ビブリア古書堂の事件手帖Ⅳ 三上延
〜扉子たちと継がれる道〜
プロローグ 篠川大輔は、よく知らない資産家のガーデンパーティーに招待され来てみると、大輔と一緒に来るはずだった栞子の他に、娘・扉子と友人でありもぐら堂の娘・戸山圭、栞子の母・智恵子もきていた。
令和編「鵜籠」 樋口恭一郎は、高校の先輩・戸山圭から扉子に渡してと百万以上するかもしれないという夏目漱石の「鶉籠」の初版本を預けられた。扉子は、戸山から逃げているように見える。
恭一郎は、扉子から祖母、篠原智恵子の屋敷の一番重要な部屋・古書を保管する書斎兼作業所で話を聞く。
去年の七月、戸山圭から、一冊の本を見せられた。その本の持ち主だという圭ちゃんの大叔父・利平さんに会い、保存していたという土蔵を見に行った。八ミリフィルムとか読書券を見付けた。誰にも秘密のその本が、鎌倉文庫の物と判った時、扉子は利平に会い借りたまま返していないと指摘する。利平は転んで怪我をする。扉子は、横領した本を圭ちゃんに譲るという行為を許せなかった。が、圭ちゃんは、勝ってに利平さんに会い、強い指摘をした扉子を許せなくて。八ミリフィルムを見た。土蔵の中の鎌倉文庫の本の前にいる、圭ちゃんの祖父と利平さんが写っていた。そして圭ちゃんは、扉子にもう私に話しかけないでと言った。
一年、扉子は圭ちゃんから逃げていた。圭ちゃんが、二人のいる部屋に来る。二人は謝り合った。三人でフィルムの続きを見る。土蔵の扉を開けた若い男性と、撮影しているセーラー服の少女が鏡に写っていた。扉子とそっくりな智恵子だった。1973年11月
昭和編「道草」 1973年11月、篠川登 20才大学生 土曜日父親不在で店番中。
常連客の女子高生・三浦智恵子が来ている時に、兼井と名乗る夫婦が来た。将来古本を集めた博物館を建てると言う。死ぬ時に全て燃やすことが夢だと言う。兼井健蔵は、久我山尚大が、鎌倉文庫の持ち主を見付け買わないかと打診された。久我山を信用できない兼井は、ビブリア書店の聖司に持ち主との交渉をしてもらいたかったと言う。会う日を早めてほしいと言ってきた。
日曜日 昨日の話を聞いた智恵子とヒントから見付けたもぐら堂を訪ねる。前々から利平は、友達から鎌倉文庫を買ったと吹聴していたようだ。久我山の番頭・吉原と話していることで凡は判った。古書店の経営者は利平の弟・清和のようだ。利平は財産を全部失い弟の所に転がり込んだと言う。話を聞いても智恵子は納得しない。また、清和はビブリアさんに相談したいことがあると伝えて欲しいと言う。
車で出発しようとしている利平に乗せてと頼んで智恵子と登は乗る。智恵子は利平と話し、売れ残っている土蔵に行く。窓が開いている。上手く話に乗せた智恵子は土蔵の中を見た。鎌倉文庫の本があった。利平が驚いている。清和が来た。突然手に入れたのは清和だった。良い買い手という兼井は最終的には本を燃やすと言う人だから、別人に売って欲しい。智恵子は私に任せてと言った。利平は八ミリの撮影を頼んだ。智恵子がカメラ、登は土蔵の扉を開けた。そして登と利平は除外された。後日、聖司も相談に乗ったようだ。本は別の人に買われたようだ。
三浦智恵子は、久我山の隠し子だと言った。彼女は、取引を紹介した礼にもらった「道草」の初版本を登に預けた。
平成編「吾輩は猫デアル」 篠川登 49才
家庭の事情から大学院をやめた智恵子はビブリア堂で働き始めた。結婚の申し込みをした時、いつか突然いなくなるかもしれない。それでもよければと条件が付いた。登と智恵子は結婚した。栞子と文香が生まれ、十数年の穏やかな日々の後、智恵子は姿を消した。二年前のこと。
栞子が、オークションサイトで、鎌倉文庫の「道草」と「吾輩は猫デアル」が出ているのを見付ける。鎌倉文庫に興味を持つ。そんなところに兼井健蔵の妻・花子が来る。健蔵が相談があると言う。健蔵は命が短いと話す。1973年の出来事を栞子に話す。
健蔵は、三十年前に手に入らなかった本が、一冊手に入った。持ち主を探し出して何冊か売って貰えるよう交渉して欲しいと言った。栞子が質問する。本を保管している本館を見る。もぐら堂で質問した栞子は、オークションの出品者も「吾輩は猫デアル」に何が起こり鎌倉文庫の本がどこにあるか全て判ったと言った。
栞子は兼井花子を訪ねた。お金が欲しい娘が、父親の本を売った。慌てて母親が買った。今回のことはそういうことだった。
三十年前、智恵子が、鎌倉文庫をまとめて買うように仕向けたのは兼井健蔵の妻だった。古書に興味なさそうに言う花子が、本当は好きなことを見抜いた智恵子は健蔵に内緒で買うことを勧め、今まで内緒にしてきた。
栞子の助言通り、花子は手に入ったと「吾輩は猫デアル」の中と下を健蔵に見せた。健蔵は花子にそれを読んで、死んでから感想を聞かせてくれと言った。栞子と登は帰った。その後、花子が何を話したか知らない。
エピローグ このパーティは花子が開いたものだった。生前葬だと言う。
本館に呼ばれた篠川家と戸山家の者に、夫と私が集めた古書を孫・益代が、整理して並べた。有料の会員制図書館として営業すると話した。鎌倉文庫と名付ける。みんなは、名誉会員になった。利平は八ミリカメラで撮りたがった。圭と扉子が交替で撮った。
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