2018年11月11日日曜日

栄次郎江戸暦20 辻斬りの始末

栄次郎江戸暦20 辻斬りの始末 小杉健治
 田宮流抜刀術の達人で三味線の名手・矢内栄次郎は足元に倒れた男に留めを刺そうとしているのに遭遇した。このところ続いている辻斬りだと思い、後からきた男・西京屋長四郎に後を頼み辻斬りを追った。辻斬りを取り逃がし現場に帰ると、倒れた男は死んでいた。男は元岡っ引きの作次だった。栄次郎は辻斬りの顔を見たことで南町与力の崎田孫兵衛から辻斬りの手助けを頼まれる。以前の辻斬り四件を聞き、次の辻斬り現場を予想する。
 御徒目付の栄次郎の兄・栄之進から三百石の旗本・増村伊右衛門の屋敷に奉公していた女中・いくが三ヶ月前から行方不明になっているという相談される。いくの実家からの問い合わせに対し中間と駆け落ちしたという返事だが、実家の方は納得がいかなかった。栄之進は調べる術もなく伊右衛門が栄次郎の師匠・杵屋吉右衛門と親しいようなので探れないかという話だった。栄之進は増村家に西京屋を紹介してもらい、新八を西京屋の番頭として送り込む。新八は増村家にいくはいない。庭に埋められている気配もないという。
 予想した現場に辻斬りが現れる。船を使っているため逃がしてしまったが、明くる日、第一現場を訪れた栄次郎は昨日の船を見付ける。書院番頭・大城清十郎の下屋敷、三男・松三郎がいた。また、辻斬りと思われた作次の一件は辻斬りではないということを考えた。
 栄之進の縁談が持ち込まれた。大城清十郎の娘だった。栄次郎の実父が誰か分かっているものがあり、栄之進に大身旗本からの縁談が持ち込まれる。栄之進は気が進まないが、栄次郎が清十郎に今の内に松三郎の話が出来ると言われ大城家を助けるために娘に会い清十郎に会う。
 栄次郎は松三郎に会う。父親と芸者の間に生まれた自分は疎まれた。僻みで清三郎を松三郎と言い、大城家を潰すつもりで辻斬りをしていた。松三郎は自分のしたことを反省していた。松三郎に付いていた千吉が辻斬りは自分だと書き残し自死した。松三郎は出家することになった。大城清十郎は隠居し、長男に家督を譲った。辻斬りの犠牲者の家族に詫びをする。いくは松三郎に屋敷にくるように言われ、増村伊右衛門は上司の息子を拒むために駆け落ちしたことにしていくを隠していた。松三郎が出家することで、いくは現れた。
 栄次郎は作次の事件を調べる。三年前に線香問屋へ三人の押し込みが入り、主人と番頭を殺し土蔵から一千両を盗んだ事件があった。犯人と思われた二人には夜、長屋で小火騒ぎがありその場にいたことが分かって疑いが晴れていた。栄次郎は二人を調べた。作次を襲った浪人が殺された。
 栄次郎は西京屋夫婦と食事をする。西京屋は三年前の押し込みを自供した。長四郎は二人と同じ長屋に住んでいた長吉だった。内儀は線香問屋の女中だった。内儀にはお腹に子供がいた。内儀は押込みのことは知らないことにした。証拠はない。長四郎は自訴した。
 栄之進は大城美津との縁談を承知したと母が栄次郎に伝えた。松三郎が良い妹だと言った美津だった。
 正月に市村座で羽三郎が越後獅子を踊る。地方を吉右衛門が立三味線を吉栄・栄次郎がすることになった。事件を調べながら練習をしていると、秋が弾き終わった後もまだ音がしているようで声をかけられなかった。と言うようになった。栄次郎は聞く者を脅えさせているのかと悩む。
 
 
 

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