風烈廻り与力・青柳剣一郎52 生きてこそ 小杉健治
みすぼらしい物乞いの風体の年寄り、名は玉堂。彼と言葉を交わした者は、自ら死を選ぶ。世間が彼は死神と畏れる中、剣一郎は下駄屋夫婦殺しに遭遇。下手人の姿を目撃した指物師が不審な自死を遂げる。死神の仕業とされ騒ぎになる。
下駄屋夫婦を殺した犯人は、養子と仲間だった。その中一人の顔を見た指物師は、玉堂に扮した男に声を掛けられ連れ込まれた空き家で殺された。死神の仕業に見せかけたのだった。
玉堂は記憶がなく寺の納屋に住んでいた。玉堂の命が狙われた。十三年前、足袋屋の主人が病気の娘を亡くし、妻を首括りで亡くし、突然主人が行方不明になった。主人・吉五郎が玉堂だった。吉五郎の妻は、旗本の奥女中だった。旗本の子を身ごもり、吉五郎と一緒になった。娘を亡くした妻は、報告に行った。旗本に手込めにされ自死した。旗本と付き合いのあった吉五郎の腹違いの弟が、旗本の口利きで足袋屋を乗っ取った。吉五郎は殺され掛け記憶を亡くした。吉五郎は下働きをしていた女中の家で生活している。
剣一郎はもう一つ頼まれたことがあった。御徒組頭田所文兵衛の娘・菊の縁談だった。菊には決まった相手がいた。御徒衆の前島滝三郎だった。そこへ、御徒頭から一千五百石の旗本の息子と、二千石の旗本の息子から、話が来た。断ればいろんな害をなして来る。二人の噂は良くなかった。人を使って前島を殺そうとした真島兵太郎には正面から会い、行いを暴き、諭す。上役を使って苦しめる旗本の父親に会い、たまたま足袋屋に関係した旗本だったため十三年前のことを聞き出し、田所家への手出しを禁止するよう求めた。
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