2024年10月19日土曜日

春待ち同心〈二〉 破談 

春待ち同心〈二〉 破談 小杉健治

 定町廻り同心・伊原伊十郎のもとに、縁談相手の百合から婚約破棄のような話しが伝わる。百合を一目みてから、美貌の虜となり、一途に思い続けていたのに・・・。
 百合と時をおかずして出会った妖艶な音曲の師匠・ふじ。伊十郎は憎からず接していたが、ふじが、江戸を騒がす怪盗「ほたる火」 なのではないかと疑いをもつようになった。探索を兼ねて逢瀬を重ねていた。下心はないはずだが。何故、百合が、ふじのことを知っているのか。下働きの光が百合と関係があると思っていたが、はずれた。では誰が・・・。
 ふじと会って別れた後、黒装束のほたる火を見た。会っていた時刻に盗まれた商家があった。ふじはほたる火ではなかった。
 もう一人、元軽業師の女・りつを探したが、彼女も軽業をできるような体型で無くなっていた。ほたる火は誰か。

 三年前、伊十郎が堅気になるよう送り出した泰吉が箱根で殺され、女房が母親のところに来ていた。泰吉の元の仲間・虎吉が殺される。ひげ面の男が目撃され、伊十郎は、探し出す。泰吉は、小田原で、川の改修工事を取り仕切る「大政組」と作事奉行の石垣修復工事の不正に絡む密談を聞いてしまい、殺されると思い逃走資金を盗んで逃げた。箱根で死体を見付け、持ち物を自分の物と交換して、自分が死んだことにした。
 母に逢いに帰るとひさが、母のところにいた。ひさは泰吉が死んだことを母親に知らせにきたが、言えなくて女房だといい母親と一緒に住んでいた。組長から見張るように言われていたが、組長の妾にはなりたくなかった。母親の面倒を看ることになった。
 泰吉は大政組に追われていた。虎吉を殺したのも大政組の者だった。捕まった。
 泰吉は伊十郎と奉行所に行き、何もかも話す。小田原藩にも伝わった。
 泰吉が持ち帰った遺品から殺された男が分った。佐平次調べていた事件の男だった。亭主が旅立った後、間夫が追いかけ殺したことを白状した。

 百合が伊十郎の屋敷に来た。破談はなしになった。百合にふじのことを聞くが、知らないと言われた。百合が帰る時、桶が風で飛ばされて転がってきた。伊十郎が、はだしのまま飛び出し間に合わないと思った時、桶は、百合の背後を転がっていた。百合が身体を移動させた。百合の身の軽さに驚き、武芸にんも秀でているかもしれない。

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