2023年9月24日日曜日

江戸は浅草〈五〉 春の捕物

江戸は浅草〈五〉 春の捕物 知野みさき 

 横恋慕  
 真一郎の多香への妻問いは宙ぶらりんとなっていた。
 菓子屋の十六七才の娘が的矢の注文にきた。娘も弓道をするらしい。許嫁に贈ると言う。相手は、弓術刈谷道場の橘清二郎18だった。養子の縁談だった。菓子屋の娘ではなく武家で父親は賄頭だった。華江は、橘の顔を見るため刈谷道場と槙原道場の仕合を見にきて真一郎を知った。橘に贈るつもりだった。
 久兵衛が梅の浮気を疑っていた。真一郎と大介が調べる。昔の馴染・哲之介と会っていた。昔、久兵衛には許嫁がいた。縁談を断れなかったため梅を囲う許しを得た。梅にも妻問いする哲之介がいたが、梅は断った。哲之介は上方に行き、祝言を挙げた久兵衛の妻・敦は亡くなった。息子・重太郎九才。久兵衛は梅を後妻に迎えようとしたが、重太郎と梅に反対され出来ないままでいる。梅は敦が亡くなる前に、久兵衛と祝言は挙げぬ。両備屋の敷居を、またぐのは久兵衛の葬儀の時だけと書いた起請文をかいていた。
 哲之介はもう最後だと江戸に来ていた。
 
 白澤と八百比丘尼
 三つ目の白い獣が出た。腹にも三つ目がある。奥山の山王座の見せ物白澤を探すことになった。心吾の亡き妻の笛を借り白澤を捕まえる。おとなしい賢い犬だった。額に一つ、腹に三つ目は入れ墨だった。心吾から話しを聞いた二人は、心吾が犬を逃がしたのだと思った。
 大介の笛作りの師匠・音正を殺して自死した雪が現れた。見つけ出した女はそっくりだった。大介は雪でないことを見破る。妹だった。三姉妹の末の娘、母も三姉妹も雪だという。祖母は不老であろうとした。生い立ちを話す。大介も師匠の死の真相を話す。雪は大介を殺そうとした。大介を庇い師匠は亡くなった。大介の母親を音正は愛した。その息子を引き取った。雪は大介に嫉妬した。
 雪は縁切り寺の上野国満徳寺に行くと言う。真一郎は心吾と白澤を逃がすことを考えた。白澤に腹巻きをし、手拭いで頬っかむりしている。真一郎たちは見送った。
 翁の行方 十年以上前から死にたいと考える金持ちを阿芙蓉で殺している者がいる。翁の面をつかったり、祈とう師になったり。岡っ引きの又平も動いている。真一郎は又平から翁の面を借りる。多香の仲間・小兵衛が現れる。老人として現れた小兵衛の本当の姿は、四十から五十の小柄なきびきびした男だった。多香の面打ちの師匠でもある面打師・青嵐だった。青嵐は、殺し屋が自分たちの仲間・権兵衛ではないかと探していた。青嵐の翁の面が権兵衛を捕まえる劣りになった。又平たちは老人の小兵衛を怪しいと探していた。
 権兵衛は真一郎の前に現れた。多香たちが捕まえた。
 多香が伊賀者と知っているのは、真一郎と久兵衛だけだった。大介と守蔵と鈴に多香が伊賀者だと知らされた。

 春の捕物
 鈴の縁談が舞い込んだ。畳屋の壱助。真一郎と大介が調べると、店、兄妹、本人、悪いところがなかった。鈴は七年前、何者かに手込めにされでから誰とも一緒になる気がないといっている。
 鈴を覗き込んだ男が現れる。鈴はあの時の男だという。匂いからだった。壱助が見ていた。真一郎と大介は昔の関わりから男を探し出しだす。金継師の幸治。彼は死んだことになっていた。幸治だと思われる男を罠に掛ける。鈴を手込めにする前に、鈴を引き取った師匠津江を殺していると思われた。多香が津江の振りで幸治の前に現れる。幸治は鈴のことは認めるが津江は事故で階段から落ちたと言う。大介は、強姦だけでは死罪にならないため殺そうとするが止められた。真一郎も弓を引くが、近之助が一瞬早く殺しに行く。真一郎は匕首を飛ばした。幸治は捕まった。別の男を殺していたことが分り死罪になった。
 鈴は話しを断った。

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