弥勒シリーズ⑩ 花下に舞う あさのあつこ
佐賀屋という表は口入屋、裏は金貸しをしている夫婦が殺された。驚いたまま死んだような顔だった。
小暮信次郎は、亡くなって二十年くらいになる母の命日に寺へ行く。住職と話し、母の話になった。寺の普請のためお金を集めていた。百両箱を作り百二十両を入れていたが無くなった。寺の勘定方の僧が毒を飲んだ時、寺に来合わせた母・瑞穂が、僧から毒を吐き出させ一命を取り止めた。お金が無くなった話を聞き、箱が二つ作られたこと出入りしても不思議がない者が犯人だと言い当てた。箱職人・重蔵と大工・佐吉が犯人だった。箱職人は捕まったが大工は今も捕まっていないと言う話だった。
信次郎には、母の言葉で忘れられない物があった。「死の間際、何をみたのであろうか」
信次郎は大工の棟梁に二十年前の話を聞く。大工の棟梁は四、五才だった時、信次郎が尋ねた大工・佐吉のことを尋ねてきた武家の女を覚えていた。信次郎の母だった。母は何を調べていたのだろう。
佐賀屋の死んだ元内儀の弟・今の屋の主人・榮三郎が少し前に亡くなっていた。金貸しの佐賀屋は葬式の時、店や土地全てを差し押さえるようなことを言った。葬式の手伝いをした遠野屋の下働き・弥吉の話から信次郎は榮三郎が生きていることを突き止める。榮三郎は毒を飲み死んでしまう。
佐賀屋の殺された内儀・月は扇屋の主人・安芸屋籐左ヱ門と密会していた。籐左ヱ門の内儀・佐江が知り、佐江は籐左ヱ門の名前で裏木戸を開けておくようにと手紙を出した。籐左ヱ門と月の関係を知った伊佐治が籐左ヱ門に話を聞いている時、佐江は書き置きを残し毒を飲む。
遠野屋で伊佐治が榮三郎と佐江が示し合わせてのようだと話す横で、清之介は、こんな入り組んだ尋常でないやり方を誰が考えたのかと問う。小暮さんは納得していないでしょう。
信次郎は、伊佐治と清之介を連れて寺へ行く。母の言葉は「死の間際、何を見るのであろうか」だった。信次郎は二十年前の事件を明らかにする。筋書きを描いたのは住職だった。事件は、弟僧が賭場を仕切りかなりの金子を稼いでいることを知った兄僧を自裁に見せかけるために仕組まれた事件だった。賭場にくる重蔵と佐吉は利用された。信次郎の母はそのことを知ったが、賭場に夫の上司がいて有耶無耶にした。これが真相だろうと。
佐賀屋の徳重は重蔵だった。徳重を見た住職は生かして置けなかった。榮三郎や佐江を利用した。佐江と僧の毒は同じものだった。二十年前の事件と今回の事件を解き明かした信次郎を僧たちが殺そうとする。立ち向かうのは清之介だった。
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