2024年3月31日日曜日

うっぽぽ同心十手綴り⑤ 藪雨

 うっぽぽ同心十手綴り⑤ 藪雨 坂岡真

 鹿角落とし 綾乃が、去年座員が赤ちゃんを産むのを手伝った女芝居一座が、河原芝居を打っている。勘兵衛は様子を見に行く。幹太郎と名付けられた乳飲み子を抱いたりんに会った。一座の人気は衰えを知らず、連日女芝居は大入り札止めだった。三座からの嫌がらせがあった。夜、縄を切られ芝居小屋が倒壊し、りんは下敷きになり亡くなった。新しく建て直した小屋も、奉行所の見回りをかい潜り、火矢を打たれ焼けてしまう。みんなの応援で、中村座で、りんの法要と名打った一日芝居が行われた。元一揆掃蕩の指揮を執った砂絵師は、佐保之丞一座と一緒に旅に出る。

 足力おでん 勘兵衛は、邯鄲師神輿草、新宿追分えんま屋におりという投げ文を貰い、内藤新宿へ出張る。印伝屋の番頭になり銀次と共にえんま屋を見張る。見せ物小屋の怪力おでんの足力が、神業だと聞き、予約する。勘兵衛は、一朱を出しても惜しくないほど気持ちがいい。でんの話を聞く。飲んだくれの已代治に買われ、逃げようとしても逃げられない。道具として扱われている。三日目、見倒屋備前屋が、九両二分盗まれた。でんに背中を踏んで貰った後だった。勘兵衛は八丁堀で、でんの噂を聞く。でんは夜鷹の元締・伊助に捕まっていた。奉行から礼を言ってもらうことを条件に、でんを引き取る。でんから已代治の居場所を聞き出し已代治を捕まえる。伊助は根岸奉行に呼び出され、夜鷹のために努力するようにと労いの言葉を貰った。でんのこれまでの話をし、連れて行く。備前屋はでんを内儀にする。番頭と心中事件を起こし助かった妾もいずれ溜めから出してもらうと考えている。

 藪雨 三十半ばの女が、袈裟懸けに斬られ胸をひと突き、同じ殺され方で二人が殺された。一人は大店の内儀、一人は、船饅頭。抱え主・与一の行方が分らない。二人は浮瀬のふうと同じ辰巳芸者だった。旗本・黒木が犯人かと名前が挙がる。ふうの廻りに与一がいる。
いちという芸者が訪ねて来た。十五年前に上役に強要され剽げた裸踊りをされたことを少し前に座敷に呼ばれたお大尽に懐かしくしゃべった。ものすごく剣幕で怒り死んでも許さんと帰った。黒木兵馬だった。その時の芸者が五人の内三人が殺された。あと二人はいちとふうだった。勘兵衛は浮瀬に行くが、ふうは斬られ仁徳に運ばれていた。斬った浪人は捕まえた。
 黒木を稲荷の祠に連れ込んだ。与一が仲立ちで浪人を雇い元芸者を殺させたことを白状させた。腹を切ることを強いる。与一を捕まえようとしたが、大川へ逃れた。七日経っても見付からなかった。与一はふうを刺した。ふうは死んだ。浮瀬はこまが継いだ。

 


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