2024年3月18日月曜日

うぽっぽ同心十手綴り④ 凍て雲 

 うぽっぽ同心十手綴り④ 凍て雲 坂岡真

笹りんどう 天は照々として誠を照らすーーー。斬首に立ち会った臨時廻り同心の長尾勘兵衛は、罪人の最期の言葉を受け取ってしまった。
 多くの者に慕われていた医師だった。仁徳にもせっつかれ調べる。小栗玄朴。元常陸下館藩の御用医師、殿様が亡くなり辞め国払いになった。
 別の医師に引き取られた幼子・陽太郎9才は、熱を出し、意識が朦朧とし、腐った味噌汁の前で震えていた。母を亡くし拾われた娘・果穂は置屋に売られていた。陽太郎は、家に連れ帰り仁徳に頼み、果穂は置屋と話を付け連れ帰った。
 陽太郎を引き取っていた医者良意は殺された。玄朴が、長屋の店賃の借金の請け人になっていた治助も隠れていたお堂ごと燃やされた。
 玄朴が犯人とされた枡屋の泥棒は、良意と治助が金欲しさと玄朴を犯人にするために計画したものだった。調べていた同心・桐野と岩七は、計画に乗り玄朴を犯人とし、二人を殺した。その犯人も関係がない者に濡れ衣を着せようとした。
 根岸奉行の了解を得、勘兵衛は、幼子に玄朴の仇を討たせた。桐野と岩七を殺した。筆頭与力・宗像は隠居した。

 凍て雲 勘兵衛は、襲われている若者を助けた。若者・垣添兵庫は礼に茶碗を置いていく。兵庫は松江藩の家来で、姉・香苗は藩主お気に入りの側室だった。姉は女中頭とその父による嫉妬から、茶会で毒を飲まされ一命は取り止めたが醜い顔になり、寝たきりになり奥に閉じこめられている。兵庫は「凍て雲」と呼ばれる茶碗を盗んだ。松江藩から返すようにと要望される。勘兵衛は、留守居役に会いに行き、茶碗を返す条件として香苗の身柄を要求した。
 勘兵衛と兵庫は下馬先で、松江藩主と会う。藩主に呼び出された。十日余りで香苗は、山帰来を飲み、自分で寝起きし、家事を手伝えるよう回復していることを報告した。毒茶会に加わった者は蟄居になった報告を受け、兵庫も国元扱いになったが、姉弟は断り町に住むことにしたと伝える。勘兵衛は、晦の茶会の招待状を貰った。

 つわぶきの里 勘兵衛は、町で見かけた、釣りをしている津和野藩出身の紙漉きの職人・平助・坂崎平内に興味を持つ。
 元津軽藩の侍で今は、今戸で土器を焼いている三田村惣次郎という浪人がいる。惣次郎は、七年前、許嫁の深雪が、柿沢彦之進と深い仲になったことを知り、柿沢と話をした。柿沢が逃げるので、「誰かその男を斬ってくれ」と叫んだ。通り掛かりの男が柿沢を斬った。三田村は逃げた。柿沢は右手を失った。三田村が逃げた事で斬った男は、助太刀の証明がなく辻斬りと見なされ八丈島へ遠島となった。三田村が知ったのは、男が遠島になった後だった。その男が坂崎平内だった。三か月前、平内は御赦免船で江戸へ帰った。
 勘兵衛は、その後の柿沢を探す。坂崎の家族を探す。坂崎を連れて見付けた柿沢に会いに行く。柿沢は巣鴨で百姓をしていた。赤ん坊を負ぶった深雪がおまえさんと呼び、かか様のもとへまいろうと子供を左腕でひょいと抱えた。それを見た坂崎は、会うこともなく立ち去った。
 坂崎の妻と娘は、公事宿に住み込み賄いをしていた。会いにいくことは伝えた。坂崎が行くと、宿の入り口に続く道に黄色い花が、鉢植えが敷き詰められていた。つわぶきだった。「父上ですよ」と言った。

 野きつね 勘兵衛は、火盗改与力・堀平太夫の指揮十手を拾った。持病の疝気の痛みに蹲って居る時、豆腐屋の権兵衛に出会った。
 野ギツネ一味が盗みを働いた。今まで人を傷つけたこともなかった野ギツネが、評判のよくない金貸しに押し入り六人を斬り護符を貼って逃走した。同じ時間、「浮瀬」のふうが、瓢屋から二人の賊が千両箱を抱え飛び出し船で逃げるのを見たと言った。賊はふうに手を振ったと言う。護符が貼られていた。瓢屋は被害届を出さない。勘兵衛が店に行くと火盗改が来ていた。
 辻占のきぬが五人組の盗賊を見たという。置屋のこんと知り合う。勘兵衛は、四人に襲われる。
 火盗の堀は、盗人を使って人を殺し金を奪った。本物の野ギツネが、堀と瓢屋の関係を教えるために瓢屋に盗みに入り、十手を置いた。
 堀を呼び出し乱闘になったところに、火盗改の頭・岩村が現れ、堀を捕まえた。奉行・根岸が手配してくれた。
 捕まるつもりで権兵衛は、勘兵衛の前に現れたが、勘兵衛は捕まえなかった。

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