2021年12月31日金曜日

縄文人に相談だ

縄文人に相談だ 望月昭秀  

2021年12月29日水曜日

江戸時代の通訳官

江戸時代の通訳官 片桐一男 
   〜阿蘭陀通詞の語学と実務〜


2021年12月27日月曜日

はぐれ又兵衛例繰控一 二 三

はぐれ又兵衛例繰控一 駆込み女 坂岡真

 南町奉行所で例繰方の与力を務める平手又兵衛38は「はぐれ」と呼ばれる変わり者。過去の類例を完璧に諳んじる驚異的な記憶力で仕事はそつ無くこなすがやっかい事には無関心。

 駆込み女 奉行所に駆け込んできた女郎の死をきっかけに、幼馴染の鍼医者・長元坊と悪党退治に乗り出す。父母を亡くし天涯孤独の又兵衛を元気づけてくれた行きずりの少女・あさだった。十年前あさは奉公先の娘と間違えられ勾引かされ、行方知れずになった。あさを勾引かした者、豊前屋 中津藩普請奉行 定町廻り同心 元締め等。豊前屋から四千両出させる。あさが代わりに勾引かされた娘に千両を渡す。

 師匠が持ってきた見合いに行きそびれた。

はぐれ又兵衛例繰控二 鯖断ち 坂岡真

 長元坊に金貸し殺しの疑いがかかった。北町に捕まった。又兵衛は北町の同心から十手を預かる男を捕まえる。切れ者と言われる与力の悪を憎む気持ちに賭けた。長元坊は牢から出された。

 元旗本の静香の父親が改易になった理由が判る。
 静香と一緒に、父母も来た。一緒に住む。


はぐれ又兵衛例繰控三 目白鮫 坂岡真

 妻・静香の前夫・火盗改長官の息子が、捕まえた盗賊を逃がす。又兵衛が長官宅に乗り込んだ時、長官下の同心たちが、又兵衛の味方に付く。

 静香と祝言を挙げる。奉行から祝い酒が届く。

2021年12月23日木曜日

紅雲町珈琲屋こよみ⑨ 月夜の羊

紅雲町珈琲屋こよみ⑨ 月夜の羊 吉永南央

 草は、朝の散歩の途中、たすけてと書かれたメモを拾った。
紅雲中の女子生徒が行方不明になる。その後、生徒・渡辺聖は家出と判明し一件落着する。では助けを求めるのは誰か。
 草は玄関で倒れた老女を見つけ救急車を手配する。鍵を預けられる。郵便物を片づけたり するうち、家に引きこもりの男がいることを知る。
 紅雲中学の新校長が制服に喧しく、自由な時代のパネル写真を捨てた。二枚のパネル写真が届けられた草は引き取りて現れるまで小蔵屋に飾った。そして「苦さ知る、十四歳」写真展を開催した。
 ひきこもりの男は九年前会社の失敗を一人の所為にされ、信頼していた人にも裏切られ帰ってきて引きこもってしまっていた。草は聖と一緒に百々路家の掃除をし、空気を入れ替える。水道の老朽管の更新工事で断水した時、圭一が出てきた。草は「たすけて」と書かれた裏に彼の妹に「うけいれる」と書いてもらった吹き出しを渡す。

 圭一は関西へ飛び出すことができた。

 久美は一ノ瀬と同居を始めた。親に内緒だったが知られた。

2021年12月21日火曜日

卯月庵へようこそ  十日月の巻

湯島天神坂お宿卯月庵へようこそ  十日月の巻 中島久枝
 
 プロローグ 卯月庵の板前杉治は、暴れ馬に飛び乗り幼い女の子を助けた。杉治は前身を知られたくないため素早く立ち去った。女の子の祖父・薬種屋青天堂は助けてくれた人を探すが杉治は助けたことを否定する。

 三人姉妹 八王子の花火師をかかえている紅屋の大女将・粂が泊まる。妹の材木商に嫁いだ次女・桐が、夫が十八才の娘と浮気して子供が出来たと家を出てきた。浅草の料理屋に嫁いだ三女・市が、三社祭りにお金を使い借金をしていたと泣きついた。三姉妹は話し、桐は迎えに来た夫と帰り、市は桐の持ち出して来ていたお金を借りて帰った。

 眠る男 眠れない男 狂歌師・古家雨漏が千首読みをする三日前から卯月庵に泊まる。前夜、雨漏は眠れる薬を飲んだ。弟子たちは用意のため眠らないための薬を飲んだ。梅乃は誤って雨漏に眠れない薬を渡し弟子たちに眠る薬を渡してしまった。途中で寝てしまう。千首読み終わった。

 猫が仕出かした不始末 紅葉と梅乃が世話をしている猫が、水茶屋の壺を割ってしまった。壺を金継ぎするための金を稼ぐために水茶屋の手伝いをする。二人は物置のような家を片づける。伝は物を捨てられない。伝を如月に一泊させ家を片づける気になるようにする。家は、猫が物置と間違わないように片付いた。壺も戻った。

 人形と旅をする男 人形を連れて旅をしているという男・万作が泊まった。人形に生きているように話しかける。人形の名は鈴。元の家に戻してあげたいので元の家を探している。灘屋に鈴という内儀がいて人形を作った。鈴は六年前に亡くなったことが判った。梅乃は万作の言うことを信じているが、紅葉や他の人は万作を疑い強請りをしようと思っていると考えた。灘屋を呼んだ。万作は灘屋から盗み強請ろうとしていた。人形は灘屋が持って帰った。

 エピローグ 杉治は昔、大名の半年前に生まれた男子を殺す密命を受けた。自分が所帯を持ち娘が生まれた時、仕事ができなくなった。村から逃げた。杉治が使った薬と馬の乗りこなしから杉治は青天堂に呼ばれた。青天堂の主は杉治の兄だった。もう逃げる必要はなくなった。村が仕事を辞めたことを知った。青天堂の主は杉治の兄だった。娘・夏に会った。

2021年12月19日日曜日

お宿卯月庵へようこそ 上弦の巻

 湯島天神坂 お宿卯月庵へようこそ 上弦の巻 中島久枝

 非凡な記憶力で如月庵を支えてきた下足番・樅助が、客の名前を思い出せなくて落ち込む。
十代のころ一緒に呉服屋で働いていた蟹吉のことになるとあやふやになる。記憶力が良過ぎて人に疎まれた。

 十三夜に鼻煙壺の夢 如月庵の掛け軸を書いた書家・村岡の集めた鼻煙壺を買うために秋田から百衛門が来た。五つの内の一つを売ってもらう。村岡の家が火事に巻き込まれる。百衛門は鼻煙壺の心配をする。今だ。全部を売って貰おうと考える。樅助がゆっくり村岡父娘の話をする。百衛門は全ての鼻煙壺を手に入れた。村岡もお金が必要だった。百衛門は村岡に四つの鼻煙壺を預けた。見たい時に来て鼻煙壺の話しをしましょうと帰って行く。

 王子の願いと卵焼き 占い姉妹が泊まった。誰かを待っているようだ。晴吾が重い役に就いて迷いがあるようだ。みんなが占ってもらうように言うが、晴吾は自分のことは自分で決めると言う。占いをする妹は晴吾の言葉を聞いて占いを辞める決心をする。

 おならの顛末 卯月庵で見合いをしている場で、紅葉はおならをしてしまう。見合いの娘・蝶は自分がしたように見せて見合いを止めてしまう。二人は知り合いで相思の仲だったが、話しは壊れたようになる。紅葉は自分の所為だと二人の仲が良くなるように走り回る。紅葉は蝶の甘えを指摘し、逃げ出した。話しがまとまったことを聞いた。
 
 恋の行方と菊の花 梅乃は医者・桂次郎に想いを寄せている。桂次郎は付け火の手引きをした篠の治療をしている。少し元気になった篠は、火付の手引きは園がしたことと言う。恐ろしさに記憶の改ざんがされているのか。園は梅乃の姉で篠の友人今は桂次郎の助手をしている。桂次郎は園を庇う。梅乃は気がついた。桂次郎と園は惹かれ合っている。
 銘石会に石を出品し売り上げを持った五郎大夫の所にお客様がきた。樅助は昔のことを思い出した。蟹吉を殺した角太郎だった。財布を盗んでいた。
 樅助は店の隠し箪笥の開け方を教えなかったために蟹吉が角太郎に殺されたことに思い当たった。

2021年12月17日金曜日

酔いどれ鳶 

酔いどれ鳶 宇江佐真理
 〜江戸人情短編傑作選〜 菊池仁
 
 酔いどれ鳶 松前藩士物語 憂き世店
 先代藩主松前道弘の鷹部屋席だった総八郎は長屋暮らしをしながら傷付いた鳶の怪我が治るまで面倒診る。
 
 室の梅 おろく医者覚え帖 
 妊娠した杏は植木市で美代治から梅を買う。押し込みの犯人だと思った杏は美代治の店に調べに行く。美代治に鉢合わせした杏は腹を蹴られ流産する。美代治は薬で自死した。枯れたと思っていた梅が咲いた。

 雑踏 江戸夜咄草 聞き屋与平
 聞き屋与平の前に、顔に大きなあざがある侍が来る。縁談が起きた。迷っていた。後日縁談を受けたことを言いに来る。

魚族の夜空 春風ぞ吹く 代書屋五郎参る 図書館で借りることにした。

びいどろ玉簪 ひょうたん
 紅いびいどろの簪を持ってきた兄妹に簪もお金も取られる。兄妹が川で死ぬ。父親にはめられた。

 柄杓星  蝦夷拾遺 たば風

2021年12月15日水曜日

江戸の蘭方医学事始

 江戸の蘭方医学事始 片桐一男
 〜阿蘭陀通詞・吉雄幸左衛門耕牛〜
 
 鎖国時代に、オランダの医学即ちヨーロッパの医学を深く学び、蘭方医学の礎を築いた吉雄耕牛の生涯。

2021年12月13日月曜日

京都寺町三条のホームズ17

京都寺町三条のホームズ17  望月麻衣
 〜見習いキュレーターの健闘と迷いの森/後編〜
 
 小松探偵事務所は、田所敦子から佐田と智花の結婚話を壊して欲しいと頼まれる。
清貴は、智花と佐田から何故結婚に反対するのか調べて欲しいと頼まれる。

 葵は円生の展覧会の準備に忙しい。葵は展示に神戸切子を取り入れる。円生は偽絵を描いていた頃の知り合いから、何を書いても贋絵しか描けないと言われ展示会を止めようと思った。清貴の自己肯定感が低いとか、僕がエージェントになってあげると言われ、葵の考えた展示会場に行く。神戸切子のクリエーターチームに円生の幼なじみユキがいた。円生は自作に救われた。次の日から展示会は開かれた。

 円生に偽物しか描けないと言った男・風雅。清貴が初めて見つけ出した画家だった。コンクール展示会と迫って来たものに負け、薬物に手を出し潰れていった人物だった。

 田所敦子の離婚した男の再婚相手が、佐田の母親だった。敦子の息子と佐田は腹違いの兄弟だった。佐田の母親も離婚していた。離婚した男の家は呪術の家だった。敦子は呪われていると思っていた。子供を護るために敦子が、探し出し渡した水晶のブレスレットを佐田が付けていた。ホームズは佐田と敦子の息子・博樹の二人に話しをした。呪いは家に付くもので血には関係がないと。博樹は陰で悪口を言われた思いを口にするが、円生に、母親に捨てられてはいないとか、正面から大人に言われたことは無いだろうとか言われる。
 佐田は兄のいたことを喜んだ。博樹は呪いなんて関係なかったと母親に思われようと考えた。

 香織は春樹を好きだと言うが、春樹は前の彼女を思っている。

2021年12月11日土曜日

花人始末 菊花の夢

 花人始末 菊花の夢 和田はつ子

 植木屋の花恵に厄介事が持ち込まれる。医者を狙う付け火に怯える医者。金貸しが毒殺された事件に苦心する同心。差出人不明の恋文を貰う植木職人・晃吉。江戸一の生け花の師匠に頼りたい花恵だったが、夢幻は菊の生け花大会に向いていた。

 医者 沢森正海に火を付けた三次は、生け花の師匠静原夢幻の屋敷を狙って捕まった。医者・塚原俊道を狙ったのは、花恵が助けた死にそうな老人・佐助だった。疱瘡医と名乗って大儲けしていた。

 金貸しと同じ毒で沢森の妻が亡くなった。塚原が犯人だと乗り込んだ沢森だったが、その場にいた夢幻が、沢森が妻のお腹の中の赤ちゃんを殺そうとしていたこと、沢森が使っていた植木職人が殺したことを明らかにした。
 花恵は晃吉に恋文を出す人を本気に探す。恋文に書かれていたのは、雄鶏がオオムカデの鬼と死闘を繰り広げ母娘を助ける話しだった。いろいろ当たってみて最後に行き着いたのは、米問屋・尾高屋の母娘のところだった。
 娘・初は誰かに押されて大八車に轢かれた。阿片を握っていた。父親は抜け荷が発覚しかけたので自殺した。父親の弟が主人に納まり、妻子を追い出した。二人は、絵草紙屋を開いていた。陥れられた話しを誰かに聞いて欲しくて晃吉に母親が書いていた。初が晃吉の絵を描いていた。諦めさえしなければ泣くのは恥ではないと晃吉に言われたことがあったようだ。話しをしている最中に男たちが襲ってきた。夢幻が助けてくれる。尾高屋に頼まれて来たようだ。初を突き飛ばし轢かれるように仕向けたのは沢森だった。沢森は抜け荷の阿片に手を出していた。尾高屋に頼まれていた。抜け荷をしていたのは弟だった。

 塚原は隠居し、薬料を貰わず診療した。長崎から帰った息子・千太郎があとを継いだ。妹は夢幻の弟子の一人・美乃だった。
 

2021年12月9日木曜日

明日につながる5つの物語 

明日につながる5つの物語 あさのあつこ

 この手に抱きしめて ガンが見付かった父親。半生を振り返る。娘の結婚。

 烏城の空 岡山藩藩主・池田綱政。偉大な父の後継ぎ。襲い来る天災。自分には藩主の器量は無いのか。悩む。父親の寵臣・津田永忠。相談する。
石工たちの空 大阪の石工が岡山へ。岡山領内の大規模な事業を手がける。

 カレシの卒業 愛莉が一年付き合った彼は宇宙人だった。一年で帰ってしまった。おばあちゃんは言った。「本気で好きやったら帰ってくる。この星で好きな相手と暮らそうと思う。うちがそうやったがね。おじいちゃんのことほんまに好きやったからな。」美真が柿の木の下に立っていた。

 フィニッシュ・ゲートから 南野悠斗は将来有望視された高校生長距離ランナーだった。幼なじみの絵梨に振られ、記録も伸びない時期にがむしゃらに走り足を壊した。今、悠斗はランナーのシューズを作っている。絵梨が結婚することになっていた同じく幼なじみの冠城湊。絵梨と湊が結婚式場を見に行く日、絵梨は事故で亡くなった。音信不通になって8年。湊が東京マラソンに出ると電話をしてきた。悠斗は湊に会い、湊のシューズを作った。

 桃の花は 美容室を経営する美枝。結婚はしない。一人で生きていくと決めている31才。 十才年下の那留君に美枝の故郷の桃畑を見に行こうと誘われる。美枝は母親に桃畑に置き去りにされ、親戚を転々として大きくなった。故郷の桃畑で、思い出した。母が無理やり美枝と引き離され再婚させられた光景を。病気の母の見舞いに行く決心をした。捨子だったのは那留だった。養子にし育ててくれた祖父の桃畑を継ぐ。美枝のプロポーズした。

2021年12月7日火曜日

勘定侍柳生真剣勝負〈四〉 洞察

勘定侍柳生真剣勝負〈四〉 洞察 上田秀人 

 柳生家が一万石になり祝いの席を設けなければならない。執政衆、惣目付等呼んでも来ないと家老・松木は言うが、淡海は老中・堀田加賀守は来るだろうと予測する。邪魔もするだろうと思う淡海は、駿河屋に頼み一日前に鮑と鯛と伊勢エビを八十ずつ注文した。一夜干しを頼んだ。案の定、当日、魚市場の売り買いを止められた。
 当日、自分がいないほうが良いだろうと考えた淡海は出かける。堀田は居なかったことで二日後淡海を屋敷に寄越せといって帰った。
 
 淡海は早く柳生を出るために、勘定方を鍛えることにする。また柳生家に貸しを作っておけば帰りやすくなると考えている。
 淡海は堀田の呼び出しとは別に、次の日、駿河屋の口利きで堀田に会いに行く。上方に帰りたいので当家をいじめんとってと直談判。加賀守の屋敷に忍び込んだのは私の知り合いです。貸し一つで許して欲しい。左門を柳生の里に縛りつけて、江戸へ来ないようにすると言った。

2021年12月5日日曜日

輝山

輝山 澤田瞳子

 金吾はかっての上役・小出儀十郎から代官・岩田鍬三郎の身辺を探れとの密命を帯び、江戸から石見国大森代官所の中間として赴く。金吾は万事恙なしの文を送っていた。

 七年が経つ。大森代官所へ、小出儀十郎が来た。銀山で働く十数人の無宿者を連れてきた。
 小出儀十郎は、銀山の辛さ、役人の無慈悲な扱いを江戸から来る間言い続け、無宿人が逃げ出すように仕向けた。同じ日にみんな逃げた。金吾は無宿人の中で、石見出身の年寄りが娘に辛く当たられ逃げたことがわかったので、生まれた故郷へ行き連れ戻す。
 小出は無宿人が逃げたことを岩田の所為にして江戸へ知らせようとする。岩田は、小出の無宿人を逃がし、平和な村人に恐怖を与えたことの元を作ったとして捕らえる。

 岩田は知っていた。何故、小出が自分を陥れようとするかを。小出を見いだし出世させてくれたのは矢部駿河守だった。七年前、岩田は、浜田藩の密貿易と大阪西町奉行の矢部の関係を探りに来た。浜田藩から金銭を受け取っていた矢部は、抜け荷の証拠を江戸に送り、商家と浜田藩の要職を捕縛した。矢部は江戸表に栄転した。矢部は岩田が何をしたか小出に知らされては困るため小出を使い金吾を使い見張っていた。矢部が亡くなったあとも小出は見張らせた。自分と矢部の関わりを明らかにするのではないかという脅えのために。だが、岩田は言う、わざわざ調べるほども価値も無い小人などこれっぽちも気を払っていなかったと。

 金吾は暮らしながら岩田の代官としての、領内の人々に対する姿勢に、生活の平安を護る施政に感化されていたのだろう。金吾は堀子たちと付き合いながら岩田のふところ刀・元締め手代・藤田幸蔵に絞られながら、この人のようになれるかなと思いながら中間の仕事をこなしていた。

2021年12月3日金曜日

大名絵師写楽

大名絵師写楽 野口卓 

 耕書堂蔦屋重三郎は、「祭りで踊り狂う男」という絵を見た。この絵師に役者の大首絵を描かせようと喜三二に紹介を頼んだ。喜三二は描いた人が誰か判れば紹介しようと言った。
 一年が経過し、重三郎は、結果を持って喜三二に当たる。徳島藩蜂須賀家十代藩主・重喜。久保田新田藩二万石佐竹義道の四男。蜂須賀家に養子に行き、早急に改革を行い徹底した藩政の立て直しを図り、家臣団の反発で幕府に隠居を命じられた。国許にいる。兄の息子・甥は大名絵師曙山だった。現在五十六歳

 出羽国久保田藩佐竹家の江戸留守居役筆頭・平沢常富/朋誠堂喜三二。
 徳島藩江戸留守居役・菊池貞兼。部下、瀬波九郎。
 三十三軒堀一丁目 藍玉問屋四三屋芳之助。
 影武者として藩お抱え能役者・斉藤十郎兵衛

 大谷候が役者絵を描き贈答用の摺り物として配った後は市販してもかまわないという許可が出た。豪華な錦絵を摺、贈答用とする。紙や絵の具の質を落とし、東洲斎写楽の落款、極印、板元印を加え市販用とすることにした。

 大谷候が江戸へ出てきた。都伝内の口上絵を描いた。本人をよそ目で見、着物を着た他人を見ながら伝内の絵を描いた。蜂須賀重喜は、五月五日都座を観て、六日から八日で十一枚。九日に桐座を観て十、十一で七枚。十二日河原崎座を観て十三から十五で十枚の絵を描きあげた。何も注文を付けず、書きたい物を思う存分楽しんで書いた二十八枚だった。重喜は上機嫌で帰って行った。

 盆興行にも、大谷候は江戸へ来た。重三郎は立ち姿がいいとか紙の大きさにも注文が付いた。重喜候は三十七枚を描きあげた。疲れたと言い、集中力が欠け、後になるほど出来が悪い。重三郎にも判っていた。本人の書きたいものでは無かったのだ。
 写楽が誰か同心も探っていた。四三屋に行き着いた時には、候は出発していた。どこかの隠居。

 顔見せ興行には来なかった。重三郎は若手に写楽の真似をさせ写楽の名前で絵を出すが重三郎の後悔だけが残った。
 二年後、候は耕書堂を訪れた。写楽は私が作り出した絵師ですので、命を張って守り抜くと言う。

 

2021年12月1日水曜日

舞風のごとく

舞風のごとく あさのあつこ

 小舞六万石の城下に火事が起こった。大火事だった。罹災者が多く出、新里正近の兄嫁・恵心尼・七緒が居る清照寺にも罹災者が集まっていた。清照寺には千代も引き取られていた。千代は七緒の兄・生田清十郎の娘。 生田清十郎は施政者に作り上げられた殺人者だった。妹・七緒の夫・新里結之丞を殺した。弟・林也・正近が清十郎を斬った。千代の辛い日々が始まり、七緒に助けられたところだった。全てを知っているのは、正近の現主・樫井透馬と七緒だけだ。正近と透馬の友・半四郎も知らない。樫井透馬は庶子だが長男が身体が弱いため家老職の樫井家を継いでいる。正近と半四郎は透馬個人の家来になっている。

 透馬と半四郎は、樫井家の蔵を開け、全ての米を罹災者に別ける。藩にも蔵を開けるように掛け合うつもりだったが、登城を止められる。二人は火災の原因を探す。火事の元に行き探った。知りあいの元遊女・梶に合う。身請けされ商家の嫁になっていた。二人の命が狙われる。梶は川で死体となって見付かる。

 千代は罹災者が死ぬ間際、付け火を見たと告白され提灯の模様を告げられる。千代が町へ使いに出た時、襲われるが、廻りの人々に助けられる。千代が町に出たことを知った七緒は、正近に助けを求める。馬で駆けつけた二人は千代が助けられる現場に着く。助けられた千代は新里家で休まされ次の日、清照寺へ送られる。正近は七緒に会う勇気がなく半四郎に送って貰う。正近は七緒にわが家にいて欲しかった。が七緒は寺に行ってしまった。千代は正近に心を寄せたようだが、正近は千代を不幸にしたと思っている。半四郎は千代に心を寄せた。

 透馬と正近は火事のこと、火事後の煮え切らない藩の態度に不審を感じて調べていた。

 正近は元水杉派の生き残り稲生の娘・弥生と妻帯していた。お腹の中で子供が亡くなり妻は実家に帰った。稲生の家で当主が刀を振り回して家来を殺していた。火事のために人々が大変なことになり正気でいられなかったようだ。火事は元水杉派の者を元押し込み梶の亭主の甘言でなされたことだった。火事を起こし城下を騒がせる。梶井家老に一泡吹かせる狙いだった。家老の評判を落とす。稲生は自決した。弥生と弟が残った。新里家で養生する。

 透馬が最後に行き着いた。全てを誘導したのは梶井保孝・透馬の兄だった。自決したくとも刀も持てない。命は亡くなった。父親は致仕届けを出した。
 保孝の世話係のふさに子供が産まれる。透馬は梶井の血だ。生まれればそいつに家督を譲っておれはお役ご免になれるとふきの家をを建てた。

2021年11月29日月曜日

無根の樹 

 無根の樹 三好昌子

 鴛鴦図の女 明和三年 1776年 五月京都西町奉行所同心・榊玄一郎。手下の小吉。堀川の心中死体を調べに行く。現場に奉行所侍医・久我島冬吾がいた。久我島は人助けと思って心中であることをもみ消せと言う。玄一郎は心中事件そ調べる。

 北川夕斎と女中・光。夕斎は美人画の絵師だったが、卒中で倒れ絵が描けなくなっていたが、一年前から幽霊絵師として売り出していた。光は松永堂から北川家に女中として送り込まれ、役者の恋人がいた。夕斎の妻・美和は、玄一郎の妻・多恵の知り合いだった。美和は絵が描けた。美和は夕斎の名で絵を描いていた。松永堂の進めだった。夕斎は庭の池で死んでいた。留守の光を責め言い争い光を殺してしまった。松永堂の忠兵衛が心中として片づけた。
 美和が死んだ。多恵に美和の落款が入った絵を残して。男女の絵だったが、男女が消えて道が一本残った。

 天馬の男 明和三年 1776年 九月 松永堂の忠兵衛が殺された。壺の中の金が盗まれていた。
 隠居した元与力・孝太夫のところで久我島と一緒に天馬空を行くという馬の絵を見せられる。天馬飛翔図。肉筆画だ。二十年前、天馬の絵が市中にばらまかれ尊王事件として大騒ぎになった。禁裏に勤める絵師・式岡華焔が捕まり、所払いになった。
 玄一郎の父親はこの頃に斬られ亡くなった。
 松永堂を調べた時、ばらまかれた天馬の絵の版画が見付かった。久我島は町奉行とともに京都の尊王論に関することを調べる密命を受けていたことを告白する。力を貸して欲しいという。大滅派と言う危険思想を片づける。
 忠兵衛は似絵売りをしていた。忠兵衛を殺したのは黒ずくめの男だった。天馬の絵を出した蓬莱屋の息子は忠兵衛に頼まれて運んだだけだと言った。孝太夫に見せた「魅山堂」に持って行ったのが蓬莱屋の息子だった。玄一郎は天馬の絵を持って家に帰る。多恵が華焔のことを知っていた。
 久我島が華焔のことを調べた。華焔は絵を描いたことを認め護送された。護送途中で殺された。護送していたのは榊玄信・玄一郎の父だった。華焔の家族は14才の天馬、弟は颯馬、妹は夕衣だった。行方不明。
 多恵の父親に絵を見せわかったこと、絵は息子・天馬が描いた物だろう。多恵は華焔の娘・夕衣。多恵の兄が言った。小吉は多分颯馬。
 天馬が描いた絵に主上が画讃を描いた。魅山堂は猩々衆だった。情報集め集団。二十年前、式岡華焔が殺される所に行き合わせた。玄信が華焔を守っていたが殺された。天馬がいた。天馬は逃げ魅山堂の息子に助けられ猩々児になっている。猩々児は敵を討とうとしている。
 王政復古を唱える伊佐船屋の本拠地へ行く。玄一郎は父親の敵というよりも、妻の兄たちを助けるために、久我島と一緒に伊佐船屋は死に、絵は燃やされた。天馬は久我島と江戸へ行った。

2021年11月27日土曜日

入船長屋のおみわ②  夢の花

江戸美人捕物帳 入船長屋のおみわ②  夢の花 山本巧次

 みわが取り仕切る長屋の住人・長次郎が、名も知らぬ女を殺してしまったかもしれないという。脅され親方と造った箪笥を造らされたらしい。
 美羽は長次郎の弟弟子・弥一と探っていく。危ないところには山際を誘う。
 箪笥を注文した高崎屋は知らないうちに箪笥の抽斗をすり替えられていた。その抽斗は親方が隠し棚を作っていたのだった。
 盗まれたのは大名の家老の借金の証文だった。手を貸したのは高崎屋の番頭だった。女を殺したように見せかけるために寺男に薗に似た死骸が出たらと頼んでいた。長次郎が寝ている間に横に死骸を寝させ、長次郎を脅して造らせた。
 番頭を引き込み裏で操っていたのは十手持ちの丈吉だった。
 親方は長次郎を小田原の知りあいに預けた。弥一は親方の後を継ぐ、嫁を貰えと言われ、美羽はどぎまぎするが、弥一は高崎屋の女中といい仲になっていた。

2021年11月25日木曜日

あきない世傳金と銀 〈十一 〉

あきない世傳金と銀 〈十一 〉 風待ち篇 高田郁

 五鈴屋の愛染の浴衣地は江戸中の支持を集めた。一時の流行で終わらせないためにどうすべきか幸は考えた。
 神田から火が出て南側を焼いた。菊栄が造っていた簪も手元にあった二本を残し全部焼けた。菊栄は職人さんが無事で良かった。また造れますと言う。
 日本橋音羽屋(幸の妹・結の嫁ぎ先)は焼けたが、隣の小間物屋の地所を買い上げて再建している。太物商いにてを伸ばすらしい。
 菊枝の簪のお披露目に音羽屋の「娘道成寺」を考えていたが中止になった。
 五鈴屋は火事用心の拍子木柄の愛染を売り出すことにした。幸は浅草太物仲間の寄り合いで愛染の両面糊置きの技を伝授し皆で売り出すことにした。音羽屋に買い占められ綿の反物が少ない。仲間で別けあい全ての店から売り出す。
 音羽屋は顔見せの役者に愛染を着せ、同じ柄物を売り出した。
 幸の夫・智蔵の友人・富五郎が大阪からやってきた。
 顔見せの千穐楽に菊栄と幸はよばれた。演目の筋に障らない玉響の出番に、立女形吉之丞と中村富五郎が、白拍子に扮し菊栄の簪を刺し現れた。
 浅草太物仲間で下野の綿栽培を手助けすることになった。
 勧進大相撲で揃いの愛染浴衣をきることになった。幕内と二段目、三十人。
 親和文字を使い個人個人の名前入り浴衣を作ることにした。幕下には手形柄にした。手形柄を河内木綿七十反を半纏にすることになった。触太鼓の面々に揃える。
 浅草太物仲間で作り、売ることになった。大成功に終わる。

 浅草に丸屋という呉服屋さんがあった。お客に優しい呉服店だった。呉服仲間で値上がりが決まり安く売れなくなった。太物屋に転身したいという話が出た。浅草太物仲間は浅草呉服太物仲間にしようという話が出た。
 

2021年11月23日火曜日

時雨みち

時雨みち 藤沢周平 

 帰還せず 隠密・半之丞は、まだ戻らぬ同僚山崎を探しに加治藩に戻った。鍛冶屋の婿に成り代わっていた。半之丞は死んでいたと報告すると山崎に告げるが、山崎は半之丞を殺しにきたので半之丞は山崎を殺した。

 飛べ、佐五郎 佐五郎は敵として十二年追われていた。国元では斬りあった理由が冤罪だったとわかり同情の声があがったという。佐五郎を追っていた男が病で死んだ。佐五郎は安心し、三年間世話になったとよに別れを告げた。とよは佐五郎を刺し殺した。

 山桜 野江は18才で嫁に行き、二年目に死別。一年前に磯村に再嫁した。舅は金貸しをし、市中に妾を囲い早く隠居し、蓄財に専念していた。磯村家に馴染まない。結婚せず一人暮らしていた伯母の墓参りの帰り、山桜の枝を折り取ってくれた武士・手塚弥一郎と出会う。出合は初めてだったが、彼からの縁談があったことを思い出す。母一人、子一人の家に嫁ぐことをためらった。今幸せかと言う質問を受ける。
 その年の暮れ、手塚弥一郎が諏訪平右衛門を刺殺した。諏訪は富農と組み農政に口を挟み、富農に有利な検見をし、私服を肥やす。長年の農政への干渉が百姓の強訴に繋がるが、諏訪は名家老の裔のため手出しが出来なかった。帰ってきた夫の手塚の悪口に野江が口答えをし、離縁となった。
 手塚は四月の藩主の帰国を待ち裁断を仰ぐことになった。獄中で丁寧に扱われているらしい。
 野江は山桜の枝を手折ってもらい手塚の家に行く。手塚の母が、磯村のような家に嫁がれたあなたやご両親を怒ってましたよと言う。野江は家に上がりながらここが私の来る家だった。もっと早く気づかなかったのだろうと思った。

 盗み食い 助次郎は、腕が良く新しい物にも挑戦する根付師職人だった。助次郎は労咳だった。二年先輩の政太は、親方の技を忠実に伝える職人だった。親方の跡継ぎを匂わされていた。政太には将来を約束したみつがいた。助次郎が寝込み仕事が忙しくなったため、みつに助次郎の食事を頼んだ。仕方なく受けたみつだった。一月後、みつは政太に別れ話を持ってきた。政太と別れて助次郎の面倒をみるという。政太はわかったと言うしかない。政太は助次郎に親身な心配をしていなかったことに気付く。

 滴る汗 森田屋右兵衛は公儀隠密だった。城内で徒目付の鳥谷に茶を飲みながら城下に公儀隠密がひそんでいることが知れ手配をしたと教えられた。右兵衛は、刀を埋め、書付を燃やす。一度連絡を頼んだ下男を探し、寝込んでいる爺さんを殺した。鳥谷が能登屋が捕まったことを教えてくれる。爺さんが殺され根付の折れ端が落ちていたとも言う。右兵衛の亀の根付のしっぽだった。右兵衛は全身が汗にまみれた。

 幼い声 昔の長屋の少女

 夜の道 三才の娘がいなくなり十五年探している伊勢屋の内儀、結婚が決まったすぎのところにやってくる。すぎは伊勢屋に行く。何もおぼえていない。自分の子供が三才になった。思い出した。伊勢屋に走る。

 おばさん 夫を亡くし一人暮らしのよねは長屋の人に馴染まない。火事で焼け出された若い男が転がり込む。よねは元気になるが、男は一緒に住みたい女が出来て出て行く。

 亭主の仲間 店を潰した亭主は人がいい。人足をしている。人足仲間を連れてきた。二度目に一分貸して欲しいと頼む。ちょこちょこ付いてくる。安之助は仕事を辞めた。二日後一分の無心にくる。きくが留守の間に安之助がくる。辰蔵が金がないというと家捜しして荒れ狂って帰った。一月後夜中に誰かがきた。二人は出なかった。首を裂かれた猫がすててあった。これからどうなるのか。

 おさんが呼ぶ 紙問屋伊豆屋の下働きのさん19才は無口だった。自分からしゃべれなくなっていた。紙問屋へ紙の売り込みに地方から人がくる。廉七と民蔵という人がきていた。手代の庄次郎と民蔵が得意先にお金を使い廉七の邪魔をしていることを知る。廉七が帰る時、さんは一緒に連れていってくれと頼む。主人にさんのことを話しに行く廉七に付いていって民蔵と庄次郎のことを話そうと思うさんだった。

 時雨みち 昔の女に会いに行く

2021年11月21日日曜日

落暉に燃ゆる 大岡裁き再吟味

落暉に燃ゆる 大岡裁き再吟味 辻堂魁

 大岡忠相は還暦を迎え、江戸町奉行から寺社奉行に転出させられていた。なぜか突然の気鬱に襲われた忠相に町奉行時代のある事件への疑念が芽生えた。「私の裁きは本当に正しかったか?」鷹狩りで出会った江刺・古風十一を使い真相の究明を始める。

 五年前の米問屋高間屋の打ち壊し騒動の後、番頭が殴り殺されているのが見付かった。一ヶ月後、指物職人の与佐が殺しているのを見たと辻番の三人の番人が訴え出た。与佐が捕まり、拷問に掛けられ死罪になった事件だった。

 三人の番人の行方は判らない。捕まえた同心・前波甚之助の行方もわからなかった。

 十一の調べで三人の辻番が番頭を殺し、同心は金を掴まされたと判った。前波は自死した。全てが判ったところで今更何も出来ない。三人をどうにも出来なかったが、酒亭の五平は博打にのめり込み一年も経たないうちに借金が膨らみ酒亭を失った。道三郎は水茶屋の客ともめ刺された。表火之番衆・仲間広之進こと広助は何者かに惨殺された。誰かと口論になり斬られたと見なされた。

2021年11月19日金曜日

京都船岡山アストロロジー

京都船岡山アストロロジー 望月麻衣 

 憧れの耕書出版に就職した高屋誠は中高校生向け占い雑誌に配属される。編集部は大阪支社で住まいも未定。占い嫌いの高屋は、船岡山珈琲店にいる正体不明の占い師にぶち切れ星読みと大喧嘩をする。その揚げ句店の二階に住むことになる。

 高屋の小学生の頃、ヒミコという占星術師がいた。高屋の母はのめり込み離婚した。高屋は祖父母に育てられていた。高屋が覆面占星術師がいる店に住み始めたことを知った高屋の母は息子まで騙されていると思い込み珈琲店に乗り込んでくる。
 ここの覆面占星術師は女子高校生の桜子だった。昔、ヒミコだったのは桜子の兄と名乗っている柊だった。女装していた。母と母の再婚相手に良いように利用された小学生だった。桜子と柊に占星術を教えたのは桜子の祖父だった。柊は占星術を習い記憶力が良過ぎたため利用されたのだった。
  
 母に再婚話があった。母は高屋の許しがないと再婚に踏み切れなかったのだった。

2021年11月17日水曜日

土偶を読む

土偶を読む 竹倉史人
 〜130年間解かれなかった縄文神話の謎〜

 土偶は縄文人の生命をはぐくんでいた主要な食用植物がモチーフに選ばれている。
 具体的かつ写実性に富む、植物の人体化なのである。

 ハート型土偶の顔は二つに割られたオニグルミの殻
 ハート型土偶の体表に施文される渦巻き状の模様とエッジに並ぶ孔はオニグルミの殻の文様 に似る。
 
 合掌土偶と中空土偶の顔はクリをかたどっている。
 頭頂部の尖端、顔面の横断線、横断線の下側の繁雑な斑点、体表のヘリンボーン様はクリの毬ではないか。
 
 椎塚土偶はハマグリを型ちどり、他にもオオノガイ、アサリ、サルボウ、シオフキ、アカニシ等の貝類を形どっている。

 ミミズク土偶はイタボガキ

 星形土偶はオオツタノハという笠貝類。貝輪の材料だった。

 ビーナス土偶・カモメライン土偶はトチノミ。

 結髪土偶は最後の土偶。刺突文土偶は稲やヒエを表現している。

 遮光器土偶はサトイモの精霊像。

2021年11月15日月曜日

花宴

花宴 あさのあつこ

 嵯浪藩の勘定奉行の西野新佐衛門 の娘・紀江は小刀の名手だった。父の弟子・三和十之介との縁談がまとまる。二人は手合わせをする。互角だった。だが縁談は破談になった。十之介の兄が殺され十之介は仇討ちに出た。帰ってくれば三和家を継がなくてはならない。
 一年が経ち、紀江と勝之進との縁談が整った。十之介が仇を討ち帰藩した。家禄が五十石増え、一年後家督を継ぎ、筆頭家老磯村の近縁の娘と妻帯した。
 紀江の心から十之介は消えなかった。娘が生まれた。しかし、かっての婚約者の姿を追っていた。娘は三才の夏亡くなった。
 次の年の夏、新佐衛門が城中で亡くなった。心臓の発作ということだった。
 三年が過ぎる。朝帰りの夫が覆面の男たちに襲われた。紀江が助ける。傷だらけの夫が、父の亡くなった理由を伝えた。
 筆頭家老になるために磯村は前筆頭家老堀田を毒殺した。堀田は野田家老を筆頭家老にしようとしていた。磯村は堀田を殺し、野田の縁戚のものを陥れるために十之介の兄を殺していた。堀田の死に不審を持った新佐衛門は不正の証拠を探していた。新佐衛門も毒殺された。勝之進は、毒殺した医者の遺書を手に入れた。そして襲われた。勝之進は書状を紀江に託した。
 紀江は竹筒を持って家を出る。五人の男に囲まれる。三和がいた。紀江は父の死の真相をご存知かと問う。全てを知っていたと判る。自分の身を挺して三和を倒す。三和はこうするよりしか・・・なかった。気がついた時には後戻りが出来なかったと言い残して死ぬ。
 書状は下男が元大目付に届けた。
 紀江は屋敷に帰り、勝之進の胸に顔を埋め、安堵し自分の帰る場所はここだったとやっと辿り着いた思いだった。

2021年11月13日土曜日

出絞と花かんざし

出絞と花かんざし 佐伯泰英

 京北山の北山杉の里・雲ヶ畑の山小屋でかえでは暮らしていた。母を知らず、父と犬との暮らしだった。六才年上の従兄の萬吉と六才のかえでは、京見峠へ京の町を見に行った。途中、杉坂の船水で、祇園のお茶屋花見本多の女将と出会った。何年か後、京に出てきた時は頼っておいでという言葉を貰った。
 二人は、上賀茂神社の巫女だった村長の嫁さんに読み書きを習うようになった。一年半が過ぎた。萬吉は北山杉を育てる山稼ぎをしている。三男の萬吉は京に出て宮大工になりたいと思っていた。
 かえでの父親が小野郷の山で百年ものの天絞を見つけ三人で盗もうとして谷に落ち死んだ。かえでは村長の家の養女になった。萬吉は小野郷の材木商菩提寺屋の若旦那と馴染になり北山杉のことを教わった。
 出会ってから二年が経ち、萬吉は花見本多に手紙を出し、宮大工の棟梁を紹介してもらい弟子になった。北山杉をよく知る萬吉は棟梁付の新弟子になった。英才教育を受け、六年が経った。
 七年目、かえでが京に出てきた。 かえでは母が京生まれということで京へ行きたいと思っただけで、何をするか決めていない。かえでは舞妓を見、髪結いを見学し、舞妓の髪に付ける花かんざしを作る修業を選んだ。
 かえでは、仙造の元で三年、職人が代々生み出し完成させた花かんざしの造り方を手と頭に刻み込んだ。師匠はかえでの考える花かんざしを一年分造ってみと言われた。行き詰まったかえでは北山に帰り自然の中を歩き、京へ帰った。
 かえでが花かんざし職人として生きていけるか審査される日が決まった。
 かえでの花かんざしを造り始めて四ヶ月後、花見本多の広座敷に花畑が満開に咲くように四季の花々が飾られ、花かんざしが披露された。
 かえでの義母、実母、萬吉の父母、師匠、菩提寺屋の主人、若旦那、大工仲間、舞妓等が集まった。
 萬吉は師匠の跡継ぎになるような話しも聞こえてくる。

2021年11月11日木曜日

縄文土偶ガイドブック

 縄文土偶ガイドブック 三上徹也

縄文土器・土偶

縄文土器・土偶 井口直司 

2021年11月9日火曜日

親子十手捕物帳⑦ 

 親子十手捕物帳⑦ 親子の絆は永遠に 小杉健治

 辰吉がりさと別れて二年が経った。りさは鳥羽屋の清吉と一緒になり娘を産んでいる。

 伊賀屋に泊まった男・利八が杉ノ森稲荷で殺された。利八は娘・鶴を吉原に売っていた。金子は持ってなかった。利八に大きな身体の男が付き添っていたようだ。兄弟で利八を狙っていたようだ。弟の甚五郎と、伊賀屋の奉公人・岩松、本当の名は甚一郎だった。

 りさは清吉に頼み、鶴を吉原から身請けし、利八が持って帰るはずだった金子を鶴の故郷に送った。鶴は鳥羽屋で奉公している。

 捕縛中に弟・甚五郎が屋根から落ち死んだ。兄・甚一郎は岡っ引き・忠次が殺したと思い、忠次の内儀・さやの命を狙う。甚一郎は捕まる。大番屋へ護送中、忠次が甚一郎を逃がしてしまう。さやが刺され生死をさ迷う。甚一郎は捕まる。辰吉は、さやが元恋人・寅助と会っていることを知り、忠次が不穏な動きをしていると思っていた。忠次は甚一郎の縛りが緩くなったことを認めた。辰吉はさやが、忠次とすれ違いの生活が寂しいと寅助に愚痴っていたことを話す。忠次は岡っ引きを辞めた。

 一ヶ月後、辰吉は赤塚新左衛門から手札を貰い、岡っ引きとして独立した。若親分と呼ばれている。

2021年11月7日日曜日

ごんたくれ

ごんたくれ 西條奈加

 吉村胡雪・彦太郎。淀藩の侍の家に生まれる。祖父に馴染、父母に疎まれているように感じていた。応挙の弟子になる。三度破門されている。 三重の寺に絵が残る。箏白に宮島の寺に絵を残す。

 深山箏白 師匠に馴染まず、一人で絵を描く。池大雅夫婦と馴染むが、大雅が亡くなる。応挙の絵は図絵だという。胡雪が亡くなり宮島の絵を見に行き、箏白の名を捨てた。

 

2021年11月6日土曜日

めおと相談屋奮闘記⑩

めおと相談屋奮闘記⑩ 梟の来る庭 野口卓

 恋患い 信吾の竹輪の友の一人・完太が恋患いになった。見合いの相手と相思になったのに、見合いの席で、イヌ、サル、カエルを連発したため相手の親が断りを入れてきた。波乃は相手の豊に会いに行く。豊も完太を気に入っていた。波乃は恋患いになり二三日食事を抜くことを進める。
 二人で結婚することになったと言いに来た。豊は波乃が言った通りになったと驚いていた。

 梟の来る庭 庭に梟・福太郎が来た。信吾に長崎屋のカナリーという鳥の話をする。オウムやインコ、カナリーに興味を持った波乃のために、何でも知ってそうな留守居役・蟻坂吉兵衛に聞きに行く。後日、吉兵衛はカナリーとオウムを宮戸屋に持ってきてくれた。信吾と波乃は鸚鵡返しに驚いた。

 蚤の涎 昇平が相談に来る。昇平は小僧から手代、手代から番頭と出世した。同僚から嫉まれ、初めての集金の帰りを狙うという悪巧みがあることを聞く。信吾が護身術を身に付けていることを知り護衛を頼みに来た。昇平と信吾は体付きが似ていた。夜分でもあるので代わることにした。三人を脅し上手くいった。昇平は何もなかったように振る舞ったようだ。一ヶ月後昇平は実家に帰った。昇平の実家を信吾は知らない。相談事の中で、昇平が使った言葉、蝶の口と雀の涙、蚤の涎で波乃の笑いの箍が外れた。
 昇平が集金に行った足立屋の隠居・鈍牛が信吾に興味を持ち、話しを聞きたいと言われた。父のことを知っているようだ。信吾は何も知らないが聞かなかった。

 泣いた塑像 家事を何も出来ない波乃のために、奥女中のモトが波乃に付いて新所帯に来ていた。モトは全て教えたので春秋屋に帰ることになった。
 モトのことを権六親分が教えてくれた。元旗本の姫・基姫様だった。頑固一徹な父親は公金を横領したとされた。追い落とそうとした連中が書類を偽造し罪を被せた。父親は妻と娘を離縁し、首謀者三人を長男と一緒に叩き斬り、取り巻きも殺傷した。父と息子は切腹した。母も自死し姉は尼になった。基はどこに行った判らなくなっていた。春秋屋に助けてもらった。春秋屋は基を外と接触させず、奥に置いた。
 話しを聞いた波乃は泣いた。モトには知っていることを気付かせないように振る舞う。
 感謝の宴を開いた両家の前で、波乃が礼を言うと、モトは自分が二十年前に春秋屋の奥様・ヨネに受けた恩返し、生涯かけても返せない程の恩がある。と言った。
 モトは春秋屋に帰って行った。

2021年11月5日金曜日

めおと相談屋奮闘記⑨

めおと相談屋奮闘記⑨  寝乱れ姿 野口卓

 さかとら  仮名逆虎と名乗る人が信吾に会いたいと言ってきた。話しているうちに、女の持参金狙いの女房喰いと言われる仲人の話しになった。次にどんなてを考えるかの話しになって、信吾は武家娘と商家の縁の話しをした。本当に起こってしまった。持参金付の武家娘を花嫁に式の当日花婿は持参金と共に消えた。婿が逆虎に似ている。信吾は自分が策を与えてしまったと大弱りだった。逆虎がやってきた。信吾は安心した。

 信吾二人 天眼が調べた巌哲和尚のことを話してくれる。もと武士、妻は凉、息子は信吾妻と息子を亡くし、坊主になったという。巌哲のところに行くが、そんな話しはできなかった。信吾には二人の父がいる。二人の父から信吾と言う名前っっを貰った幸せな男だ。

 幸せの順番 幼馴染がお妾さんになっていた。出会ってしまったと時々将棋を指しに来る商家の手代・徳次が川を見て悩んでいる。お妾さんになっている幼馴染に出会ったことに衝撃をうけていた。二ヶ月後、徳次が幼馴染の仙を連れてきた。一緒になることになった。徳次は徳兵衛と名乗り京都店の掛になった。徳次は二人にめおと箸を持ってきてくれた。

 寝乱れ姿 将棋会所で常連さんが話しをしている。虚実織り交ぜ艶笑談、艶っぽい話し、怖い話。

 女先生冷汗 鏡の中から声がして困っていると糸が相談してきた。男はイトを好きだと言う。それは自分ではないイトだった。糸は男の言うイトの屋号を聞き出していた。波乃はイトに会いに行く。男は首つり死んでいた。波乃は、糸に男にイトはおかめひょっとこの悪いところばかりを取ってつけたような顔をしていると言ってきたと告げた。糸は波乃に話しを聞いてもらってから男の声が聞こえなくなったと言った。

2021年11月4日木曜日

めおと相談屋奮闘記⑧

めおと相談屋奮闘記⑧ 友の友は友だ 野口卓

 川獺日和 信吾は釣りに行き、川獺に竹輪の友・寿三郎の家・極楽堂に押し込む話しをしていた者がいると教えられた。引き込みの女が女中として入り、裏木戸を開ける手はずになっている。信吾は寿三郎に話し、お金が家にある日を聞き出し、権六の助言を聞き、寿三郎と裏木戸を張り込む。女中が鍵を開けに来たところを捕まえる。外では盗人たちが役人に捕らえられた。権六は極楽堂からのお礼百両を半分を信吾が受け取るなら自分も五十両受けとると話しを付けたようだ。信吾は五十両を貰う。信吾は波乃と一緒に川獺に礼を言いに行く。

 目覚め 常吉がハツの感化か将棋に興味を持ち強くなりたいと願うようになった。常吉は駒の並べる順序、盤上の駒の位置を升目の記号を使って頭の中で表すことを教えてもらった。信吾は常吉が、強くなれば宮戸屋に帰らなくても良いかもしれないと思う。

 繋ぎ役に例 三月、信吾と波乃の披露宴が開かれた。寸暇亭押夢が家に来た。押夢を見た甚兵衛が、銀竹屋だと屋号で呼んだ。四十過ぎで隠居したと教えられた。信吾は詳しく知らなくて良いと思った。

 新しい友  駒形に武士が来るようになった。羽織の紋から御城将棋の大橋家の若様だと判ったが、信吾は気にしない。三度来て、駒形に慣れそうになった時、迎えが来て来れなくなった。ハツと指していたのが途中になった。信吾は三番勝っている。

2021年11月3日水曜日

めおと相談屋奮闘記⑦ 

めおと相談屋奮闘記⑦ 次から次へと 野口卓

女房食い顛末 権六が女房食いの話しをする。持参金を持って結婚し、妻をいびり妻側から離縁するようにもっていく。妻側からの離縁だと持参金を返さなくてもいい。持参金目当てに始めから追い出すのを目的に結婚する者がいるらしい。またそれが目的で仲人話しを持って行く者がいるらしい。新妻が入水した事件が起こった。そして悪徳仲人が殺された。天眼の瓦版がでた。仲人殺しの犯人は捕まらない。信吾は犯人は権六親分ではないかと疑った。

将棋指し 子供たちからの提案で、十五才以下は十文になった。ハツは女の子じゃない。ここでは将棋指しだと言った。子供たちが増え、留吉の妹・紋も来るようになった。

付き纏う数 夕七が相談に来た。自分に七が付纏うという話しだった。

運も力だ  信吾の所に知りあいの話しだがと庄太郎が相談にきた。お店のお嬢さんと恋仲になってしまった。そのお嬢さんに大店から養子話が舞い込んだ。断れない話しでどうしたらいいのでしょうという話しだった。波乃の所に知り合いの話しだがと千枝が相談に来た。店の手代と恋仲になったが大店から養子に来る話しが舞い込んだ。どうしたらいいのでしょうと言う。信吾と波乃は話しあったが結論は出ない。待っていてもそれ以後二人からの相談がなかった。
 半月以上たち、二人が一緒にやってきた。大店のほうから婿養子の話を無かったことにしてくれと言ってきた。婿養子に来るはずだった男に大きな取引先から娘の婿にと望まれたようだ。残念で落ち込んだ様子で、父親に手代を婿にと母親が進めてくれ二人は一緒になれることになった。自分たちは何もしていないが、運が良かった。

 波乃の姉・花枝の婿取りの婚礼が行われた。 三月二十七日。

2021年11月2日火曜日

めおと相談屋奮闘記⑥ 

めおと相談屋奮闘記⑥ なんて嫁だ 野口卓 

 竹輪の友 信吾の竹輪の友が来る。ありきたりでない人を捜していた波乃がありきたりじゃない信吾を見付けた。そんじょそこらににいる人じゃない波乃だった。三人は二人を見て結婚も良いものだと思った。波乃の友人が二人来る。
 相談所の仕事が入った。母親と息子・新之助が来る。息子が弟に店を渡し、自分は別のことをしたいと言う。信吾の瓦版をみたからだろうと言う母親。信吾は店を継ぎたいけれど後遺症のため継げなかったと話す。

 操り人 母親と息子と話した次の日、新之助の弟・仲蔵が来る。来た時は、母親と兄に何を話したとか母親にいくら金を貰ったとかけんかごしだったが、話して波乃も加わり仲蔵は笑って帰る。半年後、仲蔵が母親と兄、信吾と波乃、正吾も呼び食事をする。母親は信吾と波乃の三人の時、二人に頭を下げ、包みを手渡した。十両入っていた。

 そろいの箸 波乃は初めて子供の相談にのる。五人のもらい子の姉兄 弟姉妹が両親が優しい。悪いことをした時には怒って欲しいと言う。波乃は五人そろって両親にそう言うことを進める。子供たちに預けられた相談料でそろいの箸を送ることにした。箸は子供たちが選んだ。 
 黒介が波乃の子供たちとのやり取りを聞き、関心していた。
  
 新しい看板 権三親分が波乃に会いに来る。モトが権ちゃん権三さんと言い直し、権三はモトさんと言った。二人は知り合いだった。権三は信吾と話していると身に付いた汚れが落ちていくという。
 前に来た泥棒・万作がお金を返しに来た。
 よろず相談所を波乃と一緒にすることになった。看板を「めおと相談屋」に作り直した。

2021年11月1日月曜日

よろず相談屋繁盛記⑤ 

よろず相談屋繁盛記⑤ あっけらかん 野口卓

 大波の狭間 信吾が相談屋を開いて一年、  ならず者にからまれた事件を機に瓦版のネタになり武芸が達者であることが町に広がった。話題の人物となり、宮戸屋のお座敷がかかることも増えていた。
 今回のお座敷は大名家の留守居役七名だった。みんな字名で呼びあい質問する。最後に陸奥のさる大名家のお家騒動の話が出た。継ぐことが決まった嫡男が、信吾にそっくりだと寡言と呼ばれた留守居役が言った。信吾は過日、十両の手付けで関わり、後百両を貰ったあの騒動だと気付いた。関わったことは微塵も知られないようにした。

 破鍋に綴蓋 楽器商「春秋堂」の家族と信吾の家族が集まった。和気あいあいのうちに話しが弾み、「信吾の嫁に波乃さんをいただけませんか」「申し出を慎んでお受けいたします」と進んだとき、信吾が言わなければならないことがあると切り出した。生活費のこと、そしてほんのたまに、自分の記憶が抜け落ちることがあると話した。波乃は信吾のところに嫁に行くのは自分しかいないと言った。祖母の似合いの夫婦です。破鍋に綴蓋の言葉で一緒になることが決まった。
 次の日、波乃は将棋会所を見に来る。野良犬の群れも来た。波乃は信吾が野良犬の親玉と話しをしているようだったと言う。
 隣家を借りることになり仮祝言を挙げ、一緒に住むことになった。
 ハツと信吾は心の声で話した。ずっと将棋を続けると。

 余波は続く 旗本の次男、三男三人に待ち伏せされた。三人を連れて家に帰り酒を飲み愚痴を聞いてやる。
 七名の留守居役のうちの白眉が信吾に会いに来た。話しをして上機嫌で帰った。親たちは白眉の機嫌の良さに驚いた。
 留守居役の若干が会いに来た。名前は蟻坂吉兵衛だと名乗った。蟻坂は機嫌よく帰った。親たちは若干の明るさに驚いた。

 初めての夜 巌哲和尚に波乃を会わせる。甚兵衛と常吉に三日後の二月二十三日の仮祝言のことを告げる。
 新居に新郎・新婦の家族が集まり武蔵屋が仲人で祝言が行われた。

2021年10月31日日曜日

よろず相談屋繁盛記④

よろず相談屋繁盛記④ やってみなきゃ 野口卓 

 一年長いか短いか 信吾が将棋会所「駒形」を開いて一年になる。将棋大会を開くことになった。集まった寄付で賞金を出す。三両、二両、一両。十才の少女・ハツも出ることになった。出場者は百八十三人になった。

 二転三転その先は 大会初日の朝、伝言箱に相談したいので連絡が欲しいと紙片が入っていた。大会初日が始まり、昼過ぎ連絡場所・口入れ屋松屋に行く。十日後に一献と連絡が入っていた。権六親分も顔を出す。盛況だ。
 二日目、十日後に会おうと言っていた日が、明後日の暮れ六つにという連絡だった。瓦版屋の天眼が来た。そんな時、騒ぎを起こして金をせしめようとする破落戸が来た。拳で殴りにきた腕を躱し、手指の関節を逆取りし、榧寺で話そうと外に出る。榧寺で男の不意打ちの蹴りを躱し、右手の短刀を突き出すのを叩き落とす。右手首を摑み左腕を巻くようにして右肘を決めた。そして席料を払うかもう出入りしないかということで話しをした。男は捨てぜりふを残して去った。付いて来た見物人が騒いだ。信吾は天眼の質問攻めにあった。駒形に帰ると客や見物人が大騒ぎだった。
 三日目、騒ぎは治まらなかった。近所の人々宮戸屋の常連、取引先まで見舞いを持ってやってくる。大会の最中なのでと引き取って貰う。昼過ぎ、天眼の瓦版が出回った。天眼は細部まで模写していた。瓦版を見た人々が駒形に押し寄せた。大会は中止になった。権三親分は掏摸用心をするほどだ。着飾った娘たちがきゃーきゃー集まる。

 狸だって客である 夜は宮戸屋に泊まることになった。家族にも秘密にしていた護身術のことが瓦版で町中の人に知られてしまった。九才で巌哲和尚から棒術を習ったこと。
 宮戸屋で伝言箱の人と会う。取り留めの無いことを話しているだけで気にしていることの示唆を得られると評判だという。麻太郎と名乗る男と話しをした。よく笑って終わる。
 信吾の見物人は多いが、大会は順調に進む。自分から不戦敗を申し出てもいいことになった。
 豆狸からの相談がくる。怪我をした母親の食事を下さいというものだった。毎朝、宮戸屋から昨晩の残飯を貰ってきた。狸は優勝者の名前を教えてくれた。
 信吾に宮戸屋の客からお座敷が掛かるようになった。

 これが最後の一里塚 信吾に客が来た。信吾を見極めにきたのか。
 母狸の傷が治り狸が親子で礼に来た。麻太郎が駒形を見学に来た。
 信吾に楽器の卸と小売りの老舗・春秋堂の一家から宮戸屋のお座敷が掛かった。瓦版のことを話した。
 大会は一敗が二人で優勝決定戦が行われ、桝屋が優勝、甚兵衛が二位、太郎次郎が三位になった。
 麻太郎が、訳がわからぬ状態に陥っていたのに、信吾と話しをして根幹がはっきりした。ありがとうと三両を置いて信州に旅立った。
 春秋堂一家と宮戸屋一家が顔合わせをすることになった。

2021年10月30日土曜日

よろず相談屋繁盛記③ 

よろず相談屋繁盛記③ そりゃないよ 野口卓

 人を呪わば 宮戸屋で食事をしたひとが腹下しをしたと医者がやってきた。傘庵。瓦版が出る。岡っ引き権六が調べてくれているようだ。権六は大ぴらに出来ないようで、宮戸屋の繁盛を嫉む深田屋が医者と結託してでっちあげ金を強請るための狂言だったことを、知りあいの瓦版書き・天眼に書いて貰う。

 縁かいな 生き物と話しの出来る信吾は、甚兵衛の飼い猫・黒介に相談屋の看板に伝言箱を取り付けることを提案される。相談に来た人は、今までの相談で面白い話しを教えて欲しいというものだった。信吾は仲が悪い商家の娘と息子が恋しあった話しを作って話した。その話しが寸暇亭押夢という人によって「花江戸後日同舟」という戯作本になって売り出された。

 常に初心に 巌哲和尚の紹介でやってきた丑太郎は楽しくしゃべり、ぼんやりしていたことがくっきりと見える気がすると相談料を二分置いて帰った。

 隣はなにを  隣人が子供の声がうるさいと言ってきた。信吾は酒を持ってあいに行く。
信吾は隣の人が大変だという猫の声に起こされる。三人が刀を持って押し掛けている。信吾が蹴散らし逃げた。隣人・藤原は同僚の罠にはまり、同僚を殺害して十八年逃げていた。信吾と話してその夜居なくなった。


2021年10月29日金曜日

よろず相談屋繁盛記②

よろず相談屋繁盛記② まさかまさか 野口卓

 信吾 黒船町で将棋会所「駒形」とよろず相談所を営む
 甚兵衛 豊島屋の隠居。「駒形」の家主
 巌哲和尚 信吾の名付け親で武術の師匠
 常吉 「駒形」の小僧
 庄右衛門 信吾の父
 繁 信吾の母
 正吾 信吾の弟
 咲江 信吾の祖母

 命あっての 信吾が大名の若殿とそっくりで呼び出される。信吾が何も知らされないまま若殿になりすまし反対勢力をつり出し撃退する。若殿暗殺に失敗した反対勢力は三人が切腹し、若殿は平安になったようだ。信吾が宮戸屋の息子と知らない大名は、お礼の会を宮戸屋で開き、若殿と信吾がそっくりなことが宮戸屋の皆に知られる。信吾はお礼として百両を受け取る。 
 
 話して楽し 駒形の常連客が将棋をそっちのけで、話しに花が咲く時がある。信吾は知らないうちにいなくなる。

 鬼の目にも 白犬が相談所にやって来て信吾に相談する。白犬は宮戸川ぺー助という幇間だという。信吾はぺー助の家族に犬と話せることを話し、ぺー助の今の境遇を話し、話し合いをし三人が一緒にくらすようにする。ぺー助たち三人が元に戻ったと礼に来る。信吾のおかげと毎月一分を二十ヶ月払いに来ることになった。芸人たちに相談に行くように触れ回ったようだ。

 夢のままには 十才の少女ハツが祖父と一緒に「駒形」にやってきた。信吾と将棋を指し、通うようになった。常吉が将棋に興味をもち始めた。信吾は仕事が終わってから教えるようになった。他にも十代の少年が増え、二十代の人も増えていった。生意気になっていた子供たちの親玉的存在の留吉と常吉を対戦させた。皆に礼儀を教え人の将棋を見ることの大切さを教える。常吉が勝った。信吾は子供たちの心を摑んだ。

2021年10月28日木曜日

よろず相談屋繁盛記①

よろず相談屋繁盛記① なんてやつだ 野口卓

 人は見掛けに 信吾は弟の正吾に浅草寺で、駄洒落や洒落を言えるようになるよう教えている。誰にも言ってはいけないと言いながら、自分が鳥や動物と話せることを教える。信吾には危ない時に、生き物が 教えてくれるという秘密もあった。
 信吾は覆面の浪人に襲われた。信吾は鎖双根で搦め捕る。四年前助けられた真坂だった。九才で棒術と体術を習い始めた信吾は、十五才で真坂にならず者から助けられ、剣術も習い始めた。十七才から護身術・鎖双根に取り組んだ。
 四年前、ならず者に襲われた時、真坂に助けられたが、ヤモリに、その男下心があるぞと教えられた。真中は実家・宮戸屋へ連れて行った。真坂はもてなしを受け今では奉公人たちとも顔なじみだ。
 信吾は真坂と話し込んだ。煙に巻いたようだ。
 宮戸屋の旦那寺の巌哲和尚が信吾と正吾の名付け親だ。七才の時、巌哲の棒術を見、教えて欲しいと頼んだ。その時、店は正吾に継いでもらい自分は世の中の人のために働くために身を守る術を学びたいと言った。
 信吾は、九才で棒術を始める時、巌哲に、三才で病気になりそれ以後自分のしたこと言ったことを覚えていないことがあると告白し、店を潰してしまうかもしれないとはなした。
 信吾は十九才になり、見世を継ぐのは正吾で、自分は相談所を開き、宮戸屋を離れても生きていけるように二枚看板にしようと思った。家族には明らかにしておこうと決心した。

 獲らぬ狸の 信吾は家族に考えを打ち明けた。見世は正吾に継いで貰い、自分はよろず相談屋と将棋指南所の看板を並べるつもりだと言った。父母も祖母も反対した。自分の記憶が抜け落ちることを話し納得してもらった。巌哲和尚にも話した。
 もう少し若ければ将棋指南所を開くのだがと言っていた豊島屋の隠居・甚兵衛に指南所の細かい質問をした。甚兵衛が空き家を貸してくれることになった。宮戸屋から近く、翌日には信吾の荷物を運び、小僧の常吉が住み込んだ。
 年が開け親類縁者、同業の料理屋の主人、町内の有力者、取引先を集め、料理屋「平石」で料理をとりながら、宮戸屋を正吾が継ぐことになったお披露目をした。信吾のことも話された。武蔵屋は信吾と話して悩みが解決した。彼には特殊な力があると言いきった。

 あれも人の子 信吾は将棋指南所の名前を「駒形」とした。初めて十日が過ぎた。マムシと呼ばれる親分権三が来た。親分は信吾と話し機嫌よく帰った。
 信吾の家に泥棒が入った。猫が知らせてくれる。会所に何度か来た万作だった。信吾は話しをし、五百八十八文を貸す。そして金額を万作に返したように証文を書いた。万作が朝ご飯を作り三人で食べて帰った。
 権三が信吾を呼び出す。駒形堂で話しをする。取り留めの無い話しをした。五日後、権三親分が大手柄を挙げた。

 船は波間に お菓子卸商菊次郎の番頭が相談にやってきた。ももお嬢さんが信吾に一目ぼれ恋煩いになっていると言う。信吾は宮戸屋を出たことを話す。鳩の助言もあって信吾は会うことを引き受ける。
 料理屋「深田屋」の息子・粂太郎が、厭でたまらぬ家業を弟に押し付け、勘当されることなく自分のやりたいことをやる方法を教えてもらいたいと来た。私は継ぎたかったと言いながら涙が出た。粂太郎はあわてて帰った。
 ももお嬢さんは信吾が宮戸屋を継がないことを知って恋煩いは消えていた。鳩に米をやる。鳩は豆が良いと言う。鳩と話す。

 騙し騙され 佐助と名乗る男が常連客・太三郎に賭け将棋をを仕掛けているようだ。佐助が一両を負けた時、佐助が五両の賭けを申し出た。佐助は名前を変えてあちこちで賭け将棋をやっている男のようだ。太三郎にも佐助の正体を話し、賭け将棋はしないように言う。信吾は自分のところで佐助を止めるつもりだ。太三郎は佐助に勘当されるのでお金を用意出来なかったと賭け将棋を突っぱねた。すごんで見せる佐助に権三を呼ぶように言う。佐助は信吾にも凄む。信吾は一歩も下がらず、佐助の人相書きが出ていると相手する。佐助は捨て台詞を吐いて出ていった。太三郎は近江屋の家業に精を出している。賭け将棋撃退の武勇伝が広まり町の人たちがやってきて嫁取りの話しが持ち込まれる。
 半月後、太三郎の父親がお礼にと五両を持ってきた。
 


2021年10月26日火曜日

禁裏付雅帳〈十二〉 継争

 禁裏付雅帳〈十二〉 継争  上田秀人

 二百石の加増のために江戸へ呼ばれた東城鷹矢。松平定信の走狗として京に赴き、朝廷の弱みを探る密命をこなしててきたが、定信に敵対してしまった。道中の刺客を次々退け江戸へ到着する。
 次の日、定信本人が東城家を訪れる。鷹矢は砂屋楼右衛門とかかわりのあった浪の居所は知らないで通した。土岐が定信と話し、二百年の幕府の主従関係など、千年をこえる歴史には勝てない。闇はどこにでもある。幕府より朝廷に重きを置いている者はどこにでもいる。それが朝廷の強みだと言った。

 鷹矢は黒書院で上様・家斉と会うことになった。上様直々目録を下さると臨んだが、公家の話、光格天皇の話、大御所称号のこじれた理由、最終的には幕府を長続きさせるためには子を作り身内を増やせばいいということまで話す。二百石の加増は無くなった。家斉が着ていた紋付きの羽織を脱ぎ、葵の紋が鏤められている乱れ箱にいれ拝領品となった。
 安藤家の家臣・布施の娘・弓枝を安藤対馬守の養女にすることになった。
 十年、鷹矢は禁裏付の役を続けることになった。
 家斉は、主上にお目にかかることがあれば、躬が詫びていたと伝えて欲しいと言葉を残す。

 京へ帰った。

2021年10月24日日曜日

突きの鬼一⑥ 春雷

突きの鬼一⑥ 春雷 鈴木英治

 城下の寒天問屋から賄賂をもらっている江戸家老・黒岩監物が、手を組んでいた殿の母親・桜香院の殺害を忍びの頭・東御万大夫に命じた。国元の一郎太の弟・重次郎の一粒種・重太郎の重体が知らされる。桜香院は美濃に向かう。一郎太は神酒藍蔵と桜香院の警護をしながら美濃に行く。一郎太に冷たかった桜香院だったが、優しい言葉を掛けるようになっていた。桜香院の危機を救い国元に着く。孫に会い城に泊まったものと思っていた桜香院が、元居住していた離宮で殺される。

 国家老になった藍蔵の父・神酒は寒天問屋の裏帳簿を見つけ黒岩の賄賂の証拠を掴む。次期殿の正妻の父親ということで切腹と言うわけに行かず、悪いことをしていたが改心し、殺人を繰り返した東御の隠れ家を教えることになったと噂を流す。東御によって黒岩は殺された。黒岩の蔵から東御が隠し金を持ち去っていた。
 
 一郎太と藍蔵は東御の隠れ里を探す。東御が現れ最後の決戦に一郎太が危なくなった時、紫頭巾が現れる。江戸にいるはずの一郎太の正妻・静だった。隠し金一万五千両も見付かる。
 雪崩がおき埋まるが、皆見付かる。

 一郎太は、当主を重次郎に譲り、江戸に帰る。

2021年10月22日金曜日

蘭方医・宇津木新吾 ⑬ 恐喝

蘭方医・宇津木新吾 ⑬ 恐喝 小杉健治

 西国屋で傷を負った男の手当てをする。男は河太郎。西国屋と松江藩の抜け荷の証拠の書付を持ち強請っている男だった。河太郎は仲間を殺され西国屋から逃げていた。治療のため新吾は河太郎を幻宗の治療所に匿う。
 河太郎の後ろにいるのは二年前に世継ぎ問題で死に追いやられた八田家家臣・戸川だと思われた。河太郎にはそう名乗っていた。戸川は西国屋と松江藩に一万両を要求してきた。
 西国屋と松江藩はお金を用意するが、投げ文により町奉行所役人が出張っていた。取引は失敗する。二度目もうまくいかない。新吾は疑問を持つ。
 隠密・間宮林蔵と話し、五年前、間宮が大阪奉行所を動かし松江藩の抜け荷を調べようとしたとき、老中から横槍が入ったことを知らされる。五年前には証拠が無かった。今回は戸川の持つ証拠が、役人に渡ると松江藩が大変なことになるという。西国屋は表御番医師・花村法楽から奥医師・桂川甫賢から老中・板野美濃守を頼ると言う。
 新吾は判った。裏に居るのは戸川ではなく老中なのだ。五千両を要求されるだろう。用人・高見左近に言うが、左近は抜け荷の証拠を握られている我らは負けだと。新吾は口を閉ざすかわりに抜け荷をやめるよう進言する。

 新吾は黒幕の老中板野をこのままにしていいわけがないと思う。いつか美濃守に会い真相を質したい。妻・香保の父・上島漠泉に表御番医師に返り咲いてもらおうと思った。

2021年10月20日水曜日

照降町四季(四) 一夜の夢

照降町四季(四) 一夜の夢 佐伯泰英 

 八頭司周五郎は兄の死を病死にするよう殿に直談判する。その代りという条件が出された。

 照降町はどんどん復興する。宮田屋、若狭屋、南峰の診療所、ふみの小網湯、牢屋敷も出来道場も出来た。

 佳乃は周五郎が照降町を離れると分かっていながら周五郎と結ばれる。
 梅花花魁は茶屋四郎次郎清方に身請けされ梅香になった。

 殿が重臣派と改革派の主導者を集めた。周五郎も殿の呼び出しに応じ裏方を任される。
 重臣派は吉原での散財と藩御用達商人との談合を調べ上げられた。改革派は重臣派の周五郎の兄を殺したことを明らかにされる。謹慎蟄居を通達される。
 大書院の集いで家臣団が参集した。周五郎は裏手に控える。

 中村座で新作「照降町神梅奇譚恋の道行」。大入満員興行が続いた。最終日周五郎は屋敷に戻った。小倉藩御番頭として。佳乃は芝居見物の席で、殿様に周五郎の修業は終わったと言った。

2021年10月18日月曜日

浮世絵宗次日月抄〈五〉 汝よさらば

 浮世絵宗次日月抄〈五〉 汝よさらば 門田泰明

 宗次と別れようとしていた西條家の美雪は、宗次と生きていくことを決心する。宗次も受け入れる。

 宗次が倒した隠密情報機関「葵」の本家本郷家を統括する高尾が現れる。葵を壊滅させた宗次・徳川宗徳を憎んでいた。高尾が自死した後、高尾の右腕富士に銃で撃たれ倒れる。



 死んでしまった?吹雪は来ない?死んで終わるのは嫌だ。

2021年10月17日日曜日

家請人克次事件帖 秋草の花

 家請人克次事件帖 秋草の花 築山桂

 岡っ引きの正蔵と安五郎が襲われた。中山家の早苗も狙われていると聞き、克次は調べる。8年前に早苗がおとりになり克次が捕まえた婦女暴行殺人の犯人五人の内三人が、金持ちの商家のお金で解き放たれていることが分かった。
 被害者の父親が犯人だった。解き放たれた男たちを殺すことを助ける。殺した父親も死ぬ。
 
 克次は新しい店に移り京と一緒になることになった。


2021年10月16日土曜日

ふしぎ

ふしぎ 細谷正充

 睦月童 西條奈加 悪いことをした者が睦月童・イオを見るとイオの目が金色に光る。

 潮の屋敷 泉ゆたか 江ノ島から江戸へお嫁に来た。屋敷は老人の殺された家だった。

 紅葉の下に風解かれ 廣嶋玲子 飼い主を探していた白兎はあやかしになった。白兎は少年に付纏う母親のあやかしを少年から離し、行くべきところに連れて行く。

 紙の声 宮本紀子 直筆の書き物から亡くなった人を呼び出せる主人がいる紙屑問屋に奉公にでた太一。亡くなった父親と話しをし、大工になり父の望んだ家を建てた。

 遺恨の桜 宮部みゆき 回向院の茂七 商家の息子、日道と名乗り霊感があると引っ張りだこ。見えることもあると言う。

 

2021年10月15日金曜日

まっくら長屋騒動記 江戸の茶碗

まっくら長屋騒動記 江戸の茶碗 中島要

 江戸の茶碗 贋茶碗に騙された兄、別の人を騙そうとするが妹が止める。赤目勘兵衛が連れてきた永田屋八助が百両にしてくる。「江戸の茶碗」と銘々される。兄妹は店を買い戻した。

 寝小便小僧 九才の定吉。夜中の便所で鬼に遭遇し、夜中に便所に行けなくなり寝小便をするようになった。馬鹿にされるのがいやで手習いに行けない。初に困ったら赤目さんに相談するよう言われた定吉は赤目に相談する。林仙時では礼金、墨代、半紙全ていらない、全て和尚の持ち出しだった。赤目は見つけた般若の面で和尚が霞小僧だと見抜く。定吉も知るが和尚を許す。

 遺言 山城屋の亡くなった新造の遺言で赤目勘兵衛は月に一両貰っている。放蕩息子の栄太郎は近江屋の年上の娘と結婚させられるのがいやで娘が結婚できないようにしてくれと頼みに来る。赤目は栄太郎を殺しに来る。山城屋の主人の遺言は山城屋の先行きを見守り、店が傾いた時には災いの根を絶って欲しいということだった。今まで内儀に命を護ってくれと言われていたから我慢していたが、断ってきたからきたから遠慮が無くなった。先代の遺言を果たすと言う。一閃され元結を切られた。栄太郎は近江屋の娘と一緒になることにした。

 真眼 十五年前、掛け取りの五十両を殴られ奪われ目が見えなくなった梅次郎は按摩をしている。お人よしが売り物だ。長屋のくず拾い彦兵衛が大店三河屋の隠居だと分かった。彦兵衛は梅次郎に優しい。医者を紹介してくれ医者代を持ち目を治してくれた。目が見えるようになった梅次郎は昔の泥棒は彦兵衛ではないかと疑る。逢いに行ったとき彦兵衛は亡くなっていた。泥棒の鼻の脇にほくろがあった。彦兵衛は確かめようとしたが目は開かなかった。つむったまま彦兵衛の笑顔が見える気がした。

 嫁入り問答 相手が馬鹿だから嫁に行くのはいやどという湊屋の娘・花。尼になると言う。赤目の知りあいの尼僧に頼み相手の弥太郎と問答をすることになった。尼になるよりも自分の言いなりになる亭主と一緒になった方が得だと気付いたようだ。花は弥太郎と一緒になることを決めた。

 いじっぱり 定吉の母親・今は近所の料理屋で働いている。定吉が赤目と親しくなるのが心配で知りあいだという尼僧に会いに行った。尼僧は赤目の昔の話をする。若殿の側近だったが母親が亡くなり、新しい側室に子供が出来ると若殿は命を狙われた。六歳で亡くなった時、二十三歳の赤目は乗り越えられなかったようだ。酒に溺れ乱暴狼藉を働いた二年間があった。十八年をただ無為にいきていた。子供や母親には害をなさないことは受け負うと言われた。そして自分から定吉が離れていくのが不安なのだろうと言われる。
 今は、定吉の命が大事なら稲葉屋の料理に毒を盛れと薬を渡された。赤目は相談され定吉を見つけ出すから毒を入れるなと言った。言われた通りにするなら最後の料理にするように。必ず定吉を連れて行く。最後の最後に赤目は定吉を連れてきた。
 稲葉屋の後添えとその妹夫婦、後添えの情婦も捕まった。
 赤目と今は口げんかをする。

 男と女の間 定吉は喧嘩ばかりする赤目と母親を心配している。和尚に母親の再婚を言われ赤目が父親になるのはいやだ。と思う。

2021年10月12日火曜日

料理人季蔵捕物控㊶ 焼き天ぷら

料理人季蔵捕物控㊶ 焼き天ぷら 和田はつ子

 季蔵は北町奉行の烏谷に、呉服問屋浅岡屋の跡取り息子・元太郎が八王子で想い女・紅代と暮らしているので連れ戻して欲しいと頼まれた。 季蔵は八王子で紅代と紅代の幼なじみが心中しているところに遭遇し、元太郎を連れて江戸に戻る。季蔵は二人は殺されたのではないかと思った。

 商家の主が次々と殺される。季蔵の馴染の長崎屋五平と間違われ弟弟子が殺された。それらは殺し屋の仕業と思われた。殺し屋の元締めと思われた艾屋が殺された。五平の持ち物が傍に落ちていたので五平は捕まる。新しく商家の主になった者が集まるということで季蔵は烏谷の意向で南町の奉行宅に出張し京風料理を拵える。庭の木の根元に埋めてあった小判を掘り出した持ち帰ったようだった。集まった商人は吉川奉行夫婦にたっぷり贈答品を渡した。

 季蔵は元太郎から相談される。番頭に店を譲らなければ主と若旦那の命はないと文が届いたと。季蔵は八王子に行く。前に出会った和尚も役人も全ての人が居なかったり、違った人だったり。

 季蔵は浅岡屋の茶室の傍で聞く。浅岡屋の主人は殺され番頭が捕まり、元太郎が番頭を殺し、番頭に殺され掛けたが反撃しころしてしまったことにするつもりらしい。その場にいた鍋が殺され、秋と季蔵が踏み込み番頭は助かり元太郎は捕まった。

 元太郎は鍋から艾屋が殺し屋の元締めで殺しを頼む商家の主は、自分に直接関係のない者を頼む。元太郎は長崎屋殺しを頼む父親を見てしまったことで、自分が殺し屋も元締めになろうと考えたのだった。

 吉川は妻の咽を突き、切腹した。
 五平は解き放たれた。

2021年10月10日日曜日

新・秋山久蔵御用控〈十一〉 残り香

 新・秋山久蔵御用控〈十一〉 残り香 藤井邦夫

 出戻り 秋山久蔵の首に25両が掛けられていた。秋山の弱みを教える噂をまき、寄ってきた者を調べる。旗本内藤家が浮かぶ。離縁されて帰って来た娘は、二年前、夫が名のある壺や茶碗や名刀の偽物を作り売りさばいて、秋山が切腹に追いこまれていた。娘・浪路は尼になった。

 迷い道 南町新米同心・水沢信吾は、茶道具屋「梅光堂」の女中に盗賊閻魔の鬼吉の手引きをしている。盗賊一味から抜けたいと相談を持ちかけられた。情報を聞き出すためにそのままにしておいた。梅光堂の廻りをうろつく人が増えたと盗賊に伝えると姿を消すようにと連絡があり女中は姿を消した。
 和馬等は、毘沙門の万平一味を追っていた。盗み場所を梅光堂と思わせたかったのだろうか。金貸し勘三郎の家の前で捕らえた。

 残り香 呉服屋越乃屋の主が殺された。女が逃げていくのを見られた。女の足取りを掴めない。容疑者は浮かばない。小普請組支配組頭が殺された。人足風の男が見られた。女が身投げをするところを止められ、二人は交換して人を殺した。

 小塚原 尾張藩の侍と旗本の若侍が喧嘩する。秋山は町方の者が巻き込まれたり、刀を振り回したら捕まえるように指示した。本人たちにも捕まえると宣言している。昌平橋で斬りあいが始まった。旗本と尾張藩の家来を一人ずつ捕まえた。中心人物・藩主の甥に切腹を命じた。下屋敷から上屋敷に移動する間に乱闘事件を起こし、秋山に斬られ川に落ち溺死した。旗本の首領・本多は旅に出ようとした。小塚原で秋山に斬られた。

 

2021年10月8日金曜日

向島・箱屋の新吉新章〈一〉

 向島・箱屋の新吉新章〈一〉 箱屋の使命 小杉健治

 向島で唯一の芸者・葉の世話をする新吉は、生駒屋に呼ばれた新梅屋敷で不審の人物を見つける。勘定奉行・笠木嘉門が呼ばれていた。後日、笠木を殺す邪魔をするなとこの前の不審者が現れる。三郎太と名乗った。
 新吉は三郎太を調べた。笠木に罪を着せられ切腹、家は断絶した内村家の奉公人だった。新吉は罪を犯す前に捕まえ助けたいと思った。
  
 定町廻り・梶井扇太郎は稲荷裏に埋められた遺体を調べていた。一ヶ月前から行方不明だった冬吉と判った事件を調べていた。
 
 笠木が生駒屋の寮で、トリカブトを塗った吹き矢で殺された。

 冬吉と思っていた遺体は三郎太だった。三郎太と名乗った男は生駒屋の親戚奈良屋のゆかりの者だった。奈良屋は笠木の後勘定奉行になった大畑と懇意だった。
 新吉は三郎太と名乗った男に襲われた。
 新吉は奈良屋と生駒屋の呼び出しに応じた。偽三郎太が三郎太を殺し見付かっても冬吉に間違えられるようにして埋めていた。そして笠木を殺し、三郎太の復習と思われるように新吉に見られるように動いた。奈良屋の番頭・茂太の言う通りに動いた。新吉を殺すため浪人を集めていた。新吉は梶井に捕らえてもらうが茂太がいなかった。奈良屋は大畑の家臣というが、大畑には否定される。大畑が勘定奉行になるために仕組んだ証拠は無かった。

 

2021年10月6日水曜日

風の市兵衛㉙ 寒月に立つ

風の市兵衛㉙ 寒月に立つ 辻堂魁 

 公儀十人目付筆頭・片岡信正の命で越後津坂藩内定の最中、返弥陀丿介が瀕死の重傷を負った。信正は、譜代ながら跡継騒動を抱え、陰に御用商人の不審な噂が絶えない津坂藩の探索の続きを唐木市兵衛に託す。

 津坂藩の江戸家老・聖願寺豊岳は藩御用商人と組み藩政を握っていた。津坂湊の香住屋と長浜湊の武井が手を組んでいた。長浜には朱雀家の采地があり津坂藩藩主鴇江伯耆守憲実の正妻・蘭の方は朱雀家から来ていた。十年前、朱雀家の遠縁から鴇江家に婿養子に入りお世継ぎに決まっていた。お世継ぎの松之丞が錯乱状態になり暴行し、家臣に斬られたことにより跡継ぎ問題が起こった。聖願寺派は朱雀家から養子を得ようとする。十年前、側室の阿木の方と生まれたばかりの若君を殺されると言う事件があった。御年寄役・戸田浅右衛門は助かった若君を死んだものとして真野分蔵夫婦に託し江戸へ逃がした。その若君を呼び戻そうとした。聖願寺が使っている影の目付・丹波一味が動き、若君を探し出し殺そうとしていた。

 市兵衛は若君を探しだし、襲ってきた丹波を倒す。世継ぎ鴇江憲実が正式に幕府に届けが出された。

 将軍が片岡信正の弟・唐木市兵衛の存在を知った。市兵衛は十俵の扶持を貰うことになった。旗本五千石広川家の養子縁組みの見合い話が進んでいる。

2021年10月4日月曜日

婿どの相逢席

婿どの相逢席  西條奈加

 楊枝屋の四男坊・鈴之助25才は、仕出屋「逢見屋」の長女・千瀬の婿になった。何もする事が無かった。役目は子をなすこと。女の子を授かることだった。

 千瀬は鈴之助に期待していると言う。鈴之助の人を和ませる力に。

 千瀬との出合いの時に、婆やのすがとは馴染になっていた。
 鈴之助は奉公人と話し、馴染が出来た。
 もめてるお客様の話を聞き、良い案を思いつき丸く収める。
 馴染まない妹たちにも少しづつ馴染んでいく。次女の丹に、御兄さんと呼ばれる。
 大女将・喜根の昔話を聞く。逢見屋を通しての昔話が話される。鈴之助は男女の仲を取り持つ。喜根も自分で昔話を鈴之助にする。

 逢見屋に嫌がらせをする仕出屋「伊奈月」がある。魚屋を巻き込み噂を振りまく。鈴之助は伊奈月の若旦那に逢見屋に嫌がらせをしているつもりでも、自分に振りかかって来ますよ。と忠告する。伊奈月は潰れる寸前になる。

 伊奈月の若旦那・鵜三郎は千瀬と双子の姉弟だった。逢見屋に嫌がらせをして悪かったと謝る鵜三郎に、鈴之助は、嫌がらせをやらせた奉公人の竜平や、潰した店の板前等奉公人に謝れと言う。
 母親・寿佐は鵜三郎に詫びは言わない。許してくれとは言わない。今のお母さんを大切に。亡くなられた先代とお母様は私の恩人なのです。と言った。

2021年10月2日土曜日

新酔いどれ小藤次〈二十〉 三つ巴

新酔いどれ小藤次〈二十〉 三つ巴 佐伯泰英 

 偽鼠小僧の悪事が止まらない。偽鼠小僧は二組いた。火付盗賊改の琴瀬と小菅が一組目。
もう一組は、元締めが表火之番組頭・井筒鎌足、話の出所が両替商の三番番頭・井筒の三男、実際に押し込むのは十人組の十人だった。

 小藤次が研ぎ舟にしていた船に水が入るようになり、船が新しくなった。無料で仕立ててくれた船大工にあやかり蛙丸と名付けた。
 
 子次郎の知り人・充吉が、子次郎をおびき出すため火盗改に捕まっていた。町中の商家の土蔵と長屋を自前に使っていた。琴瀬を斬り、充吉を助け出す。火が出た。小菅は火盗を放逐される。小菅は望外川荘に現れる。梅が人質になるが、子次郎の畳針で助けられる。小菅は斬られ無縁墓に葬られた。
 小菅と琴瀬は火盗改の身分を利用して鼠小僧の仕業と見せかけ私服を肥やしていたとされた。

 小藤次と駿太郎と子次郎、青山の家臣・中田新八としんと北町与力・岩代壮吾と南町同心・近藤精兵衛が、両替商錦木屋を船で見張っている。押し込もうとした表火の番の者を取り押さえ篠山藩江戸藩邸に連れ込んだ。目付頭が呼ばれ表にだされなかった。

 子次郎は薫子に会いに行った。三河湾を望む高台の屋敷で薫子は老女・比呂と暮らしていた。

 

 

2021年9月30日木曜日

浪人奉行 十一丿巻

浪人奉行 十一丿巻 稲葉稔 

 麹町の路地裏で居酒屋を営む八雲兼四郎。裏の姿は町方の手が届かぬ悪を密かに討つ、浪人奉行だった。
 救った中間から旗本が改易され乱心し御料所内で村人の娘を攫う等非道を尽くしていると聞く。兼四郎は橘官兵衛と定次と共に事態を収めるべく立ち上がる。

 元御書院番組頭・滝澤新九郎は、請地村の百姓家を塒にしていた。攫った娘を二人女中代わりにし家臣が三人、下僕が二人。塒を変える度に、家の者は殺される。今は地主の家にいた。
新九郎は兼四郎たちを誘き寄せるために、地主宅に火をつけて裏の森へ逃げた。定次が娘を助け出し、兼四郎等は二手に分かれて追う。三人を討ち、金を取り返して村人に渡す。後のことは、村人に任す。

2021年9月28日火曜日

神谷玄次郎捕物控 霧の果て

神谷玄次郎捕物控 霧の果て  藤沢周平

 北の定町廻り同心・神谷玄次郎は14年前に母と妹を殺されている。仕事を怠けて小料理屋よし野に入り浸っていた。

 針の光 男が女を抱き寄せ、首筋に畳針を刺し、首を絞めて殺す。玄次郎は網を張り、現場を押さえて捕まえる。

 虚ろな家 菊屋の娘が勾引かされ五百両を要求される。同心・鳥飼の助をする玄次郎は、店の周辺を探る。玄次郎は銀藏に、五百両の運び役・鳥飼の岡っ引き・弥之助を尾けるように指示する。弥之助は菊屋の女中の実家に行く。弥之助と菊屋の主人との計画だった。左前の菊屋は五百両を本家から出させ、別けるつもりだった。

 春の闇 奥州屋から銀藏に、娘の簪を探して欲しいと依頼があった。婚約者からの贈り物だった。見付からないまま、奉公人・増吉が殺された。玄次郎が調べ出す。投げ文があり簪は奉公人・幸介の行李の中から見付かった。幸介を増吉殺しの犯人だという投げ文が来る。玄次郎はそれを無視し、奥州屋を張り込む。娘の婚約者が投げ文を持って来たところを捕まえた。娘と幸介は駆け落ちを考えていた。増吉が娘の簪を拾い、婚約者に買い取って貰おうとした。婚約者は増吉に簪を幸介の行李に入れさし、増吉を殺した。幸介を犯人に仕立てようとしたが、捕まった。

 酔いどれ死体 御薦さんのような死体が見付かった。甚七だった。殺された理由が判らない。二十年前、勤めていた店の若旦那が主人になっていた。その頃付き合っていた女と今も続いていることを知られた主人が殺していた。お金を強請られたわけではないが、ただ酒を飲ました。甚助の酒は底なしの怖い酒だった。

 青い卵 長屋の一人暮らしの婆さんが殺された。誰も知らないはずの十二両と日ごろの小銭が無くなっていた。時々訪れるのは糸屋の隠居と孫。糸屋の隠居から教えられた小間物の行商をしている長吉が捕まった。長吉は殺し十二両を奪っていた。玄次郎は孫が掘っていたところを掘れば小銭が出るだろうと銀藏に言い置いてゆく。

 日照雨 米屋の鼻摘みの次男坊がめった刺しだ殺された。米屋の女中で何もされたことがないと言った祝言のため店を辞めたそのがいた。そのは重吉に手込めにされたようだ。玄次郎はそのの祝言の日「祝言に行け、逃げようと思うな。お上には慈悲もある。あとはまかせろ」と父親に言った。

 出合茶屋 青梅屋の内儀が、銀藏のところにこの頃誰かに見張られているような気がすると相談に来た。内儀が襲われ庇った小僧が大怪我をした。玄次郎が突っ込みながら聞き出す。出合茶屋で男二人と女一人の客を見ていた。巴屋に入った押し込みだった。浪人と職人だった。捕まえた。

 霧の果て 玄次郎は母親と妹が殺された事件を調べている。父親が調べていた事件絡みでその後同輩が調べようとして上からそのままお調べ無しの命令が出た事件だった。父親がやる気を無くし身体を壊して亡くなった。その頃を知っている者を調べ出して聞き廻る。祈祷を行っていた寺の関係で寺社奉行の寺社役同心に会いに行く。印南が玄次郎に会いに来た後、殺される。玄次郎は井筒屋は蔵宿師・御家人・村井にたかられていた。水野の妾になっている村井の娘を祈祷に誘い込んだ。祈祷だけに留まらず、色仕掛けだった。村井の弱みをこしらえた。そんなとき井筒屋の女将の付添女中・佐代が祈祷師に殺された。井筒屋は水野に頼んだ。祈祷料の半分を懐に入れていたこと。水野の妾が出入りしていたことが知られないようにしたかった。等判った。母親と妹を殺し、印南を殺した水野の家臣・鶴木右膳を斬った。水野の枕元に立つ。話をするが玄次郎は出て行く。顔も上げられない老人だった。

2021年9月26日日曜日

突きの鬼一⑦ 饗宴

 突きの鬼一⑦ 饗宴 鈴木英治

 お家騒動で殺された桜香院の四十九日が行われた。
 大川で襲われている屋形船を見つけ助ける。若年寄り松平伯耆守と北町奉行だった。誰が襲ったのか調べ、鬼一は料理屋尾花で行われる一食百両の「将軍御膳の会」を知る。将軍の食材を横流しし、公儀の包丁人が作る。新田与五右衛門が開いていた。目付が調べていることを知り、若年寄を殺そうとした。
 松平伯耆守は殺された。秘剣を使う新田を殺した。
 鬼一は賽子の目が見えなくなった。弥祐が殺された。

2021年9月24日金曜日

三島屋変調百物語七之続 魂手形

 三島屋変調百物語七之続 魂手形 宮部みゆき

 火焔太鼓 ある大名家に火焔太鼓がある。火事の火を飲み込み火事が起こらないと言われる。話をしに来た若い侍の兄嫁の実家が火焔太鼓を生み出した湖の管理をしている家だった。ある年火焔太鼓が隣の国の侍に盗まれ火を吹いた。大勢が亡くなり、侍の兄は足を失った。侍が元服を迎えると兄は、妻の実家に行った。何年か経ち湖の主の交代年になった。兄が主になっていた。 
 富次郎は、森の中の小さな沼に遊ぶ人に似た影と、沼のほとりの笠をかぶり被布を着、短い丈の槍を持ったお地蔵様を書いた。

 一途の念 富次郎がよく買いに行く美味しいお団子の屋台があった。売り子はみよ、十六才。母親が亡くなって屋台を休んでいるみよに富次郎が誘いを掛けた。母は死にたくて自分で目を付いて潰した。死ねなくて五年生きた。やっと死ねたと言う。小さいときの養女に行った家で子供ができ邪険な扱いをされていた。料理屋の女将が助けてくれ行儀から習い事まで教えられ中居をしていた。女将が亡くなり新しい女将は料理屋の中居を遊女にした。肺の病を持つ板前の夫を養うためにそのまま中居を続けた。母は三人の男の子を産む。三人とも夫にそっくりな子供だった。そしてみよが生まれた。ある日、男が長屋で母親が客を取っていたことをぶちまけた。そして母は自分の目をくり貫こうとした。その時から兄三人の顔が変わった。誰だか判らないぐらい。それから五年が経った。
 富次郎は盥に張った水の中に浸された麻袋を書いた。砂糖を取る。

 魂手形 木賃宿の主人だった人が話す。この世に未練を残す魂を運んでいる人がいる。自分・吉富にも見えたし、父親の後添えにきた竹にも見えた。運んでいる七之助の身体が弱っているので魂が自由に出て行くと言う。吉富は魂の力を取り込み七之助と魂・葵の故郷に行き、父親の後妻の悪行を言い巻、葵を殺した者を引き出し、葵を埋めている場所へ連れて行く。全てを終えると魂は消え、吉富は普通に戻っていた。吉富は魂の里があることを誰にも言わなかった。竹は薄々知っていた。
 富次郎は木賃宿かめやの看板を書いた。

 ちかに子供が産まれる。富次郎の夢にちかに縁のあった者だという男が現れた。


2021年9月21日火曜日

風烈廻り与力・青柳剣一郎54

風烈廻り与力・青柳剣一郎54 鼠子待の恋 小杉健治 

 青柳剣一郎は十年前の事件の探索を任される。伊丹屋の妾宅で主と妾・千代が殺された。千代の元許嫁は消え、唯一の容疑者は江戸から離れ半年後に殺された。

 青柳が調べていく。全く違った男が容疑者に挙がる。その男は数日前に侍に斬られた身元の分からない男だった。侍は誰にも見られず姿を消していた。千代の元許嫁も殺された。

 青柳の下で調べている太助は猫探しを仕事にしている。猫探しで知り合った田村屋の娘・そのは十年前飼ってた猫がいなくなっていた。殺された千代のところによく遊びに行っていたらしい。そのは青柳の妻・多恵に似ていた。

 柏木辰之助が家督を息子に譲り隠居するという。妾を囲っていることで別れないなら家を出るように妻に言われたようだ。柏木が十年前この事件の捜査をしていた。青柳は柏木が捜査を在らぬ方向へ誘導したように思った。

 事件を仕組んだのは柏木だった。今妾としているのは千代だった。伊丹屋を殺し自分の女房を殺し、千代に見せかけた犯人が十年が過ぎ現れた。柏木は殺した。元千代の許嫁が千代を見つけた。殺されたはずの千代が生きていた。知られた柏木は男を殺した。千代と名乗らない女をそのに合わせる。そのも千代だと言わないがそこにいた猫はそのの猫だった。
 十年前、千代に柏木の子供ができたのだった。柏木は青柳に斬り付け斬られる。千代は死んでいた。二人の子は田村屋で育てられることになった。

 

2021年9月19日日曜日

北の御番所反骨日録〈二〉 雷鳴

 北の御番所反骨日録〈二〉 雷鳴 芝村凉也

 深川伊勢佐木町騒動一件 深川の往来で菓子屋の主が殺された。殺した侍は旗本の用人で無礼討ちと言う。何も調べないで無礼うちで事が決まる。来合郷轟次郎と裄沢広二郎は妻と娘が敵討ちをしようとしていることが分かった。旗本が寺を使って金貸しをしたり、詐欺を働いたりしていた。菓子屋の主人も仲間に誘われたが断ったために殺されたことがわかった。
 二人はこっそり敵討ちを手伝う。二人は用人を殺した。書類をつくったり、刀を貸したり、無礼討ちでさっさと通した吟味方与力・瀬尾にも何も出来ないように。用人は旗本から見放され浪人となり二人の裁きはかまいなしとなった。
 
 長閑なり 瀬尾よりお裁きの素案を作る概要を書いた書面を取り換えられるという嫌がらせを受けた。裄沢は用心し、複写し全く別人に同じものだという書名をしてもらっていたため事無きを得た。広二郎はその概要を読み犯人の取り違えを指摘する。本当の犯人は言われた通りにしただけと言っている源治で、主犯だと言われている角三は、源治により床下に盗品を隠されただけの被害者だと言う。源治の床下を見れば角三のところに物を運んだ後があるだろう。
 定町同心が調べればすぐ見つけられるが門外漢の瀬尾が調べ、無理な吟味で白状させたために起こったことだと内与力・深沢に言われる。
 
 手伝い廻り 角三は解き放たれた。瀬尾は謹慎のまま。来合が十年前結婚するはずだった娘・美也が大奥から戻った。
 裄沢広二郎は隠密廻りの応援に回ることになった。
 美也のいる備前屋へ会いに行く。来合と元に戻るように裄沢は願うが二人はなかなか動かない。

 雷鳴 裄沢広二郎は美也の大奥を出た理由などを考え、美也の外出時の陰供をする。来合にも声をかけた。美也が襲われた。疑念であったものが当たり、思っていたより思い切ったことをしてきたことに驚いた。二人で六人を相手に戦う。馬に乗った吟味与力・甲斐原が駆けつけ頭巾の侍は逃げた。侍たちは大名屋敷に逃げ込んだところを目付に捕らえられた。
 怪我で休んでいる来合の替わりに定町廻りにつくことになった。美也と実家の橋渡しをお願いする。

 

2021年9月17日金曜日

惣目付臨検仕る(二) 術索 

惣目付臨検仕る(二) 術索 上田秀人

 新設された「惣目付 」に就任した水城聡四郎に吉宗からの命は奥右筆だった。その前に命令を出そうとしたが動かない徒目付五十人の総入れ替えをした。

 吉宗の直接政治を望まない老中は奥右筆を使って、不要な書きつけを御状箱に入れ、吉宗の雑務を増やした。吉宗は老中の命令と吉宗の命令のどちらを優先させるか試している。
 奥右筆組頭の一人・澤司現三郎の役目を解いた。

 江戸を去った藤川義右衛門等二人は尾張の無住寺に住み着いた。

 

2021年9月15日水曜日

苦悩する男 上下 

 苦悩する男 上下 ヘニング・マンケル

 四月、クルト・ヴァランダー59/スェーデンのイースタ警察署の刑事の娘/リンダ・ヴァランダー/マルメ警察署の刑事のパートナー/ハンス・フォン・エンケの父親/ホーカンが行方不明になる。ストックホルム警察のイッテルベリが捜査する。六月、母親/ルイースも行方不明になる。六月末、ルイースが終日前に亡くなっていたと思われる遺体で見付かった。バックに入ったメモからルイースは北のスパイだと思われた。海軍時代の友人など話を聞くに従ってルイースのスパイ容疑は濃くなる。ヴァランダーはホーカンが隠れ暮らす島を見つける。結論に至ったヴァランダーはホーカンの友人/ノルドランダーを連れホーカンに会う。ノルドランダーの姿を隠し、ホーカンの自白を引き出す。ホーカンはアメリカのスパイだった。影で聞いていたノルドランダーは自殺に失敗したホーカンを撃ち殺す。


55才 ルーデルップ近くの農家の建物・一軒家を買った。黒いラブラドール/ユッシを飼う。

58才2007年 ここ数年、糖尿病のため毎日インシュリンを打っている。
 8月リンダ39が初孫の女の子を産んだ。クラーラと名付ける。リンダはマルメ警察署の刑事をしている。パートナーはハリス・フォン・ヘンケ37。コペンハーゲンの投資信託会社でヘッジファンド専門部門で働く。二人はリーズゴードに住んでいる。

59才 ホーカン夫婦のことを調べる。途中霧のベールに包まれたような記憶の欠落に悩まされる。
  元妻/モナはリンダの説得で施設に入った。
  元恋人/バイバ・リエバは、突然会いに来た。ガンで余命が短いことを告白し、帰る途中リガ近くの石壁にぶつけ亡くなった。

数年後 アルツハイマーと診断される。
クルト/ヴァランダーの物語は終わった。




2021年9月10日金曜日

鴻上尚史のほがらか人生相談

 鴻上尚史のほがらか人生相談 鴻上尚史
 息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋

 同調圧力 自尊意識 世間 社会 所与性 

 

2021年9月8日水曜日

おいち不思議がたり 星に祈る

 おいち不思議がたり 星に祈る あさのあつこ

 長崎で医学を学んでいた田澄十斗が帰ってきた。十斗といちが兄妹であることを告げた。十斗はいちに石渡明乃が女の医学塾をつくるので通えはいいと言ってくる。十斗が松庵の手伝うことになった。

 三人の御薦がいなくなり、いちが助けた怪我人・キネもいなくなった。キネがむごい姿で見付かる。

 石渡明乃の生徒の一人・喜世が、明乃の死んだ夫がやり残した無痛薬の調合の試しをしていた。そして何人もが亡くなっていた。喜世は今までの資料を残し船で海に出た。

 いちは飾り職人の新吉と一緒になる約束をした。松庵は新吉にメスを作って欲しいと頼む。

 

2021年9月5日日曜日

百万石の留守居役〈十七〉  要訣

百万石の留守居役〈十七〉  要訣  上田秀人

 数馬の妻・琴が一度離縁された紀州藩の家臣から再縁を求められる。裏に潜む意図を思案する数馬。紀州藩主・徳川光貞が揺さぶりをかけてくる。 

 光貞は江戸で数馬の命を狙い、加賀で琴を勾引かすつもりだった。数馬の命は守られ、琴と間違え数馬の妹・美津を連れ去った。美津は本多家の軒猿によって助けられ琴は江戸へやってくる。琴と一緒に捕まった紀州藩関係者も一緒に江戸へ送られると思った紀州家は琴の駕籠を襲う。琴を助け、奇襲藩士を捕まえる。

 本多政長は、琴と数馬を連れ綱吉に会いに行く。本多家と確執のある大久保加賀守と徳川光貞を同席させる。家康以来の徳川家、家康の考え方、本多と大久保の在り方など話す。

 長政は琴と数馬を連れて加賀に帰る。

2021年9月3日金曜日

わらべうた 〈童子〉

 わらべうた 〈童子〉 時代小説傑作選 細田正充

 かどわかし   宮部みゆき
 花童      西條奈加
 初雪の坂    澤田瞳子
 寝小便小僧   中島要
 柴胡の糸    梶よう子
 安産祈願    諸田玲子

2021年9月1日水曜日

若鷹武芸帖⑧ 相弟子

若鷹武芸帖⑧ 相弟子 岡本さとる

 滅びゆく武芸の流派を調べる公儀武芸帖編纂所。編纂方水軒三右衛門はかっての相弟子・和平剣造から”まだ見ぬ娘”のことを託された。娘・登世は剣術の女道場主になっていた。小太刀の使い手道場主に新宮鷹之介も心を配る。

 道場に通う門弟のけいに付纏う男を蹴散らす。その男の後ろにその辺りの浪人を束ねる男がいた。その男の兄は、かって水軒三右衛門が片手を切り落とした 増子貴兵衛だった。
 登世の息子・錬太郎が連れ去られ三右衛門は呼び寄せられる。錬太郎を助け増子を斬る。
錬太郎に慕われ登世にも頼りにされた三右衛門は一緒に住むことを考えるが、武芸者として生きる事にした。
  
 鷹之介は三右衛門に何か因縁を引きずり命を投げ打つべき時を探っているように思った。
 気炎流小太刀

2021年8月30日月曜日

上絵師 律の似面絵帖⑦

上絵師 律の似面絵帖⑦ しのぶ彼岸花 知野みさき

 律は葉茶屋・青陽堂の嫁として初めての新年を迎えた。 懐妊した。

 女形の役者から着物の仕事が舞い込む。殺された息子の供養に彼岸花の注文だった。息子は彼岸花の中で自殺していた。息子が捨てられていた場所で。律と共にその場所で子供を捨てた母親に会った。死んだことは伝えなかった。

 香が出産した。

 律が似顔絵を描いたことで捕まった盗賊の家族から命を狙われる。止めようとする娘が忍ばずの池に落ち、娘を助ける事で律は流産した。

 まわりの大人は流産はよくあることと律を責めない。

2021年8月28日土曜日

噂を売る男 藤岡屋由藏

噂を売る男 藤岡屋由藏 梶よう子

 由藏は足袋屋中川屋の軒先を借り古本屋 を始めた。毎日の噂話、高札場の記事何でも書留め、情報を必要な人に売る商売もしている。だるま屋と呼ばれていた。

 由藏は藤岡の養蚕問屋の息子だったが、父親が蚕売りに騙され病気の蚕を養蚕農家に広めてしまい自殺した。祖母の兄の道具小屋で育った由藏はまわりの子供たちにうそっこき由藏と言われた。藤岡の生糸問屋で働いた由藏は、各地の生糸相場を調べ、藤岡の売値を決めることまで任されるようになるが、「うそっこき由藏」がついて回るため二十才の時、江戸へ出る。
 口入れ屋「埼玉屋」で働く。埼玉屋の主人は伊賀者だった。大奥の下働きとして働いた。五年後、世話になった仲間・留吉が罪を押し付けられ殺された。
 由藏は藤岡時代から日記をつけていたが、詳しくなり噂を拾い集めるようになった。何年かたち留吉を罠に嵌めた上臈を失脚させた。
 
 噂売りの仕事で、シーボルト事件に関わってしまう。自分の噂を探りに来た高橋作左衛門は斬首になった。


藤原緋紗子の秋月伊織のシリーズが藤岡屋吉蔵・だるま屋・情報を売る店・御成街道だった。


2021年8月25日水曜日

おとなりの晴明さん 第九集

おとなりの晴明さん 第九集  仲町六絵 
 〜陰陽師は花の都で笑う〜

 陰陽師の見習い「結び桜の子」糸野桃花は、かんざしに式神の種を植え付け名前を付け式神を育てる。古今和歌集から初花と名付けた。フクロウの姿で現れた。
 玄武の古い羽衣を狙う蠱毒の長者との戦いのため初花を鍛える。
 三ヶ月後、蠱毒の長者から玄武の羽衣を護った。
 
 一年が過ぎた。晴明は閻魔大王から早く帰ってくるように言われ、年に百日冥府勤めをすることになった。

 桃花の芸大入学の日、晴明さんが帰ってきた。

2021年8月23日月曜日

風烈廻り与力・青柳剣一郎 (53)

風烈廻り与力・青柳剣一郎 (53) 寝ず身の子 小杉健治

 立て続けに同じ手口の殺しがあった。殺されたのは、十年前、盗品を扱った罪で潰された木綿問屋「大黒屋」の元番頭と、告発した女だった。植村京之進は島流しになり島で死んだ大黒屋の子供を探す。

 剣一郎は、旗本屋敷に盗みに入る白ねずみを探す。盗まれたと訴える旗本はいない。御赦免になって江戸に戻った男が、自分を島に送った女に仕返しをすると言っていたと島から連絡が来る。男を探っているうちに白ねずみではないかと思う男が見つかる。男は大黒屋を陥れた旗本を脅迫していた。白ねずみの正体は、大黒屋の庶子・忠吉だった。島帰りの男が、大黒屋から話を聞いて持って帰ったのだった。

 忠吉は、旗本の呼び出しに応じ、十年前の事の真相を追及する。旗本と、大黒屋を競売で買った香取屋が罠を仕掛けていた。真相を明らかにし忠吉が殺されそうになる直前、聞いていた剣一郎が現れる。剣一郎は三人を殺した犯人は香取屋だと問い詰める。

 闕所になる香取屋を大黒屋の兄弟で買い戻そうと言う話になった。

2021年8月21日土曜日

隠密船頭(7) 追慕

隠密船頭(7) 追慕 稲葉稔 

 沢村伝次郎は座頭殺しの下手人とされる浪人二人を探索することになった。伝次郎の小者・粂吉は無理心中で姉を失ったゆうに、置いて出た妹を思い気にかける。
 ゆうは姉の残した五十両を近くに引っ越してきた男・金吾に盗まれる。粂吉は金吾を探す。
 
 伝次郎は浪人の居場所を探しながら、何故座頭・小市を殺したかを探る。小市は男が女を殺し川に落とし、自殺をしり込みしている男の懐から財布を取り、男を突き殺し川にはめた二人の侍の声を聞いていた。小市が聞いた殺しは、ゆうの姉の無理心中だと思われた事件の現場だった。
 浪人二人を捕まえ、小市が自首を迫ったため殺されたことが分かった。

 粂吉は伝次郎にゆうのことを話し、金吾を探す。金吾を見つけたとき、残り三十五両になっていた。ゆうが結婚するはずだった男が、ゆうが絵を描くことを知り、呉服屋を紹介する。着物の柄を書く仕事だった。

2021年8月19日木曜日

京都寺町三条のホームズ・16 

京都寺町三条のホームズ・16 望月麻衣
 〜見習いキュレーターの健闘と迷いの森/前編〜

 大学二年の冬、葵は円生の作品展を仕切ることになっているが、なかなかアイディアが浮かばなかった。
 船岡山エリアの活性化の手伝いをすることになった。町ブラ散策コースと歴史探索コースを作る。
 葵はガラスの展示会で神戸切子と出会い、円生の展示会のアイディアが浮かんだ。
 梶原家の三男・春彦の出生の秘密が春彦の知るところとなる。葵の友人・香織は春彦に対する自分の気持ちに気が付く。

 探偵・小松のところに依頼がくる。恋人の浮気調査だったが、邪魔をしているのは一緒に来た田所敦子だった。華道教室の師匠が生徒・浅井智花の結婚を阻止しようとしていた。何故?

 

2021年8月17日火曜日

照降町四季(三) 梅花下駄

照降町四季(三) 梅花下駄  佐伯泰英

 火事で全てを焼かれた照降町だったが、みんなで護った梅木を支えに復興していく。
宮田屋は、佳乃が仮家で挿げる下駄を船店で売った。自前の屋根船を店仕立てに造った。若狭屋も遅れて船で店を出す。
 宮田屋が土蔵を護るために建てた見張り小屋を大塚南峰の仮診療所にした。八頭司周五郎は蔵の中で見張りをした。
 宮田屋の再建が始まった。宮田屋は佳乃の家を再建した。佳乃は、吉原の梅花花魁に道行きの時に履く三枚下駄を頼まれた。下駄作りの職人と軽く履き心地のいい梅の絵付きの下駄を作った。佳乃の発案で照降町で花魁最後の道中が行われた。梅花花魁は身請けされる。
 水面下で佳乃と周五郎が梅木を守ったことが芝居になる話が進む。
 若狭屋の長屋跡地に南峰の診療所が出来ることになった。
 伝馬町の牢の敷地内に剣術道場が建つことになった。

 周五郎の兄・裕太郎が訪れる。帰る意思の無いことを言う。裕太郎が殺されたと連絡が来る。父親からの呼び出しが来た。

2021年8月15日日曜日

中南米野球はなぜ強いのか

 中南米野球はなぜ強いのか 中島大輔

 ドミニカ、キュラソー、キュウーバ、ベネズエラ

2021年8月7日土曜日

手/ ヴァランダーの世界

手/ ヴァランダーの世界 ヘニング・マンケル 

 田舎暮らしが夢のヴァランダーは、マーティンソンに紹介された物件の裏庭で地面から突き出している人間の手の骨を見つけてしまう。地面のしたには女性の骸骨があった。すぐみの配置に違和を感じたヴァランダーは掘り返したところでもう一体の男性の骸骨を見つける。ヴァランダーは過去に遡って家の持ち主を調べる。

 1944年エストニア人家族がその家に住んでいた。夫婦はデンマークに移住していた。息子はその後もスウェーデンに残り老人ホームに入っていた。彼は事件のあった家ですべてを話し、ヴァランダーに拳銃を突きつける。拳銃は暴発し彼・イーヴァル・ピーラクは即死した。

 彼の父親は暴力的だった。我慢ができなかった母親は首を吊った。死を知った彼は寝ている父親を殺し、二人を埋めた。

 ヴァランダーは埋められた人の身元が分かれば良かったのだ。

2021年8月5日木曜日

アトピーは治せる!

 「保湿」を変えればアトピーは治せる! 続木康伸

 「脱ステロイド」でもなく「食事」でもなく、本当のアトピー治療はもっとシンプル!

2021年8月3日火曜日

照降町の四季 己丑の大火 

 照降町の四季 己丑の大火 佐伯泰英

 文化十二年 1829年3月 神田佐久間町から火が出、神田から南を焼き尽くした。照降町も焼けた。佳乃は御神木の梅の木を護ろうとした。御神木が残っていたら照降町は甦るとみんなで護り通した。
 八頭司周五郎は解き放たれた囚人から三度宮田屋の財産を守った。
 佳乃の父・弥兵衛は火事の早い段階で深川に移動したが火事が修まるころ息を引き取った。
 宮田屋の見張り小屋で、大塚南峰は開業した。

2021年8月1日日曜日

コンビニたそがれ堂異聞

コンビニたそがれ堂異聞 村山早紀

 私は風早神社の娘・沙也加。母が亡くなる前、願い事を叶えてくれるというコンビニたそがれ堂を探したが見つからなかった。私はそんなコンビニがあるということを信じなくなっていた。

 海の記憶 弟・透矢の様子がおかしい。ある夜、透矢は自分の生まれ変わりだという透矢の顔をした者は、昔乙姫さまから貰った玉手箱を探しにコンビニたそがれ堂に行くと言う。沙也加もついて行くとたそがれ堂は見つかった。彼は流行病に効く薬が入った玉手箱を見つける。
 
 星へ飛ぶ翼 恐竜のことを考えていた沙也加はたそがれ堂に着いた。恐竜に会いたいというと帰り道、恐竜が地下に潜り生き続いているという恐竜の子孫に会った。地下に潜り目が不必要になり見えなくなっている。地下社会を飛び回ることができた。

 猫たちは光を灯す 沙也加は母の亡くなる前、橋の上でサンタさんのプレゼントはいらないと言った。母は欲しいものは欲しいと言って欲しいと目に涙を浮かべた。沙也加は万華鏡がほしかった。たそがれ堂で万華鏡を見つけた。 万華鏡を持って思い出の橋の上で、小学二年生の沙也加を見る。母がいる。時のかけらを見せてくれる橋。母は高校生の沙也加を見たのだ。
 母と父の出会い結婚はたそがれ堂のおかげだったことが分かった。

2021年7月30日金曜日

無水独言

無水独言 勝小吉

2021年7月26日月曜日

弥勒シリーズ⑩ 花下に舞う

弥勒シリーズ⑩ 花下に舞う あさのあつこ

 佐賀屋という表は口入屋、裏は金貸しをしている夫婦が殺された。驚いたまま死んだような顔だった。

 小暮信次郎は、亡くなって二十年くらいになる母の命日に寺へ行く。住職と話し、母の話になった。寺の普請のためお金を集めていた。百両箱を作り百二十両を入れていたが無くなった。寺の勘定方の僧が毒を飲んだ時、寺に来合わせた母・瑞穂が、僧から毒を吐き出させ一命を取り止めた。お金が無くなった話を聞き、箱が二つ作られたこと出入りしても不思議がない者が犯人だと言い当てた。箱職人・重蔵と大工・佐吉が犯人だった。箱職人は捕まったが大工は今も捕まっていないと言う話だった。
 信次郎には、母の言葉で忘れられない物があった。「死の間際、何をみたのであろうか」
 信次郎は大工の棟梁に二十年前の話を聞く。大工の棟梁は四、五才だった時、信次郎が尋ねた大工・佐吉のことを尋ねてきた武家の女を覚えていた。信次郎の母だった。母は何を調べていたのだろう。

 佐賀屋の死んだ元内儀の弟・今の屋の主人・榮三郎が少し前に亡くなっていた。金貸しの佐賀屋は葬式の時、店や土地全てを差し押さえるようなことを言った。葬式の手伝いをした遠野屋の下働き・弥吉の話から信次郎は榮三郎が生きていることを突き止める。榮三郎は毒を飲み死んでしまう。
 佐賀屋の殺された内儀・月は扇屋の主人・安芸屋籐左ヱ門と密会していた。籐左ヱ門の内儀・佐江が知り、佐江は籐左ヱ門の名前で裏木戸を開けておくようにと手紙を出した。籐左ヱ門と月の関係を知った伊佐治が籐左ヱ門に話を聞いている時、佐江は書き置きを残し毒を飲む。
 遠野屋で伊佐治が榮三郎と佐江が示し合わせてのようだと話す横で、清之介は、こんな入り組んだ尋常でないやり方を誰が考えたのかと問う。小暮さんは納得していないでしょう。

 信次郎は、伊佐治と清之介を連れて寺へ行く。母の言葉は「死の間際、何を見るのであろうか」だった。信次郎は二十年前の事件を明らかにする。筋書きを描いたのは住職だった。事件は、弟僧が賭場を仕切りかなりの金子を稼いでいることを知った兄僧を自裁に見せかけるために仕組まれた事件だった。賭場にくる重蔵と佐吉は利用された。信次郎の母はそのことを知ったが、賭場に夫の上司がいて有耶無耶にした。これが真相だろうと。
 佐賀屋の徳重は重蔵だった。徳重を見た住職は生かして置けなかった。榮三郎や佐江を利用した。佐江と僧の毒は同じものだった。二十年前の事件と今回の事件を解き明かした信次郎を僧たちが殺そうとする。立ち向かうのは清之介だった。

 

2021年7月23日金曜日

親子十手捕物帳⑥

親子十手捕物帳⑥  親子の絆に恋賭けて 小杉健治

 大島組の親分・常吉が殺された。丸傳一家に目を付けるが、丸傳一家の親分も殺される。
横綱の引退や相撲の興行権のことも関わってくる。丸傳一家から西次郎一家に移った徳三郎が犯人だった。
 辰吉はりさと所帯を持ちたいと思っていた。りさに鳥羽屋の若主人が縁談を申し込んだ。辰吉は自分はりさを幸せにできないと思い所帯を持つ気はないと言った。

 

2021年7月21日水曜日

武士の流儀〈五〉

武士の流儀〈五〉 稲葉稔

お節介夫婦 酒問屋の嫁はまは姑の辛い仕打ちに耐えていた。夫が優しかったが夫まで辛くあたるようになった。身投げしそうなはまを桜木清兵衛が助ける。妻・安江が調べはまの夫・田蔵の浮気を見つける。清兵衛は女の旦那になりすまし芝居をし、田蔵を追い返す。清兵衛夫婦ははまが幸せそうなのをみて喜ぶ。

恋 清兵衛の息子・真之介は水茶屋の娘・ようを嫁にしたいと思った。町娘であることで悩んでいた。清兵衛は真之介の気持ち知り、ようが町年寄樽屋の次男の娘だとわかり話を進めても良いと思ったが、ようの縁談が決まってしまった。

鮨飯 元岡っ引き才次郎は政七に押し込に誘われる。年老いた夫婦ふたりの店だった。才次郎は知り合いの清兵衛に会った。食事をご馳走になる。清兵衛は才次郎に不振を感じ周りをうろつく。押し込みの日、裏口の前で政七は手刀で 倒され、才次郎は清兵衛の自宅で遣り直すよう諭される。

板前 板前の梅三郎は店を辞めさせられ愚痴を言いながら酔っ払っていた。二人の男に強請られている男と出くわすが梅三郎は何を見たかも覚えていなかった。梅三郎は命を狙われる。清兵衛に助けられる。清兵衛は命を狙う者を突き止め、梅三郎が狙われないようにする。清兵衛夫婦と付き合いいろんな話をした梅三郎は人との付き合い方が変わった。仕事に行ける店も決まった。

2021年7月19日月曜日

神様の御用人9 10

神様の御用人9 10      浅葉なつ

萩原良彦 25才のフリーター。会社で野球をしていたが、怪我のため野球ができなくなり会社を辞めた。神様の御用を聞く「御用人」に任命されバイトの合間を縫い、日本全国を飛び回る

黄金 方位の吉兆を司る。狐の姿をした方位神。良彦のお目付役に納まっている。

藤浪孝太郎 良彦も昔馴染み。大主神社の権禰宜。

吉田穂乃香 大主神社の宮司の娘。大学一年生。神や精霊、霊魂などを視る「天眼」の持ち主かって持て余していた自分の能力で、良彦の役にたてないかと奮闘している。

 御用にバイトにと日々忙しく飛び回る萩原良彦と黄金。良彦に正社員の打診があった。正社員になりたいが、そうなったら御用人の仕事に支障がでると悩む。

 日本各地で頻発する地震。黄金は気になることがあると言い残し行方不明になる。

 「大建て替え」の危機に、荒脛巾神と田村麻呂の悲しい過去、黄金の昔の深い後悔を知った良彦は傷だらけの体で荒脛巾神の前に立つ。
 神にもできないことがある。人間だからこそできることがある「神様の御用人」の自分は誰よりも知っている。

 荒脛巾神はアテルイのことモレのこと蝦夷のことを田村麻呂と話せると聞いて泣き出す。田村麻呂は荒脛巾神を阿弖流為の母様と呼ぶ。

 良彦は正社員の話を断る。良彦は神職になるつもり。


後々 を読んで
 小学生が師匠を探している。師匠がいない。父親も不在。母親に行方を聞く。一緒に甘いものでも食べに行ったんじゃないかな。抹茶パフェかな。

 出演 師匠・・・黄金  父・・・良彦  母・・・穂乃香  小学生・・・良彦と穂乃香の息子   これで合っているだろうか。

 

2021年7月17日土曜日

警視庁特殊詐欺追跡班 サイレント・ポイズン 六道慧

 特殊詐欺班は冴子、千紘、春菜、伊都美ら女性が活躍する部署だ。
 ブランド牛の精子と偽って牛の精子を販売したとして、冴子は家畜遺伝資源不正競争防止法で深澤を逮捕した。背後にいる人工授精師をおうためのものだった。だが深澤は手に入りにくい大麻・シンセミアの売人でもあり、麻薬取締官が捜査に介入してきた。

 オーデション商法
 ヤコブ病
 天下人
 薬屋 大麻 危険ドラック 栽培室 調合室 偽造医薬品
 種苗法 廃止するための拐かし

2021年7月15日木曜日

北の御番所反骨目録〈一〉 春の雪

北の御番所反骨目録〈一〉 春の雪 芝村凉也

 意休殺し 用部屋手附同心・裄沢広二郎のところに来て、定町廻り同心・来合轟次郎が附に落ちていない事件の話をする。岡場所で金貸し・三哲が殺され指名された遊女・白糸が捕まり白状した。が、時間が合わない、返り血がない等、合点がいかないらしい。裄沢は、誰かを庇っているなら間夫・呉服屋の手代 のような堅気の者、誰もいなかったようでも、いつでもいても誰も気にも止めないような者が居たかもしれないと言う。合点が行くまで調べることだ。
 白糸には呉服屋の手代をしている、幼馴染の愛しい人がいた。調べられることを拒むために白状していた。犯人は、金貸しに売られた遊女になる前の見習いの小娘だった。いつでも使い走りをしていた。いても気に留めない娘だった。
 来合は娘のために三哲がどれだけ悪どい金貸しか調べている。
 用部屋の外で吟味方与力・甲斐原之里が聞いていた。後礼を言われる。

 深夜行 裄沢が宿直番の夜、隣の商家に泥棒が入ったようだと知らせが来る。裄沢は見習い同心を連れて商家に行く。主人は突然やって来た者はもう帰ったと話す。家族が代わる代わる出て来て話す。主人と子供が店に出て来た時、裄沢は突然、居間に押し入る。女房が人質になっていた。裄沢が犯人を突き飛ばすが、女房は逃げられない。裄沢が庇い、匕首でやられそうになった時、来合が飛び込んできて犯人を捕まえた。
 見習い同心は裄沢の行動を非難するが、来合は女房は懐妊しており長引かせたくなかったのだろうと言った。

 やさぐれ鉄斎 十年前、北町奉行が柳生主膳守久通になり、松平定信の理想を実現すべく性急にまた強引に事を推し進めようとした。裄沢は二十をいくつか超えたばかりの若い頃、本所方同心の本勤になったばかりだった。本所方与力・森川は奉行の言う通りにして本所方の仕事が成り立つと思うかと反論した。毎日の積み重ねで結果が出る仕事を別のことで手を取られおなざりになったことで重大事が起こった時、誰が責任を取るのか等反論した。裄沢は年番方に意見書を出した。本所方に仕事を押し付けられることはなかったが、裄沢は高積見廻りに役を転じられた。
 高積見廻りでも仕事を増やされる。与力の寺本に人数の少ない同心に仕事を増やすなら与力も見回れば良いと言う。与力には与力の仕事があると言う寺本に、他の与力に付きまとって酒宴に誘ったり粗を探し告げ口したりが与力の仕事かと問い質す。翌年度の身分の保障はしないと言われたが、年の暮れまでに奉行が代わり、寺本は隠居した。
 人受けが良くない裄沢を結婚式に呼ぶと言っていた来合の祝言だったが、突然破断になった。日にちまで決まっていた祝言の相手・与力の娘の大奥入りが決まった。尼寺に行くような顔で籠に乗った。寺本の奉行へ美人だと喋った話から出たことだった。何も言わない二人のために、裄沢は与力宅の前で喚く。二人のためになったかは解らない。来合は独り身だ。
 裄沢は、やさぐれ鉄斎(元服の時につけられた名前)といわれいろんな役を転じている。
少し大人しくなったと噂されている。

 春の雪 宿直番の事件後、裄沢は、内与力から奉行・小田切土佐守直年の意向だと言われ、内密の命を受ける。
 根付けを大身が擦られた。掏摸が捕まり曰く付きの根付けの付いた鮫皮の煙草入れがあった。それが奉行所内ですり替えられた。取り戻して欲しいという命だった。誰にも知られずに探さなくてはならない。何も思いつかないまま期限が迫る。番所の手先が古道具屋に入るのを見た。何か引っかかりがあった。そこで鮫川の煙草入れを見つけた。奉行はすり替えた三吉のことも知ったが三吉が手にした五両をそのまま与えた。三吉は手先を辞めた。何も無かった事になった。
  
  裄沢は父が役目中の事故で急死し、突然出仕することになった。十五にもならぬ早めの元服を済ませ、烏帽子親の亡父の友人が嫁を決めた。二つ年上の尋緒だった。裄沢は出仕し始めた頃は仕事を覚えるだけで必死だった。利発であったために裄沢に任せられる仕事の量が増えた。心のゆとりがなく精一杯の毎日を送っていた。十六才で父親になった。娘は亜衣。母親と妻との仲は悪く、裄沢は家に帰っても食って寝るだけの日々を過ごした。突然妻が駆け落ちした。六郷で小舟が転覆し亜衣と男の屍体は見つかった。親戚の家に行く途中の事故ということになった。娘は男の子だった。間も無く母も亡くなった。裄沢は変わった。過剰に押し付けられる仕事を断るようになった。やさぐれと呼ばれるようになった。いつ仕事を辞めさせられるか分からないから奉公人を辞めさせた。尋緒に付いてきた茂助だけが残った。甥だという重次を連れてきた。根付け事件が解決後、菩提寺の裄沢家の墓の前で菰を纏った女が死んでいた。行き倒れの女を無縁仏として供養した。茂助と共に法要に立ち会った。

2021年7月13日火曜日

歌舞伎はスゴイ

 歌舞伎はスゴイ 堀口茉純
 〜江戸の名優たちと”芝居国”の歴史〜


2021年7月11日日曜日

EDO-100

EDO-100   堀口茉純
 〜フカヨミ! 広重「名所江戸百景」〜 

2021年7月9日金曜日

藍染袴お匙帖13 色なき風

藍染袴お匙帖13   色なき風  藤原緋沙子

約束 長女が恋した相手は手代だった。手代は店を辞めさせられる。もらったお金はすられ今では賭場に通うようになっていた。

野分 しじみ売りの寅太、妹が水疱瘡になる。母親は人を傷つけた罪で牢屋にいる。傷つけられたという金貸し甚五郎の悪事を暴いて母親を助ける。

色なき風 商家の娘と武家の恋。兄が殺され仇を打たなければならなくなった。弟と二人で仇討ちをする。きっと帰ってくる。

2021年7月7日水曜日

鉄砲同心つつじ暦

 鉄砲同心つつじ暦 本日も晴天なり 梶よう子

礫丈一郎 三十二才だが、父親・徳右衛門が五十六才で鉄砲百人組同心の役に就いているため内職のつつじに精をだしている。

化けむじな 徳右衛門は俳諧を通じて元勘定奉行・一色丹後守田安家家老と面識があった。一色はつつじが好きだった。徳右衛門の昔馴染み・貫田善七が俳句がしたいとやってきた。一色の屋敷で、勘定頭と勘定役の公金横領を養子に行った息子の仕業と言われ離縁され牢にいることを訴える。徳右衛門は善七を化けむじなと怒った。一色は勘定方の大掃除を命じ不正を明らかにした。

市松哀歌 御先手組同心・多部源五郎が、丈一郎の息子・市松が、息子・新之じょうをいじめたと怒鳴ってきた。塾天心堂の塾生に、新之烝に悪ふざけを仕掛けろ、仕掛けなければ酷い目に合わすと言われた市松は、自分がしなければ新之烝が市松の立場になる。新之じょうは優しいから悪ふざけなぞできない。そうなれば、あの者たちに酷い目に遭わされる。それを避けたかった。と言った。市松の気持ちを知った新之じょうは分かり合えた。市松は塾生の名を言わなかった。

火薬の加役 丈一郎は役に就いていないのに隣の信介と一緒に火薬を運ぶ加役を申し付けられた。盗もうとする者がいると言う情報で偽の荷物を作られていた。偽荷物を盗まれた。盗んだ者の中に代官手代・杉浦の幼馴染の息子・時太郎がいた。本物の荷物を運んだ。

縁の花 一色が礫家のつつじを見に来た。三人が匕首を一色に突きつけ煙硝蔵へ行けと行った。丈一郎は鉄砲で刃を向けている男の手首を飛ばし一色を助けた。一色は丈一郎が交配した新種のつつじに「縁ゆかり」と名付けた。三人のうちの一人が時太郎だった。

秘してこそ 徳右衛門と妻・広江の兄・常滑錦之助の仲が良くなかった。錦之助の息子・鉄太郎の息子・鉄郎の元服に行った。仲が悪くなった原因は丈一郎がレンゲツツジの蜜を吸い死にそうになったからだった。仲がこじれた原因は二番目の兄の嫁だった。徳右衛門と広江の間には祝言の日に交わした約定があった。

花弁の露 徳右衛門がこっそり長崎屋に行っている。火薬を盗もうとした頭が水戸の小関だとわかった。水戸へ送られた。徳右衛門は隠居を決めたようだ。広江と長崎に旅に行く相談をしていた。

2021年7月5日月曜日

邂逅

 邂逅 小杉健治

 弁護士・鶴見京介は函館で親友・志賀川真二の離婚式に参加した。元妻に未練のある様子が心配で同じホテルに宿泊した。翌朝、人と会うと出かけた志賀川が立待岬で墜落死する。現場で揉み合う姿を目撃された古池仁一郎が逮捕された。古池は犯行を頑なに否認する。鶴見は志賀川と古池の関係を探る。

 志賀川は十年前、殺人のあったマンショッンから走り出て来た犯人と出くわしていた。志賀川の記憶を参考に作られたモンタージュから犯人が割り出された。凶器に指紋も残されていた。捕まった畑中は否認していた。
 半年前、マンションで見た男と出会った。男は古池だった。志賀川は古池のことを調べ、畑中のことを調べる。
 畑中の姉は破談になり自殺した。命は助かったが今だに入院している。三年前父母が亡くなり畑中は自殺していた。弟は養子に行き名前を変えていた。
 志賀川は自分の命をかけて、古池に償いをさせようとした。古池を脅迫し古池が志賀川を突き落としたように細工した。揉み合っている写真を撮ったのは畑中の弟だった。

 鶴見は古池に、志賀川のしたこと考えを話す。古池は十年前の事件のことを白状した。そして志賀川を突き落としたのも自分だと言う。

2021年7月3日土曜日

満月珈琲店の星詠み②

満月珈琲店の星詠み② 望月麻衣
 〜本当の願いごと〜

 市原純子・愛由親娘の元に犬が来ることになった。
 愛由は、父親の妹・聡美の東京の家にお泊まりすることになった。
 聡美はトレーラーカフェで食事をして、本当の願いに気付く夜になりますようにと言われた。彼にプロポーズされそうに思う聡美は、仕事も東京も好き。彼のために全てを捨てようとは思わない。けど、彼とは家族になりたい。話し合ってみよう。逃げないで向き合おうと思った。
 
 市原聡美と一緒に働く派遣の鈴宮小雪は、会社が企画したクリスマスのイベントのため商店街に行く。トレーラーカフェで、十四年前に亡くなった父親と会った。それは父親の娘とデートしたいという夢だった。小雪は自分の所為で父親が亡くなったと思っていた。新しい父親も嬉しくないのに嬉しいふりをし、生まれた弟とも疎遠だった。本当の父と話し、自分が本当にに望んでいること、自分を赦すことだったと気付いた。小雪はクリスマスケーキを持って実家に帰った。
 
 市原純子は、疎遠になっている父が倒れたとの連絡をもらい愛由を連れて実家に帰る。昔のことを思い出し、父の圧力に耐えきれず壊れた弟を思い出す。爆発した時一家は断絶した。夜、トレーラーカフェで線香花火のアイスティーを飲んで、線香花火をしている後ろで見守っている父の姿を見た。たくさん愛されたペットは、人に生まれ変わって家族を助けたいと願うことを教えられる。
 次の日、愛由と父のやりとりで父の別の顔を見た。休憩所ではなす母親の父の話し、純子は不愛想な父を不愉快に思っていたが、今は照れているのだとわかる。父を客観的に見ていた。
 オネエ言葉で話す、純子の弟・長谷川次郎が病室に来た。蟠りなく話す。婚約者を連れていた。父母は男の人だと覚悟をしていたようだが、中山明里だった。人気番組「流星エンジェル」を担当するテレビ制作会社のプロデューサーだった。ちなみに話しを書いたのは芹川瑞希だった。一巻の登場人物。次郎さんもね。

 愛由は昔飼っていた犬・りんの生まれ変わりと純子は思った。新しく来た犬もりんと名付けた。 

2021年7月1日木曜日

照降町 四季(一) 初詣で

照降町 四季(一) 初詣で 佐伯泰英

 鼻緒屋の娘・佳乃は、三年前三郎次と駆け落ちしたが、賭場の借金のため売られそうになり照降町に逃げ帰った。
 父・弥兵衛は肺を患い後半年の命だった。
 元小倉藩の浪人・八頭司周五郎が鼻緒挿げの修業をしていた。近所の道場の師範をしている。弥兵衛の掛かる医者・大塚南峰の酒断ちを剣術稽古で助ける。

 三郎次が悪を連れて連れ戻しに来るが周五郎に助けられる。
 周五郎にも元の藩からの誘いがあるが、帰る気がないようだ。

 佳乃の下駄の鼻緒の挿げが宮田屋に認められ高価な仕事を廻して貰える。佳乃は吉原の花魁達に会い足の寸法を測り直で仕事を貰う。

2021年6月29日火曜日

うらんぼんの夜

うらんぼんの夜 川瀬七緒 

 大百舌村大字柳原字川田に住む九世帯が内部落、それ以外が外部落と呼ばれる内部落に住んでいる遠山奈穂。この村に東京から家族が引っ越して来た。奈穂と同高同級の北方亜矢子。
 奈穂は、村の者が北方家をよそ者扱いで親切そうに意地悪しているように思える。
 事件が起こると北方家がここに来たからという理由にする。奈穂は村人、自分の祖母や母に反発する。

 亜矢子は母親を殺していた。引っ越して来た裏庭に遺体を埋めていた。虫が湧いたり小動物が動きまわったり、匂いを消すために過激の匂いを撒いたり。村人は知っていた。村人は北方家を受け入れた。調べていた駐在さんを大雨の巡回中に用水路に突き落として殺した。老人たちは裏庭の遺体を掘り起こし墓地に埋めた。村人の様子を北方家は隠しカメラで撮影した。亜矢子は私に何かすれば村を道連れにするという。

 村を出て行きたいと願っていた奈穂だったが、村にいて亜矢子を見張っているという。言いたいことを言い合って隠し事がなくなった二人は、普通に学校へ行く。

2021年6月27日日曜日

まんまことシリーズ⑧ いわいごと

まんまことシリーズ⑧ いわいごと 畠中恵

 こたえなし 富くじで得た十五両の使い途を巡り三人の男たちが揉めている。一膳飯屋で働いている五郎太はみつと一緒になって屋台店をすることになった。小間物の行商をしていた六蔵は白粉屋の娘と縁組が決まった。七助は自分の五両と五郎太と六蔵から三両借りいちの借金を返済して一緒になることになった。

 吉五郎の縁談 北山与力の娘・紀乃との縁談が決まった同心見習い・相馬吉五郎の御用箱から血塗れの刃物が出て来た。吉五郎の縁談は破断になった。刃物は紀乃に縁談を申し込んでいる旗本・川端が奉行所の中間に金をわたし入れさせたものだった。川端は若隠居になり弟が跡目を継いだ。

 八丁堀の引越し 同心から吟味方与力へと出世した相馬家。大倉屋の質問は何故、元吟味方与力は辞めさせられたかだった。赤羽屋から賄賂をもらったことが理由だったが、調べた結果、賄賂を贈ったのは奈加川屋だということが判った。奈加川屋は中追放になり赤羽屋はこっそり返された。

 名指し 町名主と跡取りが亡くなり継ぐ者がいなくなった四町を新たに引き継ぐ町名主はどこになるか決められず、とりあえず麻之助が助けていた。町名主・西森金吾の娘・和歌が手伝ってくれた。四町は両国と揉めていた。子供の団子で揉め始めたことだから、麻之助は屋台の団子で話を付けた。
 町年寄が出て来て、なかなか返事をもらえなかった雪との縁談が白紙になった。
 四町は麻之助の高橋家が町名主になることに決まった。

 えんむすび 雪との縁談を白紙にした町年寄・樽屋は麻之助に縁談を持って来た。届いた三つの縁談はどれも怪しげな事情を抱えていた。一人は武家奉公希望で相馬家が決めた。一人は好いた相手と一緒になれるよう清十郎が世話をした。一人は大名の側室の話をことわるために商家との縁談を大倉屋がまとめた。西森金吾が和歌に麻之助さんに嫁いではどうかという話が纏まった。

 いわいごと ついに祝言を迎える麻之助に元縁談相手・雪が相談にきた。雪も縁談がまとまった。雪の持参金の土地の沽券状が無くなったので見つけて欲しいとのことだった。麻之助は雪の縁談相手夏月屋に行き話を聞き、沽券を持ち出した者、箪笥に隠した者が要ることがわかった。麻之助はすべて話沽券状を見つけて雪は式を挙げた。

 麻之助と和歌も式を挙げた。

2021年6月24日木曜日

大河の剣〈三〉 

大河の剣〈三〉 稲葉稔

 日本一の剣術家を目指す山本大河は玄武館道場の最強を決める大試合に挑む。最後の一人、水戸藩士・小田部籐十に負ける。

 山南に紹介された試衛館の島崎勇と立ち会う。
 練兵館の桂小五郎と立ち会う。
 士学館の桃井春蔵と立ち会い二勝一敗で負けた。

 大河は希望して武者修行に出る。熊谷宿で雲嶺館で稲村勘次郎に勝ち、道場の門弟に命を狙われる。

 江戸お玉ケ池の千葉道場で、道三郎の兄・奇蘇太郎が目を覚まさなかった。 

2021年6月22日火曜日

新吉原裏同心抄〈四〉 祇園会

新吉原裏同心抄〈四〉 祇園会  佐伯泰英

 吉原の評判の遣り手が不可解な辞職をしていた。異変を感じた四郎兵衛ら会所の面々は背後を探った。浮かんだのは家斉の側御用取次の朝比奈義稙だった。四郎兵衛は拐かされ遺体となって吉原に返された。

 祇園会の神興洗の朝、三人目の犠牲者が出た。犯人は、禁裏に関わる殺し屋、禁裏一剣流不善院三十三坊の弟・七十七坊と思われた。神守幹次郎は七十七坊を呼び出す。禁裏御料方副頭綾小路秀麿、薩摩京屋敷用人頭南郷皇左衛門を立会人に果たし合いをする。七十七坊は死んだ。四郎兵衛が暗殺されたことを知った幹次郎は江戸へ向かった。

2021年6月20日日曜日

家請人克次事件帖③ 春告げ鳥

 家請人克次事件帖③  春告げ鳥 築山桂

 口入れ屋・大和屋克次は先代・籐右衛門からかって請け判をつき親しくしていた船宿の主人が首を括った事件を調べて欲しいと頼まれた。

 克次が調べると何十年も前から信州の人宿と江戸の口入れ屋の阿漕な実態が浮かんで来た。克次に手を引かせようと京が拐かされる。飛び込んだ克次と正蔵が一味を捕まえる。大名と関係のある人宿だが、奉行所の役人も悪事の追求に前向きになっている。

2021年6月18日金曜日

料理本 ご馳走おつまみ

 みんな満足 ご馳走おつまみ 林幸子

2021年6月14日月曜日

昨日みた夢

 昨日みた夢 宇江佐真理

 父と叔父(双子)が口入れ屋をしている。
ふくは一度嫁いだが、夫がいなくなり帰ってきた。夫に起こった出来事を父親兄弟は知っていた。力を貸してもいたが、ふくには知らされていなかった事をふくが知った。

 その後のふくを知りたかった。本を読んだことを後悔。亡くなったことが残念でたまらない。

2021年6月10日木曜日

新・居眠り磐音 幼なじみ

 新・居眠り磐音 幼なじみ 佐伯泰英

 深川の唐傘長屋で育った幸吉とそめ。幸吉は鰻処宮戸川に奉公し、宮戸川の江戸橋脇の新店を任されることになった。後には宮戸川を継ぐことになっている。
 寛政五年七月 そめは幸吉の元へ嫁入りした。仲人は神保小路に尚武館を再興した坂崎磐音とこん夫婦だった。江戸橋の店の隣に新居を建て、そめは呉服町へ通うことになった。
 そめは江三郎親方に着き縫箔師の修行し、京にも三年修行に行った。今ではそめ名指しの注文が殺到するようになっていた。

 寛政四年秋、こんの父親・金兵衛はなくなった。

 

 

2021年6月8日火曜日

自然菜園で育てる健康野菜

 自然菜園で育てる健康野菜 竹内孝功 新田穂高

 ゼロから始める無農薬栽培
 滋養豊かな厳選24種類&12ヶ月野良仕事ノウハウ

2021年6月6日日曜日

風烈廻り与力・青柳剣一郎52

風烈廻り与力・青柳剣一郎52   生きてこそ    小杉健治

 みすぼらしい物乞いの風体の年寄り、名は玉堂。彼と言葉を交わした者は、自ら死を選ぶ。世間が彼は死神と畏れる中、剣一郎は下駄屋夫婦殺しに遭遇。下手人の姿を目撃した指物師が不審な自死を遂げる。死神の仕業とされ騒ぎになる。

 下駄屋夫婦を殺した犯人は、養子と仲間だった。その中一人の顔を見た指物師は、玉堂に扮した男に声を掛けられ連れ込まれた空き家で殺された。死神の仕業に見せかけたのだった。

 玉堂は記憶がなく寺の納屋に住んでいた。玉堂の命が狙われた。十三年前、足袋屋の主人が病気の娘を亡くし、妻を首括りで亡くし、突然主人が行方不明になった。主人・吉五郎が玉堂だった。吉五郎の妻は、旗本の奥女中だった。旗本の子を身ごもり、吉五郎と一緒になった。娘を亡くした妻は、報告に行った。旗本に手込めにされ自死した。旗本と付き合いのあった吉五郎の腹違いの弟が、旗本の口利きで足袋屋を乗っ取った。吉五郎は殺され掛け記憶を亡くした。吉五郎は下働きをしていた女中の家で生活している。

 剣一郎はもう一つ頼まれたことがあった。御徒組頭田所文兵衛の娘・菊の縁談だった。菊には決まった相手がいた。御徒衆の前島滝三郎だった。そこへ、御徒頭から一千五百石の旗本の息子と、二千石の旗本の息子から、話が来た。断ればいろんな害をなして来る。二人の噂は良くなかった。人を使って前島を殺そうとした真島兵太郎には正面から会い、行いを暴き、諭す。上役を使って苦しめる旗本の父親に会い、たまたま足袋屋に関係した旗本だったため十三年前のことを聞き出し、田所家への手出しを禁止するよう求めた。


 

2021年6月4日金曜日

たすけ鍼 立夏の氷菓子

たすけ鍼 立夏の氷菓子 山本一力

 衣替え 尊宅検校の娘・さゆりは身体に剛毛が生えている。検校が嫌われ者の高利貸しの所為だと言われている。染谷が鍼と灸で取り除いた。染谷は検校がみなに内緒で目の不自由な子に按摩の技を教えていることを知った。

 居眠り初め 湯屋の二階で食中毒患者が五人出た。家に帰っていた娘・いまりも一緒に往診に行く。鍼と灸で痛みと食あたりを治した。いまりは父親の技を初めて見た。感銘を受けた。

 正徳の湯 1834年 染谷と妻・太郎は、昭年夫婦が行っている箱根の芦の湯へ行く。染谷は按摩に文句を言う江戸の左官職人に歩き方が悪いと歩き方の極意を教えた。

 にんじん船 江戸で出回る偽朝鮮人参を栽培しているのか調べるために川崎宿に泊まった。にんじん船が来るとの情報で滞在する。にんじん船でやってきたのは、金持ちの商家の主人たちの贅沢な賭場を兼ねた宿泊だった。客を案内するのは品川遊郭の当主・野崎屋勝太郎だった。勝太郎が急な腹痛を起こし染谷が呼ばれる。灸で治した。帰りは江戸まで船で送られた。
 四十年前、辰巳の太郎の客だった。品川の格を上げるために遊びを習うために辰巳に来ていた。勝太郎は染谷と昭年がやっている無償でやっている寺子屋の手伝いをしてくれた。

 つぶ餡こし餡 太郎が応援している菓子屋・中村屋の主人が腰痛で染谷が行く予定だった。にんじんが入った膏薬で治ったと言う。扱っているのはやくざ者で騙されているのだが、菓子が売れるようにしたりするものだから主人は彼らから離れられない。染谷が行っても追いかえされる。

 立夏の氷菓子 中村屋の主人が騙されている膏薬を売っているのは呉れ尾という渡世人だった。博打が好きな薬種問屋・鵜ノ木屋の隠居が、溜まった負け金の代わりにクズ人参を渡したのが始まりだった。隠居は強請られるようになっていた。知り合いの野島屋の紹介で隠居に相談された染谷は脇坂安勝に相談する。市中の襲いかかる難儀の時、筆頭となって援助活動をすることを家訓とすることで、内密に処理することにした。呉れ尾の跡地は火除け地になった。

2021年6月1日火曜日

プロ野球FA宣言の闇

プロ野球FA宣言の闇 中島大輔

 FA権は宣言しないといけないこと
 FA権を獲得するまで長くかかること
 球団が保留権を持っていること
    NPBが村社会であること 
 各球団が野球で儲けようと思っていないこと
 現役ドラフト

 大竹憲治 プロ野球選手会事務局長
 小嶋武士 日本ハム球団代表
 坂井 西武、ダイエー球団代表保之
 森忠仁 山崎祥之 松本泰介 選手会事務局
 木村昇吾 元広島カープ選手
 団野村 日本人エージェント
 
 

2021年5月31日月曜日

鬼役〈三十二〉 殿中

 鬼役〈三十二〉 殿中 坂岡真

 色なき風 元宇和島藩士・糸川小十郎が、若年寄遠藤但馬守の命を狙った。居合わせた矢背蔵人介が阻止する。糸川は自死した。宇和島藩の四男が遠藤家に養子に行く話があったが、遠藤家が断ってきたことで糸川は威信が傷ついたと言った。しかし、干鰯問屋や宇和島藩の干鰯の囲い込み問題があった。蔵人介の古き友人も留守居役と繋がり蔵人介の前に立ちふさがる。
 蔵人介が命がなくなることを覚悟した時、友が蔵人介の心がわかり、留守居役を説得。留守居役は切腹、友は仏門に入ったようだ。

 国芳受難 蔵人介は母・志乃と、昔の恩人、秋元家を尋ねる。秋元家は最上紅花の栽培で知られる。蔵人介は鳥居耀蔵が紅花問屋を調べていることが気になっている。
 十年前の秋元家の金蔵から盗んだのは、盗賊柊小僧だっだ。今では冬木屋を名乗り秋元家御用達になっていた。蔵人介は柊小僧と御納戸奉行に出世した村地を洗い出す。秋元家を訪れ二人を糾弾する。
 紅花問屋を調べていて殺された同心を殺した疑いを持たれた国芳、国芳を捕まえたいがために捕まっていた版元が解き放たれた。

 去りゆく者 老中水野忠邦を殺すために浪人が集められている。後ろで操るのは誰か、しらべるために蔵人介は中に入る。見るからに浪人に見えない蔵人介は捕まってしまう。同じところに捕まっていたのは、忠邦を殺そうとして蔵人介に阻止された若者だっだ。若者は今夜忠邦が狙われることを伝える。自分の片腕を犠牲にして蔵人介を逃す。蔵人介は伝右衛門とふたりで忠邦を逃し、屋敷に返す。
 鳥居が水野を裏切り水野は罷免された。蔵人介から話を聞いた忠邦は若者を家来にした。

2021年5月29日土曜日

栄次郎江戸暦25 口封じ

 栄次郎江戸暦25  口封じ 小杉健治

 田宮流抜刀術の達人で三味線の名手・矢内栄次郎は、太物問屋「和泉屋」の大広間で開かれた会に地方として三味線を握っていた。宴会の途中、主人・籐右衛門が匕首を握った男に襲われたところを栄次郎が救った。和泉屋の主人から紹介されたのは小間物屋「新田屋」の伊佐治だった。伊佐治は夫婦で籐右衛門に恩があると言った。

 籐右衛門の命を狙う者の心当たりの中に家を出ている息子・籐吉がいた。命を狙われていることを言えなかった。
 伊佐治は元盗賊だった。元の仲間から和泉屋を狙っていることを聞く。前は殺しをしなかったが、和泉屋の命も狙っていることを聞く。伊佐治は新しく頭になった元仲間・鮫蔵を探し出し刺し違えて止めようとする。
 栄次郎は籐右衛門の命を狙った者、籐右衛門の付き合いのある者から屋敷内に盗賊を住まわせている旗本を割り出した。そして小普請支配・旗本大河内主水が割り出された。大河内は和泉屋の主人から千両を借りていた。籐吉は大河内の屋敷に居り、大河内の用人は籐右衛門を殺して借金の返済を無くそうとした。旗本は盗賊を使い盗賊に籐右衛門を殺させようとした。

 栄次郎は伊佐治の過去を知られないようにした。鮫蔵は捕まり旗本との関係を白状した。用人は切腹した。

 栄次郎に養子話がある。兄の結婚相手・大城美津の知り合いの二千石の旗本・織部平八郎の娘・容だった。

2021年5月27日木曜日

江戸の御庭番〈7〉 裏切り

江戸の御庭番〈7〉 裏切り  藤井邦夫

 凄腕の隠密・喬四郎は将軍・吉宗に使える御庭番。弟分の才蔵と共に隠密御用にあたる。抜け荷の探索をしていた目付け配下の侍が連発銃で殺された。探るなかで喬四郎も撃たれ傷を負う。一人で探索中の才蔵は連発銃を手に入れるが、喬四郎に報告しない。

 抜け荷は小倉藩が手に入れ、唐物屋阿蘭陀堂が売りさばく。才蔵は阿蘭陀堂の主人・義十を倒し、阿蘭陀堂の主人に治った。喬四郎は小倉藩から阿蘭陀屋に荷を運ぶ途中の船を沈めた。才蔵も一緒に沈んだ。残りの小倉藩の荷を抑え、小倉藩は中屋敷留守居に責任を押し付けた。

 抜け荷事件が終わった後、才蔵が現れる。喬四郎は才蔵と戦い、才蔵は敗れる。


 才蔵がいなくなって喬四郎はこれからどうするのだろう。

 

2021年5月26日水曜日

QED 源氏の心霊

QED 源氏の心霊 高田崇史

 棚旗奈々の妹・沙織32が再婚した。 相手は桑原崇の友人・フリージャーナリスト・小松崎良平。京都八坂神社で式を挙げた。

 奈々と崇は次の日、宇治の平等院へ行く。
 宮中を悩ませた妖怪・鵺を退治、獅子王と呼ばれる刀を拝領したほどの武勇を誇り、和歌にも秀でていた源頼政。従三位を賜り、満たされていたはずの晩年、なぜ彼は挙兵したのか。その墓である頼政塚はどうして祟りをなすと伝承されるのか。

 京都亀岡の頼政塚に惨殺死体が見つかる。殺された男の息子の遺体が、壇ノ浦で錨のオブジェに繋がれ見つかる。新下関大学助教授・玉置愛子の遺体が海で見つかった。
 小松崎の取材に崇と奈々は同行する。
 崇は教授・安西憲往と研究室助手・富岡忠行と妻垣瞳の話を聞き、安西教授の平家および安徳帝への偏愛を知る。亀岡の事件の犯人は息子と安西教授と一緒に玉置愛子もいた。三人は下関に帰ってきた。玉置が息子を突き飛ばし殺してしまったと思い入水自殺した。息子は生きていた。殺したのは教授だった。

 教授の妹は亀岡で殺された男と付き合い、子供が出来た。死産で生まれたことを知った妹は自殺した。男は妻子があり源氏の末裔を名乗り、平家を愛する安西家の娘にいろんなことを吹き込み、最後に捨てて京都に帰っていった。教授はその男が水瀬正敏と判り殺しに至った。

 頼政はいつの時も一貫して天皇家のために動いていた。
 安徳天皇は女だった。


 去年の10月、宇治の平等院へ行った。場所的なことがそのまま頭に浮かぶ。駅からまず鳥居をくぐる。橋姫神社→県神社→平等院鳳凰堂の予約をして→浮島十三重石塔→中島橋→橘島→朝霧橋→宇治神社→宇治上神社→源氏物語ミュージアム→宇治橋→鳳凰堂の順にまわりました。

2021年5月24日月曜日

左近浪華の事件帳④ 眠れる名刀 

左近浪華の事件帳④ 眠れる名刀 築山桂

 左近は南河内で見つかった名刀「小竜景光」が四天王寺に預けられることにまりその護衛を依頼される。左近が着いた時、庄屋は孫娘とともに惨殺され、刀は奪われていた。伊達家の鶴丸国永の行方もわからなくなっていた。

 犯人は阿片中毒になっていた将軍の息子だった。隠れ住んでいるのは伏見城が廃城になったあと、幕府直轄の禁制地となった山中だった。

 盗賊の息子・迅八は昔この山に住んでいたので案内にたった。

2021年5月22日土曜日

左近浪華の事件帳③ 影の泣く声

左近浪華の事件帳③ 影の泣く声 築山桂

 東儀左近は四天王寺の境内で「死んだ息子の仇を取ってほしい」とすがられた。廻船問屋・長浜屋のべか車に轢き殺されたが、役人が金で丸め込まれ、車力も長浜屋も無罪になったという。千年以上も大阪の民を陰で守り続けてきた〈在天別流〉の姫である左近は事件を調べ始める。

 長浜屋は抜け荷の疑いがあった。店の者何人もが公儀隠密に入れ替わっていた。老中松平周防守が命令していた。
 京都所司代・水野越前守は以前命を助けられた東儀上総を家臣にしようとした。周防守の追い落としに利用しようとした。話を持ってきた水野の家臣・小田切は、越前が後ろについてやるから私服を肥やすことばかりを考えている周防守が糸を引く長浜屋をやっつけようという。上総は逃げ惑う者に隠れて自分のいのちを守ろうとした越前を信用しないと伝える。
 長浜屋の隠し持っていた周防守とのやりとりの文を小田切に渡し、在天の存在を知った小田切に上総は単なる楽人だったというように言う。
 越前は周防守の追い落としのため抜け荷の一件の始末に手いっぱいで上総のことは忘れた。今では抜け荷の追求も忘れ、出羽守の機嫌取りに精をだしているらしい。

 長浜屋がおかしいと思われるように手を打ったのは長浜屋自身だった。周防守に好きなようにされることに耐えられなくなっていた。

 過去にも似た事件があった。その時隠密が一人抜けた。今、いろんな情報をくれる赤穂屋だった。

2021年5月20日木曜日

家請人克次事件帖② 冬の船影

家請人克次事件帖② 冬の船影 築山桂

 幼い娘の拐かしが続けさまに起きていた。薄汚い身なりの兄弟が近づくのだという。深川で家請人を営む克次は、家を借りたいと一度訪ねてきた兄弟が気になっていた。

 友達の息子が拐かされたことで、籐右衛門のところにいる京の過去が明らかになった。籐右衛門の息子と愛し合ったが、籐右衛門の反対にあい結ばれなかった。同じ人を悼む 籐右衛門と京が一緒に住んでいた。

 昔、罪を犯した祖父と一所懸命働く孫娘のことで大家に相談され、克次は拐かし事件の捜査に巻き込まれて行く。不振な屋形船を見つけ拐かされていた子供を助ける。事件は解決した。

 克次は京のことがわかり八丁堀に行き早苗にも会えた。吹っ切れたようだ。

 一度訪ねてきた兄弟、兄は亡くなった父親と同じ組紐職人に弟子入りが決まり、妹は医者の所へ住み込みで奉公することに決まった。

2021年5月18日火曜日

家請人克次事件帖① 夏しぐれ

家請人克次事件帖① 夏しぐれ  築山桂

 甘いと評判の請人克次は、元は優秀な岡っ引きだった。自分のしくじりのため恩ある同心が亡くなり岡っ引きを辞めた。心を寄せていた同心の娘・早苗が養子・宮原順之介をとり中山家を継いで二年になるが、八丁堀に近くこともできないでいる。順ノ介は克次に戻ってほしいと願うが、克次は断っている。

 克次が岡っ引きの時、火付け人を探索し捕まえた。火事で息子家族を失った請人業をしていた籐右衛門は岡っ引きを辞めた克次に請人株を譲ってくれた。籐右衛門は隠居生活をしている。籐右衛門には京という世話をしている女がいる。

 克次は、侍と女中の駆け落ち組みの請人になった。
 身投げしそうな大店の娘・千佳を助け、籐右衛門に預けた。千佳には婿取り話があった。相手は旗本で、克次が請け合った駆け落ちの侍・邦三郎だった。
 邦三郎は元中間に誑かされ、押し込みの片棒を担ぐようだ。夜中、千佳に戸を開けるように言っていることを知り、奉行所と一緒に張り込むことになる。
 盗賊は捕らえられる。邦三郎も捉えられるが、千佳の訴えで江戸所払いになる。邦三郎は駆け落ち相手と江戸を去る。

2021年5月16日日曜日

拵屋銀次郎半畳記〈二〉汝想いて斬

 拵屋銀次郎半畳記〈二〉 汝想いて斬 門田泰明

 黒書院直属監察官大目付三千石、従五位下加賀守桜伊銀次郎
 拝領地が拡大され千三百坪になった。飛一・イヨ夫婦に元の奉公人を探すように頼む。
 
銀次郎が倒した、 妖怪床滑七四郎事件に関する建物はなくなり、人もいなくなっていた。
京野屋も消えていた。
白装束の忍びに銀次郎は度々襲われる。

銀次郎は柳生の里に行く前に、伯父和泉家に寄る。伯父に言われ、大番頭六千石旗本津山近江守忠房家に立ち寄る。銀次郎が呼び寄せた艶がいた。拵屋銀次郎になり、艶に化粧を施す。艶は長束正家の子孫だった。

 柳生に行く途中、大磯で白装束の刺客十六人を倒した。家継が銀次郎に会いたいと言っていることを知り、江戸へ帰る。柳生に行くという命令は取り下げられた。傷は薬湯で治す。

2021年5月14日金曜日

驚きの家庭菜園マル秘技58

 驚きの家庭菜園マル秘技58  
 「やさい畑」菜園クラブ編

2021年5月13日木曜日

汚部屋がきれいになりました

夫を変えて汚部屋がきれいになりました まきりえこ 

2021年5月11日火曜日

医療時代小説傑作選 

医療時代小説傑作選 いのちを守る  菊池仁 編

 衣替え  山本一力
   鍼灸師・染谷 検校の十二歳の毛深い娘・さゆりの治療
   「たすけ鍼 立夏の氷菓子」
 
 女牢  藤沢周平
   夫を殺して処刑された。牢医・登は夫の借金を身体で払わせた金貸しを投げ飛ばした。
   「新装版 春秋の檻 獄医立花登手控え(1)」

 名医  宇江佐真理
   口入屋の娘・ふくがヤブ医者と言われる玄桂の女中に行く。玄桂は最後まで患者に寄り添う医者だった。
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 蜻火 藤原緋沙子
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   「藍染袴お匙帖 風光る」

 かさぶた宗建 渡辺淳一
   種痘の研究そした医者。佐賀藩楢林宗建
   「長崎ロシア遊女館」