2020年2月1日土曜日

京に消えた絵師 狂花一輪

京に消えた絵師 狂花一輪 三好昌子
 福知山藩御用所右筆方、木島龍吾は叔父の元で成長した。隠居している先代藩主は、龍吾に実の父・兵庫の捜索を命じる。隠居部屋の襖に極楽浄土を描く約束だと言う。兵庫は出奔後、京で水墨画の絵師・浮島狂花として生きていたが、贋作事件を起こし行方知れずになっていた。
 龍吾は生まれつき色が見えなかった。龍吾は兵庫が妻を失い熱病を患い色が見えなくなっていたことを知る。同じ世界を見ている父に会いたくなった。育ててくれた伯母以外に龍吾の目のことを知る人はいなかった。一緒になって一年の妻・華乃にも踏み込めない壁を感じ、気鬱になって実家に帰っている。離縁の話が出ている。
 京で狂花の弟子たち五人を訪ねる。狂花は贋作事件後の牢留めで弱り、出牢後亡くなっていた。弟子たち一人一人に残された一服の掛け軸、龍吾に残された絵もあった。全部を合わせ見、極楽絵の下絵だと判った。また、兵庫と龍吾の目に色は見えないけれど、命の光が見えていることが判った。兵庫は蛍として表し、龍吾は星と言っていた。
 華乃とは離縁になっていた。先代が再縁が整うのを懸念して腰元としていた。目のことを話、二人は再婚する。
 四人の弟子と亡くなった五葉の替わりに養女になった富貴と五人で極楽絵を仕上げ届けられた。先代は無数の小さな星がきらめく水墨画の襖に囲まれて亡くなった。

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