三島屋変調百物語六之続 黒武御神火御殿 宮部みゆき
三島屋の変わり百物語の聞き手が、主人・伊兵衛の姪のちかが嫁に行き、次男・富次郎に替わった。
泣きぼくろ 富次郎の幼馴染みの近所にあった豆腐屋の息子・八太郎がやってきた。十四年前の自分の家で起った話をする。両親と24才から7才まで八人兄弟姉妹に長兄・次兄の嫁、次姉の許嫁、女中さんが一人が住んでいた。長兄の嫁と次兄の同衾が発覚した。長兄の嫁が誘ったと言う。八太郎のすぐ上のちい姉ちゃんが長兄の嫁に泣きぼくろがあることを発見する。その泣きぼくろが取れ次兄の嫁に泣きぼくろが現れ、次兄の嫁と次姉の許嫁の同衾が発覚する。泣きぼくろが長女に出来、長女が父親に迫っているのが発覚し、父親は家を出た。兄弟弟子の豆腐屋で父親が亡くなり、家族がばらばらになったと言う話だった。富次郎は端っこが欠けた豆腐の絵を描いた。
姑の墓 商家の大おかみとおぼしき女性・花がやって来る。養蚕の盛んな実家の話をする。かがり屋という棚主の家だった。村では毎年、小高い丘にある墓所で五軒の棚主の家族、働く人々桑畑の小作人たちが花見をすることになっていた。お神酒とご馳走を詰めた重箱を囲んで過ごす。かがり屋の女達だけは行かない決まりになっていた。花の爺様が話したところでは、ひい祖父様の、嫁いびりがひどかったひい婆様の亡くなった後の花見で嫁が階段から落ち亡くなってしまったことからかがり屋の女は丘での花見に参加しなくなったという。花が13才の春、町の商家からやってきたかがり屋の嫁は理不尽だと言いだした。みんなが行く前日に墓掃除をして重箱を持って花見に行った。帰る道、花の母が前を行く嫁を呼び振り返る半身の両肩を突き飛ばした。嫁は階段を落ち亡くなり、母も置物になってしまって夏に亡くなった。祖父が亡くなり、父と兄は腑抜けのようになり、伯母が養子とりかがり屋は養子の連れ子が継いだ。花は舞い込んだ縁談をすぐに受けた。父と兄は遍路の旅に出た。花は村に一度も帰っていない。消息を聞くこともなかった。花は自分の息子に嫁が決まった時、両肩に手の形の痣が出てきたと富次郎に見せる。富次郎には見えないが、富次郎はありましたね。でも今は消えた。花がここで話したため語って語り捨ての力で消えたと話す。富次郎は優しく何かを包もうとする手のひらの左右一対を絵にした。
同行二人 11才でやってきた継父に馴染まず、反発し、何者にもなれなかった。飛脚になった亀一は結婚し、娘ができ、継父にも詫び幸せだった。娘が2才、性質の悪い風邪で両親、女房、娘が死んだ。何も考えない、何が悪くてこうなった憤怒と後悔を噛みしめ自問自答で走っていた。箱根峠と三島宿の間の茶店に雷が落ち一軒無くなっていた。その時から亀一にのっぺらな赤いたすきの男が半丁離れてついてくるようになった。飛脚屋の支配人に茶屋まで連れて帰ってやれと言われ、亀一は引き返した。廻りの茶屋の人たちにものっぺり男が見えるようだ。彼・寛吉はよちよち歩きの娘を囲炉裏で亡くしていた。女房・よしも娘を亡くしたことが自分の咎と思い込み飲まず食わずで弱って亡くなった。十日後、立ち直れないまま寛吉の亡くなった。二三日で寛吉が戻ってくるようになった。住職に仏壇に封印してもらっっていた。茶屋に雷が落ち、仏壇が燃えたことで封印がとけた。亀一はのっぺらを連れてさいの河原に行く。走りながら亀一は自分のことを話す。泣きながら走っていた。寛吉も泣き、ふっと消えた。亀一は本店の支配人になる。東の端に箱根峠、峠道に幟を立てた茶屋と暖簾を掲げた萬屋、茶屋の前に前垂れを付けた男、画面の手前に赤い襷を掛けた、しっかりの肉の付いた腿とふくらはぎの飛脚が走る絵を描いた
黒武御神火御殿 三原山と思われる火山を描いた襖絵をもつ屋敷に閉じこめられた6人の話。十年前、神隠しに遭ったと言われた。季節がどんどん変わる中で暮らしていた。帰ってみると三日だった。別々になった二人だけが昔の暮らしに戻った。
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