2023年7月30日日曜日

勘定侍柳生真剣勝負〈七〉 旅路

勘定侍柳生真剣勝負〈七〉 旅路 上田秀人

 淡海一夜は、柳生十兵衛と国元へ向かっていた。
 箱根で小田原藩の横目付と関所番頭から足止めの嫌がらせに遭う。宗矩の命で伊賀者に狙われるが、十兵衛は全てを乗り切る。

 宗矩は信州高藤藩 の保科肥後守を執政にすべく大石高への領地替えを企む家光の意向に沿わねばと、会津藩に潜り込ませた伊賀者に密命を発する。

 一夜への嫁入りを望む信濃屋の永和と伊賀忍・佐夜は江戸の駿河屋を訪れる。宗矩の知るところとなり伊賀忍を差し向けられる。佐夜は切抜け、国元に向かった一夜を追い二人も江戸を出る。
  
 老中・堀田加賀守は、左門を陰謀に巻き込む。家光からの密書・柳生を滅ぼせ。

2023年7月28日金曜日

闇医者おゑん秘録帖③ 残陽の廓

 闇医者おゑん秘録帖③ 残陽の廓 あさのあつこ

 おゑんが武士から預かった由利が自殺した。子が授かり体力が落ち、死ぬか生きるかの堺を越、子を亡くし、それでも生きると思い始めていたにも関わらず、自裁した。
 五年前に別れた兄に会ったから。兄・甲三郎は、吉原の首代になっていた。由利も甲三郎も自分を卑下し名乗り会えなかった。ために由利は死んだ。

 甲三郎は吉原で変わった死に方で亡くなる者が続いたためゑんに診察を頼んで来た使者だった。ゑんの元で働く末音が、毒・越冬虫だと見抜いた。誰かが、越冬虫の毒としての効き目を吉原で試していると考えた。また、越冬虫を使って強請ろうと考えたのではないか。使っていた占い師は自死した。占い師は十年前の花魁と大名の殿様との相対死の殿様の家来だった。お取りつぶしになった恨みだったようだ。
 ゑんが狙われたのは、占い師と結託した、美濃屋の番頭の命令だった。美濃屋の番頭は好きだった花魁の仇討ちだったと言う。

 小夜は姉花魁の死を見ていた。殿様が、丸薬を花魁に飲ませ眠ってから咽を突き、それから自裁した。小夜は丸薬が入った印籠を大事にしまった。小夜はゑんに印籠を渡す。

2023年7月26日水曜日

吉原裏同心〈39〉 晩節遍路

 吉原裏同心〈39〉 晩節遍路 佐伯泰英

 吉原会所の裏同心・神守幹次郎にして八代目頭取四郎兵衛は、九代目長吏頭に就任した十五才の浅草弾左衛門に面会した。そして吉原乗っ取りを目論む西郷三郎次忠継が弾左衛門にも触手を伸ばしていることを知る。

 切見世で起きた虚無僧殺しの背後に、吉原を支えてきた重要人物がいることに気付く。三浦屋の隠居が動かしていた者に、三浦屋の宝なる物を取られ、隠居は強請られる。三浦屋の隠居が、虚無僧を殺させたことで起こったこと、当代は、見世の存続を願い、幹次郎は、隠居を四国八十八ヶ所のお遍路巡りに出した。六郷の渡しまで送った幹次郎は、現れた隠居を強請る者を斬り、海に流した。
 虚無僧の死は自殺とされた。

 西郷三郎次忠継と、神守幹次郎との勝負は一対一で行われた。西郷は倒れた。他の者の勝負は、桑平市松と瀬口竹之丞率いる若い同心や八丁堀の部屋住みに任された。

 四郎左衛門の父親から旅の手紙が届いた。百年の功績、一日の愚行に消えし。
次は四国に着いた時。

 浅草田圃の吉原検番の地で稲刈りが始まった。切見世にいたあやめは、吉原会所で働くようになった。

 

2023年7月24日月曜日

入船長屋のおみわ⑥ 隣人の影

入船長屋のおみわ⑥ 隣人の影 山本巧次
  江戸美人捕物帳 

 入船長屋に焼物屋の紹介で。畳職人が住み始めた。職を偽っていると噂があり、美羽が調べると茶人と分った。焼物屋が死因不明でなくなった。茶人は失踪する。茶人は詐欺に関係したと噂があった。茶人を慕う、智之助が長屋を訪ねてくる。智之助は二枚目で実直。茶人が詐欺に関係しているとは考えられないと言い、美羽を助ける。
 詐欺とは、本阿弥光悦の茶碗を五腕を一客、三百万で売っていた。偽物と見抜いた者がいた。本物と鑑定書を書いていたのが、茶人・露風だった。一客は本物だった。
 偽物四腕を作った者を探し出し、露風の鑑定書を真似て書いた者を暴き出した。智之助が美羽が言った所を訪ねると久乃源はいた。
 騙された者の中に大名がいたため詐欺の調は止められた。本物の光悦の茶碗を買った者が大名だと分り、偽物を作らせ売った者を捕まえた。
 露風は智之助を知らなかった。智之助は姿を消した。たぶん、智之助は大名家の忍だろうと思われた。

2023年7月22日土曜日

八丁堀強妻物語〈三〉 隠密夫婦

 八丁堀強妻物語〈三〉 隠密夫婦 岡本さとる

 芦川柳之助と千秋は、団子屋の扮して、奉行所も手を焼く悪の巣窟・日暮れ横丁にせんにゅうすることになった。
 掏摸の頭目・百足の助松から逃げてきた市太郎も一緒に住むようになる。
 出刃の楽次郎という流れ板前と、傘治しの浪人・猫塚禄兵衛と知り合う。
 日暮れ横丁には、顔を知られていない幻の儀兵衛が牛耳っていた。
 逃げてきた賭場荒らしの乙三が殺された。百足の助松が逃げ込んで来た。市太郎が勾引かされた。市太郎は儀兵衛のところにいる。儀兵衛との繋ぎ役、「きよの」の女将のぶは、市太郎を助け出そうとする。儀兵衛の手下に斬られる。そこへ楽次郎と猫塚、柳之助、奉行所の役人が踏み込む。
 楽次郎はのぶの幼なじみで恋しい人だった。楽次郎はのぶを助け出す。猫塚は、儀兵衛が父の仇だと分り名乗りを上げ、敵討ちをする。市太郎は助け出される。市太郎の両親は亡くなったが、二つの大店の孫だとわかり引き取られた。
 正体が分ることを恐れ、柳之助と千秋は姿を現さない。
 

2023年7月20日木曜日

佐倉聖の事件簿 アコギなのかリッパなのか

佐倉聖の事件簿 アコギなのかリッパなのか 畠中恵 

 一度読んでいる。
 特別収録の「思い出した・・・」は前にはなかった?

 沙希・私は殺された。結婚半年、夫・秀夫と私の友達・夫の愛人・真紀子に。
 大学生の頃から片思いの秀夫は、硝子工芸の小さな工場で働いている。夢は硝子芸術で身を立てること。大学卒業から二年、秀夫は、プロポーズしてきた。裕福な妻が欲しいと。私には親から受け継いだ資産がある。
 真紀子は専業主婦が夢だそうだ。
 沙希は結婚前、余命一年と言われた。普通の生活を送りたくて、医者には口止めをした。親の代からの弁護士、私を可愛がってくれる弁護士には、家にビデオカメラを仕込んであることを言っておいた。
 私は、睡眠薬の入ったワインを飲まされ、風呂場で手首を切って自殺したようにされた。
駆けつけた弁護士、医者、警察と話し合われ、秀夫に部屋にビデオがあることを伝えられた。
 みんなが帰った後、秀夫と真紀子は24のビデオを見つけた。安心して二人は話している。
 真紀子が23個のビデオを持ち帰ろうとした時、帰ったはずの警察も弁護士も現れる。
 ビデオは押収され、少し窓が開いていたので、録音させて貰ったとも。
 秀夫と真紀子は連行される。

2023年7月18日火曜日

手指の痛み・変形 リュウマチ最高の治し方太全 

 手指の痛み・変形 リュウマチ最高の治し方太全 金子祐子

右小指  へバーデン結節

右人差指 ブシャール結節

2023年7月16日日曜日

おいち不思議がたり⑤ 渦の中へ 

おいち不思議がたり⑤ 渦の中へ  あさのあつこ 

 いちと新吉の祝言中、浦之屋で食中毒が出た。松庵も明乃も美代もいちまで浦之屋へ手当てに行く。松庵も仙五朗親分も、毒だと思い調べ始める。
 浦之屋の子ども付き女中・津江が、毒を盛ったのは私です。と書き置きを残して死ぬ。書き置きは昔の物だった。
 浦之屋の主の頭に釜が落ち、大怪我をする。
 元菖蒲長屋の住人・巳助が捕まる。巳助も自分だという。巳助は妻を亡くし、落ち込んだ日々を送っていた。再婚し長屋を出たが、再婚の相手は芝居だった。出入りのあった浦之屋の手代・文吉に犯人に仕立てられたのだった。使い込みを主人に咎められない前に殺そうとした。

2023年7月14日金曜日

北の御番所反骨日録〈七〉 辻斬り顛末 

北の御番所反骨日録〈七〉 辻斬り顛末 芝村凉也

 裸の死人 小普請の御家人 の若侍が裸の死体で見つかった。親戚筋が養子を取り病死で方をつけようとする。若侍の許嫁・小夜が、裄沢の前に現れ、何故彼・村田健志郎が亡くなったかはっきりさせてほしいと頼む。
 村田は、百人組に登用されることになっていた。昔の役どころ・与力、玄米取り八十石となるはずだった。親戚が同心で一緒にと願った。村田の出費で祝いの席を開かさせ、これからの同僚・上役の接待をさせられた。村田に無体を働いた。そして村田は死んだ。
 判ったことを、村田の親戚、小夜を集め、裄沢は話した。小夜は後のことは自分には関係がないこととしたが、演席代七十両は、新しく村田を継いだ養子に払わせず、親戚筋で払うようにと注文を付けた。
 小夜は大奥に奉公する。裄沢は、五年先、十年先に、百人組の組頭や高梨与力に復讐する気かなと考えた。

 痴情の死 物乞いのような僧が、あだっぽい女を路上で刺し殺した。調べた筧も藤井も何も分らない。僧は真ともに答えない。
 裄沢は、二人は盗賊仲間ではないかと言い出し、調べ方が変わり盗賊集団を見つけ捕まえられた。隠れ家が寺であったため寺社奉行まで引っ張りだした。
 裄沢を引き立てようとする声が上がる。

 辻斬りの顛末 三、四件の辻斬りがあった。何も残さない。どこに現れるか判らない。そんな時、裄沢が、今度は吉原辺りだろうと推察する。張り込んでいた所に辻斬りが現れ、下っ匹が殺される。近所に煙草入れが落ちていて初めて手掛かりを掴んだ。
 浮かび上がったのは宇和島藩抱えの漢学者・乱艟。将軍の父親・治済のお気に入りだという。奉行所は手を出せなくなった。
 裄沢は、ずーと張り込んでいた見張りを外し、裄沢が囮になって乱艟をおびき出す。浪人姿の来合と代わり抜き打ちしてきた乱艟を来合が斬り捨てる。
 辻斬りをしようとして今回は斬られたと見られた。一ツ橋家は何も言ってこない。裄沢は謹慎した。
 裄沢をどうするか考え中。

2023年7月12日水曜日

武商繚乱記〈二〉 悪貨

 武商繚乱記〈二〉 悪貨 上田秀人

 山中小鹿 大阪東奉行所普請方同心。東町奉行所増し役に出向した。
 伊那   和田山の娘。小鹿の妻になったが不義をはたらく。
 伊三次  阿藤家の三男。伊那に近づき追放される。
 中山出雲守時春 幕府目付から、大阪東町奉行所増し役。
 堺屋太兵衛 商人
 淀屋重當

2023年7月10日月曜日

京都梅咲菖蒲の嫁ぎ先

 京都梅咲菖蒲の嫁ぎ先 望月麻衣

 時は大正、四神の力を持つ「神子」が台頭する時代。いわく付きの名家・梅咲家の令嬢・菖蒲は、幼い頃、許嫁として垣間見た桜小路家の御曹司・立夏に一目惚れをする。
 立夏を一途に思い続け、十五才で桜小路家に越してきた菖蒲だったが、立夏は冷たい瞳で菖蒲を拒絶した。
 梅咲家も桜小路家も賀茂家の分家だった。江戸時代、梅咲規貴が世を乱す悪人として捕らえられ流罪になっていた。梅咲家は誇りを取り戻そうとした。伝わる「玄武」の力、商才があり指折りの大富豪になった。
 桜小路家は伯爵だった。芸術の「朱雀」でもあった。今や没落の危機にあった。
 菖蒲と立夏の結婚は政略結婚だった。
 梅咲家の長男・藤馬は幼い頃「白虎」の力を持っていた。成長と共に薄れ「神子」になれず十八才で家をでてしまった。菖蒲には能力の兆しがなかった。

 冷たい桜小路家での扱いだったが、菖蒲は心を尽くしていれば必ず伝わる。と明るく過ごす。そんな菖蒲に、立夏と女中・千花との仲が聞こえて来た。菖蒲は、自分がこのまま家に帰ると、桜小路家が困ったことになるため、パーティで自分が失敗して家に帰ることになったことにしようと決心する。
 パーティの日、立夏は千花と家出をしようとして、千花に断られた。桜小路家の長男の嫁・蓉子は、夫・喜一が、愛人と蓉子のベットにいるのを見て、錯乱した。部屋に火を付けた。
 菖蒲は、立夏が大切にしている母親の肖像画を護るため飛び込んで行く。気を失うが、その前に特殊な力を発揮した。立夏が菖蒲を助ける。菖蒲が「麒麟」の力に包まれたのを見た。
 家を出て、力が戻った藤馬は審神者になっていた。見えないところで菖蒲を見守っていた。使用人として菖蒲に付けていた桂子から報告されていた藤馬は、立夏の仕打ちを許せない。
 桂子は、立夏に礼を言って立ち去る。立夏は、菖蒲が、本当に優しい人物だったのだと思った。
 菖蒲は、立夏は、身分で人の判断をしない人、自分が間違っていたと思えば頭を下げられる誠実な人と思った。思っていた以上に素敵な人に恋をしていたと思った。千花と幸せに暮しているだろうと。

 菖蒲は兄と病弱な母と審神者が集う椿邸で暮した。菖蒲は「斎王」の候補になった。菖蒲は自分の能力を知らない。菖蒲に護衛が付くことになった。梅咲家の父親は、桜小路家の長男・喜一と菖蒲をこちらに側に拉致することを考えた。喜一は蓉子を離縁した。心が壊れた蓉子は、施設に入っていた。
 家を出て一人暮らしの立夏の所に妹・撫子が来る。兄の企みで菖蒲を拉致するため立夏を菖蒲の護衛にしようとした。撫子は、兄の計画を立夏に伝える。立夏は菖蒲の護衛をすることにした。
 護衛は立夏を含む四人に決まった。
 審神者との会話で、菖蒲は「麒麟」の能力のある者が斎王になるのではなく、「斎王」を指名するのだと知った。自分の能力を知らないまま、遠くの風景を見る。そして話す。蓉子を指名した。兄・藤馬と蓉子の関係も知った。藤馬に蓉子を迎えに行くように言った。

 父親が菖蒲を拉致し、桜小路家に連れて行った時、桜小路家は、警察が取り囲んでいた。立夏が兄の悪事を暴いた。桜小路家の父親は阿片中毒で地下に軟禁されていた。喜一は逮捕された。
 立夏は詫び、菖蒲は恋を貫いた。

2023年7月8日土曜日

御刀番黒木兵庫 無双流逃亡剣

 御刀番黒木兵庫 無双流逃亡剣 藤井邦夫

 国許で暮す側室と長子・虎松を溺愛する水戸八代当主・斉修が、虎松五才の袴着の祝いに裃と家紋入りの脇差を贈った。その事実を知り、正室・蜂姫は虎松を亡き者にするよう隠密組織・裏柳生に頼む。刺客の凶刃が虎松に迫る。御納戸方・黒木兵庫が立ちはだかる。
 代々・無双剣を受け継ぐ黒木家の兵庫は虎松と二人で江戸へいく。

 斉修から贈られた脇差と裃で虎松と証明され殿様に会うことが出来た。兵庫は最後に幼なじみを斬った。相良竜之介・柳生の草だった。

2023年7月6日木曜日

鬼役〈三十三〉 初心

 鬼役〈三十三〉 初心 坂岡真

 天保十五年 弥生 矢背蔵人介は鬼役を養子の卯三郎に譲り、隠居のはずが、どうしたわけか、小姓頭取格奥勤見習いという役に付き中奥の炭置部屋に留め置かれている。役料は無し。
 志乃の客・徳大寺実堅が、誰かが、僅かな分量の効き目の無い物を不老長寿の薬と偽り徳大寺のおすみつきまで添えて打っているものがいる。と情報をくれた。本物を所持しているのは、水戸中納言だった。
 弥生四日 町人が城内でお能見物を許される日、面を付けた大男が刀を抜いた。蔵人介は立ち塞がり、面を切る。紅毛人だった。狙いは水戸斉昭だった。
 蔵人介の知り人薫徳は、毒薬作りを頼まれる。時間稼ぎに断っていると勾引かされた。
 紅毛人・捨飯を使っているのは道伯だった。蔵人介が斉昭を守り道伯と対している時、金縛りの術を使われた。捨飯は蔵人介に袈裟懸けで胸を切った。ために蔵人介は覚醒し、斉昭を助けられた。
 和蘭陀商館長たちが、括られ屋形船で見つかった。江戸城へ急ぐ蔵人介。和蘭陀商館長たちに化けた道伯の前に立つ。蔵人介が突き出す刀の前に捨飯は立ち、突き刺さる。

 卯三郎に初密命が下った。蔵人介は迷いながら、殺される菅沼弥兵衛を調べる。代々徒目付で、新たな普請下奉行となっていた。菅沼は名主の用心棒に斬られた。火除地を我が物とするな名主、普請奉行、代官を目安箱に訴えていた。菅沼は名主の用心棒に斬られた。蔵人介は調べた。名主が殺された。火除け地を我が物とする計画を立てたのは奥右筆だった。密命を下す者・阿部伊勢守。奥右筆・安西は死なせてならぬ役人だ。と言う。安西は初心を忘れた。番士の初心は道理を曲げぬこと。政治をなさんとする者は、私心を捨てること。阿部にも、初心を忘れないこと。
 安西に密命が下った。

2023年7月4日火曜日

辻番奮闘記五 絡糸  

辻番奮闘記五 絡糸  上田秀人

平戸藩士・斎弦丿条は長崎警護の辻番。長崎代官・末次平蔵から、先代藩主が関わった密貿易の書きつけの存在を知らされる。
 密貿易の対応について国許や江戸の指示そ待ちながら辻番をこなす。長崎の目下の問題は、各国から流入してくる牢人だった。牢人たちが食い詰め、交易で潤う長崎を目指す。
 長崎奉行・馬場三郎左衛門と長崎代官・末次平蔵に挟まれ牢人対策に走り廻る。

2023年7月2日日曜日

焼け野の雉

 焼け野の雉 梶よう子

 小松町で飼鳥屋「ことり屋」を営む女主人のけい。
 店の元主人でわけありの夫・羽吉とは離縁した。

 江戸の町に火事が起きた。けいは九官鳥の月丸はもちろん店の鳥を大八車に乗せて逃げる。店の廻りの人たちと一緒に逃げる
 八丁堀同心・永瀬の娘・結衣を預かった。結衣は文鳥のチヨを連れていた。結衣は母親が殺されるのを見て声が出なくなっている。
 回向院へ行く。知り合いの医者・沢渡や、鳶の若頭などの好意で回向院の庫裏に行く。
御救小屋ができ、両国の御救小屋に行く。鳥は回向院の僧に頼み、けいは毎日回向院へ行く。与力の好意で御救小屋の端の方で鳥籠も一緒にいる。
 御救小屋での生活が、十日を超えても永瀬の安否が判らない。鳥を見に来る者がいる。長くなると鳥を嫌がる人もいる。けいの昔馴染が、噂を流す。みんなのけいを見る目が変わり、けいと一緒にいる人にまで嫌みを言う人が出る。けいたちへの風当たりが強くなる。
 火事と聞いた羽吉が大阪から江戸へ来た。けいとやり直すつもりで来たと言う。小松町の鳥屋は自分の店だ。羽吉と一緒に店を続けるか、出て行くかしか選ぶ道はないと言う。永瀬のことも噂を言われ、羽吉に攻められ、けいは永瀬を慕っていると気がついた。
 夜、御救小屋に泥棒がでた。月丸が声を出しみんなを起こした。泥棒は捕まった。月丸が皆に礼を言われ、また人気者になった。
 毎日、小鳥を見に来るさいを助けたのは役人だと知った。まだ眠ったままだと聞き会いに行く。永瀬は馬琴の家にいた。馬琴の息子・宗伯は医者だった。永瀬はやっと目を覚まし、食事をとれるようになったところだった。顔半分は晒しが巻かれていた。沢渡が宗伯の所にきて永瀬を見つけた。馬琴からけいに知らせられたが、けいの昔馴染みに告げられけいの所に届かなかった。
 永瀬は、妻を殺した男の義兄弟を見つけ尋ねた。火事で下敷きになった男からさいを託され永瀬はさいを助けた。永瀬はボロ布を着せられ火傷が酷く、口も利けない状態で運ばれた。
 けいは、いつまでも籠の鳥ではなく、自分で飛び立とうと思う。雉は飛ぶのが苦手だ。焼け野の雉のように地をしっかり掴んで颯爽と立つ。
 結衣を永瀬ところに連れて行く。結衣は父上と声を出した。永瀬は動けるようになる。結衣の声は出ない。永瀬の母親を殺した男が捕まる。結衣が顔の確認をする。母上を刺した男です。父上と結衣は言った。飛びの若頭が呼ばれた。犯人は頭の妻の弟だった。人を刺したと頭に大阪に逃がして貰っていた。
 一緒に逃げていた人が、身寄りを頼って離れて行く。結衣が、同心仲間の妻の迎えで御救小屋を離れた。
 けいは月丸を連れて、羽吉が奉公していた越前屋に行く。けいは奉公し勉強する。羽吉は越前屋の長崎支店に行った。