2021年9月30日木曜日

浪人奉行 十一丿巻

浪人奉行 十一丿巻 稲葉稔 

 麹町の路地裏で居酒屋を営む八雲兼四郎。裏の姿は町方の手が届かぬ悪を密かに討つ、浪人奉行だった。
 救った中間から旗本が改易され乱心し御料所内で村人の娘を攫う等非道を尽くしていると聞く。兼四郎は橘官兵衛と定次と共に事態を収めるべく立ち上がる。

 元御書院番組頭・滝澤新九郎は、請地村の百姓家を塒にしていた。攫った娘を二人女中代わりにし家臣が三人、下僕が二人。塒を変える度に、家の者は殺される。今は地主の家にいた。
新九郎は兼四郎たちを誘き寄せるために、地主宅に火をつけて裏の森へ逃げた。定次が娘を助け出し、兼四郎等は二手に分かれて追う。三人を討ち、金を取り返して村人に渡す。後のことは、村人に任す。

2021年9月28日火曜日

神谷玄次郎捕物控 霧の果て

神谷玄次郎捕物控 霧の果て  藤沢周平

 北の定町廻り同心・神谷玄次郎は14年前に母と妹を殺されている。仕事を怠けて小料理屋よし野に入り浸っていた。

 針の光 男が女を抱き寄せ、首筋に畳針を刺し、首を絞めて殺す。玄次郎は網を張り、現場を押さえて捕まえる。

 虚ろな家 菊屋の娘が勾引かされ五百両を要求される。同心・鳥飼の助をする玄次郎は、店の周辺を探る。玄次郎は銀藏に、五百両の運び役・鳥飼の岡っ引き・弥之助を尾けるように指示する。弥之助は菊屋の女中の実家に行く。弥之助と菊屋の主人との計画だった。左前の菊屋は五百両を本家から出させ、別けるつもりだった。

 春の闇 奥州屋から銀藏に、娘の簪を探して欲しいと依頼があった。婚約者からの贈り物だった。見付からないまま、奉公人・増吉が殺された。玄次郎が調べ出す。投げ文があり簪は奉公人・幸介の行李の中から見付かった。幸介を増吉殺しの犯人だという投げ文が来る。玄次郎はそれを無視し、奥州屋を張り込む。娘の婚約者が投げ文を持って来たところを捕まえた。娘と幸介は駆け落ちを考えていた。増吉が娘の簪を拾い、婚約者に買い取って貰おうとした。婚約者は増吉に簪を幸介の行李に入れさし、増吉を殺した。幸介を犯人に仕立てようとしたが、捕まった。

 酔いどれ死体 御薦さんのような死体が見付かった。甚七だった。殺された理由が判らない。二十年前、勤めていた店の若旦那が主人になっていた。その頃付き合っていた女と今も続いていることを知られた主人が殺していた。お金を強請られたわけではないが、ただ酒を飲ました。甚助の酒は底なしの怖い酒だった。

 青い卵 長屋の一人暮らしの婆さんが殺された。誰も知らないはずの十二両と日ごろの小銭が無くなっていた。時々訪れるのは糸屋の隠居と孫。糸屋の隠居から教えられた小間物の行商をしている長吉が捕まった。長吉は殺し十二両を奪っていた。玄次郎は孫が掘っていたところを掘れば小銭が出るだろうと銀藏に言い置いてゆく。

 日照雨 米屋の鼻摘みの次男坊がめった刺しだ殺された。米屋の女中で何もされたことがないと言った祝言のため店を辞めたそのがいた。そのは重吉に手込めにされたようだ。玄次郎はそのの祝言の日「祝言に行け、逃げようと思うな。お上には慈悲もある。あとはまかせろ」と父親に言った。

 出合茶屋 青梅屋の内儀が、銀藏のところにこの頃誰かに見張られているような気がすると相談に来た。内儀が襲われ庇った小僧が大怪我をした。玄次郎が突っ込みながら聞き出す。出合茶屋で男二人と女一人の客を見ていた。巴屋に入った押し込みだった。浪人と職人だった。捕まえた。

 霧の果て 玄次郎は母親と妹が殺された事件を調べている。父親が調べていた事件絡みでその後同輩が調べようとして上からそのままお調べ無しの命令が出た事件だった。父親がやる気を無くし身体を壊して亡くなった。その頃を知っている者を調べ出して聞き廻る。祈祷を行っていた寺の関係で寺社奉行の寺社役同心に会いに行く。印南が玄次郎に会いに来た後、殺される。玄次郎は井筒屋は蔵宿師・御家人・村井にたかられていた。水野の妾になっている村井の娘を祈祷に誘い込んだ。祈祷だけに留まらず、色仕掛けだった。村井の弱みをこしらえた。そんなとき井筒屋の女将の付添女中・佐代が祈祷師に殺された。井筒屋は水野に頼んだ。祈祷料の半分を懐に入れていたこと。水野の妾が出入りしていたことが知られないようにしたかった。等判った。母親と妹を殺し、印南を殺した水野の家臣・鶴木右膳を斬った。水野の枕元に立つ。話をするが玄次郎は出て行く。顔も上げられない老人だった。

2021年9月26日日曜日

突きの鬼一⑦ 饗宴

 突きの鬼一⑦ 饗宴 鈴木英治

 お家騒動で殺された桜香院の四十九日が行われた。
 大川で襲われている屋形船を見つけ助ける。若年寄り松平伯耆守と北町奉行だった。誰が襲ったのか調べ、鬼一は料理屋尾花で行われる一食百両の「将軍御膳の会」を知る。将軍の食材を横流しし、公儀の包丁人が作る。新田与五右衛門が開いていた。目付が調べていることを知り、若年寄を殺そうとした。
 松平伯耆守は殺された。秘剣を使う新田を殺した。
 鬼一は賽子の目が見えなくなった。弥祐が殺された。

2021年9月24日金曜日

三島屋変調百物語七之続 魂手形

 三島屋変調百物語七之続 魂手形 宮部みゆき

 火焔太鼓 ある大名家に火焔太鼓がある。火事の火を飲み込み火事が起こらないと言われる。話をしに来た若い侍の兄嫁の実家が火焔太鼓を生み出した湖の管理をしている家だった。ある年火焔太鼓が隣の国の侍に盗まれ火を吹いた。大勢が亡くなり、侍の兄は足を失った。侍が元服を迎えると兄は、妻の実家に行った。何年か経ち湖の主の交代年になった。兄が主になっていた。 
 富次郎は、森の中の小さな沼に遊ぶ人に似た影と、沼のほとりの笠をかぶり被布を着、短い丈の槍を持ったお地蔵様を書いた。

 一途の念 富次郎がよく買いに行く美味しいお団子の屋台があった。売り子はみよ、十六才。母親が亡くなって屋台を休んでいるみよに富次郎が誘いを掛けた。母は死にたくて自分で目を付いて潰した。死ねなくて五年生きた。やっと死ねたと言う。小さいときの養女に行った家で子供ができ邪険な扱いをされていた。料理屋の女将が助けてくれ行儀から習い事まで教えられ中居をしていた。女将が亡くなり新しい女将は料理屋の中居を遊女にした。肺の病を持つ板前の夫を養うためにそのまま中居を続けた。母は三人の男の子を産む。三人とも夫にそっくりな子供だった。そしてみよが生まれた。ある日、男が長屋で母親が客を取っていたことをぶちまけた。そして母は自分の目をくり貫こうとした。その時から兄三人の顔が変わった。誰だか判らないぐらい。それから五年が経った。
 富次郎は盥に張った水の中に浸された麻袋を書いた。砂糖を取る。

 魂手形 木賃宿の主人だった人が話す。この世に未練を残す魂を運んでいる人がいる。自分・吉富にも見えたし、父親の後添えにきた竹にも見えた。運んでいる七之助の身体が弱っているので魂が自由に出て行くと言う。吉富は魂の力を取り込み七之助と魂・葵の故郷に行き、父親の後妻の悪行を言い巻、葵を殺した者を引き出し、葵を埋めている場所へ連れて行く。全てを終えると魂は消え、吉富は普通に戻っていた。吉富は魂の里があることを誰にも言わなかった。竹は薄々知っていた。
 富次郎は木賃宿かめやの看板を書いた。

 ちかに子供が産まれる。富次郎の夢にちかに縁のあった者だという男が現れた。


2021年9月21日火曜日

風烈廻り与力・青柳剣一郎54

風烈廻り与力・青柳剣一郎54 鼠子待の恋 小杉健治 

 青柳剣一郎は十年前の事件の探索を任される。伊丹屋の妾宅で主と妾・千代が殺された。千代の元許嫁は消え、唯一の容疑者は江戸から離れ半年後に殺された。

 青柳が調べていく。全く違った男が容疑者に挙がる。その男は数日前に侍に斬られた身元の分からない男だった。侍は誰にも見られず姿を消していた。千代の元許嫁も殺された。

 青柳の下で調べている太助は猫探しを仕事にしている。猫探しで知り合った田村屋の娘・そのは十年前飼ってた猫がいなくなっていた。殺された千代のところによく遊びに行っていたらしい。そのは青柳の妻・多恵に似ていた。

 柏木辰之助が家督を息子に譲り隠居するという。妾を囲っていることで別れないなら家を出るように妻に言われたようだ。柏木が十年前この事件の捜査をしていた。青柳は柏木が捜査を在らぬ方向へ誘導したように思った。

 事件を仕組んだのは柏木だった。今妾としているのは千代だった。伊丹屋を殺し自分の女房を殺し、千代に見せかけた犯人が十年が過ぎ現れた。柏木は殺した。元千代の許嫁が千代を見つけた。殺されたはずの千代が生きていた。知られた柏木は男を殺した。千代と名乗らない女をそのに合わせる。そのも千代だと言わないがそこにいた猫はそのの猫だった。
 十年前、千代に柏木の子供ができたのだった。柏木は青柳に斬り付け斬られる。千代は死んでいた。二人の子は田村屋で育てられることになった。

 

2021年9月19日日曜日

北の御番所反骨日録〈二〉 雷鳴

 北の御番所反骨日録〈二〉 雷鳴 芝村凉也

 深川伊勢佐木町騒動一件 深川の往来で菓子屋の主が殺された。殺した侍は旗本の用人で無礼討ちと言う。何も調べないで無礼うちで事が決まる。来合郷轟次郎と裄沢広二郎は妻と娘が敵討ちをしようとしていることが分かった。旗本が寺を使って金貸しをしたり、詐欺を働いたりしていた。菓子屋の主人も仲間に誘われたが断ったために殺されたことがわかった。
 二人はこっそり敵討ちを手伝う。二人は用人を殺した。書類をつくったり、刀を貸したり、無礼討ちでさっさと通した吟味方与力・瀬尾にも何も出来ないように。用人は旗本から見放され浪人となり二人の裁きはかまいなしとなった。
 
 長閑なり 瀬尾よりお裁きの素案を作る概要を書いた書面を取り換えられるという嫌がらせを受けた。裄沢は用心し、複写し全く別人に同じものだという書名をしてもらっていたため事無きを得た。広二郎はその概要を読み犯人の取り違えを指摘する。本当の犯人は言われた通りにしただけと言っている源治で、主犯だと言われている角三は、源治により床下に盗品を隠されただけの被害者だと言う。源治の床下を見れば角三のところに物を運んだ後があるだろう。
 定町同心が調べればすぐ見つけられるが門外漢の瀬尾が調べ、無理な吟味で白状させたために起こったことだと内与力・深沢に言われる。
 
 手伝い廻り 角三は解き放たれた。瀬尾は謹慎のまま。来合が十年前結婚するはずだった娘・美也が大奥から戻った。
 裄沢広二郎は隠密廻りの応援に回ることになった。
 美也のいる備前屋へ会いに行く。来合と元に戻るように裄沢は願うが二人はなかなか動かない。

 雷鳴 裄沢広二郎は美也の大奥を出た理由などを考え、美也の外出時の陰供をする。来合にも声をかけた。美也が襲われた。疑念であったものが当たり、思っていたより思い切ったことをしてきたことに驚いた。二人で六人を相手に戦う。馬に乗った吟味与力・甲斐原が駆けつけ頭巾の侍は逃げた。侍たちは大名屋敷に逃げ込んだところを目付に捕らえられた。
 怪我で休んでいる来合の替わりに定町廻りにつくことになった。美也と実家の橋渡しをお願いする。

 

2021年9月17日金曜日

惣目付臨検仕る(二) 術索 

惣目付臨検仕る(二) 術索 上田秀人

 新設された「惣目付 」に就任した水城聡四郎に吉宗からの命は奥右筆だった。その前に命令を出そうとしたが動かない徒目付五十人の総入れ替えをした。

 吉宗の直接政治を望まない老中は奥右筆を使って、不要な書きつけを御状箱に入れ、吉宗の雑務を増やした。吉宗は老中の命令と吉宗の命令のどちらを優先させるか試している。
 奥右筆組頭の一人・澤司現三郎の役目を解いた。

 江戸を去った藤川義右衛門等二人は尾張の無住寺に住み着いた。

 

2021年9月15日水曜日

苦悩する男 上下 

 苦悩する男 上下 ヘニング・マンケル

 四月、クルト・ヴァランダー59/スェーデンのイースタ警察署の刑事の娘/リンダ・ヴァランダー/マルメ警察署の刑事のパートナー/ハンス・フォン・エンケの父親/ホーカンが行方不明になる。ストックホルム警察のイッテルベリが捜査する。六月、母親/ルイースも行方不明になる。六月末、ルイースが終日前に亡くなっていたと思われる遺体で見付かった。バックに入ったメモからルイースは北のスパイだと思われた。海軍時代の友人など話を聞くに従ってルイースのスパイ容疑は濃くなる。ヴァランダーはホーカンが隠れ暮らす島を見つける。結論に至ったヴァランダーはホーカンの友人/ノルドランダーを連れホーカンに会う。ノルドランダーの姿を隠し、ホーカンの自白を引き出す。ホーカンはアメリカのスパイだった。影で聞いていたノルドランダーは自殺に失敗したホーカンを撃ち殺す。


55才 ルーデルップ近くの農家の建物・一軒家を買った。黒いラブラドール/ユッシを飼う。

58才2007年 ここ数年、糖尿病のため毎日インシュリンを打っている。
 8月リンダ39が初孫の女の子を産んだ。クラーラと名付ける。リンダはマルメ警察署の刑事をしている。パートナーはハリス・フォン・ヘンケ37。コペンハーゲンの投資信託会社でヘッジファンド専門部門で働く。二人はリーズゴードに住んでいる。

59才 ホーカン夫婦のことを調べる。途中霧のベールに包まれたような記憶の欠落に悩まされる。
  元妻/モナはリンダの説得で施設に入った。
  元恋人/バイバ・リエバは、突然会いに来た。ガンで余命が短いことを告白し、帰る途中リガ近くの石壁にぶつけ亡くなった。

数年後 アルツハイマーと診断される。
クルト/ヴァランダーの物語は終わった。




2021年9月10日金曜日

鴻上尚史のほがらか人生相談

 鴻上尚史のほがらか人生相談 鴻上尚史
 息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋

 同調圧力 自尊意識 世間 社会 所与性 

 

2021年9月8日水曜日

おいち不思議がたり 星に祈る

 おいち不思議がたり 星に祈る あさのあつこ

 長崎で医学を学んでいた田澄十斗が帰ってきた。十斗といちが兄妹であることを告げた。十斗はいちに石渡明乃が女の医学塾をつくるので通えはいいと言ってくる。十斗が松庵の手伝うことになった。

 三人の御薦がいなくなり、いちが助けた怪我人・キネもいなくなった。キネがむごい姿で見付かる。

 石渡明乃の生徒の一人・喜世が、明乃の死んだ夫がやり残した無痛薬の調合の試しをしていた。そして何人もが亡くなっていた。喜世は今までの資料を残し船で海に出た。

 いちは飾り職人の新吉と一緒になる約束をした。松庵は新吉にメスを作って欲しいと頼む。

 

2021年9月5日日曜日

百万石の留守居役〈十七〉  要訣

百万石の留守居役〈十七〉  要訣  上田秀人

 数馬の妻・琴が一度離縁された紀州藩の家臣から再縁を求められる。裏に潜む意図を思案する数馬。紀州藩主・徳川光貞が揺さぶりをかけてくる。 

 光貞は江戸で数馬の命を狙い、加賀で琴を勾引かすつもりだった。数馬の命は守られ、琴と間違え数馬の妹・美津を連れ去った。美津は本多家の軒猿によって助けられ琴は江戸へやってくる。琴と一緒に捕まった紀州藩関係者も一緒に江戸へ送られると思った紀州家は琴の駕籠を襲う。琴を助け、奇襲藩士を捕まえる。

 本多政長は、琴と数馬を連れ綱吉に会いに行く。本多家と確執のある大久保加賀守と徳川光貞を同席させる。家康以来の徳川家、家康の考え方、本多と大久保の在り方など話す。

 長政は琴と数馬を連れて加賀に帰る。

2021年9月3日金曜日

わらべうた 〈童子〉

 わらべうた 〈童子〉 時代小説傑作選 細田正充

 かどわかし   宮部みゆき
 花童      西條奈加
 初雪の坂    澤田瞳子
 寝小便小僧   中島要
 柴胡の糸    梶よう子
 安産祈願    諸田玲子

2021年9月1日水曜日

若鷹武芸帖⑧ 相弟子

若鷹武芸帖⑧ 相弟子 岡本さとる

 滅びゆく武芸の流派を調べる公儀武芸帖編纂所。編纂方水軒三右衛門はかっての相弟子・和平剣造から”まだ見ぬ娘”のことを託された。娘・登世は剣術の女道場主になっていた。小太刀の使い手道場主に新宮鷹之介も心を配る。

 道場に通う門弟のけいに付纏う男を蹴散らす。その男の後ろにその辺りの浪人を束ねる男がいた。その男の兄は、かって水軒三右衛門が片手を切り落とした 増子貴兵衛だった。
 登世の息子・錬太郎が連れ去られ三右衛門は呼び寄せられる。錬太郎を助け増子を斬る。
錬太郎に慕われ登世にも頼りにされた三右衛門は一緒に住むことを考えるが、武芸者として生きる事にした。
  
 鷹之介は三右衛門に何か因縁を引きずり命を投げ打つべき時を探っているように思った。
 気炎流小太刀