2024年10月4日金曜日

貸し物屋お庸謎解き帖⑤ 夏至の日の客

貸し物屋お庸謎解き帖⑤ 夏至の日の客 平谷美樹 
 貸し物屋湊屋両国出店の主は庸。松之助は湊屋本店から手伝いに来ている手代。綾太郎たち陰間を生業にしている仲間が、両国出店の追いかけ屋として交代で手伝う。

 花の宴 大工の頭領の修業中の庸の弟・幸太郎が、師匠が元気がないと言ってきた。七十七才、矍鑠としていた仁座右衛門だった。庸は走入廻り、仁座右衛門の庭に桜を植え、舞台を拵え、芸者を呼びんだ。仁座右衛門の名を出すとみんなが集まった。仁座右衛門は、綾太郎が気に入り一晩過ごすと元気を取り戻した。

 炬燵の中 按摩の宗沢が、炬燵を返す時期だが、猫が住着きもう少し貸して欲しいと言ってきた。何か変だと思った庸は宗沢宅へ行く。宗沢が猫と言ったのは生首だった。東方寺の瑞雲にお払いを頼む。宗沢が二か月前、小塚原を通ったことを知った庸は、八丁堀の同心・熊野にお仕置きになった者を聞く。鬼火の駒八がいた。瑞雲に話し調伏を頼む。鬼火の駒八は首を晒されている時、宗沢が通った。宗沢が足を洗い元気にしていることに良かったと思って付いて来てしまった。その後をたくさんの亡霊が付いてきてしまったのだった。宗沢は、足を洗うことを認めてくれてありがとうございましたという。駒八は成仏した。元、盗賊一味だったとしゃべった宗沢は、自首すると言ったが、同心・熊野は、奉行が、ずっと前に足を洗っているからいいと言われたと言い、いろんなことが耳に入ったら教えろ、いろんなことを頼むかもしれないと言った。

 夏至の日の客 柴田洪順・学者見習が、一年前の夏至の日、ギヤマンの杯を借りに来た。何に使うかとかいろいろ聞いた庸に、もう良いと言ってでて行った洪順をつけた。他所で借り、少しして返したことを見届けた。庸は調べ考えた。洪順が火付けをしようとしていることは分った。洪順は、師匠の内藤玄丈を殺そうとしていると思った。洪順が長崎へ行った。庸は熊野にも洪順が火付けを考えていることを言うが、起こっていないことを奉行にまで言われないと言われた。それから一年経った。内藤玄丈の屋敷の火事を起こす装置を外した。見付けた洪順を呼び出し、装置を外したことを話す。玄丈の所に帰るのを止めるように言う。洪順の訳した物を玄丈の名で出版する玄丈を許せなかった。行き場所のない洪順に長屋を貸した。

 揚屋町の貸し物 吉原の出店に赤ちゃんを三人貸して欲しいと遊女が来た。本店にどうしようか相談に行くと庸に相談しろと言われた。相談された庸は、名乗った雪解が本人か調べる。違っていた。見付けた女と話しをして、庸はもう捨てるような人形を三体持って行く。病身の彼女は、魂が抜けて出歩くようになったと言う。心残りがあったから赤ん坊を借りに来たんだろうと聞く庸に、元雪解は、三人の赤ちゃんを堕胎したと語った。庸は三体の人形を出し、お焚上げされるのを待つだけの身だから最後まで慰める役目を貰って喜んでいる。可愛がっておくれと言う。
 三人の子供を連れた女が、庸にお辞儀する。翌日そめが亡くなったと知らせがあった。
 
 宿替え始末 常連の長助が、宿変えをするので大八車を貸して欲しいとやって来る。去年の夏頃から、夜中に音がしたり、幽霊が出るようになり家族がここに住めないと言い出した。長助は入谷の百姓で、家族と小作人で畑をしている。話しを聞いた庸は、加持祈祷をし、それで駄目なら家を建て直すという話しにした。大工は弟に頼むという。待っていた本家の七右衛門に話す。
 引っ越しが終わり、明日加持祈祷をするという夜、庸と松之助、綾太郎、勘三郎は長助の家で待機する。四人の男がやってきて穴を掘り始める。庸たちが現れる。七右衛門がいた。先祖の日記でこの土間に何かがあった時に土地の人々を助ける物を埋めてあることを知り、長助一家が邪魔になった。埋めてあったのは大量の胡桃だった。庸は長助に何もかも話すという七右衛門を置いて帰る。こんな事だろうと思った庸は加持祈祷を頼んでいなかった。
 翌日、長助に聞いた。胡桃を七右衛門の蔵で預かり飢饉の時に、近隣に配るという約束をした。土間の土を元通りにすることとした。長助は元に引っ越した。

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