴明の事件帖② 遠藤遼
 賀茂祭と道真の怨霊

 帝の突然の禅譲という事件を契機に、蔵人頭という重責から開放された左近衛中将・藤原実資は安倍晴明との友情を深める。

 婉子の生霊騒ぎ。婉子の夢にほくろのある男性が現れ噛み後を残す。怖くて眠れないという相談を受けた晴明は、ほくろの男性を探す。道長の父の養子になった道信だっだ。道信の婉子を恋う気持ちの現れと解釈した晴明は婉子の部屋の四隅に実資の髪の毛を貼り付けた式を置く。解決した。
 道長の物忌みがあった。晴明が道長を訪れている時、呪いをかけられた瓜が届けられた。そこにいた勧修と丹波医師と頼光によって退治された。瓜の中から蛇が現れたのだった。

 実資が熱で倒れた。
 
 花山院の元で内侍司だった女官が尼僧になったが、色欲にまみれて転落、行方をくらましたと婉子の使いで見舞いにきた典侍が言った。その尼僧・妙春が道長邸の前で行き倒れで発見された。晴明は調伏した。

 安法と道長の女房が、素性の分からない破戒僧・義善の庵に出入りし、邸から金品を持ち出していると教えられた。義善は紀伊国の神の指導を受けている者と名乗り様々な邪法を駆使した。破戒僧では手が出せないような大元師法と口にした。晴明は住吉の神を呼び撃退した。
これらのこと全てに関係する道長が呪いの対象にされていることが気になる。

 道長は、菅原道真の祭りの格を揚げ、祇園御霊会の祭りを質素に行おうとした。晴明は道長に着いたのは道真の怨霊とわかった。晴明は怨霊ではなく道真にもう許せと語りかける。
北野神社が北野天満宮となる。
 
 晴明が地震がくるという。実資は、地震が来る前に女王殿下の想いに応えなければと思う。

 

2022年6月25日土曜日

晴明の事件帖

晴明の事件帖 遠藤遼
 消えた帝と京の闇

 新築した邸が、火災に見舞われた藤原実資の前に現れたのは、京の都で最も優れた力を持つ陰陽師・安倍晴明だった。有職故実に秀でた実資は、晴明の言葉に出来ない魅力にひかれて行動を共にしながら、彼と遭遇した不可思議な事件を日記に綴っていくことを決意する。
 二人と帝に蘆屋道満の呪が迫ってくる。

2022年6月24日金曜日

東京バンドワゴン ③スタンド・バイ・ミー

東京バンドワゴン ③スタンド・バイ・ミー 小路幸也

〈文化文明に関する些事諸問題なら、如何なる事でも万事解決〉
〈本は収まるところに収まる〉
〈煙草の火は一時でも目を離すべからず〉
〈食事は家族揃って賑やかに行うべし〉・・・・・・
明治に新聞社を興そうとしたものの、当局の弾圧で志半ばで家業を継いだ勘一の父・堀田草平の家訓です。

 秋 あなたのおなまえなんてぇの 明日、藍子とマードックが帰ってきます。紺はみんなの住む部屋に頭を悩ませています。マードックは元の家に住んでもらう予定です。
 藤島29才が、前に借りた本のレポートを書いて持ってきました。また三冊借りて行きます。一冊から花陽の家庭教師をしてもらうようになり三冊に増えました。藤島は六本木ヒルズにIT関連の会社を構える社長さんです。勘一は会社のきれいな秘書・永坂杏里さんと藤島を結婚させようと思っています。
 この頃、古本の棚の本が入れ変わっています。すずみが気がつきました。おばあちゃんが入れ替えています。
 「ほったこんひとごろし」と書かれた古本を売りに来た娘さんがいました。アナグラムを解き、紺は気がつきました。高校時代の同級生・三迫貴恵さん。紺が告白され交際を断ったため、遺書を残して行方不明になった人です。自殺は未遂に終わりました。こういう話は、「はる」でします。飛び降りようとした彼女を、我南人が、息子を好いてくれてありがとう。でも好きになることは好きになってもらえることじゃないよ。死んだらもう誰も好きに慣れないよと言って『ヘイ・ジュード』を歌って収めたということがあった。
 池沢さんと女優の折原美世さんが、我南人といっしょに訪れる。折原美世、本名・三迫佳奈。池沢さんに紹介された堀田家を訪れ、事件後、暗くなった自分の家族と比べて明るい堀田家が憎く思えた。昔、書き込みをした本を思い出しテーブルに置いてしまった。ごめんなさいという。紺は自分は何も出来ないけれど、彼女のことは覚えていようと思っているという。勘一は遊びに来てと誘う。
 棚の本を入れ替えていたのは、かずみ。大山かずみだった。戦災孤児だったかずみは十三年間堀田家で暮した。父親の仕事を継ぎ女医になり、無医村を渡り歩いた。現役を引退しここに帰ってきた。
 マードックと藍子が帰ってきた。
 紺はみんなでどうやって住むか考え中。サチと話す。

 冬 冬に稲妻春遠からじ 十二月、障子の張り替え、蔵の大掃除は順番に部分的に。畳の張り替えも順番に。
 終戦後、堀田家にいたジョーの孫から十箱の段ボール箱が届いた。ジョーが亡くなって十年、大量の古本と祖父の手紙が出てきた。手紙と一緒に送ります。ということだった。
 うさんくさい客が、二百万円で段ボール全てを買い取ると言う。暴力に出ようとした男を、茅野が流れるような動きで押さえつけた。
 ブックエージェントのハリー・リードが、CIA長官にもなったロスコーの日記がある。それを売って欲しいと交渉に来た。無かった。いろいろ調べっ判ったのは、我南人がジョーから貰ったストラトキャスターのエレキギターのボディに埋め込まれているらしい。我南人はキースにギターを売っていた。
 コウさん52才が勘一に相談にくる。真奈美さん35才に求婚されたが年の差がある上に大恩ある人を傷つけ人生を終わらせた自分が、真奈美さんを幸せに出来るはずがない。店を辞めようと思うと相談した。真奈美さんは藍子に相談します。嫌いと言われたわけではない。京都で何かあったのだろうということだった。店が開けられない。
 クリスマスの日、こっそり逃げ出そうとしたコウさんを茅野が連れてきた。我南人が、京都の板長の久本さんを連れてきていた。コウさんは妻を病気で亡くし、育てた娘は自殺した。娘の友だちが、娘はDVで悩んでいたと教えてくれた。自殺から半年で、ある会社の重役のご令嬢と再婚していた。店に来た元娘婿の言動に怒りが噴き上がり、包丁の持ち方が変わった。振り上げようとしたコウさんに気がついた久本さんが、自分の手で押さえて止めた。久本さんは手術をし、コウさんは店を辞めた。久本さんが、リハビリに時間が掛かったが元通りになったと話す。私は恨んではいない。おまえはこの土地で素晴らしい人々に会っている。みんなの気持ちを大事にしろと諭す。
 真奈美ちゃんが一人で待ってるぞ。
 研人の同級生の平本芽莉依ちゃんは、「羊男のクリスマス」を選んでもらって買って行った。すずみが選んで可愛く包装していました。
 脇坂さんはたくさんのプレゼントを持って来ました。
 藍子に真奈美さんからありがとうとメールがありました。

 春 研人とメリーちゃんの羊が笑う 四月 〈六波羅探書〉の誘いが来ました。
メリーちゃんは羊が後をついてくると言う。勘一は研人に相談する。
 堀田家の隣の空き地を、藤島が買った。家を建てるのに紺に相談する。
 すずみと青が六波羅探書の会合に行った。古書界の京都のボス乱麻堂の阿曾さんが現れる。すずみはテストされたようだ。「ペーターソン中世植物彩色図」が出てくる。稀覯本の中でのトップクラスの本です。値をつけてと言われて十二万円とつけた。そしてこの本は偽物だと言う。素晴らしい技術で偽書を作り上げた職人の技に対しての値段だという。東京に持ち帰って処分すると言う。儲けるために作られた偽物は許さないと啖呵をきる。古本屋に対する考え方覚悟若いのにたいしたもんやと褒められる。みんなで示し合わせた試しだった。古書や修復の技術向上のための教科書だった。出産祝いや、持って行きなはれと言われた。
 研人はメリーちゃんの後を歩いた。研人は写真を撮る。特殊メイクの羊男でした。黒いスーツの羊が庭にいます。我南人です。メリーちゃんは両親が離婚して隣町のおばちゃんの所に引っ越すと研人と離れてしまうことを心配していた。何か変な者がメリーちゃんに着いていても研人の所へ行けば大丈夫となれば研人と離れないで済むかもしれないと考えた結果だった。

 夏 スタンド・バイ・ミー 七月 松ノ湯が、アートギャラリーになりました。ライブとか演劇ができる場所です。
 青のことを調べて廻っている人がいるようです。青は自分の生みの親は池沢さんだろうと我南人に聞いた。池沢さんが産んでくれたから、こうして幸せでいる。産んでくれてありがとうと言っといてという青に、我南人は自分で直接言ってやったほうがいいねと返した。
 花陽は中学の美術部のみんなと、藤島の会社の別荘を借りて合宿です。
 同じ頃、脇坂の親戚の旅館がある葉山で海水浴です。メリーちゃんも参加しました。
 木島という記者が、池沢と我南人と青のことを記事にするらしい。確証をつかんだ手段が、浅羽を脅したことだった。弱みにつけこんだ。昔の記事にはLOVEがあったね。今の君にはLOVUがないね。我南人が言った。
 藤島が木島の所属する出版社を買収した。我南人と池沢さんのスキャンダルを書いた雑誌の出版は差し止めになった。記者魂を一番大切なものを地に落としてどうするのですか?
 木島は口止め料を請求する。我南人のギターを一本頂けませんか。木島は我南人の大ファンなのだから。
 隣に和洋折衷のアパートが出来た。藤島の別荘だと言う。二階の半分が藤島の部屋で、かずみとマードック家のが住むことになった。勘一の妹・淑子は体のために今のまま、葉山に住む。 


2022年6月21日火曜日

東京バンドワゴン ② シー・ラブズ・ユー

東京バンドワゴン ② シー・ラブズ・ユー 小路幸也
 

明治十八年に開店、坪内逍遥が名付けた。
 冬 百科事典は赤ちゃんと供に クリスマス、青とすずみが箱根の新婚旅行から一日早く帰ってくる。
 隣の曙荘の学生・増谷裕太が「故事類苑」六十冊版全巻揃いで売りに来る。お金に困ったら売れと祖父に言われていた本だった。十万円で買った。そんな時、カフェに籠に入った赤ちゃんが置き去りにされた。籠の底に百二十一万円が入っていた。赤ちゃんの名はサヨ。サヨちゃんのお母さん・玲井奈は「はる」にいた。玲井奈の若い夫・夏樹は借金があり返すために玲井奈の母親におれ俺詐欺を仕掛け百二十万円を手に入れた。玲井奈はお金を返すために、家出した母親の所に行けず、兄・増谷裕太の所に来た。兄を待っている間に夏樹が来たので赤ちゃんを残して逃げた。はるで我南人と会った。裕太の持ち込んだ本は、刳り貫かれ昔の一円札が入っていたことが分かった。それを売ったお金で夏樹の借金三百万円は支払われた。
 紺は仏間でサチと話す。研人はサチの姿が見えるようだ。玲井奈は昔の秋実とよく似ているらしい。
 
 春 恋の沙汰も神頼み 花陽は藤島に家庭教師を頼む。花陽は中学生になる。藤島は藍子が好きです。亡くなったお姉さんに似ているから。花陽は藤島さんが好きです。藍子を好きなマードックさんに藤島は宣戦布告。
 東京バンドワゴンの常連さん、元刑事の茅野さんが藤島さんを知っていました。藤島のお姉さんを殺した高木が刑期を終えて十六年ぶりに出てきます。良からぬことを考えてるらしい藤島を止めに男たちが揃って行きました。そして事件を担当した茅野と橋田が、事件の顛末を話します。高校生と先生の愛しあった末の心中事件でした。生き残ってしまった高木は認めず長い刑期になったのでした。
 亜美とすずみが妊娠三ヶ月です。予定日は十月。一週間違いです。

 夏 幽霊の正体見たり夏休み 花陽と研人は、亜美の両親・脇坂の親戚がやっている葉山の旅館へ遊びに行った。葉山で知りあいになったおばあさんから本を預かって帰って来た。
藤島の会社の別荘を足がかりに、我南人の知りあいの三崎龍哉に手伝って貰っておばあさんを探す。おばあさんは死んだことになっていた勘一の妹、淑子でした。終戦の年、アメリカ兵と結婚して駆け落ち同然でアメリカへ行っていた。勘一が妹に持たせた本だった。十二年前に日本に帰っていた。もう長くないからと会う機会をうかがっていたと言った。
 我南人の子供の頃の近所のお姉さんだった正枝さんが、孫が変だと心配してくる。娘が離婚して連れ帰って来た孫だった。転校生で研人と同級生だ。一緒にいて研人は驚いた。光輝君は自分で物語を考え、トリックを考え、本当に出来るか試していた。もっとゆったりした気持ちで光輝君に接するようにと助言する。光輝君が持っているアメリカの古い雑誌を売れば光輝君の生活費と大学までの教育費を賄えると教える。
 「はる」の真奈美さんを助けるために池沢さんがコウさんという板前さんを紹介した。

 秋 SHE LOVES YOU 十月 秋実さんの七回忌です。門外不出だった目録、呪いの目録と言われた。堀田家の災厄の元凶と言われていた目録を持ち出し、ガンで余命二ヶ月と言われた秋実が呪いを引き受ける。禁を破った私の余命が延びれば呪いに勝ったことになるでしょう。二ヶ月と言われた余命は半年。呪いは消えたよと言ってなくなった。真っ暗になった堀田家で亜美さんがここを立て直すと言ってカフェを作った。
 四日後、藍子とマードックさんはイギリスへ行く日。
 都内で起きた事件現場に店の目録があった。警察が検印を探しに来た。男たちは事情聴取ために警察に行く。家捜しが始まる。すずみが産気づく。荷物を持って花陽とパトカーでサイレンを鳴らして病院へ行く。亜美も陣痛のようだ。藍子が一緒にパトカーで病院へ。遅れそうな藍子を藤島が空港に送る。三台のパトカーに追いかけられた?
 二人は同じ日に女の子を出産した。
 一週間後、藍子は帰って来た。マードックの親も一緒に、結婚式をあげ、二人展の開催のためイギリスへ行った。
 紺と亜美の娘・かんな。青とすずみの娘・鈴花と名付けられた。

2022年6月18日土曜日

乳頭温泉から消えた女

 乳頭温泉から消えた女 山本巧次

 円堂が乳頭温泉のホテルの受け付けに着いた時、札幌からきた佐野和美が、先に来ているはずの友だち・皆川理香がいないとフロントに届けていた。リスクコンサルトの肩書きを持つ円堂は、和美の相談相手になる。

 二人が務める、エイコー不動産開発札幌支店の取引先の浅木工務店の三島専務が自殺していた。円堂は札幌まで行き、関連を調べる。皆川理香は、パソコンの中で、怪しいデーターを見付け、USBに入れ持っていた。それはエイコー不動産への浅木工務店の水増し請求書だった。
 本社営業部の指示で、理香も納得の軟禁状態だった。

 円堂は、三島専務は殺人だと言い、犯人も捜し出す。犯人は円堂と行動を共にしていた畠野だった。三島と水増し請求し、1500万円程を折半していた。三島の要求額が増えてきたことと、大きな事業に参加させろと要求してきたため殺した。

 円堂は、三島の事件が片づき慌てて東京に向かう。理香の保護のためだった。理香の軟禁状態は三島の事件と関わりがなかった。和美から理香のラインの内容を教えてもらい場所を特定する。和美には理香と連絡が取れれば営業部に気を付けろと伝えて貰う。
 理香は隠れる場所を変えるという本社の中山から逃げる。円堂に拾われ円堂のオフィスに行く。理香は乳頭温泉からの脱出方法を暴かれ、軟禁されていたホテルの割り出しも教えられ、中山から逃げた時に拾われた理由も教えられ恐れ入る。中山に提出したUSBのバックアップ情報を提供する。
 三島の水増し請求だけではない情報も隠されていた。
 次の日、円堂は理香と本社に行く。円堂は総務部長・天野紀子に見付けた情報・営業本部長が承認した賄賂計画書は昨日送った。リスク対策室に殺人事件の調査のことも話していた。
 
 警察との話もした。今後の話もした。リスクコンサルタントとしては万全の仕事を果たした。円堂は経費が掛かったので追加請求を頼んだが、固定額で契約したのでと断られた。
 完璧社員・杏里からは次回からは使った経費は別途精算できるように契約してくださいと念押しされた。

2022年6月17日金曜日

勘定侍〈五〉 奔走 

 勘定侍〈五〉 奔走 上田秀人

 柳生家の瓦解を企む老中・堀田加賀守の罠をすり抜けた淡海一夜は、堀田家で密約を持ちかける。堀田家で勘定方の穴を知らせる。

 一夜は大阪の店から手に入れた唐物を売り、米に替える。

 柳生十兵衛は大阪の淡海屋へ行き二年で一夜を返すと約束する。

 

 

2022年6月16日木曜日

栄次郎江戸暦27 獄門首

 栄次郎江戸暦27 獄門首 小杉健治小杉健治

 弥三郎が引回しののち獄門になる。栄次郎は、弥三郎は殺された二人を殺すための立て篭もりだったと思っている。犯人は他にもいた。だが誰も捕まらず、殺された二人の身元もわからないままだった。

 弥三郎は引回しの途中、栄次郎にこへいじと口を動かした。
 身元が判らないまま商家によって殺された二人は埋められた。栄次郎はこっそり墓を暴き中に誰もいないことを突き止めた。二人は公儀お庭番だったからこっそり弔われたと思う。

 コヘイジを探す。弥三郎を知っているという行商人と出会い、弥三郎が付き合っていた女と会う。小平次を知っていた男も現れる。三人によって振り回されるが、栄次郎の命を狙われることで、三人が囮であることに気がついた。
 命を狙ってきたものが、大名・瀬尾家の者であり関係しているのは、老中・稲葉越前守であることが新八の調べで判明した。

 瀬尾家は国元の藩主の弟が、塩の精製技術を開発した。稲葉越前守は技術を教えて欲しい。瀬尾藩主は、息子の嫁に将軍の姫を迎えたかった。村上藩の若殿に将軍家から姫が嫁ぐことになった。稲葉は村上の息子を悪く伝え反対する。村上家の若殿は落馬し、大怪我を負った。殺されたお庭番の二人は、村上藩の若殿の落馬事故を調べていた。
 弥三郎は世話になっていた塚本家の再興を願って、全てのこと瀬尾家と稲葉との密約の証拠を残した。それらを預かっていた喜平は塚本家の再興ではなく、塚本家と一緒に取り潰された上役の家の再興をさせたくなかった。それが死んだ塚本源次郎の望んだことだから。

 喜平が、弥三郎が残した人質立て篭もり事件を引き起こした理由や、お庭番を殺した理由、老中と瀬尾家の密約を記し残した物を提出し、取り調べが行われる。
 評定所で始まる前に、老中は罷免され、瀬尾藩主は、藩主の座を下りた。

2022年6月15日水曜日

母子草の記憶

母子草の記憶 小杉健治

 草下彰は五年前、「殺された人々」で全国ノンフィクション大賞を受賞し 作家になったが二作目を書いたが出版社に相手にしてもらえない。三十才で不安を持っていた。

 草下は中学3年生の時、両親を殺され、人生が一変した。中学を卒業後、住み込みで印刷会社で働き、定時制高校に行った。

 自宅近くで殺されている人を見付けた。彼は両親が殺される一週間前、自宅に来た。自分の大賞授賞式の日、パーティ会場にも来ていた。殺される二三日前に草下を訪ねてマンションに来ていたそうだ。

 殺された彼・井之内正孝を調べ始める。彼のアパートの部屋で警察が押収し残した物を見る。本があった。草下の本もあった。中学三年の時に使っていた筆箱があった。古い写真があった。三十年前の彼を調べ始めた。

 本籍地、熊本に行く。結婚しようとした人・アッコは無国籍だった。男の子が生まれた。半年後、彼は姿を消した。アッコを探す。二十年前、川崎にいた。川崎でやくざにこれ以上探すなと凄まれた。
 アッコを見付けた。家を買い、息子・みつると暮していた。アッコは病気、みつるは引き篭りだった。みつるはアッコの実子ではないという。

 井之内を殺した男が捕まった。川崎で凄まれたやくざだった。秋津は井之内と同級だった。中学生の時ある事件現場の近くで秋津を見た井之内は、警察に伝えた。秋津は事件とは関係がなかったが、就職がだめになりやくざな道に入ってしまった。井之内は秋津のために隠れ家を用意したり、詐欺事件を未然にしようとしたり秋津のために動く。

 草下の両親も秋津にころされていた。借金返済のため投資詐欺をし、井之内の告げ口で草下の両親が知ったため殺された。
 十五年会っていなかった知人に会い、彰が草下家の養子であることが分かる。井之内とアッコの子供だった。熊本で井之内が姿を消したあとアッコは母子草を持たせて我が子を教会の前に捨てた。子供が出来ず悩んでいた草下夫婦は熊本へ赴任中に子供を養子にし、東京へ帰ってきたということだった。
 アッコに会う。草下の母と作った母子草の押し花の栞を持って行き、アッコに見せる。
 秋津に面会できた。両親の殺人、井之内の殺人、秋津の実子の話。みつるは秋津の子供のようだ。
 アッコの家に行く。アッコは外へ出られるようになっていた。みのるも前に働いていたコンビニに勤めていた。戸籍の取得を役所に相談していた。母か父がいれば簡単だそうだというみのるに、秋津のことは言えなかった。

 十五年前の事件のことは書けない。無国籍の人たちの現実を目のあたりにして、苦しんでいる人たちを助けるような作品を書こうと思った。

2022年6月14日火曜日

花咲小路 一丁目の髪結いの亭主 

花咲小路 一丁目の髪結いの亭主 小路幸也

 古い昔ながらの理髪店で働きたかった谷岡せいら21才は、偶然知った花咲小路商店街一丁目の「バーバーひしおか」に飛び込みで雇って貰うことになった。

 「バーバーひしおか」の奥さんはミミさん、旦那さんは髪結い亭主ぽく、働いていないように見える。名前は朱雀凌次郎、元ルーブル美術館のキュレーターの肩書きを持つ鑑定士。実家、朱雀家の跡取りの長男は国立美術芸術館機構の企画局長をしている。

 せいらは、魚亭の奥さんが凌次郎に持ち込んだ、最後の怪盗紳士〈セイント〉に盗まれた来歴を持つヴィネグレットを首からかけて、シルバーのマッチケースを持って矢車聖人に会いに行った。マッチケースをプレゼントするために。せいらはセイさんと話をして帰って来る。ヴィネグレットは良くできた偽物に変わっていた。セイさんは見ても判らないような贋作を持っていたと言うこと。

 万屋洋装店の主人、万屋伸一が凌次郎のところに、刺繍作品サンプラーを持ち込み、娘の結婚に持たせたいが幾らぐらいの物だろうと相談に来る。凌次郎は刺繍された古英語の文章を読み解く。呪いの文章だった。せいらは頼まれセイさんのところに持って行く。セイさんはこの文章を二三時間で読み解いた凌次郎の学識に驚く。セイさんは万屋の娘の結婚に関わるから預かる。凌次郎はセイさんは悪のサンプラーに対する善のサンプラーを作ってくれるだろうと言った。

 バーバーひしおかの一人息子・朱雀桔平28才がフランスから帰ってくる。桔平は海外で革製品の職人をしている。

 凌次郎の兄・凌一郎が、イギリスの貴族の所持品だというポーセリン・プラークを凌次郎に届ける。一緒にある貴族の父親の日記帳には、セイさんの外国名・ドネタス・ウィリアム・スティヴンソンの名があり、怪盗セイントの名もあり、ポーセリン・プラークの永遠の淑女はセイさんのお母さんだという。美術品ハンターが貴族の所から持って来てしまったそれらをセイさんに渡してしまいたいらしい。
 凌次郎と桔平は、ミケさんにお願いして複製品を作り、日記の中身を書き換えて貴族に返すことにした。
 ミケさんには、桔平が貴族のところで見付けて持って帰って来てしまったが、貴族が気付いて返してくれと言ってきたので複製品を作って欲しいとお願いした。紙やインクは桔平が用意した。日記の革表紙も桔平がし、製本をした。でき上がった時、ミケさんは楽しかったと喜んだ。貴族の許に複製が着いたのを確認してセイさんに本物を渡す。

 桔平は、スペインに旅立つ前にせいらに話す。本当に自分は美術品ハンターであること。今回の日記と永遠の淑女を日本に持ち込んだのは自分であること。セイさんが怪盗セイントであること。克己と北斗は日本でセイさんをお手伝いしていること。自分は海外でお手伝いしていること。ミケさんはセイさんの弟子だったこと。今回の大仕事をきっかけにセイントの弟子を終わらせて淳ちゃん刑事さんと結婚を決めたこと。桔平は全てを話し「鋼鉄のセーラでしょ」と念押しした。

 せいらは周りの人たちからひしおかの跡取りと見られている。

 

2022年6月13日月曜日

花咲小路 三丁目北角のすばるちゃん

花咲小路 三丁目北角のすばるちゃん 小路幸也

 麦屋すばる18才、高校を卒業、花咲小路商店街の唯一の専用駐車場・カーポート・ウィートの経営者で管理人。母親はすばるを生んだ後家を出た。祖母が亡くなり、父も亡くなり、一人になるすばるのために、祖父は整備工場を辞め駐車場にした。祖父が亡くなり家を潰して駐車場を広げ、シトロエンに住んでいる。隣の田沼質店の娘・瑠夏とは同級生。祖父と整備工場をしていた弦さん。隣の元岡そばの家に住んでいる。
 亡くなった父親はシトロエンに乗り移り、ラジオを通して話が出来る。

 駐車されたクラウンのトランクに人がいる。すばるの同級生・本条美和子だった。父親の不倫を疑い行動を調べていた。去年もここに来ていた。すばると瑠夏も一緒に調べる。にらやまで花束を買い、白銀皮革店で財布を買う。北斗に頼み防犯カメラでハイツ花咲に入ったことを確かめる。後日すばると瑠夏は女性を訪ねる。彼女は本条パパの腹違いの妹だった。本条パパの父親は、妻と子供を捨てて、結婚していた。五年前、父親が亡くなる前に、腹違いの妹が困窮していることを伝えた。一年に一回、彼女の誕生日にプレゼントを持って会っていたのだった。すばるたちは美和子に言わなかった。でも父親から聞いているだろう。

 ラーメン屋さん南龍のレシートを持って来る人。ラーメン五杯も食べるのか不思議。彼は南龍の主人の兄だった。高校時代に家出して三十八年、謝って会うようになった。彼は陶芸をしていて、南龍で使って貰うためにラーメンどんぶりを作っていた。

 不審のお客さん。田沼質店により、自動車の中に管理人さんへという手紙を残している。探し回る。中村という父親の教え子だった。担任だった中学二年の時、中村君の父母が交通事故で亡くなった。彼を探すために同級生だったにらやまの花乃子さんの結婚相手・稲垣信哉と父を交えて話す。中村は車の整備士になっていたが、工場が倒産していた。中村はネコみたいな女に怒られて駐車場に戻って来た。行くところが決まるまで弦さんと一緒に住むことになった。

 古いベンツが置き去りにされた。三日たった。弦さんがベンツのドアの中に何か入っていると言う。権藤刑事が写真を持って探していた男がベンツを取りに来る。人が違う、怪しいベンツということでどうしようかと悩んでいるところへ淳ちゃん刑事が来る。男は淳ちゃん刑事を見ると、ちょうどやってきたピンクの軽自動車の中へ女性をお仕込み自分も乗り込み逃げた。すばると瑠夏と淳ちゃん刑事とシトロエンに乗り込み追いかける。権藤さんと連絡を取りながら、ベンツの扉の中を調べて貰う。車は女性の家で止まり、首にナイフを付き着けられ車外に出てくる。やってきた権藤刑事と淳ちゃん刑事が説得する。権藤の合図で、仁太がエアガンでナイフを落とした。男は捕まった。権藤は男を連れて行った。シトロエンの中で女性の事情聴取が行われた。ふたりは、仁太のことは内緒だと言われた。

 帰ってからシトロエンのラジオの父親と話す。すばるは気がついていた。女性はすばるの母親だった。向かいのお弁当屋さんの経営者だった。

 カーポートは弦さんと中村さんに任して、すばるは父親とシトロエンで旅をする事にした。瑠夏も行く。落ち葉が目立つようになったころ旅から帰った。二人が将棋好きで、縁台将棋が出来る駐車場で有名になっていた。
 修理工場は無理でも簡単な点検とか修理とかタイヤ交換が出来る駐車場もいいかもと考えている。
 すばるは喫茶ナイトの開店間際は手伝いに行く。喫茶ナイトの新しい名前は、「Knightart」ナイタートになった。

2022年6月12日日曜日

花咲小路三丁目のナイト

 花咲小路三丁目のナイト 小路幸也

 三丁目中通りにある喫茶ナイト。夜のナイトではなく騎士のナイト。以前のナイトが閉店し、孫の円藤仁太が始めたのが16年前。夜しか営業していない。レンタルビデオとレンタルレコードの店。VHSのビデオレコードのレンタル。もう一つの営業品目・夜中の相談事。
 円藤仁太46才  若白髪の長髪を束ね着流しに雪駄。謎の男、高校中退後海外を放浪。
そんなナイトに、仁太の甥・堂本望24才が帰ってくる。小学三年から四年間をここで過ごした。食事や飲み物を提供するようになった。花咲商店街の店の売りと被らないようにすること。仁太からの注意。

 轟クリーニング店の息子・駿一21才が、相談にくる。八才年上の八才の娘がいる人を好きになり関係ができた。結婚したいがどうしたらいいものかというものだった。仁太は夜半にも関わらず彼女に会いに行く。三日後、駿一と彼女と娘を店に呼ぶ。クリーニング店の父母も映画でも見ませんかと呼ぶ。当人と家族たちの話しが出来る場所と時間を提供する。自分ができることは、艀役、橋渡しぐらいかなと言う。

 十才位の女の子が、父が来ないと言ってナイトに来る。後からここに居た。とミケさんが来る。父親が亡くなり、保険金が入ったが、母親は夜も仕事をしている。六家族が入居する橘荘に住んでいる留依ちゃんのところへみんな代わる代わる様子を見に行くようだ。父親だと言っていくのは誰か。はっきりしなくてもいい父親が亡くなりいない、来ないと認識すればいい。北斗の彼女・バークレーの奈緒に相談する。橘荘に住む、中学生のショーヤのためのバースデーパーティのためカレーの出前をすることにした。橘荘のみんなに。手伝いに北斗、奈緒、望、ミケ、淳ちゃん刑事さんがいく。それまでにも、望は古い物を写真に残したいからと橘荘等の写真を取り歩く。北斗には隠しカメラを取り付けて欲しいと頼む。仁太はカメラの取り付けは失敗しても良いと思っていた。みんなが橘荘を調べている風、刑事の淳ちゃんまでもが出てくることがきっかけになれば良いと思っていた。父親が留依にもう会いに来れないと言ってくれればいいと思っていた。

 昔の知りあいが、高校生と話しが出来る店か、お触りバーか、そういう店で、娘の友だち・こずえちゃんと会ってしまった。彼女は娘と家に来る。二人で会いたいと言ってくる。娘と一緒のとこへ偶然を装って現れる。どうしたら良いだろうと相談に来る。こずえちゃんはマンション矢車に住んでいる、内藤こずえ。仁太は、セイさんにここずえのことを聞きに望を行かす。こずえには、喫茶ナイトでのバイトの誘いをする。知りあいには、毎週一回ナイトに寄るように勧める。ここで会えばいい。こずえの父母は離婚していた。母は大学を勧める。自分は早く働きたいと思っている。こずえはナイトで勉強もでき、夕食も食べて帰る。こずえは喜んでバイトに来る。母親にも近くで安心だと礼を言われる。こずえは接客業を完全にこなす。

 淳ちゃん刑事とミケの結婚話が進まない。淳ちゃん刑事は、結婚し、ミケがあかさかを継ぐと言う話しに乗り切れない。ミケは音楽もするし、絵も描く。プロの腕前だ。あかさかを継いで、したいことが出来なくなることをミケのためにならないと思うと仁太に言う。ミケの昔のこと隠れた仕事の話もする。隠れた師匠の話しもする。
 権藤の娘・渋沢ユイが、仁太を追いかけている。何故?みんなの疑問。

 淳ちゃん刑事の祖父・あかさかの主人・辰さんが倒れた。

 望は店に飾る花を見に行って店の模様替えをすることを思いついた。一日で終わるように、みんなに手伝って貰うことにした。
 午後、淳ちゃん刑事、ミケ、こずえ、美代、権藤親子、北斗、克己、メイ、仁太はミケにレイアウトを頼む。
 終わった。みんなを座らせて、仁太は、望にあかさかを継ぐように言う。ミケにはナイトを自由に使え。望はあかさかの辰さんの味を継ぎあかさかに住む。淳とミケはここの二階に住む。辰さんの了解は得てあると話す。
 仁太はエアガンでリンゴを五発縦に打ち抜くパフォーマンスを見せ、椿学園の寄宿舎に住み、射撃部のコーチをすることにしたと話す。ユイはそのために仁太を追いかけていた。

 ニューヨークで、仁太と権藤の出会いは、銀行強盗の人質になった時だった。権藤が刑事だと分かり撃たれる寸前、仁太は落ちていた拳銃で犯人たちを撃った。殺さなかった所為で、一人の犯人の撃った玉で、傷ついた人質が下半身不随になってしまった。自分が殺さなかったために車椅子生活の人ができてしまったことで、仁太は世捨て人のような生活をしてきていたのだった。権藤はみんなに話しをした。


 
 

 

 

 

2022年6月11日土曜日

花咲小路 二丁目の花乃子さん

花咲小路 二丁目の花乃子さん 小路幸也

 井筒めい16才は、母の姉の娘・花乃子29才の店で働くことになった。高校でいじめに遭い、戦っためいは、先生や教育委員会を巻き込む戦いになり、味方がお父さんとお母さんだけになって学校を辞めることにした。花乃子さんの店は〈花の店にらやま〉。花咲商店街の二丁目の北側の一番端の角。十年前、交通事故で父と母を亡くし、柾と柊という25才の双子の兄弟が一緒に働いている。

 フランス料理のラ・フランセの同い年の息子・海斗くんが落ち着いたら勉強を見てくれることになった。高校卒業資格を取るつもり。海斗くんは姉さん・美海21才は柊さんを好きなんだよと言う。柊は対人恐怖症かと思うほど、他人と話しが出来ない。元気さは全部柾兄が持って生まれたみたいだ。二人の顔はめちゃくちゃ整ったイケメンだ。

 男の人・滝川が一万円の花束の配達を頼んだ。花乃子さんの瞳にガーベラが咲いた。一瞬だったが、めいは見た。花乃子さんは贈る花に込めた思いがわかるらしい。
 仕事で観桜寺へ行く。柾兄の様子が変わる。信哉というお坊さん。親父とおふくろが、居眠り運転の車にぶつけられ事故死した時、家の車を運転していたのは信哉さんだった。と柾兄は話した。
 滝川30才と贈られた側・新島佐代子35才のことをミケさんが調べていた。滝川は、亡くなった先輩の奥さんを愛したが、一緒に海外赴任して自分が運転するはずだったのに、体調が悪く休んだために先輩が運転し、事故に巻き込まれ亡くなったことを悔やんでいた。申し訳なさ。佐代子も滝川を愛したが、五才も年上で、七才の子供がいることで甘えてはいけないと思っていた。花乃子はあの庭に菩提樹を植えれば上手く行くと言う。めいは命日のお参りをする信哉に話し、菩提樹を植えるように進め二人がうまくいくように話してほしいと頼み、菩提樹を持って行く。二人はうまく行きそうだ。
 ミケさんが、いろいろ話しを聞けたのは、花乃子さんが花束の中に心開いて何でも話してくれる花を仕込んでいたからだった。
 めいはミケから信哉が花乃子の婚約者だったことを知る。今でも婚約者だと思っている。

 海斗が夏休みになり、勉強を始めた。海斗から柊兄の気持ちを確かめてほしいと頼まれた。花乃子さんに相談していいかと聞くと、花乃子さんって不思議な力がありそうだと言う。瞳のガーベラとか花言葉の魔法を使うことは知らないようだが、海斗は勘が鋭い。
 榛学園の卒業生が、恩師の退職に花束を贈る。花束を注文に来た。先生を囲む会。花乃子さんの瞳にガーベラ。
 誰かが誰かに恨みを持っている。
 
 誰かが調査会社を使って美海さんのことを調べているらしい。柊兄も美海さんが安心の右側にいても落ち着く人だと思っている。めいは美海と柊をお見合いさせることを考えた。花乃子さんと柾兄の了解はとった。柊兄と美海さんに内緒で、二宮の夫婦と海斗、花乃子さんとめいちゃんが、あかさかで会った。両家供二人の結婚には賛成している。柾兄は段取りはすべて自分がすると言った。めいには花乃子さんにも決心してもらいたいと思っている。

 セイさんの段取りで、めいと花乃子は綾乃先生に会えることになった。花乃子は花束を持って行く。話しが悔恨になった。一人の少女のアドバイスのおかげでみんなの絵が輝いた。アドバイスをした少女の個性はみんなの絵の中に埋没し、画家になれなかった。少女はそうさせた先生を恨んでいた。話しが終わると先生は、そんな話しをしたことも忘れたようだった。先生を囲む会の花は忘却、勇気、尊敬の花を飾る。

 今日は、お見合いだと柊をラ・フランセに連れて行く。二宮の家族と韮山の家族と信哉さんがいた。柾は、明日、イギリスに行く。本場のガーデニングや園芸を学んでくると言う。美海さんラ・フランセと花のニラヤマを守り立ててください。信哉さん、姉さんと結婚してニラヤマを守って下さい。イギリスの生活はセイさんにお願いした。
 食事をしながら話しあい、二組の結婚は決まった。

 先生を囲む会の先生スピーチは先生のお詫びとお礼だった。終わった後、涙を流しながら嬉しそうに、楽しそうに、幸せそうに話していた。

 


2022年6月10日金曜日

花咲小路一丁目の刑事 

花咲小路一丁目の刑事 小路幸也 

  花咲小路一丁目北の西角、〈和食処あかさか〉。この地域の所轄刑事になった赤坂淳27才は、中学卒業以来の生家に帰還した。店をやってる祖父母のところに居候することになった。
 帰って来た早々、店舗前でストリートミュージシャン・ミケさんに会う。本名・三家あきら。 店の裏、北側の〈たちばな荘〉の住人。
 淳は淳ちゃん刑事さんとみんなに知られていた。

 一ヶ月が過ぎた非番の日、ばあちゃん・梅に頼まれて橋本さんの猫・マロンが、家で食事をしない。どこで食べているか調べることになった。
 従妹の奈緒の彼氏・松宮電子堂の松宮北斗22才の所に行く。二丁目の店の裏はお年寄りの井戸端会議場所になっていた。
 橋本家は二ヶ月前に祖母89才が亡くなり、一ヶ月前に飼っていたラブラドールレトリバー9才が死んでいたという情報と、猫好きの人と猫嫌いの人の名前のリストをメールで貰った。猫好きを二三回り、結局ミケさんに行く。みけさんが餌をやっていた。ミケは橋本さんが殺鼠剤を買ったこと、マロンが中毒になってきたこと。マロンの餌の皿を換えればいいこと。これで非番は終わり。
 あかさかの店の常連・刑事課盗犯係権藤刑事、通称・ゴンドさんは、ミケは何者かと聞く。ガサ入れの現場、とか何回も彼女を見てると言う。

 二ヶ月弱、非番の日、ばあちゃんから相談を受ける。〈ラーメン政〉の一年前に亡くなったおじいちゃんから手紙が来るようになったという話し。息子・政田勇人・小学五年生の野球仲間・ショーヤ君から話を聞く。手紙を見せてもらう。手書きで語りかけるように、孫に、息子に店のことやラーメンのことを書いてある。三通来ていた。筆跡や内容も親父の書いた物だと言う。
 北斗が勇人に頼まれビデオをDVDに焼いていた。データーを見る。
 淳ちゃん刑事は英彰さん夫婦に、誰が書いたか、推測しているが確かめるつもりはない。純粋に店を家族を心配しているだけだから。英彰さんの肩に力が入り無理しないで。ラーメンの味は落ちていない。一人で味を守るだけでなく、家族で店を守っていこう。と
 淳はミケさんに筆跡の真似が出来るか尋ねた。携帯のメアドの交換を申しこむ。そっとそうとゆっくり近づく。

 三ヶ月弱、連続放火犯と窃盗グループの張り込みとガサ入れの所為で家に帰れず昨日の終電でようやく帰って来れた翌日、非番の日、ばあちゃんに頼まれ四丁目の〈万屋洋装店〉でスーツを作りに行く。
 祖父に育てられたあゆみ22才に相談される。一年に二度スーツを作る会社社長の三橋さんが、トラックの運転手だった。二三十万のスーツ代を二十年間受け取っていなかった。スーツの修理をお願いされた矢車さんの持ってきたのは三橋さんに作ったスーツだった。セイさんのスーツだということだった。どういうことでしょうか。
 あゆみの父母は二十年前に交通事故で亡くなった。亜弥26才さんに会う。夫の白銀克己22才にも会った。セイさんは毎年二着スーツを万屋で作っていた。権藤さん調べで、三橋さんは二十年以上前、暴力団構成員だったことが分かった。三橋さんは元はご近所さんだった。あゆみの両親と同級生。
 セイさん・矢車聖人と話す。あゆみの疑問と、自分の推測を。暴力団員だった同級生の赤ちゃんを引き取った夫婦が亡くなった。会いたいと思う実父に相談された人は、スーツを作ることを進める。祖父はスーツを作る時に会うことは許したがお金は受け取らなかった。相談された人はスーツを引き取り貯金している。いる時に渡せるように。セイさんは、私に任せてと言う。
 一週間後、帳簿に記載があった。三橋さんとセイさんは知りあいだった。社長と名乗ったのは格好つけだった。とあゆみが言ってきた。

 非番の日、お越しに来たのはミケさんだった。前日熱があり、同窓会に出かけたばあちゃんは淳が心配でミケにアルバイトを頼んでいた。熱が下がった淳は食事に誘うが、ミケさんはばあちゃんに、相談事を託されていた。
 〈大学前書店〉の本の上に檸檬が置いてあったという。話しを聞きに行く。二週間前にレモンが置いてあり、二日後にミカン、それから三日後にバナナ、翌日にはキウィそしてレモン、リンゴ、ミカンと続く。
 北斗に商店街の監視カメラを協同組合事務所で見ることを頼む。従妹の奈緒から書店の娘・美波の話を聞く。美波は不倫の果ての失恋を経験していた。その後引き篭りになっている。
 北斗が置かれた日に出入りしている人を見付けた。北斗や美波や克己の同級生、相川康利だった。美波の元彼。北斗が彼に連絡することになった。淳は北斗が監視カメラを自分の家で見られることに気付いた。
 淳とミケは食事に行く。商店街から十五分、中馬通り〈高木屋〉。(もしかして写真店に出てきたところか)
 ミケの身の上話を聞く。天涯孤独。奨学金で大学まで行った。権藤はやっぱりミケを見たと言う。

 半年たった非番の日、セイさんとあかさかへ帰って来た。権藤さんとあかさかの前で出会う。あかさかに入った途端、客の男がばあちゃんを羽交い締めにナイフを持って人質にした。逃走中の相原だった。じいちゃんは知っているようだ。相原は権藤を知っていた。ばあちゃんを人質にして二階に上がる。ショウガ焼き定食を注文する。
 梅さんの代わりにバイトと奈緒と亜弥が手伝い、店を続ける。
 北斗は、高性能集音マイクを隣の家から二階の窓へ向けている。受信機から二階の音や声が聞こえる。三星のムサシが、昇り龍の辰が抜ける時、借りがあったようだ。逃げるためにお金が必要でじいちゃん・辰にお金を融通してもらうために来たようだ。息子が刑事で常連客の刑事がいたという訳だ。
 屋根から猫の声、屋根から下りられなくなった猫を助けにミケさんが、相原に見つかった。ミケさんは回転して踵で相原の後頭部を直撃。ミケさんは猫を連れて帰った。北斗も手を振り下りた。権藤は相原に手錠を掛けた。
 ミケさんのたちばな荘の部屋へ行く。権藤さんの娘に絵を教えている。その娘さんに頼まれて見守ることをしているという。それが仕事だという。オブザーバー。権藤には、娘さんの気持ちを伝えたいので、姿が見えるようにしていたと言う。
 ミケさんは、小さいころに、どんなところにも忍び込めて、どんなものでも運び出すことが出来、どんなものでも隠すことが出来、それでいて誰にも正体を摑まれることなく、誰よりも素早くて、誰よりも鮮やかに姿をくらますことの出来る人に出会った。仕事の現場を偶然目撃し、孤児だから連れて行ってほしいと頼んだ。弟子にしてあげようと言われ、人に知られず見守る、どんな場所でも忍び込んで誰にも気付かれず立ち去れることが出来るようになった。と告白する。
 ミケさんはやっぱり猫だと思えばいい。
 相原とじいちゃんはふたりだけで話した。相原の人質事件は無しになり、逃げ回って昔の知りあいのじいちゃんの所に来て、刑事の息子の連絡で出頭したことになった。
 
 
 

2022年6月9日木曜日

花咲小路四丁目の聖人

花咲小路四丁目の聖人 小路幸也 

 寂れる〈花咲小路商店街〉。花咲商店街を全て買い取ろうとする外国(マッシュグループ)が現れた。商店街全員を温泉に招待し説明会をするという。元大地主・矢車聖人は、娘・亜弥や、商店街の若手・白銀克己や松宮北斗に、みんな温泉に行きましょうと誘ってこいと言う。
 折角、マスコミ注目の的になっているのだから、しおれないで元気に商店街を宣伝する気で行きましょうと発破をかける。
 破格の立ち退き条件を聞く。質問を受けている関係者が、打ち切ってきた。

 商店街に帰ると、一丁目、二丁目、三丁目それぞれのど真ん中に3メートルを越える貴重な美術品である石の像がそびえていた。保護するケースに入っていた。一丁目苦悩する戦士。二丁目グージョンの五つの翼。三丁目海の将軍。
 動かすことが出来ない、世界的にも貴重な美術品が置かれたため、マッシュグループは手を引いた。
 石像だけでなく商店の店舗に絵画やケースに入った小物も置かれた。これらは、最期の泥棒紳士”セイント”と呼ばれたイギリスの大泥棒が盗んだ物だった。
 芸術品が並んだおかげで、他の現在の芸術品が並べられり、空き店舗を利用されたりした。寂れる一方だった商店街に活気が戻った。

 イギリスから日本に帰化した矢車聖人・ドネタス・ウィリアム・スティヴンソンは泥棒紳士セイントだった。
 
 三丁目の海の将軍、「愛の審判者」と言われ彫像に向かい永遠の愛を誓うということが行われたこともあったということで、克己と亜弥の人前結婚式が一番目に行われる計画が立てられた。

 

2022年6月8日水曜日

口入屋用心棒㊽ 身代金の計

口入屋用心棒㊽ 身代金の計 鈴木英治 

 秀士館再建の普請が始まる。
 岩田屋のさちが勾引かされる。南町奉行の直命を受け定町廻り同心・樺山富士太郎は聞き込みを始める。さちの周辺に姿を見せる浪人者の存在を突き止める。
 湯瀬直之進は岩田屋に用心棒を頼まれる。三千両の身代金の要求と共に用心棒の解雇を要求され。用心棒を解雇されるが、頼りにされている岩田屋から時刻と場所を知らされ、彼等を捕まえる。彼らは勾引かし犯人ではなく岩田屋に雇われていたやくざ者だった。

 直之進は覆面の男達に命を狙われた。次々と人数を多くして襲って来る。直之進には襲われる覚えがなかった。さちを勾引かしたのだろう親玉・墨兵衛にさちが、「おまえのような男は、湯瀬直之進さまが必ずあの世に送り込んでくれるから、覚悟しておくんだよ」と言ったことが原因のようだ。

 さちときよは船の中に捕らわれていた。さちの廻りで姿を見られていた浪人も一緒だった。浪人・河合網兵衛はさちを助けようとして一緒に捕まっていた。網兵衛は船から逃げ出した。

 高山家の当主が、御用普請を言われないために切腹した。部屋住みだった次男と三男が、義賊の猿の儀介として盗みを働き出羽笹高の飢饉の窮状を救ってきた。次男が亡くなり三男・義之介が当主になり、猿の儀介は現れないと思っていた。老中首座・堀江信濃守は出羽笹高藩をお取り潰しにしたいため高山家に浅草米蔵の普請を命じる。一ヶ月以内にかかれと日にちも切られる。義之介は取り合えず資金の調達に盗みを働く。佐之助は義之介が捕まらないよう見張った。
 



2022年6月7日火曜日

きたきた捕物帳 

 きたきた捕物帳 宮部みゆき

  ②が出た。①を読む。

2022年6月6日月曜日

父子十手捕物日記 

父子十手捕物日記  町方燃ゆ 鈴木英治
         さまよう人


  2013年 前のブログ参照

2022年6月5日日曜日

辻番奮闘記〈四〉 渦中 

辻番奮闘記〈四〉 渦 上田秀人

 江戸の辻番が襲われる。

 老中・松平伊豆守が平戸藩の辻番頭・斎を呼んだ。斎は長崎の辻番をしていた。斎は五人では辻番が出来ないと増員を要求した。

 斎の所に 、伊豆守の蜜命が届く。土井大炊守の昔の不正を調べることだった。

 長崎奉行・馬場三郎左衛門は持っていても毒、捨てても毒の状箱の書類を末次平蔵に渡した。

2022年6月4日土曜日

鬼役〈三十二〉 継承

 鬼役〈三十二〉 継承 坂岡真

 久しぶりに行った楓の間で阿部伊勢守から目安箱に入っていた書状を見せられる。血文字で書かれた薩摩藩家老・調所笑左衛門を悪とし、薩摩藩の抜け荷の疑いを書いたものだった。切腹した伊藤家の柴原甚右衛門が書き残したのだった。

 調所と柴原は友人だった。血文字の書状は偽物だった。老中阿部伊勢守からは調べの中止を言われたが調所のために調べを続け、御用取次ぎと商家の主の悪巧みを知った。御用取次ぎを暗殺した。柴原の名誉は回復され、家族は藩邸に戻った。
 矢背蔵人介は御膳奉行の任を解かれ、小姓頭取格奥勤見習いとなる。元炭置き部屋に座っている。初仕事の卯三郎の毒味の相棒が毒殺される。怪しいと思えた者を尾けると忍びの者に殺された。
 上様のお毒味に粗相があると困るので、毒味が終わった食事を囲炉裏の間で再度毒味をする役を与えられる。
 毒味が殺された事件を調べると勘定役の帳簿の改竄、改竄させたのは御典医卜部了意。了意の何人もの毒殺が浮上する。了意に毒殺を命じる者。了意と大奥の姉小路を暗殺した。姉小路が操っていた抜け忍・富樫無間斎を殺した。

 土田伝右衛門は亡くなり、養子の伝蔵が後を継いだ。

2022年6月3日金曜日

野球場で観客はなぜ「野球に連れてって」を歌うのか

野球場で観客はなぜ「野球に連れてって」を歌うのか?佐山和男

 農業的
 目的に応じた道具
 休憩場
 タウンボール
 ストゥールボール
 特権と平等
 トラップボール
 球技の母・ラスール
 家に帰らないと点にならない・北欧バイキングの思想
 海洋国家思想 

2022年6月2日木曜日

東京バンドワゴン

 東京バンドワゴン 小路幸也

 堀田勘一79才 古本屋「東京バンドワゴン」の3代目店主
 堀田サチ7   勘一の妻 二年前76才で死去 堀田家を見守っている。
 堀田我南人60才 勘一の一人息子。伝説のロッカー。根無し草のようふわふわしている。
 堀田藍子35才 我南人と長女 画家 未婚の母 亜美と「東京バンドワゴン」のカフェを切り盛りする。
 堀田花陽12才 藍子の娘
 堀田紺 34才 我南人の長男 元大学講師 フリーライターをしながら古本屋を手伝う。
 堀田亜美34才 紺の妻 元スチュワーデス カフェで働く
 堀田研人10才 紺と亜美の一人息子
 堀田青 26才 我南人の愛人の子 堀田家次男としてくらしている。旅行添乗員
 堀田すずみ  12月青と結婚 花陽の腹違いの姉

 春 百科事典はなぜきえる 棚の百科事典があったり無くなったりすることに気付いた。小学一年の女の子が学校に行く時に置いて行き、帰りに持って帰っていることが分かった。花陽と研人が女子・奈美子ちゃんに聞く。自動ドアが体重が軽いために開かない。管理人さんが、奈美子を抱っこしてふんで開けてくれる。毎日待っているのが変だなと思って考えたようだ。
 我南人たちは管理人・ケンさんにはなしを聞く。ケンは二十年前事業に失敗して離婚届を置いて家を出、浮浪者のような生活をしていた。3年前、家族の消息を聞き、普通の生活を始めた。妻は亡くなっていた。娘家族がマンションで生活していた。ちょうど管理人を募集していたので管理人になった。奈美子ちゃんは孫だった。
 我南人はマンションの屋上でロックライブをした。マンションの住人一戸一戸に藍子と亜美がお詫びに廻る。奈美子ちゃんのところへは我南人も行き、ケンちゃんのことを話す。
 奈美子の父親が、ケンさんに妻のお父さんですかと聞きに来たらしい。妻も気付いているが何も言わない。しばらくこのまま見守ってくださいと言った。

 夏 お嫁さんはなぜ泣くの 牧原みすずが、青と結婚すると家に乗り込んできた。青は嫁というのは早過ぎるとして面倒みてやってと言う。彼女は古本屋で働くのが夢だったんだって。バイト代もいらないししばらく置いてやってと言う。
 みすずは接客も料理も本の知識も充分だった。住み込むことになった。
 亜美は結婚に反対され家を飛び出して結婚していた。以後実家に帰ったことがない。我南人は金髪を切り正装する。母親が入院したと聞いた勘一は、家族に一張羅を着させる。勘一は紋付き袴。みすずも行くことを課す。亜美の実家脇坂家に頭下げに行くという。用意の最中、脇坂家の亜美の父と弟が訪れた。我南人は立派な口上をのべ頭を下げる。両家のお互いの意地っ張りを謝り、これからの末長いお付き合いを願った。
 青とみすずが元気がない。今まで誰も知らなかった花陽の父親の話になる。藍子の大学の教授だった。教授が3週間前に亡くなった。その一人娘は牧原みすずと名乗ってわが家にいる牧原すずみだった。父親が亡くなる前に妹がいるかもしれないと藍子の名前を告白した。青との付き合いは一年前からで弟だったのは偶然だった。
 花陽は姉を受け入れ、すずみは一旦家に帰ったが、住み込みで古本屋修業と花嫁修業をするようだ。

 秋 犬とネズミとブローチと 四匹の猫に二匹の犬が加わった。名前はアキとサチ、勘一が付けた。我南人の亡き妻・秋実と勘一の妻・サチの名前かな。
 紺が、岐阜の廃業した旅館の蔵書の値付けに行った。夜中に値付けが終わり朝起きると本も人も何も無くなっていた。紺は不思議な面持ちで帰ってきた。その日、百個口の荷物が届き全ての本が入っていた。昔セドリ師に本を盗まれた。お詫びだった。
 本を貸しているホームの松谷さんが行方不明になっていると連絡が入る。松谷さんは知りあいの作家のエッセイを読み自分が大切にしていたブローチのことが書かれてあることに気付いた。今もブローチがそこにあるかも知れないと探しに行った。本に書かれていた神社は町内の佑円さんの神社だった。研人と花陽は木に登りブローチを探そうとして怪我をしていた。まだブローチは見つかっていない。その本は五十年前の本だが、今もあるのだろうか。
 紺は、サチにあるか見てきてよと頼んだ。紺は仏間で、祖母・サチと話ができる。研人もサチが見える時があるようだ。
 すずみは青の婚約者として一緒に住んでいる。勘一が仏間に移り、離れを二人が使うことになった。本を片づければ二間になる。

 冬 愛こそすべて 青とすずみの結婚式は佑円さんの神社で12月20日と決まった。佑円さんは引退しているので息子・康円さんが行う。
 青の母親に結婚の事を知らせないのかという藍を、我南人は連れ出し、ロケ現場で青の母親だと教える。見えたのは日本を代表する女優・池沢百合枝さんだった。彼女は自分の人生を演じている。我南人とのことは別の池沢百合枝だった。母親にはなれない。母親としてはいきられないけれどわすれては行けないものとして一年に一枚、青の写真をおくっていると言う。
 青とすずみの結婚式の日、映画のロケが入った。池沢百合枝が親族席に座り、神前結婚式の様子をカメラで撮影した。記念写真には勘一の要望で何枚も撮る一枚だからと我南人の隣に池沢さんが座り写真を撮った。青も気がついたでしょうかね。
 近所に住み、藍を好きなイギリス人のマードックさんが、イギリスで二人展を開かないかと藍を誘っている。藍はまだ応えを出していない。
 

2022年6月1日水曜日

わが家は祇園の拝み屋さん15

わが家は祇園の拝み屋さん15  望月麻衣
 〜それぞれの未来と変わらぬ想い〜 

 小春たちチームOGMの活躍で京都の心霊スポットでの動画撮影騒動は一件落着した。がその裏で暗躍していた怪しげな黒い狐面の存在が明らかになる。
 狐面は陰陽師の葛葉久義だった。十才の時、神隠しに人外に異界に引っ張られ、組織が助け出した。彼は陰陽師になり異界の入り口を探していた。彼を助け出してくれた巫女が異界に残ってしまった。巫女を助け出そうと思っていた。彼より力が強く、十才児に近い千歳を連れて入り口を探す。
 澪人は二人を探しに行き、小春は祈る。若宮が助けてくれる。
 葛葉の前に入り口が開き、千歳も異界に入り込む。千歳の先祖晴明に手助けされ元の世界へ帰る。葛葉も千歳も助けられた。千歳は巫女も助かったという。
 澪人は、巫女は澪人だったと告白する。葛葉は安心して東京に帰ることにする。

 宗次郎の伏見の店は繁盛している。上賀茂の賀茂家にいた松原信二郎が店を手伝っている。松原は嵐山の旅館の息子だった。自分と結婚するはずだった娘・安曇が兄と結婚する事になり家を出た。兄と結婚予定の安曇の姉・香澄が亡くなったからだった。二十年がたち、兄に愛人がいて子供ができていた。安曇は子を授からなかったため安曇が了承していると言う。松原は両家族の前で安曇に結婚を申し込み了承される。
 宗次郎は何年か先、伏見の店を松原夫婦に任せ、自分と杏奈は祇園に帰ろうと思っている。

 澪人は祇園のさくら庵を出る。上賀茂の家に住むことにした。日本史学や民族学は前世の記憶もあって勉強しなくても分かることが多く、やりがいが感じられないという澪人に、葛葉は学ぶのではなく教える立場になる人間だと言う。何も分からない者を前にけっして見下すような態度をとらない。講師向きですよ。と。澪人は院に進むことにした。

 小春は、不登校の子たちのフリースクールとか、特殊なために普通に学校に通うのがつらい子たちに寄り添える先生になりたいと考えるようになった。