コンビニたそがれ堂⑩ 夜想曲 村山早紀
ノクターン 世界的なピアニスト首藤玲司は、四十年ぶりに故郷に帰ってきた。古い喫茶店を継いだ兄のやっているSNSで店のことプライベートなこと発信するのを見ていた。母が入院したことも知っている。自分のことを家族だと思っていないかも知れないという不安があった。
母が交通事故で入院した十才ぐらいの時、ピアニストが育てていた首藤玲司が突然の心臓病で亡くなり、自分の子ではないと判ったピアニストが訪ねてきた。台風の日に生まれた赤ちゃんの取り違えがあったと。 僕はピアノが弾きたいですと首藤玲司の生活が始まった。ピアニストになった。
町を歩いていて辿り着いたのは風早神社の鳥居、コンビニたそがれ堂。カーネーションを抱えるほどの花束を買った。五円を持っていなかったのでピアノを弾いた。トナカイに乗ってカーネーションの花束を抱え病室へ。健ちゃん。母と兄は健ちゃんのピアノの才能がもったいないから心を鬼にして見送ろう。それが家族の愛情だったと言った。
野外音楽堂のコンサートでみんなのために弾くよ。
コンサートの後、私の家族です。夜のうちにどうやってお見舞いに来たんだよ。
トナカイにのってコンビニたそがれ堂で買ったカーネーションの花束だよ。
夢見るマンボウ 領主の命令で不老不死の仙術を学びに旅に出た若者は、姫様との結婚を夢見て修業した。引き止められても故郷へ帰る。帰った故郷は、姫さまも居なかった。たそがれ堂の常連で、古本屋の主人をしている。たそがれ堂のねここに頼まれた。えりこさんをもう少し生かせてもらえないか。元若者は、命の欠片を渡した。これが最後の欠片。長い時のながれの中、仙術で救って来た。不老不死だった若者は少しずつ老いていった。
空に浮かぶ鯨と帆船 駅前商店街でチェスをする年寄達。サトウ玩具店のサトウさんは治せない物はないというおもちゃの修理屋さん。こないだの続きと挑戦してきた白衣の老いた女性医師。二人は戦後から同じように町を駆け回っていた。
千年も前かも知れない。二つの惑星が戦争で消え、生き残った宇宙船が辿り着いた。二人は戦争の相手だと分っていた。病院を建て医療に従事する彼女の所に、病人、怪我人を運ぶ。
たそがれ堂で二人が会った。彗星が地球にぶつかるという。サトウは、自分が彗星めがけぶつかれば起動が変わるかもという。医師の曜子は、自分ばかり英雄にならないでよ。協力すれば死なない方法があるかも。
ある夜、風早の空に正体不明の影が。山の中から舞い上がった帆船に似た飛行物体。もう一つは、海から浮かび上がった大きな鯨のような物体。
年が開けた正月、サトウさんと白衣の院長先生は公園でチェスをしていた。
天使の絵本 何でも買えるというたそがれ堂で、三太郎は絶対に無い本の話をした。三太郎は昭和二十年の冬、生活していた防空壕が秋の台風で水が入り生活出来なくなった。柿の木の根元に廃材で掘っ建て小屋を造り生活していた。大きなお屋敷に空き巣に入り、目が不自由な少女にせがまれて本を読んだ。本は燃えて灰になって居たので、三太郎はじぶんで作った話をした。
彼女・蕎子さんが病室でのインタビューで、あの本が欲しいと言っているのを聞いた。
たそがれ堂には、その本があった。
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