2016年12月24日土曜日

鈴の神さま

鈴の神さま 知野みさき
 鈴の神様1996 有川冬弥 14才中二の春休みを二週間、四国の高野町で過ごした。有川夏彦65冬弥の母方の祖父だ。会社を退職した後、先祖から受け継いだ土地で生活している。五年になる。冬弥はその頃、小さい時から習っていたピアノの国際コンクールの前に突き指し、コンクールをキャンセルしていた。クラッシックに懐疑的になり息抜きだった。
 祖父を夏彦殿と呼び遊びに来る小さな子供がいる。祖父は安那殿と呼ぶ。安那は山の天辺の神社の神様だった。鈴守だった。冬弥は安那の幼名・沙耶と呼ぶ。沙耶は甘い物が好きで、アイスクリームを食べ過ぎるとおなかを壊した。沙耶にはお目付け役兼家庭教師の楓殿が付いている。楓は神狐だという。全ての人に沙耶や楓が見えるわけではないらしい。声が聞こえているわけでもないらしい。
 二週間を過ごした冬弥は夏休みに又来ると約束して沙耶に別れを告げた。京都の倉貫家(祖母の実家の旧家)のピアノを高野に運ぶ手続きをするために京都へ行った祖父は電車の事故で亡くなった。
 父の仕事の転勤で冬弥はロンドンに引っ越した。
 引き出しのビー玉1945 去年の年の瀬塩野家は高野に疎開することにしていた。夫・斉に赤紙が来て斉がいなくても和30は、斉の友達の白石家に疎開を決めた。高野に来て妊娠に気付いた。和さんが安那と会っていた。安那は丸い物を集めていた。和さんはビー玉を買った。和は安之を生んだ。一年と三ヶ月ぶりに斉が帰ってきた。山の向こうに住んでいると言う安那に会おうとしたが見付からなかった。山の天辺の社で安那が拾っていた丸い小石がいっぱい落ちていた。安那ちゃんも来たのね。やすなと話すことがどれほど救いになったか。三人は東京に帰ることになった。
 ジッポと煙管1988 東京で俳優を目指している鵜木次郎38はあまりぱっとしない俳優だった。岡山の実家に帰ったついでに、姉が嫁いだ四国の高野町に行った。散歩に出て道に迷い行き着いた先の家に安那がいた。時代劇のセットに迷い込んだような家にいたのは鋳掛け屋の銀次と奥の美野と安那と楓だった。安那は鈴をきれいにしてもらっていた。銀次に煙管とジッポの交換を願われたが、マーネージャーがくれた・相棒がくれた・大切なパートナーがくれた物だからと断った。安那は雛屋のお菓子が土産にいいと教えてくれた。帰る前に鈴守さんを訪ねると山の上の神様だった。姉にお供えを頼む。岡山に帰った次郎に時代劇のオーディションが決まったと連絡が入る。東京に飛んで帰る。
 秋桜2005(1925)雛屋のお祖母ちゃん85才・美鈴、ひ孫と祭りに行く。八十年前に安那と会ったことを思い出す。京都の飴と屋台の飴を取り換えっこした。安那と楓、やっちゃんも生きていればおじいちゃんだと思う。ひ孫の美樹も安那に出会ったようだが・・・。安之も時々来ていた孫が祭りに来ている
 十四年目の夏休み2010 冬弥28はロンドンにいるゲームソフトの音楽担当、音楽ソフトを手がけている。高野の土地を売る話を聞いて東京に帰る。そして高野に行った。雛屋で土地の話や山の話を聞く。
 雛屋のお菓子を持って祖父がいた連翹荘に行く。京都にあったお祖母ちゃんのグランドピアノがあった。ハル叔父が冬弥にそんなに思い入れがあるならそのままにしておけばいいと言う。別荘にすればいい。安那がピアノの音に釣られて遊びに来た。沙耶は冬弥じゃな。とうとう夏休みが来たのじゃなと言う。
 冬弥が空港に着いた時、人気者になった鵜木次郎がいた。

2016年12月23日金曜日

立身いたしたく候

立身いたしたく候 梶よう子
 201512日 参照

2016年12月22日木曜日

草紙屋薬楽堂ふしぎ始末①

草紙屋薬楽堂ふしぎ始末① 平谷美樹
 鉢野金魚(きんとと)
 本能寺無念 戯作者
 春爛漫 桜下の捕物 薬楽堂の小僧・松吉が亡霊を見たという。興味を持った金魚は書いた物を見せに来たついでに大旦那・長右衛門と調べることにした。金魚は足跡を見付け、五尺二、三寸の侍が版木を盗みに来たという。夜、やってきた所を捕まえる。上杉家は藩の内状を書いた出版物の版木を書いた本人・北野貫兵衛に出すように言った。貫兵衛は売った薬楽堂に盗みに来た。上杉家から二十両を貰って燃やした。貫兵衛は薬楽堂で働くようになった。
 尾張屋敷 強請りの裏  戯作者・織田野武長は強請られていた。本名・加藤権三郎 
尾張藩士で尾張藩上屋敷侍長屋にすんでいる。犯人は尾張藩の中間だった。が、最初は武長の父親が、戯作者を辞めさせる為に脅しのつもりで強請り、動いたのが中間だった。同じことを中間が真似したということが真相だった。武長は迷ったが、父親が国許に帰ったため、結論を出さず、武士も辞めず、戯作者も辞めずにいる。
 池袋の女 怪異の顛末 書肆藤田屋故山堂では雨戸ががたがた鳴ったり、家鳴りがしたり怪異が起こり又兵衛は眠れない。金魚は又兵衛の不眠を見破り、無念と解決に乗り出す。本棚が揺れ、本が飛ぶ。人の通り道を見付ける。犯人・貞吉を捕まえる。怪異が起これば池袋から来た女中・みつの所為だと言って奉公にあがったみつを取り返せると思ったという。みつと駆け落ちしろと言う又兵衛に、貞吉はやり方を間違えた、許してもらえるなら親に話し正面から申し込みに来ると言い許された。納得出来ない金魚は、貫兵衛に頼む。池袋に貞吉もみつもいなかった。みつが言っていた巣鴨で、貞吉がみつを追いかけ回したのでみつの親が心配して藤田屋に奉公に出したことが判った。みつが父親の病気を理由に家から呼び出されていた。貞吉がみつを呼び止め殺そうとしたところで阻止した。
 もう少し書き込めと言われるのを無視して、金魚の処女作「春爛漫 桜下の捕り物」二が出版された。一巻は読み込まれた貸本に擬装され貸本屋が貸し歩く。
 師走の吉原 天狗の悪戯 吉原の妓楼松本屋で花魁・梶丿鞠の絵を描いた、絵師・東雲夕月が居なくなった。北町同心・本多が話を持ってくる。生きたがらない金魚を連れて吉原に行くと、金魚が元・梶丿葉大夫・附廻だったことが分かった。大松屋に落籍されたが五年で亡くなり、お金を貰って家を取り上げられていた。
 夕月の行方不明には梶丿鞠も関係していた。松田屋からこっそり出て揚屋町の裏茶屋に居た。金魚は夕月が書いた版下絵を見て謎を解いた。夕月は風景画を描きたくなった。書かせてもらえないために隠れた。白澤屋は夕月の仕事を減らすことにした。出来た時間で風景をかけば良いということになった。夕月は仕事に生き詰まり逃げたが吉原を出られず篭って居たことになった。
 

2016年12月21日水曜日

百万両の伊達男⑤

百万両の伊達男⑤ 横恋慕 稲葉稔
 桜井慎之介は、親から暴力を揮われ逃げ出した文吉を自分の長屋に住まわせる。
 火の見櫓に登り喚く高を下ろした。高は摺り師・藤十郎から千鶴を離して欲しいと頼まれる。藤十郎の家で藤十郎の兄弟子・宮蔵が殺されて見付かる。藤十郎が犯人として捕まる。慎之介の犯人探しが始まった。
 腕もないくせにいちゃもんともとれる注文を付けてくる宮蔵を煙たく思っていた彫師の松五郎が犯人だった。
 文吉の父母に昔の気持ちを思い出すように説得し、帰した。

2016年12月20日火曜日

大江戸木戸番始末(三)

大江戸木戸番始末(三) 千住の夜討 喜安幸夫
 両国に京傀儡一座がやってきた。三年前、一座は四ツ谷で興行していた。四ツ谷の商家・富駒屋に盗賊が入ったが手代が気付き手代が殺され、何も取らず逃げていた。
 杢之助には判った。三年前に招待され店で興行し、店の間取りを調べていた商家に両国で興行している今、押し入っている。両国の商家へ呼ばれ、間取りを知って何年後かに押し入るつもりだ。
 近所の彫金師・庄三郎は一座から仲間になるように言われていた。断っていたが子供を人質にされることを心配していた。富駒屋で錠前を開けるのに時間が掛かったのは庄三郎の父親・増造らしい。
 杢之助は捨次郎と四ツ谷の源造が手を組み四ツ谷の商家を張り込むよう仕組む。張り込みを一座の者が気付き、逃げるように仕組む。千住方面に逃げた一座の頭と副将格を殺した。杢之助を刺そうとした治助を増造は殺した。増造は商家の間取り図と鍵を開ける為の道具を川に捨てる。杢之助は増造を逃がした。
 杢之助は元盗賊白雲の一味だった。

2016年12月19日月曜日

大江戸木戸番始末

大江戸木戸番始末 両国の神隠し 喜安幸夫
 杢之助は天保七年極月の末、江戸を逃れ、小田原城下で置き引きが逃げてくるのに足をかけ店頭させ取り押さえた。置き引きをされたお店者と茶店のおやじがいた。杢之助は茶店で働くようになり、三ヶ月後、お店者の主・両国の薬種屋中島屋徳兵衛の勧めで両国の木戸番人になった。
 深川で子供が神隠しにあっていた。十日も経たずに帰ってくるという事件が起こっていた。近所の留吉がいなくなった。杢之助は中島屋の手代・紀平と女物の駕籠を手がかりに探す。探り出したのは、前の北町奉行・榊原忠之の下屋敷にいる認知症の奥方が孫が亡くなったことが判らず、孫に会いたがった。そのために子供を屋敷に連れ込んでいた。杢之助は屋敷から逃げ出した下働きの茂平と女中の由利を追ってから助けた。斬られた茂平を連れ込んだ医者・村井東按と中島屋徳兵衛で榊原に話を付けてもらった。東按が奥方の医者になり茂平と由利は東按の手伝いをすることになった。
 中島屋は芝浜に潮干狩りに行った。杢之助も参加していた。西国屋の船と一緒になる。西国屋の船が沈み始め、中島屋の船の面々が西国屋の船のみんなを助けた。杢之助は事故ではなく西国屋の娘の結婚に横槍を入れた口入れ屋鳴子堂の若旦那・与之市がやらせたことだと調べた。近所の岡っ引き・捨次郎の手柄になるように、実行者四人と与之市が捕まるように持って行った。

2016年12月18日日曜日

京都骨董ふしぎ夜話

京都骨董ふしぎ夜話 獅子ししゃも
 鸚鵡の愛 お嬢さん・光が京都の大学に行く為に帰って来た。「ばか」と言われる。六年前に「帰る日は迎えに行く」と言ったことを忘れていた天草に対する言葉だった。光はすごい風の中待っていたと言う。
 観世流シテ方能楽師・柳浦辰寿が持ち込んだ物の中の紅白の千鳥と柘榴の絵柄に歌を掘り込んだ櫛に、光は目を止める。能舞台の下の隠し部屋にあった櫛だった。柳浦は誰か父以外の人を思う人が有る母の気持ちの櫛だと言う。柳浦が子供の頃いなくなったお母さんの辰寿を思う心だと光は言う。まつのはもひさしき鸚鵡の盃にうつる十六夜かいちうの月 柳浦は舞台の下に置いた。
 少年Aと少女Bが盗品を持ち込む。居合わせた刑事・礼田と安東が捕まえる。柿右衛門人形の狛犬を預かりたいと師父・桃枝骨董店の店主・桃枝未之助が言う。
 呪いの古銭 光の中高の学友・樺山樹里が訪れる。弟・昌磨のお守りの元豊通宝が呪いではないかと言う相談をした。八亀芽衣さんから貰ってから悪いことばかり起こっているという。光は昌磨君も少なからず彼女をお好きなんだわと言う。樹里は光の言うことは信頼している。光はポルターガイストを止めたと言って帰って行った。
 狛犬、家路を行く 盗品の狛犬を預かることになった。師父・未之助が骨折した。狛犬を取りに来たのは、十年前、近くで働き、光を預かったりしていた東さんだった。売りたいと言うが預かることにした。
 安東刑事は浜松の三ケ日の出身だった。十八年前、光の両親が事故に遭った所だ。土砂災害に巻き込まれ師父の一人息子・祥之助は即死、意識の無い母・かおるから生まれた二千グラムで生まれたのが光だった。希望の光だから光ちゃん。報道されインタビューに答えていた。小学生だった安東刑事は知っていた。
 狛犬は帰りたがっていると光は言う。片方の狛犬は子供の父親・芳樹が持って行ったという。一年以上音沙汰が無いらしい。不幸の獅子と言う阿の方が見付かった。福岡から出ていた。礼田刑事に福岡で持ち主について調べて欲しいとお願いする。芳樹は事故で亡くなっていた。阿吽を子供が小学校に入るまで預かることにした。一年前、芳樹は骨董屋と売る売らないでもめ、階段から転がり落ち自宅に帰って亡くなっていた。骨董屋は獅子を持ち帰り、悪いことが続いたので売っていた。
 光は柳浦の櫛も狛犬も古銭のお守りも人の声が聞こえたという。物から声が聞こえる為、古い物に囲まれているから聞こえるのだと思ってここを離れたが、どこへ行っても聞こえた。祥之助はそのためにここを離れていた。
 天草は桃枝と名乗る前から犬に化けて桃枝家と共にいた。十八年前から弟子としているようになった。両親を持たずに光が生まれた時、師父に何かあっても天草が桃枝を継ぎ、光が不自由なく暮らせるように。師父に天草と言う名を貰い、金星と言う名を光に貰った。光は天草が二十年変わらないことで狐だと判った。
 冬の日の1995年 未之助は昔の日記を読む。桃枝の先祖・安倍泰成が岩にした狐の玉藻が天草の母だった。泰成のおかげで一番愛した人を殺さずに済み、天草も逃がして貰えた玉藻の言いつけで子々孫々を見守って来た。

2016年12月17日土曜日

私はいったい、何と闘っているのか

私はいったい、何と闘っているのか つぶやきシロー
 伊澤春男45 スーパーの主任 店長が急死した時と、新店開店時に店長かと思われたが、機会をのがす。内引きの定員を見逃したことで新店の一般店員になってしまった。
 電車内で痴漢と間違えられた子連れの女と結婚する。「小梅」一人のはずが沖縄に帰っている間にもうひとり増えていた。小梅が結婚することになった。小梅の父親から送られてきたチケットで娘二人と春男は沖縄へ行く。沖縄で乗ったタクシーの運転手が小梅の父親のようだった。
 息子・亮太は野球とサッカーをしている。キャチャーとゴールキーパーをしている。どちらも補欠だ。

2016年12月16日金曜日

大江戸木戸番始末〈二〉

大江戸木戸番始末〈二〉 贖罪の女 喜安幸夫
 杢之助は目立たぬように木戸番をしようと思うが、何事につけ知らん顔はできない。両国米沢町の木戸番になって三ヶ月になる。
 近所の長屋にすむ糸は、十年前に川に落ちた我が子の繋いでいた手を緩めてしまった。判っていて手を離した糸は自分が子供を殺したと自身番に自首する。杢之助は殺したことを認めて、子供に贖罪しながら毎日を生きよと諭す。
 隣町の金貸しがむき身のアサリを使いトリカブトで殺された。犯人は糸を自死にみせて殺し、金貸し殺しの犯人に仕立てようとした。杢之助は調べ、隣町の香具師の元締めを殺した。

2016年12月15日木曜日

怒髪の雷

怒髪の雷 鳥羽亮
 怒りの簪 片桐京之助は小伝馬町で首を落とした女・ゆきに簪を託され、だました男・源次を殺して欲しいと頼まれる。源次は捕まり、京之助が首を刎ねる。
 らくだの馬が死んだ 鼻摘み者だった男・馬が、結婚が決まった女の相手の男に身持ちが悪いようなことを言い、女は男に疑われたこと自体を恥、大川に身を投げた。長屋の皆でフグの毒を食べさせ、馬を殺した。友達の半次は見抜くが、長屋の衆の筋書き・フグを食べて死んだことを認めるしかない。
 不義の証 人を斬って情婦と江戸から逃げていた柊清十郎が帰ってきた。清十郎の女房・ふくを破落戸から守った平八郎はふくを注意していた。清十郎はふくが連れている子供の父親かと聞く。ふくの不義の証拠だという。ふくが連れている子供は清十郎が情婦と逃げた時んい置き去りにされた子供だった。

2016年12月14日水曜日

つぶら、快刀乱麻

つぶら、快刀乱麻 牧村一人
有村依子21才 山形から東京へ来たつぶらを自分の部屋に泊め、つぶらが兄さんと呼ぶ、桜庭廉を一緒に探す。つぶらの手にある光の剣が見える。
つぶら18才 鷹月流剣術三十二代当主 
鷹月賢秀 つぶらの父の弟、三十年前につぶらの父に負け、東京へ来た。喧嘩でプロボクサー番匠光浩の左手を切り落としてしまう。
番匠光浩 プロボクサーだったが、見えない剣で斬られたため、無いくても有るようにできることが判り、過酷なトレーニングで自分の無い左手で心臓をつかみ 殺すことができるようになった。ボクシングのトレーナーをしながら、やくざの殺し屋をしている。つぶらと戦い左腕を切り落とされる。名前を変えてホームに入る。やくざになり切れなかった間瀬が組から離れ面倒をみる。
桜庭廉 十三歳のつぶらに負け、東京へ来る。やくざに近付つつあったが、番匠を倒したつぶらと一緒に山形へ帰る。賢秀から裏の剣を託される。

2016年12月13日火曜日

まことの華姫

まことの華姫 畠中恵
 華姫 元人形師で現在腹話術師・月草が持っている木偶の姫様人形。
両国一帯を仕切る山越親分の十三才の娘・夏が華姫を気に入りつきまわっている。

2016年12月12日月曜日

京都骨董ふしぎ夜話②

京都骨董ふしぎ夜話② 獅子ししゃも
 桃枝未之助75才 鳴神小路にある桃枝骨董店店主
 桃枝光18才 天然大学学生 未之助の孫
 天草862才 桃枝骨董店従業員 狐
 狐のおまつり 伏見稲荷大社の還幸祭 天草は狐になって稲荷山へ行く。眷族しか入れない境界まで行く。母は九尾の狐だった。天草は毎年捧げ歌を歌う。尻尾のないばばさまが現れる。じじ様は照れ屋だこっそり見ているという。でたらめを歌っているという。願い事があれば一つ叶えてやると言われる。尻尾は力を蓄えた時九本になり、三千歳を超えると稲荷の神様がご苦労だったと尾っぽを取って下さる。眷族の任が終わるという。
 光は神学部のなゆ先生がアドバイザーをしているサークルにはいる。大学の友達が京町屋見学に訪れる。
 あなたにラブソングを バザーに集まった物を鑑定に光がなゆ先生を連れてくる。なゆ先生・瀬川那由他という。実家がお寺で歌って教える牧師さん。光は残したブローチから鬼の「きらい」声が聞こえるという。鬼の声ではなく妖の声が聞ける天草にも「きらい」が聞こえた。光はブローチに操られ横断歩道の真ん中まで連れて行かれる。未之助が鬼の声を聞く。ブローチはなゆ先生の物だった。先生をお父さんのようにしたっていた子が亡くなっていた。その子には光もなゆ先生を父親のように思っていたことがわかり、自分は一緒にいられないのにずるいと思ったということだった。ブローチを持ってなゆ先生の歌を聞く。かえでちゃんが向こう側へ導かれた。
 神様のかけら 京都府警六波羅署捜査三課の安東刑事と光と天草の三人で東寺の弘法市に行く。天草はカエルという天然石を磨いたような物に魅かれ一万円で購入する。光は「かえる」と言う声を聞く。平安楽市で同じ露店からおたまじゃくしのような形の同じような石を買った。光はこれは稲荷山の水晶でどこかの御神体だったと話す。礼田刑事に盗品の品触れをみせてもらった。城陽市稲荷神社の勾玉水晶の御神体だった。割れた物を磨いていた。仏像窃盗団が逮捕された。
 桃枝の先祖 八百年程前、安倍泰親 泰成兄弟の陰陽師が活躍。泰成の家系が桃枝を名乗る。泰成は石の声が聞け、操れた。泰成は天草の母親を石に封じた。
 浮世絵、海を渡る 外国のオークションで浮世絵を手に入れた。未之助の友達にヤモリの守宮さんがいる。
 天草は稲荷山に行き、ばば様に名前を貰った桃枝けに仕える家族と一緒にいる。願いでは無く宣言だという。願いは師父のギックリ腰が治りますように。じじ様も現れる。歌の意味は「らぶあんどぴーす」だという。

2016年12月11日日曜日

闇の平蔵

闇の平蔵 逢坂剛
 飛鳥山 八辻ケ原の人ごみの中で仇を見付け、飛鳥山で仇討ちの約束をしている場を長谷川平蔵が見た。仇討ち当日、飛鳥山に人が集まる。近くの料理屋の客も女中も見に行く。誰もいなくなった料理屋で料理屋の主人になっていた男が仇を討たれる。平蔵の与力がその場にいて奸賊として処理した。
 鎌風三蔵 盗賊三蔵の動きを見張っていた平蔵組は伝馬町辺りを歩き回るのを見ても狙いが判らない。風の強い日、火を付けた。犯人を追うが、間に入った加役・松平左金吾と与力に捕らえられる。藤堂家から秘宝を盗んだ三蔵も左金吾に捕まる。火を付け、どさくさに大名家に押し入っていた。左金吾を平蔵の鼻をあかしたいだけ。
 闇の平蔵 闇の平蔵と名乗り、役人を斬るという。集まった中の盗賊の用心棒を斬った。そして長谷川平蔵と名乗る。
 可久あるべし 闇の平蔵の集まりに出ていた女衒の周六は、阿古屋の長八おかしらに長谷川平蔵の顔を教えて欲しいと頼まれる。自信のない周六は可久にも声を掛けた。可久は平蔵を呼び出せるという。指定場所に来た平蔵を見て周六はあの時の平蔵ではないと言う。あの平蔵には小鼻にほくろがあったと言う。可久はあれは平蔵だという。捕物が始まる。周六は長八に殺された。長八は平蔵に殺された。闇の平蔵は長谷川平蔵ではなかった。
 あいやも半次郎 松平左金吾がかってに名前を使ったことをわびる為に顔合わせがあった。その席で、長谷川平蔵は可久を引き渡して欲しいという。手先を使わないという左金吾は了承する。
 半次郎が大和屋を狙っている。引き込み役は可久だ。押込む日が決まり可久は平蔵の同心・今永仁兵衛に教える。可久は平蔵の手先かもしれないと思われている。可久は認めていない。押し込みの日、半次郎は材木問屋の木曽屋に押込むという。可久は見張りに繋げる。船に乗り込んでから大和屋に行くことになった。大和屋の錠前が開いた時、安吉九郎右衛門と平蔵が現れ、半次郎は殺される。平蔵はどちらにも捕り方をださなかった。半次郎に独り相撲をとらせた。捕り方は出なかったから可久は手先ではなかったということになる。
 音締めの松 平蔵は町歩きの途中、子供たちが平蔵と音締めの松五郎になって福田屋の中を捕物ごっこで走り回るのを見た。その子供たちを見ている怪しげな小男を見た。平蔵は手先を使い、阿古屋の長八が盗みをする為に引き込み役の小男を探しているというお膳立てで小男を探す。小男は松五郎一味の引き込み役だった。長八が盗みをする日を知った松五郎は火付盗賊改め方に押込む日と場所を知らせる。平蔵は垂れ込み場所に何人か張り込ませるが福田屋にも捕り方を用意する。松五郎は長八が捕まっている間に盗みをしようとした。引き込み役の小男は自分の息子が引き込み役に使われていることを知り、捕り方と争う間に松五郎を殺し逃げる。子供は遊んでいるように見せて間取りなどを調べていた。
 
 
 

2016年12月10日土曜日

隠密同心〈ニ〉 黄泉の刺客

隠密同心〈ニ〉 黄泉の刺客 小杉健治
 処刑された六助の残した 時次郎には気をつけろ。七兵衛の言う才蔵は・・・・の意味を考える。町奉行所の者も知らない、隠密同心・佐原市松は飾り職人だ。長屋に住み浅利藩に入り込んでいる風神一族を探っている。
 長屋の怪しい住人・大道易者、大工の夫婦、浪人・成瀬三之助、新しく時次郎が入った。一組づつ調べていく。易者と大工の夫婦は関係がないことが判った。
 時次郎の所を訪ねてきた、六助と一緒に牢に入っていた男・欣三が殺された。欣三と連れっていた姿を隠していた増吉も殺される。
 時次郎が仕えていた瀬古七兵衛は襲撃され殺されていた。七兵衛は元御目付組頭で無役になり、屋敷替えし、隣の屋敷・浅利家を欣三と増吉を使って調べていた。七兵衛が殺され、欣三は牢へ、増吉は故郷へ逃げた。時次郎は襲撃で殺された女中の仇討ちを考えていた。押し込みが成瀬三之助だと思い込まされ成瀬を殺そうとしていた。時次郎から話を聞き、市松は成瀬を殺そうとする者に操られていると諭す。成瀬は密命で浅利家を出て長屋に暮らしていた。市松は七兵衛の屋敷にみんなが揃うように仕向け。時次郎は頭巾の武士の太刀筋を見て仇だとわかり討ち果たした。饅頭笠の男は消えていた。
 内与力・倉田惣兵衛と市松の繋ぎ役のつたと一緒になることを決めた。つたは隠密廻り同心・松原源四郎の密偵殺された仙介の妹だった。

2016年12月9日金曜日

天を灼く

天を灼く あさのあつこ
 天羽藩六万石 五百石大組組頭、執政入りは堅確と言われた伊吹家の当主・斗十郎が市中の商人と結託し、私腹を肥やし藩の財政を損耗せし罪により切腹した。
 妻・茂登子 
 娘・美鶴18才 小姓組頭今泉家に嫁ぐが父親の切腹後伊吹家に戻る。砂川村に住むようになり、昔帰りをするようになった茂登子が母でないことを口走り、柘植左京と双子で生まれたことをしる。
 息子・籐士郎 友達 郡奉行支配下・郷方勤め下士の次男・大鳥五馬と百石で無役の風見慶吾、未だ元服前
 柘植左京 捕らわれて以後斗十郎の世話をし、領内所払いになって砂川村に住むようになってからは左平と雑用を担った。父親は斗十郎、双子の美鶴は伊吹家に引き取られ、母方の柘植家で育てられる。母を早くに亡くし祖父に育てられる。柘植家は牢屋敷の番人、また藩の命令で刺客になることもある家である。
 
 父親の切腹の介錯をした刀を託された。刀の茎に父の潔白を証明する、五百両の金が出雲屋から川辺家老に渡された花押付きの証文が隠されているのを見付ける。津雲家老の受領書もあった。
 父の友人学者・御蔭八十雄に証文を託し、江戸の殿様に渡すよう頼んだ。刺客として現れたのは大鳥五馬だった。下士の次男からの引き上げ役職を望み津雲家老に加担していた。五馬はわざと籐士郎の刀に刺され死んだ。
 斗十郎は商家と執政を結びつけ陰で操っていた。そんな斗十郎に江戸の殿様から藩の内政を調べる命令が来た。調べられている執政者に罪を着せられた。
 籐士郎は山越えをして江戸を目指す。先生の囮になるつもりだ。五馬の敵討ち、生き延びること。天羽が変わるのをこの目で見届けるつもりだ。柘植と一緒に旅立つ。
 
 

2016年12月8日木曜日

クルト・ヴァンダラーシリーズ⑦

クルト・ヴァンダラーシリーズ⑦ 背後の足音 ヘニング・マンケル
 イースタ署の刑事・カール・エヴァート・スヴェードベリが銃弾を頭に受け殺される。
スヴェードベリは行方不明になったと訴える娘の母親の声を聞き一人で調査していたことが分かった。娘は外国に行っているとハガキが届いていたが母親は行方不明だと言い張った。五十日後娘を含めた三人の銃殺死体が見付かる。殺した後一旦埋め隠し、掘り出して殺した時と同じ状態に戻して見付かった。体調不良で一緒に行動していなかった一人も殺された。
 結婚式後、海岸で写真を撮っていたカメラマンと新郎新婦が殺された。
 ヴァンダラーは誰も知らないことを知っていることから手紙の盗み見を考え、郵便職員を調べる。スヴェードベリの知っている男が犯人だったため殺された。
 次に狙われたのは、ヴァンダラーだった。部屋で待ちかまえられていた。逃げるのを追いかけ、ヴァンダラーが捕まえる。
 ヴァンダラーは糖尿病と言われる。
 

2016年12月7日水曜日

お文の影 

お文の影 宮部みゆき
 2014年 1月20日 ばんば憑き参照
ばんば憑き
 坊主の壺 壺を描いてある絵の中に他のものが見える人が居る。
 ありとあらゆる疫病から守ってくれる、又無力な人々を守る知恵を与えられる。
 お文の影 影踏みをしていると人数より多い。亡くなった子供が影を置いていった。
 影が寂しがっている。
 博打眼 博打眼の退治の仕方をお稲荷さんの狛犬が教えてくれた。
 討債鬼 討債鬼を信じてしまった商家の主
 母と子は家を出、行然坊の妹が商家に入った。
 青野利一朗たち 三島屋 おちかに出てくる人たちだ。
 ばんば憑き 殺された人の魂を殺害者に移らせる。
 野槌の墓 人を殺した野槌を殺してくれと化け猫に頼まれる。
 
おでこちゃんも登場していた。

2016年12月6日火曜日

しゃばけシリーズ(15)

しゃばけシリーズ(15) おおあたり 畠中恵
 おおあたり 若旦那・一太郎は 当たりだと思うのはどんなことだろうと考える。若旦那の幼なじみ三春屋の栄吉は辛い味のあられを考案した。人気商品になる。許嫁の千夜と一緒になるかと思うが、栄吉はまだ修業を終える訳にはいかないという。千夜の姉・せつが京で暮らし、子供が出来た。京から手紙を預かって紀助が来た。せつの亭主が働いている櫛を作る親方の従兄弟で料理屋をしている。紀助と千夜が好き合い父親と一緒に京へ行ってしまう。
 長崎屋の怪談 才蔵という岡っ引きが行方不明になり、日限の親分が追いかけていたといわれる。土左衛門で見付かったと思った才蔵は生きていた。同心・岡安がお金を貰って辻斬りを見逃した。才蔵が辻斬りを追いかけ捕まえそうになる。辻斬りが捕まれば不味いと思った岡安は才蔵を堀に突き落としたのだった。岡安は切腹した。
 はてはて ぶつかって落としたたくさんのお菓子の代わりに貧乏神の金次は富くじを貰った。その富くじが当たった。二枚しか無いはずなのに三枚の当たりくじが出た。富くじを作っている職人がこっそり作っていた。
 あいしょう 白沢の仁吉と犬神の佐助が五才の一太郎の兄やになりたての頃、近所の米屋の子供・正五郎の誘拐騒ぎがあった。一太郎は正五郎を助け、近所の妖しが顔を出す。
 暁を覚えず いつも寝込んで接待できない一太郎だったが、大貞親分のお客さんを迎え、船釣りの接待を一太郎がすることができた。

2016年12月5日月曜日

法医昆虫学捜査官2

法医昆虫学捜査官2 シンクロニシティ 川瀬七緒
 葛西のコンテナ型トランクルームの一室で女性の全裸の腐乱死体が見付かる。借り手に不信を感じる捜査一課・岩楯祐也40は、何回も貸主のところに行く。そして突き止めたのは、彼らが、児童ポルノ中心のDVD販売、盗撮をしていることと、何日も前に倉庫に死体があることを知りながら自分たちの物を持ち出し、掃除機を掛け、現場を触ったこと。知らない間に死体を置かれていた、自分たちは知らん顔した。
 今回の岩楯の相棒はやる気があるのかないのか判らないような若者、小笠原の駐在所勤務希望の死体発見後、警察が到着するまでトランクロームを閉めきり、ハエが飛び回る中で我慢した巡査だった。その行動から岩楯は彼・捜査課勤務・月縞新巡査27を異例の指名をした。現場保存と昆虫学者がハエや蛆一匹たりとも無駄にしてはいけないと書いた報告書を読んだからと言う。
 赤堀涼子は、死体写真を見、蛆の成長が遅く、少ないことから死体が冷蔵保存されていたことを指摘する。倉庫近くのありの巣のゴミ箱から、性モザイクのハッチョウトンボの抜け殻と鷺草の種が見付かった。トンボマニアからハッチョウトンボの生存地を聞き出し福島県へ行く。誰も知らないようなところでハッチョウトンボを見付け、小屋を見付け、サギソウを見付け、血痕を見付け、ウジの死体を見付ける。指輪をした指の骨を見付ける。見付けた指輪から指輪の持ち主が分かり、持ち主から渡った人が割り出された。臓器移植コミュニティの元理事だった。お金を貰って順番をかえたりする為やめさせられていた。
 殺人現場の近くに心臓移植をした少女・瑞希が住んでいる。彼女が心臓移植をした頃に亡くなっている者の父母が二組いる。心臓移植の心臓を提供した少女の父親がいた。順番を変えて移植されたために自分の娘が死んだと思っている、二組の夫婦は瑞希と一緒にいた男・薮木も捕まえていた。瑞希の父親は殺されていた。ハエから死体があるパトカーのトランクを見付けた赤堀も捕まった。立てこもった納屋に警察が飛び込んで犯人たちを捕まえた。心臓提供者の父親は駐在さんだった。自分の子はまだ死んでいなかったと言う。前は葛西の交番勤務、児童ポルノを作っている者や、言いように使われている若い子らを知っていた。トランクルームに何がいれられているか知っていた。捕まれば良いと思い遺体を運んでいた。
 月縞は希望を本庁の一課に変えた。
 

2016年12月4日日曜日

知らぬが半兵衛手控帖1

知らぬが半兵衛手控帖1 姿見橋 藤井邦夫
 寒椿 足抜けした遊女・さよを半兵衛が助けた。労咳のようで養生所に預けた。養生所から抜け出し、姿見橋で男を待っていた。十年前、大沢竜之進が長崎へ医学を学ぶ為のお金のためにさよは身を売った。「十年後姿見橋で会おう」と言う約束の為にさよは足抜けしていた。半兵衛は大沢竜之進を探す。小沢竜之進は奥医師片山白道の婿養子になり、表御番医になっていた。大沢竜之進か判らない為、「半兵衛はこんな娘がいる」とだけ告げる。養生所に診察にきた竜之進はこっそり毒薬をさよに渡す。さよは毒を飲んで死ぬ。半兵衛は遊女屋の主に毒薬を竜之進に届けて貰い、身代金三十両を強請って貰う。三十両と薬の交換場所に半兵衛は現れる。江戸中の女郎に竜白のやったことを聞かせる。
 古傷 岡っ引きの彦造が十年前の亭主殺しの犯人・すずに似た女がいると言いに来た。京扇堂の内儀だった。半兵衛は十年前の事件を調べる。二十年前、すずの父母が殺されていた。父母を殺したのが、亭主・富吉だと知ったすずが、富吉を殺して、川に身投げした。たまたま通りかかった京扇堂の主に助けられ内儀になっていた。彦造がすずを強請にかかったのを見て、彦造を捕まえ、十手を取り上げる。すずは死んだことにした。
 波紋 花見客の中で、刀にしがみつかれて尻餅を付いた若い武士は、五才の子を斬り殺した。子供の父親・松井又八郎は自死し損なった妻を養生所に預け、長年離れていた剣道場に通い始めた。半兵衛は若い武士を探す。家紋の入った笄を落としていた。半兵衛は神明の平七の舎弟半次に調べてもらう。三千石の旗本矢部家の庶子で七十俵二人扶持・清水家に養子に入った清水祐之輔だと判った。表に出てこない祐之輔が出てくるように、笄があることを知らせ、祐之輔が清水家から矢部家に移るために屋敷を出る時を作った。半兵衛は松井に誰が犯人かを教えないが周り髪結いの房吉に聞くように言う。清水家から矢部家に移る時、松井は祐之輔を斬り、切腹した。半兵衛は半次に手札を渡した。
 汚名 片平慎之介は友達の袋物司「栄美堂」の主・徳右衛門を斬り、金を奪ったとされた。手代・幸助の言だった。栄美堂は徳右衛門の弟・徳次郎が後を継いだ。幸助が行方不明になり、徳次郎は内密に済ませようとしたが、番頭が半兵衛に相談した。幸助は死体で見付かり、片平慎之介が犯人とされた。徳右衛門を殺したのは徳次郎に頼まれた浪人者たちだった。その時、片平慎之介も殺したと思っていた。幸助が殺されたことで徳次郎が慌てた。片平は斬られて川に落ち助けられたが、二日後に亡くなっていた。所帯を持つつもりだった女・雪が医者に運び片平から聞き、生きているように見せる為幸助を殺した。雪は片平の名を使い百両持ってくるように強請る。雪が危なくなった時半兵衛が現れる。弥平次と手先に助けられ徳次郎は捕まり、逃げた浪人は南町の秋山久蔵にたたき伏せられた。北の知らぬ顔の半兵衛と南の剃刀久蔵の初めての出逢いだった。

新・剣客太平記(五)

新・剣客太平記(五) 不惑 岡本さとる
 文化八年 1811年
 峽竜蔵40才 
 祖父・中原大樹の衣鉢を継いだ左右田平三郎が竹中緑と祝言を挙げた。
 竜蔵は若月家んい呼び出され、剣術指南役になって欲しいと言われる。二十九年前、若月家の悪家老が我が子を藩主にしたいがために、雪姫17の殺害を企てられたため、我が長屋に匿い竜蔵も雪姫を守り、父・虎蔵が阻止していた。時々、ここへ来て語らって欲しいという願いも、剣術指南役として来て欲しいと言う願いも断り、息子・竜蔵が四十才になったころ声をかけてやって下さいと言い置き、以後いっさい関わりをもたなかった。竜蔵にも忘れよ。と言った。雪姫は四十になった竜蔵に声をかけた。
 竜蔵は剣術指南役になった。恒例の組対抗の剣術大会がある。雪姫の婿養子・左衛門尉より、書庫奉行配下も仕合に出ることを望んでいると言われた。人を見て法を説くと言う竜蔵により、六人が練習し、仕合に出る。書庫方には喧嘩早い・室井兵太30、身体の弱い・小林八弥26、背の高い・高瀬松之丞30、もうろく殿と言われる毛利禄左衛門60、国表勘定奉行の嫡男・野村勉三郎20余才、国表剣術指南役の嫡男・本多源内28の六人。源内は父親との仲が悪く、剣術を嫌い、人と接することを拒否している。
 仕合いは、五人出場して三人が勝てば一勝になる。一日目、書庫組は小姓組に勝ち一勝した。二日めまでの間に仕事で町に出た兵太は喧嘩に巻き込まれ骨折して帰る。兵太の代わりに禄左衛門が出ることになった。禄左衛門は最後の納戸組の対戦に掛けていた。相手は兵太の喧嘩相手、嫌みな寺田仙太郎だ。竹中庄太夫直伝の″秘剣蚊蜻蛉″を使い、仙太郎に勝った。納戸組に四対一で勝った。書庫組は結局二勝で最下位だったが、吹き溜りでも捨て所でもない。彼らは眩しかった。
 兵太の喧嘩を調べられ、仙太郎が破落戸にやらせたことだと分かり、蟄居を命じられた。
 江戸にやってきた源内の父・本多鉄斎と竜蔵と源内とで、若月家の飛び地・野州沢柿村へ行き、剣術指南と学問視察に行くことになった。沢柿村は源内が父親から離れた決定的な出来事があったところだった。八年前、沢柿村に剣術修業に来ていた源内は、国許の母親の容体が悪くなっても帰られず、鉄斎は予定通り宇都宮に行き、帰った時には母親は亡くなっていたのだった。
 左衛門尉は、源内に竹刀を握らすことが出来た竜蔵に、今度は親子の仲の修復を頼んだのだった。中に立った竜蔵の御陰で言葉のやり取りをするようにはなった二人だった。
 鉄斎に強請たかりの浪人から果し状が来た。鉄斎は一人で行く。竜蔵と源内は後をつけて行く。浪人は母の兄・鉄斎の親友・浅川礼蔵をだまし討ちにした者・藤沢基次郎だった。
道場破りにきた藤沢をやり込め、果たし合いに出向いた浅川を数を恃んで騙し討ちにしていた。八年前、妻の具合が悪いと聞いた時、妻の兄の敵が宇都宮にいると分かり土産に仇を討ちたかったのだった。五対一の果たし合いに竜蔵と源内も参加し、藤沢を倒し、源内は訊ねたかったことを訊ねる。蟠りが消える。母の子守歌と思っていた物が父の子守歌だったことも分かる。竜蔵の役目は終わった。江戸へ帰る。親子は国許に帰っている左衛門尉に報告をするために旅立った。
 

2016年12月3日土曜日

燦 〈8〉

燦 〈8〉 鷹の刃 あさのあつこ
 吉倉伊月が篠音を訪ねている間に、圭寿が襲われた。燦が銃弾を受け、圭寿は助かる。梟が刺客を襲った。刺客は自死用の毒で死んだ。
 前藩主・継寿の側室・静門院・於ようと吉が田鶴に来ていた。吉は於ようからあらゆることを教え込まれた。氷室峠で覆面の賊に襲われる。吉は賊にぶつかり革袋に入った飛礫を抜きとる。飛来した鷹を見て、吉と賊が「燦」と呼びかけた。賊は輿次だった。輿次は二人について行く。静門院は吉倉家の客だった。
 吉倉伊左衛門が燦が江戸へ行った後兎十の隠れ家を襲ったのは吉倉の命令だったと言った。美加子が言った「神波の宝を田鶴の全ての子のためにつかえたらよろしゅうございますね。」神波の宝を探したのだった。ために輿次がひどい目に遭い篠音が売られた。燦は伊左衛門を殺したく思うだろうと考え、圭寿と伊月が伊左衛門を庇う。
 君主・圭寿を狙った戸上蔵之介と手を組んでいた常陸屋宗三郎は、身の危険を感じ遊女・桔梗どころではなくなった。吉倉家老の秘事をさぐる。
 桔梗の身請けが無くなり桔梗・篠音は燦のもとに来た。燦と篠音を母・八重に会わし篠音を預けるつもりで吉倉の家に連れて行く。
 吉倉の家で於ようと伊月、燦と篠音と輿次が出会う。於ようは伊月に吉を圭寿の側室に召し出して欲しいと願う。奥を取り仕切る主たる女がいて秩序は保たれる。田鶴の安定をもたらすからという。
 常陸屋が吉倉家に主君への反逆があったという文があると脅しに来る。吉が宗三郎から紙入れを擦る。伊左衛門が美加子が自死した翌日、伊月と圭寿を入れ替えたという内容の圭寿の乳母の遺書だった。伊左衛門は真だという。圭寿が美加子の子燦と共に生まれた子だと。伊月は圭寿に告げないまま圭寿の陰で仕えるつもりだ。
 戸上は屋敷に火を付け、刺客を吉倉家に放ち切腹した。於ようが殺される。燦の母の形見の刀の鞘が割れ、薬草の調合方法を書いた紙が現れる。神波の宝か。
 圭寿は二十年田鶴を治める。新田開発、日図羅川五箇村の復興、治水工事、薬草栽培、藩校、療養所名君として名を残す。吉との間に三男三女五人の子は健やかに育つ。
 伊月は圭寿逝去後、四年生きた。没年慶応三年。

京都ぎらい

京都ぎらい 井上章一
井上章一 1955年 右京区花園妙心寺の南で生まれ、五才で右京区嵯峨、清涼寺釈迦堂の西側へ引っ越し育つ。現代宇治市民
 中華思想
 寺がホテル、精進料理
 京都の本山経営 全国の浄財が集まる。
 江戸時代、寺の敷地は広く山も含まれ景観が保てた。
 天龍寺と法隆寺

2016年12月2日金曜日

喜連川の風2

喜連川の風2 忠義の架橋 稲葉稔
 喜連川藩の御所様・藩主・喜連川左馬頭熙氏26才は隣国烏山藩・大久保近江守の頼みで去年洪水で壊れた橋の架け替えをすることになった。
 家老・本間壱岐守主税が命を受け、中老・伊藤竹右衛門に命じる。竹右衛門は天野一角に長者川の川普請と橋普請の差配を任せた。一角は与七郎と一緒に掛かる。村人と相談し橋は同じ所にかけ、洪水が起きないように川上に用水口を五ケ所造ることになった。橋は作事方・浅沼内蔵太と大工方・小森伝十郎が指揮してくれる。一角には金額も日数も判らない。竹右衛門は何もしない壱岐守を飛び越し御所様に伺う。壱岐守は日にちを二月十日と区切る。日がない。出てくる人数が少ないと言う一角に田畑のことでしなければならないことがあるという百姓。
 普請のことで手がいっぱいの一角に商家に押し入った浪人の捕縛の手伝いを通達される。
見付けた四人の浪人のうち、三人を捕まえた。一人は逃げたままだが一角は普請場に戻る。人手が少なく、皆に呼び出しを掛けるがなかなか集まらない。逃げている浪人が怖くて家を出られないという。手伝いに来ている庄助の家に浪人が逃げ込んだ。一角は清兵衛を連て行き清兵衛は女房を連れ出している間に浪人捕まえようとした。清兵衛が斬る。
 清兵衛には病気で寝ている母親があった。母親を看病する妹の気疲れが出ていた。清兵衛一人が働き、清兵衛の役の組の者からいじめを受けていた。清兵衛は真面目に働き、気働きも出来、差配も出来る。一角がいろいろ用いるのも組仲間にすればいじめの対象にもなった。普請を手伝う間に母親が亡くなった。一角のお陰で清兵衛も強くなった。
 御所様の視察中、危険がないように欄干をつけるようにと言われる。十日までにでき上がらないという者に御所様は日限りはないという。人数が足りないと言っている時、村の者が安心して暮らせるようになった。恩返しをすると村人が集まった。十二日、五本の用水の土手が切られ、堰を閉め、橋も完成した。
 御所様から、一角には褒美・三両が出た。一角は清兵衛に持って行く。清兵衛の組を変える。何もしなかった壱岐守は御所様からお叱りを受ける。

表御番医師診療禄〈8〉

表御番医師診療禄〈8〉 乱用 上田秀人
 矢切良衛は黒田藩と南蛮屋の抜荷に関する作業を見た為に命を狙われる。良衛は何も感づいてはいなかった。黒田藩士が四人で襲うが失敗する。出島に入れる遊女に頼み、南蛮人が出島内で良衛を襲う。ピストルの攻撃もかい潜り南蛮人を捕らえる。無かったことにしたい出島町衆は貸出禁止の医学書の写本を許した。オランダ商館側は、和蘭陀人医師を出島勤務にし、最新式の医学を教授し、江戸参府させ、良衛に面会の手はずをつける、その時、最新医学書を進呈すると約束された。早速医学書を写す。役所の良質な紙も貰い良衛は喜んだ。
 義父・今大路兵部大輔より長崎遊学の中止の手紙が届く。正式な使者が来るまでに良衛は筆写を三造は珍しい薬を買う。帰りの船も義父が手配済み。
 良衛の長崎遊学は二ヶ月で切られた。伝の方が毒でなないが何か子が出来ないようにする薬を盛られているのではないか。と考えたのが切っ掛けだ。矢切なら判るかもしれない。矢切の遊学を終えさせよ。ということになった。
 

2016年12月1日木曜日

I love letter

I love letter あさのあつこ
 半年間引きこもりだった17才の高校生・が、伯母・奈波睦美・むぅちゃん30の会社ILLで働くことになった。文通を業務とする会社だった。
 I love letter 夫を殺したという手紙が来てから滞っている女性の家に行った。女性は亡くなっていた。女性が書いてきた手紙の内容と違って穏やかな一生だったようだ。娘が最後の手紙を預かっていた。遺言はすべての手紙を焼くようにということだった。
 さよなら、ママ ぼくはママを殺そうと思います。で始まる手紙を貰う。彼の母親が階段から転げ落ち意識不明の重体だと新聞に出た。隣人と話をしていてむぅちゃんは「突き落としたのはあなたですね。」と言う。留守の時、少年を預かったり面倒を見ているのに、隠で悪口をいっていることが分かり少しぐらい不幸になっても・・・と思ってしまった。少年の名前で文通し、忍び込んでいた。目の前で、少年が帰ってきた母親に飛びつき母親は階段から落ちたのだった。むぅちゃんは録音していた。自首を勧める。お母さんの意識は戻った。
 幼なじみ 岳彦の幼なじみから十年ぶりに電話があった。絵梨の自殺を匂わす内容に驚くが住所は分からない。絵梨はマンションの屋上から飛び降りた。葬儀場から出て行き自殺しようとした少女・三浦愛佳に声をかける。君が絵梨を殺した。愛佳が絵梨の振りして岳彦に電話をしてきていた。同性愛者だったが、絵梨が別れてまともに生きたいと言い出したから悔しくて・・・。絵梨を突き落としていた。警察に一人でいけると言う愛佳。むぅちゃんは刑務所にもお客はいるという。
 こいぶみ 引退した元女優・吉村花世が恋文を探して欲しいとやってくる。二人で家を訪ねる。むぅちゃんは命を狙われた。「こいぶみ」と言う映画で息子を破滅させた女に復讐する役だったが評判が良く無く、引退に追い込まれていた。志保子役の女優は人気者になっていた。志保子役の女優とむぅちゃんは似ていた。吉村花世は精神鑑定を受けることになった。
 猫が鳴いている 二十八才の四年間引きこもりの男性・高村賢吾から手紙が来る。岳彦の手紙に後押しされ夜、外に出た賢吾が、玄関から血まみれの顔で飛び出しきた女の人を、家の中から出てきた男が腕を引っ張り連れて入るのを見た。目が合った女の人は助けてと言っているようだったと書いてきた。続けて、来た手紙には、口の周りが腫れた奥さんが、通りに向かって投げた紙だと、「助けて、殺される」と書いたくしゃくしゃの紙を入れてきた。出てきた男が彼女を引きずるように家に入れた。僕は人と話が出来ない。どうしたらいいのか。と書いてきた。むぅちゃんの知り合いの警察の人に連絡する。高村が吉野の奥さんを刺したということで警察に連行されたという情報が入る。手紙を持って警察に行く。吉野幸次が警察に呼ばれ、DVを認め、犯行を自供した。奥さんは意識不明のまま。高村さんは夜だけ出歩けるようになった。
 Lov letterの降る夜に 鈴森さんから、Love letterが欲しいという手紙が来る。だんだん強要になり、脅迫になる。岳彦はありのままに出来ないことを書いた。過去を振り返る手紙に戻った。手紙が来なくなった鈴森さんに梅雨前にはがきを出した。梅雨が明けた頃、鈴森さんの姪が最後の手紙を持ってきた。すてきなラブレターを貰ったと言っていた。
むぅちゃんが出してきた宝物のラブレターは むうちゃん だいすき せかいでいちばん すき たけひこ 五才の岳彦が書いた手紙だった。