狸穴屋お始末日記 初瀬屋の客 西條奈加
祭りぎらい 祭ぎらいの笛師の父、娘の養子に入った笛師。祭で笛を吹く養子に、父親は三下り半を書く。絵乃は相談に乗ったが、力を貸したのは父親の友達。父親には子どもの時、母親が祭りのあといなくなったという思い出があった。友人にもう子どもじゃない、親になったと言われる。
三見の三義人 播州加古郡三見村から三人が狸穴に泊まっていた。五か月経っても呼び出しがない。帰ると言いながら老中首座松平右近将監に駕籠訴した。しかし、翌日には解き放ちになり帰村した。老中のお声がかりの再審でも願いは叶わなかった。
身代わり 勘定役の集堂は一年前、同じ勘定役の浅生家に養子に入った。そして希青と結婚しようとしていた。集堂が離縁されるという。集堂は親を訴えようとする。桐は受けたが、訴えないほうがいいことは判っていた。浅生家を調べる。浅生家の亡くなった長男とそっくりな少年が浅生家の親戚にいる。その子を養子にしたいと思っていた。桐は、集堂の養子にすることを浅生家に伝える。この悶着は収まった。絵乃は、もめ事を先延ばしにしただけだと思う。
夏椿 横暴の夫が寝込んだ。夫の世話をしていた妻には、縮緬細工の仕事がしたいという願いがあった。狸穴で離縁が決まった。三下り半を書いて貰った後で、妻には思い人がいることが判った。相手の妻が亡くなり一周忌が過ぎてから離婚を斬り出していた。
初瀬屋の客 桐の友人・旅館を営む笠が相談に来る。泊まり客の三人が公事で江戸に来ている。三人を初瀬屋に世話したのは、笠の元夫かもしれないと言う。何か魂胆があるのかと不安だった。
証しの騙し絵 一月後、三人の初瀬屋の客は、狸穴屋に来た。前の公事で、江戸店・和縣屋が独立し、貸していた金は、殆ど棒引き、そして取引を辞めると言ってきた。納得出来ない三人が、和縣屋支配・鞘兵衛を訴えるという。内済であったため何の証しもなかった。二人の手代が、隣の部屋での話し合いを漏らさず書きつけていた。書くように言ったのも狸穴を紹介したのも、笠の元夫・弓蔵だった。
公事が始まった。漏らさず書かれた物を出し、その物の証人に、弓蔵が立った。久松屋と立会人・蘆戸屋も、弓蔵は不心得を咎められ仲間株を取り上げられた。そんな者の証人にはならないと言う。弓蔵は、十年経って、知らされた。十年前、三度公事で対決して弓蔵に負けた蘆戸屋は、御上に言い立て弓蔵を陥れた。昔の証しが無いため、十年みてきた汚い手を事細かに書き奉行に訴えた。そして留めが、手代が書いた口書きだった。奉行所も念を入れ糾を行なうと請け負った。
桐は笠から預った椎茸の佃煮を弓蔵に渡した。
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