鬼役〈三十三〉 初心 坂岡真
天保十五年 弥生 矢背蔵人介は鬼役を養子の卯三郎に譲り、隠居のはずが、どうしたわけか、小姓頭取格奥勤見習いという役に付き中奥の炭置部屋に留め置かれている。役料は無し。
志乃の客・徳大寺実堅が、誰かが、僅かな分量の効き目の無い物を不老長寿の薬と偽り徳大寺のおすみつきまで添えて打っているものがいる。と情報をくれた。本物を所持しているのは、水戸中納言だった。
弥生四日 町人が城内でお能見物を許される日、面を付けた大男が刀を抜いた。蔵人介は立ち塞がり、面を切る。紅毛人だった。狙いは水戸斉昭だった。
蔵人介の知り人薫徳は、毒薬作りを頼まれる。時間稼ぎに断っていると勾引かされた。
紅毛人・捨飯を使っているのは道伯だった。蔵人介が斉昭を守り道伯と対している時、金縛りの術を使われた。捨飯は蔵人介に袈裟懸けで胸を切った。ために蔵人介は覚醒し、斉昭を助けられた。
和蘭陀商館長たちが、括られ屋形船で見つかった。江戸城へ急ぐ蔵人介。和蘭陀商館長たちに化けた道伯の前に立つ。蔵人介が突き出す刀の前に捨飯は立ち、突き刺さる。
卯三郎に初密命が下った。蔵人介は迷いながら、殺される菅沼弥兵衛を調べる。代々徒目付で、新たな普請下奉行となっていた。菅沼は名主の用心棒に斬られた。火除地を我が物とするな名主、普請奉行、代官を目安箱に訴えていた。菅沼は名主の用心棒に斬られた。蔵人介は調べた。名主が殺された。火除け地を我が物とする計画を立てたのは奥右筆だった。密命を下す者・阿部伊勢守。奥右筆・安西は死なせてならぬ役人だ。と言う。安西は初心を忘れた。番士の初心は道理を曲げぬこと。政治をなさんとする者は、私心を捨てること。阿部にも、初心を忘れないこと。
安西に密命が下った。
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