新・秋山久蔵御用控〈十九〉 飾結び 藤井邦夫
飾結び 秋山久蔵は、口入屋「戎屋」を睨んでいる女を見た。女・佐奈の夫・村岡信一郎は、戎屋の斡旋で旗本に仕官がなった矢先、商人と喧嘩沙汰になり斬り殺し自死していた。信一郎の衿に菊結びの飾り結びが縫い込んであった。
戎屋の主が殺された。佐奈を見張る。寺の家作に住む、浪人・信一郎の弟・村岡恭次郎の所に行く。
旗本・榊原主水正と用人・岡田内蔵助は、献残屋香梅堂から千利休の茶碗を借り、返したくなく信一郎に、酔わせ無礼討ちにするよう命じた。そして切腹させた。そのために仕官させたのだった。
佐奈の呼び出しに応じた岡田は、家臣と共に佐奈を連れ去ろうとした。恭次郎が現れ佐奈を守り逃がすが、背中を斬られる。由松たちが呼ぶ子笛を吹く。
恭次郎は戎屋を殺したのは自分だと言い亡くなった。
秋山は、榊原家ですべてを知っていると言い、後のことを委ねるが、岡田に切腹させ終わろうとするため、全てを評定所に届ける。榊原主水正は切腹、家録は四千から二千になった。
雲海坊 雲海坊と同じ長屋の良吉が呉服屋に奉公に出た。母親は、病弱で養生所に入れた。大工だった父親は怪我をして仕事を辞め、博打と酒にのめり込んでいる。父親は盗賊に脅され、大工だった頃に建てた風華堂の図面を渡した。やってきた盗賊は、役人がいることを知り帰った。盗賊の首領は、使い手の侍だった。
盗賊・甚八に手伝いを頼まれた良吉は、大声を出した。匕首を持った甚八を見た良平は、良吉を庇い刺された。甚八は捕まった。音無しの権兵衛一味は捕まった。権兵衛は久蔵に斬られた。素性は不明のまま。良平は亡くなった。
お使い 秋山大助が、向島の弥平次のところに使いに行く。弥平次と大助は、女を勾引かす現場を見る。浪人に邪魔をされ駕籠は遠ざかった。大助は追った。弥平次は、勾引かされたのが大黒堂の内儀だと突き止め、木戸番に幸吉に伝わるよう手紙を託した。勇次たちは、大助を探した。長七は奉行所の神崎に伝えた。秋山に伝わった。
勾引かし仲間の浪人に斬りつけられ大助は駕籠を見失ったが、由松が付いていた。
弥平次は大黒堂へ行く。主は去年亡くなり内儀と番頭で店を続けていた。
駕籠は牛込水道町の潰れた料理屋へ入った。持ち主は佐久町の質屋、住んでいるのは隠居。
久蔵も現れ踏み込み捕まえた。犯人は、元大黒堂の内儀・とみだった。とみは十年前、金遣い人使いが荒く大黒堂のためにならないと離縁されていた。とみは内儀に大黒堂を譲ると証文を書けと迫っていた。潰れた料理屋の持ち主の質屋の主は、とみの弟だった。いずれは自分の物にするつもりだった。
籠り者 印半纏を着た職人が、木戸番のおかみさんを人質にして木戸番屋に籠った。天神一家の巳之吉を連れてこいという要求を出した。幸吉たちは、巳之吉を調べる。犯人・文吉のことを調べる。
文吉が一緒になるはずだった娘・きよ。きよの父親が博打で借金を作り首を括って亡くなった。きよは借金のかたに連れて行かれた。連れて行ったのは巳之吉だった。探し出した巳之吉からきよの行き先を聞き出し、岡場所から奉公に出されるきよを止める。文吉は捕まった。人質にしたおかみさんは、きよの叔母だった。
旗本の隠居の頼みで、若い娘を手に入れるため如何様で借金を作らせ娘を手放すよう仕向けられていた。巳之吉と松木楼の主は人買いの罪で遠島、旗本の当主に度を越すと評定所に届けると伝えた。隠居は屋敷に戻った。
文吉は江戸所払いになった。高輪の木戸にきよがいた。二人で旅立った。
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