2024年7月29日月曜日

徒目付勘兵衛 〈四〉 烈火の剣

徒目付勘兵衛 〈四〉 烈火の剣 鈴木英治

 やっぱり徒目付になった。2004年12月 新装版だった。
 昔に読んでいるかもしれないが、順番に借りることも知らなかったからある本を読んでいたから跳んでいるかもしれない。

 徒目付になり、山内修馬と組む。修馬は殺された徒目付の部屋住みの弟だった。修馬が勘兵衛を連れていったのは、やくざの出入りや、質屋の用心棒だった。質屋では押し込みを捕まえた。
 修馬の恋人は半年前に殺されていた。その前に殺された父親の事件もあった。二人は調べるが、何の手掛かりも掴めていない。

 旗本の家族が、姿を消した。調べて旗本の屋敷で賭場が開かれている事を突き止めた。徒目付たちで取締に行く、抵抗され徒目付が殺され、和田兄弟の弟を捕まえた。兄は捕まった弟を助けに押し入り、勘兵衛に斬られた。弟・竜之進は勘兵衛を兄の敵とつけ狙う。

 父親が切腹した息子・安東知之介・修馬の道場仲間が、父親の切腹の裏にある物を探ってくれと来る。二人は探るが、何もないと報告する。また一人旗本が切腹した。切腹に見せているが、明らかに殺人だった。犯人は知之助。納戸役の収賄、質流れの品物を利用した公金着服を知った安東の父親は、相談した納戸役に、罠を仕掛けられ切腹に追い込まれた。知之助は父親の仇を討った。遠島になった。二人は自分たちが相談された時に、見逃したことを後悔した。

 勘兵衛は、元上司に、娘の事で恨まれていた。上司の娘は、勘兵衛と出会って心に決めていた。勘兵衛は、元々、美音しか眼中に無く、美音と結婚した。上司の娘は、自殺した。上司は和田竜之進を利用して勘兵衛を狙った。最期の仕掛けは、竜之進が勘兵衛を殺したように見せて、自分が勘兵衛を斬る。どうにか勘兵衛は残った。上司の家は取り潰された。

2024年7月27日土曜日

コンビニたそがれ堂⑩ 夜想曲 

コンビニたそがれ堂⑩ 夜想曲 村山早紀

 ノクターン 世界的なピアニスト首藤玲司は、四十年ぶりに故郷に帰ってきた。古い喫茶店を継いだ兄のやっているSNSで店のことプライベートなこと発信するのを見ていた。母が入院したことも知っている。自分のことを家族だと思っていないかも知れないという不安があった。
 母が交通事故で入院した十才ぐらいの時、ピアニストが育てていた首藤玲司が突然の心臓病で亡くなり、自分の子ではないと判ったピアニストが訪ねてきた。台風の日に生まれた赤ちゃんの取り違えがあったと。 僕はピアノが弾きたいですと首藤玲司の生活が始まった。ピアニストになった。
 町を歩いていて辿り着いたのは風早神社の鳥居、コンビニたそがれ堂。カーネーションを抱えるほどの花束を買った。五円を持っていなかったのでピアノを弾いた。トナカイに乗ってカーネーションの花束を抱え病室へ。健ちゃん。母と兄は健ちゃんのピアノの才能がもったいないから心を鬼にして見送ろう。それが家族の愛情だったと言った。
 野外音楽堂のコンサートでみんなのために弾くよ。
 コンサートの後、私の家族です。夜のうちにどうやってお見舞いに来たんだよ。
 トナカイにのってコンビニたそがれ堂で買ったカーネーションの花束だよ。

 夢見るマンボウ 領主の命令で不老不死の仙術を学びに旅に出た若者は、姫様との結婚を夢見て修業した。引き止められても故郷へ帰る。帰った故郷は、姫さまも居なかった。たそがれ堂の常連で、古本屋の主人をしている。たそがれ堂のねここに頼まれた。えりこさんをもう少し生かせてもらえないか。元若者は、命の欠片を渡した。これが最後の欠片。長い時のながれの中、仙術で救って来た。不老不死だった若者は少しずつ老いていった。
 
 空に浮かぶ鯨と帆船 駅前商店街でチェスをする年寄達。サトウ玩具店のサトウさんは治せない物はないというおもちゃの修理屋さん。こないだの続きと挑戦してきた白衣の老いた女性医師。二人は戦後から同じように町を駆け回っていた。
 千年も前かも知れない。二つの惑星が戦争で消え、生き残った宇宙船が辿り着いた。二人は戦争の相手だと分っていた。病院を建て医療に従事する彼女の所に、病人、怪我人を運ぶ。
 たそがれ堂で二人が会った。彗星が地球にぶつかるという。サトウは、自分が彗星めがけぶつかれば起動が変わるかもという。医師の曜子は、自分ばかり英雄にならないでよ。協力すれば死なない方法があるかも。
 ある夜、風早の空に正体不明の影が。山の中から舞い上がった帆船に似た飛行物体。もう一つは、海から浮かび上がった大きな鯨のような物体。
 年が開けた正月、サトウさんと白衣の院長先生は公園でチェスをしていた。

 天使の絵本 何でも買えるというたそがれ堂で、三太郎は絶対に無い本の話をした。三太郎は昭和二十年の冬、生活していた防空壕が秋の台風で水が入り生活出来なくなった。柿の木の根元に廃材で掘っ建て小屋を造り生活していた。大きなお屋敷に空き巣に入り、目が不自由な少女にせがまれて本を読んだ。本は燃えて灰になって居たので、三太郎はじぶんで作った話をした。
 彼女・蕎子さんが病室でのインタビューで、あの本が欲しいと言っているのを聞いた。
 たそがれ堂には、その本があった。
 

2024年7月23日火曜日

新・秋山久蔵御用控〈十九〉 飾結び

新・秋山久蔵御用控〈十九〉 飾結び  藤井邦夫

 飾結び 秋山久蔵は、口入屋「戎屋」を睨んでいる女を見た。女・佐奈の夫・村岡信一郎は、戎屋の斡旋で旗本に仕官がなった矢先、商人と喧嘩沙汰になり斬り殺し自死していた。信一郎の衿に菊結びの飾り結びが縫い込んであった。
 戎屋の主が殺された。佐奈を見張る。寺の家作に住む、浪人・信一郎の弟・村岡恭次郎の所に行く。
 旗本・榊原主水正と用人・岡田内蔵助は、献残屋香梅堂から千利休の茶碗を借り、返したくなく信一郎に、酔わせ無礼討ちにするよう命じた。そして切腹させた。そのために仕官させたのだった。
 佐奈の呼び出しに応じた岡田は、家臣と共に佐奈を連れ去ろうとした。恭次郎が現れ佐奈を守り逃がすが、背中を斬られる。由松たちが呼ぶ子笛を吹く。
 恭次郎は戎屋を殺したのは自分だと言い亡くなった。
 秋山は、榊原家ですべてを知っていると言い、後のことを委ねるが、岡田に切腹させ終わろうとするため、全てを評定所に届ける。榊原主水正は切腹、家録は四千から二千になった。

 雲海坊 雲海坊と同じ長屋の良吉が呉服屋に奉公に出た。母親は、病弱で養生所に入れた。大工だった父親は怪我をして仕事を辞め、博打と酒にのめり込んでいる。父親は盗賊に脅され、大工だった頃に建てた風華堂の図面を渡した。やってきた盗賊は、役人がいることを知り帰った。盗賊の首領は、使い手の侍だった。
 盗賊・甚八に手伝いを頼まれた良吉は、大声を出した。匕首を持った甚八を見た良平は、良吉を庇い刺された。甚八は捕まった。音無しの権兵衛一味は捕まった。権兵衛は久蔵に斬られた。素性は不明のまま。良平は亡くなった。

 お使い 秋山大助が、向島の弥平次のところに使いに行く。弥平次と大助は、女を勾引かす現場を見る。浪人に邪魔をされ駕籠は遠ざかった。大助は追った。弥平次は、勾引かされたのが大黒堂の内儀だと突き止め、木戸番に幸吉に伝わるよう手紙を託した。勇次たちは、大助を探した。長七は奉行所の神崎に伝えた。秋山に伝わった。
 勾引かし仲間の浪人に斬りつけられ大助は駕籠を見失ったが、由松が付いていた。
 弥平次は大黒堂へ行く。主は去年亡くなり内儀と番頭で店を続けていた。
 駕籠は牛込水道町の潰れた料理屋へ入った。持ち主は佐久町の質屋、住んでいるのは隠居。
 久蔵も現れ踏み込み捕まえた。犯人は、元大黒堂の内儀・とみだった。とみは十年前、金遣い人使いが荒く大黒堂のためにならないと離縁されていた。とみは内儀に大黒堂を譲ると証文を書けと迫っていた。潰れた料理屋の持ち主の質屋の主は、とみの弟だった。いずれは自分の物にするつもりだった。

 籠り者 印半纏を着た職人が、木戸番のおかみさんを人質にして木戸番屋に籠った。天神一家の巳之吉を連れてこいという要求を出した。幸吉たちは、巳之吉を調べる。犯人・文吉のことを調べる。
 文吉が一緒になるはずだった娘・きよ。きよの父親が博打で借金を作り首を括って亡くなった。きよは借金のかたに連れて行かれた。連れて行ったのは巳之吉だった。探し出した巳之吉からきよの行き先を聞き出し、岡場所から奉公に出されるきよを止める。文吉は捕まった。人質にしたおかみさんは、きよの叔母だった。
 旗本の隠居の頼みで、若い娘を手に入れるため如何様で借金を作らせ娘を手放すよう仕向けられていた。巳之吉と松木楼の主は人買いの罪で遠島、旗本の当主に度を越すと評定所に届けると伝えた。隠居は屋敷に戻った。
 文吉は江戸所払いになった。高輪の木戸にきよがいた。二人で旅立った。
 

2024年7月14日日曜日

鎌倉署・小笠原亜澄の事件簿④ 竹寺の雪

鎌倉署・小笠原亜澄の事件簿④ 竹寺の雪 鳴神響一 

 ノンフィクション作家の赤尾冬彦が、昭和の銀幕スター・関川洋介記念館で絞殺された。一月経っても進展しない事件を、幼なじみコンビ・吉川元哉と小笠原亜澄も調べることになった。関川家族や共演者等の聞き込みを始める。赤尾は、関川洋介の生誕百年の伝記本を出す予定で調べていた。映画・竹寺の雪を観ている時に殺された。

 関川洋介は、五十年前に病死。娘・女優・関川由布子は入院中。由布子の妹・恵衣子の娘・森岡恵智花21才が、洋介の孫。関川邸の留守番をしている。由布子は家を相続し、恵智花の母は、貧乏画家で、金や有価証券等、動産を相続した。由布子と恵衣子の母親は違う。
 伝記本を出す予定の出版社・鳥井忠志。本郷監督。由布子の病院で、恵智花と俳優・蜂屋貞一に会う。竹寺の雪の映画の後、引退した七条昌子に会う。七条の後輩・宇都宮茉莉子に会う。脚本家・山科勝雄に会う。彼は付き合っていた女優・屋代佐織が関川の後妻になった。山科は宮崎と一緒に、七条の引っ越しを手伝っていた。宮崎は、今も七条の家で働いている。
 
 宮崎は、赤尾の投資詐欺被害に遭い五百万を取られたので憎くて殺したと言った。
 七条は、由布子の母親が自分であることを告白し、赤尾が知ったことで脅迫し宮崎が殺したのだろうと話した。亜澄は、合い鍵のことが納得できなかった。誰か共犯者がいるはず。
 七条は、由布子も晩年を一緒に過ごす人が出来て喜んでいたのに・・・と言った。相手は蜂屋貞一。
 関川家で、犯人が宮崎・七条昌子の運転手だったと伝えた。蜂屋に言う。誰か合い鍵を渡した協力者がいるはず。蜂屋に見せた。由布子が、蜂屋由布子になっている事実を。由布子の八億円の遺産を手に入れるために。由布子の母親が昌子ということになると、遺産が昌子にも行く。それを阻止するために、昌子が母親であることが表に出てはいけないと思った。蜂屋を殺人教唆及び幇助の嫌疑で逮捕された。
 蜂屋は罪を軽くするために相続放棄した。恵智花は、相続財産を関川洋介記念財団の信託財産にして記念館とお屋敷の維持費にするつもりだ。

 元哉は、寿福寺の総門前の石段でくだを巻いた亜澄を介抱するはめになった。タクシーを探す。
 


2024年7月12日金曜日

鎌倉署・小笠原亜澄の事件簿③ 極楽寺逍遥

 鎌倉署・小笠原亜澄の事件簿③ 極楽寺逍遥 鳴神響一

 鎌倉大仏付近の丘の上で撲殺体が見付かった。殺されたのは美術館学芸員の鰐淵貴遥だった。神奈川県警捜査一課・吉川元哉と、鎌倉署刑事課強行犯係・小笠原亜澄はコンビを組まされ関係者を訪ね歩く。

 貴遥は、父・鰐淵一遥画伯が持つ「極楽寺逍遥」を研究し、近く専門機関で蛍光X線調査や赤外線写真調査をしたいと思っていた。亜澄は一遥画伯の了承を得、一遥画伯の出費で科学捜査研究所を通じて解析を頼んだ。

 みんなが集まった席で、解析から判ったことを発表する。

 画家・湯原宗二郎が描いた「極楽寺逍遥」の色を上塗りされている部分には、自分が一遥を裏切った。また君も私を裏切った。茉莉子は罪を犯し私は茉莉子に罪を償わせた。そしてわが罪を償うと書かれていた。
 絵のモデルをし宗二郎の愛人だった茉莉子は、宗二郎のDVに耐えられず、一遥の元に逃げた。一遥と暮らしている最中、階段から落ちて亡くなった。宗二郎は自殺した。

 宗二郎の絵がフランスで認められて来た。苦労して美術評論家として仕事ができるようになってきた娘・桂子は、父親が人を殺したという事実を明るみに出したくなかった。解析をすれば明るみに出ることを知っていた桂子は、解析しようとしている貴遥を思わず石でなぐってしまった。と桂子は言った。
 鎌倉美術館の学芸員の貴遥の部下・日野真矢は、宗二郎の娘だった。母は銀座のホステスをしながら真矢を育てた。学芸員になったが、評論家を目指そうとした。妹が華やかで羨ましかった。真矢も書かれていることに心当たりがあり、表に出されることが嫌だった。貴遥は、解析し研究論文を書くことに言及した。桂子と貴遥が会うことを知りつけた。桂子が殴った後、ここで彼が亡くなれば・・・と考え動き出した貴遥をもう二回殴って殺した。石を遠くへ持ち出し捨てた。
 一遥は、絵を鎌倉美術館に寄贈した。一遥の孫、遥人は、祖父の遺産を放棄した。

 事件解決の後、白旗神社の隣の児童公園から、元哉はしっかり酔っ払った亜澄を介抱しながら連れて帰る。

2024年7月10日水曜日

北の御番所 反骨目録〈十〉 ごくつぶし

北の御番所 反骨目録〈十〉 ごくつぶし 芝村凉也

 ごくつぶし 古物商で、売れっこの岩海和尚の書を破いた者がいると捕まったのは旗本の三男だった。旗本は、破いた物の代金を払うと言い、古物商はいらないと言う。三男は何も言わず捕まっている。
 裄沢に調べてくれと頼まれた。頼んだのは旗本だった。殿様は長男で、後添えが産んだ息子を跡取りにしたいがためあらゆる手を使った父と義母から家を守るため無頼を装った三男だった。
 三男・隆次郎は、書画をたしなんだ。岩海の書も練習していた。無頼を装った時の仲間が、隆次郎の留守に部屋に上がり込みそれらの物を持ち去った。その後、岩海に落款を贈った。贈る前に、隆次郎の作に押していた。和尚の落款が認知されたころ売り出した。隆次郎は、友人の所に行ったが、売られた後だった。店で破くことになった。古物商も騙されたことは言えない。
 裄沢が調べ上げた。隆次郎は毒を飲まされ殺された。殺されたことを調べている目付に全て話した。数年後、隆次郎の友人は切腹している。罪状は判らない。

 島帰りの男 行沢が、介入し、奉行所の小者を辞め、増上寺界隈を縄張りにする香具師の元締・以蔵の所に身を寄せる三吉。以蔵にかなり重用されている三吉をよく思わない者がいるらしい。三吉を兄貴分と思っている六の字が裄沢に相談に来る。裄沢に恩を感じている三吉は、裄沢の調べの手伝いをする。六の字はそれを知っていた。
 元の元締が島から帰った。遠島になる時、以蔵は頼まれ香具師の元締になった。次の元締を狙う音二郎が元元締に、三吉の悪口を吹き込んでいるという。何があったというわけではないが、心配でたまらないという。
 裄沢は何も出来ないが、調べることはした。そんな時、露天商の争いから加賀鳶との争いになった。加賀鳶と話し合いをすることになっている。
 裄沢は元元締・達五郎を訪ねる。仲神道を救う手助けをして欲しいと頼む。達五郎と増上寺の高僧との関係、増上寺と前田藩・加賀鳶との関係を話、達五郎なら出来るだろうという。
 加賀鳶との話し合いに三吉と出掛けた以蔵。留守を預かった達五郎。達五郎は加賀鳶が頭をさげて終わったと帰ってきた。音二郎を連れて帰ると言う達五郎に、自分の後を継がせるつもりだから手元に置くと言った。達五郎は三吉に、いい人と巡り会えたようだね。大事にするんだぜと言い残す。三吉は裄沢が動いたことを知る。

 昔の罪 裄沢のところで働く茂助。茂助だけが残り、今は茂助の甥・重次が、食事の用意をする。重次の死んだ友人の息子の事で相談があった。
 兄は食器を扱う小間物屋に、弟・次助は太物問屋に奉公にあがった。次助がお金を落とした。相談された兄・初太は、持っていた金を弟に渡した。注文主が払ったはずと苦情を受け兄弟は奉公先に謝りに行った。二人の店は許したが、許さなかったのは苦情を言ってきた湊屋だった。小間物屋は庇ったが辞めさせないと得心しなかった。初太は店の助けもあって担い売りとして生活出来た。初太は、仕入れ先の店から娘の養子にと話しがきた。親戚が、店の金を盗んだ者を跡取りにするのかといわれていた。
 裄沢に頼まれ貫太が調べた。親戚の後ろに店を潰した湊屋がいた。
 親戚一同が集まった中で、昔の脅しまがいの湊屋の言葉を出しても、貫太の職業を言っても収まりがつかなかった。裄沢が出、どうにか収まった。初太はやはり婿になれないと言った。
 来合美也が懐妊した。
 裄沢が失踪した。
  

2024年7月8日月曜日

ビブリア古書堂の事件手帖Ⅳ

 ビブリア古書堂の事件手帖Ⅳ 三上延
 〜扉子たちと継がれる道〜

 プロローグ 篠川大輔は、よく知らない資産家のガーデンパーティーに招待され来てみると、大輔と一緒に来るはずだった栞子の他に、娘・扉子と友人でありもぐら堂の娘・戸山圭、栞子の母・智恵子もきていた。

 令和編「鵜籠」 樋口恭一郎は、高校の先輩・戸山圭から扉子に渡してと百万以上するかもしれないという夏目漱石の「鶉籠」の初版本を預けられた。扉子は、戸山から逃げているように見える。
 恭一郎は、扉子から祖母、篠原智恵子の屋敷の一番重要な部屋・古書を保管する書斎兼作業所で話を聞く。
 去年の七月、戸山圭から、一冊の本を見せられた。その本の持ち主だという圭ちゃんの大叔父・利平さんに会い、保存していたという土蔵を見に行った。八ミリフィルムとか読書券を見付けた。誰にも秘密のその本が、鎌倉文庫の物と判った時、扉子は利平に会い借りたまま返していないと指摘する。利平は転んで怪我をする。扉子は、横領した本を圭ちゃんに譲るという行為を許せなかった。が、圭ちゃんは、勝ってに利平さんに会い、強い指摘をした扉子を許せなくて。八ミリフィルムを見た。土蔵の中の鎌倉文庫の本の前にいる、圭ちゃんの祖父と利平さんが写っていた。そして圭ちゃんは、扉子にもう私に話しかけないでと言った。
 一年、扉子は圭ちゃんから逃げていた。圭ちゃんが、二人のいる部屋に来る。二人は謝り合った。三人でフィルムの続きを見る。土蔵の扉を開けた若い男性と、撮影しているセーラー服の少女が鏡に写っていた。扉子とそっくりな智恵子だった。1973年11月

 昭和編「道草」 1973年11月、篠川登 20才大学生 土曜日父親不在で店番中。
 常連客の女子高生・三浦智恵子が来ている時に、兼井と名乗る夫婦が来た。将来古本を集めた博物館を建てると言う。死ぬ時に全て燃やすことが夢だと言う。兼井健蔵は、久我山尚大が、鎌倉文庫の持ち主を見付け買わないかと打診された。久我山を信用できない兼井は、ビブリア書店の聖司に持ち主との交渉をしてもらいたかったと言う。会う日を早めてほしいと言ってきた。
 日曜日 昨日の話を聞いた智恵子とヒントから見付けたもぐら堂を訪ねる。前々から利平は、友達から鎌倉文庫を買ったと吹聴していたようだ。久我山の番頭・吉原と話していることで凡は判った。古書店の経営者は利平の弟・清和のようだ。利平は財産を全部失い弟の所に転がり込んだと言う。話を聞いても智恵子は納得しない。また、清和はビブリアさんに相談したいことがあると伝えて欲しいと言う。
 車で出発しようとしている利平に乗せてと頼んで智恵子と登は乗る。智恵子は利平と話し、売れ残っている土蔵に行く。窓が開いている。上手く話に乗せた智恵子は土蔵の中を見た。鎌倉文庫の本があった。利平が驚いている。清和が来た。突然手に入れたのは清和だった。良い買い手という兼井は最終的には本を燃やすと言う人だから、別人に売って欲しい。智恵子は私に任せてと言った。利平は八ミリの撮影を頼んだ。智恵子がカメラ、登は土蔵の扉を開けた。そして登と利平は除外された。後日、聖司も相談に乗ったようだ。本は別の人に買われたようだ。
 三浦智恵子は、久我山の隠し子だと言った。彼女は、取引を紹介した礼にもらった「道草」の初版本を登に預けた。

 平成編「吾輩は猫デアル」 篠川登 49才 
 家庭の事情から大学院をやめた智恵子はビブリア堂で働き始めた。結婚の申し込みをした時、いつか突然いなくなるかもしれない。それでもよければと条件が付いた。登と智恵子は結婚した。栞子と文香が生まれ、十数年の穏やかな日々の後、智恵子は姿を消した。二年前のこと。
 栞子が、オークションサイトで、鎌倉文庫の「道草」と「吾輩は猫デアル」が出ているのを見付ける。鎌倉文庫に興味を持つ。そんなところに兼井健蔵の妻・花子が来る。健蔵が相談があると言う。健蔵は命が短いと話す。1973年の出来事を栞子に話す。
 健蔵は、三十年前に手に入らなかった本が、一冊手に入った。持ち主を探し出して何冊か売って貰えるよう交渉して欲しいと言った。栞子が質問する。本を保管している本館を見る。もぐら堂で質問した栞子は、オークションの出品者も「吾輩は猫デアル」に何が起こり鎌倉文庫の本がどこにあるか全て判ったと言った。
 栞子は兼井花子を訪ねた。お金が欲しい娘が、父親の本を売った。慌てて母親が買った。今回のことはそういうことだった。
 三十年前、智恵子が、鎌倉文庫をまとめて買うように仕向けたのは兼井健蔵の妻だった。古書に興味なさそうに言う花子が、本当は好きなことを見抜いた智恵子は健蔵に内緒で買うことを勧め、今まで内緒にしてきた。
 栞子の助言通り、花子は手に入ったと「吾輩は猫デアル」の中と下を健蔵に見せた。健蔵は花子にそれを読んで、死んでから感想を聞かせてくれと言った。栞子と登は帰った。その後、花子が何を話したか知らない。

 エピローグ このパーティは花子が開いたものだった。生前葬だと言う。
 本館に呼ばれた篠川家と戸山家の者に、夫と私が集めた古書を孫・益代が、整理して並べた。有料の会員制図書館として営業すると話した。鎌倉文庫と名付ける。みんなは、名誉会員になった。利平は八ミリカメラで撮りたがった。圭と扉子が交替で撮った。


 

2024年7月6日土曜日

鎌倉署・小笠原亜澄の事件簿② 由比ヶ浜協奏曲

 鎌倉署・小笠原亜澄の事件簿② 由比ヶ浜協奏曲 鳴神響一

 七月下旬の土曜日、鎌倉海浜芸術ホールで、新日本管弦楽団の演奏会中に、第一バイオリンのコンサートマスター・三浦の頭上に鉄球が落下し死亡する事件が起こった。超小型ロボットアームが取り付けられスマホで捜査されたものだった。

 鎌倉署刑事課強行犯係の巡査部長・小笠原亜澄と神奈川県警捜査一課・吉川元哉巡査長は組み、鑑取りに回った。

 指揮者・里見は、36年前、チェコ響のバイオリンで駄目だしされ解任され失業し一年も経たないうちに病没した三浦倫安の12才の遺児のために多額の経済援助をした。遺児は楽団のコンマスになった。今回亡くなった三浦倫人だった。
 里見は、難聴だった。12年隠していた。
 里見が、楽団の事務局長の石川が、楽団の経費の着服をしていることを知った。石川に自首を進めた。
 三浦は、四か月前、父親の解任のきっかけが里見だという話を知り、敬愛が憎しみに変わったと、ピアノの椎名は言った。

 石川は、ライトの台にアームを取り付けケトルベルを付けたことを認めた。経費の着服を知られた里見を殺すために。スイッチを入れて亡くなったのは三浦だったので驚いた。三浦は殺していないと言う。石川は逮捕された。
 アラームが解除されたことに不信をもっている小笠原は、三浦を殺した犯人と思っている人に罠を仕掛けた。同じように上から物を落とした。ケトルベルとそっくりな素材が柔らかいもので出来ていた。椎名は自分がやったと自供した。石川が仕掛けるのを見た。敬愛する里見を憎むようになった三浦を殺そうと思ったと言った。それを聞いた里見の娘は、里見の難聴のことを暴露しようとした三浦を殺したのだと言った。里見の推薦で賞がとれる寸前だったから。

 

2024年7月1日月曜日

女系図でみる日本争乱史

女系図でみる日本争乱史 大塚ひかり

 みんな身内の争いだった。母親は誰か。に注目した女系図。丹念に読み解けば日本史のややこしい部分がクリアに見える。

 何故、中大兄皇子は長い間天皇に即位しなかったか。

 応仁の乱の本当の原因は何か。

 慶喜は何故戦わず降伏したか。彼は公家だった。