2025年1月18日土曜日

春待ち同心〈三〉 不始末

春待ち同心〈三〉 不始末 小杉健治 

北町奉行所定町廻り同心・伊原伊十郎は、 縁談相手・百合からの破談申し入れは撤回され、百合の父親・柳本為右衛門と会える日が近いと喜んでいた。
 父親は伊十郎だと言う幼子を抱いた若い女が現れ、行くところがない母子を預ることになった。全く覚えがないが、身から出た錆と廻りのものは信用せず、責任を取れと煽られる。百合の父親と会う話しも無くなる。

 炭薪問屋小牧屋の薪の下敷きになり亡くなった者がいた。伊十郎は、簡単に崩れるような積み方ではないことを調べていた。遺体の傷が気になった。遺体の身元が判らない。髪結いで、男が喧嘩していて下敷きになったと言った男が殺された。小牧屋の主人の咎めがどうなるか、大いに違いが出るので、伊十郎は調べる。殺された男は、遺体を運ばれていた。どこからかを調べていくと旗本に行き当たる。

 伊十郎の元に、百合の女中だという女が、幼子の母子に付いて尋ねてきた。伊十郎は自分の子でないと言う。
 音曲の師匠・ふじに話すと、百合様は自分で訊ねて来る人ではないかと言われる。跳んで帰った自宅は、襲われていた。ひと足早く、母子は逃げていた。母子が乗った駕籠を探し、赤子の泣き声を探し、旗本と関係のある商家を探す。
 赤子は側室の子だった。半年前、側室の子と本妻の子とで跡取り争いが起こった旗本で、側室の子が産まれたため、隠居が、後に争いが起きないよう側室の子を殺そうとした。守ろうとする家臣と、隠居の意をふくんだ家臣が争っていた。
 商家を見張っている伊十郎の前に、母子が現れ、殺そうとする家臣が現れる。母子を助けた伊十郎は、家臣に、赤子が殿様から貰ったお守りを渡し、子どもは殺したと伝えるように言う。母子は、二人を守ってくれた男と夫婦になって暮すと去った。

 江戸を騒がす「ほたる火」の浮世絵がでた。ふじに似ていた。伊十郎もふじを疑うが、ふじといる時にほたる火が現れたことで、違うと思っていた。浮世絵の絵師もほたる火を見たが、はっきり見たわけではなく、後に見たふじを描いたものだと判った。
 絵師は、百合を見て、ほたる火と言った。
 百合の身のこなしが軽いものであることを、伊十郎は知っている。
 百合の父親と会う話しも復活する。
 

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