神谷玄次郎捕物控 霧の果て 藤沢周平
北の定町廻り同心・神谷玄次郎は14年前に母と妹を殺されている。仕事を怠けて小料理屋よし野に入り浸っていた。
針の光 男が女を抱き寄せ、首筋に畳針を刺し、首を絞めて殺す。玄次郎は網を張り、現場を押さえて捕まえる。
虚ろな家 菊屋の娘が勾引かされ五百両を要求される。同心・鳥飼の助をする玄次郎は、店の周辺を探る。玄次郎は銀藏に、五百両の運び役・鳥飼の岡っ引き・弥之助を尾けるように指示する。弥之助は菊屋の女中の実家に行く。弥之助と菊屋の主人との計画だった。左前の菊屋は五百両を本家から出させ、別けるつもりだった。
春の闇 奥州屋から銀藏に、娘の簪を探して欲しいと依頼があった。婚約者からの贈り物だった。見付からないまま、奉公人・増吉が殺された。玄次郎が調べ出す。投げ文があり簪は奉公人・幸介の行李の中から見付かった。幸介を増吉殺しの犯人だという投げ文が来る。玄次郎はそれを無視し、奥州屋を張り込む。娘の婚約者が投げ文を持って来たところを捕まえた。娘と幸介は駆け落ちを考えていた。増吉が娘の簪を拾い、婚約者に買い取って貰おうとした。婚約者は増吉に簪を幸介の行李に入れさし、増吉を殺した。幸介を犯人に仕立てようとしたが、捕まった。
酔いどれ死体 御薦さんのような死体が見付かった。甚七だった。殺された理由が判らない。二十年前、勤めていた店の若旦那が主人になっていた。その頃付き合っていた女と今も続いていることを知られた主人が殺していた。お金を強請られたわけではないが、ただ酒を飲ました。甚助の酒は底なしの怖い酒だった。
青い卵 長屋の一人暮らしの婆さんが殺された。誰も知らないはずの十二両と日ごろの小銭が無くなっていた。時々訪れるのは糸屋の隠居と孫。糸屋の隠居から教えられた小間物の行商をしている長吉が捕まった。長吉は殺し十二両を奪っていた。玄次郎は孫が掘っていたところを掘れば小銭が出るだろうと銀藏に言い置いてゆく。
日照雨 米屋の鼻摘みの次男坊がめった刺しだ殺された。米屋の女中で何もされたことがないと言った祝言のため店を辞めたそのがいた。そのは重吉に手込めにされたようだ。玄次郎はそのの祝言の日「祝言に行け、逃げようと思うな。お上には慈悲もある。あとはまかせろ」と父親に言った。
出合茶屋 青梅屋の内儀が、銀藏のところにこの頃誰かに見張られているような気がすると相談に来た。内儀が襲われ庇った小僧が大怪我をした。玄次郎が突っ込みながら聞き出す。出合茶屋で男二人と女一人の客を見ていた。巴屋に入った押し込みだった。浪人と職人だった。捕まえた。
霧の果て 玄次郎は母親と妹が殺された事件を調べている。父親が調べていた事件絡みでその後同輩が調べようとして上からそのままお調べ無しの命令が出た事件だった。父親がやる気を無くし身体を壊して亡くなった。その頃を知っている者を調べ出して聞き廻る。祈祷を行っていた寺の関係で寺社奉行の寺社役同心に会いに行く。印南が玄次郎に会いに来た後、殺される。玄次郎は井筒屋は蔵宿師・御家人・村井にたかられていた。水野の妾になっている村井の娘を祈祷に誘い込んだ。祈祷だけに留まらず、色仕掛けだった。村井の弱みをこしらえた。そんなとき井筒屋の女将の付添女中・佐代が祈祷師に殺された。井筒屋は水野に頼んだ。祈祷料の半分を懐に入れていたこと。水野の妾が出入りしていたことが知られないようにしたかった。等判った。母親と妹を殺し、印南を殺した水野の家臣・鶴木右膳を斬った。水野の枕元に立つ。話をするが玄次郎は出て行く。顔も上げられない老人だった。
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