2025年11月6日木曜日

徒目付勘兵衛〈十一〉 天狗面

 徒目付勘兵衛〈十一〉 天狗面 鈴木英治

 南町奉行所同心・稲葉七十郎と早苗の祝言の最中、殺しの報せが入り、七十郎も婚礼衣装のまま現場に駆け付ける。殺された男は、背後から刺され、遺体の傍らに天狗面が置かれていた。

 勘兵衛が通った犬養道場と徳島道場との間で三年に一度行われる剣術の勝ち抜き試合の日が近くなった。そんな中、徳島道場の、副将・佐古山が殺される。勘兵衛と修馬が調べる。
 修馬は、早苗との見合いはなしがあったが、早苗が七十郎を気に入り、頭・飯沼麟蔵に姪の夕希を紹介された。夕希は、犬養道場の勘兵衛の友人・岡富左源太を気に入ったようだ。
 犬養道場と徳島道場の試合は賭の対象になっているらしく、徳島道場の主将の腰巾着・柿岡が百両を掛けていた。佐古山が殺され犬養道場が勝利に近づくようにしたのかと思われたが、柿岡では、佐古山を殺せない。また、佐古山は、四百両が必要で、二百両では駄目なこともあり、見込み違いと判った。
 試合が行なわれた。左源太が勝ち、犬養道場の勝ちとなった。勘兵衛は見ていた。徳島十蔵の顔に笑みを見た。十蔵は捕らえられた。冷静な佐古山がおれば、負けることはなかったと思う。道場を閉めたかった。土地を買う者も現れた。五十両が百両になった。

 天狗面が置かれた遺体が見付かった。先に殺された男の父親だった。二十年前、息子が、虐めのために自殺した復讐だった。息子を追い込んだ男を許せない父親は出家した。見事な仏像を見て仏師になった。今運慶と言われる程の仏師になった。虐めた男に会った。男には息子がいた。十七才。陰湿な虐めをしていた。息子を殺した。親には判るように天狗面を置いた。親を呼び出した。現れた親は、殺すためにやって来た。三十七才と六十才だが六十才が勝った。気持ちは晴れなかった。後悔があった。捕まった。心に平安が来ると思った。
 左源太の祝いが行なわれた次の日、祝言が行なわれた。

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