戯作者喜三郎覚え書 無情の琵琶 三好昌子
喜三郎23才 呉服屋多嘉良屋 の三男、喜三郎を産み母は亡くなる。父親が喜三郎の首に手をかけているのを見た祖父母は、喜三郎を引き取って育てる。父親は医者の薬を飲み、三日三晩眠り続け覚めた時には自分の行為を忘れていた。12才で祖母が亡くなり多嘉良屋に帰る。
夢は鴻鵠楼を買い取り自分の書いた芝居をすること。
妙音寺で、喜三郎は無情に会う。無情は逢いたい人が幸せに暮しているところを見るまでは死ねないという不磨だ。武士が置いていった刀を本来の持ち主に返ったと言う刀は、喜三郎に五百年前の出来事を見せる。平家の落人が、源氏の侍に斬られる。刀は源氏の武士に渡る。
無情の話しでは、無情を助けた炭焼き小屋の若者は、平家の落ち武者を助けた。落ち武者狩りの時、若者は武者の鎧を付け刀を持って落ち武者になり首を落とされた。無情は、若者が裏切ったと思い相手の刀を奪い村人も源氏の武者も斬り、逃げきった。歩いているうちに平家の落ち武者の首無し遺体を見付ける。手に蜘蛛の痣ヶ有る炭焼きの若者だった。無情は、自分と義兄弟の契りを交わした若者が替え玉になって討たれたことを知る。
無情は、この世に残り、彷徨える魂に行く道を示しながら若者の生まれ変わりを探す。
喜三郎の手首に蜘蛛の痣が現れた。
喜三郎は、鴻鵠楼の小屋主になった。月灯会での出し物は、無情が魂の行方を示した話しを題材にし、喜三郎が書いた、恋路の果てと子返しの辻と、昔、琵琶法師が話し座頭が書いた壇ノ浦義兄弟の契りだった。
喜三郎は、頭の中で声を聞く。屋島の戦いで弟を失った。矢を受け船から落ちた。
喜三郎は無情に弟のことを聞く。無情は弟のことを知っているのは斗市だけだ。新しく生を受けた斗市は幸せに暮している。もう思い残すことはないという。蜘蛛手切りと言われる刀が錆びぼろぼろと崩れる。無情は透けるように薄くなり、琵琶を燃やしてくれと言い、満足そうな顔で消えていった。喜三郎の蜘蛛の痣も消えた。
鴻鵠楼の持ち主・千夜と一緒になり子を成した。宝屋喜三治という戯作者になった。
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