栄次郎江戸暦㉓ 致命傷 小杉健治
田宮流抜刀術の達人で三味線の名手・矢内栄次郎は、「江戸屋」の娘・糸に五年前に「守田屋」のおそめを巡って諍い、わたしの兄を殺してしまった清吉さんが戻って来る。父が仇をとろうとしている。父を人殺しにしないよう清吉を護って欲しいと頼まれる。
栄次郎は清吉を匿った。五年前、許嫁だったおそめに江戸屋の欣三が横恋慕し、清吉と諍いになった。欣三が倒れた。頭を打って死んだ。その場で清吉の兄弟子・安蔵の提案で清吉は江戸を離れた。五年経ちほとぼりが覚めたようだと言う手紙を貰い清吉は帰って来た。
清吉の行きそうな所には江戸屋の者がいた。清吉を探している者がいる。十手持ち・勘助の下っ匹・八十吉が清吉を追っていて殺された。清吉が殺したと追われるようになった。
栄次郎は八十吉殺害犯人は清吉ではないと真相究明していて分かった。
五年前の犯人も八十吉を殺したのも清吉ではなく安蔵だということ。安蔵はおそめと所帯を持って守田屋の婿養子になっていた。生まれたばかりの子供がいた。犯人は安蔵だと思うが証拠が無い。清吉に殺したと思っていた欣三が死んでいなかったこと。清吉が逃げてから欣三が立ち上がり安蔵が殺したこと。これは致命傷が額の傷だったことで明らかになった。それを見ていた八十吉に強請られていたために八十吉を殺したこと。
清吉が捕まり、清吉と同心・木戸松次郎と岡っ引き・勘助に話す。清吉は、今まで八十吉を殺していないと言っていたが、欣三殺しも八十吉殺しも自分だと自白した。木戸同心がなかなか牢送りにしない。栄次郎は八十吉の言葉を持って安蔵に会いに行く。栄次郎が調べだした真相と証拠がないことと、清吉が自白したこと、安蔵とおそめに遠くから見守るから幸せになってくれという言葉を残したことを伝える。
夜、安蔵が自訴してくる。一晩、清吉と大番屋の仮牢に留まり、翌朝安蔵は牢屋敷に送られた。
自由になった清吉は、おそめに会い、江戸屋に行った。
栄次郎は兄・栄之進と、破談になりかけていた兄の縁談相手の父親・旗本大城清十郎と会った。大身旗本の娘・美津には縁談の話がいくらもあるが、他家との関係が悪くなるようで、全くかけ離れたところと思い岩井文兵衛に相談したとのことだった。美津も気に入り栄之進も気に入っている。縁談が進むことになった。
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