鬼役〈二十八〉 黒幕 坂岡真
苦肉の毒 将軍家毒味役・矢背蔵人介は、蒸し鮑に烏頭の毒を感じた。新参の御膳所同心・内間源六が自白した。蔵人介は内間は捕まり目付けに訴えたいことがあるのではないかと考えた。蔵人介は調べる。誰かに導かれるように調べが進む。内間は兄弟で、津軽家の隠密だった父が探りだしたがために殺された仇を討つために、父の探りだしたことを調べ、仇が誰であるかを調べた。津軽藩の父の上役の重臣と商人・菱川屋利平と元津軽藩士現在幕臣・犬山軍兵衛が組み、御用船を難破に見せかけ、禁制の俵物を秘かに掠めとっていた。清国へ密輸し莫大な利益をあげている。六年で六艘にもなっていた。
蔵人介は三人を倒したが、裏で利益を得ていた黒幕は分からなかった。内間の残された妻子と兄・源五を引き合わせた。
おしどり 蔵人介は甘鯛を買いに行き、俵田三左衛門と出会う。元上総国久留里藩の藩士だった。十二年前、妻を辻斬りに殺され今は仇を探していた。
甥を遺恨試合の果てに殺され、久留里藩の重臣の息子に果たし合いを挑んだ。重臣の息子・貝須賀忠弥は藩の鉄砲隊を連れてくる。見届け人・蔵人介はその場で俵田の妻・寿美を殺したのが忠弥であることを暴露する。忠弥もその時の事を話し、自分の父親と寿美の兄・佐久間が役人を使って隠蔽したことを話した。俵田を藩に居れないように画策したのも父親と忠弥だった。忠弥の撃ての命令に鉄砲隊は動かなかった。俵田は忠弥を倒すが、佐久間が鉄砲を放つ。俵田が倒れ、佐久間は自害する。
公方様に初見を願う者が百名を超え目見得の儀式が催される日、奏者番の一人・黒田豊後守が頼りにしている久留里藩の重臣貝須賀大膳が厠で吐瀉物を吐いて亡くなった。
柊侍 築後国柳川藩の留守居役・薦野作兵衛が、詰所に立てこもった。無理筋の普請御用の撤回の要求のため勘定奉行有田筑前守定兼さまを連れてきてほしいというものだった。年貢増収のため短い検地竿を使ったことを知られ、百姓の四万人の蜂起になったことで謹慎していた有田は夜、城中にやってきた。矢背も同席する。薦野が聞く。何故、津軽藩に決まりかけていた普請御用が柳川藩に変わったのか。柳川藩の名を出したのは誰か。有田が菱川屋と蜜月だったことは分かっている。分け前はいくらでしたと聞く。有田は黒幕の名を出す前に正気を失い部屋から出た。有田は蟄居になった。
次の日、蔵人介は薦野から十六才の藩主・立花鑑備が亡くなった三才上の兄の替え玉で、江戸家老・原尻監物は鑑胤を藩主に付けようとしているために鑑備を殺そうとしていることを聞く。薦野は鑑備の命を護るために騒ぎを起こした。薦野は部屋を出た。
鑑胤の母親の実父は御側御用取次、宇郷対馬守だった。津軽藩の黒幕も検地竿の黒幕も宇郷だった。柳川藩の石炭に目を付けたのだった。
鑑胤が将軍御目見得の日、原尻監物と萩の方が殺された。
側衆詰所脇の穿鑿部屋で宇郷と闇丸が死んでいた。
薦野は切腹した。
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